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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】安産準備パッド、安産準備椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 13/00 20060101AFI20240520BHJP
   A61G 13/12 20060101ALI20240520BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
A61G13/00 Q
A61G13/12 B
A47C7/62 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019232160
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021097946
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-09-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508179637
【氏名又は名称】学校法人冬木学園
(74)【代理人】
【識別番号】100152700
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 透
(72)【発明者】
【氏名】岩田 塔子
(72)【発明者】
【氏名】中居 由美子
(72)【発明者】
【氏名】冬木 正紀
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/098652(WO,A1)
【文献】特開2003-284620(JP,A)
【文献】特開2004-344490(JP,A)
【文献】特開2015-033562(JP,A)
【文献】特開2007-282697(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0113951(KR,A)
【文献】米国特許第5913774(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/00-15/12
A47C 7/00- 7/74
A47C 27/00-27/22
A61H 19/00-31/02
A61F 5/00- 5/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座する際に骨盤を正立させた着座姿勢を促す安産準備パッドであって、
中央部表面には両坐骨基底部を包持可能な凹部を有し、
後部表面には少なくとも前面に設けた傾斜面を臀部の背面側に当接させて臀部を後方から支持可能な臀部支持体を備え、
前記凹部の中心線上には着座時に使用者の会陰部に当接する縦長の会陰マッサージ体を前後方向に位置調節可能に設けてなり、
前記臀部支持体および前記会陰マッサージ体は、硬度を調節可能な硬度調節機構を備えること
を特徴とする安産準備パッド。
【請求項2】
前記臀部支持体および会陰マッサージ体は、さらに、形状の変更が可能な形状変更機構を備えること
を特徴とする、請求項1に記載の安産準備パッド。
【請求項3】
前記硬度調節機構および前記形状変更機構は、マッキベン式人工筋肉であること
を特徴とする、請求項2に記載の安産準備パッド。
【請求項4】
前記会陰マッサージ体は、さらに、温熱機構を備えること
を特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の安産準備パッド。
【請求項5】
着座時において両大腿部で挟むことで、両股関節を所定の角度で外転させた状態にて保持可能な外転保持クッションを前部表面に着脱可能に設けたこと
を特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の安産準備パッド。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の安産準備パッドを着座面に備え、かつ、着座面の高さ調節機構を有すること
を特徴とする安産準備椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正常な出産のために、日常生活における着座時に使用することで、妊婦が望ましい姿勢を保持するとともに分娩体位に近似した姿勢を無理なく訓練できる安産準備パッド、および安産準備パッドを備えた安産準備椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
妊婦の前傾姿勢は、尖腹・懸垂腹を招来する可能性があり、妊娠期には忌避すべき姿勢である。特に、椅子等に座る際には、前傾姿勢の原因となる骨盤の後傾を避け、骨盤を立てて垂直に座る姿勢が望ましい。骨盤が後傾した状態では、分娩時に胎児の頭が恥骨の裏側に当たって必要な回旋が行えず難産になりがちとなる。安産のためには、妊婦の骨盤内に対して子宮内の胎児が頭から垂直に嵌入することが必要であり、妊婦には、日常生活においても骨盤を垂直に立てた座位を心掛けさせることが必要であるが、一般的な椅子の座面は平板であるか、あるいはクッションの弾力により腰骨が沈みこみがちであるため、無意識のうちに骨盤が後傾しがちとなる。
【0003】
また、出産時には、妊婦の産道や会陰部の軟らかさが安産の重要な条件となるが、椅子に座る生活が定着し、運動不足気味の現代人においては股関節の外転の可動域が縮小している場合が多く、産道や会陰部も硬くなり気味である。そのため、妊娠期間を通じて大腿部の筋肉の進展性や股関節の可動域を拡大するような訓練が必要とされる。さらに、会陰部を柔らかくするために、特に妊娠36週以降の妊娠末期には、会陰部に対する圧迫・弛緩を繰り返すことで骨盤底筋の柔軟性を高める会陰マッサージが有効であることが知られている。
【0004】
骨盤には、仙腸関節(腰の辺りにある仙骨と骨盤の関節)と仙尾骨関節(お尻にある尾骨の関節)」という2種類の関節があり、胎児の頭がスムーズに骨盤に入り込むには仙骨は後ろに傾くのが良く、胎児の頭が骨盤から出る時は仙骨が前に傾くと産み出しやすい。また、骨盤底筋が緩んだ状態と締まった状態では尾骨の位置は前後に3cmほど変わり、直径約10cmの胎児の頭が通る際には仙尾骨関節が開いた状態だとスムーズになる。そのため、分娩時には両太腿を上げて腹に引き寄せ、大腿骨頭(大腿骨の付け根の丸い部分)で臼蓋(骨盤のソケット部分)を押すことで仙腸関節を開く、マクロバーツ体位と呼ばれる姿勢が好適とされる。そのため、分娩期が近づいた妊婦が、その姿勢を日常生活の中で訓練することも安産のために有効である。
【0005】
従来から、たとえば特許文献1に開示されている座位姿勢矯正座具の如く、着座時の骨盤と背骨との正しい位置や角度を保持し、着座姿勢そのものを矯正する整体機能を備えた座面パッド自体は提案されている。かかる先行技術は、使用者の坐骨・恥骨付近が位置する坐骨・恥骨座面部分と、太腿が位置する太腿座面部分と、股間が位置する股間座面部分とからなり、坐骨・恥骨座面部分から太腿座面部分の先端にかけて滑らかに前傾した形状を備え、坐骨・恥骨座面部分の傾斜よりも太腿座面部分の傾斜が大きくなるように成型され、股間座面部分は、坐骨・恥骨座面部分から滑らかに高くなるように成型されるとともに、股間座面部分の側面形状が、太腿の内側から膝頭の内側に沿った形状であり、使用者が着座状態において太腿から膝頭により股間座面部分の側面を締めて座る姿勢を取ることができるよう構成されている。
【文献】特許第5622857号特許公報
【0006】
しかし、当該先行技術に係る座具は、太腿の前傾および外転の角度を固定した上で、無意識に膝頭を内側に締めさせるという効果によって、強制的に姿勢を矯正するものであり、大腿部の筋肉の進展性や股関節の可動域を拡大するような訓練には適していない。また、股間座面部分の先端の太腿座面部分の先端よりも前に突出した部分を盛り上げており、妊婦の場合この部分が会陰部に当接する形となるが、骨盤底筋を弛緩させることが目的である会陰マッサージは、股関節を開脚して実施しなければ痛みを伴うこともあり、効果も期待できないことから、膝頭を内側に締めさせ、骨盤底筋を緊張させることを強いる先行技術では、座面により会陰マッサージを行うことはできない。
【0007】
そもそも先行技術は、坐骨を高く保ち、太腿が腰の付け根から膝まで前傾する「正しい正座の姿勢」による顎関節-背骨-骨盤の関係を実現することを目的としており、骨盤の坐骨結節を固定した状態で骨盤底筋を弛緩させ、さらに、股関節を開いて両太腿を外転させるといった姿勢の訓練や、その状態での会陰マッサージを行うことには適しておらず、想定もしていない。また、その他にも多数の着座姿勢保持目的のクッションや椅子が提案されているが、安産を促進するための妊婦の姿勢訓練を目的とした先行技術は見られないし、前述のマクロバーツ体位の訓練に適した先行技術も存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、安産の促進を目的として、日常生活において、妊婦に骨盤を垂直に立てた着座姿勢の保持を癖付けするとともに、その姿勢で股関節の可動域を拡大する訓練や会陰マッサージを行える安産準備パッドを提供し、また、かかる安産準備パッドを備え、しかもマクロバーツ体位の訓練も可能な安産準備椅子を提供することを、その課題とする。
【0009】
前記課題を解決するため、本願の請求項1に記載した安産準備パッドは、使用者が着座する際に骨盤を正立させた着座姿勢を促す安産準備パッドであって、中央部表面には両坐骨基底部を包持可能な凹部を有し、後部表面には少なくとも前面に設けた傾斜面を臀部の背面側に当接させて臀部を後方から支持可能な臀部支持体を備え、前記凹部の中心線上には着座時に使用者の会陰部に当接する縦長の会陰マッサージ体を前後方向に位置調節可能に設けてなり、前記臀部支持体および前記会陰マッサージ体は、硬度を調節可能な硬度調節機構を備えることを特徴とするように構成している。かかる構成により、妊婦の骨盤の坐骨基底部を凹部により固定して安定させるとともに、臀部支持体により臀部を後方から支持することで、骨盤を垂直に立てた姿勢を保持し、腹部が張り出しているため後傾しがちな上体を背もたれに頼ることなく垂直に起立させた状態を維持可能とする。また、会陰マッサージ体を会陰部に適切に当接する位置に設置し、腰を左右に振り会陰を締めたり緩めたりする運動を繰り返すことで、自分の体重の負荷によって座ったまま会陰マッサージを行うことができる。
【0010】
また、臀部支持体および会陰マッサージ体のいずれかまたは両方の硬度を調節可能な硬度調節機構を備えるように構成していることにより、体格、特に臀部の大きさが異なる妊婦でも臀部支持体が適切に臀部を支持でき、会陰マッサージの強度も調節可能となる。硬度調節機構の構造は任意であるが、たとえば臀部支持体や会陰マッサージ体を内部に詰め物を挿入可能な袋状体として、詰め物自体の硬度あるいは密度を変更することで硬度を調節可能とできる。
【0011】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の安産準備パッドであって、前記臀部支持体および会陰マッサージ体は、さらに、形状の変更が可能な形状変更機構を備えるように構成している。かかる構成により、会陰マッサージ体は、断面積も任意に調節可能となるため、妊婦の体型への適合性が高まるほか、マッサージの強度も微調整が可能となる。形状変更機構の構造も任意であるが、袋状体の臀部支持体や会陰マッサージ体の内部を小間に間仕切り、小間ごとに挿入する詰め物の量を変えることで全体形状を調節可能とできる。
【0012】
次に、請求項3に記載した発明は、請求項2に記載の安産準備パッドであって、前記硬度調節機構および前記形状変更機構として、マッキベン式人工筋肉を採用している。マッキベン式人工筋肉は、天然ゴムやウレタンゴム等製の弾性体チューブの外周に合成樹脂繊維を螺旋状の網目に織った筒状のスリーブを被せた上で、空気又は液体等の流体の吸排機構を備える一対のターミナル部にて両端を固定封鎖したものであり、弾性体チューブを外部から印加する空気圧で膨張させることにより全長を収縮させる。スリーブは網目の角度がアコーディオンのように変化することにより、軸方向に押し込むと半径が太くなり、逆に引っ張ると半径が細くなる構造を有し、内蔵する弾性体チューブに空気圧が印加されて軸方向と半径方向に膨張しようとする際に、スリーブが半径方向の膨張を取り出して網目の角度を変化させることで弾性体チューブに軸方向の収縮力を生じさせることを原理としている。マッキベン式人工筋肉を内部に適宜に配置することにより、臀部支持体や会陰マッサージ体の硬度や形状を、使用中の状態でも任意に連続的に調節可能とできる。
【0013】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1から3のいずれかに記載の安産準備パッドであって、前記会陰マッサージ体に温熱機構を備えるように構成している。温熱機構のもたらす温もりにより会陰部や骨盤底筋は血行が促進されて弛緩し易くなり、より効果的なマッサージ効果が得られる。
【0014】
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1から4のいずれかに記載の安産準備パッドであって、着座時において両大腿部で挟むことで、両股関節を所定の角度で外転させた状態にて保持可能な外転保持クッションを前部表面に着脱可能に設けるように構成する。なお、外転保持クッションによる両太腿の外転角度は95~105°程度、その際の両足の外旋角度は正面に対して10~20°程度が好適である。かかる外転保持クッションにより、妊婦は意識せずとも常時太腿を所定の角度に開いた状態を維持でき、大腿部の筋肉の進展性や股関節の可動域を拡大する訓練が可能となる。なお、外転保持クッションについても袋状体の内部に詰め物を挿入する構成とすれば、詰め物の量を徐々に増やすことで開脚の強制力を漸増させることができ、身体の硬い妊婦でも訓練強度を無理なく高めることができる。
【0015】
最後に、請求項6に記載した発明は、請求項1から5のいずれかに記載の安産準備パッドを着座面に備え、かつ、着座面の高さ調節機構を有することを特徴とする安産準備椅子である。椅子の構造自体は任意であるが、着座面に安産準備パッドを取り付け可能とし、着座面は通常の椅子よりも低くし、妊婦の体格に合わせて、両足裏を床につけた状態で仰臥時のマクロバーツ体位における腹部との位置関係に両太腿が上がる高さとなるよう着座面の高さを調節するが、平均的な体格を想定した場合、着座面の高さは床から17~20cm程度が好適である。着座面がこの程度の場合、妊婦は膝を抱えた状態に近い体位となるが、その際も坐骨基底部が凹部によって抱持され、臀部支持体により臀部が後方から支持されることにより、骨盤を立てた状態で上体を前傾させずに起立させた座位姿勢が保持される。安産準備パッド単体では、設置する椅子等の座面の位置が高過ぎる場合には、効果的な姿勢保持が行えない場合があるが、分娩が近い時期には、本安産準備椅子を用いることで、日常生活の中でも無理なくマクロバーツ体位に似た姿勢を訓練することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る安産準備パッド、および安産準備椅子は、以下のような効果を奏するため、妊婦が日常生活の中で使用することにより、安産に向けての体質改善を行うことができる。
(1)日常生活において椅子等の座面に設置して使用することで、常に骨盤を安定的に垂直に立てた座位姿勢を癖付け、分娩に備えることができる。
(2)会陰マッサージ体を適用することにより、着座中は常時骨盤底筋が刺激され、さらに妊婦が腰を左右に振り会陰を締めたり緩めたりする運動を繰り返すことで、容易に会陰マッサージを行うことができるため、骨盤底筋や会陰部の柔軟性を高めることができる。
(3)外転保持クッションを適用することにより、妊婦は意識せずとも常時太腿を所定の角度に開いた状態を維持でき、大腿部の筋肉の進展性や股関節の可動域を拡大する訓練が可能となる。
(4)分娩が近づいた段階では、通常の椅子等に代えて安産準備椅子を使用することにより、日常生活の中で分娩時のマクロバーツ体位に近い姿勢を訓練することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一つの実施形態に係る安産準備パッド1の平面図であり、使用時には下側を前方、上側を後方として着座する。図2はその縦方向の断面図、図3は正面図である。
【0018】
安産準備パッド1は、略長方形のパッド本体10の中央部やや前方よりに横長の凹部11を設けている。後方端側には臀部支持体12を、凹部11の中心線上には縦長の会陰マッサージ体13を、それぞれ面ファスナー等によって着脱可能に設けている。
【0019】
パッド本体10の素材は任意であるが、少なくとも着座した妊婦の体重により凹部11が容易に圧潰変形せずに臀部を支えられる程度の硬度を有するものとし、たとえば、反発力と弾力を有する反硬質または硬質ウレタンフォーム等が好適である。また、凹部11は、少なくとも2cm程度の深さを有し、外縁部は人の臀部の形状に対応したラウンド形状とする。
【0020】
臀部支持体12は、前後に傾斜面を設けた横長の略三角柱状の部材である。本実施例では略三角柱状の袋状体の内部に大型のマッキベン式人工筋肉14aを3本俵積みに固定配置しており、これらを拡縮させることで、臀部支持体12の硬度を調節可能としている。
【0021】
会陰マッサージ体13は、略蒲鉾形の袋状体の内部に小型のマッキベン式人工筋肉14bを1本固定配置しており、これを拡縮させることで、会陰マッサージ体13の硬度を調節可能としている。また、会陰マッサージ体13は、着脱可能なだけでなく、凹部11の中心線上に設けた面ファスナー(図示せず。)に沿って前後方向の位置の調節を可能としている。
【0022】
以上の構成により、妊婦が安産準備パッド1上に着座した際には、骨盤の坐骨基底部が凹部11に嵌まり込む形となり、臀部の下部が臀部支持体12の前方傾斜面に当接して支持されるため、骨盤を垂直に立てた姿勢が保持される。また、その際、会陰マッサージ体13は妊婦の骨盤下の正中線に沿う形となるが、妊婦の体型に応じて前後方向に位置を調節して、会陰部に適切に当接するように配置する。
【0023】
両マッキベン式人工筋肉14a、14bは、いずれもターミナル部の片側からチューブで外部ポンプ(いずれも図示せず。)に接続されており、外部ポンプから空気圧を印加することで個別に拡縮が可能である。人工筋肉14aを適宜拡縮することにより、妊婦の体型、特に臀部の大きさに応じて臀部支持体12の硬度を調節することで、臀部支持体12は妊婦の体重により変形しつつ、腹部が張り出しているため後傾しがちな妊婦の上体を背もたれに頼ることなく垂直に起立させた状態を維持できる。また、人工筋肉14bを適宜拡縮することにより会陰マッサージ体13の硬度を調節することで、会陰部へ刺激を調節することができる。また、会陰マッサージ体13の袋状体の上面には温熱シート(図示せず。)を設けており、会陰部および骨盤底筋を温めることができる。温熱シートは、電気式のものであってもよいが、シート状カイロを挿入してもよい。なお、会陰マッサージ体の温度は37~39℃が好適である。
【0024】
図4は安産準備パッド1に適用可能な外転保持クッション2の平面図であり、使用時には下側を前方、上側を後方として安産準備パッド1に取り付ける。図5はその右側面図であり、図6は背面図(妊婦側)、図7は正面図(反対側)である。また、図8は安産準備パッド1に外転保持クッション2を取り付けた状態の平面図であり、図9はその縦方向の断面図、図10は妊婦が着座した状態を示す側面図である。また、図10は安産準備パッド1と外転保持クッション2を備える安産準備椅子3の使用状態を示す側面図である。安産準備椅子3の椅子本体Cは、特に図示していないが、座面高さの調節機構を備えるものとする。
【0025】
外転保持クッション2は、略六角形の厚みのあるクッション本体20の両側面に取り付けフラップ21を設けている。クッション本体20は、後方の3つの辺のうちの2つの対称斜辺が角度αで開いた形状としており、前方の3つの辺の形状は任意である。角度αは、使用する妊婦の股関節や大腿部の筋肉の硬さによって適宜設定可能だが、概ね95~105°程度が好適である。クッション本体20の素材は、やはり反硬質または硬質のウレタンフォームが好適である。フラップ21は、安産準備パッド1への取付部であり、双方の対応面に面ファスナー(図示せず。)を設けることで、着脱可能に取り付けることができる。
【0026】
妊婦による使用にあたっては、妊娠36週頃までは会陰マッサージの必要性は高くないため、会陰マッサージ体13は取り外して、安産準備パッド1のみを使用してもよいが、本実施形態では会陰マッサージ体13は人工筋肉14bによって拡縮可能なので、装着したまま空気を抜いて平たくしておいてもよい。妊娠36週を過ぎて分娩時期が近づくと、会陰マッサージ体13の硬さを妊婦自身が着座したまま調節し、一日5分程度あるいは100回程度骨盤を左右に動かして会陰マッサージを行う。また、この頃には外転保持クッション2を安産準備パッド1に装着し、日常的に着座する都度、太腿を開いて外転させ、足首も外旋させて足裏を床に付けた状態となるようにする。この際も、骨盤が後傾しない姿勢を心掛け、後傾しがちである場合には臀部支持体12の硬度を高めて臀部を支持するようにする。
【0027】
さらに分娩時期が近づいたら、通常の椅子よりも低い高さ20cm前後の安定した台等を椅子代わりとして安産準備パッド1を配置し、あるいは、安産準備椅子3を使用して、少なくとも一日に10回、5~10分程度着座し、マクロバーツ体位に近い姿勢を訓練することが望ましい。
【0028】
以上、本発明に係る安産準備パッド、及び安産準備椅子の具体的な構成について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において改良又は変更が可能であり、それらは本発明の技術的範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、妊婦が家庭内で日常的に使用して安産をめざした体質改善の訓練に使用することを想定したものであるが、産婦人科クリニック等の待合室の椅子等への適用も望まれる。その適切な使用方法や会陰マッサージ等の方法は、産科医や助産師が指導することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態に係る安産準備パッドの平面図
図2】実施形態に係る安産準備パッドの断面図
図3】実施形態に係る安産準備パッドの正面図
図4】外転保持クッションの平面図
図5】外転保持クッションの右側面図
図6】外転保持クッションの背面図
図7】外転保持クッションの正面図
図8】安産準備パッドに外転保持クッションを装着した状態を示す平面図
図9】安産準備パッドに外転保持クッションを装着した状態を示す断面図
図10】安産準備椅子の使用状態を示す側面図
【符号の説明】
【0031】
1 安産準備パッド
10 パッド本体
11 凹部
12 臀部支持体
13 会陰マッサージ体
14a 人工筋肉(臀部保持体)
14b 人工筋肉(会陰マッサージ体)
2 外転保持クッション
20 クッション本体
21 フラップ
3 安産準備椅子
C 椅子本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10