(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】ドローンシステム、ドローン、管制装置、ドローンシステムの制御方法、および、ドローンシステム制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 5/00 20060101AFI20240520BHJP
G08G 5/02 20060101ALI20240520BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20240520BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240520BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240520BHJP
B64D 1/18 20060101ALI20240520BHJP
B64F 1/36 20240101ALI20240520BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20240520BHJP
A01C 23/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
G08G5/00 A
G08G5/02 A
B64C13/18 Z
B64C27/08
B64C39/02
B64D1/18
B64F1/36
A01M7/00 H
A01C23/00 C
(21)【出願番号】P 2019210601
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139778
【氏名又は名称】栗原 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】柳下 洋
(72)【発明者】
【氏名】村雲 泰
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120986(JP,A)
【文献】特開2018-203056(JP,A)
【文献】国際公開第2019/064329(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 5/00
G08G 5/02
B64C 13/18
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 1/18
B64F 1/36
A01M 7/00
A01C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの飛行経路を計画する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムであって、
前記管制装置は、同一の発着地点に一時帰還するようにそれぞれの前記飛行経路を計画する飛行計画部を備え、
前記複数のドローンの前記飛行経路は互いに異なり、
前記飛行計画部は、前記複数のドローンが前記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせるように、それぞれの前記飛行経路を計画し、
前記複数のドローンの前記飛行経路の少なくとも1個は、直線飛行を行う直線経路と、旋回を行う旋回経路とが組み合わされて構成されていて、
前記飛行計画部は、前記複数のドローンの前記飛行経路における前記直線経路と前記旋回経路との構成比率が互いに異なるように、前記飛行経路を計画することで、前
記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせる、
ドローンシステム。
【請求項2】
前記複数のドローンは、第1ドローン、および前記第1ドローンよりも後に前記発着地点に帰還するように計画される第2ドローンを含み、
前記飛行計画部は、前記第2ドローンの前記飛行経路に含まれる旋回回数を、前記第1ドローンの前記飛行経路よりも少なく計画する、
請求項1記載のドローンシステム。
【請求項3】
前記直線経路および前記旋回経路は、前記ドローンが消費する所定時間あたりのバッテリの蓄電量が互いに異なり、
前記複数のドローンに計画される前記飛行経路は、前記バッテリの消費量は同等で、前記飛行経路の作業に要する時間は互いに異なる、
請求項1又は2記載のドローンシステム。
【請求項4】
前記複数のドローンは、前記作業エリアに薬剤を散布するドローンであり、
前記直線経路および前記旋回経路は、前記ドローンが消費する所定時間あたりの薬剤量が互いに異なり、
前記複数のドローンに計画される前記飛行経路は、消費する前記薬剤量は同等で、前記飛行経路の作業に要する時間は互いに異なる、
請求項1又は2記載のドローンシステム。
【請求項5】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの飛行経路を計画する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムであって、
前記管制装置は、同一の発着地点に一時帰還するようにそれぞれの前記飛行経路を計画する飛行計画部を備え、
前記複数のドローンの前記飛行経路は互いに異なり、
前記飛行計画部は、前記複数のドローンが前記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせるように、それぞれの前記飛行経路を計画し、
前記複数のドローンは、前記発着地点において再離陸準備を行うものであり、
前記飛行計画部は、前記発着地点に帰還するタイミングが前記再離陸準備に要する時間以上互いに異なるように、前記飛行経路を計画する、
ドローンシステム。
【請求項6】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと情報を送受信可能な、前記複数のドローンの飛行経路を計画する管制装置であって、
同一の発着地点に一時帰還するようにそれぞれの前記飛行経路を計画する飛行計画部を備え、
前記複数のドローンの前記飛行経路は互いに異なり、
前記飛行計画部は、前記複数のドローンが前記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせるように、それぞれの前記飛行経路を計画し、
前記複数のドローンの前記飛行経路の少なくとも1個は、直線飛行を行う直線経路と、旋回を行う旋回経路とが組み合わされて構成されていて、
前記飛行計画部は、前記複数のドローンの前記飛行経路における前記直線経路と前記旋回経路との構成比率が互いに異なるように、前記飛行経路を計画することで、前
記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせる、
管制装置。
【請求項7】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの飛行経路を計画する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムの制御方法であって、
同一の発着地点に一時帰還するようにそれぞれの前記飛行経路を計画する飛行計画ステップを含み、
前記複数のドローンの前記飛行経路は互いに異なり、
前記飛行計画ステップにおいて、前記複数のドローンが前記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせるように、それぞれの前記飛行経路を計画し、
前記複数のドローンの前記飛行経路の少なくとも1個は、直線飛行を行う直線経路と、旋回を行う旋回経路とが組み合わされて構成されていて、
前記飛行計画ステップでは、前記複数のドローンの前記飛行経路における前記直線経路と前記旋回経路との構成比率が互いに異なるように、前記飛行経路を計画することで、前
記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせる、
ドローンシステムの制御方法。
【請求項8】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの飛行経路を計画する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムの制御プログラムであって、
同一の発着地点に一時帰還するようにそれぞれの前記飛行経路を計画する飛行計画命令をコンピュータに実行させ、
前記複数のドローンの前記飛行経路は互いに異なり、
前記飛行計画命令において、前記複数のドローンが前記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせるように、それぞれの前記飛行経路を計画し、
前記複数のドローンの前記飛行経路の少なくとも1個は、直線飛行を行う直線経路と、旋回を行う旋回経路とが組み合わされて構成されていて、
前記飛行計画命令では、前記複数のドローンの前記飛行経路における前記直線経路と前記旋回経路との構成比率が互いに異なるように、前記飛行経路を計画することで、前
記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせる、
ドローンシステムの制御プログラム。
【請求項9】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと情報を送受信可能な、前記複数のドローンの飛行経路を計画する管制装置であって、
同一の発着地点に一時帰還するようにそれぞれの前記飛行経路を計画する飛行計画部を備え、
前記複数のドローンの前記飛行経路は互いに異なり、
前記飛行計画部は、前記複数のドローンが前記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせるように、それぞれの前記飛行経路を計画し、
前記複数のドローンは、前記発着地点において再離陸準備を行うものであり、
前記飛行計画部は、前記発着地点に帰還するタイミングが前記再離陸準備に要する時間以上互いに異なるように、前記飛行経路を計画する、
管制装置。
【請求項10】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの飛行経路を計画する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムの制御方法であって、
同一の発着地点に一時帰還するようにそれぞれの前記飛行経路を計画する飛行計画ステップを含み、
前記複数のドローンの前記飛行経路は互いに異なり、
前記飛行計画ステップにおいて、前記複数のドローンが前記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせるように、それぞれの前記飛行経路を計画し、
前記複数のドローンは、前記発着地点において再離陸準備を行うものであり、
前記飛行計画ステップでは、前記発着地点に帰還するタイミングが前記再離陸準備に要する時間以上互いに異なるように、前記飛行経路を計画する、
ドローンシステムの制御方法。
【請求項11】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの飛行経路を計画する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムの制御プログラムであって、
同一の発着地点に一時帰還するようにそれぞれの前記飛行経路を計画する飛行計画命令をコンピュータに実行させ、
前記複数のドローンの前記飛行経路は互いに異なり、
前記飛行計画命令において、前記複数のドローンが前記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせるように、それぞれの前記飛行経路を計画し、
前記複数のドローンは、前記発着地点において再離陸準備を行うものであり、
前記飛行計画命令では、前記発着地点に帰還するタイミングが前記再離陸準備に要する時間以上互いに異なるように、前記飛行経路を計画する、
ドローンシステムの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ドローンシステム、ドローン、管制装置、ドローンシステムの制御方法、および、ドローンシステム制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドローンと呼ばれる小型ヘリコプター(マルチコプター)の応用が進んでいる。その重要な応用分野の一つとして農地(圃場)への農薬や液肥などの薬剤散布が挙げられる(たとえば、特許文献1および2)。比較的狭い農地においては、有人の飛行機やヘリコプターではなくドローンの使用が適しているケースが多い。
【0003】
準天頂衛星システムやRTK-GPS(Real Time Kinematic - Global Positioning System)などの技術によりドローンが飛行中に自機の絶対位置をセンチメートル単位で正確に知ることができるようになったことで、日本において典型的な狭く複雑な地形の農地でも、人手による操縦を最小限として自律的に飛行し、効率的かつ正確に薬剤散布を行なえるようになっている。
【0004】
また、複数のドローンが作業を行う場合においては、複数のドローンが衝突することなく、安全かつ効率良く作業を遂行するシステムが必要とされている。
【0005】
特許文献3には、1個の着陸誘導ポートに複数の飛行体が着陸することが可能な小型飛行システムが開示されている。
【0006】
特許文献4には、ドローンポートおよびドローン充電スポットに、ドローンが一時的に着陸して充電を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許公開公報 特開2001-120151
【文献】特許公開公報 特開2017-163265
【文献】特許公開公報 特開2017-037368
【文献】特許公開公報 特開2018-165930
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
複数のドローンにより安全かつ効率よく作業を遂行するドローンシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係るドローンシステムは、作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、前記複数のドローンの飛行経路を計画する管制装置と、を少なくとも含むドローンシステムであって、前記管制装置は、同一の発着地点に一時帰還するようにそれぞれの前記飛行経路を計画する飛行計画部を備え、前記複数のドローンの前記飛行経路は互いに異なり、前記飛行計画部は、前記複数のドローンが前記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせるように、それぞれの前記飛行経路を計画する。
【0010】
前記複数のドローンは、前記発着地点において再離陸準備を行うものであり、前記飛行計画部は、前記発着地点に帰還するタイミングが前記再離陸準備に要する時間以上互いに異なるように、前記飛行経路を計画するものとしてもよい。
【0011】
前記複数のドローンの前記飛行経路の少なくとも1個は、直線飛行を行う直線経路と、旋回を行う旋回経路とが組み合わされて構成されていて、前記飛行計画部は、前記複数のドローンの前記飛行経路における前記直線経路と前記旋回経路との構成比率が互いに異なるように、前記飛行経路を計画するものとしてもよい。
【0012】
前記複数のドローンは、第1ドローン、および前記第1ドローンよりも後に前記発着地点に帰還するように計画される第2ドローンを含み、前記飛行計画部は、前記第2ドローンの前記飛行経路に含まれる旋回回数を、前記第1ドローンの前記飛行経路よりも多く計画するものとしてもよい。
【0013】
前記直線経路および前記旋回経路は、前記ドローンが消費する所定時間あたりのバッテリの蓄電量が互いに異なり、前記複数のドローンに計画される前記飛行経路は、前記バッテリの消費量は同等で、前記飛行経路の作業に要する時間は互いに異なるものとしてもよい。
【0014】
前記複数のドローンは、前記作業エリアに薬剤を散布するドローンであり、前記直線経路および前記旋回経路は、前記ドローンが消費する所定時間あたりの薬剤量が互いに異なり、前記複数のドローンに計画される前記飛行経路は、消費する前記薬剤量は同等で、前記飛行経路の作業に要する時間は互いに異なるものとしてもよい。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の別の観点に係る管制装置は、作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと情報を送受信可能な、前記複数のドローンの飛行経路を計画する管制装置であって、同一の発着地点に一時帰還するようにそれぞれの前記飛行経路を計画する飛行計画部を備え、前記複数のドローンの前記飛行経路は互いに異なり、前記飛行計画部は、前記複数のドローンが前記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせるように、それぞれの前記飛行経路を計画する。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係るドローンは、ドローンの飛行経路を計画する管制装置と情報を送受信可能な、作業エリア内を飛行して作業を遂行するドローンであって、前記管制装置により計画される、他の前記ドローンと同一の発着地点に一時帰還するように計画される飛行経路に基づいて飛行し、前記ドローンの前記飛行経路は他の前記ドローンの前記飛行経路とは異なり、前記ドローンが前記発着地点に帰還するタイミングは、他の前記ドローンが前記発着地点に帰還するタイミングと異なる。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係るドローンシステムの制御方法は、作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、前記複数のドローンの飛行経路を計画する管制装置と、を少なくとも含むドローンシステムの制御方法であって、同一の発着地点に一時帰還するようにそれぞれの前記飛行経路を計画する飛行計画ステップを含み、前記複数のドローンの前記飛行経路は互いに異なり、前記飛行計画ステップにおいて、前記複数のドローンが前記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせるように、それぞれの前記飛行経路を計画する。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係るドローンシステムの制御プログラムは、作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、前記複数のドローンの飛行経路を計画する管制装置と、を少なくとも含むドローンシステムの制御プログラムであって、同一の発着地点に一時帰還するようにそれぞれの前記飛行経路を計画する飛行計画命令をコンピュータに実行させ、前記複数のドローンの前記飛行経路は互いに異なり、前記飛行計画命令において、前記複数のドローンが前記発着地点に帰還するタイミングを互いに異ならせるように、それぞれの前記飛行経路を計画する。
【0019】
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、CD-ROMなどのコンピュータ読取可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【発明の効果】
【0020】
複数のドローンにより安全かつ効率よく作業を遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本願発明に係るドローンシステムが有するドローンの平面図である。
【
図7】上記ドローンシステムの第2実施形態を示す全体概念図である。
【
図8】上記ドローンシステムの第3実施形態を示す全体概念図である。
【
図9】複数の上記ドローンが圃場を飛行する様子を示す概念図である。
【
図10】上記ドローンの制御機能を表した模式図である。
【
図11】上記ドローンおよび本願発明にかかる管制装置が有する、複数の上記ドローンの移動を管制する機能に関する機能ブロック図である。
【
図12】複数の上記ドローンが圃場を飛行する様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図を参照しながら、本願発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0023】
まず、本発明にかかるドローンシステムが有する、ドローンの構成について説明する。本願明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する飛行体全般を指すこととする。
【0024】
図1乃至
図5に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、電力消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。各回転翼101は、ドローン100の本体110からのび出たアームにより本体110の四方に配置されている。すなわち、進行方向左後方に回転翼101-1a、101-1b、左前方に回転翼101-2a、101-2b、右後方に回転翼101-3a、101-3b、右前方に回転翼101-4a、101-4bがそれぞれ配置されている。なお、ドローン100は
図1における紙面下向きを進行方向とする。回転翼101の回転軸から下方には、それぞれ棒状の足107-1,107-2,107-3,107-4が伸び出ている。
【0025】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられている。モーター102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。
図2、および、
図3に示されるように、ローターが異物と干渉しないよう設けられたプロペラガードを支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0026】
薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、薬剤を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、薬剤とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0027】
薬剤タンク104は散布される薬剤を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。薬剤ホース105-1、105-2、105-3、105-4は、薬剤タンク104と各薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該薬剤ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、薬剤をノズルから吐出するための手段である。
【0028】
図6に本願発明に係るドローン100の薬剤散布用途の実施例を使用したシステムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。同図において、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401a、基地局404は、営農クラウド405にそれぞれ接続されている。これらの接続は、Wi-Fiや移動通信システム等による無線通信を行ってもよいし、一部又は全部が有線接続されていてもよい。
【0029】
操作器401は、使用者402の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報(たとえば、位置、薬剤量、電池残量、カメラ映像等)を表示するための手段であり、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。本願発明に係るドローン100は自律飛行を行なうよう制御されるが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作器(図示していない)を使用してもよい。非常用操作器は緊急時に迅速に対応が取れるよう大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であってもよい。さらに、操作器401とは別に、操作器401に表示される情報の一部又は全部を表示可能な小型携帯端末401a、例えばスマートホンがシステムに含まれていてもよい。また、小型携帯端末401aから入力される情報に基づいて、ドローン100の動作が変更される機能を有していてもよい。小型携帯端末401aは、例えば基地局404と接続されていて、基地局404を介して営農クラウド405からの情報等を受信可能である。
【0030】
圃場403は、ドローン100による薬剤散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の侵入者が存在する場合もある。
【0031】
基地局404は、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であり、RTK-GPS基地局としても機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようになっていてもよい(Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GPS基地局が独立した装置であってもよい)。また、基地局404は、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムを用いて、営農クラウド405と互いに通信可能であってもよい。
【0032】
営農クラウド405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピュータ群と関連ソフトウェアであり、操作器401と携帯電話回線等で無線接続されていてもよい。営農クラウド405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行ってよい。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供してよい。加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行ってもよい。
【0033】
小型携帯端末401aは例えばスマートホン等である。小型携帯端末401aの表示部には、ドローン100の運転に関し予測される動作の情報、より具体的にはドローン100が発着地点406に帰還する予定時刻や、帰還時に使用者402が行うべき作業の内容等の情報が適宜表示される。また、小型携帯端末401aからの入力に基づいて、ドローン100の動作を変更してもよい。小型携帯端末401aは、ドローン100から情報を受信可能である。
【0034】
通常、ドローン100は圃場403の外部にある発着地点406から離陸し、圃場403に薬剤を散布した後に、あるいは、薬剤補充や充電等が必要になった時に発着地点406に帰還する。発着地点406から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(侵入経路)は、営農クラウド405等で事前に保存されていてもよいし、使用者402が離陸開始前に入力してもよい。
【0035】
なお、
図7に示す第2実施形態のように、本願発明に係るドローン100の薬剤散布システムは、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401a、営農クラウド405が、それぞれ基地局404と接続されている構成であってもよい。
【0036】
また、
図8に示す第3実施形態のように、本願発明に係るドローン100の薬剤散布システムは、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401aが、それぞれ基地局404と接続されていて、操作器401のみが営農クラウド405と接続されている構成であってもよい。
【0037】
図9に示すように、ドローン100は、圃場403a、403bの上空を飛行し、圃場内の作業を遂行する。
図9中、圃場の面に略平行な軸をX軸およびY軸と呼び、圃場の面に略垂直な高さ方向の軸をZ軸ともよぶ。本実施形態においては、1個の圃場403a(作業エリアの例)に複数のドローン100a、100b(以下、第1ドローン100a、および第2ドローン100bともいう。)が同時に飛行し、それぞれ作業を行う。第1ドローン100aおよび第2ドローン100bは、それぞれ圃場403a内を飛行する第1飛行経路51および第2飛行経路52を有し、当該第1及び第2飛行経路51、52に沿って飛行する。ドローン100a、100bは、第1、第2飛行経路51、52に沿って飛行しながら、薬剤を散布したり、圃場403a内を撮影したりする。
【0038】
第1飛行経路51および第2飛行経路52は、圃場内をくまなく飛行するための経路であり、例えば圃場内を往復する経路である。
【0039】
圃場403の外には、ドローン100が離着陸する発着地点406が設けられている。発着地点406は、ドローン100に計画される離着陸のための領域であり、仮想的に区画される領域であってもよいし、視認可能な離発着台が設置されていてもよい。離発着台は、動かない台であってもよいし、移動体であってもよい。複数のドローンは、発着地点406に一時帰還して着陸し、再離陸の準備を行う。再離陸の準備とは、例えば資源の補充であり、バッテリ502の補充、交換および薬剤の補充を含む概念である。
【0040】
本実施形態では、ドローンは2個、発着地点は1個であるが、それぞれこれ以上であってもよい。ドローンの個数は、発着地点の個数より多い。
【0041】
発着地点406は、圃場の外に位置しているため、数が少ない方が圃場外を往来する人や車の安全性を担保することができる。また、発着地点406は小さい面積であった方が、圃場外に占有する面積が小さくて済み、周辺の作業効率を維持することができる。特に小規模農家においてドローンを使用することを想定すると、ドローンの再離陸準備を行う作業者の人数は限られるので、同時に着陸しても順次準備を行う必要がある。そこで、発着地点406を複数台が同時に着陸可能に構成するよりも、1個ずつ着陸可能とした方が、安全面および作業効率の面で都合がよい。
【0042】
ドローン100は、発着地点406から離陸し、圃場403の進入点60から圃場403に進入し、圃場403内の作業を行う。また、ドローン100は、圃場403の退出点61から退出し、発着地点406に帰還する。
【0043】
進入点60および退出点61は、規定されている仮想の点である。ドローン100が同じ進入点60から進入する構成によれば、発着地点406から圃場403へ向かう圃場外進入経路61iを統一することができ、圃場403外にいる使用者402に安心感を与えることができる。また、ドローン100が同じ退出点61から退出する構成によれば、圃場403から発着地点406へ向かう圃場外退出経路61oを統一することができ、圃場403外にいる使用者402に安心感を与えることができる。
【0044】
ドローン100は、進入点60から進入し、さらに圃場403内において圃場内進入経路62iを通って作業を開始又は再開する点まで移動する。また、ドローン100は、作業を中断又は終了する中断点から、圃場内退出経路62oを通って退出点61まで移動する。圃場外進入経路61i、進入点60および圃場内進入経路62iは進入経路60iを構成する。圃場外退出経路61o、退出点61および圃場内退出経路62oは退出経路60oを構成する。
【0045】
本実施形態においては、進入点60および退出点61は略同一の点である。この構成によれば、圃場外進入経路61iおよび圃場外退出経路61oを統一することで、使用者402にさらに安心感を与えることができる。
【0046】
ドローン100は、発着地点406から離陸して圃場403a、403b内での作業を遂行する。ドローン100は、圃場403a、403b内での作業中に、適宜作業を中断して発着地点406に帰還し、バッテリ502および薬剤の補充を行う。
【0047】
図10に本願発明に係る薬剤散布用ドローンの実施例の制御機能を表したブロック図を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。フライトコントローラー501は、操作器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサー等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0048】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操作器401上、または、営農クラウド405上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0049】
フライトコントローラー501は、Wi-Fi子機機能503を介して、さらに、基地局404を介して操作器401とやり取りを行ない、必要な指令を操作器401から受信すると共に、必要な情報を操作器401に送信できる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておいてもよい。基地局404は、Wi-Fiによる通信機能に加えて、RTK-GPS基地局の機能も備えている。RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、フライトコントローラー501により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。フライトコントローラー501は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのフライトコントローラー501は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。
【0050】
6軸ジャイロセンサー505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段であり、さらに、加速度の積分により速度を計算する手段である。6軸ジャイロセンサー505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザーであってもよい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0051】
流量センサー510は薬剤の流量を測定するための手段であり、薬剤タンク104から薬剤ノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサー511は薬剤の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。マルチスペクトルカメラ512は圃場403を撮影し、画像分析のためのデータを取得する手段である。障害物検知カメラ513は障害物を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きがマルチスペクトルカメラ512とは異なるため、マルチスペクトルカメラ512とは別の機器である。スイッチ514はドローン100の使用者402が様々な設定を行なうための手段である。侵入者接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の侵入者に接触したことを検知するためのセンサーである。なお、侵入者接触センサー515は、6軸ジャイロセンサー505で代用してもよい。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。薬剤注入口センサー517は薬剤タンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、操作器401、または、その他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報をWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0052】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、薬剤吐出量の調整や薬剤吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0053】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザー518は、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。Wi-Fi子機機能519は操作器401とは別に、たとえば、ソフトウェアの転送などのために外部のコンピューター等と通信するためのオプショナルな構成要素である。Wi-Fi子機機能に替えて、または、それに加えて、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。また、Wi-Fi子機機能に替えて、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムにより相互に通信可能であってもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0054】
●ドローンシステムが有するドローンおよび管制装置の構成
図11に示すように、ドローンシステム500は、第1ドローン100a、第2ドローン100bおよび管制装置40を含む。ドローン100、第1ドローン100a、第2ドローン100bおよび管制装置40は、例えば互いにネットワークNWを介して接続されて構成されている。なお、ネットワークNWは、すべて無線であってもよいし、一部又は全部が有線であってもよい。また、具体的な接続関係は同図に限られるものではなく、各構成が直接又は間接的に接続されていればよい。第1および第2ドローン100a、100bは互いに同等の構成であるので、以降の説明では単にドローン100として説明する。
【0055】
管制装置40は、ドローンシステム500中のどこにあってもよいが、例えば基地局404に配置されている。各ドローン100は基地局404と通信冗長で接続が担保されている。各ドローン100の現在位置情報は基地局404の通信機能を介して管制装置40へ入力され、管制装置40により策定される飛行計画や発着計画は、基地局404の通信機能を介して各ドローン100に出力される。
【0056】
●ドローン
ドローン100は、それぞれ飛行制御部21、散布制御部22、およびバッテリ502を備える。
【0057】
飛行制御部21は、ドローン100が有するモータ102を稼働させ、ドローン100の飛行および離着陸を制御する機能部である。飛行制御部21は、例えばフライトコントローラ501の機能によって実現される。
【0058】
散布制御部22は、薬剤タンク104から薬剤を散布する機能部である。散布制御部22は、薬剤ノズル103やポンプ106を制御して、ドローン100下方に向かって薬剤を散布する。
【0059】
散布制御部22は、圃場に到達する薬剤が均一になるように吐出量を制御する。したがって、ドローン100のX軸方向およびY軸方向の移動速度に応じて、吐出量を変化させる。散布制御部22は、ドローン100の移動速度が遅いほど、吐出量を小さくする。また、散布制御部22は、ドローン100の移動速度が所定以下のとき、吐出を停止する。ドローン100がZ軸方向にのみ移動しているとき、ドローン100のX軸方向およびY軸方向の位置は変化しないため、散布制御部22は薬剤の散布を停止する。また、ドローン100が旋回しているとき、ドローン100のX軸方向およびY軸方向の位置の変化が所定以下になるため、散布制御部22は薬剤の散布を停止する。
【0060】
●管制装置
管制装置40は、複数のドローン100a、100bそれぞれの動作を決定する機能部である。管制装置40は、ドローン情報取得部41、飛行計画部42、および発着計画策定部43を備える。
【0061】
ドローン情報取得部41は、複数のドローン100それぞれの情報を取得する機能部である。ドローン情報取得部41は、例えば、ドローン100の位置および状態を取得する。ドローン100の位置は、3次元座標に加えて、ドローン100が圃場403内にいるか、圃場403外にいるかの情報も含んでいてもよい。ドローン100の状態とは、ドローン100の動作状態、すなわち、ドローン100が移動中、ホバリング中、着陸中のいずれであるかの情報を含む。また、ドローン100が圃場403内の移動中において、薬剤を散布しているか否かの情報を含む。また、ドローン100の状態には、ドローン100に故障又は異常が発生しているか否かの情報を含む。異常とは、ドローン100自体の故障以外にドローン100の飛行の妨げとなる事象全般を指し、強風や、極度の低温および高温、障害物の引っ掛かり、バードストライク等、種々の事象を含む。
【0062】
ドローン情報取得部41は、ドローン100が圃場403内を作業中であるか、作業を中断しているのかを区別して把握することができる。すなわち、ドローン情報取得部41は、ドローン100が作業ドローンであるか中断ドローンであるかの情報を取得する。
【0063】
ドローン情報取得部41は、ドローン100の状態として、ドローン100が有する資源量の情報も取得可能である。ドローン100が有する資源とは、ドローン100の飛行エネルギー、例えばバッテリ502の蓄電量を含む。ドローン100の飛行エネルギーは、バッテリ502に代えて、ウルトラキャパシタにより蓄電される蓄電量であってもよい。また、ドローン100が有する資源とは、ドローン100の薬剤タンク104に貯留される薬剤を含む。
【0064】
ドローン情報取得部41が取得する上述の情報は、定期的にドローン100から直接又は間接的に受信してもよいし、状態変化又は資源量が所定範囲になったことを契機にドローン100から情報が送信され、当該情報を受信するように構成されていてもよい。
【0065】
飛行計画部42は、複数のドローン100a、100bの飛行経路を策定する機能部である。飛行計画部42は、第1ドローン100aに対して第1飛行経路を策定し、第2ドローン100bに対して第2飛行経路を策定する。
【0066】
飛行計画部42は、同一の発着地点406に一時帰還するように第1飛行経路および第2飛行経路を計画する。第1飛行経路および第2飛行経路は、互いに異なる。飛行計画部42は、複数のドローン100a、100bが発着地点406に帰還するタイミングを互いに異ならせるように、それぞれの飛行経路を計画する。
【0067】
飛行計画部42は、ドローン100a、100bが飛行経路に沿った飛行を開始する前に、それぞれの飛行経路の飛行時間を予測する。飛行計画部42は、直線飛行の飛行速度および旋回にかかる速度をあらかじめ記憶している。飛行時間の予測は、飛行経路を、直線飛行を行う直線経路と旋回を行う旋回経路とに区別して、直線経路と旋回経路のそれぞれについて、速度に基づいて所要時間を算出する。飛行計画部42は、算出される所要時間を積算することで、当該飛行経路の飛行の所要時間を算出する。
【0068】
なお、飛行計画部42は、旋回経路をさらに細分化し、ヨー旋回の旋回角度に応じてバッテリの消費量を所要時間やバッテリ消費量を計算してもよい。また、旋回経路には、後進しながら機先の方向を変更する動作を含む4の字旋回を含んでもよい。
【0069】
●バッテリの消費量を考慮した飛行計画の策定
ここで、直線経路および旋回経路は、ドローン100が消費する所定時間あたりのバッテリの蓄電量が互いに異なる。例えば、直線経路においては、加減速を行わずに定速で飛行するため、所定時間あたりのバッテリの消費量は比較的小さい。旋回経路においては、定速の直線飛行から減速し、ヨー旋回を行って再度加速する動作を含むため、直線経路に比べて多くの蓄電量を消費する。したがって、互いに異なる飛行経路で飛行するドローン100a、100bにおいては、旋回回数が多いほど、同一の飛行時間におけるバッテリの総消費量が大きくなる。
【0070】
そこで、飛行計画部42は、複数のドローン100a、100bの飛行経路における直線経路および旋回経路に費やす時間の構成比率が互いに異なるように、飛行経路を計画する。旋回経路に費やす時間の構成比率が高いドローン100aは、直線経路に費やす時間の構成比率が高いドローン100bよりも、短い時間でバッテリを消費する。ドローン100aおよび100bが略同時に離陸している場合、ドローン100aは、ドローン100bよりも早くバッテリ蓄電量を消費して、早い時点で発着地点406に帰還する。このように、飛行経路の直線経路および旋回経路の構成比率をあらかじめ異ならせることにより、略同時に離陸したドローン100a、100bが発着地点406に一時帰還するタイミングを異ならせることができる。また、ドローン100bは、ドローン100aが一時帰還している間も圃場内の作業を継続するため、ドローンの作業効率を担保することができる。
【0071】
言い換えれば、複数のドローン100a、100bに計画される飛行経路は、バッテリの消費量は同等で、飛行経路の作業に要する時間は互いに異なる。この構成によれば、ドローン100a、100bが略同時に離陸して作業を開始するとき、バッテリの蓄電量を同等に消費して発着地点406に帰還しても、帰還するタイミングを異ならせることができる。
【0072】
飛行計画部42は、発着地点406に帰還するタイミングが再離陸準備に要する時間以上互いに異なるように、飛行経路を計画する。再離陸準備は、例えば数分である。この構成によれば、発着地点406に1個のドローン100のみが着陸可能な構成であっても、1個のドローン100aが着陸している間、他のドローン100bが圃場内の作業を継続するため、ドローンの作業効率を担保することができる。
【0073】
●薬剤消費量を考慮した飛行計画の策定
直線経路および旋回経路は、ドローン100が消費する所定時間あたりの薬剤量が互いに異なる。直線経路においては、一定の吐出量で薬剤を散布するが、旋回経路においては薬剤散布を行わない。したがって、互いに異なる飛行経路で飛行するドローン100a、100bにおいては、旋回回数が多いほど、同一の飛行時間における薬剤の総消費量が少なくなる。
【0074】
そこで、飛行計画部42は、複数のドローン100a、100bの飛行経路における直線経路および旋回経路に費やす時間の構成比率が互いに異なるように、飛行経路を計画する。旋回経路に費やす時間の構成比率が高いドローン100aは、直線経路に費やす時間の構成比率が高いドローン100bよりも、薬剤の消費に要する時間が長い。ドローン100aおよび100bが略同時に離陸している場合、ドローン100bは、ドローン100aよりも早く薬剤を消費して、早い時点で発着地点406に帰還する。このように、飛行経路の直線経路および旋回経路の構成比率をあらかじめ異ならせることにより、略同時に離陸したドローン100a、100bが発着地点406に一時帰還するタイミングを異ならせることができる。また、ドローン100bは、ドローン100aが一時帰還している間も圃場内の作業を継続するため、ドローンの作業効率を担保することができる。
【0075】
複数のドローン100a、100bに計画される飛行経路は、薬剤の消費量は同等で、飛行経路の作業に要する時間は互いに異なる。この構成によれば、ドローン100a、100bが略同時に離陸して作業を開始するとき、いずれのドローン100a、100bも最大量の薬剤を散布して発着地点406に帰還しても、帰還するタイミングを異ならせることができる。
【0076】
図12の例に示すように、ドローン100aおよび100bは、それぞれ圃場403c、403d内を往復して走査する。ドローン100aは、X軸方向の往復移動を行う。ドローン100bは、Y軸方向の往復移動を行う。ドローン100a、100bは、経路中の中断点51c、52cで作業を中断し、発着地点406に一時帰還する。一時帰還後、中断点51c、52cに戻り、飛行経路51、52に沿う飛行を再開する。
【0077】
ドローン100aの直線経路は、ドローン100bの直線経路よりも短く、ドローン100aの飛行経路の方が旋回に要する時間が多い。すなわち、ドローン100aの方がより早くバッテリを消費する。したがって、バッテリ消費量を考慮すると、ドローン100aの方が先に中断点51cに到達し、発着地点406に帰還して、バッテリの交換等の再離陸準備を行う。ドローン100aが再離陸を行った後に、ドローン100bが一時帰還をする。
【0078】
薬剤消費量においては、ドローン100bの方が薬剤が早く消費される。したがって、ドローン100bの方が先に中断点52cに到達し、発着地点406に帰還して、薬剤の補充等の再離陸準備を行う。ドローン100bが再離陸を行った後に、ドローン100aの薬剤が十分散布され、ドローン100aが一時帰還をする。
【0079】
飛行経路を、バッテリの蓄電量および薬剤消費量のいずれを基準に計画するかは、操作者が選択できるようになっていてもよい。
【0080】
なお、本説明においては、農業用薬剤散布ドローンを例に説明したが、本発明の技術的思想はこれに限られるものではなく、撮影・監視用など他の用途のドローン全般に適用可能である。特に、自律的に動作する機械に適用可能である。
【0081】
(本願発明による技術的に顕著な効果)
本発明にかかるドローンシステムにおいては、複数のドローンにより、安全に作業を遂行することができる。