IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三浦工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電力管理装置 図1
  • 特許-電力管理装置 図2
  • 特許-電力管理装置 図3
  • 特許-電力管理装置 図4
  • 特許-電力管理装置 図5
  • 特許-電力管理装置 図6
  • 特許-電力管理装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】電力管理装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20240520BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20240520BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240520BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20240520BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240520BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H02J3/38 170
C01B3/02 H
H01M8/04 Z
H02J3/14
H02J13/00 311T
H02J15/00 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024514731
(86)(22)【出願日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2023033092
【審査請求日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2022145987
(32)【優先日】2022-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 靖国
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-170097(JP,A)
【文献】特開2020-058168(JP,A)
【文献】特開2021-191143(JP,A)
【文献】国際公開第2020/179849(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/121436(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
C01B 3/02
H01M 8/04
H02J 3/14
H02J 13/00
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統からの電力に基づいて水素を生成する水素生成装置の運転状態を取得する運転状態取得部と、
前記水素生成装置で生成された水素を貯蔵する貯蔵装置の水素貯蔵率を取得する水素貯蔵率取得部と、
前記運転状態と前記水素貯蔵率とに基づいて、デマンドレスポンスの要請に応じるか否かを判定する判定部と、
将来における前記デマンドレスポンスの要請が事前取得され、前記判定部が前記デマンドレスポンスの要請に応じると判定した場合、実際に前記デマンドレスポンスの要請が取得される時点までの間に、前記水素貯蔵率が前記デマンドレスポンスに基づいて決定される目標値になるように、前記水素生成装置及び前記貯蔵装置の水素を消費する水素消費装置の少なくとも一方を制御する運転制御部と、を備える、
電力管理装置。
【請求項2】
前記運転制御部は、
事前取得された前記デマンドレスポンスの要請が上げデマンドレスポンスの要請である場合、前記目標値を第1目標値とし、
事前取得された前記デマンドレスポンスの要請が下げデマンドレスポンスの要請である場合、前記目標値を前記第1目標値よりも高い第2目標値とする、
請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項3】
前記運転制御部は、
事前取得された前記デマンドレスポンスの要請が前記上げデマンドレスポンスの要請である場合、前記水素生成装置による前記水素の生成量が少なくなるように又は前記水素消費装置による前記水素の消費量が多くなるように制御し、
事前取得された前記デマンドレスポンスの要請が前記下げデマンドレスポンスの要請である場合、前記水素生成装置による前記水素の生成量が多くなるように又は前記水素消費装置による前記水素の消費量が少なくなるように制御する、
請求項2に記載の電力管理装置。
【請求項4】
前記運転状態は、前記水素の生成量が定格値である定格出力運転状態と、前記水素の生成量が前記定格値よりも小さい規定値である部分出力運転状態と、前記水素を生成せずに前記電力を消費するホットスタンバイ状態と、を含み、
前記判定部は、
前記上げデマンドレスポンスの要請が事前取得された後、前記運転状態が前記ホットスタンバイ状態又は前記部分出力運転状態であり、且つ、前記水素貯蔵率が第1閾値以下であると判定した場合、前記上げデマンドレスポンスの要請に応じると判定し、
前記下げデマンドレスポンスの要請が事前取得された後、前記運転状態が前記定格出力運転状態又は前記部分出力運転状態であり、且つ、前記水素貯蔵率が第2閾値以上であると判定した場合、前記下げデマンドレスポンスの要請に応じると判定する、
請求項3に記載の電力管理装置。
【請求項5】
前記水素消費装置は、前記貯蔵装置からの水素を燃焼して蒸気を発生する水素ボイラであり、
前記水素ボイラと化石燃料を燃焼して蒸気を発生する化石燃料ボイラとが蒸気集合ヘッダに接続され、
前記蒸気集合ヘッダからの蒸気が蒸気使用機器により使用され、
前記運転制御部は、前記水素貯蔵率が前記目標値になるように前記水素生成装置及び前記水素ボイラの少なくとも一方を制御し、且つ、前記蒸気集合ヘッダの圧力が目標圧力になるように前記水素ボイラ及び前記化石燃料ボイラの少なくとも一方を制御する、
請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項6】
前記運転制御部は、前記デマンドレスポンスの要請が事前取得され、前記判定部が前記デマンドレスポンスの要請に応じると判定した場合、前記蒸気集合ヘッダの圧力が目標圧力になるように前記水素ボイラに優先して前記化石燃料ボイラを制御する、
請求項5に記載の電力管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年9月14日に日本に出願された特願2022-145987号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
本開示は、電力管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、夏場及び冬場において、供給電力に対して需要電力が高く、電力不足になることが多い。また、近年の日本の電源構成の割合の傾向として、太陽光発電の割合が増加している。太陽光発電は、二酸化炭素を排出しないメリットがあるものの、天候の影響を受け易く系統電力の変動に弱いというデメリットがある。つまり、太陽光発電で発電した電力を売電していると、系統電力の波形が変動した際、系統問題が起こり易くなり、近年の売電価格と固定価格買い取り制度(FIT制度)との関係から、需要者にとって売電のメリットが低くなっている。一般的に、系統電力が不足すると周波数が低下し、系統電力が過多になると周波数が上昇する。上記に挙げた問題点により、近年、電力供給過多及び電力供給不足が起こりやすくなっている。この問題を解決するために、デマンドレスポンス、という仕組みがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-170097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カーボンニュートラルの実現のために、燃料として化石燃料の代わりに水素を使用することが様々な技術分野において検討されている。最適な電力コストで水素を生成できる技術が要望される。
【0005】
本開示は、最適な電力コストで水素を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、電力系統からの電力に基づいて水素を生成する水素生成装置の運転状態を取得する運転状態取得部と、水素生成装置で生成された水素を貯蔵する貯蔵装置の水素貯蔵率を取得する水素貯蔵率取得部と、運転状態と水素貯蔵率とに基づいて、デマンドレスポンスの要請に応じるか否かを判定する判定部と、を備える、電力管理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、最適な電力コストで水素が生成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る電力管理システムを示す図である。
図2】第1実施形態に係る電力管理装置を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る電力管理方法を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る電力管理装置を示すブロック図である。
図5】第2実施形態に係る電力管理方法を示すフローチャートである。
図6】第3実施形態に係る需要家を示すブロック図である。
図7】第3実施形態に係る電力管理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。
【0011】
<電力管理システム>
図1は、実施形態に係る電力管理システム1を示す図である。電力管理システム1は、アグリゲータ2と、複数の需要家3(3A,3B,3C)と、電力系統4と、通信ネットワーク5とを備える。
【0012】
電力管理システム1においては、アグリゲータ2から需要家3へのデマンドレスポンス(DR:Demand Response)の要請により、電力の需給バランスが図られる。デマンドレスポンスとは、需要家3が保有するエネルギーリソースを制御することにより、電力需要のパターンを変化させることをいう。デマンドレスポンスには、電力需要の増加を要請する上げデマンドレスポンスと、電力需要の抑制を要請する下げデマンドレスポンスとがある。以下の説明において、デマンドレスポンスを適宜、DR、と称し、上げデマンドレスポンスを適宜、上げDR、と称し、下げデマンドレスポンスを適宜、下げDR、と称する。
【0013】
電力系統4は、発電所において発生した電力を需要家3に供給する。アグリゲータ2は、電力会社からの電力需給指令に基づいて、契約している需要家3に、通信ネットワーク5を介してDRを要請する。需要家3は、DRの要請に応じることにより、アグリゲータ2から報酬を受け取る。
【0014】
上述のように、DRとは、需要家3が保有するエネルギーリソースを制御することにより、電力需要のパターンを変化させることをいう。実施形態において、需要家3が保有するエネルギーリソースは、水素生成装置6を含む。水素生成装置6は、電力系統4からの電力に基づいて水素を生成する。水素生成装置6として、アルカリ水電解装置、固体高分子型水電解装置、又は高温水電解装置が例示される。
【0015】
水素生成装置6で生成された水素は、貯蔵装置7に貯蔵される。貯蔵装置7は、タンクを含む。貯蔵装置7に貯蔵されている水素の少なくとも一部は、水素消費装置8に供給される。水素消費装置8は、貯蔵装置7から供給された水素を消費する。実施形態において、水素消費装置8は、燃料として水素を燃焼して蒸気を発生するボイラ(水素炊きボイラ)である。なお、水素消費装置8は、水素を使用して電力を発生する燃料電池でもよい。
【0016】
電力管理システム1は、電力管理装置10を有する。電力管理装置10は、コンピュータシステムを含む。電力管理装置10は、少なくとも水素生成装置6に供給される電力を制御する。電力管理装置10は、水素生成装置6、貯蔵装置7、及び水素消費装置8のそれぞれを制御してもよい。電力管理装置10は、需要家3に保有されてもよいし、需要家3とは別の第三者に保有されてもよい。
【0017】
<電力管理装置>
図2は、実施形態に係る電力管理装置10を示すブロック図である。電力管理装置10は、運転状態取得部11と、水素貯蔵率取得部12と、判定部13とを有する。
【0018】
運転状態取得部11は、水素生成装置6の運転状態を取得する。水素生成装置6の運転状態は、水素の生成量が定格値である定格出力運転状態と、水素の生成量が定格値よりも小さい規定値である部分出力運転状態と、水素を生成せずに電力系統4からの電力を消費するホットスタンバイ状態と、を含む。
【0019】
水素生成装置6がアルカリ水電解装置である場合、アルカリ水電解装置は、セルと、セルの内部に配置されるアノード及びカソードと、アノードとカソードとの間に配置される多孔質材料からなる隔膜とを有する。水電解反応により、アノードにおいて水酸化物イオンから酸素と水とが生成され、カソードにおいて水から水素と水酸化物イオンとが生成される。また、アルカリ水電解装置は、セルの温度を調整するセルヒータ又は電解液の温度を調整する電解液ヒータのような電気ヒータを有する。ホットスタンバイ状態とは、水電解反応は生じていないものの、電気ヒータのような電気機器が作動して電力を消費している状態をいう。
【0020】
水素貯蔵率取得部12は、貯蔵装置7の水素貯蔵率を取得する。貯蔵装置7のタンクの圧力を検出する圧力センサがタンクに設けられている場合、水素貯蔵率取得部12は、圧力センサの検出データに基づいて、水素貯蔵率を取得することができる。
【0021】
判定部13は、水素生成装置6の運転状態と貯蔵装置7の水素貯蔵率とに基づいて、アグリゲータ2からのDRの要請に応じるか否かを判定する。
【0022】
水素生成装置6の電力需要の増加を要請する上げDRの要請があった場合、判定部13は、運転状態がホットスタンバイ状態又は部分出力運転状態であり、且つ、水素貯蔵率が第1閾値以下である場合、上げDRの要請に応じると判定する。第1閾値は、予め定められた値である。一例として、第1閾値は90%である。
【0023】
水素生成装置6の電力需要の抑制を要請する下げDRの要請があった場合、判定部13は、運転状態が定格出力運転状態又は部分出力運転状態であり、且つ、水素貯蔵率が第1閾値よりも小さい第2閾値以上である場合、下げDRの要請に応じると判定する。第2閾値は、予め定められた値である。一例として、第2閾値は20%である。
【0024】
<電力管理方法>
図3は、実施形態に係る電力管理方法を示すフローチャートである。判定部13は、上げDRの要請があるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1において、上げDRの要請がないと判定した場合(ステップS1:No)、判定部13は、下げDRの要請があるか否かを判定する(ステップS2)。
【0025】
ステップS2において、下げDRの要請があると判定した場合(ステップS2:Yes)、判定部13は、水素生成装置6の運転状態が定格出力運転状態又は部分出力運転状態であるか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3において、水素生成装置6の運転状態が定格出力運転状態又は部分出力運転状態であると判定した場合(ステップS3:Yes)、判定部13は、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第2閾値(20%)以上であるか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4において、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第2閾値(20%)以上であると判定した場合(ステップS4:Yes)、判定部13は、下げDRに応じると判定する(ステップS5)。
【0026】
ステップS1において、上げDRの要請があると判定した場合(ステップS1:Yes)、判定部13は、水素生成装置6の運転状態がホットスタンバイ状態又は部分出力運転状態であるか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6において、水素生成装置6の運転状態がホットスタンバイ状態又は部分出力運転状態であると判定した場合(ステップS6:Yes)、判定部13は、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第1閾値(90%)以下であるか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7において、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第1閾値(90%)以下であると判定した場合(ステップS7:Yes)、判定部13は、上げDRに応じると判定する(ステップS8)。
【0027】
ステップS2において、下げDRの要請がないと判定した場合(ステップS2:No)、ステップS3において、水素生成装置6の運転状態が定格出力運転状態又は部分出力運転状態でないと判定した場合(ステップS3:No)、ステップS4において、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第2閾値(20%)以上でないと判定した場合(ステップS4:No)、ステップS6において、水素生成装置6の運転状態がホットスタンバイ状態又は部分出力運転状態でないと判定した場合(ステップS6:No)、ステップS7において、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第1閾値(90%)以下でないと判定した場合(ステップS7:No)、判定部13は、DRの要請に応じないと判定する。電力系統4から水素生成装置6に電力が供給される。水素生成装置6は、電力系統4から供給された電力に基づいて水素を生成する。水素生成装置6で生成された水素は、貯蔵装置7を介して水素消費装置8に供給される。
【0028】
水素貯蔵率が第2閾値よりも小さい第3閾値以下である場合、判定部13は、下げDRの要請に応じないと判定してもよい。第3閾値は、予め定められた値である。一例として、第3閾値は10%である。電力系統4から水素生成装置6に電力が供給される。水素生成装置6は、電力系統4から供給された電力に基づいて水素を生成する。水素生成装置6で生成された水素は、貯蔵装置7を介して水素消費装置8に供給される。
【0029】
<効果>
以上説明したように、実施形態によれば、電力管理装置10は、電力系統4からの電力に基づいて水素を生成する水素生成装置6の運転状態を取得する運転状態取得部11と、水素生成装置6で生成された水素を貯蔵する貯蔵装置7の水素貯蔵率を取得する水素貯蔵率取得部12と、水素生成装置6の運転状態と貯蔵装置7の水素貯蔵率とに基づいて、DRの要請に応じるか否かを判定する判定部13と、を備える。
【0030】
実施形態によれば、水素生成装置6の運転状態と貯蔵装置7の水素貯蔵率とに基づいて、DRの要請に応じるか否かが判定されるので、最適な電力コストで水素が生成される。DRの要請に応じることにより、需要家3は、アグリゲータ2から報酬を受け取ることができる。下げDRの要請に応じることにより、水素生成装置6の電力使用量が抑制される。水素生成装置6の運転状態と貯蔵装置7の水素貯蔵率とに基づいて、DRの要請に応じることが不適切である状況においては、DRの要請に応じないことにより、水素が適正に生成される。これにより、水素消費装置8は、水素を使用して安定して駆動することができる。
【0031】
水素生成装置6の電力需要の増加を要請する上げDRの要請があった場合、判定部13は、水素生成装置6の運転状態がホットスタンバイ状態又は部分出力運転状態であり、且つ、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第1閾値(90%)以下である場合、上げDRの要請に応じると判定する。水素生成装置6の運転状態がホットスタンバイ状態又は部分出力運転状態である場合、水素生成装置6の電力需要を増加させることができるので、上げDRの要請に応じることができる。貯蔵装置7の水素貯蔵率が第1閾値(90%)以下である場合、水素生成装置6の電力需要が増加して水素の発生量が増加しても、貯蔵装置7は、水素生成装置6において生成された水素を貯蔵することができる。
【0032】
水素生成装置6の電力需要の抑制を要請する下げDRの要請があった場合、判定部13は、水素生成装置6の運転状態が定格出力運転状態又は部分出力運転状態であり、且つ、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第2閾値(20%)以上である場合、下げDRに応じると判定する。水素生成装置6の運転状態が定格出力運転状態又は部分出力運転状態である場合、水素生成装置6の電力需要を減少させることができるので、下げDRの要請に応じることができる。貯蔵装置7の水素貯蔵率が第2閾値(20%)以上である場合、水素生成装置6の電力需要が減少して水素の発生量が減少しても、貯蔵装置7は、水素消費装置8に水素を供給することができる。
【0033】
貯蔵装置7の水素貯蔵率が第3閾値(10%)以下である場合、判定部13は、下げDRの要請に応じないと判定してもよい。貯蔵装置7の水素貯蔵率が少ない場合に下げDRの要請に応じてしまうと、水素生成装置6における水素の発生量が減少又は無くなった場合、貯蔵装置7から水素消費装置8に水素を供給することが困難となる。貯蔵装置7の水素貯蔵率が第3閾値(10%)以下である場合、下げDRの要請に応じず、電力系統4から水素生成装置6に電力が供給されることにより、水素生成装置6で生成された水素が貯蔵装置7を介して水素消費装置8に供給される。これにより、水素消費装置8の駆動が停止してしまうことが抑制される。
【0034】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その構成要素の説明を簡略又は省略する。
【0035】
電力管理装置10Bは、実際にDRの要請を取得する前に、将来におけるDRの要請を事前取得することができる。将来におけるDRの要請を事前取得することは、DRの要請を予測すること及びDRの要請の事前通知を取得することの少なくとも一方を含む。
【0036】
将来におけるDRの要請は、様々な予測要因に基づいて予測可能である。将来におけるDRの要請を予測するための予測要因として、現在の発電所の発電能力、現在の電力の需給バランス、季節、時間帯、及び過去におけるDRの要請の実績が例示される。また、アグリゲータ2が需要家3にDRの要請を事前通知する場合がある。このように、電力管理装置10Bは、実際にDRの要請を取得する前に、将来におけるDRの要請を事前取得することができる。
【0037】
実施形態において、電力管理装置10Bは、DRの要請を事前取得した場合、DRの要請に応じることができるように、実際にDRの要請を取得する時点までの間に、貯蔵装置7の水素貯蔵率を予め調整する。電力管理装置10Bは、上げDRの要請を事前取得した場合、上げDRの要請に応じることができるように、実際に上げDRの要請を取得する時点までの間に、貯蔵装置7の水素貯蔵率を予め減らしておく。電力管理装置10Bは、下げDRの要請を事前取得した場合、下げDRの要請に応じることができるように、実際に下げDRの要請が有る時点までの間に、貯蔵装置7の水素貯蔵率を予め増やしておく。
【0038】
<電力管理装置>
図4は、実施形態に係る電力管理装置10Bを示すブロック図である。電力管理装置10Bは、運転状態取得部11と、水素貯蔵率取得部12と、判定部13と、要請取得部14と、運転制御部15とを有する。
【0039】
上述の第1実施形態と同様、運転状態取得部11は、水素生成装置6の運転状態を取得する。水素貯蔵率取得部12は、貯蔵装置7の水素貯蔵率を取得する。判定部13は、水素生成装置6の運転状態と貯蔵装置7の水素貯蔵率とに基づいて、アグリゲータ2からのDRの要請に応じるか否かを判定する。
【0040】
要請取得部14は、実際にDRの要請が取得される前に、将来におけるDRの要請を事前取得する。上述のように、DRの要請を事前取得することは、DRの要請を予測すること及びDRの要請の事前通知を取得することの少なくとも一方を含む。実施形態において、要請取得部14は、上述の予測要因に基づいて、DRの要請を予測する。
【0041】
以下の説明においては、実際にDRの要請が取得される前に、電力管理装置10が将来におけるDRの要請を予測した時点を適宜、予測時点、と称する。また、電力管理装置10が実際にDRの要請を取得した時点を適宜、取得時点、と称する。
【0042】
運転制御部15は、水素生成装置6及び水素消費装置8の少なくとも一方を制御する。水素生成装置6は、貯蔵装置7に貯蔵する水素を生成する。水素消費装置8は、貯蔵装置7の水素を消費する。運転制御部15は、将来におけるDRの要請が予測(事前取得)され、判定部13がDRの要請に応じると判定した場合、実際にDRの要請が取得される取得時点までの間に、貯蔵装置7の水素貯蔵率がDRに基づいて決定される目標値になるように、水素生成装置6及び水素消費装置8の少なくとも一方を制御する。
【0043】
運転制御部15は、予測されたDRの要請が上げDRの要請である場合、上げDRの要請の取得時点までの間に、貯蔵装置7の水素貯蔵率の目標値を第1目標値とする。運転制御部15は、予測されたDRの要請が下げDRの要請である場合、下げDRの要請の取得時点までの間に、貯蔵装置7の水素貯蔵率の目標値を第1目標値よりも高い第2目標値とする。
【0044】
第1目標値は、上述の第1実施形態において説明した第1閾値(90%)よりも低い値である。第2目標値は、上述の第1実施形態において説明した第2閾値(20%)よりも高い値である。第1目標値は、例えば20%以上55%以下の任意の値でもよい。第2目標値は、例えば55%以上90%以下の任意の値でもよい。
【0045】
すなわち、運転制御部15は、予測されたDRの要請が上げDRの要請である場合、上げDRの要請の取得時点までの間に、貯蔵装置7の水素貯蔵率が減るように、水素生成装置6及び水素消費装置8の少なくとも一方を制御する。運転制御部15は、上げDRの要請の取得時点までの間に、水素生成装置6による水素の生成量が少なくなるように水素生成装置6を制御したり、水素消費装置8による水素の消費量が多くなるように水素消費装置8を制御したりする。
【0046】
運転制御部15は、予測されたDRの要請が下げDRの要請である場合、下げDRの要請の取得時点までの間に、貯蔵装置7の水素貯蔵率が増えるように、水素生成装置6及び水素消費装置8の少なくとも一方を制御する。運転制御部15は、下げDRの要請の取得時点までの間に、水素生成装置6による水素の生成量が多くなるように水素生成装置6を制御したり、水素消費装置8による水素の消費量が少なくなるように水素消費装置8を制御したりする。
【0047】
<電力管理方法>
図5は、実施形態に係る電力管理方法を示すフローチャートである。
【0048】
要請取得部14は、実際にDRの要請が取得される前に、DRの要請を予測する。予測されたDRの要請が上げDRの要請である場合(ステップS11)、上述の第1実施形態において説明したステップS6からステップS8の処理を含む上げDR応動判定処理が実施される。すなわち、判定部13は、上げDRの要請が予測された後、水素生成装置6の運転状態がホットスタンバイ状態又は部分出力運転状態であり、且つ、水素貯蔵率が第1閾値(90%)以下である第1条件を満足する否かを判定する(ステップS12)。
【0049】
ステップS12において、第1条件を満足すると判定した場合、判定部13は、上げDRの要請に応じると判定する(ステップS13)。
【0050】
上げDRの要請に応じる場合、運転制御部15は、上げDRの要請の取得時点までの間に、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第1目標値になるように、水素生成装置6及び水素消費装置8の少なくとも一方を制御する(ステップS14)。
【0051】
予測されたDRの要請が下げDRの要請である場合(ステップS15)、上述の第1実施形態において説明したステップS3からステップS5の処理を含む下げDR応動判定処理が実施される。すなわち、判定部13は、下げDRの要請が予測された後、水素生成装置6の運転状態が定格出力運転状態又は部分出力運転状態であり、且つ、水素貯蔵率が第2閾値(20%)以上である第2条件を満たすか否かを判定する(ステップS16)。
【0052】
ステップS16において、第2条件を満足すると判定した場合、判定部13は、下げDRの要請に応じると判定する(ステップS17)。
【0053】
下げDRの要請に応じる場合、運転制御部15は、下げDRの要請の取得時点までの間に、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第2目標値になるように、水素生成装置6及び水素消費装置8の少なくとも一方を制御する(ステップS18)。
【0054】
<効果>
以上説明したように、実施形態によれば、電力管理装置10Bは、実際にDRの要請を取得する前に、将来におけるDRの要請の有無を事前取得する。DRの要請が事前取得されるので、電力管理装置10Bは、実際にDRの要請が有ったときに、DRの要請に応じることができるように、貯蔵装置7の水素貯蔵率を予め調整することができる。
【0055】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その構成要素の説明を簡略又は省略する。
【0056】
<電力管理装置>
図6は、実施形態に係る需要家3Cを示すブロック図である。実施形態において、需要家3Cは、水素消費装置として、水素ボイラ9を保有する。また、需要家3Cは、化石燃料ボイラ16と、蒸気集合ヘッダ17と、蒸気使用機器18とを保有する。
【0057】
水素ボイラ9の燃料は、水素である。化石燃料ボイラ16の燃料は、化石燃料である。水素ボイラ9は、貯蔵装置7からの水素を燃焼して蒸気を発生する。化石燃料ボイラ16は、化石燃料を燃焼して蒸気を発生する。化石燃料として、石油、石炭、及び液化天然ガス(LNG)が例示される。
【0058】
水素ボイラ9と化石燃料ボイラ16とが蒸気集合ヘッダ17に接続される。水素ボイラ9において発生した蒸気及び化石燃料ボイラ16において発生した蒸気は、蒸気集合ヘッダ17に供給される。蒸気使用機器18は、蒸気集合ヘッダ17からの蒸気を使用する。
【0059】
蒸気集合ヘッダ17に圧力センサ19が配置される。圧力センサ19は、蒸気集合ヘッダ17の圧力を検出する。圧力センサ19の検出データは、電力管理装置10Bに送信される。
【0060】
上述の第2実施形態と同様、電力管理装置10Bは、運転状態取得部11と、水素貯蔵率取得部12と、判定部13と、要請取得部14と、運転制御部15とを有する。実施形態において、運転制御部15は、水素生成装置6、水素ボイラ9、及び化石燃料ボイラ16を制御する。
【0061】
運転制御部15は、貯蔵装置7の水素貯蔵率がDRに基づいて決定される目標値になるように水素生成装置6及び水素ボイラ9の少なくとも一方を制御し、且つ、蒸気集合ヘッダ17の圧力が目標圧力になるように、水素ボイラ9及び化石燃料ボイラ16の少なくとも一方の燃焼量を制御する。
【0062】
すなわち、貯蔵装置7の水素貯蔵率を目標値にするために、水素生成装置6及び水素ボイラ9の一方又は両方が制御される。蒸気集合ヘッダ17の圧力を目標圧力にするために、水素ボイラ9及び化石燃料ボイラ16の一方又は両方が制御される。
【0063】
蒸気集合ヘッダ17の目標圧力は、目標とする蒸気集合ヘッダ17の圧力値、及び上限圧力値と下限圧力値との間の圧力範囲の一方又は両方を含む概念である。
【0064】
燃焼量[kcal/h]とは、ボイラの燃焼室において単位時間当たりに発生する熱量をいう。ボイラのバーナに供給される燃料流量が多いほど、燃焼量は高くなる。バーナに供給される燃料流量が少ないほど、燃焼量は低くなる。燃焼量が高いほど、ボイラによる蒸気の生成量は多くなり、ボイラから蒸気集合ヘッダ17への蒸気供給量が多くなる。燃焼量が低いほど、ボイラによる蒸気の生成量は少なくなり、ボイラから蒸気集合ヘッダ17への蒸気供給量が少なくなる。
【0065】
蒸気集合ヘッダ17の圧力が目標圧力となるように、蒸気集合ヘッダ17の圧力とボイラの必要燃焼量との関係を示す相関データが予め求められている。ボイラの必要燃焼量とは、蒸気集合ヘッダ17を目標圧力にするためにボイラに要求される燃焼量をいう。ボイラの燃焼量が高い場合、ボイラから蒸気集合ヘッダ17への蒸気供給量が多くなる。ボイラの燃焼量が低い場合、ボイラから蒸気集合ヘッダ17への蒸気供給量が少なくなる。
【0066】
蒸気集合ヘッダ17に複数のボイラ(水素ボイラ9及び化石燃料ボイラ16)が接続されている場合、蒸気集合ヘッダ17の圧力は、一定の圧力値又は一定の圧力範囲になるように制御される。ボイラから蒸気集合ヘッダ17への蒸気供給量が変動したり、蒸気使用機器18の蒸気使用量が変動したりした場合、蒸気集合ヘッダ17の実際の圧力と目標圧力との差が大きくなる可能性がある。蒸気集合ヘッダ17の実際の圧力と目標圧力との差が大きくなった場合、運転制御部15は、蒸気集合ヘッダ17の実際の圧力(圧力センサ19の検出データ)と上述の相関データとに基づいて、蒸気集合ヘッダ17の実際の圧力と目標圧力との差が小さくなるように、ボイラの必要燃焼量を決定する。運転制御部15は、決定した必要燃焼量に基づいて、ボイラの燃焼量を変更する制御を実施する。
【0067】
上述の第2実施形態と同様、上げDRの要請が予測され、判定部13が上げDRの要請に応じると判定した場合、運転制御部15は、上げDRの要請の取得時点までの間に、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第1目標値になるように、水素生成装置6による水素の生成量を少なくする制御、及び水素ボイラ9による水素の消費量を多くする制御の一方又は両方を実施する。
【0068】
下げDRの要請が予測され、判定部13が下げDRの要請に応じると判定した場合、運転制御部15は、下げDRの要請の取得時点までの間に、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第2目標値になるように、水素生成装置6による水素の生成量を多くする制御、及び水素ボイラ9による水素の消費量を少なくする制御の一方又は両方を実施する。
【0069】
上げDRの要請が予測され、判定部13が上げDRの要請に応じると判定した場合、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第1目標値になるように水素ボイラ9による水素の消費量を多くすると、水素ボイラ9の燃焼量が高くなるため、水素ボイラ9から蒸気集合ヘッダ17への蒸気供給量が多くなる。下げDRの要請が予測され、判定部13が下げDRの要請に応じると判定した場合、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第1目標値よりも高い第2目標値になるように水素ボイラ9による水素の消費量を少なくすると、水素ボイラ9の燃焼量が低くなるため、水素ボイラ9から蒸気集合ヘッダ17への蒸気供給量が少なくなる。
【0070】
このように、貯蔵装置7の水素貯蔵率が目標値になるように水素ボイラ9の燃焼量が制御されると、蒸気集合ヘッダ17の圧力が変動することになる。そのため、実施形態においては、蒸気集合ヘッダ17の実際の圧力と目標圧力との差があれば、蒸気集合ヘッダ17の実際の圧力を目標圧力にするために、運転制御部15は、専ら化石燃料ボイラ16の燃焼量を制御する。すなわち、運転制御部15は、DRの要請が予測され、判定部13がDRの要請に応じると判定した場合、蒸気集合ヘッダ17の圧力が目標圧力になるように、水素ボイラ9に優先して化石燃料ボイラ16を制御する。
【0071】
<上げDRの要請が予測される場合>
上げDRの要請が予測される場合、実際に上げDRの要請を取得する取得時点までに、貯蔵装置7の水素貯蔵率を減らす(第1目標値にする)必要がある。
【0072】
上げDRの要請が予測され、貯蔵装置7の水素貯蔵率が減るように(第1目標値になるように)、水素生成装置6による水素の生成量及び水素ボイラ9の燃焼量の一方又は両方が設定された後、上げDRの要請の予測時点から取得時点までの間に蒸気集合ヘッダ17の圧力が目標圧力よりも低くなって、ボイラの必要燃焼量が増えた場合、運転制御部15は、水素ボイラ9の燃焼量を変更せず、必要燃焼量が得られるように、化石燃料ボイラ16の燃焼量を高くする制御を行う。このように、水素ボイラ9の制御に優先して、化石燃料ボイラ16を制御するので、運転制御部15は、水素貯蔵率を早く第1目標値にすることができるとともに、蒸気集合ヘッダ17の圧力を目標圧力に近付けることができる。なお、水素貯蔵率は、上げDRの要請の取得時点までに第1目標値になっていればよい。そのため、上げDRの要請の予測時点から取得時点までの期間が長く、化石燃料ボイラ16を最大燃焼量に制御してもボイラの必要燃焼量にならない場合、運転制御部15は、その期間において、水素ボイラ9の燃焼量を高くしてもよい。
【0073】
上げDRの要請が予測され、貯蔵装置7の水素貯蔵率が減るように(第1目標値になるように)、水素生成装置6による水素の生成量及び水素ボイラ9の燃焼量の一方又は両方が設定された後、上げDRの要請の予測時点から取得時点までの間に蒸気集合ヘッダ17の圧力が目標圧力よりも高くなってボイラの必要燃焼量が減った場合、運転制御部15は、水素ボイラ9の燃焼量を変更せず、必要燃焼量が得られるように、化石燃料ボイラ16の燃焼量を低くする制御を行う。このように、水素ボイラ9の制御に優先して、化石燃料ボイラ16を制御するので、運転制御部15は、水素貯蔵率を早く第1目標値にすることができるとともに、蒸気集合ヘッダ17の圧力を目標圧力に近付けることができる。なお、水素貯蔵率は、上げDRの要請の取得時点までに第1目標値になっていればよい。そのため、上げDRの要請の予測時点から取得時点までの期間が長く、化石燃料ボイラ16を停止してもボイラの必要燃焼量にならない場合、運転制御部15は、その期間において、水素ボイラ9の燃焼量を低くしてもよい。
【0074】
<下げDRの要請が予測される場合>
下げDRの要請が予測される場合、実際に下げDRの要請を取得する取得時点までに、貯蔵装置7の水素貯蔵率を増やす(第2目標値にする)必要がある。
【0075】
下げDRの要請が予測され、貯蔵装置7の水素貯蔵率が増えるように(第2目標値になるように)、水素生成装置6による水素の生成量及び水素ボイラ9の燃焼量の一方又は両方が設定された後、下げDRの要請の予測時点から取得時点までの間に蒸気集合ヘッダ17の圧力が目標圧力よりも低くなってボイラの必要燃焼量が増えた場合、運転制御部15は、水素ボイラ9の燃焼量を変更せず、必要燃焼量が得られるように、化石燃料ボイラ16の燃焼量を高くする制御を行う。このように、水素ボイラ9の制御に優先して、化石燃料ボイラ16を制御するので、運転制御部15は、水素貯蔵率を早く第2目標値にすることができるとともに、蒸気集合ヘッダ17の圧力を目標圧力に近付けることができる。なお、水素貯蔵率は、下げDRの要請の取得時点までに第2目標値になっていればよい。そのため、下げDRの要請の予測時点から取得時点までの期間が長く、化石燃料ボイラ16を最大燃焼量に制御してもボイラの必要燃焼量にならない場合、運転制御部15は、その期間において、水素ボイラ9の燃焼量を高くしてもよい。
【0076】
下げDRの要請が予測され、貯蔵装置7の水素貯蔵率が増えるように(第2目標値になるように)、水素生成装置6による水素の生成量及び水素ボイラ9の燃焼量の一方又は両方が設定された後、下げDRの要請の予測時点から取得時点までの間に蒸気集合ヘッダ17の圧力が目標圧力より高くなってボイラの必要燃焼量が減った場合、運転制御部15は、水素ボイラ9の燃焼量を変更せず、必要燃焼量が得られるように、化石燃料ボイラ16の燃焼量を低くする制御を行う。このように、水素ボイラ9の制御に優先して、化石燃料ボイラ16を制御するので、運転制御部15は、水素貯蔵率を早く第2目標値にすることができるとともに、蒸気集合ヘッダ17の圧力を目標圧力に近付けることができる。なお、水素貯蔵率は、下げDRの要請の取得時点までに第2目標値になっていればよい。そのため、下げDRの要請の予測時点から取得時点までの期間が長く、化石燃料ボイラ16を停止してもボイラの必要燃焼量にならない場合、運転制御部15は、その期間において、水素ボイラ9の燃焼量を低くしてもよい。
【0077】
<電力管理方法>
図7は、実施形態に係る電力管理方法を示すフローチャートである。
【0078】
要請取得部14は、実際にDRの要請が取得される前に、DRの要請を予測する。予測されたDRの要請が上げDRの要請である場合(ステップS21)、上述の第1実施形態において説明したステップS6からステップS8の処理を含む上げDR応動判定処理が実施される。すなわち、判定部13は、上げDRの要請が予測された後、水素生成装置6の運転状態がホットスタンバイ状態又は部分出力運転状態であり、且つ、水素貯蔵率が第1閾値(90%)以下である第1条件を満足する否かを判定する。また、実施形態において、判定部13は、水素ボイラ9の燃料量が予め定められている第4閾値以上である第3条件を満足するか否かを判定する(ステップS22)。
【0079】
ステップS22において、第1条件及び第3条件を満足すると判定した場合、判定部13は、上げDRの要請に応じると判定する(ステップS23)。
【0080】
上げDRの要請に応じる場合、運転制御部15は、上げDRの要請の取得時点までの間に、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第1目標値になるように、水素生成装置6及び水素消費装置8の少なくとも一方を制御する(ステップS24)。
【0081】
運転制御部15は、圧力センサ19の検出データと上述の相関データとに基づいて、蒸気集合ヘッダ17の圧力が目標圧力になるように、水素ボイラ9の燃焼量を変更することなく、化石燃料ボイラ16の燃焼量を変更する(ステップS25)。
【0082】
予測されたDRの要請が下げDRの要請である場合(ステップS26)、上述の第1実施形態において説明したステップS3からステップS5の処理を含む下げDR応動判定処理が実施される。すなわち、判定部13は、下げDRの要請が予測された後、水素生成装置6の運転状態が定格出力運転状態又は部分出力運転状態であり、且つ、水素貯蔵率が第2閾値(20%)以上である第2条件を満たすか否かを判定する。また、実施形態において、判定部13は、水素ボイラ9の燃料量が予め定められている第5閾値以下である第4条件を満足するか否かを判定する(ステップS27)。第5閾値は、第4閾値よりも小さい値である。
【0083】
ステップS27において、第2条件及び第4条件を満足すると判定した場合、判定部13は、下げDRの要請に応じると判定する(ステップS28)。
【0084】
下げDRの要請に応じる場合、運転制御部15は、下げDRの要請の取得時点までの間に、貯蔵装置7の水素貯蔵率が第2目標値になるように、水素生成装置6及び水素消費装置8の少なくとも一方を制御する(ステップS29)。
【0085】
運転制御部15は、圧力センサ19の検出データと上述の相関データとに基づいて、蒸気集合ヘッダ17の圧力が目標圧力になるように、水素ボイラ9の燃焼量を変更することなく、化石燃料ボイラ16の燃焼量を変更する(ステップS25)。
【0086】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本開示は、SDGs(Sustainable Development Goals)の目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の実現に貢献する事項を含む。
【符号の説明】
【0087】
1…電力管理システム、2…アグリゲータ、3…需要家、3C…需要家、4…電力系統、5…通信ネットワーク、6…水素生成装置、7…貯蔵装置、8…水素消費装置、9…水素ボイラ、10…電力管理装置、10B…電力管理装置、11…運転状態取得部、12…水素貯蔵率取得部、13…判定部、14…要請取得部、15…運転制御部、16…化石燃料ボイラ、17…蒸気集合ヘッダ、18…蒸気使用機器、19…圧力センサ。

【要約】
電力管理装置10は、電力系統4からの電力に基づいて水素を生成する水素生成装置6の運転状態を取得する運転状態取得部11と、水素生成装置6で生成された水素を貯蔵する貯蔵装置7の水素貯蔵率を取得する水素貯蔵率取得部12と、運転状態と水素貯蔵率とに基づいて、デマンドレスポンスの要請に応じるか否かを判定する判定部13と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7