(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】流体制御装置、流体制御方法、発電装置、および細胞培養装置
(51)【国際特許分類】
F04B 43/08 20060101AFI20240520BHJP
F04B 43/113 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
F04B43/08 Z
F04B43/113
(21)【出願番号】P 2020102314
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-04-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 一般社団法人日本機械学会第97期流体工学部門講演会 講演論文集、一般社団法人日本機械学会、発行日:令和1年11月7日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 一般社団法人日本機械学会第97期流体工学部門講演会、開催日:令和1年11月7日、開催場所:ホテルアソシア豊橋(愛知県豊橋市花田町西宿)
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】小原 弘道
(72)【発明者】
【氏名】高城 脩
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-161848(JP,A)
【文献】特開平04-060180(JP,A)
【文献】特表2010-516938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/08
F04D 33/00
F03B 13/22
C12M 1/00
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体と、
前記流体を収容するチューブと、
前記流体の流れ方向を固定するように、前記チューブの一部に取り付けられたチェックバルブと、
前記チューブに接触する振動源と、を備え
、
前記チューブは、非対称に振動する第一振動部と第二振動部とで構成され、
前記第一振動部および前記第二振動部は、前記振動源の振動に応じて自由に変形できるように構成されていることを特徴とする流体制御装置。
【請求項2】
前記流体が循環するように、前記チューブの両端の開口部同士が連結されていることを特徴とする請求項1に記載の流体制御装置。
【請求項3】
前記チューブの少なくとも一部を、固定した状態で支持する支持手段を、さらに備えていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項4】
前記第一振動部の重さと前記第二振動部の重さが、異なることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の流体制御装置。
【請求項5】
前記第一振動部と前記第二振動部のいずれかに、重りが取り付けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の流体制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の流体制御装置を用いた流体制御方法であって、
前記チューブを振動源に接触させて振動させ、前記チューブの一方から他方に前記流体を流すことを特徴とする流体制御方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の流体制御装置を備えた発電装置であって、
前記流体の運動エネルギーを電気エネルギーに変換するように、前記チューブの一部に取り付けられたタービンを、さらに備えることを特徴とする発電装置。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の流体制御装置を備えた細胞培養装置であって、
前記流体が細胞培養液であることを特徴とする細胞培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御装置、流体制御方法、発電装置、および細胞培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、身の回りにありながらも利用の難しいエネルギー源を用い、発電するエネルギーハーベスティングへの注目が高まっている。特に、国立公園などをはじめとする環境下において、設置可能とするための環境調和型の技術として、環境負荷を最小化し、効果的にエネルギーを変換する技術が求められている。エネルギー密度の観点から、潮流や海流、河川流等の水の流れのエネルギーを活用する技術が注目されており、水流エネルギーを利用した発電システムの開発が行われている(非特許文献1)。水流によって誘起される振動を、活用しやすい流動に変換する技術が確立されれば、効率的なエネルギー変換を、実現することが可能になると考えられる。例えば、水流によって誘起される振動を、循環する流れに変換することができれば、発電機を駆動することが可能となり、細胞培養液を循環させる流動に変換することができれば、シンプルな構造の細胞培養装置が実現できる。この場合、循環流を発生させるための回転部材が不要になるため、細胞が回転部材に接触した場合にダメージを受けてしまう問題を、回避することができると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】長屋茂樹,水中浮遊式海流発電システムの開発,ながれ(2016)Vol.35,pp3-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、水流によって誘起される振動から、流体の一方向の流れを形成することが可能な流体制御装置および流体制御方法と、それらを用いた発電装置および細胞培養装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
【0006】
(1)本発明の一態様に係る流体制御装置は、流体と、前記流体を収容するチューブと、前記流体の流れ方向を固定するように、前記チューブの一部に取り付けられたチェックバルブと、を備える。
【0007】
(2)上記(1)に記載の流体制御装置において、前記流体が循環するように、前記チューブの両端の開口部同士が連結されていてもよい。
【0008】
(3)上記(1)または(2)に記載の流体制御装置において、前記チューブの少なくとも一部を、固定した状態で支持する支持手段を、さらに備えていることが好ましい。
【0009】
(4)上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の流体制御装置において、前記チューブの重さが、前記チューブの長さ方向において、前記一方の側と前記他方の側とで異なっていてもよい。
【0010】
(5)上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の流体制御装置において、前記チューブの長さ方向において、前記一方の側または前記他方の側のいずれかに、重りが取り付けられていてもよい。
【0011】
(6)本発明の一態様に係る流体制御方法は、上記(1)~(5)のいずれか一つに記載の流体制御装置を用いた流体制御方法であって、前記チューブを振動源に接触させて振動させ、前記チューブの一方から他方に前記流体を流す。
【0012】
(7)本発明の一態様に係る発電装置は、上記(1)~(5)のいずれか一つに記載の流体制御装置を備えた発電装置であって、前記流体の運動エネルギーを電気エネルギーに変換するように、前記チューブの一部に取り付けられたタービンを、さらに備える。
【0013】
(8)本発明の一態様に係る細胞培養装置は、上記(1)~(5)のいずれか一つに記載の流体制御装置を備えた細胞培養装置であって、前記流体が細胞培養液である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の流体制御装置および流体制御方法によれば、チューブに対して非対称な振動を与えることにより、チューブ内の流体を一方向に循環させることができる。チューブの一部にタービンを接続することにより、このタービンを介して、循環する流体の運動エネルギーを、電気エネルギーに変換する発電装置を提供することができる。また、流体を細胞培養液とすることによって、循環する細胞培養液の中での細胞培養を可能とする、細胞培養装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)、(b)本発明の一実施形態に係る流体制御装置の斜視図、平面図である。
【
図2】(a)~(f)流体制御装置の動作の一例を説明する図である。
【
図3】流体制御装置を備えた発電装置の断面図である。
【
図4】実施例1の流体制御装置における、流体の速度の時間変化示すグラフである。
【
図5】実施例1の流体制御装置における、流体の量の時間変化示すグラフである。
【
図6】実施例2の流体制御装置における、流体の量の時間変化示すグラフである。
【
図7】実施例3の流体制御装置における、出力電圧の時間変化示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した実施形態に係る流体制御装置、流体制御方法、発電装置、および細胞培養装置について、図面等を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0017】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る流体制御装置100を動作させる、動作手段10の一例を示す斜視図である。
図1(a)において、左右方向(水平方向)をX方向とし、上下方向(鉛直方向)をZ方向とし、それらと直交する奥行方向(水平方向)をY方向とする。
図1(b)は、動作手段10をY方向から見た平面図である。
【0018】
流体制御装置100は、主に、流体(液体)101と、流体101を収容するチューブ102と、流体101の流れ方向を固定するように、チューブ102の一部に取り付けられたチェックバルブ(逆流防止弁)103と、を備える。
【0019】
流体101は、例えば粘性が水と同様の1mPa・sの液体であってもよく、チューブ101の振動に伴って流れを形成可能であればどのような粘度、レオロジー特性を有していてもよく、流体制御装置100の用途に応じて選択される。
【0020】
チューブ102は、しなやかな管状部材であって、様々な振動に応じて自由に変形する(曲がる)ことができるものとする。チューブ102の材料としては、どのようなものでも利用可能であり、例えば、シリコンゴムやポリ塩化ビニル、生分解性プラスティック、金属製のフレキシブルチューブ等が挙げられる。チューブ102の長さ、太さについては、用途に応じて決定される。用途の例について後述する。
【0021】
チューブ102の両端(一端102aと他端102b)の開口部同士は、チェックバルブ103を介して連結され、流体101の閉じた流路が形成されており、流体101をチューブ102の長さ方向に循環させることができる。
【0022】
チェックバルブ103は、チューブ102内の流体101が、一方向のみに流れるように制御する機能を有し、取り付けるチューブ102の形状、材質等に応じて適宜選択されるものである。
【0023】
流体制御装置100を用いた流体制御方法は、チューブ102を振動手段(振動源)に接触させて非対称に振動させ、チューブ102内の一方から他方に流体101を流すことによって実施される。
【0024】
図1の動作手段10は、流体制御装置100と、その支持手段200、振動手段(不図示)とで構成される。支持手段200の構成については、特に限定されるものではなく、チューブ102の一部を固定(把持)した状態で支持し、他の一部が、他の物体(壁、床等)に接触しないで振動できるように構成されていればよい。ここでの支持手段200は、主に、チューブ102を固定するチューブ固定部201と、鉛直方向(Z方向)に延在し、チューブ固定部201を床Fから離間させるように支持するL字状の支持部202と、で構成されている。
【0025】
振動手段の構成についても、特に限定されるものではなく、チューブ102に対し、位相差に対応する非対称な変形が行われるように(捻れるように)、振動を与える機能を有するものであればよい。ここでの駆動手段は、チューブ102のうち、チューブ固定部201に固定されていないU字状の振動部102Vを把持して、所定の高さの位置まで引き上げ、位置エネルギーを増加させた上で、この振動部102Vを解放し、振り子運動(振動)させる。これにより、チューブ102に振動を与えることができる。振動部102Vの引き上げ、解放の動作は、手動で行ってもよい。
【0026】
非対称な振動を発生させる振動手段としては、ランダムな流れを含む海流(潮流、河川流)等の自然現象を用いてもよい。例えば、流体制御装置100を海中に設置し、ランダムな方向に発生する海流の力を利用することにより、チューブ102を、非対称に変形するように振動させることができる。
【0027】
チューブ102の振動部102Vの重心部分Cを境にして、一方の側(右側)を第一振動部102Aとし、他方の側(左側)を第二振動部102Bとする。第一振動部102Aと第二振動部102Bの長さが等しい場合、両者の振り子運動には位相差が生じず、チューブ102の非対称な変形を伴う振動は得られない。これに対し、第一振動部102Aと第二振動部102Bの長さが等しくない場合、両者の振り子運動には位相差が生じ、チューブ102の非対称な変形を伴う振動が得られる。そこで、重心部分Cの位置は、第一振動部102A、第二振動部102Bのうち、一方の側に寄っており、第二振動部102Bが第一振動部102Aより長くなっているものとする。
【0028】
位相差θは、
図1(b)に示すように、チューブ102の振動面(YZ面)において、チューブ固定部201の近傍における、第一振動部102Aの長さ方向と第二振動部102Bの長さ方向とのなす角度として定義されるものとする。
【0029】
図2(a)~(f)は、動作手段10を用いた流体制御装置100の動作、すなわち、チューブ102の振動動作の一例を説明する図である。
【0030】
まず、
図2(a)に示すように、鉛直方向(Z方向)においてチューブ固定部201と同程度の高さまで、第一振動部102Aがたるまないように、振動部102Vの重心部分Cを把持して引き上げる。このとき、第二振動部102Bは、第一振動部102Aに比べて長い分、より大きいたるみを有するため、第一振動部102Aより低い位置にある。したがって、第二振動部102Bの位置エネルギーは、第一振動部102Aより小さい。
【0031】
次に、振動部102Vの重心部分Cを解放することによって、
図2(b)~(f)に示すように、チューブ固定部201を支点とする、チューブ102全体の振り子運動を開始する。
【0032】
第一振動部102Aは、第二振動部102Bに比べて大きい位置エネルギーを有しており、それを運動エネルギーに変換することができるため、第二振動部102Bより高速で運動することができる。したがって、重心部分Cの解放後の第一振動部102Aは、
図2(b)に示すように第二振動部102Bとの距離を縮め、
図2(c)に示すように第二振動部102Bを追い越す。続いて、第一振動部102Aは、運動エネルギーを使い果たしたところで折り返し、
図2(d)に示すように、遅れて運動している第二振動部102Bとすれ違う。続いて、第二振動部102Bも、運動エネルギーを使い果たしたところで折り返し、
図2(e)に示すように、第一振動部102Aに追従するように運動する。続いて、
図2(f)に示すように、反対側で折り返した第一振動部102Aが、第二振動部102Bと再度すれ違う。
【0033】
このような振り子運動を続けることによって、チューブ102の第一振動部102Aと第二振動部102Bとを、位相差がある状態で非対称に振動させ、チューブ102内の流体101を循環させることができる。チェックバルブ103によって、流体101の循環は一方向に制限される。循環流の流速は、チューブ102を長さの約二乗に比例して変化する。
【0034】
第一振動部102Aと第二振動部102Bとで、振動を非対称にする一例として、ここでは、両者の長さを変えて重さを非対称とする方法を用いている。振動を非対称にする他の例としては、チューブ102の長さ方向において、一方の側と他方の側とで重さが異なるように、両者の構成材料を変える方法を用いてもよい。また、振動を非対称にする他の例としては、チューブ102の長さ方向において、一方の側または他方の側のいずれかに、重りを取り付ける方法を用いてもよい。
【0035】
図3は、流体制御装置100を備えた発電装置20の構成を模式的に示し、その適用例について説明する図である。発電装置20は、主に、流体制御装置100と、タービン(発電手段)104とを備えている。タービン104は、流体制御装置100において、チューブ102内を循環させた流体101の運動エネルギーを、電気エネルギーに変換するように、チューブ102の一部に取り付けられている。
【0036】
発電装置20は、タービン104を陸(島)Lに設置し、チューブ102の一部をタービン104に固定し、タービン104に固定されていないU字状の振動部102Vを、海Sの中に入れた状態で動作させることができる。ここでのタービン104は、発電手段としてだけでなく、チューブ102の支持手段としての役割も担い、海Sの中でランダムに発生する海流が、振動手段として機能する。
【0037】
以上のように、本実施形態の流体制御装置100によれば、チューブ102に対して非対称な振動を与えることにより、チューブ102内の流体101を一方向に循環させることができる。チューブ102の一部にタービン104を接続することにより、このタービン104を介して、循環する流体101の運動エネルギーを、電気エネルギーに変換する発電装置20を得ることができる。
【0038】
本実施形態の発電装置20の構成においては、実施例として後述するように、長さが1m程度のチューブ102を手動で振動させた場合にも、Vオーダーの出力電圧が得られている。このことから、例えば、kmオーダーの長さのチューブ102を海中に配置し、海流のエネルギーを振動源として用いる発電装置20であれば、さらに巨大な出力が得られると考えられる。この場合、海中にタービン等の大規模な設備を配置する必要がないため、海中生物にとっての環境悪化、景観の悪化等の問題がなく、また、タービン用の潤滑油による海洋汚染の問題を回避することもできる。
【0039】
本実施形態では、チューブ102の両端(一端102aと他端102b)の開口部同士は、チェックバルブ103を介して連結されている場合について例示しているが、両端の開口部同士は連結されていなくてもよい。つまり、チューブ102内における流体101の流路は開いていてもよい。ただし、流路が開いている場合には、所定のタイミングで、流路内に流体101を供給する手段が必要となる。
【0040】
流体制御装置100は、チューブ102内を流れる流体101を、細胞培養液とすることによって、細胞培養装置として活用することもできる。チューブ102の非対称な振動に伴って循環する細胞培養液に、培養対象の細胞を浸漬することにより、優れた細胞培養効果が得られると考えられる。従来の細胞培養装置では、循環流を発生させる手段としてスクリュー等の回転部材を用いる必要がある。そのため、培養対象の細胞が回転部材に接触した場合に、ダメージを受けてしまうことが問題となっているが、本実施形態の細胞培養装置では、回転部材が不要であるため、このような問題を回避することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により、本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0042】
(実施例1)
流体制御装置100において、長さが異なる五本のチューブ102のそれぞれに対し、
図1の動作手段10を用い、
図2に示すような非対称な振動を与えた際に、チューブ102内を流れる流体の流速および流量を、流量計を用いて測定した。流体101としては水を用いた。五本のチューブ102のそれぞれの長さを、321mm、293mm、263mm、234mm、203mmとした。いずれのチューブ102も、内径を4mmとし、外径6mmとした。
【0043】
図4は、五本のチューブ102に対応する、流体101の流速の測定結果を示すグラフである。グラフの横軸は振動開始からの経過時間[ms]を示し、グラフの縦軸は、流体101の流速[ml/s]を示している。
図5は、五本のチューブ102に対応する、流体101の流量の測定結果を示すグラフである。グラフの横軸は振動開始からの経過時間[ms]を示し、グラフの縦軸は、流体101の流量[ml/s]を示している。
図5に示す各プロットの流量の値は、
図4において、チューブ102の長さごとに、流速を時間で積分した結果に相当する。
【0044】
これらの結果から、チューブ102が長いほど、チューブ102内の流体101の流量が増加し、また、誘起される流れの持続時間も増加していることが分かる。流体101の流量は、チューブ102の長さの約二乗に比例して単調増加していることが分かる。チューブ102の長さと流体101の流量の関係から、チューブ102が振動する際に発生する遠心力の大きさが、流体101の流量に影響していると考えられる。長さが321mmのチューブ102を用いた場合、他の四本のチューブ102を用いた場合とは異なる特性が見られる。長さが321mmのチューブ102では、流速の分布が、複数の時刻において極大を示している。極大を示すそれぞれの時刻は、チューブ102が、
図2(c)~(f)で示すような変形(捻れ)状態になる時刻に対応している。
【0045】
(実施例2)
流体制御装置100において、異なる質量(重り)を付加した五本のチューブ102のそれぞれに対し、
図1の動作手段10を用い、
図2に示すような非対称な振動を与えた際に、チューブ102内を流れる流体の流速を、流量計を用いて測定した。質量を付加する位置を、チューブ102のU字状の振動部のうち、最下点からX方向に70mmずれた位置とした。チューブ102の長さを1000mmとした。流体101、チューブ102の内径、外径については、実施例1と同様とした。
【0046】
図6は、五本のチューブ102に対応する、流体101の流速の測定結果を示すグラフである。グラフの横軸は振動開始からの経過時間[ms]を示し、グラフの縦軸は、流体101の流速[ml/s]を示している。
【0047】
この結果から、付加質量を増加させることにより、チューブ102の振動の非対称性が増大し、チューブ102内に誘起される流動が大きくなることが分かる。すなわち、しなやかなチューブ102を非対称に振動させることによって、流量を増加させることができる。このことから、付加質量を増加させた部分(右側部分)と、付加質量を増加させていない部分(左側部分)とで、チューブ102の挙動の位相差を大きくすることが、チューブ102内の流体101の流量が増加する要因であると考えられる。
【0048】
チューブ102が振動している間、流体101には、遠心力と重力の合力が作用するため、流体101は外側に向かって流れようとする。仮に、均一に構成されているチューブ102に対し、付加質量を行わない場合には、チューブ102の各位置に作用する力が拮抗し、打ち消し合うため、チューブ102内に流れは生じない。チューブ102の挙動の位相差があることにより、遠心力の最大となる瞬間に差異が生じ、遠心力による作用力の差によって流動が形成されると考えられる。
【0049】
(実施例3)
流体制御装置100のチューブ102に対し、発電機(タービン)104を取り付けてなる発電装置20を動作させ、出力電圧を測定した。流体101としては、実施例1と同様のものを用いた。チューブ102の長さを3mとし、チューブ102の内径を15mmとし、外径を20mmとした。発電機としては、マイクロ水流発電機(F50-5V)を用いた。出力電圧は、データロガー(GRAPHTEC製)を用いて測定した。
【0050】
図7は、出力電圧の測定結果を示すグラフである。グラフの横軸は振動開始からの経過時間[ms]を示し、グラフの縦軸は、出力電圧[V]を示している。ここでは小振幅、大振幅の振動時の結果を示す。振動時には振動に対応して起電力が発生しており、大振幅時においては、ここで用いた発電機の定格である5Vに到達する出力が得られている。振動停止後(35s後以降)は、流体101の速度が徐々に減衰することに対応して、出力電圧も徐々に低下している。安定した振動が得られれば、3~4Vを連続的に取り出すことが可能であると考えられる。チューブ径や発電機タービンの設計の最適化により幅の広い範囲での発電が可能になると考えられる。従来の振動からエネルギーを得るエネルギーハーベスティングデバイスは、高効率な圧電素子を用いたものであっても、得られる出力電圧はmVオーダーであり、本発明の発電装置20によれば、この1000倍以上の出力電圧が得られることになる。
【符号の説明】
【0051】
100・・・流体制御装置
101・・・流体
102・・・チューブ
102A・・・第一振動部
102B・・・第二振動部
102V・・・振動部
102a・・・チューブの一端
102b・・・チューブの他端
103・・・チェックバルブ
104・・・タービン
10・・・動作手段
200・・・支持手段
201・・・チューブ固定部
202・・・支持部
20・・・発電装置
C・・・重心部分
L・・・陸
S・・・海