(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】仕切弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 7/20 20060101AFI20240520BHJP
F16K 3/28 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
F16K7/20
F16K3/28
(21)【出願番号】P 2020126416
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】戸次 浩之
(72)【発明者】
【氏名】戸継 昭人
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/018172(WO,A1)
【文献】特開2003-343748(JP,A)
【文献】実開昭54-155632(JP,U)
【文献】特開平06-159526(JP,A)
【文献】特開2007-46701(JP,A)
【文献】特開平7-260015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/20
F16K 3/00-3/36
F16K 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管の管内壁面に密着して管内流路を遮断可能な弾性シール部材を有する弁体と、前記弁体を前記流体管の管周壁に形成された貫通孔から管内に送り込む往復移動自在な弁支持部材と、が備えられている仕切弁装置であって、
前記弁体には、前記弾性シール部材を管軸方向の両側から挟持圧縮可能な一対の金属製の側板が、前記弁支持部材に対して送り込み方向の一定範囲内で相対移動可能に配設され、前記弁支持部材と前記両側板との間には、前記弁支持部材の送り込み力を前記両側板の相対近接移動力に変換する作動変換機構が設けられ、前記両側板の相対近接移動に伴う前記弾性シール部材の挟持圧縮により、前記弾性シール部材の弾性変形で前記管内壁面に密着させる構成にしてある仕切弁装置。
【請求項2】
前記弁体には、前記弾性シール部材が前記管内壁面の底部に当接した状態での前記弁支持部材の送り込み力による圧接反力により、前記弾性シール部材を送り込み方向に対して交差した交差方向の前記管内壁面の側面部に対して圧接させる補助圧接機構が設けられている請求項1記載の仕切弁装置。
【請求項3】
前記両側板は、前記流体管の管軸芯よりも前記貫通孔から離間する側に配置した枢支連結部を支点として管軸方向で相対近接揺動自在に構成され、前記両側板と前記弁支持部材は、前記弾性シール部材を介して送り込み方向の一定範囲内で相対移動可能に接合されている請求項1又は2記載の仕切弁装置。
【請求項4】
前記両側板の周縁部における管軸方向で相対向する第1シール圧縮面間には、前記管内壁面に管周方向に沿って圧接可能な前記弾性シール部材の管周方向シール部が配置され、前記弁支持部材側に形成されたシール押圧面とこれに送り込み方向で相対向する前記両側板の端縁部の第2シール圧縮面との間には、前記管周方向シール部の両端に連続し、且つ、前記貫通孔を密封する前記弾性シール部材の円環状シール部が配置されている請求項1~3のいずれか1項に記載の仕切弁装置。
【請求項5】
前記補助圧接機構は、前記両側板の対向面間で、且つ、前記管内壁面に管周方向に沿って圧接可能な前記弾性シール部材の管周方向シール部で囲まれた部位に、前記管内壁面の底部に圧接される前記管周方向シール部の圧接反力による撓み変形によって前記交差方向の外方側に変位可能な弾性圧接部材を配設し、前記弾性圧接部材の外方側への変位で前記管周方向シール部を前記管内壁面の側面部に圧接させる構成にしてある請求項2記載の仕切弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管の管内壁面に密着して管内流路を遮断可能な弾性シール部材を有する弁体と、前記弁体を前記流体管の管周壁に形成された貫通孔から管内に送り込む往復移動自在な弁支持部材と、が備えられている仕切弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の仕切弁装置として、例えば、特許文献1に示す仕切り用弁装置が存在する。この仕切り用弁装置では、弁棒にネジコマを介して弁支持部材(スライドスピンドル)が上下方向に往復移動自在に取付けられている。弁体には、弁支持部材と一体的に上下方向に往復移動する芯金(弁体芯金具)と、芯金における弁主要構成部の全周を囲繞するゴムライニングと、が備えられ、ゴムライニングが弾性シール部材として機能する。弾性シール部材内の芯金の弁主要構成部には、弁支持部材の送り込み方向に対して交差する交差方向に離間移動可能な一対の可動片が設けられている。一対の可動片の各々には、管内側に送り込み移動される弁支持部材に形成した第1傾斜部との当接により、第1傾斜部からの押圧力を両可動片の離間移動力に変換する第2傾斜部が形成されている。第1傾斜部と第2傾斜部との当接による一対の可動片の離間移動により、弾性シール部材を送り込み方向に対する交差方向の管内壁面の側面部に対して圧接させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の仕切弁装置に用いられる弁体は、ゴムライニングのボリュームが大きくなる傾向にある。例えば、管外径が同じであっても、管内径が異なる場合がある。そのため、管内壁面を弁箱とする上述の仕切弁装置においては、止水性を高めるために、ゴムライニングのボリュームを大きくすることで対応している。
そして、上述の仕切弁装置では、管内流路を遮断する上で次の3つの止水ポイントがある。(A)管内壁面の底部、(B)管内壁面の側面部、(C)貫通孔(穿孔口)
上記のうち、(A)、(B)は、ゴムライニングのボリュームを大きくすることである程度対応が可能だが、締め切り完了までのゴムライニングの変形量が大きく、弁棒操作に必要なトルクが大きくなる傾向にある。また、(C)の貫通孔の止水については、(A)、(B)の密封処理後に密封(閉塞)する必要がある。仮に、貫通孔を先に密封すると、貫通孔の開口周縁にゴムライニングの鍔部(止水部)が接触してしまうため、弁棒操作に必要な締め切りトルクが上昇し、(A)、(B)の密封処理ができなく可能性がある。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、流体遮断性能(止水性能)が高く、且つ、弁操作力の低トルク化を図ることのできる仕切弁装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、流体管の管内壁面に密着して管内流路を遮断可能な弾性シール部材を有する弁体と、前記弁体を前記流体管の管周壁に形成された貫通孔から管内に送り込む往復移動自在な弁支持部材と、が備えられている仕切弁装置であって、
前記弁体には、前記弾性シール部材を管軸方向の両側から挟持圧縮可能な一対の金属製の側板が、前記弁支持部材に対して送り込み方向の一定範囲内で相対移動可能に配設され、前記弁支持部材と前記両側板との間には、前記弁支持部材の送り込み力を前記両側板の相対近接移動力に変換する作動変換機構が設けられ、前記両側板の相対近接移動に伴う前記弾性シール部材の挟持圧縮により、前記弾性シール部材の弾性変形で前記管内壁面に密着させる構成にしてある点にある。
【0007】
本構成によれば、一対の金属製の側板間に弾性シール部材を配置してある弁体を流体管の貫通孔から管内に送り込み、弁体の弾性シール部材を管内壁面の底部に当接させる。この当接状態から弁支持部材を送り込むと、弁支持部材と両側板との送り込み方向での相対移動によって作動変換機構が作動する。この作動変換機構によって弁支持部材の送り込み力が両側板の相対近接移動力に変換される。これにより、両側板が相対近接移動して弾性シール部材を管軸方向の両側から挟持圧縮する。挟持圧縮された弾性シール部材は弾性変形して流体管の管内壁面に密着し、管内流路を遮断する。
したがって、一対の金属製の側板間に弾性シール部材を配置するため、従来に比してゴムライニングのボリュームが少なくなり、流体遮断性能(止水性能)を高めながらも、弁操作に必要なトルクを小さくすることができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記弁体には、前記弾性シール部材が前記管内壁面の底部に当接した状態での前記弁支持部材の送り込み力による圧接反力により、前記弾性シール部材を送り込み方向に対して交差した交差方向の前記管内壁面の側面部に対して圧接させる補助圧接機構が設けられている点にある。
【0009】
本構成によれば、一対の金属製の側板間に弾性シール部材を配置してある弁体を流体管の貫通孔から管内に送り込み、弁体の弾性シール部材を管内壁面の底部に当接させる。この当接状態から弁支持部材を送り込むと、管内壁面の底部に押圧される弾性シール部材の圧接反力で補助圧接機構が作動し、弾性シール部材を、管内に送り込まれた弁体との間の隙間が最も大きな管内壁面の側面部に対して強く圧接させることができる。
したがって、一対の側板による弾性シール部材の管軸方向両側からの挟持圧縮作用と、補助圧接機構による弾性シール部材の交差方向からの圧接作用との協働により、特に、管内壁面の側面部に対する流体遮断性能(止水性能)を一層向上することができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記両側板は、前記流体管の管軸芯よりも前記貫通孔から離間する側に配置した枢支連結部を支点として管軸方向で相対近接揺動自在に構成され、前記両側板と前記弁支持部材は、前記弾性シール部材を介して送り込み方向の一定範囲内で相対移動可能に接合されている点にある。
【0011】
本構成によれば、弁体の弾性シール部材が管内壁面の底部に当接した状態で弁支持部材を送り込むと、弁支持部材と両側板との相対移動によって作動変換機構が作動する。この作動変換機構によって、弁支持部材の送り込み力が両側板の相対近接移動力に変換される。これにより、両側板は、流体管の管軸芯よりも貫通孔から離間位置する枢支連結部を支点として相対近接揺動し、弾性シール部材を管軸方向の両側から挟持圧縮する。そのため、両側板は、貫通孔側ほど管軸方向での相対揺動量が大きくなり、管内壁面の側面部及び貫通孔での流体遮断性能(止水性能)を向上することができる。
また、両側板の枢支連結部の配置部位では相対揺動量がゼロになるが、弾性シール部材の底部側は、弁支持部材の送り込み力で管内壁面の底部に強く圧接されるため、管内壁面の底部での流体遮断性能(止水性能)も適正に維持することができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記両側板の周縁部における管軸方向で相対向する第1シール圧縮面間には、前記管内壁面に管周方向に沿って圧接可能な前記弾性シール部材の管周方向シール部が配置され、前記弁支持部材側に形成されたシール押圧面とこれに送り込み方向で相対向する前記両側板の端縁部の第2シール圧縮面との間には、前記管周方向シール部の両端に連続し、且つ、前記貫通孔を密封する前記弾性シール部材の円環状シール部が配置されている点にある。
【0013】
本構成によれば、弾性シール部材の管周方向シール部は、両側板の周縁部における管軸方向で相対向する第1シール圧縮面間で挟持圧縮され、管周方向シール部の弾性変形で管内壁面に管周方向に沿って圧接される。また、弾性シール部材の円環状シール部は、弁支持部材側のシール押圧面と両側板の端縁部の第2シール圧縮面との間で挟持圧縮され、円環状シール部の弾性変形で貫通孔の内周面及び開口周縁に圧接される。これにより、従来に比してゴムライニングのボリュームが少なくなり、流体遮断性能(止水性能)を高めながらも、弁操作に必要なトルクを小さくすることができる。
【0014】
本発明の第5特徴構成は、前記補助圧接機構は、前記両側板の対向面間で、且つ、前記管内壁面に管周方向に沿って圧接可能な前記弾性シール部材の管周方向シール部で囲まれた部位に、前記管内壁面の底部に圧接される前記管周方向シール部の圧接反力による撓み変形によって前記交差方向の外方側に変位可能な弾性圧接部材を配設し、前記弾性圧接部材の外方側への変位で前記管周方向シール部を前記管内壁面の側面部に圧接させる構成にしてある点にある。
【0015】
本構成によれば、弁体の弾性シール部材を管内壁面の底部に当接させた状態で弁支持部材を送り込むと、管内壁面の底部に圧接される弾性シール部材の圧接反力で弾性圧接部材が撓み変形する。この弾性圧接部材の撓み変形による交差方向の外方側への変位により、弾性シール部材の管周方向シール部を管内壁面の側面部に強く圧接させることができる。
これにより、補助圧接機構としても、弾性シール部材の圧接反力による撓み変形で交差方向の外方側に変形する弾性圧接部材を設けるだけなので、構造の簡素化を図りながら管内壁面の側面部に対する流体遮断性能(止水性能)を一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の仕切弁装置の管底当たり状態の全体断面図
【
図2】管底当たり状態にある弁体の側面視での拡大断面図
【
図5】管底当たり状態にある弁体の正面視での拡大半断面図
【
図9】第2実施形態の仕切弁装置の管底当たり状態の全体断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、流体管の一例である水道管1に設置した仕切弁装置を示す。この仕切弁装置は、水道管1に水密状態で取付けられる分割構造の筐体2と、水道管1の管内壁面1aに密着して管内流路を遮断可能な弾性シール部材3を有する弁体Vと、筐体2内の密閉された弁作動空間20において、弁体Vを水道管1の管周壁1Aの上部に不断水状態で穿設された貫通孔4から上下方向に沿って管内に送り込む弁送込機構5と、を備える。
【0018】
管周壁1Aの貫通孔4の直径D1は、
図2に示すように、水道管1の内径D2よりも小径に設定されている。弁体Vの弾性シール部材3は、
図1~
図3に示すように、管内壁面1aに管周方向に沿って圧接可能な管軸方向視で略U字状の管周方向シール部3Aと、この管周方向シール部3Aの両上端に連続し、且つ、貫通孔4を密封可能な平面視円形状の円環状シール部3Bと、を備える。
図3に示すように、管周方向シール部3Aにおける送り込み方向に対して管径方向で水平に交差(直交)する交差方向の幅W1は、貫通孔4の直径D1よりも僅かに小なる寸法に設定されている。また、
図2に示すように、円環状シール部3Bの下側シール部分3Baの外径D3は、貫通孔4の直径D1よりも僅かに小なる寸法に設定され、下側シール部分3Baに連続して外方に鍔状に張り出す上側シール部分3Bbの外径D4は、貫通孔4の直径D1よりも少し大なる寸法に設定されている。
【0019】
筐体2は、
図1に示すように、交差方向で相対向する左右一対の下部筐体部材21と、弁作動空間20の下半側を形成する中間筐体部材22と、弁作動空間20の上半側を形成する上部筐体部材23と、弁送込機構5の弁棒51の操作軸部51Aを上方に突出する状態で回転のみ自在に支承する蓋部材24と、を備える。
一対の下部筐体部材21及び中間筐体部材22には、管周方向で相対向するフランジ部21A,22Aの分割面間及び水道管1の外周面との間を密封する弾性パッキン25を装着する。一対の下部筐体部材21と中間筐体部材22とは、管周方向で相対向するフランジ部21A,21A同士及びフランジ部21A,22A同士をそれぞれボルト・ナット26で締結することにより連結されている。
中間筐体部材22の上側フランジ部22Bと上部筐体部材23の下側フランジ部23Aとは、それらの接合面間を密封するOリング27を介装した状態でボルト28にて締結されている。上部筐体部材23の上側フランジ部23Bと蓋部材24とは、それらの接合面間を密封するOリング29を介装した状態でボルト30にて締結されている。
【0020】
蓋部材24には、
図1に示すように、弁棒51の操作軸部51Aの外周面との間を密封するOリング31と、弁棒51の操作軸部51Aに設けた鍔部51Bが回転自在に入り込む凹部24Aが設けられている。操作軸部51Aの鍔部51Bの外径は、上部筐体部材23の上側壁に貫通形成された軸挿通孔23aの直径よりも大きい寸法に設定されている。そのため、蓋部材24の凹部24A内に配置された操作軸部51Aの鍔部51Bは、上部筐体部材23の軸挿通孔23aの開口周縁との当接により抜け止め保持されている。
【0021】
弁送込機構5は、
図1、
図2に示すように、水道管1の貫通孔4の中心を通る上下軸芯Y周りで回転自在な弁棒51と、この弁棒51に螺合されるネジコマ52と、ネジコマ52と一体的に弁棒51に沿って上下方向に往復移動自在な弁支持部材である金属製のスライドスピンドル53と、を備える。
スライドスピンドル53の中央筒部53Aには、ネジコマ52を相対回転不能な状態で側方から脱着自在に収納するコマ収納部54と、このコマ収納部54内のネジコマ52を貫通した弁棒51の下側ネジ軸部51Cが移動する下向き開口の軸移動空間55とが形成されている。
スライドスピンドル53の中央筒部53Aの下端部には、
図1、
図2、
図5に示すように、弾性シール部材3の円環状シール部3Bを貫通する大径筒部57と、弾性シール部材3の円環状シール部3Bの弧状上面3aを押圧可能な状態で平面視において円形状に延出されるシール押圧部56とが一体形成されている。シール押圧部56の交差方向の両端部には、中間筐体部材22の内面に形成された左右一対の昇降ガイドレール58に沿って移動案内される昇降ガイド部59が一体形成されている。
【0022】
スライドスピンドル53のシール押圧部56の下面には、
図2、
図5に示すように、弾性シール部材3の円環状シール部3Bの弧状上面3aに管周方向に沿って接触するシール押圧面56aが形成さている。このシール押圧面56aは、
図2に示すように、交差方向視においては管軸芯Xに平行な直線状に形成され、且つ、
図5に示すように、管軸方向視においては管周方向に沿う弧状に形成されている。シール押圧面56aの外径D5は、
図2に示すように、貫通孔4の直径D1よりも少し大なる寸法に設定されている。
【0023】
また、
図1、
図2、
図5に示すように、大径筒部57の外周面の上下中間部位には、弾性シール部材3の円環状シール部3Bにおける内周面3bの環状凹部3cに嵌合する環状の抜け止め突起60が一体形成されている。
シール押圧部56のシール押圧面56a及び抜け止め突起60を含む大径筒部57の外周面57aは、
図2、
図8の太線で示す接着領域において、弾性シール部材3の円環状シール部3Bの弧状上面3a及び内周面3bに接着されている。
【0024】
そして、上述の如く構成された仕切弁装置の弁体Vには、
図1~
図5に示すように、弾性シール部材3を管軸方向の両側から挟持圧縮可能な一対の金属製の側板7が配設されている。一対の側板7とスライドスピンドル53とは、弾性シール部材3を介して結合されている。そのため、スライドスピンドル53と一対の側板7は、弾性シール部材3の弾性変形を利用して送り込み方向の一定範囲内で相対移動可能に構成されている。スライドスピンドル53と一対の側板7との間には、スライドスピンドル53の送り込み力を一対の側板7の相対近接移動力に変換する作動変換機構8が設けられ、一対の側板7の相対近接移動に伴う弾性シール部材3の挟持圧縮により、弾性シール部材3の弾性変形で管内壁面1aに密着させる構成にしてある。
【0025】
そして、一対の側板7間に弾性シール部材3を配置してある弁体Vを水道管1の貫通孔4から管内に送り込み、弁体Vの弾性シール部材3を管内壁面1aの底部に当接させる。この当接状態からスライドスピンドル53を送り込むと、弾性シール部材3の弾性変形によってスライドスピンドル53と両側板7とが送り込み方向で相対移動する。つまり、両側板7に対してスライドスピンドル53が下方に移動する。このスライドスピンドル53の移動によって作動変換機構8が作動する。この作動変換機構8によってスライドスピンドル53の送り込み力が一対の側板7の相対近接移動力に変換される。これにより、一対の側板7が相対近接移動して弾性シール部材3を管軸方向の両側から挟持圧縮する。挟持圧縮された弾性シール部材3は弾性変形して水道管1の貫通孔4の開口周縁部を含む管内壁面1aに密着し、管内流路を遮断する。
したがって、一対の金属製の側板7間に弾性シール部材3を配置するため、従来に比してゴムライニングのボリュームが少なくなり、止水性能を高めながらも、弁操作に必要なトルクを小さくすることができる。
【0026】
次に、一対の側板7及び作動変換機構8について詳述する。
各側板7の中央板部71は、
図1~
図5に示すように、平面視において半円筒状に湾曲形成され、且つ、管軸方向視においては略U字状に湾曲形成されている。各中央板部71のU字状周縁部には、弾性シール部材3の管周方向シール部3Aを管軸方向から挟持圧縮するための第1シール挟持板部72が一体形成されている。両側板7の第1シール挟持板部72の第1シール圧縮面72aの基端側には、管周方向シール部3Aを装着するためのシール装着溝73を形成する溝底板部74が一体形成されている。
両側板7の第1シール挟持板部72の第1シール圧縮面72a及び溝底板部74の溝底面は、
図2の太線で示す接着領域において、弾性シール部材3の管周方向シール部3Aと接着されている。これにより、スライドスピンドル53と両側板7は、弾性シール部材3の円環状シール部3B及び管周方向シール部3Aを介して結合されている。
【0027】
また、
図2、
図5に示すように、両側板7の上端部には、スライドスピンドル53のシール押圧面56aと送り込み方向で相対向し、且つ、弾性シール部材3の円環状シール部3Bの下面に接触する第2シール挟持板部75が一体形成されている。この第2シール挟持板部75は、
図2に示すように、その外側端縁側ほどスライドスピンドル53のシール押圧面56a側に近接する傾斜姿勢に形成されている。そのため、第2シール挟持板部75の第2シール圧縮面75aは、スライドスピンドル53におけるシール押圧部56のシール押圧面56aと大径筒部57の外周面57aとの入隅側に向って対面する。両側板7の第2シール挟持板部75の第2シール圧縮面75aは、両側板7の相対近接移動に伴って、弾性シール部材3の円環状シール部3Bをシール押圧部56のシール押圧面56a及び大径筒部57の外周面57aとの間で挟持圧縮する。
両第2シール挟持板部75の第2シール圧縮面75a外径D6は、
図2に示すように、貫通孔4の直径D1よりも僅かに小なる寸法に設定されている。
【0028】
両側板7は、
図2、
図4に示すように、水道管1の管軸芯Xよりも貫通孔4から離間する位置に配置した枢支連結部9を支点として管軸方向で相対近接揺動自在に構成されている。枢支連結部9は、両側板7の中央板部71の内面における交差方向の両側部位で、且つ、交差方向視においてU字状湾曲外面71aに連続する鉛直状外面71bの下端部位に、管軸方向に沿って互いに相手側に向って水平に延びる二対の連結アーム91を固着する。両側板7の各対の連結アーム91の重合する先端部同士を、交差方向に沿うボルト・ナット利用の枢支連結軸92で揺動自在に枢支連結する。
【0029】
そして、
図1~
図5に示すように、弁送込機構5の弁棒51を回転操作し、一対の側板7間に弾性シール部材3を配置してある弁体Vを水道管1の貫通孔4から管内に送り込み、弁体Vの弾性シール部材3を管内壁面1aの底部に当接させる。この当接状態からスライドスピンドル53を送り込むと、
図6~
図8に示すように、弾性シール部材3の弾性変形によってスライドスピンドル53と両側板7とが相対移動する。この相対移動によって作動変換機構8が作動し、スライドスピンドル53の送り込み力が両側板7の相対近接移動力に変換される。これにより、両側板7は、水道管1の管軸芯Xよりも貫通孔4から離間位置する枢支連結部9を支点として相対近接揺動し、弾性シール部材3の管周方向シール部3A及び円環状シール部3Bを管軸方向の両側から挟持圧縮する。そのため、両側板7は、貫通孔4側ほど管軸方向での相対揺動量が大きくなり、管内壁面1aの側面部及び貫通孔4の開口周縁での止水性能を向上することができる。
【0030】
また、
図7に示すように、両側板7の枢支連結部9の配置部位では相対揺動量がゼロになり、枢支連結部9よりも管底側では逆に両側板7の間隔が開くことになるが、弾性シール部材3の管周方向シール部3Aにおける底部側のU字状湾曲シール部分3Aaは、
図5に示すように、スライドスピンドル53の送り込み力で管内壁面1aの底部に圧接されるため、管内壁面1aの底部での止水性能も適正に維持することができる。
【0031】
次に、作動変換機構8について詳述する。
図1~
図3、
図5に示すように、スライドスピンドル53の大径筒部57の下端部を、弾性シール部材3の円環状シール部3Bよりも下方に延設する。延設された大径筒部57の下端部には、下端ほど筒径方向外方側に位置する傾斜カム面81が形成されている。両側板7の中央板部71の内面における交差方向の中央部位で、且つ、水道管1の管軸芯Xよりも貫通孔4側に偏位した部位には、スライドスピンドル53の大径筒部57の傾斜カム面81と送り込み方向から当接可能なカム従節部82が一体形成されている。カム従節部82のカム従節面82aは、先端側ほど上方に位置する傾斜姿勢に構成され、送り込まれるスライドスピンドル53の傾斜カム面81との当接によって、両側板7を枢支連結軸92周りで相対近接揺動させる相対近接移動力に変換する。
【0032】
そして、弁体Vの弾性シール部材3が管内壁面1aの底部に当接している状態でのスライドスピンドル53の送り込み移動による押圧作用と、両側板7の枢支連結軸92周りでの相対近接揺動に伴う両第1シール挟持板部72の第1シール圧縮面72a間での挟持圧縮作用により、弾性シール部材3の管周方向シール部3Aを管内壁面1aの底部及び側面部に強力に圧接させることができ、高い止水性能を得ることができる。
さらに、スライドスピンドル53のシール押圧面56aによる弾性シール部材3の円環状シール部3Bの弧状上面3aに対する下方への押圧作用と、両側板7の枢支連結軸92周りでの相対近接揺動に伴う両第2シール挟持板部75の第2シール圧縮面75aでの挟持圧縮作用とにより、弾性シール部材3の円環状シール部3Bを貫通孔4の内周面及び開口周縁部分に強力に圧接させることができ、貫通孔4側においても高い止水性能を得ることができる。
【0033】
〔第2実施形態〕
図9~
図11に示す仕切弁装置では、弁体Vに、弾性シール部材3の底部が管内壁面1aの底部に当接した状態でのスライドスピンドル53の送り込み力による圧接反力により、弾性シール部材3を送り込み方向に対する交差方向の管内壁面1aの側面部に対して圧接させる補助圧接機構10が設けられている。
【0034】
そのため、弁体Vの弾性シール部材3の底部を管内壁面1aの底部に当接させた状態からスライドスピンドル53を送り込むと、管内壁面1aの底部に押圧される弾性シール部材3の圧接反力で補助圧接機構10が作動し、弾性シール部材3を、管内に送り込まれた弁体Vとの間の隙間が最も大きな管内壁面1aの両側面部に対して強く圧接させることができる。
したがって、一対の側板7による弾性シール部材3の管軸方向両側からの挟持圧縮作用と、補助圧接機構10による弾性シール部材3の交差方向からの圧接作用との協働により、特に、管内壁面1aの側面部に対する止水性能を一層向上することができる。
【0035】
補助圧接機構10は、両側板7の対向面間で、且つ、管内壁面1aに管周方向に沿って圧接可能な弾性シール部材3の管周方向シール部3Aで囲まれた弁内空間6内に、管内壁面1aの管底側部位に対する管周方向シール部3Aの圧接反力による撓み変形によって交差方向の外方側に変位可能な板バネ鋼製の弾性圧接部材101を配設して構成されている。弾性圧接部材101は、管軸芯方向視において略U字状に構成されている。
【0036】
弾性圧接部材101の底部側の中央板バネ部101Aは、弾性シール部材3の管周方向シール部3Aにおける底部側のU字状湾曲シール部分3Aaの内面に沿って湾曲形成されている。中央板バネ部101Aは、管内壁面1aの底部に押圧される弾性シール部材3の圧接反力を受けて上方への押し込み力が発生する反力受け部に構成されている。
【0037】
中央板バネ部101Aの交差方向の両端部に連続する両中間板バネ部101Bは、U字状湾曲シール部分3Aaの交差方向の両端部に連続する鉛直シール部分3Abの内面に沿って接触状態で立ち上がり形成されている。両中間板バネ部101Bは、水道管1の管軸芯Xを通る水平位置を略中心とする鉛直シール部分3Abの中央内面領域を外方側に押圧可能な弾性押圧部に構成されている。
【0038】
両中間板バネ部101Bの上端部に連続する上側板バネ部101Cは、管周方向シール部3Aの交差方向の中心側に向って略水平に折り曲げ形成されている。両上側板バネ部101Cは、両側板7の内面に形成されている係合凹部102に係合固定されている。この両上側板バネ部101Cを両側板7の内面に固定することにより、弾性シール部材3の圧接反力を受けて発生した中央板バネ部101Aの上方への押し込み力が逃げず、両中間板バネ部101Bを交差方向の外方側に効率よく撓み変形させることができる。
【0039】
弾性圧接部材101の中央板バネ部101Aには、管周方向に沿う長孔103が形成されている。中央板バネ部101Aの長孔103には、弾性シール部材3の管周方向シール部3AにおけるU字状湾曲シール部分3Aaの内面に突設されたリブ状の突起部104が下方から弁内空間6内に挿入配置されている。弁内空間6内に配置された突起部104における交差方向の両端部は、両側板7間にピン105で止付けられている。
弁体Vの弁内空間6内に挿入配置されている管周方向シール部3Aの突起部104をピン105で両側板7間に止付けることにより、弾性シール部材3を両側板7間に正確に位置決めすることができる。また、弾性圧接部材101は弾性シール部材3に後付けするが、弾性圧接部材101の中央板バネ部101Aに形成されている長孔103を通して容易に組付けることができる。
【0040】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0041】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の第1実施形態では、両側板7を相対近接揺動自在に枢支連結する枢支連結部9を、両側板7における管軸芯相当位置と下端との間の中間位置に配置したが、枢支連結部9を両側板7の下端部側に配置してもよい。
【0042】
(2)上述の第1実施形態では、両側板7を相対近接揺動自在に枢支連結したが、両側板7を平行又は略平行姿勢で相対近接移動自在に構成してもよい。
【0043】
(3)上述の第2実施形態では、補助圧接機構10を、管内壁面1aの管底側部位に対する管周方向シール部3Aの圧接反力による撓み変形によって交差方向の外方側に変位可能な略U字状の板バネ鋼製の弾性圧接部材101から構成したが、この弾性圧接部材101を二分割した略J字状の一対の板バネ鋼から構成してもよい。
【0044】
(4)上述の各実施形態では、流体管として、流体の一例である上水を輸送するための水道管1を例示したが、工業用水やガス等の他の流体を輸送する流体管であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 流体管(水道管)
1A 管周壁
1a 管内壁面
3 弾性シール部材
3A 管周方向シール部
3B 円環状シール部
4 貫通孔
7 側板
8 作動変換機構
9 枢支連結部
10 補助圧接機構
53 弁支持部材(スライドスピンドル)
56a シール押圧面
72a 第1シール圧縮面
75a 第2シール圧縮面
101 弾性圧接部材