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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】含水材料用重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/36 20060101AFI20240520BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20240520BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20240520BHJP
   C08F 220/14 20060101ALI20240520BHJP
   C08F 226/10 20060101ALI20240520BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20240520BHJP
   A61F 2/16 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C08F220/36
C08F220/26
C08F220/06
C08F220/14
C08F226/10
G02C7/04
A61F2/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020075065
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021172691
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】五反田 龍矢
(72)【発明者】
【氏名】川崎 寛子
(72)【発明者】
【氏名】松田 将
(72)【発明者】
【氏名】岩切 規郎
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-534946(JP,A)
【文献】特表2013-534551(JP,A)
【文献】特表2012-526882(JP,A)
【文献】特表2002-530489(JP,A)
【文献】特表2014-526314(JP,A)
【文献】特開2012-162568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/36
C08F 220/26
C08F 220/06
C08F 220/14
C08F 226/10
G02C 7/04
A61F 2/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるグルコナミド基含有モノマー(A)と、
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン及びメタクリル酸からなる群から選択される少なくとも1種類以上の親水性モノマー(B)と、
2つ以上の重合性不飽和基を有する架橋成分を含む、共重合体であって、
(A)と(B)が質量比で(A)/(B)=5/95~20/80である、重合体。
【化1】
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基である。]
【請求項2】
前記重合体は、前記架橋成分を0.1質量%~10質量%含む、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
含水材料用重合体である、請求項1又は2に記載の重合体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の重合体を水和することで得られる含水性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面親水性、防汚性に優れる含水性材料が容易に得られ、医療用材料、生化学材料、工学材料、薬学材料として使用しでき、特にコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズ材料として好適に使用し得る含水性材料用重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高分子材料のなかでも特にコンタクトレンズにおいては、レンズ表面の親水性の低下と脂質などの汚れ付着が種々の眼疾患の原因の1つといわれ、注目されている。
【0003】
そこで、表面親水性の高いコンタクトレンズを得るための材料として、N-ビニルピロリドンを主成分とする高含水性の軟質材料が開発されている。しかしながら、これらのコンタクトレンズは高い表面親水性を有するものの、防汚性の面で不十分であった。
【0004】
前記問題点を解決するため、コンタクトレンズの表面処理の方法として、たとえばレンズ表面にプラズマ処理を施して表面親水性を向上させる方法や、プラズマ処理を施したレンズ表面に親水性モノマーをグラフト重合させて表面親水性と防汚性を付与する方法(特許文献1)などが提案されている。しかしながら、これらの表面処理は多くの装置を必要とし、工程が煩雑となるため、量産化において望ましくない。
【0005】
また、コンタクトレンズを重合後に処理剤として湿潤剤を使用し、レンズ表面の水濡れ性を向上させる方法が提案されている(特許文献2)。この方法では、上記表面処理を行わなくても十分な表面親水性と防汚性が得られるが、湿潤剤はレンズ表面に化学的に結合されていないため、レンズ装用期間中にレンズ表面から除去され、レンズ表面の親水性が低下し装用感が悪化する懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-122779
【文献】国際公開2006/088758
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、表面親水性及び防汚性に優れた含水性材料を得ることができる重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、式(1)で表されるグルコナミド基含有モノマーを特定割合で含有する共重合体が、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.式(1)で表されるグルコナミド基含有モノマー(A)と、
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸からなる群から選択される少なくとも1種類以上の親水性モノマー(B)との共重合体であって、
(A)と(B)が質量比で(A)/(B)=5/95~20/80である、重合体。
【化1】
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基である。]
2.前記重合体が、さらに架橋成分を0.1質量%~10質量%含む、前項1に記載の重合体。
3.含水材料用重合体である、前項1又は2に記載の重合体。
4.前項1~3のいずれか1項に記載の重合体を水和することで得られる含水性材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明の含水性材料は、優れた表面親水性、防汚性及び機械的強度を同時に有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の重合体(特に、含水性材料用重合体)は、必須成分として後述するグルコナミド基含有モノマーと、親水性モノマーとを含む共重合組成物を共重合して得られる重合体からなる。以後、本発明の重合体(特に、含水性材料用重合体)を得るための共重合組成物を、単に、「本発明の共重合組成物」と称する。本発明の含水性材料は当該重合体の水和物からなり、特にコンタクトレンズとして好適に使用し得る。
【0012】
[グルコナミド基含有モノマー]
グルコナミド基含有モノマーは、式(1)で表される。グルコナミド基含有モノマーは、製造される含水性材料の表面親水性の向上及び防汚性に寄与する成分である。
【0013】
【化2】
【0014】
式(1)中、Rは水素原子又はメチル基である。
【0015】
式(1)で表されるグルコナミド基含有モノマーの製造方法は、例えば、アミノエチルメタクリレート塩酸塩とグルコノ-1,5-ラクタンを三級塩基存在下で反応させる方法が挙げられる(Xiang-Lin Meng et al.,Langmuir2012,28(38),13616-13623;Julian Schneider.et al.,Journal of the American Chemical Society 2012,134(4),2407-2413)。
【0016】
本発明の共重合組成物において、全てのモノマー成分の合計を100質量%としたとき、グルコナミド基含有モノマーの含有割合は5~20質量%であり、好ましくは5~15質量%である。グルコナミド基含有モノマーの含有割合が5質量%未満であると、製造される含水性材料の表面親水性及び防汚性が不十分となる場合がある。一方、20質量%を超えると、含水性材料が白濁する場合がある。なお、本発明において、「モノマー成分」は分子内に1つ以上の重合性不飽和基を有する成分を意味する。
【0017】
[親水性モノマー]
親水性モノマーは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸から選択される1種類以上の親水性モノマーである。親水性モノマーを所定量含有することで、含水性材料の機械的強度を良好にすることができる。
【0018】
本発明の共重合組成物において、全てのモノマー成分の合計を100質量%としたとき、親水性モノマーの含有割合は80~95質量%であり、好ましくは75~95質量%である。親水性モノマーの含有割合が80質量%未満であると、製造される含水性材料の機械的強度が不十分となる場合がある。一方、95質量%を超えると、含水性材料の表面親水性又は防汚性が不十分となる場合がある。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリルエステル」は、各々アクリレート及び/又はメタクリレート、アクリルエステル及び/又はメタクリルエステルを意味するものとする。
【0019】
[架橋成分]
本発明の共重合体組成物は、架橋成分はゲルを得やすい点で、架橋成分をさらに有するものが好ましい。架橋成分は、2つ以上の重合性不飽和基を有し、上記モノマーを架橋することが可能な架橋剤である。
【0020】
架橋成分の具体例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、メチレンビスアクリルアミド、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(アルキレンの炭素数2~6)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(アルキレンの炭素数2~4)、ジビニルスルホン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、(2-アリルオキシ)エチルメタクリレート、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。これらのうち、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。架橋成分これら架橋剤のいずれか1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
【0021】
[共重合組成物]
本発明の共重合組成物において、全てのモノマー成分の合計を100質量%としたとき、架橋成分の含有割合は0.1~10質量%であり、好ましくは0.1~5質量%である。架橋成分の含有割合が上記範囲であれば、ゲルが得られやすく、耐溶剤性と柔らかさのバランスが良好で取り扱い性に優れたものとなる。
【0022】
本発明の共重合組成物は、上記成分に加え、本発明の目的を阻害しない範囲で、重合性紫外線吸収剤、重合性色素(着色剤)等の添加剤を含有していてもよい。その使用量は含水性材料の厚さ等に依るが、通常、全てのモノマー成分の合計を100質量部としたとき、重合性紫外線吸収剤及び重合性色素の各々の含有割合は好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは0.02~3質量部である。
【0023】
本発明の共重合組成物は、例えば、各成分を任意の順又は一括して撹拌(混合)装置に投入し、10℃~50℃の温度で、均一になるまで撹拌(混合)することにより製造できる。
【0024】
[重合体]
本発明の重合体は、上記共重合組成物の重合体からなる。以下、本発明の重合体の製造方法について説明する。以下に示す製造方法は該重合体を得る方法の一実施形態にすぎず、本発明の重合体は当該製造方法によって得られるものに限定されない。
【0025】
本発明の共重合組成物をモールド(金型)に充填して重合反応を行うことにより、本発明の重合体を製造できる。該モールドとしては、ポリプロピレン等からなる疎水性表面を有するモールドが好ましい。重合反応を行う際には共重合組成物に重合開始剤を添加することが好ましい。この場合、熱重合や光重合等によって重合を効率的に行うことができる。
【0026】
[重合開始剤]
重合開始剤は、特に限定されず、公知の重合開始剤を用いることができるが、本発明の共重合組成物を共重合させる際、重合途中の温度変化による各モノマー成分の共重合性の変化が容易である点で、熱重合開始剤が好ましい。
熱重合開始剤の例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル 2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドレート、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジハイドレート、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-{1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル}プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などのアゾ系重合開始剤、及びベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシヘキサノエート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
重合開始剤として、上記のいずれか1種類を配合しても、2種類以上を配合してもよい。安全性と入手性の点でアゾ系重合開始剤が好ましく、反応性の面から、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)が特に好ましい。
【0027】
重合開始剤を含有する場合、その含有量は、本発明の組成物中のモノマー成分の合計量100質量部に対して0.1~3質量部が好ましく、0.2~1質量部がより好ましい。0.1質量部未満の場合、本発明の共重合組成物の重合性が不十分で、重合開始剤を配合する利点が得られないおそれがある。3質量部を超えると、重合により得られる重合体を洗浄して含水性材料を製造するときに、重合開始剤の反応分解物の抽出除去が不十分になるおそれがある。
【0028】
重合は、使用する重合開始剤の分解温度に合わせて45~140℃で反応させる。重合温度の維持時間(重合時間)は、1時間以上であり、10時間以下であることが好ましい。1時間未満では重合反応が完了しない懸念がある。10時間を超えると、重合工程が長くなりすぎ、生産性が低下するので好ましくない。
重合終了後、60℃以下まで冷却し、製造された重合体をモールドから取り出す。
【0029】
重合反応は大気中で行ってもよいが、モノマーの重合率を向上させる目的で窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。不活性ガス雰囲気中で重合する場合、重合系内の圧力は1kgf/cm以下とするのが好ましい。
【0030】
重合後、モールドの変形により、重合体を乾燥状態で取り出すことができる。また、重合体をモールドと共に溶媒(例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、これらの混合物等)中に浸漬し、重合体のみを膨潤させ、自然にモールドから脱離させてもよい。溶媒を使用せず、重合体を乾燥状態で取り出すことが好ましい。
【0031】
[含水性材料]
本発明の含水性材料は、上記重合体の水和物からなる。即ち、本発明の重合体を水和し、ヒドロゲル状とすることで、本発明の含水性材料が得られる。
【0032】
[含水性材料の製造方法]
次に、本発明の含水性材料の製造方法について説明する。以下に示す製造方法は本発明の含水性材料を得る方法の一実施形態にすぎず、本発明の含水性材料は当該製造方法によって得られるものに限定されない。
【0033】
上記重合反応の後、重合体は、未反応のモノマー成分(未反応物)、各成分の残渣、副生成物との混合物の状態で存在してよい。このような混合物をそのまま水和処理に供することも可能であるが、水和処理の前に重合体を溶媒で洗浄することが好ましい。
【0034】
洗浄に用いる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、これらの混合物等が挙げられる。洗浄は、例えば、10℃~40℃の温度で、重合体を水又はアルコール溶媒に10分間~5時間浸漬して実施できる。また、アルコール洗浄後、アルコール濃度20~50質量%の含水アルコールに10分間~5時間浸漬して洗浄し、更に水で洗浄してもよい。水としては、純水、イオン交換水等が好ましい。
【0035】
洗浄した重合体を生理食塩水に浸漬し、所定の含水率となるように水和させることによって、本発明の含水性材料が得られる。生理食塩水は、ホウ酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水等であってよく、好ましくはリン酸緩衝生理食塩水である。
【0036】
本発明の含水性材料は、表面親水性及び防汚性が高く、機械的強度が適当であり装用感に優れているので、通常の使用形態で1ヶ月程度使用することができる。例えば、本発明の含水性材料をコンタクトレンズとして使用する場合、コンタクトレンズの交換頻度は最長1ヶ月であってよく、当然ながら、それより短期間で交換してもよい。
本発明の含水性材料は、WBUTの水膜保持時間が15秒以上であり、例えば15秒~40秒であってもよく、16秒~36秒であってもよい。
本発明の含水性材料は、色素吸着量試験の色素吸着量が20μg以下であり、例えば1μg~20μgであってもよく、6μg~15μgであってもよい。
本発明の含水性材料は、JIS-K7127に従ったモジュラスが0.2MPa以上1.5MPa未満であり、例えば0.2MPa~1.2MPaであってもよい。
本発明の含水性材料は、ISO-18369-4に従った含水率が、特に限定されないが、例えば30質量%~80質量%であってもよく、35質量%~75質量%であってもよく、36質量%~72質量%であってもよい。
【0037】
本発明は、以下の含水性材料の製造方法を含む。
式(1)で表されるグルコナミド基含有モノマーと、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸からなる群から選択される少なくとも1種類以上の親水性モノマーとを、質量比で5/95~20/80で混合してモノマー組成物を得る工程と、
該モノマー組成物を重合して重合体を得る工程と、
該重合体と、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノールから選択される1種以上の溶媒とを混合し、前記重合体を洗浄する工程と、
前記重合体を生理食塩水に浸漬して水和させる工程と、を有する、
含水性材料の製造方法。
【実施例
【0038】
以下、実施例及び比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。まず、実施例及び比較例で用いた成分を以下に示す。
【0039】
グルコナミド基含有モノマー
GAMA:式(1)で表される化合物(2-グルコナミドエチルメタクリレート)
【0040】
式(1)で表される化合物は、以下の方法で合成した。
4つ口フラスコ内で、2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩(シグマアルドリッチ製)23.86gをメタノール260mLに溶解し、30分間窒素ガスの吹込みを行った。この後、D-(+)-グルコノ-1,5-ラクタン(富士フィルム和光純薬製)25.40gとトリエチルアミン(東京化成工業製)19.8mLを4つ口フラスコへ入れ、15時間反応を行った。重合反応後、減圧乾燥によりメタノールを除去した。得られた粉末を2-プロパノールで2回洗浄し、減圧乾燥を行い、粉末を得た。収量は24.89g(収率66.4%)であった。これを式(1)で表される化合物とした。NMR(DO)の測定結果を以下に示す。
NMR(DO):6.0ppm(s,1H,=C ),5.5ppm(s,1H,=C ),4.1-4.2ppm(m,3H),3.9ppm(s,1H),3.3-3.7ppm(m,6H),1.7ppm(s,3H,CH3)
【0041】
親水性モノマー
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
NVP:N-ビニルピロリドン
MA:メタクリル酸
MMA:メタクリル酸メチル
【0042】
架橋成分
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
【0043】
溶媒
IEW:イオン交換水
【0044】
重合開始剤
AIBN:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル
【0045】
実施例及び比較例の含水性材料について、以下の項目を評価した。
【0046】
含水性材料の機械的強度
山電社製BAS-3305(W)破断強度解析装置を用い、JIS-K7127に従って含水性材料のモジュラス[MPa]を測定した。詳しくは、幅2mmのサンプルを使用し、200gfのロードセルを用い、クランプ間6mmとして1mm/秒の速度で引張ってモジュラスを測定した。モジュラスが0.2MPa以上1.5MPa未満の場合、機械的強度が良好と判定した。
【0047】
含水性材料の含水率
ISO-18369-4に記載の方法で含水率を測定した。
【0048】
含水性材料の表面親水性(WBUT)
含水性材料の表面親水性を、WBUT(water film break up time)により評価した。詳しくは、ISO生理食塩水中にサンプルを一晩浸漬し、ピンセットで外周部をつまんで水面から引き上げ、水面から引き上げた時から表面の水膜が切れるまでの時間(水膜保持時間)を測定した。水膜が切れた状態は目視により判定した。この測定を3回行い、その平均値を求め、15秒以上の場合を表面親水性が良好と判定した。
【0049】
含水性材料の防汚性(色素吸着量)
含水性材料の防汚性を、色素吸着量試験により評価した。詳しくは、色素であるスーダンブラックB0.002gを50%プロパノール水溶液100mLに溶解させて試験液を調製し、試験液5mLにサンプルを一晩浸漬させ、浸漬前後の試験液の吸光度の差から色素吸着量を算出した。色素吸着量から防汚性を以下基準で評価した。
〇(良好):20μg以下
×(不良):21μg以上
【0050】
実施例1
5質量部のGAMA、94質量部の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、1質量部のジエチレングリコールジビニルエーテル(EGDMA)、及び10質量部のイオン交換水(IEW)を混合し、均一溶解して共重合組成物を得た。各成分の含有割合を表1に示す。なお、表1中の各成分の欄の数値は、各成分の量を質量部で表したものである。
【0051】
上記共重合組成物に0.5質量部のAIBNを添加し、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートシートをスペーサーとして2枚のポリプロピレン板の間に挟みこんだセル内に流し込み、オーブン内に置いた。オーブン内で100℃、2時間、共重合組成物を重合させて重合体を得た。
【0052】
上記重合体をIEWに4時間浸漬し、更に生理食塩水に浸漬して、上記重合体の水和物を作製した。この水和物を各評価試験に適した形状に加工して含水性材料のサンプルを得た。各評価の結果を表1に示す。WBUTは15秒以上、防汚性も良好であったことから、実施例1の含水性材料コンタクトレンズは高い表面親水性及び防汚性を有するゲルであることを確認した。
【0053】
実施例2~7及び比較例1~4
各成分の含有割合を表1及び2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様に、実施例2~7及び比較例1~4の共重合組成物、重合体、及び含水性材料を調製し、評価試験を行った。結果を表1及び2に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1、2から明らかなように、実施例1~7の含水性材料は、グルコナミド基含有モノマー及び親水性モノマーを所定の割合で配合することにより、機械的強度、表面親水性及び防汚性が良好であった。
一方、比較例1~4においては、グルコナミド基含有モノマーを配合していないため、表面親水性、防汚性及び機械的強度のうち少なくとも1つが不良であった。
以上の結果より、本発明の含水性材料は、表面親水性、防汚性及び機械的強度に優れているため、コンタクトレンズとして好適であることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
表面親水性及び防汚性に優れた含水性材料を得ることができる重合体を提供することができる。