(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】ハイドロゲル粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20240520BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240520BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240520BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240520BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K47/36
A61K9/06
A61K8/73
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020107720
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2019117679
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】喜多 剛志
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-136983(JP,A)
【文献】特開2003-238693(JP,A)
【文献】特開2012-71220(JP,A)
【文献】特開2000-226322(JP,A)
【文献】特開2010-138080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天およびアルギン酸またはその塩を含むゲル形成剤と、水と、を含むハイドロゲル粒子で、
(1)圧縮破断強度が50kPa以下であり、
(2)当該寒天を0.4質量%以上2.0質量%以下含み、
(3)当該アルギン酸またはその塩を0.5質量%以上2.0質量%以下含み、
(4)含水率が94.20質量%以上であり、
(5)原子吸光法で測定した濃度が0を超えて350ppm以下のカルシウムを含む、
当該ハイドロゲル粒子。
【請求項2】
前記含水率が、94.40質量%以上99.60質量%以下である請求項
1に記載のハイドロゲル粒子。
【請求項3】
前記圧縮破断強度が0.15kPa以上35kPa以下である請求項1
又は2に記載のハイドロゲル粒子。
【請求項4】
内包させる所望の物質を含む請求項1~
3のいずれか一項に記載のハイドロゲル粒子。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のハイドロゲル粒子を含む皮膚外用剤。
【請求項6】
寒天およびアルギン酸またはその塩を含むゲル形成剤と、所望の物質と、水と、を混合および加熱して混合液を調製する工程と、
前記混合液を、ノズルを介して塩化カルシウム水溶液中に滴下して液滴を形成する工程と、
前記液滴を回収および洗浄する工程と、を含む請求項1
から5のいずれか一項に記載のハイドロゲル粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロゲル粒子およびその製造方法並びにこのハイドロゲル粒子を含む皮膚外用剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、化粧品市場では、化粧品の塗布後の肌の美しさや保湿等のスキンケア効果だけでなく、化粧品自体の外観や使用感等の視覚的演出も商品の魅力の一つである。特に、メークアップ化粧品においては、顔料粒子を肌へ塗布することによって崩壊させ、均一に分散させる等の技術は、使用時の視覚的演出として有効である。
【0003】
例えば、特許文献1には、水中油型エマルションを内包したカプセルを含有する化粧料であって、カプセル膜がカプセル全量に対し0.1~1.0重量%のアルギン酸カルシウムからなる、エマルション内包カプセル含有化粧料が開示されている。また、特許文献2には、アルギン酸塩の少なくとも一部がバリウム塩を必須成分とする多価金属塩の形で存在しているアルギン酸バリウムカプセルが、pH調整されたカルボキシビニルポリマーの水溶液からなる外相中に存在しているカプセル入り化粧料が開示されている。さらに、特許文献3には、非架橋型ハイドロゲルを含む連続相および油性成分を含む分散相を有し、油性成分が固体脂および/または液体油からなるハイドロゲル粒子が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1および2で使用されるアルギン酸塩系カプセルは、例えば、水溶性アルギン酸塩と水溶性カルシウム塩とを反応させて水不溶性のアルギン酸カルシウムを生成させることによって製造されているため、皮膚に適用したときにカプセルのカスが皮膚上に残留して違和感が生じるという問題がある。また、特許文献3に記載のハイドロゲル粒子は、例えば、乳化分散剤を用いて油性成分を乳化または分散させているため透明性に欠け、透明感の高いハイドロゲル粒子としては適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-117610号公報
【文献】特開平11-29433号公報
【文献】特許第3483543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、皮膚に塗布した際の指等による崩壊をスムーズに行うことができ、伸びが良好でカス残りの無い新たなハイドロゲル粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行った結果、ゲル形成剤として、寒天およびアルギン酸またはその塩を溶解した水溶液から、最初にカルシウムイオンによりアルギン酸カルシウムの皮膜を形成した粒子を作製し、続いてこの粒子の温度を低下させて寒天をゲル化し、さらにこのゲル化した粒子からカルシウムイオンの濃度を低下させることによって、崩壊しやすくかつ透明性の高いハイドロゲル粒子が得られることを見出した。すなわち、本発明は、以下の実施形態を含む。
【0008】
(1)寒天およびアルギン酸またはその塩を含むゲル形成剤と、含水率が94.20質量%以上の水と、を含み、圧縮破断強度が50kPa以下であるハイドロゲル粒子。
(2)原子吸光法で測定した濃度が0を超えて350ppm以下のカルシウムを含む(1)に記載のハイドロゲル粒子。
(3)含水率が、94.40質量%以上99.60質量%以下である(1)または(2)に記載のハイドロゲル粒子。
(4)圧縮破断強度が0.15kPa以上35kPa以下である(1)~(3)のいずれか一項に記載のハイドロゲル粒子。
(5)内包させる所望の物質を含む(1)~(4)のいずれか一項に記載のハイドロゲル粒子。
(6)(1)~(5)のいずれか一項に記載のハイドロゲル粒子を含む皮膚外用剤。
(7)寒天およびアルギン酸またはその塩を含むゲル形成剤と、所望の物質と、水と、を混合および加熱して混合液を調製する工程と、この混合液を、ノズルを介して塩化カルシウム水溶液中に滴下して液滴を形成する工程と、この液滴を回収および洗浄する工程と、を含むハイドロゲル粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、皮膚に塗布した際の指等による崩壊をスムーズに行うことができ、伸びが良好でカス残りの無い新たなハイドロゲル粒子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(ハイドロゲル粒子)
本発明の一実施形態のハイドロゲル粒子は、(A)寒天およびアルギン酸またはその塩を含むゲル形成剤と、(B)94.20質量%以上の水と、を含む。ここで、「ハイドロゲル粒子」とは、ハイドロゲル中に所望の成分を溶解または分散させた1個乃至複数個の粒子をいう。また、本明細書において「ハイドロゲル」とは、水を溶媒として寒天およびアルギン酸を含むゲル形成剤から得られたゲルをいう。
【0011】
ハイドロゲル粒子の形状は、特に限定されるものではないが、形状の安定性および美観の観点から、球状体であることが好ましい。ここでいう球状とは、真球だけでなく、断面が楕円のものであってもよいが、真球が好ましい。
【0012】
本実施形態のハイドロゲル粒子の平均粒径は、例えば球状体の粒子を作製する際においてこの粒子をより作製しやすくするために、好ましくは下限が0.05mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは6.0mm以上であり、好ましくは上限が10mm以下、より好ましくは6.0mm以下、更に好ましくは4.0mm以下である。ハイドロゲル粒子の平均粒径は、レーザー回折/散乱式または篩法により測定することができる。レーザー回折/散乱式による方法は、粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所社製、型番:LA-920)を用いてメジアン径を測定し、それを平均粒径とするものである。篩法は、各種目開きのフルイを用い、ハイドロゲル粒子100gを水中で湿式分級して余分な水分をろ紙で除去した後の質量を測定し、その重量平均粒径を平均粒径とするものである。
【0013】
また、使用時における感触の向上の観点から、本実施形態のハイドロゲル粒子の圧縮破断強度が50kPa以下であることが好ましい。ハイドロゲル粒子の形状を維持して皮膚外用剤や化粧品等により配合しやすくする観点で、本実施形態のハイドロゲル粒子の圧縮破断強度は、好ましくは0.15kPa以上であり、より好ましくは0.20kPa以上であり、さらに好ましくは0.25kPa以上である。また、肌に塗布したときに皮膚上での伸びやなじみが良好で、スムーズに崩壊させることがよりできるようにする観点で、本実施形態のハイドロゲル粒子の圧縮破断強度は、より好ましくは40kPa以下であり、35kPa以下である。
【0014】
なお、ここで圧縮破断強度とは、ゲル試料に圧縮荷重を加えた時に、ゲル試料が破断する最大応力のことをいう。圧縮破断強度は、球状のゲル試料に対して、1軸荷重をかけた時の圧縮力をその軸に垂直な断面積で割った値(kPa(N/m2))で表わすことができる。圧縮破断強度は、圧縮破断応力とも称され、公知の測定機器を用いて、公知の方法で調べることができる。圧縮破断強度測定機器としては、たとえば、サン科学社製の圧縮試験機(Rheo Meter:CR-000EX)があげられる。本実施形態において規定する圧縮破断強度は、以下に示す実施例に記載の測定方法によって測定された値である。
【0015】
本実施形態のハイドロゲル粒子には、所望の成分を内包させることができ、また、本発明の効果を損わない限り任意成分を含んでもよい。以下、本実施形態のハイドロゲル粒子の配合成分について詳細に説明する。
【0016】
<(A)ゲル形成剤>
ゲル形成剤としては、(A1)寒天および(A2)アルギン酸またはその塩を含む。
【0017】
(A1)寒天
寒天は、天草やオゴノリなどの紅藻類から熱水抽出され、ろ過精製し、ゲル化後脱水乾燥させた乾物である。この乾物状の寒天は、一般に75℃以上の熱水に溶解しゾルとなり、30~45℃に冷却すると構造転移してゲルとなるハイドロコロイドである。このゲルは、再加熱により溶解してゾルに戻る熱可逆性の性質を有する。本実施形態で用いられる寒天としては、通常の寒天のほか、様々な寒天を用いることができるが、使用時の感触がよいという観点から、そのゼリー強度が、好ましくは19.6kPa(200g/cm2)以上、より好ましくは50.0kPa(510g/cm2)以上の寒天である。また、同様の観点から、ゼリー強度が好ましくは147kPa(1500g/cm2)以下、より好ましくは127kPa(1300g/cm2)以下である。寒天のゼリー強度は、日寒水式法により求めることができる。具体的には、寒天のゼリー強度は、寒天の1.5質量%水溶液を調製し、その水溶液を20℃で15時間放置して凝固させたハイドロゲルに、日寒水式ゼリー強度測定器((株)木屋製作所製)により荷重をかけ、20℃においてハイドロゲルが20秒間その荷重に耐えるときの表面積1cm2あたりの最大質量(g)として測定される。
【0018】
本実施形態のハイドロゲル粒子中における寒天の含有量は、ハイドロゲル粒子の皮膚外用剤や化粧料への配合時における壊れを防止する観点から、0.4質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、0.8質量%以上がさらに好ましい。また、水溶液中で均一に分散および溶解するために2.0質量%以下が好ましく、1.75質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましい。
【0019】
(A2)アルギン酸またはその塩
アルギン酸は、コンブ、ワカメ、アラメなどの褐藻類に含まれる多糖類で、β-D-マンヌロン酸(M)とα-L-グルロン酸(G)がブロック重合したポリマーである。アルギン酸またはその塩は、海藻抽出物を使用することが可能であり、主な工業的原料としては、マクロシスティス、アスコフィリウム、ダービリア、レソニア、ラミナリアなどの褐藻類から抽出され、精製、乾燥、粉砕された乾物を用いることができる。
【0020】
また、アルギン酸塩としては、アルギン酸中のカルボキシル基の水素が、ナトリウムやカリウム、マグネシウム、アンモニウムなどの各イオンと置換されて、水溶性のアルギン酸塩として製品化されたものを用いることができる。
【0021】
アルギン酸またはその水溶性塩は、カルシウムイオンなどの二価金属イオンの存在下でゲル化し、寒天やゼラチンなどの熱可塑性ゲルと異なり、一定の温度でゾル-ゲル変化するリオトロピックゲルを形成する。このアルギン酸ゲルの物理化学的性質は、MとGの比率、ブロック組成、二価金属イオンの種類およびその結合度によって変化する。GGブロックの割合が大きいほど二価金属イオンとの結合度は大きく、そのゲルの粘弾性も大きくなる。カルシウムイオンを添加して架橋ゲル化したアルギン酸ゲルにゲルの形成に関与しないナトリウムイオンなどの対イオンを添加すると、橋かけ領域内のグルロン酸ブロック間にスタッキングされたカルシウムイオンが対イオンにより交換されることにより橋かけ構造は崩壊し、溶解することが報告されている。
【0022】
本実施形態のハイドロゲル粒子中におけるアルギン酸またはその塩の含有量は、ハイドロゲル粒子を球状に成形する観点から、0.5質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましく、0.8質量%以上がさらに好ましい。また、水溶液中で均一に分散および溶解するために2.0質量%以下が好ましく、1.75質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましい。
【0023】
(A3)カラギーナン
本発明の他の実施形態では、例えば、上記アルギン酸またはその塩の代わりにカラギーナンを用いてもよく、上記アルギン酸またはその塩とカラギーナンとを併用して用いてもよい。本実施形態におけるカラギーナンとは、紅藻類から抽出され、アンヒドロガラクトースとガラクトースの硫酸エステルを構成糖とする多糖類である。カラギーナンは硫酸エステル含量によりκ(カッパ)、ι(イオタ)、λ(ラムダ)があり、本発明においては、特に限定されるものではないが、ι-カラギーナンが好ましい。また、ι-カラギーナンは市販のものをそのまま用いてもよい。例えば、「ソアギーナTM、MV201」(MRCポリサッカライド社製)等が挙げられる。
【0024】
本実施形態におけるカラギーナンの含有量は、ハイドロゲル粒子を球状に成形する観点から、0.5質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましく、0.8質量%以上がさらに好ましい。また、水溶液中で均一に分散および溶解するために4.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、2.5質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
<(B)水>
水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。本実施形態のハイドロゲル粒子中における水の含有量(含水率)は94.20質量%以上であることが好ましい。ハイドロゲル粒子の透明度が増やす観点で、本実施形態のハイドロゲル粒子中における水の含水率は、好ましくは94.20質量%以上であり、より好ましくは94.40質量%以上であり、更に好ましくは94.60質量%以上である。また、粒子をつぶした後の感触を有するようにする観点で、本実施形態のハイドロゲル粒子中における水の含水率は、好ましくは99.60質量%以下であり、より好ましくは99.40質量以下であり、更に好ましくは99.20質量%以下である。
【0026】
<カルシウム塩>
本実施形態のハイドロゲル粒子は、アルギン酸またはその塩を含む水溶液の液滴を、カルシウムイオンを含む溶液に滴下することによって、アルギン酸カルシウムとなりゲル球を形成することができる。このとき用いるカルシウム塩としては、例えば、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、酪酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、グルコン酸カルシウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ゲル形成速度に優れる点で、塩化カルシウムがより好ましい。
【0027】
また、ゲル化したハイドロゲル粒子を水で洗浄することにより、粒子中に含まれるカルシウムイオンの濃度を低下させること又はカルシウムイオンをなくすことができる。これにより、ゲル化したアルギン酸の一部が再可溶化されてもよい。これにより、ハイドロゲル粒子中のアルギン酸は仕込み時に用いた水溶液の濃度から低下する場合がある。
【0028】
本実施形態のハイドロゲル粒子は、カルシウムを含まないこともあるが、カルシウムを含む場合は、原子吸光法で測定したカルシウム濃度が0を超えるが、粒子が硬くなりすぎないようにする観点等で、好ましくは原子吸光法で測定したカルシウム濃度が、350ppm以下であり、より好ましくは330ppm以下であり、更に好ましくは250ppm以下である。
【0029】
<内包させる所望の物質>
本実施形態のハイドロゲル粒子は、所望の物質を内包させることができる。この内包物は、必要に応じて、香粧学的活性または薬理活性を示す活性成分が含まれていてもよい。このような活性成分としては、特に制限されないが、例えば、水溶性のビタミン、油溶性のビタミン、グリチルリチン酸、アスタキサンチン、コエンザイムQ10、α-リポ酸、セラミド、リノール酸、アルブチン、トラネキサム酸、コウジ酸、酵素、ペプチド、ホルモン、各種サイトカイン、ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン、糖類等の生理活性物質またはそれらの誘導体、各種動植物抽出物、微生物による発酵で得られる物質、ステロイド剤、抗ヒスタミン、局所麻酔剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗菌剤、鎮痒剤、皮膚保護剤、血行促進剤、ステロール類等が挙げられる。これらの活性成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
<その他の成分>
他の任意成分として、皮膚外用剤や化粧料等に通常使用される各種の成分(例えば、着色剤、防腐剤、油剤、界面活性剤、増粘剤、粉体、キレート剤、pH調整剤、等)を、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜配合してもよい。
【0031】
着色剤としては、顔料および染料が挙げられる。これらの着色剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。顔料としては、例えば、カーボンブラック、タルク、カオリン、雲母、雲母チタン、ベンガラ、オキシ塩化ビスマス、珪酸マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、群青等の無機顔料、および赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色219号、赤色228号、赤色404号、黄色205号、黄色401号、だいだい色401号、青色404号等の有機顔料が挙げられる。染料としては、油溶性染料、建染染料、レーキ染料等が挙げられる。油溶性染料としては、例えば、赤色505号、赤色501号、赤色225号、黄色404号、黄色405号、黄色204号、だいだい色403号、青色403号、緑色202号、紫色201号等が挙げられる。建染染料としては、例えば、赤色226号、青色204号、青色201号等が挙げられる。レーキ染料としては、例えば、種々の酸性染料をアルミニウムやバリウムでレーキしたもの等が挙げられる。
【0032】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、イソプロピルメチルフェノール、エタノール、フェノキシエタノール、デヒドロ酢酸およびその塩類、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、エチルアルコール等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
(ハイドロゲル粒子の製造方法)
本発明のハイドロゲル粒子の製造方法は、例えば、寒天およびアルギン酸またはその塩を含むゲル形成剤と、所望の物質と、水と、を混合および加熱して混合液を調製する工程と、この混合液を、ノズルを介してカルシウム塩の溶液(例えば、塩化カルシウム水溶液、乳酸カルシウム水溶液)中に滴下して液滴を形成する工程と、そして、形成された液滴を回収および洗浄する工程と、を含む。なお、粒子のゲル形成の速度を遅くする場合は、このカルシウム塩の溶液にキレート剤(例えば、EDTA)を含有する場合もある。ゲル形成剤と、所望の物質とを含む水溶液を調製する工程は、最初に、アルギン酸またはその塩を水中にて1~数時間攪拌混合してアルギン酸を十分に溶解することが好ましい。続いてゲル化剤である寒天を投入し、75~85℃程度まで加熱して寒天を溶解させる。ハイドロゲル粒子に内包させる物質は、最初から加えてもよいし、あるいは寒天を完全にゲル化してから添加してもよい。温度安定性の低い物質は、寒天を溶解させたゲル化液を50℃程度まで冷却した保温液中に添加することが好ましい。
【0034】
このようにして得られた分散液から一般的な滴下法および攪拌法により、ハイドロゲル粒子を製造する。なお、ハイドロゲル粒子からの油性成分の漏れ防止の観点から、ハイドロゲル粒子は、滴下法で製造することが好ましい。
【0035】
滴下法は、孔から分散液を吐出し、吐出された分散液がその表面張力または界面張力によって液滴になる性質を利用して製造する方法である。孔から吐出される分散液には、ハイドロゲル粒子の粒径の均一性の観点から、振動を与えてもよい。滴下法により形成された液滴は、固化(例えば、空気等の気相中若しくは液相中で冷却固化及び/又は空気等の気相中若しくは液相中でイオン(カルシウムイオンなど)により架橋が起こり固化)され、粒子となる。
【0036】
滴下法において、液滴を生成させる場所は、気相であってもよく、あるいは液相であってもよい。なお、液相で形成させる場合には、液流れのない静液中で形成させても、あるいは液滴形成管を用いて下降流、上昇流あるいは平行流に同伴させて形成させてもよい。また、孔の端面は、気相および液相のいずれの中に存在していてもよいが、液相中で液滴を形成させる場合には、液相中に存在していることが好ましい。
【0037】
攪拌法は、分散液とは実質的に混じり合わない性状を有し、かつ寒天のゲル化温度以上の温度に調整した液に分散液を投入し、攪拌によるせん断力により分散液を微粒化させ、界面張力によって液滴になる性質を利用して製造する方法である。攪拌法により形成された液滴は、分散液とは実質的に混ざり合わない液中で固化(例えば、冷却固化)され、粒子となる。
【0038】
吐出時または投入時の分散液の温度は、特に限定されないが、寒天のゲル化温度以上の温度でかつ100℃以下が好ましい。また、美観に優れた球状の粒子の製造のしやすさの観点から、分散液の温度は、ゲル化温度+10℃以上、好ましくはゲル化温度+20℃以上であることが望ましい。なお、温度の上限値は、水の沸点以下である100℃であることが望ましい。
【0039】
分散液の粘度は、B型粘度計で測定することができる。分散液の粘度は、特に限定されないが、その吐出時または投入時の温度において、通常、0.1~1000mPa・s、好ましくは1~800mPa・sであることが望ましい。
【0040】
(用途)
本発明のハイドロゲル粒子は、例えば、皮膚外用剤(例えば、毛髪や体毛に塗布するための剤(染毛剤、育毛剤、脱毛防止剤、除毛剤など)、口腔(唇など)に塗布等により投与するものも含む)として、クリーム、乳液、美容液等のスキンケア化粧料、石鹸、クレンジングクリーム、クレンジングローション、洗顔料等の皮膚洗浄料、シャンプー、リンス、トリートメント等の洗髪用化粧料や、ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアトニック、ヘアジェル、ヘアローション、ヘアオイル、ヘアエッセンス、ヘアウォーター、ヘアワックス、ヘアフォーム等の整髪料、育毛・養毛料、ファンデーション、アンダーメーク、フェイスカラー、チークカラー、アイカラー、リップカラー等のメークアップ化粧料、薬用化粧品、外用医薬部外品,外用医薬品等が挙げられる。
【0041】
皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品および医薬品等に慣用される他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて配合し、常法により製造することもできる。
【実施例】
【0042】
(ハイドロゲル粒子の作製)
<実施例1>
1.5gのアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、IL-6G、粘度:65mPa・s)と、0.38gのフェノキシエタノールと、を精製水に溶解し、全量99.6g(100gから寒天の添加量を差し引いた質量)の水溶液を調製した。この水溶液を攪拌しながら加熱し、70℃程度になったときに、0.4gの寒天(伊那食品工業株式会社製、PS-6、ゼリー強度:860)を加え、さらに加熱して85℃で20分間保持しながら寒天を完全に溶解させた。その後、液温が50℃になるまで冷却した。
【0043】
この水溶液を、20mMの塩化カルシウム水溶液中にスポイトを用いて滴下し、球状のハイドロゲル粒子を形成した。滴下から1分以内に篩を用いて粒子を回収し、約10倍量の精製水で洗浄した。これを、1質量%のフェノキシエタノール水溶液に50質量%となるように浸漬し、4℃にて冷蔵保存した。
【0044】
<実施例2>
ゲル形成剤として用いた寒天の配合量を、1.2gとしたことを除いて実施例1と同様にしてハイドロゲル粒子を作製し、これを実施例2とした。この実施例2では、実施例1に比べて3倍量の寒天を用いている。
【0045】
<実施例3>
1.0gのアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、IL-6G、粘度:65mPa・s)と、0.25gのフェノキシエタノールと、を精製水に溶解し、全量99.4g(100gから寒天の添加量を差し引いた質量)の水溶液を調製した。この水溶液を攪拌しながら加熱し、70℃程度になったときに、0.6gの寒天(伊那食品工業株式会社製、PS-6、ゼリー強度:860)を加え、さらに加熱して85℃で20分間保持しながら寒天を完全に溶解させた。その後、液温が50℃になるまで冷却した。この水溶液を実施例1と同様の方法にて滴下法によりハイドロゲル粒子を形成した。この実施例3で作製したハイドロゲル粒子は、実施例2に比べてゲル形成剤の使用量が、アルギン酸ナトリウムは2/3に、寒天は1/2に減少している。
【0046】
<実施例4>
ゲル形成剤を含む水溶液に0.01gのヒアルロン酸を添加したことを除いて実施例3と同様にしてハイドロゲル粒子を作製し、これを実施例4とした。
【0047】
<実施例5>
ヒアルロン酸の代わりにスクアランを0.01g添加したことを除いて実施例4と同様にしてハイドロゲル粒子を作製し、これを実施例5とした。
【0048】
<実施例6>
1.0gのアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、I-3G、粘度:350mPa・s)を精製水に溶解し、全量99.4g(100gから寒天の添加量を差し引いた質量)の水溶液を調製した。この水溶液を攪拌しながら加熱し、70℃程度になったときに、0.6gの寒天(伊那食品工業株式会社製、PS-6、ゼリー強度:860)を加え、さらに加熱して85℃で20分間保持しながら寒天を完全に溶解させた。その後、液温が50℃になるまで冷却した。この水溶液を実施例1と同様の方法にて滴下法によりハイドロゲル粒子を形成した。この実施例6では、実施例3と比較して用いたアルギン酸ナトリウムの粘度が大きく、またフェノキシエタノールを添加していない点で異なる。
【0049】
<実施例7>
1.0gのアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、IL-6G、粘度:65mPa・s)を精製水に溶解し、全量98.8g(100gから寒天の添加量を差し引いた質量)の水溶液を調製した。この水溶液を攪拌しながら加熱し、70℃程度になったときに、1.2gの寒天(伊那食品工業株式会社製、BX200、ゼリー強度:220)を加え、さらに加熱して85℃で20分間保持しながら寒天を完全に溶解させた。その後、液温が50℃になるまで冷却した。この水溶液を実施例1と同様の方法にて滴下法によりハイドロゲル粒子を形成した。この実施例7では、実施例1~6と比較して用いた寒天のゼリー強度が異なる。
【0050】
<実施例8>
ゲル形成剤として用いたアルギン酸ナトリウムの粘度を大きくしたことを除いて実施例7と同様にしてハイドロゲル粒子を作製し、これを実施例8とした。この実施例2では、実施例1に比べて3倍量の寒天を用いている。
【0051】
<実施例9>
1.5gのアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、IL-6G、粘度:65mPa・s)を精製水に溶解し、全量99.4g(100gから寒天の添加量を差し引いた質量)の水溶液を調製した。この水溶液を攪拌しながら加熱し、70℃程度になったときに、0.6gの寒天(伊那食品工業株式会社製、PS-6、ゼリー強度:860)を加え、さらに加熱して85℃で20分間保持しながら寒天を完全に溶解させた。その後、液温が50℃になるまで冷却した。この水溶液を実施例1と同様の方法にて滴下法によりハイドロゲル粒子を形成した。この実施例9で作製したハイドロゲル粒子は、実施例3~5に比べてゲル形成剤として用いたアルギン酸ナトリウムの量が1.5倍に増加している。
【0052】
<実施例10>
1.5gのアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、IL-6G、粘度:65mPa・s)と、0.38gのフェノキシエタノールと、0.001gの酸化鉄を精製水に溶解し、全量99.2g(100gから寒天の添加量を差し引いた質量)の水溶液を調製した。この水溶液を攪拌しながら加熱し、70℃程度になったときに、0.8gの寒天(伊那食品工業株式会社製、PS-6、ゼリー強度:860)を加え、さらに加熱して85℃で20分間保持しながら寒天を完全に溶解させた。その後、液温が50℃になるまで冷却した。この水溶液を実施例1と同様の方法にて滴下法によりハイドロゲル粒子を形成した。
【0053】
<実施例11>
酸化鉄の代わりに群青を0.1g添加したことを除いて実施例10と同様にしてハイドロゲル粒子を作製し、これを実施例11とした。
【0054】
<比較例1>
1.0gのアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、IL-6G、粘度:65mPa・s)を精製水に溶解し、全量99.9g(100gから寒天の添加量を差し引いた質量)の水溶液を調製した。この水溶液を攪拌しながら加熱し、70℃程度になったときに、0.1gの寒天(伊那食品工業株式会社製、PS-6、ゼリー強度:860)を加え、さらに加熱して85℃で20分間保持しながら寒天を完全に溶解させた。その後、液温が50℃になるまで冷却した。
【0055】
この水溶液を、20mMの塩化カルシウム水溶液中にスポイトを用いて滴下したところ水中で溶解し、球状のハイドロゲル粒子を形成することができなかった。
【0056】
<比較例2>
1.5gのアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、IL-6G、粘度:65mPa・s)を精製水に溶解し、全量98.0g(100gから寒天の添加量を差し引いた質量)の水溶液を調製した。この水溶液を攪拌しながら加熱し、70℃程度になったときに、2.0gの寒天(伊那食品工業株式会社製、PS-6、ゼリー強度:860)を加え、さらに加熱して85℃で20分間保持しながら寒天を完全に溶解させた。その後、液温が50℃になるまで冷却した。
【0057】
この水溶液を、20mMの塩化カルシウム水溶液中にスポイトを用いて滴下し、球状のハイドロゲル粒子を形成した。滴下から1分以内に篩を用いて粒子を回収し、約10倍量の精製水で洗浄した。これを、1質量%のフェノキシエタノール水溶液に50質量%となるように浸漬し、4℃にて冷蔵保存した。
【0058】
<比較例3>
1.5gのアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、IL-6G、粘度:65mPa・s)と、0.38gのフェノキシエタノールと、を精製水に溶解し、全量99.2g(100gから寒天の添加量を差し引いた質量)の水溶液を調製した。この水溶液を攪拌しながら加熱し、70℃程度になったときに、0.8gの寒天(伊那食品工業株式会社製、PS-6、ゼリー強度:860)を加え、さらに加熱して85℃で20分間保持しながら寒天を完全に溶解させた。その後、液温が50℃になるまで冷却した。
【0059】
この水溶液を、50mMの塩化カルシウム水溶液中にスポイトを用いて滴下し、球状のハイドロゲル粒子を形成した。滴下から3時間後に篩を用いて粒子を回収した。これを、1質量%のフェノキシエタノール水溶液に50質量%となるように浸漬し、4℃にて冷蔵保存した。
【0060】
(試験評価方法)
<圧縮破断強度と平均粒径>
ハイドロゲル粒子の圧縮破断強度は、サン科学社製のレオメーター(RHEO METER、MODEL:CR-3000EX)を用いて測定した。実施例および比較例で作製した粒子を測定前に粒重量の10倍量の精製水で洗浄し、表面の水分を拭き取って測定した。なお、この圧縮破断強度の測定は、直径20mmの治具を取り付けたレオメーターを用い、レオメーターの測定部の円盤状の試料台上にサンプルを置いて10mm/分の速度で上昇させた。進入距離2.2mmにて圧縮して破断させた。この時、目視、感触で破断を確認するとともに、荷重-歪み曲線から破断強度を求め、この測定を5個のサンプルについて繰り返し、その平均値を求めた。
測定に用いたハイドロゲル粒子の厚みを測定してサンプルの粒径とし、この粒径から面積算出し、先に測定した荷重(N)を、断面積を除して破断強度(kPa)とした。そして、この「サンプルの粒径」を平均粒径とした。
【0061】
<含水率>
ハイドロゲル粒子の含水率は、ADVANTEC社製の乾燥機(DRN420DD)を用いて測定した。実施例および比較例で作製した粒子を測定前に粒重量の10倍量の精製水で洗浄し、表面の水分を拭き取って測定した。測定条件としては、秤量瓶を前日乾燥させ風袋重量を測定した。20gのハイドロゲル粒子を入れ、乾燥温度105℃で24時間乾燥後、以下の式にて含水率を計算した。
含水率=(1-(乾燥後粒重量/乾燥前粒重量))×100(%)
【0062】
<カルシウム濃度>
ハイドロゲル粒子のカルシウム濃度(カルシウムイオン濃度)は、原子吸光法により測定した。実施例および比較例で作製した粒子を測定前に粒重量の10倍量の精製水で洗浄し、表面の水分を拭き取った。3gのハイドロゲル粒子を3%塩酸水溶液27mlに1日浸漬し、ろ過した。メスフラスコに10ppmとなるようにカルシウム標準液と塩化ランタンが1%となるよう加え、上記ろ過液でメスアップし測定試料とした。
【0063】
島津製作所社製AA-6800型原子吸光分光分析装置を用い、測定波長:422.7nm(Ca極大波長)にて、空気-アセチレン炎によるフレーム方式で原子化して測定した。
【0064】
<Feイオン濃度>
ハイドロゲル粒子の鉄濃度(鉄イオン濃度)は、原子吸光法により測定した。この測定で用いた試料を次の手順により準備した。
【0065】
以下で記載の実施例13に係る粒子と実施例14に係る粒子について、当該測定前に、粒重量の10倍量の精製水で洗浄し、表面の水分を拭き取った。3gの粒子(実施例13と実施例14)を、3%塩酸水溶液27mlに1日浸漬し、当該浸漬後にろ過した。メスフラスコに10ppmとなるように鉄標準液を加え、上記ろ過液でメスアップし、測定試料を作製した。
【0066】
当該試料について、島津製作所社製AA-6800型原子吸光分光分析装置を用い、測定波長248.3nm(Fe極大波長)にて、空気-アセチレン炎によるフレーム方式で原子化して測定した。
【0067】
<Baイオン濃度>
ハイドロゲル粒子のバリウム濃度は、比濁分析法(参考文献:THE CHEMICAL TIMES 2005 No.2、19~21ページ、化学分析における基礎技術の重要性(2)重量法及び比濁分析法の実際)によって測定した。この測定で用いた試料を次の手順により準備した。
【0068】
実施例12に係る粒子を、希釈してろ過して、ろ液を作製した。並行して、硫酸試薬を精製水で10mg/mlに調製した。当該調製した硫酸に塩化バリウムを加えると白濁することを確認した後、10mg/ml硫酸1質量に対し前記ろ液を2質量加え、測定試料を作製した。
【0069】
島津製作所製UV-2600iを用い、測定波長430.0nmにて、吸光度を求め、サンプル中のバリウム濃度を算出した。
【0070】
<官能評価>
5人のパネラーにより、ハイドロゲル粒子を手に取って皮膚の上で潰したときの感触を、以下の評価基準で官能評価し、その平均値を求め、4以上を○、2以上4未満を△、2未満を×として示した。
【0071】
【0072】
<透明性>
透明なプラスチックシャーレに、ハイドロゲル粒子が高さ方向に積み重ならないように敷き詰め、シャーレの下に白色(DIC-583)の紙を置き、次に白色から黒色(DIC-582)の紙に変え、シャーレの上からハイドロゲル粒子を観察し、白色の紙を下に置いたときよりも、黒色の紙を下に置いたときに粒子が暗く見えた場合、「透明感があり=○」とし、粒子の見え方に変化が無かった場合は「透明感が無い=×」、若干の変化があった場合に「△」として評価した。
【0073】
以上の方法で作製したハイドロゲル粒子の各構成成分の配合量および試験評価結果を表2及び表3に示す。なお、表中の「-」は、構成成分が配合されていないことを示す。
【0074】
【0075】
【0076】
表2および表3に示した結果より、実施例1~11で作製したハイドロゲル粒子の圧縮破断強度は32kPa以下であり容易に潰すことができたが、比較例1の配合量では寒天濃度が低いために水中で崩壊し、ハイドロゲル粒子が形成されなかった。比較例2のハイドロゲル粒子は、圧縮破断強度は26kPaであったが、含水率が94.18%と低いためゲルの潰しやすさ、カス残りおよび透明感が十分ではなかった。
【0077】
カルシウム濃度が高い(3348ppm)こと等から、比較例3で作製したハイドロゲル粒子の圧縮破断強度は316kPaと硬く、指で潰すことができなかった。なお、実施例3、4、5、10および11の結果より、ハイドロゲル粒子に内包する物質は、圧縮破断強度に大きな影響を与えないものと推測される。
【0078】
含水率については、寒天は、アルギン酸に比べて離水が多いことが一般に知られているが、寒天濃度の上昇による含水率(自由水)低下が認められるものの、実施例1~11で作製したハイドロゲル粒子の含水率は94.20質量%以上であるため潰しやすさや透明感に優れていた。なお、実施例11で作製したハイドロゲル粒子のカルシウム濃度は210ppmとなり、実施例の中では最も高かったが、この濃度では粒子の崩壊性に問題なかった。
【0079】
<実施例12>
1gのアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、IL-6G、粘度:65mPa・s)を98.4gの精製水に溶解し、全量99.4g(100gから寒天の添加量を差し引いた質量)の水溶液を調製した。この水溶液を攪拌しながら加熱し、70℃程度になったときに、0.6gの寒天(伊那食品工業株式会社製、PS-6、ゼリー強度:860)を加え、さらに加熱して85℃で20分間保持しながら寒天を完全に溶解させた。その後、液温が50℃になるまで冷却した。
【0080】
この水溶液を、50mMの塩化バリウム(BaCl2)水溶液中にスポイトを用いて滴下し、球状のハイドロゲル粒子を形成した。滴下から1分後に篩を用いて粒子を回収し、約10倍量の精製水で洗浄した。これを、1質量%のフェノキシエタノール水溶液に50質量%となるように浸漬し、4℃にて冷蔵保存した。
【0081】
<実施例13及び14>
ハイドロゲル粒子の形成に用いた50mMの塩化バリウム水溶液の代わりに、200mMの塩化第一鉄(FeCl2)水溶液を用いたこと以外は実施例12と同様にしてハイドロゲル粒子を作製し、これを実施例13とした。また、塩化第一鉄水溶液への浸漬時間を30分間としたこと以外は実施例13と同様にしてハイドロゲル粒子を作製し、これを実施例14とした。
【0082】
<実施例15>
2gのι(イオタ)-カラギーナン(ソアギーナTM、MV201、購入先:株式会社マツモト交商)を、を97.4gの精製水に溶解し、全量99.4g(100gから寒天の添加量を差し引いた質量)の水溶液を調製した。この水溶液を攪拌しながら加熱し、70℃程度になったときに、0.6gの寒天(伊那食品工業株式会社製、PS-6、ゼリー強度:860)を加え、さらに加熱して85℃で20分間保持しながら寒天を完全に溶解させた。その後、液温が50℃になるまで冷却した。
【0083】
この水溶液を、100mMの塩化カルシウム水溶液中にスポイトを用いて滴下し、球状のハイドロゲル粒子を形成した。滴下から1分後に篩を用いて粒子を回収し、約10倍量の精製水で洗浄した。これを、1質量%のフェノキシエタノール水溶液に50質量%となるように浸漬し、4℃にて冷蔵保存した。
【0084】
<実施例16>
実施例15において、塩化カルシウム水溶液への浸漬時間を30分間としたことを除き同様の条件にしてハイドロゲル粒子を作製し、これを実施例16とした。
【0085】
このようにして作製した実施例12~16のハイドロゲル粒子を、上述した方法と同様の試験方法にて圧縮破断強度及び含水率を測定し、並びに官能試験評価を行った。その結果を以下の表4に示す。表4に示したように、カルシウム塩の代わりにバリウム塩及び鉄塩を用いた場合、並びにアルギン酸ナトリウムの代わりにカラギーナンを用いた場合においても、50kPa以下の破断強度を有し、皮膚に塗布した際の指等による崩壊をスムーズに行うことができる。また、官能試験評価の結果も、伸びが良好でカス残りの無いハイドロゲル粒子が得られることが分かった。なお、実施例14のハイドロゲル粒子においては、透明感は「△」ではあるが、上述のとおり若干ではあるが透明感の変化が確認された。
【0086】
【0087】
以上、本発明の実施形態(実施例も含め)について、表も参照して説明してきたが、本発明の具体的構成は、これに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、設計変更等があっても、本発明に含まれるものである。