(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】地域内建物群構造
(51)【国際特許分類】
E04H 1/00 20060101AFI20240520BHJP
E04H 3/02 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
E04H1/00
E04H3/02 A
(21)【出願番号】P 2021570635
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2020025684
(87)【国際公開番号】W WO2021145011
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2020004075
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500240863
【氏名又は名称】株式会社ランドビジネス
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】亀井 正通
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-081715(JP,A)
【文献】特開平09-242351(JP,A)
【文献】特開2001-227161(JP,A)
【文献】特開2003-313952(JP,A)
【文献】特開2007-077698(JP,A)
【文献】特開2017-101516(JP,A)
【文献】榎本浩之、中村幸悦,免・制震建築訪問記90 早稲田大学「早稲田キャンパス新3号館」,MENSHIN,日本免震構造協会,2015年05月,20-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00-1/14
E04H 3/00-4/16
E04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの地域内に特定のテーマを共有する3棟以上のキャラクタライズド建物が配置された地域内建物群構造であって、前記個々のキャラクタライズド建物は、
古代、近代または現代の有名な都市のイメージに基づく外観および装飾
を備えた1階以上5階以内の鉄筋コンクリート構造または鉄骨鉄筋コンクリート構造を主体とする構造の下層階層と、前記下層階層の上方に位置
し、鉄骨構造を主体とする強度、耐久性および低コストを重視したシンプルな外観および構造の上層階層とを備え、1つの地域内に配置された前記キャラクタライズド建物どうしの
前記下層階層の外観および装飾に関する基本デザインと構造形式につい
て統一性を持たせてあることを特徴とする地域内建物群構造。
【請求項2】
請求項1記載の地域内建物群構造において、前記1つの建物群を構成するキャラクタライズド建物が4~10棟であることを特徴とする地域内建物群構造。
【請求項3】
請求項1記載の地域内建物群構造において、前記1つの建物群を構成するキャラクタライズド建物が11棟以上であることを特徴とする地域内建物群構造。
【請求項4】
請求項1記載の地域内建物群構造において、前記上層階層は、前記下層階層の上部に一体的に構築されていることを特徴とする地域内建物群構造。
【請求項5】
請求項1記載の地域内建物群構造において、前記上層階層の下部には、外周部が前記下層階層で囲まれる内部下層階層が一体的に構築されていることを特徴とする地域内建物群構造。
【請求項6】
分散配置された複数の都市地域について、前記都市地域ごとに異なる特定のテーマが設定され、それぞれの都市地域については、それぞれの都市地域内に特定のテーマを共有する3棟以上のキャラクタライズド建物が配置されており、前記個々のキャラクタライズド建物は、
古代、近代または現代の有名な都市のイメージに基づく外観および装飾
を備えた1階以上5階以内
の鉄筋コンクリート構造または鉄骨鉄筋コンクリート構造を主体とする構造の下層階層と、前記下層階層の上方に位置
し、鉄骨構造を主体とする強度、耐久性および低コストを重視したシンプルな外観および構造の上層階層とを備え、それぞれの地域内に配置された前記キャラクタライズド建物どうしの
前記下層階層の外観および装飾に関する基本デザインと構造形式につい
て統一性を持たせてあることを特徴とするキャラクタライズドシティー群構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地域内に特定のテーマを共有する複数のキャラクタライズド建物を配置した地域内建物群構造に関するものである。
【0002】
外観面においては、例えば下層階層については芸術性および装飾性を重視した古典的または伝統的な外観を与える基本デザインおよび構造様式に統一し、上層階層については強度および耐久性を重視したシンプルな現代的または近未来的な外観を与える基本デザインおよび構造様式に統一するものである。
【背景技術】
【0003】
人口の集中する都市においては、中高層建築物が立ち並び、人々は近代的な都市景観の中で暮らしている。しかしながら、ともすると風情のある昔の街並みの面影が失われ、無味乾燥な風景となる傾向がある。
【0004】
もちろん、中高層建築物の中にも多大な建設費用をかけて、ランドマークとなる近未来的な外観を備えた素晴らしい建築物もあるが、地域全体でみるとコスト的な困難性もあり、統一性のない不釣合いな都市景観が生まれることになりかねない。
【0005】
都市構造に関しては、例えば、特許文献1に、新たに都市を構築する場合に不可欠な機能を地下に一括して構築するようにした都市構造として、自動車道路、鉄道などの交通網、情報網、エネルギー供給路、エネルギー排出路などの都市機能に必要な幹線構造物を地下に集約して構築するとともに、該地下幹線構造物の地表部を遊歩道とした都市構造が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、エネルギーセンターを中心にその周囲に複数の超高層都市を配置し、相互間にエネルギーや情報を配給する地下都市トンネルで結ぶことで、安全性に基づいた省エネルギー化を図り、地表部での林、牧草、農耕面積を拡大して公害をなくし、住環境を良くした大都市構造が開示されている。
【0007】
特許文献3には、都市型洪水を抑制する都市構造システムとして、アスファルトやコンクリート等による地表面被覆率が少なくとも60%であり、車道、歩道、駐車場、自動車ターミナル等の都市施設の舗装率が少なくとも85%である市街地について、少なくともその4%の地域であって、かつ地表面被覆地域に、保水性舗装が施されていることを特徴とする都市構造システムが開示されている。
【0008】
また、特許文献4には、複数棟の高層住宅により構成される高層集合住宅都市に、高層住宅に囲まれる公園を配置し、その公園に、魚の住む池と、果実の実る樹木と、腐葉土を作る落ち葉ゾーンを設け、生物生息空間を造り上げる都市創造が開示されている。
【0009】
また、特許文献5には、免震支持された低層部の上に高層部が構築された免震・制振併用構造物における高層部の変形及び振動の増幅を抑制することを目的として、高層部の最下階の剛性を低くして変形しやすくし、最下階を制振階として長周期化させ、かつ変形を集中させることで、高層部の変形および振動の増幅を抑制する構造が開示されている。
【0010】
また、その実施形態として、低層部を鉄骨鉄筋コンクリート造またはコンクリート充填鋼管構造の柱と鉄骨造の梁とコア耐震壁架構とで構成された耐震壁を有するラーメン構造とし、高層部を鉄骨造またはコンクリート充填鋼管造の柱と鉄骨造の梁とで構成されたブレースを有するラーメン構造とすることが記載されている。
【0011】
この他、非特許文献1には、日本国東京都新宿区の早稲田大学早稲田キャンパス内に、2014年9月に竣工された新3号館が紹介されており、この新3号館は再現棟(1階から5階まで)と高層棟で構成され、その棟間において制震構造が採用されている。再現棟は地域の象徴である大隈記念講堂を中心とした歴史継承ゾーンにおいて、1933年の竣工から約80年の歴史を有する旧3号館の景観継承を意識した建物として、周辺建物との連続性を考慮して旧3号館南側を再現し、かつての情景を将来へ繋げる設計となっている旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】日本国特開平09-302689号公報
【文献】日本国特開平10-246005号公報
【文献】日本国特開2004-019298号公報
【文献】日本国特開平11-081715号公報
【文献】日本国特開2017-101516号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】榎本浩之、中村幸悦、“免・制震建築訪問記90 早稲田大学「早稲田キャンパス新3号館」”、20-23頁、[online]、平成27年5月、日本免震構造協会、[20202年6月22日検索]、インターネット〈URL:https://www.jssi.or.jp/bussiness/shuppan_detail/kaishiback/88-homonki-waseda3.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した特許文献1~3記載の発明は、自然環境との調和を図りつつ、主として利便性の観点から近未来的な都市構造を企図したものであるが、これまで人類が培ってきた伝統や、芸術性を備えた懐かしい昔ながらの街並みの風情からはかけはなれたものとなっている。
【0015】
特許文献4記載の発明は、複数棟の高層住宅により構成される高層集合住宅都市に、魚の住む池と、果実の実る樹木と、腐葉土を作る落ち葉ゾーンを備えた公園を設け、生物生息空間を造り上げることを主目的としたものであり、高層住宅自体の景観や経済性は特に考慮されていない。
【0016】
特許文献5記載の発明は、低層部の上に高層部が構築される建物について、建物全体としての耐震性の向上を図ったものであるが、建物自体の景観や経済性は特に考慮されていない。
【0017】
非特許文献1記載の発明は、伝統のある古い建物を高層建物に建て替える際に、周囲の伝統のある建物との連続性において、それらの風情・趣を残す目的で、建て替える前の伝統のある建物の外観、デザインを高層建物の一部に残したものであるが、特定の1つの建物の設計にとどまり、地域全体が特定のテーマのもとに統一的に設計されるものではない。
【0018】
本発明は、芸術性および装飾性を備えた古典的または伝統的な街並みの景観、雰囲気を残しつつ、地域全体として利便性、経済性の高い地域内建物群構造を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、1つの地域内に特定のテーマを共有する3棟以上のキャラクタライズド建物が配置された地域内建物群構造であって、前記個々のキャラクタライズド建物は、外観および装飾に関する基本デザインと構造形式に統一性を持たせた下層階層と、前記下層階層の上方に位置する上層階層とを備え、1つの地域内に配置された前記キャラクタライズド建物どうしの下層階層の外観および装飾に関する基本デザインと構造形式についても統一性を持たせてあることを特徴とするものである。
【0020】
本発明でいうキャラクタライズド建物とは、建物の下層階層について、後述するような特定のテーマのもとに、特徴的な外観や装飾を施した建物を意味する。
【0021】
また、ここでいう下層階層は、例えば1階から5階程度までの所定階までの階層を意味し、地域内の街を通行する人々の視線が最も集まる範囲を想定している。ただし、下層階層と上層階層の構造形式の区分の観点からは、下層階層の一部が5階以上であってもよい。また、建物群を構成する全ての建物について、下層階層の範囲を同一階とする必要はなく、建物ごと下層階層の階数が異なっていてもよい。
【0022】
また、地下階を有する場合、外観に関しては地中部であるため見えないが、地下階の内装について、下層階層についてのテーマに合わせて、基本デザインや構造形式に下層階層との統一性を持たせるようにしてもよいし、あるいは地下階については上層階層と同様に機能性、耐久性を重視した構造や内装としてもよい。
【0023】
このような地域内建物群構造において、下層階層については例えば芸術性および装飾性を重視した古典的または伝統的な外観を与える基本デザインおよび構造様式に統一し、上層階層については機能性および耐久性を重視したシンプルな現代的または近未来的な外観を与える基本デザインおよび構造様式に統一するといった設計を行うことができる。
【0024】
その場合、地域内の街を通行する人々は、通常の目線において、温かみのある懐かしい華やかな街に暮らす気分を味わうことができる。
【0025】
この下層階層は、コストをかけて施主や設計者の感性を実現すべく、古来の素材、熟練工の技術なども利用し、人類の数千年に及ぶ歴史、美術も組み込んだ芸術性の高いものとすることもできる。
【0026】
一方、通常の目線から外れる上層階層については、機能性および耐久性を重視し、コストを極力抑えた範囲で、鋼構造の骨組に加え、外装材なども耐力の高い材料を用いることで、建築コストおよび維持管理にかかるコストを低減することができる。
【0027】
すなわち、下層階層については、芸術性、装飾性を高めたものとし、建設コストや維持コストも高くつくことを許容しつつ、上層階層については、例えば数百年の耐久性を持たせる設計により、維持コストを大幅に抑えることができる。
【0028】
例えば、下層階層を3階建て、上層階層を30階建てとし、1階から3階までの建設コストあるいは維持コストを100として、4階から30階までの建設コストあるいは維持コストが25となるように設計すれば、上層階層の相対コストが1/4となることになり、建物全体でみたときに、下層階層の高額なコストを上層階層の相対的に低額なコストにより相殺させることができる。
【0029】
なお、建物については、ベース、シャフト、クラウンといった3つの構成でとらえられることも多く、ボリュームの多い上層階層部分を比較的安価なリーズナブルな価格に仕上げ、下層階層部分をより内容の濃いものに仕上げるという概念の中で、例えば最上階層の一部についてはスカイラインを美しくするためにレベルの高い設計とするといったことも本発明の概念に含まれる。
【0030】
1つの建物群を構成するキャラクタライズド建物は3棟以上とするが、1つの地域として特定のテーマのもとに統一的な建物群を構成するためには、できれば4~10棟、さらにはそれ以上の数のキャラクタライズド建物からなる建物群を構成させることが望ましい。
【0031】
キャラクタライズド建物の下層階層を対象とする特定のテーマとしては、例えば、
(a)古代、近代または現代の有名な都市のイメージに基づくテーマ、または、
(b)未来都市のイメージに基づくテーマ、または、
(c)文学、童話または昔ばなしのイメージに基づくテーマ、
などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
このような特定のテーマのもとに造り上げた多数のキャラクタライズド建物を有する地域はキャラクタライズドシティーとしてとらえることができ、そこに住む住人、外部からの訪問者は、そのテーマのイメージに基づく街並、雰囲気を感じることができる。
【0033】
他方、上層階層については、コストや機能性を重視したシンプルな中高層建物として構築することで、限られた面積のキャラクタライズドシティーに大勢の人々が快適に暮らすことができる生活空間および経済活動のための空間を形成させることができる。
【0034】
下層階層と上層階層の建物としての構造的な関係における一形態としては、外観および装飾に関する基本デザインと構造形式に統一性を持たせた下層階層の上部に、上層階層を一体的に構築する形態とすることができる。上層階層については、大勢の人々の生活空間、経済活動空間として、コストや機能性を重視したシンプルな構造とすることができるが、その場合も建物の耐久性や耐震機能は重要である。
【0035】
この場合、例えば下層階層は多様な外観や装飾に関するデザイン化が比較的容易な鉄筋コンクリート構造または鉄骨鉄筋コンクリート構造を主体とする構造とし、上層階層は中高層建物としての耐久性の確保が比較的容易な鉄骨構造を主体とする構造とすることが考えられる。
【0036】
また、下層階層と上層階層は剛な接合部で一体化する場合の他、下層階層とその上に位置する上層階層との間に免震層を設け、地震時における上層階層の揺れを抑える構造とすることもできる。
【0037】
下層階層と上層階層の建物としての構造的な関係における他の形態としては、上層階層の下部に、外周部が下層階層で囲まれる内部下層階層が一体的に構築された形態が考えられる。
【0038】
この場合、例えば下層階層は多様な外観や装飾に関するデザイン化が比較的容易な鉄筋コンクリート構造または鉄骨鉄筋コンクリート構造を主体とする構造とし、上層階層および内部下層階層は中高層建物としての耐久性の確保が比較的容易な鉄骨構造を主体とする構造とすることが考えられる。
【0039】
また、上層階層および内部下層階層を一体の中高層建物とし、その外周を取り囲む形で下層階層を設ける場合、内部下層階層を一体とした上層階層と下層階層との間を構造的に切り離して設計し、内部下層階層と下層階層との間をエキスパンションジョイントなどの相対変形が許容される構造としたり、これらの間に制震用のダンパーを介在させて地震時の応答を低減させるようにしてもよい。
【0040】
また、本発明においては、上述した、特定のテーマを共有するキャラクタライズド建物群によって構成される地域内建物群を1つのキャラクタライズドシティーととらえ、分散配置された複数の都市地域、すなわち複数のキャラクタライズドシティーについて、キャラクタライズドシティーごとに異なる特定のテーマを設定したキャラクタライズドシティー群構造とすることができる。
【0041】
このようなキャラクタライズドシティー群内に、それぞれ異なるテーマのもとに構築された多数のキャラクタライズドシティーが存在することで、人々は好みに応じたキャラクタライズドシティーを生活の拠点とし、また異なるテーマのキャラクタライズドシティーを観光目的などで訪れることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の地域内建物群構造は、地域内に建設される特定のテーマを共有するキャラクタライズド建物群全体を統一的に下層階層と上層階層に区分し、特定のテーマのもと、下層階層については、例えば芸術性および装飾性を重視した古典的または伝統的な外観を与える基本デザインおよび構造様式に統一することで、街を歩く人々は芸術性の高い、魅惑的な街に住んでいる実感を味わうことができる。
【0043】
上層階層については、コストや機能性、耐久性を重視したシンプルな中高層建物として構築することで、限られた面積のキャラクタライズドシティーに大勢の人々が快適に暮らすことができる生活空間および経済活動のための空間を形成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の一実施形態としてイギリスの都市のイメージを下層階層のテーマとした地域内建物群構造を示す斜視図である。
【
図2】本発明の地域内建物群構造を概念的に示した立面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態として古代遺跡のイメージを下層階層のテーマとした地域内建物群構造を示す鳥瞰図である。
【
図7】本発明の他の実施形態としてスペインの都市のイメージを下層階層のテーマとした地域内建物群構造を示す鳥瞰図である。
【
図8】本発明の他の実施形態として水上都市のイメージを下層階層のテーマとした地域内建物群構造を示す鳥瞰図である。
【
図9】本発明の他の実施形態としてイタリアの都市のイメージを下層階層のテーマとした地域内建物群構造を示す鳥瞰図である。
【
図10】本発明の他の実施形態としてフランスの都市のイメージを下層階層のテーマとした地域内建物群構造を示す鳥瞰図である。
【
図11】本発明において分散配置された複数のキャラクタライズドシティー都市から構成されるキャラクタライズドシティー群構造を概念的に示した鳥瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の地域内建物群構造の一実施形態を添付した図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態としてイギリスの都市、例えばロンドンの街並のイメージを下層階層2のテーマとした地域内建物群構造を示したものである。
【0046】
1つのキャラクタライズドシティーを構成する地域内に、特定のテーマを共有する3棟以上のキャラクタライズド建物1が配置され、各キャラクタライズド建物1の下層階層2どうしについて、そのテーマのもとに外観および装飾に関する基本デザインと構造形式に統一性を持たせている。
【0047】
図1の実施形態においては、下層階層2について、例えばイギリスのビクトリアン様式のレンガ調の華やかな装飾を施した外観イメージを基本デザインに取り入れつつ、構造的には鉄筋コンクリート構造あるいは鉄骨鉄筋コンクリート構造などの頑強な構造とし、内装などについてもコストをかけたゴージャスな構造とすることを想定している。
【0048】
下層階層2は、例えば2~3階建てとし、部分的には1階部分のみとしたり、個々のキャラクトタライズド建物については、場合によっては5階部分程度までを基本デザインを統一した下層階層とすることができる。
【0049】
上層階層3については、大勢の人々の生活空間、経済活動空間として、コストや機能性、さらに耐久性などを重視し、下層階層2にかける高コストを相殺すべく、シンプルな耐費用効果の高い構造とすることを想定している。
【0050】
図2は本発明の地域内建物群構造の概念図として、特定のテーマのもと、下層階の基本デザインおよび構造形式について統一性を持たせた2つの集合住宅(レジデンス)R1、R2と1つのオフィスビルO、1つのホテルHの4つのキャラクタライズド建物1からなる建物群を示している。実際にはより多数の建物、例えば5~10棟、あるいはそれ以上の数の建物からなる建物群に適用することもできる。
【0051】
図3は
図2におけるA部分の拡大図、
図4はB部分の拡大図、
図5はC部分の拡大図である。本発明では、都市計画としてある地域内に建設される複数の建物から構成される建物群全体を統一的に低層の下層階層2とその上方に位置する上層階層3に区分し、下層階層の構造形式をコンクリートを主体とする構造形式とし、上層階層の構造形式を鋼を主体とする構造形式とする。
【0052】
外観面においては、例えば図示したように、下層階層LLについては芸術性および装飾性を重視した古典的または伝統的な外観を与える基本デザインおよび構造様式に統一し、上層階層HLについては強度および耐久性を重視したシンプルな現代的または近未来的な外観を与える基本デザインおよび構造様式に統一する。
【0053】
下層階層LLについては、設計者や施主の求めている感性を実現すべく、外装および内装に昔ながらの懐かしいあたたかい雰囲気あるいは重厚、豪華な雰囲気を醸し出す材料、素材を用いる。芸術性の高い、魅惑的な空間を実現するためには、高価な材料を用い、熟練工による丁寧な作業により下層階層LLの構築を行う。
【0054】
このような素晴らしい素材、自由な発想、古典的セオリーによる下層階層LLは、街を歩く人々の目線から数m上程度、例えば1階から5階程度に設定することで、人々は芸術性の高い、魅惑的な街に住んでいる実感を味わうことができる。
【0055】
一方、上層階層HLについては、建設計画における主眼を強度および耐久性におき、外観としてはコストをできるだけ抑え、シンプルな構造、外観とする。
【0056】
考え方としては、上層階層HLについて、強度、耐久性の面では、100年、500年、1000年といった耐用年数でとらえ、設備関係についても強度の高いものを用い、また設備スペースにも十分な空間をとり、簡単に補修、交換できるものとする。
【0057】
建物躯体について、一般的な耐用年数を例えば50年としたとき、500年耐用できれば、耐用年数に関するベーシックコストが1/10となる。
【0058】
なお、上層階層HLの内装については、各住戸の居住者の希望に応じて、グレードの高い内装とすることもできる。
【0059】
図6は本発明の他の実施形態として、古代遺跡、例えばローマ遺跡のイメージを下層階層のテーマとした地域内建物群構造を示したものである。
【0060】
1つのキャラクタライズドシティーを構成する地域内に、特定のテーマ、ここではローマ遺跡のイメージを共有する3棟以上のキャラクタライズド建物1が配置され、各キャラクタライズド建物1の下層階層2どうしについて、そのテーマのもとに外観および装飾に関する基本デザインと構造形式に統一性を持たせている。
【0061】
図6の実施形態においては、下層階層2の外観について、古代ローマ建築の様式を基本デザインに取り入れつつ、構造的には鉄筋コンクリート構造あるいは鉄骨鉄筋コンクリート構造などの頑強な構造とし、内装などについてもローマ遺跡をイメージしたコストをかけたゴージャスな構造とすることを想定している。
【0062】
基本デザインを統一した下層階層2は、例えば階高の高い1階建て、部分的には2~3階建てとすることができる。
【0063】
上層階層3については、大勢の人々の生活空間、経済活動空間として、コストや機能性、さらに耐久性などを重視し、下層階層2にかける高コストを相殺すべく、シンプルな耐費用効果の高い構造とすることを想定している。
【0064】
また、別途、地域内に、例えば、コロッセオ、スペイン階段、フォロ・ロマーノなどローマ遺跡の観光スポットを模したモニュメント11、12、13などを造ることで、キャラクタライズドシティーとしてのイメージを高めることができる。
【0065】
図7は本発明のさらに他の実施形態として、スペインの都市、例えばバルセロナの街並のイメージを下層階層のテーマとした地域内建物群構造を示したものである。
【0066】
1つのキャラクタライズドシティーを構成する地域内に、特定のテーマ、ここではスペインの都市のイメージを共有する3棟以上のキャラクタライズド建物1が配置され、各キャラクタライズド建物1の下層階層2どうしについて、そのテーマのもとに外観および装飾に関する基本デザインと構造形式に統一性を持たせている。
【0067】
図7の実施形態においては、下層階層2について、例えばアントニ・ガウディなどのバルセロナの著名な建築家による19世紀から20世紀初頭の建物の外観イメージを基本デザインに取り入れつつ、構造的には鉄筋コンクリート構造あるいは鉄骨鉄筋コンクリート構造などの頑強な構造とし、内装などについてもコストをかけた構造とすることを想定している。
【0068】
下層階層2は例えば2~3階建てとし、部分的には1階部分のみとしたり、個々のキャラクトタライズド建物については、場合によっては5階部分程度までを基本デザインを統一した下層階層とすることができる。
【0069】
上層階層3については、大勢の人々の生活空間、経済活動空間として、コストや機能性、さらに耐久性などを重視し、下層階層2にかける高コストを相殺すべく、シンプルな耐費用効果の高い構造とすることを想定している。
【0070】
また、別途、地域内に、例えば、サグラダ・ファミリア教会、トーレ・アグバール、その他の有名な建物などを模したモニュメント21、22、23などを造ることで、キャラクタライズドシティーとしてのイメージを高めることができる。
【0071】
図8は本発明のさらに他の実施形態として、水上都市、例えばヴェネチアの街並のイメージを下層階層のテーマとした地域内建物群構造を示したものである。
【0072】
1つのキャラクタライズドシティーを構成する地域内に、特定のテーマ、ここではヴェネチアのような水上都市内の建物のイメージを共有する3棟以上のキャラクタライズド建物1が配置され、各キャラクタライズド建物1の下層階層2どうしについて、そのテーマのもとに外観および装飾に関する基本デザインと構造形式に統一性を持たせている。
【0073】
図8の実施形態においては、下層階層2について、回廊やゴシック風の連続アーチ、イスラム建築の装飾などを基本デザインに取り入れつつ、構造的には鉄筋コンクリート構造あるいは鉄骨鉄筋コンクリート構造などの頑強な構造とし、内装などについてもコストをかけた構造とすることを想定している。
【0074】
下層階層2は例えば2~3階建てとし、部分的には1階部分のみとしたり、個々のキャラクトタライズド建物については、場合によっては5階部分程度までを基本デザインを統一した下層階層とすることができる。
【0075】
上層階層3については、大勢の人々の生活空間、経済活動空間として、コストや機能性、さらに耐久性などを重視し、下層階層2にかける高コストを相殺すべく、シンプルな耐費用効果の高い構造とすることを想定している。
【0076】
また、別途、地域内に、例えば、サン・マルコ広場のカフェ・フローリアン、リアルト橋、運河などを模したモニュメント31、32などを造ることで、キャラクタライズドシティーとしてのイメージを高めることができる。
【0077】
図9は本発明のさらに他の実施形態として、イタリアの都市、例えばフィレンツェの街並のイメージを下層階層のテーマとした地域内建物群構造を示したものである。
【0078】
1つのキャラクタライズドシティーを構成する地域内に、特定のテーマ、ここではフィレンツェの街並に見られる建築や装飾のイメージを共有する3棟以上のキャラクタライズド建物1が配置され、各キャラクタライズド建物1の下層階層2どうしについて、そのテーマのもとに外観および装飾に関する基本デザインと構造形式に統一性を持たせている。
【0079】
図9の実施形態においては、下層階層2について、初期ルネサンス建築の様式や装飾などを基本デザインに取り入れつつ、構造的には鉄筋コンクリート構造あるいは鉄骨鉄筋コンクリート構造などの頑強な構造とし、内装などについてもコストをかけた構造とすることを想定している。
【0080】
下層階層2は例えば2~3階建てとし、部分的には1階部分のみとしたり、個々のキャラクトタライズド建物については、場合によっては5階部分程度までを基本デザインを統一した下層階層とすることができる。
【0081】
上層階層3については、大勢の人々の生活空間、経済活動空間として、コストや機能性、さらに耐久性などを重視し、下層階層2にかける高コストを相殺すべく、シンプルな耐費用効果の高い構造とすることを想定している。
【0082】
また、別途、地域内に、例えば、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂やヴェッキオ宮殿などを模したモニュメント41、42などを造ることで、キャラクタライズドシティーとしてのイメージを高めることができる。
図10は本発明のさらに他の実施形態としてフランスの都市、例えばパリの街並のイメージを下層階層のテーマとした地域内建物群構造を示したものである。
【0083】
1つのキャラクタライズドシティーを構成する地域内に、特定のテーマ、ここではパリの街並に見られる建築や装飾のイメージを共有する3棟以上のキャラクタライズド建物1が配置され、各キャラクタライズド建物1の下層階層2どうしについて、そのテーマのもとに外観および装飾に関する基本デザインと構造形式に統一性を持たせている。
【0084】
図10の実施形態においては、下層階層2について、アール・ ヌーヴォー様式、オスマン様式など装飾性の高い優雅な街並みのイメージを基本デザインに取り入れつつ、構造的には鉄筋コンクリート構造あるいは鉄骨鉄筋コンクリート構造などの頑強な構造とし、内装などについてもコストをかけた構造とすることを想定している。
【0085】
下層階層2は例えば2~3階建てとし、部分的には1階部分のみとしたり、個々のキャラクトタライズド建物については、場合によっては5階部分程度までを基本デザインを統一した下層階層とすることができる。
【0086】
上層階層3については、大勢の人々の生活空間、経済活動空間として、コストや機能性、さらに耐久性などを重視し、下層階層2にかける高コストを相殺すべく、シンプルな耐費用効果の高い構造とすることを想定している。
【0087】
また、別途、地域内に、例えば、エッフェル塔、凱旋門などを模したモニュメント51、52などを造ることで、キャラクタライズドシティーとしてのイメージを高めることができる。
【0088】
図11は本発明において分散配置された複数のキャラクタライズドシティーから構成されるキャラクタライズドシティー群構造を概念的に示した図である。
【0089】
各キャラクタライズドシティーCCは、それぞれ特定のテーマのもとに、そのテーマを共有するキャラクタライズド建物群によって構成される。例えば、前述した
図1、
図6~
図10に示される地域内建物群をそれぞれ1つのキャラクタライズドシティーCCととらえ、分散配置された複数の都市地域、すなわち複数のキャラクタライズドシティーCCについて、キャラクタライズドシティーCCごとに異なる特定のテーマを設定したキャラクタライズドシティー群構造とすることができる。
【0090】
このようなキャラクタライズドシティー群内に、それぞれ異なるテーマのもとに構築された多数のキャラクタライズドシティーCCが存在することで、人々は好みに応じたキャラクタライズドシティーCCを生活の拠点とし、また異なるテーマのキャラクタライズドシティーCCを観光目的などで訪れることができる。
【符号の説明】
【0091】
1…キャラクタライズド建物、2…下層階層、3…上層階層、
11、12、21、22、23、31、32、41、42、51、52…モニュメント、
CC…キャラクタライズドシティー、
LL…下層階層、HL…上層階層、
R1、R2…集合住宅、O…オフィスビル、H…ホテル