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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】組換えタンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/31 20060101AFI20240520BHJP
   C07K 14/31 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 15/70 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C12N15/31 ZNA
C07K14/31
C12N1/21
C12N15/70 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019564995
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2018063435
(87)【国際公開番号】W WO2018215503
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-04-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】1708277.7
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516105833
【氏名又は名称】サイティバ・バイオプロセス・アールアンドディ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】マッツ・アンデル
(72)【発明者】
【氏名】マグヌス・バーリマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ビヨルクマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨアキム・ガーリ
(72)【発明者】
【氏名】グスタフ・ロドリーゴ
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】松本 淳
【審判官】高堀 栄二
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus(JDreamIII)
Registry/CAPlus(STN)
MEDLINE/BIOSIS/CAPlus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)プロテインAに由来する1つ又は複数のFc結合性ドメインを含有する免疫グロブリン結合性ポリペプチド、並びに前記免疫グロブリン結合性ポリペプチドのN末端に連結された、8~24個のアミノ酸残基からなり、及び前記免疫グロブリン結合性ポリペプチドのシグナルペプチド切断部位とN末端近位構造ユニットとの間のアミノ酸残基の数が14~24個であるような長さを有するN末端スペーサーを含む組換えタンパク質であって、前記N末端近位構造ユニットが、αヘリックスであり、
前記N末端スペーサーが、配列番号16~18、29~30、33~40、43~45、及び47からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、又はそれにより規定される、組換えタンパク質。
【請求項2】
前記N末端スペーサーが、リジン及びアルギニンからなる群から選択される多くとも2個のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項3】
前記Fc結合性ドメインが、アルカリ安定化Fc結合性ドメインである、請求項1又は2に記載の組換えタンパク質。
【請求項4】
前記免疫グロブリン結合性ポリペプチドが、少なくとも4つのFc結合性ドメインの多量体を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項5】
前記免疫グロブリン結合性ポリペプチドが、配列番号1~13及び48~93からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項6】
前記N末端スペーサーが、アルカリ安定であり、並びに/又は、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、リジン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基からなる、請求項1から5のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組換えタンパク質をコードする核酸分子であって、前記核酸分子が、5'から3'の方向に以下のエレメント:
a) 誘導性又は構成的プロモーターDNA配列;
b) シグナルペプチドをコードするDNA配列;
c) N末端スペーサーをコードするDNA配列;及び
d)疫グロブリン結合性ポリペプチドをコードするDNA配列
を含み、前記エレメントが、作動可能に連結されている、核酸分子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の組換えタンパク質を発現し、グラム陰性細胞の細菌ペリプラズムへ前記組換えタンパク質を分泌するクローニングベクターであって、前記クローニングベクターが、請求項7に記載の核酸分子を含む、クローニングベクター。
【請求項9】
請求項8に記載のクローニングベクターにより形質転換される、グラム陰性細菌。
【請求項10】
大腸菌(Escherichia coli)と同定される、請求項9に記載のグラム陰性細菌。
【請求項11】
大腸菌K12又は大腸菌K12-017と同定される、請求項10に記載のグラム陰性細菌。
【請求項12】
支持体に共有結合的に連結された、請求項1から6のいずれか一項に記載の組換えタンパク質を含む分離マトリックス。
【請求項13】
前記支持体が、多孔性粒子を含む、請求項12に記載の分離マトリックス。
【請求項14】
前記支持体が、架橋多糖を含む多孔性粒子を含む、請求項13に記載の分離マトリックス。
【請求項15】
前記分離マトリックスが、アルカリ安定である、請求項12から14のいずれか一項に記載の分離マトリックス。
【請求項16】
前記組換えタンパク質が、免疫グロブリン結合性ポリペプチドを含み、22+/-2℃での0.5M NaOH中における24時間のインキュベーション時間後の前記マトリックスのIgG容量が、前記インキュベーション前のIgG容量の少なくとも80%である、請求項15に記載の分離マトリックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えタンパク質、特に、大腸菌(Escherichia coli(E. coli))等のグラム陰性細菌において発現した組換えタンパク質に関する。本発明はまた、組換えタンパク質の発現のための核酸、ベクター、及びグラム陰性細菌、加えて、共有結合的に連結された組換えタンパク質リガンドを有する分離マトリックス、及びそのようなマトリックス上で免疫グロブリンを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大腸菌(E. coli)における異種タンパク質の発現は、一般的に、実験室規模及び商業的規模での組換えタンパク質について用いられる。分泌を用いる大腸菌での発現は、一般的に、細胞質とペリプラズムを分離する内膜を越えての、産生されたタンパク質の輸送を意味する。ペリプラズムへの分泌により、タンパク質はまた、頻繁に細胞外培地へ漏出する(Mergulhaoら、Biotech Adv 23、177~202頁、2005)。分泌は、細胞質発現と比較して、正しいタンパク質フォールディング、正しいN末端プロセシング、下流処理の単純化、及び封入体への凝集の防止を促進する等の多くの利点を有する。しかしながら、全てのタンパク質がペリプラズムにおける可溶型での発現に成功しているとは言えない。起こり得る問題の一部は、分泌の不足、及びシグナルペプチドのプロセシングがないこと、又は不正確なプロセシングである。不十分な分泌に関する問題を有するタンパク質の特定の例は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のプロテインAの天然又は変異型Fc結合ドメインB又はCに基づいた免疫グロブリン結合体の発現においてである(L Abrahmsenら、EMBO J 4(13B)、3901~3906頁、1985)。そのような免疫グロブリン結合体は一般的に、現代の医薬品の主要なカテゴリーである、モノクローナル抗体のアフィニティークロマトグラフィー分離におけるリガンドとして用いられる。
【0003】
タンパク質発現は、翻訳機構を引きつけるリボソーム結合部位(RBS)、続いて、タンパク質のペリプラズムへの輸送を促進しているシグナルペプチド配列が続く、メッセンジャーリボヌクレオチド酸(ribonucleotide acid)(mRNA)の転写を開始するプロモーター配列に依存する。成熟タンパク質は、シグナルペプチド後にクローニングされる場合が多く、成熟タンパク質は、膜を通過する時、シグナルペプチダーゼによりシグナルペプチドから切り離される。しかしながら、シグナルペプチドの後に構築物をクローニングする時の問題は、制限酵素が、そのDNAを切断するのに特定の配列を必要とする場合が多いことであり、これは、シグナルペプチド配列の後にクローニング跡を残す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】US 8,329,860
【文献】US 8,754,196
【文献】US 9,040,661
【文献】US 9,403,883
【文献】JP 2006304633A
【文献】US 8,674,073
【文献】US 2010/0221844
【文献】US 2012/0208234
【文献】US 9,051,375
【文献】US 2014/0031522
【文献】US 2014/0107315
【文献】US 2013/0096276
【文献】US 2013/0274451
【文献】US 2005/0143566
【文献】US 2016/0159855
【文献】US 2016/0168209
【文献】US 2016/0237124
【文献】WO 2014/146350
【文献】WO 2016/079033
【文献】WO 2016/152946
【文献】PCT EP2017/061162
【文献】PCT EP2017/061164
【文献】PCT EP2017/061160
【文献】PCT EP2017/061158
【文献】PCT EP2017/061159
【文献】US 14/961164
【文献】US 15/348699
【文献】US 15/282367
【非特許文献】
【0005】
【文献】Mergulhaoら、Biotech Adv 23、177~202頁、2005
【文献】L Abrahmsenら、EMBO J 4(13B)、3901~3906頁、1985
【文献】Olsson M.O.及びIsaksson L.A.、Molec. Gen. Genet. 169、251~257頁(1979)
【文献】Gel Filtration Principles and Methods、Pharmacia LKB Biotechnology 1991、6~13頁
【文献】S Hjerten: Biochim Biophys Acta 79(2)、393~398頁(1964)
【文献】「Styrene based polymer supports developed by suspension polymerization"」、R Arshady: Chimica e L'Industria 70(9)、70~75頁(1988)
【文献】Paceら、Protein Science 4、2411~2423頁、(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、特にスタフィロコッカス・アウレウス プロテインAのBドメイン及びCドメインに由来する免疫グロブリン結合性タンパク質について、大腸菌及び他のグラム陰性細菌における異種タンパク質の発現を向上させる必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、大腸菌のようなグラム陰性細菌において容易に発現し、かつ分泌される機能性タンパク質を提供することである。これは、機能性ポリペプチド、及び前記機能性ポリペプチドのN末端に連結された、機能性ポリペプチドのシグナルペプチド切断部位とN末端近位構造ユニットとの間の距離が14~24個のアミノ酸残基であるような長さを有するN末端スペーサーを含む組換えタンパク質で達成される。
【0008】
1つの利点は、発現レベルがN末端スペーサーの導入により向上することである。更なる利点は、シグナルペプチド切断の選択性が向上することである。
【0009】
本発明の第2の態様は、組換えタンパク質をコードする核酸分子を提供することである。これは、5'から3'の方向に以下のエレメントを含む核酸分子で達成され、前記エレメントが作動可能に連結されている:
a)誘導性又は構成的プロモーターDNA配列;
b)シグナルペプチドをコードするDNA配列;
c)N末端スペーサーをコードするDNA配列;及び
d)機能性又は免疫グロブリン結合性ポリペプチドをコードするDNA配列。
【0010】
本発明の第3の態様は、前記の請求項のいずれか一項に記載の組換えタンパク質を発現し、かつグラム陰性細胞の細菌ペリプラズムへ分泌するクローニングベクターを提供することである。これは、上記の核酸分子を含むクローニングベクターで達成される。
【0011】
本発明の第4の態様は、クローニングベクターにより形質転換されたグラム陰性細菌を提供することである。
【0012】
本発明の第5の態様は、グラム陰性細菌において組換えタンパク質を発現し、かつ分泌する方法を提供することである。これは、グラム陰性細菌を準備する工程及びグラム陰性細菌を培養する工程を含む方法により達成される。
【0013】
本発明の第6の態様は、支持体へ共有結合的に連結された組換えタンパク質を含む分離マトリックスを提供することである。
【0014】
本発明の第7の態様は、
i)組換えタンパク質が免疫グロブリン結合性ポリペプチドを含む、上記の分離マトリックスを準備する工程;
ii)分離マトリックスを、免疫グロブリンを含有する液体試料と接触させて、免疫グロブリンを結合する工程;
iii)任意で、分離マトリックスを洗浄液で洗浄する工程;
iv)分離マトリックスを溶出用液体と接触させて、免疫グロブリンを溶出する工程
を含む、免疫グロブリンを分離する方法を提供することである。
【0015】
本発明の更なる適切な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】スペーサー配列が挿入されたクローニング部位の配列の例を示す図である。制限酵素切断部位はその配列の上部にマークされている。
図2】IgG Sepharose 6FF Tricorn 10カラムの溶出液からの237nmにおける積分されたピーク面積を示す図である。
図3】210nmにおけるUV測定値、積分されたピーク面積を示す図である。a)pGE120 OmpA-AQGT(参照)、52% 正しいプロセシングされたシグナルペプチド。b)pGE144 OmpA-DsbA8AA、96% 正しいシグナルペプチド切断、c)pGE140 DsbA-DsbA8AA、97% 正しいシグナルペプチド切断。
図4】標準曲線での濃度分析を用いた、DsbA 8AA N末端スペーサー有り及び無しでのZvar26についての熱処理された発酵ブロスにおいて測定されたタンパク質発現を示す図である。矢印は誘導の時点を示す。
図5】210nmにおけるUV測定値、積分されたピーク面積を示す図である。a) pGE0002 OmpA-AQGT-Zvar26(参照)。b)pGE0180 OmpA-DsbA8AA- Zvar26
図6】シグナルペプチド、N末端スペーサー、及び機能性ポリペプチドを有する構築物の概略図である。
図7】振盪フラスコ培養からの発現結果の要約を示す図である。1標準偏差に対応するエラーバーは、適用可能な場合に含まれる。構築物pGE180について3回の反復測定を行った。試料DsbA7及びDsbA4について2回の反復測定を行った。全ての他の構築物について、1回の測定を行った。
図8】a)正しいシグナルペプチド切断を有する構築物(この事例ではpGE0180)及びb)不正確なシグナルペプチド切断を有する構築物(この事例ではpGE0002)の関連したトータルイオンクロマトグラム(TIC)ピークの例を示す図である。
図9】1M NaOHにおける24時間のインキュベーション後のデコンボルーションされたTICピークの例を示す図である。左の画像はpGE0180において見られた典型的なパターン(500m/zから800m/zの間のピークのクラスター)を示す。右の画像は、DsbA8_noGTにおける同じ区域を示し、バックグラウンドを除いてピークは存在していない。
図10】0時間後(上部の左)、4時間後(上部の右)、及び24時間後(下部の左)の異なる長さの切断されたN末端配列に対応するペプチドピークの積分された抽出イオンクロマトグラム(XIC)領域を示す図である。面積は任意の単位(AU)で示されている。
図11】最も有望な候補の関連したペプチド区域のズームイン表示を示す図である。面積は任意の単位(AU)で示されている。
図12】N末端領域における最も低いアルカリ安定性を示す構築物において、最も顕著に出現するペプチドの分解を示す図である。面積は任意の単位(AU)で示されている。
図13】測定されたタンパク質濃度、280nmにおける消衰係数から推定されたタンパク質濃度、及び流加培養の終了時点におけるOD600を示す図である。pGE180について1回の反復実行が行われ、他の全ての構築物は、1回のみ培養された。95%信頼区間に対応するエラーバーは、データが利用可能である場合に含まれる。
図14】類似した乾燥重量、多孔度、及びリガンド密度を有する基本マトリックスを用いた、候補構築物(DsbA8_noGT及びDsbA8_DT)、Zvar2を含む参照試料、及び他の固定化からの以前のデータの、動的結合容量間の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
用語「抗体」及び「免疫グロブリン」は、本明細書で交換可能に用いられ、抗体の断片、抗体又は抗体断片を含む融合タンパク質、及び抗体又は抗体断片を含むコンジュゲートも含むと理解される。
【0018】
用語「Fc結合性ポリペプチド」及び「Fc結合性タンパク質」は、抗体の結晶性部分(Fc)と結合する能力がある、ポリペプチド又はタンパク質、それぞれを意味し、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス プロテインA及びスタフィロコッカス属(Streptococcus)プロテインG、又は前記結合性質を維持しているそれらの任意の断片若しくは融合タンパク質を含む。
【0019】
用語「Fab結合性ポリペプチド」及び「Fab結合性タンパク質」は、抗体の抗原結合部分(Fab)と結合する能力がある、ポリペプチド又はタンパク質、それぞれを意味し、例えば、ペプトストレプトコッカス・マグヌス(Peptostreptococcus magnus)プロテインL、ストレプトコッカス プロテインG、天然スタフィロコッカス・アウレウス プロテインA、又は前記結合性質を維持しているそれらの任意の断片若しくは融合タンパク質を含む。
【0020】
本明細書における用語「リンカー」は、2つのポリペプチドユニット、モノマー、又はドメインを多量体として互いに連結するエレメントを意味する。
【0021】
アミノ酸配列の比較に関する用語「%同一性」は、例えば、Altschulら(1990) J. Mol. Biol.、215: 403~410頁に記載された基本的局所アラインメントツール(BLAST(商標))等の標準アラインメントアルゴリズムにより決定される。これについてのウェブベースのソフトウェアは、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PROGRAM=blastp&PAGE_TYPE=BlastSearch&LINK_LOC=blasthomeにおいてUS National Library of Medicineから自由に利用可能である。この場合、アルゴリズム「blastp(タンパク質-タンパク質BLAST)」は、クエリー配列の対象配列とのアラインメント、とりわけ、%同一性を決定するために用いられる。
【0022】
本明細書における略語「DsbA」は、大腸菌、チオール:ジスルフィド交換タンパク質、UniProt P0AEG4を意味する。
【0023】
本明細書における略語「OmpA」は、大腸菌、外膜プロテインA、UniProt P0A910を意味する。
【0024】
本明細書における略語「PrA」は、スタフィロコッカス・アウレウス プロテインA、UniProt P38507を意味する。
【0025】
本明細書における略語「GIII」は、バクテリオファージM13由来のGene 3、UniProt P69168を意味する。
【0026】
本明細書における用語「シグナルペプチド」は、分泌経路へと決定づけられる大多数の新しく合成されたタンパク質のN末端に存在する短い(通常、16~30アミノ酸長)ペプチドを意味する。それはまた、シグナル配列、ターゲティングシグナル、局在化シグナル、局在化配列、輸送ペプチド、リーダー配列、又はリーダーペプチドとも呼ばれ得る。シグナルペプチドは、通常、シグナルペプチダーゼ酵素によりタンパク質から切り離される。
【0027】
本明細書における用語「シグナルペプチド切断部位」は、その間において、シグナルペプチダーゼがシグナルペプチドを成熟タンパク質から切断する、ジペプチドを意味する。たいてい(しかし、全部ではない)の場合、ジペプチドはAla-Alaである。シグナルペプチド切断部位は、http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/においてオンラインで利用可能なSignalP 4.1(Center for Biological Sequence Analysis、Technical University of Denmark)等のアルゴリズムで算定することができる。
【0028】
本明細書における用語「異種性発現」は、宿主生物体における遺伝子又は遺伝子の一部の発現であって、その宿主生物体が天然ではこの遺伝子又は遺伝子断片を有しない、発現を意味する。「分泌される」は、大腸菌等のグラム陰性細菌の内膜を横切ることを指す。
【0029】
細胞質(細胞質の)は、遺伝子材料を含有する、グラム陰性細菌における内部の細胞膜の内側の空間である。本明細書における用語「細胞質発現」は、細胞質内でのタンパク質発現を意味する。
【0030】
ペリプラズムは、グラム陰性細菌における細胞膜周辺腔(periplasmic space)と呼ばれる、内部の細胞質膜と細菌外膜との間の空間における、濃縮されたゲル様マトリックスである。
【0031】
本明細書における用語「プロモーター」は、特定の遺伝子の転写(mRNAへのライティング)を開始するDNAの領域を意味する。プロモーターは、通常、同じ鎖上で、かつそのDNA上の上流(センス鎖の5'領域の方へ)の、遺伝子の転写開始部位の近くに位置する。プロモーターは誘導性であり得、それは、そのプロモーターに作動可能に連結した遺伝子の発現が、誘導物質の存在によりオンにされ得ることを意味する。或いは、プロモーターは構成的、すなわち、いかなる誘導物質によっても制御されないことであり得る。
【0032】
本明細書における略語「RBS」は、リボソーム結合部位、又はリボソームの結合部位を意味する。これは、タンパク質翻訳の開始中にリボソームのリクルートメントを担う、mRNA転写産物の開始コドンの上流のヌクレオチドの配列である。
【0033】
本明細書における略語「RhaBAD」は、遺伝子RhaB、RhaA、及びRhaDの大腸菌ラムノースオペロンプロモーター(ラムノースプロモーターとも呼ばれる)を意味する。これは、分子生物学において広く用いられているプロモーターである。
【0034】
本明細書における略語「T5」は、埋め込まれたlacオペレーターを有する、大腸菌RNAポリメラーゼについてのバクテリオファージT5プロモーターを意味する。オペレーターは、転写因子が結合して、それを抑圧することにより遺伝子発現を制御する、DNAのセグメントである。
【0035】
本明細書における略語「pD861-SR」は、ラムノースプロモーター(RhaBAD)及び強いリボソーム結合部位(SR)を有する、大腸菌タンパク質発現のためのプラスミドを指す。
【0036】
本明細書における略語「pJ401」は、バクテリオファージT5プロモーター、及びそのプロモーターの各側に左右反対になった二重の埋め込まれたlacオペレーターを有する、大腸菌タンパク質発現のためのプラスミドを指す。
【0037】
本明細書における略語「OptEc」は、大腸菌発現のための最適化、すなわち、コドントリプレットが、大腸菌翻訳機構に適合するように選択されていることを意味する。
【0038】
本明細書における略語「FspI」は、藍藻(Fischerella species)(ATCC 29114)由来のDNA制限酵素を意味する。それは、配列TGCGCAにおいて平滑末端を生じるように切断する。
【0039】
本明細書における略語「KpnI」は、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)OK8(ATCC 49790)由来のDNA制限酵素を意味する。それは、配列GGTACCにおいてオーバーハングを有するように切断する。
【0040】
本明細書における略語「SRP」は、同時翻訳経路を介して分泌のためのポリペプチドをターゲットするための普遍的に保存された経路である、シグナル認識粒子経路を意味する。
【0041】
本明細書における略語「Sec」は、細胞膜を通してのタンパク質の分泌を担う系である、分泌又はII型分泌経路を意味する。
【0042】
本明細書における用語「大腸菌K12-017」は、Olsson M.O.及びIsaksson L.A.、Molec. Gen. Genet. 169、251~257頁(1979)に記載されているように、大腸菌発現株を意味する。
【0043】
本明細書における用語「機能性ポリペプチド」は、技術的に有用な性質を有するポリペプチドを意味する。そのような性質の例は、a)標的種との特異性が高い結合(親和性結合体として、特に、アフィニティークロマトグラフィーのためのリガンドとしての使用)、b)治療的性質(医薬としての使用)、c)酵素的性質(生体触媒としての使用)、及びd)シグナル放出性質(蛍光レポータータンパク質等のレポータータンパク質としての使用)である。
【0044】
本明細書で用いられる場合、用語「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含有すること(containing)」、「有すること(having)」等は、米国特許法におけるそれらに与えられた意味を有し得、「含む(includes)」、「含むこと(including)」等を意味し得る;同様に、「から本質的になる」又は「本質的になる」は、米国特許法において与えられた意味を有し得、その用語は、オープンエンドであり、列挙されているもの以外の存在によって、列挙されているものの基本的又は新規の特性が変化しない限り、列挙されているもの以外の存在を可能にするが、先行技術の実施形態を除く。
【0045】
実施形態の詳細な説明
一態様において、図1図3により図示されているように、本発明は、機能性ポリペプチド、及び、機能性ポリペプチドのN末端に連結された、機能性ポリペプチドのシグナルペプチド切断部位とN末端近位構造ユニットとの間のアミノ酸残基の数が14~24個であるような長さを有するN末端スペーサーを含む組換えタンパク質を開示する。
【0046】
機能性ポリペプチドは、免疫グロブリン結合性ポリペプチドであり得る。そのようなポリペプチドは、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス プロテインA、ペプトストレプトコッカス・マグヌス プロテインL、及びストレプトコッカス属 プロテインGからなる群、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス プロテインA及びペプトストレプトコッカス・マグヌス プロテインLからなる群から選択される細菌タンパク質に由来する1つ又は複数の免疫グロブリン結合性ドメインを含み得る。免疫グロブリン結合性ドメインは、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス プロテインAのドメインE、D、A、B、又はCと、プロテインZ(スタフィロコッカス・アウレウス プロテインAのドメインBのバリアント)、Zvar、若しくはZvar2(プロテインZのアルカリ安定化変異体)と、又はペプトストレプトコッカス・マグヌス プロテインLのドメイン1、2、3、4、若しくは5と、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%又は95%の配列同一性を有し得る。この関連において、免疫グロブリン含有ドメインは、配列番号1~11からなる群から選択されるアミノ酸配列により定義され得、又はそれらと少なくとも80%、例えば、少なくとも90%又は95%の配列同一性を有し得る。配列番号1~7(スタフィロコッカス・アウレウス プロテインA ドメインE、D、A、B、及びC、プロテインZ、並びにZvar)は図15に列挙され、配列番号8~11は下記に特定化されている。
【0047】
配列番号8 - Zvar2
【化1】
配列番号9 - スタフィロコッカス・アウレウス プロテインAの短縮型ドメインC
【化2】
配列番号10 - Zvarの短縮型バージョン
【化3】
配列番号11 - Zvar2の短縮型バージョン
【化4】
【0048】
配列番号1~11は全て、スタフィロコッカス・アウレウス プロテインAに由来するFc結合性ドメインとして特徴づけることができる。そのようなドメインは更に、Zvar及びZvar2において行われているように、天然ドメインの変異によりアルカリ安定化され得る。そのようなアルカリ安定化ドメインの更なる例は、配列番号48~93(実施例6に列挙)であり得、他の例は、例えば、US 8,329,860、US 8,754,196、US 9,040,661、US 9,403,883、JP 2006304633A、US 8,674,073、US 2010/0221844、US 2012/0208234、US 9,051,375、US 2014/0031522、US 2014/0107315、US 2013/0096276、US 2013/0274451、US 2005/0143566、US 2016/0159855、US 2016/0168209、US 2016/0237124、WO 2014/146350、WO 2016/079033、WO 2016/079034、WO 2016/152946、PCT EP2017/061162、PCT EP2017/061164、PCT EP2017/061160、PCT EP2017/061158、PCT EP2017/061159、US 14/961164、US 15/348699、及びUS 15/282367(それらの全ては、全体として参照により本明細書に組み込まれている)に示されている。具体的には、アルカリ安定化Fc結合性ドメインは、配列番号7~11、48~64、及び74~93からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、例えば、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を有し得る。
【0049】
免疫グロブリン結合性ポリペプチドは、適切には、上記で論じられているように、免疫グロブリン結合性ドメイン、例えば、Fc結合性ドメインの、多量体であり得る。多量体は、例えば、二量体、四量体、又は六量体等の二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、又は七量体であり得る。適切には、多量体は、少なくとも4個のドメインを含み得る。ドメインは、互いに直接連結され得るが(例えば、配列番号1~8、48~64、及び74~93の場合)、それらはまた、典型的には1~25個(例えば、3~20個)のアミノ酸残基を含むリンカーを介して互いに連結され得る(例えば、配列番号9~11の場合)。適切なリンカーの例は、
【化5】
を含む。多量体のいくつかの具体的な例には、配列番号12(四量体)、配列番号13(六量体)、及び配列番号65~73(二量体)が挙げられる。
【0050】
配列番号12 - C末端システインを含むZvar四量体
【化6】
配列番号13 - C末端システインを含むZvar2六量体
【化7】
【0051】
組換えタンパク質は、C末端等のC末端又はN末端において、又はそれの近位にカップリング部分を含み得る。このカップリング部分は、下記に論じられているような支持体との特異的カップリングのために用いることができ、システインを含み得、チオエーテル結合によるカップリングを可能にする。代替として、又は追加として、カップリング部分は、2~8個のリジンのクラスター等の1個又は複数のリジンを含み得る。
【0052】
機能性又は免疫グロブリン結合性ポリペプチドは、二次及び三次構造を有し得、適切には、αヘリックス、βシート、及び/又はβバレルにより例示されるような、1つ又は複数の構造ユニットを含み得る。特に、ポリペプチドは、少なくとも3つのαヘリックス等の複数のαヘリックスを含み得る。スタフィロコッカス・アウレウス プロテインAに由来するFc結合性ドメイン(例えば、配列番号1~11、48~64、及び74~93)、それぞれは、3つのαヘリックスを含み、したがって、上記で論じられているような多量体におけるαヘリックスの数は、多量体におけるドメインの数の3倍であり得る。配列番号1~11、48~64、及び74~93により例示されているようなドメインにおける第1のαヘリックスは、(図15の位置命名法を用いる)位置9から始まり、その位置は、配列番号1~7及び9~10の場合、グルタミンであり、配列番号8、11、48~64、及び74~93の場合、アラニンである。
【0053】
N末端スペーサーは、適切には、機能性又は免疫グロブリン結合性ポリペプチドのシグナルペプチド切断部位とN末端近位構造ユニットとの間のアミノ酸残基の数が14~24個であるような長さを有する。上記で論じられているように、この構造ユニットは、適切には、αヘリックス(又は代替として、βシート又はβバレル)であり得る。機能性又は免疫グロブリン結合性ポリペプチドのN末端とN末端近位構造ユニットとの間のアミノ酸残基の数は、様々であり得、例えば、0個(配列番号9~11)から11個(配列番号2)の間であり得、したがって、N末端スペーサーの長さは、様々であり得、例えば、8~24個のアミノ酸残基又は14~24個のアミノ酸残基等の、3~24個のアミノ酸残基であり得る。例えば、N末端スペーサーが、配列番号1~8、48~64、又は74~93と少なくとも90%同一性を有するFc結合性ドメインと連結されている場合には、N末端スペーサーは、例えば、8~12個のアミノ酸残基の長さを有し得、N末端スペーサーが、配列番号9~11と少なくとも90%同一性を有するFc結合性ドメインと連結されている場合には、N末端スペーサーは、例えば、16~20個のアミノ酸残基の長さを有し得る。N末端スペーサーは、例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、リジン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基からなり得る。アルカリ安定性の向上のために、アスパラギンを排除することは有利であり得る。この場合、N末端スペーサーは、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、リジン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基からなり得る。N末端スペーサーがアルギニン若しくはリジンのいかなるクラスターも含まない場合、並びに/又はそれが、リジン及びアルギニンからなる群から選択される多くとも2個のアミノ酸残基を含む場合、それは有利であり得る。いくつかの実施形態において、2個のN末端スペーサーアミノ酸残基は、AQ(アラニン、続いてグルタミン)であり得る。
【0054】
特に、N末端スペーサーは、配列番号16~18、29~30、33~40、43~45、及び47からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、又はそれにより規定されるアミノ酸配列を含み得、本質的に含み得、又は有し得る。N末端スペーサーは更に、
【化8】
からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、又はそれにより規定されるアミノ酸配列を含み得、本質的に含み得、又は有し得る。後者の配列は、配列番号9~11に由来する免疫グロブリン結合性ポリペプチドと組み合わせると、特に有利である。アルカリ安定性に関して、配列番号35、37、38、40、43、44、及び47からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、又はそれにより規定されるアミノ酸配列を含み、本質的に含み、又は有するN末端スペーサーを用いることは更に有利であり得る。N末端スペーサーはまた、アルカリ安定性のために、
【化9】
からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、又はそれにより規定されるアミノ酸配列を含み得、本質的に含み得、又は有し得る。後者の配列は、配列番号9~11に由来する免疫グロブリン結合性ポリペプチドと組み合わせると、特に有利である。
【0055】
組換えタンパク質のアルカリ安定性は、それをSPRチップ、例えば、WO2016079033の例に記載されているようなBiacore CM5センサーチップに、例えば、NHS又はマレイミドカップリング化学作用を用いてカップリングし、そのチップの免疫グロブリン結合容量を、典型的にはポリクローナルヒトIgGを用いて、特定化された温度、例えば、22+/-2℃でアルカリ性溶液中でのインキュベーションの前及び後に、測定することにより評価することができる。インキュベーションは、例えば、いくらかの10分間サイクル、例えば、100サイクル、200サイクル、又は300サイクルの間、0.5M NaOH中で実施することができる。22+/-2℃で0.5M NaOH中の100サイクルの10分間インキュベーション後のマトリックスのIgG容量は、インキュベーション前のIgG容量の少なくとも55%、例えば、少なくとも60%、少なくとも80%、又は少なくとも90%であり得る。或いは、上記のように測定された特定の変異体についての100サイクル後の残存するIgG容量が、親の組換えタンパク質についての残存するIgG容量と比較することができる。この場合、変異体についての残存するIgG容量は、親の組換えタンパク質の少なくとも105%、例えば、少なくとも110%、少なくとも125%、少なくとも150%、又は少なくとも200%であり得る。
【0056】
第2の態様において、本発明は、上記で開示されているような組換えタンパク質をコードする核酸分子を開示する。核酸分子は、5'から3'の方向に以下の作動可能に連結されたエレメントを含む:
a)誘導性又は構成的プロモーターDNA配列、例えば、RhaBAD又はT5プロモーター配列。RhaBADは、ラムノースで誘導可能であり、T5はイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導可能である。構成的プロモーターの例は、spaプロモーター(天然に存在するスタフィロコッカス・アウレウス プロテインAのプロモーター)である;
b)シグナルペプチドをコードするDNA配列、例えば、OmpA(配列番号14)若しくはDsbA(配列番号15)シグナルペプチド、又はこれらのいずれかと少なくとも80%の配列同一性を有するシグナルペプチド;
c)上記で論じられているようなN末端スペーサーをコードするDNA配列;及び
d)上記で論じられているような機能性又は免疫グロブリン結合性ポリペプチドをコードするDNA配列。
核酸分子は、リボソーム結合部位(RBS)及び複製開始点を更に含み得る。それはまた、適切には、抗生物質抵抗性マーカーを含み得る。
【0057】
第3の態様において、本発明は、上記で開示されているような組換えタンパク質を発現し、かつグラム陰性細胞、例えば、大腸菌の細菌ペリプラズムへ分泌するクローニングベクター、例えば、プラスミドを開示する。クローニングベクターは、上記で論じられているような核酸分子を含む。
【0058】
第4の態様において、本発明は、上記で開示されたクローニングベクターにより形質転換されたグラム陰性細菌を開示する。細菌は、大腸菌、特に、大腸菌K12-017等のK12株の大腸菌として同定され得る。グラム陰性細菌の他の例には、例えばシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)等のシュードモナス(Pseudomonas)属が挙げられる。形質転換は、例えば、ヒートショック方法により達成され得るが、エレクトロポレーション等の他の方法も可能である。
【0059】
第5の態様において、本発明は、グラム陰性細菌において上記で論じられた組換えタンパク質を発現し、かつ分泌する方法を開示する。この方法は、
i)上記で開示されたグラム陰性細菌を準備する工程;及び
ii)グラム陰性細菌を培養する工程
を含む。上記で論じられているような核酸分子が誘導性プロモーターを含む場合には、方法は、グラム陰性細菌において組換えタンパク質発現を誘導する工程を更に含み得る。
【0060】
第6の態様において、本発明は、支持体と共有結合的に連結された、上記で開示された組換えタンパク質を含む分離マトリックスを開示する。
【0061】
当業者が理解しているように、発現した組換えタンパク質は、支持体へ固定化される前に、適切な程度、精製されるべきである。そのような精製方法は、当技術分野において周知されており、タンパク質ベースのリガンドの支持体への固定化は、標準方法を用いて容易に行われる。適切な方法及び支持体は、より詳細に下記で論じられる。
【0062】
マトリックスのアルカリ安定性は、その免疫グロブリン結合容量を、典型的にはポリクローナルヒトIgGを用いて、特定化された温度、例えば、22+/-2℃でアルカリ性溶液中でのインキュベーションの前及び後に、測定することにより評価することができる。インキュベーションは、例えば、いくらかの15分間サイクル、例えば、25時間、50時間、又は75時間の総インキュベーション時間に対応する、100サイクル、200サイクル、又は300サイクルの間、0.5M NaOH中で実施することができる。22+/-2℃で0.5M NaOH中の、96~100サイクルの15分間インキュベーション又は24時間若しくは25時間の総インキュベーション時間後のマトリックスのIgG容量は、インキュベーション前のIgG容量の少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%であり得る。
【0063】
本発明によるマトリックスの固体支持体は、任意の適切な周知の種類であり得る。通常の親和性分離マトリックスは、有機性である場合が多く、用いられた水性媒体に親水性表面を露出する、すなわち、それらの外面上に、及び存在するならば、内面上にも、水酸基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、カルボキサミド基(-CONH2、場合によりN-置換型で)、アミノ基(-NH2、場合により置換型で)、オリゴ-又はポリエチレンオキシ基を露出する重合体に基づいている。固体支持体は、適切には、多孔性であり得る。多孔度は、例えば、Gel Filtration Principles and Methods、Pharmacia LKB Biotechnology 1991、6~13頁に記載された方法による、逆サイズ排除クロマトグラフィーにより測定されたKav又はKd値(特定のサイズのプローブ分子に利用可能なポア体積の率)として表すことができる。定義により、Kd値とKav値の両方は、常に、0~1の範囲内にある。Kav値は、有利には、プローブ分子として分子量110kDaのデキストランで測定した場合、0.6~0.95、例えば、0.7~0.90又は0.6~0.8であり得る。これの利点は、支持体が、本発明の組換えタンパク質と、その組換えタンパク質と結合する免疫グロブリンの両方に適応でき、かつ免疫グロブリンの、結合部位を往復する大量輸送を提供できる、ポアの率が大きいことである。
【0064】
組換えタンパク質は、例えば、そのリガンドに存在するチオール基、アミノ基、及び/又はカルボキシル基を利用する通常のカップリング技術により、支持体に付着し得る。ビスエポキシド、エピクロロヒドリン、CNBr、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)等は周知のカップリング試薬である。支持体と組換えタンパク質との間に、スペーサーとして知られた分子が導入され得、それは、組換えタンパク質の利用能を向上させ、かつ組換えタンパク質の支持体への化学的カップリングを促進する。組換えタンパク質の性質及びカップリング条件に依存して、カップリングは、多点カップリング(例えば、複数のリジンを介して)又は一点カップリング(例えば、単一のシステインを介して)であり得る。或いは、組換えタンパク質は、物理的吸着又は生体分子特異的吸着等の非共有結合により支持体に付着し得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、マトリックスは、支持体にカップリングした組換えタンパク質の5~25mg/ml、例えば、5~20mg/ml、5~15mg/ml、5~11mg/ml、又は6~11mg/mlを含む。カップリングしたタンパク質の量は、カップリングプロセスに用いられるタンパク質の濃度により、用いられる活性化条件及びカップリング条件により、並びに/又は用いられる支持体のポア構造により調節することができる。一般的な法則として、マトリックスの絶対的結合容量は、カップリングしたタンパク質の量と共に、少なくともポアがカップリングしたタンパク質により有意に狭窄するようになる時点まで、増加する。1mgのカップリングしたタンパク質あたりの相対的結合容量は、高いカップリングレベルにおいて減少し、上記で特定化された範囲内の費用対効果の最適値という結果になる。
【0066】
ある特定の実施形態において、タンパク質は、チオエーテル結合を介して支持体にカップリングされる。そのようなカップリングを実施するための方法はこの分野において周知されており、標準技術及び装置を用いて当業者により容易に実施される。チオエーテル結合は柔軟かつ安定であり、一般的に、アフィニティークロマトグラフィーに用いるのに適している。特に、チオエーテル結合が組換えタンパク質上の末端又は末端近くのシステイン残基を介する場合、カップリングした組換えタンパク質の可動性は増強され、そのことは、結合容量及び結合反応速度の向上をもたらす。いくつかの実施形態において、組換えタンパク質は、上記のようにそのタンパク質上に供給されるC末端システインを介してカップリングされる。これは、システインチオールの、支持体上の求電子基、例えば、エポキシド基、ハロヒドリン基等への効率的カップリングを可能にし、結果として、チオエーテル架橋カップリングを生じる。或いは、組換えタンパク質は、1つ又は複数のアミド結合を介して支持体へ共有結合的に連結され得る。これは、例えば、タンパク質中の1つ又は複数のリジンと支持体上の1つ又は複数の活性化カルボキシル基との間の反応を通して、達成することができる。活性化は、例えば、一般的に知られたN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)試薬によりなされ得る。更に別の代替法は、タンパク質が1つ又は複数の二級アミン連結を介して連結されることである。そのような連結は、タンパク質中のリジン及び、例えば、塩化トレシル若しくは塩化トシル化学作用を用いて活性化されている支持体上のいずれかの水酸基から、又はリジンと支持体上のアルデヒドとの間の還元的アミノ化反応により、形成され得る。アルデヒドは、例えば、過ヨウ素酸塩酸化により支持体上のビシナルジオールから形成され得る。
【0067】
ある特定の実施形態において、支持体は、多糖等のポリヒドロキシ重合体を含む。多糖の例には、例えば、デキストラン、デンプン、セルロース、プルラン、寒天、アガロース等が挙げられる。多糖は、低度の非特異的相互作用をもち、本質的に親水性であり、それらは、高含有量の反応性(活性化可能な)水酸基を提供し、それらは、バイオプロセスに用いられるアルカリ性クリーニング溶液に対して一般的に安定である。
【0068】
いくつかの実施形態において、支持体は寒天又はアガロースを含む。本発明に用いられる支持体は、逆懸濁ゲル化(S Hjerten: Biochim Biophys Acta 79(2)、393~398頁(1964))等の標準方法により容易に調製することができる。或いは、SEPHAROSE(商標)FF(GE Healthcare)という名前で販売される架橋アガロースビーズ等、基本マトリックスは市販製品である。ある実施形態、特にラージスケール分離に有利である実施形態において、支持体は、US6602990又はUS7396467(全体として参照により本明細書に組み込まれている)に記載された方法を用いて、それの強剛性を増加させるのに順応しており、このゆえに、マトリックスを高流速により適したものにしている。
【0069】
ある特定の実施形態において、多糖又はアガロース支持体等の支持体は、例えば、ヒドロキシアルキルエーテル架橋で、架橋されている。そのような架橋を生じる架橋試薬は、例えば、エピクロロヒドリンのようなエピハロヒドリン類、ブタンジオールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド類、アリルハライド類又はアリルグリシジルエーテルのようなアリル化試薬であり得る。架橋は、支持体の強剛性に有益であり、化学的安定性を向上させる。ヒドロキシアルキルエーテル架橋は、アルカリ安定であり、有意な非特異的吸着を引き起こさない。
【0070】
或いは、固体支持体は、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド等の合成重合体に基づいている。ジビニル及びモノビニル置換ベンゼンに基づいたマトリックス等の疎水性重合体の場合、マトリックスの表面は、親水化されて、上記で定義されているような親水基を周囲の水性液体へ露出している場合が多い。そのような重合体は、標準方法により容易に生成され、例えば、「Styrene based polymer supports developed by suspension polymerization」、R Arshady: Chimica e L'Industria 70(9)、70~75頁(1988)を参照されたい。或いは、SOURCE(商標)(GE Healthcare)等の市販製品が用いられる。別の代替において、本発明による固体支持体は、無機性の支持体、例えば、シリカ、酸化ジルコニウム等を含む。
【0071】
ある特定の実施形態において、固体支持体は、面、チップ、キャピラリー、又はフィルター(例えば、メンブレン又はデプスフィルターマトリックス)等の別の形をとる。
【0072】
第7の態様において、本発明は、
i)上記で論じられているような分離マトリックスを準備する工程であって、組換えタンパク質が、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス プロテインAに由来する1つ又は複数のFc結合性ドメインを含む、免疫グロブリン結合性ポリペプチドを含む、工程;
ii)免疫グロブリンを含有する液体試料を分離マトリックスに接触させて、免疫グロブリンを結合する工程;
iii)任意で、分離マトリックスを洗浄液で洗浄する工程;
iv)分離マトリックスを溶出用液体と接触させて、免疫グロブリンを溶出する工程;
v)任意で、分離マトリックスをクリーニング液でクリーニングする工程
を含む、免疫グロブリンを分離する方法を開示する。アルカリクリーニング液は、バイオプロセスにおいて一般的に用いられており、組換えタンパク質がアルカリ安定であるとの条件で、クリーニング液は、少なくとも0.1M NaOH又はKOH、例えば、少なくとも0.5M NaOH若しくはKOH、又は0.5~2.5M NaOH若しくはKOHを含み得る。
【実施例
【0073】
まず、2つの異なるシグナルペプチドを、4つの異なるN末端スペーサーと共に試験して、最良の切断及びタンパク質発現を見出した。この実験(実施例1)を、RhaBADプロモーター系を用いてZvar2単量体に関して実施した。実施例2において、最も有望なシグナルペプチド及びN末端開始部分(N-terminal start)をZvar2六量体においてクローニングした。この構築物を、N末端開始配列有り及び無しで、流加発酵法において試験した。この研究を、T5プロモーター発現系を用いて実施した。実施例3において、スタフィロコッカス・アウレウス プロテインAの全ての天然ドメイン、Zvar単量体(Zvar1)、Zvar2単量体(Zvar21)、及びZvar四量体(Zvar4)を、選択されたシグナルペプチド及びN末端開始部分と共に試験して、開始配列もまた、密接に関係したドメインへ効果を生じたかどうかを見た。また、実施例3を、T5発現系を用いて実施した。実施例4を1セットの異なるN末端スペーサーに関して実施した。実施例5を、2つの選択されたスペーサーを用いた、発酵のスケールアップであり、実施例6は、免疫グロブリンの結合性タンパク質の異なる変異体と組み合わせての、
【化10】
のN末端スペーサーを用いた調査であった。
【0074】
材料及び方法
構築物
Table 1(表1)に記載されているような遺伝子は、合成遺伝子の委託製造会社(ATUM社、CA、USA)により合成された。二本鎖ジデオキシリボ核酸(dsDNA)は、アミノ酸(AA)配列に基づいて合成され、製造会社独占所有権のアルゴリズムにより、大腸菌における発現のために最適化された。dsDNAを発現ベクターpD861-SR又はpJ401へ、DsbAか又はOmpAのいずれか由来のシグナルペプチド(Table 2(表2))と共に挿入した。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
N末端のクローニング
全てのプラスミドを、化学的コンピテント細胞を用いて、大腸菌K12-017へ形質転換した。ベクターを改変するために、8AAの短いスペーサー配列を、FspI切断部位とKpnI切断部位の間に挿入した。8AA配列は、OmpA(
【化11】
、配列番号16)、DsbA(
【化12】
、配列番号17)、SpA(
【化13】
、配列番号18)の成熟タンパク質における最初のAAから取られ、又はM13ファージGIII由来の可動性リンカー構造AA 236~243(
【化14】
、配列番号19)であり、制限部位に適合するためのOmpAにおける改変、及びアスパラギンからグルタミンへ変異させるためのOmpA及びSpAにおける変異を有した(図1)。更に、様々な異なる配列をプラスミドpGE0002へクローニングした(Table 1(表1))。
【0078】
プラスミドの消化
プラスミドを、制限酵素FspI及びKpnI(New England Biolabs社(NEB社)、MA、USA)で切断し、6μl NEBバッファー2.1を、6μg プラスミド及び2μl FspIと混合して、合計58μlにした。その溶液を、KpnIを加える前に、37℃で1時間、インキュベートした。インキュベーションを2時間、続け、その後、1μl ウシ腸ホスファターゼ(CIP)を添加し、その後、更に30分間、インキュベートした。QIAquick PCR精製キット(Qiagen社、Hilden、Germany)を用いて、消化されたプラスミドから、切除された塩基を除去した。
【0079】
ハイブリダイゼーション
オリゴヌクレオチドを、Integrated DNA technologies社(IDT、IA、USA)へ注文した。全てのオリゴヌクレオチドは、製造会社により5'リン酸基で修飾された。2つの相補性オリゴヌクレオチドペアを、ライゲーションバッファー中で混合し、95℃へ4分間、加熱し、その後、室温まで冷却した。ハイブリダイズした断片を、T4 DNAリガーゼ(NEB社、MA、USA)の使用により、FspI及びKpnIで切断されたプラスミドへライゲーションした。用いられたオリゴヌクレオチドの完全なリストはTable 3(表3)に見出される。
【0080】
【表3】
【0081】
クローニングされる構築物
ライゲーションされたプラスミドを、化学的にコンピテントな大腸菌K12-017細胞へ形質転換した。その細胞を、氷上で30分間、解凍し、100μl コンピテント細胞を10μlライゲーション反応へ加えた。細胞を氷上で20分間、インキュベートし、その後、42℃で1分間、ヒートショックを与え、その後、氷上で5分間、インキュベートした。その後、900μl SOC培地(NEB社、MA、USA)を加えた。形質転換反応物を、回転式振盪インキュベーターにおいて37℃で60分間、インキュベートし、各反応物の100μlを、適切な選択抗生物質を含有するLuria寒天プレート上に広げた。陽性クローンを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でスクリーニングし、正しい挿入断片を有するクローンを選択した。選択されたクローンを、適切な抗生物質を含有する10ml Luriaブロス(LB)中で終夜(o/n)、増殖させ、その後、Qiagen Plasmid Miniprepキット(Qiagen社、Hilden、Germany)を用いてプラスミドを調製した。プラスミドを、配列検証のためにGATC Biotech社(GATC Biotech、Cologne、Germany)へ送った。
【0082】
【表4A】
【0083】
【表4B】
【0084】
(実施例1)
振盪フラスコにおけるタンパク質発現及び精製
組換えプラスミドpGE0138-145で形質転換された大腸菌株K12-017を、100ml Terrific Broth(TB)培地(1リットルあたり12g トリプトファン、24g 酵母抽出物、5g グリセロール(85%)、2.31g KH2PO4、12.54g K2HPO4、及び50mgのカナマイシン硫酸塩を含有)中、30℃で4時間、培養した。培養物を、OD600nmが1~2に達した時、4mM L-ラムノース(Sigma Aldrich社、MO、USA)を用いて誘導した。培養物を更に、30℃で17~20時間、インキュベートした。培養溶液を、スイングアウトローターにおいて20分間の低速遠心分離(4,000rpm)に供し、湿った細胞ペレットを収集した。細菌細胞ペレットを、20mlの25mMリン酸バッファー溶液(pH 7.4)中に懸濁し、細胞を、ヒートブロック内、85℃で10分間、熱処理により溶解した。その後、高速遠心分離(13,000rpm)を10分間、行って、上清を分離した。その後、上清を、0.2μmシリンジフィルターを通して濾過して、いかなる残留粒子も除去し、その後、それを、IgG Sepharose 6FF(GE Healthcare Bio-Sciences社、Uppsala、Sweden)アフィニティークロマトグラフィーカラムにアプライした。カラムを、ローディングバッファー(25mM リン酸塩 pH7、250mM NaCl)で平衡化し、その後、試料を負荷した。負荷後、カラムを、5カラム体積(CV)のローディングバッファー及び1CVの低塩洗浄バッファー(50mM酢酸塩 pH 6)で洗浄し、その後、50mM 酢酸、pH 2.8で溶出した。237nmにおける吸光度を、AKTA explorer 100 chromatography system(GE Healthcare Bio-Sciences社、Uppsala、Sweden)を用いてインラインで測定し、溶出されたピークのピーク積分を、システムソフトウェア(Unicorn 5.1)において実施した。
【0085】
2つのシグナルペプチド及び4つのN末端開始部分の振盪フラスコ結果
発現系の最適化の第1の作業において、細胞において異なる分泌経路を利用する2つの異なるシグナルペプチドを、試験した。DsbAは、シグナル認識粒子(SRP)経路を利用し、OmpAはSec経路を利用する。DsbA及びOmpAのシグナルペプチドを用いるタンパク質発現からの結果は、OmpAシグナルペプチドが、DsbAシグナルペプチドと比較して、より高い;2~5倍のタンパク質発現を生じた。更に、シグナルペプチドの切断部位後の最初のN末端AAが、発現レベルに有意な影響を及ぼした。この研究において、DsbA開始AAは、どちらのシグナルペプチドとでも最も高い発現レベルを生じた。最も低い発現レベルは、どちらのシグナルペプチドを用いても、Flex8AA開始配列について見られた。
【0086】
液体クロマトグラフィー連結型質量分析(LC/MS)結果
IgG Sepharose 6FFからの溶出液を、LC/MS(Waters社、PA、USA)を用いて分析した。結果により、N末端開始配列としてAQGTを有する参照構築物pGE0120からの溶出液は、様々な異なるシグナルペプチド切断部位を有することが示された(図3、a)。シグナルペプチドが正しくプロセシングされた、正しい質量をもつピークの積分面積は、全面積の52%であった。他のピークは、主構築物から6AA余分、9AA余分、無傷シグナルペプチド(21AA余分)、及び7AA欠損に対応した。DsbA由来の8-AAの付加後、シグナルペプチドは、96%まで正しく切断された(図3、b)。類似した結果は、DsbAシグナルペプチド及びDsbA 8AA N末端に関して見られ、97%がシグナルペプチドを正しく切断した。
【0087】
(実施例2)
流加発酵槽におけるタンパク質発現
6つの1Lの作業容量の発酵槽、GRETA(Belach Bioteknik社、Skogas、Sweden)を用いた。開始体積を750mlに設定し、終了体積はおよそ1Lであった。エアレーションを1L/分に設定し、温度、pH、及び消泡を自動制御した。pHは、25%アンモニア及び2Mリン酸の添加により設定値に維持された。消泡制御は、多くの泡立ちが起きた時、自動で、Breox FMT 30(BASF社、Ludwigshafen、Germany)が加えられた。pH及び溶解酸素(DO)は、Broadley James社(CA、USA)製のプローブで制御された。DOは、300rpmから1500rpmまで撹拌子速度を増加させることにより、30%で一定に維持された。撹拌子が最高速度に達した時、DO第2設定点は20%であり、純酸素を気流に混合することを加えることにより、一定に保たれた。50mg/L カナマイシン又はネオマイシンを補充したTerrific Broth(TB)を、振盪フラスコ前培養に用い、50μg/mL カナマイシン又はネオマイシンを補充した100mL TBへの100μl細胞懸濁液の添加により開始させ、37℃で17時間、インキュベートした。主発酵培地に10ml 前培養物を接種した。最初のバッチグルコースが消費された後、60%(w/v)(VWR社、PA、USA)でのグルコース供給量が、プリセットプロファイルに従って発酵槽へ供給された。主発酵の総時間は26時間であった。
【0088】
標準曲線を用いた濃度分析
発酵試料を、1.5mlチューブにおいて85℃で5分間、熱処理した。その後、高速遠心分離(13500rpm、卓上遠心機)を5分間、行って、上清を分離した。上清を、0.2μmシリンジフィルターを通して濾過して、いかなる残留粒子も除去し、その後、それらを、IgG Sepharose 6FF HiTrap(商標)カラム(GE Healthcare Bio-Sciences社、Uppsala、Sweden)にアプライした。カラムを、ローディングバッファー(リン酸緩衝食塩水(Medicago、Uppsala、Sweden))で平衡化し、その後、50μl試料を負荷した。負荷後、カラムを、5CVのローディングバッファーで洗浄し、その後、200mM リン酸バッファー、pH 2.9で溶出した。237nmにおける吸光度を、インラインで測定し、溶出されたピークのピーク積分を、クロマトグラフィーシステムソフトウェアにおいて実施した。試料のタンパク質濃度を、既知濃度の精製タンパク質を用いた標準曲線により決定した。
【0089】
発酵、タンパク質発現結果
Zvar2六量体(Zvar26)を含有するプラスミドpGE0002を、FspI及びKpnI制限酵素で切断した。DsbA由来のN末端開始部分を、切断されたベクターへライゲーションし、生じたプラスミドをpGE0180と表示した。これらの2つのベクターを、大腸菌K12-017へ形質転換し、生じた構築物を、流加発酵において発現させて、タンパク質発現及びシグナルペプチド切断パターンの違いを見た。標準曲線を用いたタンパク質濃度分析により、タンパク質発現が3.5g/Lから16.8g/Lへ増加し、すなわち、タンパク質発現における4倍を超える増加が示された(図4)。
【0090】
LC/MS結果
IgG Sepharoseからの溶出液を、LC/MS(Waters社、PA、USA)を用いて分析した。その結果より、参照構築物pGE0002からの溶出液が、以前、実験1において見られた、余分の6AA及び9AAを有する切断部位を含む、様々な異なるシグナルペプチド部位が示された(図5、a)。しかしながら、N末端にDsbA由来の8-AAを付加した場合、シグナルペプチドは、正しく切断され、その結果として、正しい質量の明瞭な単一のピークを生じた(図5、b)。
【0091】
(実施例3)
流加発酵槽におけるタンパク質発現及び標準曲線を用いた濃度分析は、実施例2のように実施した。
【0092】
タンパク質調製
濾過された試料(上記参照)を、10.5mlのCVを有するIgG Sepharose 6FF Tricorn 10カラム(GE Healthcare Bio-Sciences社、Uppsala、Sweden)にアプライした。カラムを高塩濃度ローディングバッファー(50mMリン酸塩、pH 7.0、500mm NaCl)で平衡化し、その後、濃度計算(上記参照)に基づいた0.5~5mL試料を負荷した。負荷後、カラムを、5CVのローディングバッファーで洗浄し、その後、100mM酢酸で溶出した。溶出された試料を収集し、Vivaspin 5、3000Daカットオフ(GE Healthcare Bio-Sciences社、Uppsala、Sweden)を用いておよそ1mg/mlに濃縮した。タンパク質量を、Paceら、Protein Science 4、2411~2423頁、(1995)及びランベルト・ベールの法則に基づいて計算された特定の吸光係数を用いて、280nmにおける吸光度測定値により推定した。試料濃度を、溶出プールにおける総タンパク質質量及び注射された試料の体積を用いて逆算した。その濃度を、アミノ酸分析により確認した。均一性及び分子量を、Waters Q-Tof(PA、USA)における質量分析を用いて分析した。
【0093】
追加の構築物のタンパク質発現結果
スタフィロコッカス・アウレウス プロテインA由来の他のドメイン並びにアルカリ安定化ドメインZvar単量体(Zvar1)及び四量体(Zvar4)へのN末端開始配列の効果を決定するために、プラスミドpJ401を用いて、追加のN末端を有する新しいプラスミドを構築し、流加発酵において発現させた。その結果より、Eドメインが、挿入断片なしで測定可能な発現を生じないことが示された。しかしながら、8AA DsbA開始部分有りで、タンパク質発現は2.9g/Lに及んだ。DドメインとAドメインの両方は、低発現を示し、その低発現は、N末端開始部分を付加することによっても向上しなかった。CドメインとBドメインの両方(開始部分に同じAA配列を有する)は、非常に類似した発現を示し、8AA DsbA開始部分有りで、発現の明らかな増加があった。しかしながら、発現の最も大きい増加は、Zvar単量体及びZvar2単量体(Zvar1及びZvar21)において見られ、それぞれ、4倍を超すタンパク質発現及び10倍を超すタンパク質発現であった。また、Zvar四量体(Zvar4)は、8AA DsbA開始部分有りでタンパク質発現の有意な増加を示したが、その増加は、単量体についてのような劇的なものではなかった。
【0094】
【表5】
【0095】
N末端スペーサーを用いた最初の実験において、2つの分泌経路由来の2つの異なるシグナルペプチドを試験し、この実験においてSec依存性経路を利用するOmpAシグナルペプチドが最も高い発現及びシグナルペプチド切断を生じることが示された。この経路を用いる他のシグナルペプチドは、例えば、PhoA(大腸菌アルカリホスファターゼ)、MalE(大腸菌マルトース結合性タンパク質)、及びPelB(エルウィニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)ペクチン酸リアーゼB)である。反対に、参照構築物(
【化15】
開始部分を有する)は、DsbAシグナルペプチドを用いて、より高いタンパク質発現及びシグナルペプチド切断を生じ、それはシグナルペプチドとN末端の組合せであることを示した。更に、4つの異なるN末端を試験し、OmpAシグナルペプチドを用いる参照構築物と比較して、全て、より良く機能した。驚くべきことに、シグナルペプチド切断が最適に働いた時、タンパク質発現も増加し、シグナルペプチダーゼ切断が、内膜を越えてのタンパク質の輸送における律速酵素であり得ることを示した。理論に縛られるものではないが、仮説は、分泌が最適には働いていない時、タンパク質が、内膜の細孔に「足止め」され、更なる発現を停止するということである。高タンパク質発現の培養物において、そのタンパク質の50%より多くが発酵ブロスにおいて細胞の外側に見出され、細胞外間隙へのペリプラズム漏出を示した。スタフィロコッカス・アウレウス プロテインA由来の他のドメインを試験した場合、Eドメインが測定可能なタンパク質発現を生じないことが見られ、そのことは、それが天然スタフィロコッカス・アウレウス プロテインAにおけるシグナルペプチド後の最初のドメインであることを考慮すれば、予想外であった。しかしながら、1つの重要な違いは、切断部位後の最初のAAが、クローニングのために
【化16】
から
【化17】
へ変化していることであり、シグナルペプチド機能にネガティブに影響するのが、この置換/挿入断片である可能性がある。もう1つの違いは、シグナルペプチドが天然のSpAからOmpAへ置換されていることであり、N末端開始部分と組み合わせてのこれは、最適ではない可能性がある。8AA DsbA N末端を、OmpAシグナルペプチドと組み合わせたEドメインに付加した時、タンパク質輸送及び発現は適切に機能する。更に、N末端近位構造ユニットに非常に密接に関係しているAドメイン及びDドメインは、不十分にしか発現せず、追加のAAによっても向上しないが、このユニットにおいて同一のBドメイン及びCドメインは、AQGT開始部分を以て、十分発現し、8AA DsbAがN末端に付加された場合、発現は更に増加する。また、単量体及び四量体としてのZvarは、追加のAAで発現を増加させる。しかしながら、最も劇的な増加は、Zvar2単量体において見られ、その場合、タンパク質発現は0.68g/Lから7.28g/Lになる。理論に縛られるものではないが、ZvarとZvar2の違いの仮説は、Zvar2が、第1のαヘリックスにおいて位置Q9及びN11に2つの変異を有し、そのことが、GORIV(オンラインのhttps://npsa-prabi.ibcp.fr/cgi-bin/npsa_automat.pl?page=/NPSA/npsa_gor4.html(PRABI, Rhone-Alpes Bioinformatics Center)で利用可能)等のアルゴリズムで計算された場合、そのタンパク質の開始部分においてαヘリックス構造を増加させ、したがって、シグナルペプチダーゼが新生タンパク質のシグナルペプチドを切断することの立体障害を増加させると推定されるということである。
【0096】
(実施例4)
N末端スペーサーのバリアント
N末端挿入断片をそれぞれ、以下のパラメータの1つ又は複数への挿入断片配列の効果を調べるために設計した:タンパク質収量、シグナルペプチド切断、及びアルカリ安定性。その設計は、以下のように4つの別々のカテゴリーへ分けることができる:
1.改変無しで既存の挿入断片の長さを変えること。
2.アルカリ条件での短縮の疑われる部位(グリシン-スレオニン)を除去し、同時に、残存する挿入断片の長さを変えること。
3.短縮の既知の部位におけるグリシンを様々な他の残基と置換すること。
4.全配列を置換すること。
【0097】
カテゴリー1の目的は、主に、シグナルペプチド切断及びタンパク質収量への挿入断片長の効果を調べることであり、アルカリ条件での疑われる短縮部位に明確に取り組むわけではなかった。カテゴリー2及び3は、大部分、アルカリ安定性問題に取り組むことを目的としたが、それらはまた、その他の2つの問題についてのいくらかのデータも提供する。カテゴリー4は、より広げたカテゴリーであり、関心対象となる全ての3つの区域におけるデータを提供するためにより幅広い種類の配列のセットを供給する。ヌクレオチド配列を大腸菌についてコドン最適化したが、より多く繰り返される配列においていくつかの縮重を加えた。カテゴリー1及び4に属する挿入断片を、5'末端においてFspIの消化部位と、及び3'末端においてKpnIの消化部位と相補的であるように設計した。グリシン-スレオニン短縮部位はKpnI制限部位の一部であったため、その代わりとして、カテゴリー2及び3に属する挿入断片を、FspIとの5'相補性を保持しながら、3'末端において隣接のAccI制限部位と相補的であるように設計した。全ての挿入断片のアミノ酸配列はtable 6(表6)に示されている。一般的な構築物の実例は図6に示されている。
【0098】
【表6】
【0099】
最初のN末端挿入断片を除去するために関連制限酵素で消化されたpGE0002か又はpGE0180のいずれかのプラスミドへ、異なるハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドをライゲーションすることにより、構築物を組み立てた。ライゲーション後、プラスミドを大腸菌K12-017細胞へ形質転換した。陽性コロニーを、コロニーPCR及び電気泳動を用いてスクリーニングした。各構築物由来の2個又は3個のコロニーを選択し、配列検証のためにGATC biotech社(Cologne、Germany)へ送った。
【0100】
各構築物について1つの配列検証されたクローンを、振盪フラスコ培養におけるタンパク質発現のために選択した。図7は、IgG Sepharose 6FFで行われた、異なる振盪フラスコ培養物におけるタンパク質収量の定量化からの結果の要約を示す。各構築物について、左の棒は、参照として5g/L及び10g/L標準溶液を用いた線形補正後のタンパク質濃度である。右の棒は、この濃度を培養の終了時点におけるOD600nmで割ったものである。この値は、低いタンパク質濃度が、細胞あたりのタンパク質産生の実際の低い速度によるものか、又は単に、低い培養密度によるものかという見解を与えることを意図される。濃度は、細胞をペレット化し、かつそれらをリン酸緩衝食塩水(Medicago社、Uppsala、Sweden)中に再懸濁した後に測定され、そのようなものとして、例えば複発酵槽(multifermenter)から採取された試料からの濃度と直接、比較できないことを留意されたい。
【0101】
振盪フラスコ培養から生じた各構築物についてのタンパク質溶液を、IgG Sepharose 6FF(GE Healthcare社、Uppsala、Sweden)を用いて精製した。精製されたタンパク質試料を、LC/MS分析(Waters社、PA、USA)を用いてシグナルペプチド切断について調べた。シグナルペプチドが正しく切断されたタンパク質のみが、1つの主要な質量を有し(例えば、図8aに示されたトータルイオンカウント数(TIC))、一方、シグナルペプチドが不正確に切断されたタンパク質は、1つ又は複数の二次ピークを生じる(図8bに示されているように)。主ピークの左側及び右側の更なる副ピークは、そのタンパク質を細胞培養物から抽出する時の熱処理工程中の細胞質からの漏出による可能性が高い。ピークC1~C5、N1、及びN2は、細胞質からのそのタンパク質の種々の部分的消化されたバージョンである可能性が高い。主ピークの右側の小さいピークは、切断されていないシグナルペプチドを有するタンパク質であり、それは、細胞質からの漏出が起きたかどうかを見るのに妥当である。
【0102】
多くの場合、ピークは、試料の純度及び液体クロマトグラフィー工程中の不十分な分離のせいで、決定的に解釈することは困難であった。しかしながら、以下の構築物が正しいシグナルペプチド切断を生じたことは見ることができた:pGE0180、DsbA7、DsbA6、DsbA8_noGT、DsbA8_DT、DsbA8_ET、DsbA8_AT、DsbA7_EDT、DsbA12、DsbA16、H8、H6、及びSPA。
【0103】
シグナルペプチド切断調査後、正しいシグナルペプチド切断を生じた構築物のタンパク質溶液を、Capto Q ImpRes陰イオン交換カラム(GE Healthcare社、Uppsala、Sweden)を用いて更に精製した。精製された試料を、1M水酸化ナトリウム(NaOH)での0時間、4時間、及び24時間の処理に供した。Vivaspinカラム(GE Healthcare社、Uppsala、Sweden)を用いて、短縮された可能性があるいかなる小さいペプチドからも主要タンパク質を分離した。ペプチド試料と主要タンパク質の両方を、LC/MS(Waters社、PA、USA)を用いて調べた。
【0104】
ペプチドは、+2電荷をもって、マススペクトルに出現し、すなわち、mass over charge(m/z)における値が、それらの分子量の半分に対応する。ここで調べられた事例において、ペプチドは全て、約800Daから1600Daの間の分子量を有した。そのようなものとして、関連したピークのクラスターは、図9における左側のpGE0180について見られるように、400m/zから800m/zの間に出現した。
【0105】
ペプチドが存在する場合、MassLynx検索機能をTICにおいて用いて、抽出イオンクロマトグラム(XIC)として異なるペプチド質量のピークを抽出した。XICピークを積分し、その後、積分された面積を用いて、試料における異なるペプチドの量を比較した。
【0106】
図10は、洗浄されないVivaspinカラムで行われた最初のアルカリ安定性研究からの結果の要約を示す。かなりのバックグラウンドノイズの重なりにも関わらず、24時間のインキュベーション後、明瞭なパターンが目に見える。
【0107】
図11は、最も有望な構築物(参照としてpGE0180を含む)についての同じデータの異なる観点を示し、一方、図12は、最も顕著に切断された構築物の分解を示す。切断部位の周りの配列は、どんな残基が脆弱であり得るかということを示すために含まれる。とりわけ、低いピーク面積(約5000面積単位)について、バックグラウンドノイズが有意な影響を及ぼしている。
【0108】
イソプロパノールで洗浄されたスピンカラムでの第2の分析は、最初の実行とほとんど類似した結果をもたらしたが、ピーク面積は低下した。注目すべき例外はDsbA6であり、それはいくつかの切断を生じることが明らかになった。これは、ペプチド分析から直接検出はできなかったが、その残余分を調べた時、明らかになり、DsbA6は、pGE0180とほぼ同じように、明瞭な短縮型ピークを示し、一方、DsbA8_noGT及びDsbA_DTはそのようなピークを示さなかった。
【0109】
(実施例5)
振盪フラスコ研究及び精製されたタンパク質のその後の分析からの興味深い構築物を、複発酵槽(Belach Bioteknik社、Skogas、Sweden)におけるよりラージスケールでの培養のために選択した。発酵の終了時において、OD600nm及びタンパク質濃度を測定した(図13参照)。
【0110】
異なるタンパク質は、若干変動する消衰係数を有するため、それらが237nm(タンパク質濃度が推定された所)における吸光度においても同様に異なり得ることは理にかなっている。したがって、pGE0180消衰係数(0.294)とそれぞれ他のタンパク質についての計算された消衰係数との比を用いて、より「真の」値を推定した。
【0111】
構築物DsbA8_noGT及びDsbA8_DTの流加培養物を熱処理して、ペリプラズムタンパク質を抽出し、細胞片を除去するために遠心分離及びダイアフィルトレーションを行った。濾液を、沈殿によっていくらかの混入物を除去するように調節し、pH勾配を用いるCapto S ImpAct(GE Healthcare社、Uppsala、Sweden)での精製のためにその溶液を調製した。溶出液を、二量体を除去するために還元し、DTTを除去し、かつ塩勾配が用いられる陰イオン交換精製のための正しいバッファーを得るために脱塩した。最終の精製された溶液は、所望のリガンド密度での固定化に必要とされる濃度に達するように、膜限外濾過によって濃縮した。最終産物を、純度についてSECを用いて、及び分子量についてLC/MSを用いて分析し、満足な結果を得た。
【0112】
Zvar2が、類似した性質の基本マトリックス上に固定化され、動的結合容量について分析された前の実験と類似したリガンド密度を目指して、精製されたタンパク質(>90%純度)を、高度架橋アガロースビーズにカップリングした。カップリングされたゲルを、Tricorn 5/100カラム(GE Healthcare社、Uppsala、Sweden)に充填した。ゲルベッドの充填を、アセトンピークの非対称性により評価した。充填カラムを用いて、IgGを用いるゲルの動的結合容量を測定した。1構築物あたり1測定を行った。結果はtable 7(表7)に要約されている。図14は、この実例において行われた測定と前述の前の実験において行われた測定との比較を示す。
【0113】
【表7】
【0114】
(実施例6)
N末端スペーサーAQYEDGKQYTGT及びC末端システインを、OmpAシグナルペプチドを用いるいくつかのZvar2の単量体及び二量体の更なる変異体(下記に列挙されている)に導入した。
【0115】
プラスミドを、化学的コンピテント大腸菌K12-017細胞へ形質転換した。その細胞を、氷上で30分間、解凍し、50μl コンピテント細胞を20ngプラスミドに加えた。細胞を氷上で20分間、インキュベートし、その後、42℃で1分間、ヒートショックを与え、その後、氷上で5分間、インキュベートし、400μl SOC培地(NEB社、MA、USA)を加えた。形質転換反応物を、回転式振盪インキュベーターにおいて37℃で60分間、インキュベートし、各反応物の200μlを、適切な選択抗生物質を含有するLuria寒天プレート上に広げた。
【0116】
組換えプラスミド(Table 8(表8))で形質転換された大腸菌株K12-017を、100ml Terrific Broth(TB)培地(1リットルあたり12g トリプトン、24g 酵素抽出物、5g グリセロール(85%)、2.31g KH2PO4、12.54g K2HPO4、及び50mgのカナマイシン硫酸塩を含有)中、37℃で培養した。培養物を、OD600nmが1に達した時、1mM IPTG(Sigma Aldrich、MO、USA)を用いて誘導した。培養物を更に、30℃で17~20時間、インキュベートした。培養溶液を、スイングアウトローターにおいて20分間の低速遠心分離(4,000rpm)に供し、湿った細胞ペレットを収集した。細菌細胞ペレットを、10mlの25mMリン酸バッファー溶液(pH 7.4)中に懸濁し、細胞を、ヒートブロック内、85℃で15分間、熱処理により溶解した。その後、高速遠心分離(10,000xg)を10分間、行って、上清を分離した。その後、上清を、0.2μmシリンジフィルターを通して濾過して、いかなる残留粒子も除去し、その後、それを、XK 16-6 IgG Sepharose 6FF(GE Healthcare Bio-Sciences社、Uppsala、Sweden)にアプライした。カラムを、ローディングバッファー(25mM リン酸塩 pH7、250mM NaCl)で平衡化し、その後、試料を負荷した。負荷後、カラムを、5カラム体積(CV)のローディングバッファー及び1CVの低塩洗浄バッファー(50mM酢酸塩 pH 6)で洗浄し、その後、50mM 酢酸、pH 2.8で溶出した。237nmにおける吸光度を、AKTA explorer 100(GE Healthcare Bio-Sciences社、Uppsala、Sweden)を用いてインラインで測定し、溶出されたピークのピーク積分を、システムソフトウェア(Unicorn 5.1)において実施した。
【0117】
IgG結合画分を溶出して、プールに収集し、そのプールの体積及びタンパク質濃度を書き留めた(table 8(表8)参照)。発現したIgG結合性タンパク質の量は、いくつかの事例では、培地へ分泌されたタンパク質の損失及び/又はIgGカラムの過負荷のせいで、回収された量より高い可能性がある。
【0118】
【表8A】
【0119】
【表8B】
【0120】
Zvar2(A29G)単量体(配列番号48)
【化18】
Zvar2 (A29S)単量体(配列番号49)
【化19】
Zvar2 (A29Y)単量体(配列番号50)
【化20】
Zvar2 (A29Q)単量体(配列番号51)
【化21】
Zvar2 (A29T)単量体(配列番号52)
【化22】
Zvar2 (A29N)単量体(配列番号53)
【化23】
Zvar2 (A29F)単量体(配列番号54)
【化24】
Zvar2 (A29L)単量体(配列番号55)
【化25】
Zvar2 (A29W)単量体(配列番号56)
【化26】
Zvar2 (A29I)単量体(配列番号57)
【化27】
Zvar2 (A29M)単量体(配列番号58)
【化28】
Zvar2 (A29V)単量体(配列番号59)
【化29】
Zvar2 (A29D)単量体(配列番号60)
【化30】
Zvar2 (A29E)単量体(配列番号61)
【化31】
Zvar2 (A29H)単量体(配列番号62)
【化32】
Zvar2 (A29R)単量体(配列番号63)
【化33】
Zvar2 (A29K)単量体(配列番号64)
【化34】
Zvar2 (Δ235,236,237)二重体(配列番号65)
【化35】
Zvar2 (Δ233、234、235)二重体(配列番号66)
【化36】
Zvar2 (Δ5-1)二重体(配列番号67)
【化37】
Zvar2 (Δ5-2)二重体(配列番号68)
【化38】
Zvar2 (D3C末端)二重体(配列番号69)
【化39】
Zvar2 (D3N末端)二重体(配列番号70)
【化40】
Zvar2 (D8N末端)二重体(配列番号71)
【化41】
Zvar2 (リンカー+8)二重体(配列番号72)
【化42】
Zvar2 (リンカー+4)二重体(配列番号73)
【化43】
Zvar2 (ΔQ9)単量体(配列番号74)
【化44】
Zvar2 (ΔQ40)単量体(配列番号75)
【化45】
Zvar2 (ΔA42)単量体(配列番号76)
【化46】
Zvar2 (ΔN43)単量体(配列番号77)
【化47】
Zvar2 (ΔL44)単量体(配列番号78)
【化48】
Zvar2 (E11N、A12F)単量体(配列番号79)
【化49】
Zvar2 (E11N、A12Y)単量体(配列番号80)
【化50】
Zvar2 (E11N、A12K)単量体(配列番号81)
【化51】
Zvar2 (E11N、A12R)単量体(配列番号82)
【化52】
Zvar2 (L22F)単量体(配列番号83)
【化53】
Zvar2 (A43N、I44F)単量体(配列番号84)
【化54】
Zvar2 (A43N、I44Y)単量体(配列番号85)
【化55】
Zvar2 (A43N、I44W)単量体(配列番号86)
【化56】
Zvar2 (A43N、I44R)単量体(配列番号87)
【化57】
Zvar2 (A43N、I44K)単量体(配列番号88)
【化58】
Zvar2 (D53F)単量体(配列番号89)
【化59】
Zvar2 (D53Y)単量体(配列番号90)
【化60】
Zvar2 (D53W)単量体(配列番号91)
【化61】
Zvar2 (D53K)単量体(配列番号92)
【化62】
Zvar2 (D53R)単量体(配列番号93)
【化63】
【0121】
この書面による説明は、最良のモードを含め、本発明を開示するために例を用い、また、任意のデバイス又はシステムを作製及び使用すること、並びに任意の組み込まれた方法を実施することを含め、任意の当業者が本発明を実施することを可能にするために例を用いる。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に思い浮かぶ他の例も含まれ得る。そのような他の例は、それらが、特許請求の範囲の文字通りの言語と異ならない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の文字通りの言語との非実質的な違いがある等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲の範囲内であることを意図される。本文で言及された任意の特許又は特許出願は、あたかもそれらが個々に組み込まれているかのように、全体として参照により本明細書に組み込まれている。
図1
図2
図3
図4
図5a)】
図5b)】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
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