(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20240520BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20240520BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240520BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240520BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20240520BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240520BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240520BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C9/12
B05C11/10
B05D1/26 Z
B05D3/06 102Z
B05D7/00 Z
B05D7/24 301T
B41J2/01 109
B41J2/01 129
B41J2/01 201
B41J2/01 303
B41J2/01 307
(21)【出願番号】P 2020137791
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-07-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596117773
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(72)【発明者】
【氏名】小林 優子
(72)【発明者】
【氏名】高宮 浩一
(72)【発明者】
【氏名】岩野 靖
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-182704(JP,A)
【文献】特許第6426038(JP,B2)
【文献】特表2016-504211(JP,A)
【文献】特開2010-143200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00 - 5/04
7/00 -21/00
B05D1/00 - 7/26
B41J2/01
2/165- 2/20
2/21 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転軸を中心に回転する棒状部材の外周面に対し
インクジェットヘッドからインクを吐出して画像を記録するインクジェット印刷装置において、
前記棒状部材
の延びる方向に沿った第1の方向に所定の記録幅の画像を記録する前記インクジェットヘッドを前記第1の方向に第1の間隔をとって
複数搭載
する第1キャリッジと、
前記インクジェットヘッドにより前記棒状部材の前記外周面に前記記録幅で記録された画像に活性光線を照射してインクを硬化させるための照射処理を行う活性光線照射手段を前記第1の方向に第2の間隔で複数搭載する第2キャリッジと、
回転する前記棒状部材の前記外周面の印刷領域に前記記録幅で画像を記録する記録動作の実行に応じて複数の前記インクジェットヘッドを前記第1の方向に前記記録幅に応じた距離移動させるように前記第1キャリッジ
を移動させる第1キャリッジ移動手段と、
前記印刷領域に対向して位置する前記インクジェットヘッドに対して前記活性光線照射手段を対応させるように、前記照射処理の実行に応じて前記第2キャリッジを前記第1の方向又は前記第1の方向と反対方向の第2の方向に移動させる第2キャリッジ移動手段と、
前記第1キャリッジ移動手段及び前記第2キャリッジ移動手段の動作を制御することにより前記インクジェットヘッドと前記活性光線照射手段との対応関係を調整する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記第1キャリッジに搭載された複数の前記インクジェットヘッドのうち前記第1の方向に関して最も下流側に搭載された下流側インクジェットヘッドを前記印刷領域における印刷開始位置に対向して位置させるとともに、前記第2キャリッジに搭載された複数の前記活性光線照射手段のうち前記第1の方向に関して最も上流側に搭載された上流側活性光線照射手段を前記下流側インクジェットヘッドに対応させるように前記印刷開始位置に対向して位置させて、前記下流側インクジェットヘッドによる前記記録動作と前記上流側活性光線照射手段による前記照射処理を実行させ、
その後、前記記録動作の実行に応じた前記第1キャリッジの前記第1の方向への移動により、前記第1キャリッジにおいて前記下流側インクジェットヘッドよりも前記第1の方向に関して上流側に載置された前記インクジェットヘッドが前記印刷開始位置に対向して位置しない場合は、前記記録動作実行に応じて前記第1キャリッジを前記第1の方向に移動させるとともに前記照射処理の実行に応じて前記第2キャリッジを前記第1の方向に移動させることにより、前記インクジェットヘッドと前記活性光線照射手段との対応関係を維持した状態で、前記印刷領域に対向して位置する前記インクジェットヘッドによる前記記録動作と前記印刷領域に対向して位置して前記記録動作を実行する前記インクジェットヘッドに対応する前記活性光線照射手段による前記照射処理を実行させ、
一方、前記記録動作の実行に応じた前記第1キャリッジの前記第1の方向への移動により、前記第1キャリッジにおいて前記下流側インクジェットヘッドよりも前記第1の方向に関して上流側に載置された前記インクジェットヘッドが前記印刷開始位置に対向して位置する場合は、前記記録動作実行に応じて前記第1キャリッジを前記第1の方向に移動させるとともに前記照射処理の実行に応じて前記第2キャリッジを前記第2の方向に移動させることにより、前記インクジェットヘッドと前記活性光線照射手段との対応関係を変更した状態で、前記印刷領域に対向して位置する複数の前記インクジェットヘッドによる前記記録動作と前記印刷領域に対向して位置して前記記録動作を実行する複数の前記インクジェットヘッドに対応する複数の前記活性光線照射手段による前記照射処理を実行させることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
所定の回転軸を中心に回転する棒状部材の外周面に対し
インクジェットヘッドからインクを吐出して画像を記録するインクジェット印刷装置において、
前記棒状部材
の延びる方向に沿った第1の方向に所定の記録幅の画像を記録する前記インクジェットヘッドを前記第1の方向に第1の間隔をとって
複数搭載
する第1キャリッジと、
前記インクジェットヘッドにより前記棒状部材の前記外周面に前記記録幅で記録された画像に活性光線を照射してインクを硬化させるための照射処理を行う活性光線照射手段を前記第1の方向に第2の間隔で複数搭載する第2キャリッジと、
回転する前記棒状部材の前記外周面の印刷領域に前記記録幅で画像を記録する記録動作の実行に応じて複数の前記インクジェットヘッドを前記第1の方向に前記記録幅に応じた距離移動させるように前記第1キャリッジ
を移動させる第1キャリッジ移動手段と、
前記印刷領域に対向して位置する前記インクジェットヘッドに対して前記活性光線照射手段を対応させるように、前記照射処理の実行に応じて前記第2キャリッジを前記第1の方向又は前記第1の方向と反対方向の第2の方向に移動させる第2キャリッジ移動手段と、
前記第1キャリッジ移動手段及び前記第2キャリッジ移動手段の動作を制御することにより前記インクジェットヘッドと前記活性光線照射手段との対応関係を調整する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記第1キャリッジに搭載された複数の前記インクジェットヘッドのうち前記第1の方向に関して最も下流側に搭載された下流側インクジェットヘッドを前記印刷領域における印刷終了位置に対向して位置させるとともに、前記第2キャリッジに搭載された複数の前記活性光線照射手段のうち前記第1の方向に関して最も下流側に搭載された下流側活性光線照射手段を前記下流側インクジェットヘッドに対応させるように前記印刷終了位置に対向して位置させて、前記第1キャリッジに搭載された複数の前記インクジェットヘッドによる前記記録動作と前記第2キャリッジに搭載された複数の前記活性光線照射手段による前記照射処理を実行させ、
その後、前記記録動作の実行に応じた前記第1キャリッジの前記第1の方向への移動により、前記第1キャリッジにおいて前記下流側インクジェットヘッドよりも前記第1の方向に関して上流側に載置された前記インクジェットヘッドが前記印刷終了位置に対向して位置しない場合は、前記記録動作実行に応じて前記第1キャリッジを前記第1の方向に移動させるとともに前記照射処理の実行に応じて前記第2キャリッジを前記第2の方向に移動させることにより、前記インクジェットヘッドと前記活性光線照射手段との対応関係を変更した状態で、前記印刷領域に対向して位置する前記インクジェットヘッドによる前記記録動作と前記印刷領域に対向して位置して前記記録動作を実行する前記インクジェットヘッドに対応する前記活性光線照射手段による前記照射処理を実行させ、
一方、前記記録動作の実行に応じた前記第1キャリッジの前記第1の方向への移動により、前記第1キャリッジにおいて前記下流側インクジェットヘッドよりも前記第1の方向に関して上流側に載置された前記インクジェットヘッドが前記印刷終了位置に対向して位置する場合は、前記記録動作実行に応じて前記第1キャリッジを前記第1の方向に移動させるとともに前記照射処理の実行に応じて前記第2キャリッジを前記第1の方向に移動させることにより、前記インクジェットヘッドと前記活性光線照射手段との対応関係を維持した状態で、前記印刷領域に対向して位置する前記インクジェットヘッドによる前記記録動作と前記印刷領域に対向して位置して前記記録動作を実行する前記インクジェットヘッドに対応する前記活性光線照射手段による前記照射処理を実行させることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記インクジェットヘッドはインクを吐出するための複数のノズルが所定方向に並んで配置されているノズル面を有し、前記ノズル面には、前記複数のノズルが、前記所定方向に、所定
のノズル間隔をあけて並んで配置されるノズル構成部を有し、
前記第1の間隔は前記ノズル間隔の整数倍の長さと略一致することを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記
記録動作は
、前記棒状部材の所定回転量の回転動作において、前記ノズル構成部が有する前記複数のノズルの一部または全部に対応する記録領域を用いて、前記棒状部材の外周面に対して、
前記第1の方向に関し前記記録領域に対応した長さで且つ前記所定回転量に対応する領域を記録するものであり、
前記第1の間隔は、前記第1の方向に関する前記記録領域の長さの整数倍の長さと略一致することを特徴とす
る請求項
3に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
前記第1の間隔は、前記第1の方向に関する前記ノズル構成部の長さの整数倍の長さと略一致することを特徴とする請求項
3又は請求項
4に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
前記
第1キャリッジ移動手段により前記第1キャリッジが前記第1の方向に移動する距離は、前記記録領域の
前記第1の方向の長さと略一致することを特徴とする請求項
4に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項7】
前記第1キャリッジに搭載された複数の前記インクジェットヘッドのうち、前記第1キャリッジ移動動作により、前記棒状部材と前記ノズル面とが対向する位置に到達した前記インクジェットヘッドから順次前記記録動作の実行を開始することを特徴とする請求項
3から請求項
6のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項8】
前記ノズル面と前記棒状部材の外周面とが略平行になるように、前記棒状部材の外周面が有する前記棒状部材の中心軸に対する勾配の角度に応じて、前記棒状部材が保持される角度を変更する機能を有することを特徴とする請求項
3から請求項
7のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項9】
前記棒状部材
に対して、前記第1の方向と略直交する方向への移動を規制するための支持部材を有し、前記支持部材には、前記棒状部材の径に応じて
、前記棒状部材の軸方向に略直交する方向に移動させる機構を有することを特徴とする請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項10】
前記第2キャリッジには
、前記棒状部材の外周面が有する前記棒状部材の中心軸に対する勾配の角度に応じて、前記棒状部材の外周面と前記
活性光線照射手段との距離を変更する機能を有することを特徴とする請求項
1から請求項
9のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項11】
前記活性光線照射
手段は、
前記活性光線の照射面積を制限するための照射面積制限ユニットを有することを特徴とする請求項
1から請求項
10のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項12】
前記第1キャリッジには、さらに活性光線照射
手段が搭載されていることを特徴とする、請求項1から請求項
11のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に杖、竿、スティック、バー、ロッド、ポール、パイプ等の柱体である軸方向の長さが長い棒状部材の外周面に対して印刷することのできるインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形状の被記録媒体の外周面に対してインクジェット印刷を施すインクジェット印刷装置が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の、特許文献1に開示されるような、円筒体や柱体などの被記録媒体に対して印刷を実施するインクジェット印刷装置の構成は、1つのインクジェットヘッドの印刷可能幅より著しく広い範囲を印刷する必要のない被記録媒体に対する印刷が想定されている。例えば、缶、コップ、瓶、ボトル等の被記録媒体が想定される(例えば、特許文献1の段落0005等参照)。
【0005】
しかし、円筒体や柱体などの被記録媒体のなかでも、インクジェットヘッドの印刷可能幅に比して、軸方向の長さが著しく長い、杖、竿、スティック、バー、ロッド、ポール、パイプ等の円筒体や柱体である棒状部材の外周面の一部又は全部に対して印刷を実施する場合、以下の問題が想定される。
【0006】
すなわち、円筒体や柱体などの被記録媒体に対してインクジェット方式で外周面を印刷する場合、当該被記録媒体を軸方向に回転させながらインクジェットヘッドから外周面にインクを吐出して印刷することが想定される。しかし、一般的なインクジェットヘッドの印刷可能幅には制限がある。よって、軸方向の長さがインクジェットヘッドの印刷可能幅よりも著しく長い棒状部材を印刷しようとする場合、棒状部材を軸方向に回転させながら、印刷可能幅に制限のあるインクジェットヘッドと著しく長い棒状部材とを、軸方向に相対的に移動させながら印刷しようとすることで、印刷時間が著しく長くなり生産タクトに問題が生じうる。
【0007】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、上記の問題を解決し、杖、竿、スティック、バー、ロッド、ポール、パイプ等の柱体である軸方向の長さが長い棒状部材の外周面に対して効率よく高速で印刷することのできるインクジェット印刷装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の発明者は、鋭意工夫の結果、以下の構成を見出した。
【0009】
すなわち、本発明では、棒状部材の外周面に対してインクジェット方式による印刷を実施するインクジェット印刷装置において、
前記棒状部材を回動可能に保持する保持回動ユニットと、
インクを吐出するための複数のノズルが所定方向に並んで配置されているノズル面を有する複数のインクジェットヘッド各々が、前記保持回動ユニットに保持されて回転する前記棒状部材の回転軸が延びる回転軸方向に、所定の間隔である第1の間隔をとって搭載される第1キャリッジと、
前記第1キャリッジを前記回転軸方向に移動させるための第1キャリッジ移動手段とを有し、
前記保持回動ユニットにより前記回転軸を中心に回転する前記棒状部材の外周面に対し、複数の前記インクジェットヘッドからインクを吐出してインクを付与するインク付与動作と、前記第1キャリッジ移動手段により前記第1キャリッジを前記回転軸方向に所定の距離である第1の距離移動させる第1キャリッジ移動動作とを繰り返し実行し、
前記インク付与動作は、複数の前記インクジェットヘッドから同時にインクを吐出して前記棒状部材の外周面に対してインクを付与する動作を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明におけるインクジェット印刷装置では、前記ノズル面には、前記複数のノズルが、前記所定方向に、所定の間隔であるノズル間隔をあけて並んで配置されるノズル構成部を有し、
前記第1の間隔は前記ノズル間隔の整数倍の長さと略一致することを特徴とする。
【0011】
また、本発明におけるインクジェット印刷装置では、前記インク付与動作は、前記保持回動ユニットによる前記棒状部材の所定回転量の回転動作において、前記ノズル構成部が有する前記複数のノズルの一部または全部に対応する記録領域を用いて、前記棒状部材の外周面に対して、前記回転軸方向に、前記記録領域の前記回転軸方向に対応した長さで且つ前記所定回転量に対応する領域を記録するものであり、
前記第1の間隔は、前記記録領域の前記回転軸方向の長さの整数倍の長さと略一致することを特徴とする。
【0012】
また、本発明におけるインクジェット印刷装置では、前記第1の間隔は、前記ノズル構成部の前記回転軸方向の長さの整数倍の長さと略一致することを特徴とする。
【0013】
また、本発明におけるインクジェット印刷装置では、前記第1の距離は、前記記録領域の前記回転軸方向の長さと略一致することを特徴とする。
【0014】
また、本発明におけるインクジェット印刷装置では、前記第1キャリッジに搭載された複数の前記インクジェットヘッドのうち、前記第1キャリッジ移動動作により、前記棒状部材と前記ノズル面とが対向する位置に到達した前記インクジェットヘッドから順次インク付与動作の実施を開始することを特徴とする。
【0015】
また、本発明におけるインクジェット印刷装置では、前記保持回動ユニットには、前記ノズル面と前記棒状部材の外周面とが略平行になるように、前記棒状部材の外周面が有する前記棒状部材の中心軸に対する勾配の角度に応じて、前記棒状部材が保持される角度を変更する機能を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明におけるインクジェット印刷装置では、前記回動保持ユニットに保持される前記棒状部材を支持し、前記棒状部材の軸方向と略直交する方向への移動を規制するための支持部材を有し、前記支持部材には、前記棒状部材の径に応じて、前記回動保持ユニットに保持される前記棒状部材の軸方向に略直交する方向に移動させる機構を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明におけるインクジェット印刷装置では、前記棒状部材に付与されたインクを硬化するための活性光線を照射する光線照射面を有する活性光線照射装置が搭載されている第2キャリッジと、
前記第2キャリッジに接続され、前記第2キャリッジを、前記回転軸方向に移動させるための第2キャリッジ移動手段とを有し、
前記第2キャリッジは、前記光線照射面と、前記保持回動ユニットにより保持される前記棒状部材とが対向することができるように配置されており、
前記インク付与動作と同時または前記インク付与動作の終了後に、前記光線照射面より前記活性光線を照射する活性光線照射動作と、前記第2キャリッジ移動手段により前記第2キャリッジを前記回転軸方向に移動させる第2キャリッジ移動動作とを繰り返すことを特徴とする。
【0018】
また、本発明におけるインクジェット印刷装置では、前記第2キャリッジには、複数の前記活性光線照射装置が、前記回転軸方向に、所定の間隔である第2の間隔をとって配置されており、
前記第2キャリッジ移動手段は、前記第1キャリッジ移動動作と同時または前記第1キャリッジ移動動作の終了後に、前記インク付与動作を実施する前記インクジェットヘッドの前記ノズル面と、複数の前記活性光線照射装置のうちいずれかの前記光線照射面とが、前記保持回動ユニットにより保持される前記棒状部材を介して対向する位置関係になるように、前記第2キャリッジを、前記回転軸方向に移動させることを特徴とする。
【0019】
また、本発明におけるインクジェット印刷装置では、前記第2キャリッジ移動手段は、前記第1キャリッジ移動動作により前記第1キャリッジが移動する方向に、前記第2キャリッジを前記第1の距離移動させる動作と、
前記第1キャリッジ移動動作により前記第1キャリッジが移動する方向と反対方向に、前記第2キャリッジを、前記第1の距離移動させる動作とを実行することを特徴とする。
【0020】
また、本発明におけるインクジェット印刷装置では、前記第2キャリッジには、前記棒状部材の有する前記勾配の角度に応じて、前記棒状部材の外周面と前記光線照射面との距離を変更する機能を有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明におけるインクジェット印刷装置では、前記活性光線照射装置は、活性光線の照射面積を制限するための照射面積制限ユニットを有することを特徴とする。
【0022】
また、本発明におけるインクジェット印刷装置では、前記第2キャリッジは、前記光線照射面が、前記保持回動ユニットにより保持される前記棒状部材及び前記ノズル面と対向するように配置されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明におけるインクジェット印刷装置では、前記第1キャリッジには、さらに活性光線照射装置が搭載されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、上記の構成とすることで、上記の問題を解決し、杖、竿、スティック、バー、ロッド、ポール、パイプ等の柱体である軸方向の長さが長い棒状部材の外周面に対して効率よく高速で印刷することのできるインクジェット印刷装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置の全体図である。
【
図2】第1キャリッジをインクジェットヘッドのノズル面の側から見た概略底面図である。
【
図3】第1キャリッジ、保持回動ユニット及び第2キャリッジの角度調整の様子を示す概略図である。
【
図4】活性光線照射装置の照射面積制限ユニットの構成例を示す概略斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】実施形態にかかるインクジェット印刷装置における第1キャリッジと、保持回動ユニットと、第2キャリッジとの配置関係を示す概略側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置による印刷シーケンスを示すフローチャートである。
【
図8】印刷シーケンス実行時の第1キャリッジ及び第2キャリッジの相対移動の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0027】
本発明の実施形態としてのインクジェット印刷装置の構成を、
図1を用いて説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態としてのインクジェット印刷装置の全体構成を示す全体図である。
図1に示す通り、インクジェット印刷装置1は、異なる色のインクを吐出することができる複数のインクジェットヘッド21が、第1キャリッジ31に複数搭載されている。
図1では、4個のインクジェットヘッド21が第1キャリッジ31に搭載されている例を示している。
【0029】
インクジェットヘッド21としては、通常は、インクの数に対応した、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色分のインクを吐出するためのインクジェットヘッド21が第1キャリッジ31に搭載されている。また、第1キャリッジ31には、必要に応じて、要求される画像形成に必要とされるホワイト(W)、クリア(CL)等の特色インクを吐出するためのインクジェットヘッド21をさらに搭載することもできるし、複数色を必要としない場合は省略することもできる。さらに、インクジェットヘッド21としては、1個のインクジェットヘッド21で1色のインクを吐出できるものを用いてもよく、必要に応じて1個のインクジェットヘッド21で2色以上の異なる種類のインクを吐出できるもの(多色インク対応ヘッド)を用いることも可能である。
【0030】
なお、インクジェットヘッド21から吐出されるインクには、活性光線硬化型インク、ソルベントインク、水性インク、油性インク等、被記録媒体の性質に対応した適宜のものを選択できる。本実施形態においては、活性光線硬化型インクを用いている。また、本実施形態においては、活性光線硬化型インクの中でも紫外線硬化型インクを用いている。
【0031】
図2は、第1キャリッジ31をインクジェットヘッド21のノズル面23の側から見た概略底面図である。
【0032】
インクジェットヘッド21は、インクを吐出するためのノズル27が所定の列であるノズル列方向に並んで配置されているノズル構成部25を含むノズル面23を有している。そして、
図2に示す通り、第1キャリッジ31に搭載される複数のインクジェットヘッド21各々は、いずれもそのノズル構成部25各々が所定の間隔である第1の間隔L1をあけるように、ノズル列方向に並んで搭載されている。なお、本実施形態においては、ノズル列方向と、後述の保持回動ユニット41に保持されて回転する棒状部材3の回転軸方向と略一致する構成となっている。第1キャリッジ31に配置される複数のインクジェットヘッド21の配置関係についてはのちに詳述する。
【0033】
なお、第1キャリッジ31は、インクジェットヘッド21を上記のように1つのキャリッジに搭載する構成としてもよいし、例えば一つのキャリッジに1つのインクジェットヘッド21を搭載し、キャリッジ各々に搭載されるインクジェットヘッド21のノズル構成部25各々が第1の間隔L1をあけて配置される構成とすることもできるし、ノズル構成部25各々が第1の間隔L1をあけて配置されるその他の構成とすることもできる。
【0034】
第1キャリッジ31には、第1キャリッジ31をノズル列方向であるX軸方向に移動させるための第1キャリッジ移動手段33が接続されている。第1キャリッジ移動手段33は、その駆動により、第1キャリッジ31をノズル列方向に移動させるために、直線移動する駆動系である直動モーターを用いることが好ましい。直動モーターには、リニアモーター、ボールねじ、タイミングベルト等適宜のものが使用される。本実施形態ではリニアモーターを使用している。また、第1キャリッジ移動手段33には、第1キャリッジ31の原点特定と現在位置確認を実施するためのエンコーダ等のセンサを内蔵することが好ましい。
【0035】
さらに、第1キャリッジ31には、棒状部材3の外周面と、ノズル面23との距離を調整できるよう、その駆動により、X軸方向と略直交する方向であるZ軸方向に第1キャリッジ31を移動させるための第1キャリッジ上下移動手段34を設けることが好ましい。第1キャリッジ上下移動手段34には、サーボモーター、ステッピングモーター等が適宜使用される。なお、Z軸移動手段には、落下防止のためのブレーキ手段が備えられていることが好ましい。
【0036】
以上のように、本実施形態におけるインクジェット印刷装置1において、第1キャリッジ31に第1キャリッジ移動手段33を接続し、第1キャリッジ31を棒状部材3の軸方向であるX軸方向に移動させることで、インクジェット21と棒状部材3とを軸方向に相対移動させる構成としている。かかる構成をとる趣旨を説明する。
【0037】
仮にインクジェットヘッド21を移動させず、棒状部材3自体を軸方向に移動させる構成をとり、インクジェットヘッド21と棒状部材3とを棒状部材3の軸方向に相対移動させる場合、棒状部材3の搬送(マテリアルハンドリング)において以下の問題が生じうる。
【0038】
すなわち、棒状部材3とインクジェットヘッド21とを、棒状部材3の軸方向(X軸方向)の一方端部から他方端部まで、相対移動させて印刷を実施するためには、棒状部材3を、X軸方向に、少なくとも棒状部材3の軸方向の長さの2倍以上の長さ搬送できる構造とする必要がある。長い棒状部材3に対して印刷を実施する必要がある場合は、インクジェット印刷装置1の大型化の問題等が生じうる。
【0039】
また、本実施形態にかかるインクジェット印刷装置1に適用される棒状部材3が細く弾性を有するような部材である場合、搬送の際に棒状部材3に負荷がかかることで、棒状部材3の軸方向と略直交する方向にたわみやブレが生じる可能性もある。これによりインクジェットヘッド21のノズル面23と棒状部材3の外周面との距離の不均一が発生する可能性がある。かかる距離の不均一により、印刷画質の劣化やノズル面23と棒状部材3の外周面との接触などの問題が生じうる。
【0040】
そこで、第1キャリッジ31を棒状部材3の軸方向に移動させてインクジェット21と棒状部材3とを軸方向に相対移動させる構成とすることで、少なくとも棒状部材3の軸方向の長さだけ第1キャリッジ31を棒状部材3の軸方向に相対移動させるスペースを確保すれば、棒状部材3の軸方向の一方端部から他方端部までインクを付与することができる。さらに、棒状部材3の搬送により発生する、上記のたわみや振れも防止できる。
【0041】
第1キャリッジ31のZ軸方向下方には、被記録媒体たる棒状部材3を保持して、棒状部材3の外周面に印刷を実施する際に、その軸を中心に回動させるための保持回動ユニット41が配置されている。
【0042】
保持回動ユニット41には、回転モーター42が接続されており、その回転駆動により、保持回動ユニット41により保持される棒状部材3を回動させる。回転モーター42には、サーボモーターやステッピングモーターなど適宜のものが選択される。
【0043】
保持回動ユニット41による棒状部材3の保持方法は、棒状部材3の形状により、適宜のものを選択する。棒状部材3を懸架し、その軸方向端部を挟持する方法、エアー吸引による真空チャックにより固定する方法など、棒状部材3に応じて、確実に固定できる方法を選択する。
【0044】
さらに、棒状部材3が、円錐形状や円錐台形状であるなど、棒状部材3の外周面が勾配を有する場合に、棒状部材3の外周面と、インクジェットヘッド21のノズル面23との距離とを均一となるように、勾配に応じて棒状部材3の保持角度を調整できる機構を備えることもできる。なお、ここで、勾配とは、棒状部材3の軸中心を通過する線と、棒状部材3の外周面を、棒状部材3の中心軸方向へ通過する線(母線)との内角をいう。
【0045】
図1に示す通り本実施形態においては、保持回動ユニット41の一方端部に、棒状部材3の一方端部をZ軸方向に移動させるための上下移動手段43を備えている。また、保持回動ユニット41の他方端部に、棒状部材3を、当該他方端部の側を中心として、Z軸方向に上下回動させるためのピボット44を備えている。上下移動手段43を駆動させ、ピボット44を中心に棒状部材3をZ軸方向に回動させることで、棒状部材3の保持角度を調整し、棒状部材3の外周面の距離と、ノズル面23との距離を調整している。
【0046】
図3は、第1キャリッジ31、保持回動ユニット41及び第2キャリッジ51の角度調整の関係を示す概略図であり、
図3に基づき棒状部材3の保持角度の調整例を説明する。
【0047】
例えば、
図3に示すように勾配のある棒状部材3の外周面が有する勾配がある角度θである場合には、上下移動手段43を作動させ、棒状部材3の一方端部を、Z軸方向のノズル面23に接近させる方向にθ分移動させることで、インクジェットヘッド21のノズル面23をノズル列方向に通過する線と、棒状部材3の軸中心を通過する線との内角がθとなるように角度調整を実施する。これにより、ノズル面23と、棒状部材3の外周面のX軸方向とが、略平行となる。
【0048】
以上の角度調整を実施することで、外周面に勾配がある棒状部材3であっても、インクジェットヘッド21のノズル面23と、棒状部材3の外周面とが接触することを回避しつつ距離を一定に保つことができ、高画質の印刷を実施できる。
【0049】
さらに、保持回動ユニット41には、棒状部材3の軸方向の長さに応じて、棒状部材3を保持回動ユニット41の一方端部から他方端部に懸架保持できるように、保持回動ユニット41の一方端部または両端部に、保持回動ユニットをX軸方向に移動させるための保持回動ユニット移動手段45を設けることが好ましい。本実施形態では、保持回動ユニット41の一方端部をX軸方向のX2の範囲移動させることができるように、保持回動ユニット移動手段45を設けている。保持回動ユニット移動手段45には、適宜の直動モーターが適用される。
【0050】
また、保持回動ユニット45には、棒状部材3の材質に応じて、棒状部材3を軸方向に回動させる際に生じる振れを防止するための振れ抑えユニット46を設けることもできる。本実施形態では、振れ抑えユニット46と棒状部材3の外周面とを接触させることで、棒状部材3を回転させた際に発生する遠心力により生じる、棒状部材3の軸方向と略直交する方向への振れを抑える機能を搭載している。さらに、棒状部材3の長さや径に応じて、棒状部材3と振れ抑えユニット46との接触状況を調整するために、本実施形態では、第1振れ抑えユニット移動手段47や、第2振れ抑えユニット移動手段48を備えている。
【0051】
さらに、保持回動ユニット41のZ軸方向下方には、活性光線を照射するための光線照射面54を有する1個以上の活性光線照射装置53が、保持回動ユニット41に保持される棒状部材3と光線照射面54(
図4参照)とが対向するように搭載されている。
活性光線照射装置53を複数配置する場合には、第2キャリッジ51に、所定の間隔である第2の間隔をあけてノズル列方向に並んで搭載される。
【0052】
本実施形態では、第2キャリッジ51に搭載される活性光線照射装置53は、棒状部材3外周面に付与されたインクを仮硬化させて棒状部材3の外周面表面におけるインクのぬれ広がりを制限して所定の画質を確保するために用いている。
【0053】
活性光線照射装置53には、紫外線照射装置、電子線装置など、用いる活性光線硬化型インクの性質に応じて適宜のものを選択できるが、本実施形態においては、紫外線硬化型インクを用いることから、これに対応して紫外線照射装置を採用している。また、紫外線照射装置に用いるランプは、水銀、メタルハライド、LED等、適宜の形式のものを選択できる。本実施形態では小型化と取扱い容易性のため、LEDを採用しているがこれに限定されるものではない。
【0054】
ここで、第2キャリッジ51に複数の活性光線照射装置53を配置する場合における活性光線照射装置各々の配置間隔である第2の間隔の設定方法について説明する。
【0055】
第2キャリッジ51に配置される複数の活性光線照射装置53は、第1キャリッジ31と第2キャリッジ51とが対向する位置にある場合、第1キャリッジ31に搭載されるすべてのインクジェットヘッド21のノズル面23各々に、第2キャリッジ51に搭載される複数の活性光線照射装置53の光線照射面54が対向する位置関係にできるように配置することが望ましい。
【0056】
そこで、本実施形態では、第1キャリッジ移動手段33と第2キャリッジ移動手段55を駆動して第1キャリッジ31と第2キャリッジ51を移動させた際に、インクジェットヘッド21のX軸方向の中心線と、これに対向する活性光線照射装置53のX軸方向の中心線とが略一致する位置関係になるように第2の間隔を設定し、第1キャリッジ31に搭載される複数のインクジェットヘッド21のノズル面23の各々と、第2キャリッジ51に搭載される複数の活性光線照射装置53の光線照射面54の各々とが対向する位置関係にできるよう配置している。
【0057】
第2の間隔を上記のように設定することで、各々のインクジェットヘッド21により付与されたインクに対して、活性光線照射装置53各々により、効率よく活性光線を照射することができる。
【0058】
なお、第2キャリッジ51は、活性光線照射装置53を上記のように1つのキャリッジに搭載する構成としてもよいし、例えば一つのキャリッジに1つの活性光線照射装置53を搭載し、キャリッジ各々に搭載される活性光線照射装置53各々が第2の間隔をあけて配置される構成とすることもできるし、活性光線照射装置53が第2の間隔をあけて配置されるその他の構成とすることもできる。
【0059】
また、各々の活性光線照射装置53には、インクジェットヘッド21のノズル面23に対する活性光線照射を抑制するために、活性光線の照射面積を制限する照射面積制限ユニット57が搭載されている。
【0060】
図4は、活性光線照射装置の照射面積制限ユニットの構成例を示す概略斜視図である。
【0061】
本実施形態では、照射面積制限ユニット57として、照射面積を制限するためのスリットを設けた板状の遮光版が、活性光線照射装置53の光線照射面54の側に設置されている。なお、照射面積制限ユニットの構成はこれに限られるものではなく、制限できる範囲を調整できるように遮光版を可動できるような構成とすることも可能である。
照射面積制限ユニット57の機能により、光線の照射面積を制限することで、一方では棒状部材3の外周面には活性光線を照射し、他方ではインクジェットヘッド21のノズル面23への活性光線の照射を制限している。。これにより、活性光線がインクジェットヘッド21のノズル面23に照射されてノズル面23に付着したインクが意図せず硬化されることで発生する、インクジェットヘッド21のノズル詰まり等による破損を回避することが可能である。
【0062】
第2キャリッジ51には、第2キャリッジ51をノズル列方向に移動させるための第2キャリッジ移動手段55が接続されている。第2キャリッジ移動手段55は、その駆動により、第2キャリッジ51をノズル列方向に移動させるために、直線移動する駆動系である直動モーターを用いることが好ましい。直動モーターには、リニアモーター、ボールねじ、タイミングベルト等適宜のものが使用される。
【0063】
本実施形態ではリニアモーターを使用している。また、第2キャリッジ移動手段55には、第2キャリッジ51の原点特定と現在位置確認を実施するためのエンコーダ等のセンサを内蔵することが好ましい。
【0064】
さらに、搭載される各活性光線照射装置53各々から照射される活性光線の、棒状部材3外周面における積算光量の均一性が要求される場合には、第2キャリッジ51には棒状部材3の外周面の有する勾配の角度に応じて、角度調整用のサーボモーター等の前記棒状部材3の外周面から光線照射面54との距離を変更する機能を、第2キャリッジ移動手段55に備えることもできる。かかる要求が無い場合には適宜省略してもよい。本実施形態では、角度調整のために、第2キャリッジ51の両端部をZ軸方向に移動させることのできる上下移動手段43を搭載している。
【0065】
第2キャリッジ移動手段55の角度調整例を、
図3を参照しつつ説明する。棒状部材3の外周面が有する勾配の角度がθである場合において、上記の方法にて棒状部材3の保持角度を調整した場合、棒状部材3の外周面と、光線照射面54との角度は、棒状部材3が有する勾配の2倍の角度である2θとなる。
【0066】
そこで、当該距離変更機能により、第2キャリッジ51の光線照射面54側の角度を、棒状部材3の外周面と略平行になるように、上下移動手段43を作動させ、第2キャリッジ51の一方端部を、棒状部材3の外周面の方向に2θ接近させる。かかる角度調整動作を実施することで、棒状部材3の外周面と活性光線照射装置53の光線照射面54との直線距離を略均一に保ち、距離により生じる活性光線の減衰や棒状部材3と活性光線照射装置53との接触を回避することができる。
【0067】
また、第1キャリッジ31には、インクジェットヘッド21のほか、必要に応じてさらに活性光線照射装置を搭載してもよい。本実施形態においては、
図1に示す第1キャリッジ31の印刷方向上流側に、本硬化用活性光線照射装置35が搭載されている。本実施形態では、本硬化用活性光線照射装置35による活性光線照射により、棒状部材3外周面上に付与されたインクを完全硬化させるために用いている。
【0068】
本硬化用活性光線照射装置35には、活性光線照射装置53と同様に、紫外線照射装置、電子線装置など、用いる活性光線硬化型インクの性質に応じて適宜のものを選択できるが、本実施形態においては、紫外線硬化型インクを用いることから、これに対応して紫外線照射装置を採用している。
【0069】
さらに、第1キャリッジ31には、レーザーセンサーなどの高さ検知手段36を設け、ノズル面23と棒状部材3の外周面との距離を測定する機能や保持される棒状部材3の種類を認識する機能などを備えることもできる。
【0070】
ここで、第1キャリッジ31と、保持回動ユニット41と、第2キャリッジ51との、ノズル列方向からみた配置関係について、説明する。
【0071】
図6は本実施形態にかかるインクジェット印刷装置1における第1キャリッジ31と、保持回動ユニット41と、第2キャリッジ51との配置関係を示す概略側面図である。
【0072】
第1キャリッジ31に搭載されるインクジェットヘッド21のノズル面23と、第2キャリッジ51に搭載される活性光線照射装置53の光線照射面54とは、各々対向する位置関係にある。そこで、上記のように、活性光線照射装置53から照射された活性光線58が、インクジェットヘッド21のノズル面23に照射されることで付着したインクが硬化してインクジェットヘッド21が破損することを防止するために、インクジェットヘッド21のノズル面23と、活性光線照射装置53の光線照射面54とが対向する位置にあり、かつ、保持回動ユニット41を、保持した棒状部材3の外周面とノズル面23と光線照射面54とが、いずれも対向するように配置することが好ましい。これにより光線照射面54から照射される活性光線58は、保持回動ユニット41に保持された棒状部材3には照射され、インクジェットヘッド21のノズル面23に照射される活性光線58は棒状部材3により制限される。
【0073】
次に、本実施形態にかかるインクジェット印刷装置1の電気的構成について、
図5を参照しつつ説明する。
【0074】
図5は、インクジェット印刷装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【0075】
本実施形態におけるインクジェット印刷装置1は、制御コンピューター60を備える。制御コンピューター60は、例えば、CPUや、メモリーなどを備える。メモリーは例えばRAM及びROMにより構成され、RAMにはCPUの演算結果や印刷画像データが一時的に記録されたりする。また、ROMには、印刷シーケンスの実行プログラムのほか、インクジェットヘッド21や、各種モーターを駆動制御する制御プログラム等が格納されている。
【0076】
制御コンピューター60は、LAN等のインターフェースを介して、コントローラー61に接続され、このインターフェースを介してコントローラー61と通信を行う。コントローラー61には例えばプログラマブルコントローラー(PLC)などが使用され、接続される各種ドライバ類を制御する。また、各種センサ類からの信号を受け取る。
【0077】
そして、コントローラー61は、制御コンピューター60からの指令を受け、モーター駆動ドライバ62を介して第1キャリッジ移動手段33を構成する直動モーター63を駆動制御するとともに、モーター駆動ドライバ64を介して第2キャリッジ移動手段55を構成する直動モーター65を駆動制御している。また、駆動ドライバ66を介して、保持回動ユニット41を構成する回転モーター42を駆動制御している。また、コントローラー61は、制御コンピューター60からの指令を受け、ドライバ68を介して、活性光線照射装置53などの作動を制御している。
【0078】
更に、ヘッド制御ボード69は、制御コンピューター60からの指令を受け、インクジェットヘッド21のインク吐出を制御している。
【0079】
ここで、第1キャリッジ31に配置される複数のインクジェットヘッド21の配置関係について
図2を参照しつつ詳述する。
【0080】
図2は第1キャリッジに搭載される複数のインクジェットヘッドの配置間隔を示す概略底面図である。
図2に示す通り、第1キャリッジ31に、複数のインクジェットヘッド21が、ノズル列方向に沿って、インクジェットヘッド21各々が有するノズル構成部25各々が、第1の間隔L1をあけて配置される。
【0081】
インクジェットヘッド21のノズル面23には、インクを吐出するためのノズル27が、所定の間隔であるノズル間隔L3をあけて、所定の列であるノズル列方向に並んで配置されているノズル構成部25を有している。
【0082】
また、ノズル構成部25は、ノズル構成部25の一方端部から他方端部まで、ノズルがノズル列方向に並ぶ長さであるノズル長L2を有している。
【0083】
ここで、ノズル間隔L3について説明する。ノズル間隔L3は、インクジェット印刷装置1に使用されるインクジェットヘッド21において、所定の解像度による印刷を実施できるように設定される、隣接するノズル同士の間隔をいう。なお、解像度とは、インクジェットヘッドから吐出されて付与される、単位長さあたりのインクドットの数を示し、一般的には1インチ(25.4mm)あたりに付与されるインクドットの数で定義される。例えば、1インチ当たりにインクドットが300個付与されるのであれば、印刷解像度は300DPI、360個であれば360DPI、600個であれば600DPI、1200個では1200DPIというように定義されるが、選択される解像度はこれらに限定されない。
【0084】
そして、ノズル間隔L3は、要求される解像度に応じて設定され、例えば、300DPIでは約84.6μm、360DPIでは約70.5μm、600DPIでは約42.3μm、1200DPIでは約21.16μmとなる。
【0085】
以上を前提に、複数のインクジェットヘッド21の各々が有するノズル構成部25各々の配置間隔である第1の間隔L1の設定方法について説明する。
【0086】
インクジェット印刷においては、複数のインクジェットヘッド21から吐出する各々の色のインクドットを、被記録媒体表面において組み合わせ、プロセスカラーにより画像形成を行う。そこで、複数のインクジェットヘッド21を使用して印刷を実施する場合、各々のインクジェットヘッド21それぞれから吐出されて、被記録媒体表面において形成されるインクドット各々の間隔がずれてしまうと、意図する所定の解像度による画像形成ができず印刷品質の劣化が生じる。
【0087】
したがって、第1キャリッジ31を後述の第1の距離ずつ印刷方向に移動させながら、複数のインクジェットヘッド21により、棒状部材3の外周面に、インクの付与を行った際に、複数のインクジェットヘッド21により被記録媒体上で形成されるインクドット各々の間隔がずれないように、インクジェットヘッド21各々を配置する必要がある。
【0088】
そこで、複数のインクジェットヘッド21各々の第1の間隔L1は、少なくともノズル間隔L3の整数倍と略一致するようになっていることが好ましい。これにより、各々のインクジェットヘッド21によるインクドットの形成位置がずれることが無く、高画質の印刷を実現することができる。
【0089】
また、インクジェットヘッド21の構造上、ノズル面23のノズル列方向の長さがノズル構成部25のノズル列方向の長さであるノズル長L2よりも長くなることがある。この場合、ノズル間隔L3を第1の間隔L1をノズル間隔L3と略一致させるような配置(例えばインクジェットヘッド21各々のノズル構成部25各々を略隣接させるような配置)が難しいことが想定される。この場合の第1の間隔L1の設定方法を説明する。
【0090】
まず、インクジェット印刷においては、画像形成の際に、1つの画像を形成するための印刷回数を分割せず、必要なインクドット形成を1回で完了するシングルパス方式と、1つの画像を形成するための印刷回数を分割し、必要なインクドット形成を複数回に分けて実施するマルチパス方式が存在する。
【0091】
ここで、シングルパス方式とは、ノズル長L2のインクジェットヘッド21に対して棒状部材3の所定量(例えば1回)の回転動作を行い、この回転動作においてノズル長L2に対応する記録領域(ノズル構成部25)を用いて、棒状部材3の外周面の、棒状部材3の軸方向にL2の長さで且つ所定回転量に対応する領域を記録し、当該領域の記録が完了した後、インクジェットヘッド21を棒状部材3の軸方向へノズル長L2の長さ相対移動させ、当該記録と当該相対移動とを各々繰り返す方式をいう。
【0092】
また、マルチパス方式とは、ノズル長L2のインクジェットヘッド21の記録領域をN(2≧)個に分け、このインクジェットヘッド21に対して棒状部材3のN回の所定量回転動作を行い、各回転動作においてインクジェットヘッド21のN個に分割された記録領域を順番に用いて、インクジェットヘッド21をノズル列方向に棒状部材3の外周面の、棒状部材3の軸方向にL2/Nの長さで且つ所定回転量に対応する領域を記録し、当該記録が完了した後、インクジェットヘッド21を棒状部材3の軸方向へノズル長L2/Nの長さ相対移動させ、当該記録と当該相対移動とを各々繰り返す方式をいう。
【0093】
そこで、インクジェットヘッド21の各々の第1の間隔L1を、パス数に応じて分割されたノズル長L2(L2/N)の整数倍と略一致させることもできる。これにより、第1キャリッジ31をノズル列方向に、パス数に応じて分割されたノズル長L2分の距離を移動させながら印刷を実施しても、複数のインクジェットヘッド21により被記録媒体上で形成されるインクドット各々の間隔がずれないように印刷することが可能となる。
【0094】
さらに、インクジェットヘッド21の各々の第1の間隔L1を、ノズル長L2の整数倍と略一致させることもできる。これにより、第1の間隔L1をノズル間隔L3の整数倍と略一致するよう設定できるのみならず、インクジェットヘッド21の複雑な制御を実施すること無くシングルパス方式の印刷もマルチパス方式の印刷も実施することができる。
【0095】
次に、本実施形態にかかるインクジェット印刷装置1による、棒状部材3に対する印刷シーケンスについて、
図7、
図8等を参照しつつ説明する。
【0096】
図7は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1による印刷シーケンスを示すフローチャートである。このフローチャートに対応したプログラムがコンピューター60のROMに格納されており、コンピューター60のCPUはこのプログラムに従って装置各種を制御して、以下に詳述する印刷シーケンスを実行する。
【0097】
また、
図8は、印刷シーケンス実行時の、第1キャリッジに搭載されるインクジェットヘッド、棒状部材、第2キャリッジ51に搭載される活性光線照射装置の相対移動の一例を示す模式図である。
【0098】
なお、
図8及び以下の説明では、インクジェット印刷装置1の構成として、第1キャリッジ31には、印刷開始位置側に配置されるものから印刷方向下流順に向かって順に、インクジェットヘッド21A、インクジェットヘッド21B、インクジェットヘッド21C、インクジェットヘッド21D、インクジェットヘッド21Eの五つのインクジェットヘッド21が、ノズル長L2の間隔をあけて搭載されており、さらに第2キャリッジ51には、印刷開始位置側に配置されるものから印刷方向下流に向かって順に、活性光線照射装置53A、活性光線照射装置53B、活性光線照射装置53C、活性光線照射装置53D、活性光線照射装置53Eの五つの活性光線照射装置53が搭載されているものとする。
【0099】
また、本実施形態では、上記のシングルパス方式印刷での印刷シーケンス例を用いて説明する。
【0100】
なお、本説明例に限定されるものではなく、マルチパス方式の印刷を実施しても、インクジェットヘッド21や活性光線照射装置53を必要に応じて増減させても、第1の間隔L1を上記の説明の範囲で変更させてもよい。
【0101】
まず、
図7のフロー1の印刷開始位置移動シーケンスを実施する。印刷開始前に、第1キャリッジ31と、第2キャリッジ51とを、各々所定の印刷開始位置に移動させる。本実施形態では、インクジェットヘッド21Eのノズル面23と、活性光線照射装置53Aの光線照射面54とが、各々対向する位置関係を印刷動作開始位置としている。
【0102】
なお、本実施形態においては、インクジェットヘッド21Aから21Eのノズル面23各々と対向する、活性光線照射装置53Aから53Eの光線照射面54各々の対応関係を固定せず、後述するように変更していくことで、第1キャリッジ31のX軸方向の移動範囲よりも第2キャリッジ51のX軸方向の移動範囲を狭くすることを可能にしている。
【0103】
これにより、第1キャリッジ31の下部で第2キャリッジのX軸方向の移動範囲の外側に生じるスペースに、インクジェットヘッドのクリーニング機構等の必要機構を効率よく配置してインクジェット印刷装置の省スペース化を図ることができる。また、このような構成をとることで、第2キャリッジ移動手段55として使用される直動モーターを、より移動範囲の狭いものを使用して小型化することができ、直動モーターの小型化により確保されたスペースに、適宜必要な機構を搭載することができ、更なる装置の省スペース化を図ることができる。なお、この構成例に限定されるものではなく、必要に応じて異なる構成をとってもよい。
【0104】
この印刷開始位置から印刷を開始し、
図8に示すように印刷方向上流から下流に向けて、棒状部材3外周面の一方端部から他方端部までの所定の印刷領域に印刷を実施する。
【0105】
次に、フロー2のキャリッジ移動シーケンスを実施する。第1キャリッジ31及び第2キャリッジ51を、印刷方向下流に、制御コンピューター60の指令によるコントローラー61の制御を受けて、第1キャリッジ移動手段33と第2キャリッジ移動手段55を駆動させて各々第1の距離及び第2の距離を移動させる。本説明例の構成においてシングルパス方式印刷を実施する場合は、第1の距離はノズル長L2と略一致する距離となる。さらに、第2の距離は第1の距離と一致する距離に設定されている。なお、マルチパス方式の印刷を実施する場合は、第1の距離は、ノズル長L2を所定のパス数(N)の分だけ分割させたL2/Nの距離となる。さらに、第2の距離は第1の距離と一致する距離に設定されている。
【0106】
キャリッジ移動シーケンスにより、インクジェットヘッド21Eと活性光線照射装置53Aとが、棒状部材3の外周面の領域に対向するインク付与動作と光線照射動作を実施すべき位置に移動される。
【0107】
次にフロー3のインク付与動作シーケンスを実施する。保持回動ユニット41に接続される回転モーター42の駆動によって軸中心に回動する棒状部材3の外周面に対して、所定の回数量回転する間にインクジェットヘッド21からインクを吐出し、インクを付与する。本説明例の場合、最初の第1スキャンでインクジェットヘッド21Eからインク付与動作を開始する。
【0108】
詳述すると、保持回動ユニット41に内蔵されるセンサから、棒状部材3の外周面の回動方向の原点位置を認識して印刷位置を確認し、これに基づき制御コンピューター60に格納される画像データをヘッド制御ボード69に出力し、インクジェットヘッド21Eを駆動させ、インク付与動作を行う。なお、棒状部材3の回動は、印刷開始から終了まで継続させても、インク付与動作や光線照射動作のときのみ回動させてもよい。
【0109】
次に、フロー4の光線照射シーケンスを実施する。保持回動ユニット41の駆動により軸中心に回動する棒状部材3の外周面に対して、所定の回転量を回転する間に活性光線照射装置53から活性光線を照射し、棒状部材3の外周面に付与されたインクを仮硬化する。本説明例の場合、最初の第1スキャンで活性光線照射装置53Aから光線照射を開始する。
【0110】
詳述すると、保持回動ユニット41に内蔵されるセンサから、棒状部材3の外周面の回動方向の原点位置を認識して照射開始位置を確認し、確認した位置に基づきにコントローラー61の制御により、活性光線照射装置53Aを駆動させ、光線照射を行う。
【0111】
フロー4終了後、まず、フローチャートの通り、必要なインク付与動作と光線照射動作を完了したか確認する。
【0112】
必要なインク付与動作と光線照射動作を完了していない場合、次の確認ステップに進み、フローチャートに示すように、キャリッジ移動動作をすることで、インク付与を実施すべきインクジェットヘッド21と、光線照射を実施すべき活性光線照射装置53とが対向する位置関係にないものが発生するか否かを確認する。
【0113】
確認の結果、かかる位置関係にあるインクジェットヘッド21と、活性光線照射装置53とが発生しない場合は、フロー2に戻り、フロー4までの実行を繰り返す。
【0114】
本説明例では、第2スキャンを実施する際にはかかる位置関係にあるインクジェットヘッド21と、活性光線照射装置53とが発生しないため、フロー2に戻り、フロー4まで繰り返すことになる。
【0115】
これに対して、本説明例の第3スキャンを開始する際に、仮に、フロー2に戻りキャリッジ移動シーケンスを実施して、第1キャリッジ31と、第2キャリッジ51とを、印刷方向下流に各々第1の距離と第2の距離移動させた場合、インクジェットヘッド21Eと、活性光線照射装置53Aとは対向した位置関係にあるが、次にインク付与動作を開始すべき、インクジェットヘッド21Dに対向する活性光線照射装置53が存在しないことになる。この状態で、インクジェットヘッド21Eとインクジェットヘッド21Dによりフロー3のインク付与動作を実施した場合、フロー4でインクジェットヘッド21Dから吐出され付与されたインクを、光線照射により仮硬化させることができない。
【0116】
そこで、この場合、フロー5の位置関係調整動作を実施する。本説明例の第3スキャンを例にとれば、第1キャリッジ31を印刷方向下流に第1の距離だけ移動させ、対して、第2キャリッジ51は印刷方向上流に第2の距離だけ移動させる。上記位置関係調整動作により、インクジェット21Eと活性光線照射装置53Bとが、インクジェットヘッド21Dと活性光線照射装置53Aとが、それぞれ対向した位置関係になり、上記の問題を解決できる。
【0117】
フロー5が終了したら、フロー3に戻り、フロー3とフロー4を順次実施する。第3スキャンの例では、フロー3のインク付与動作シーケンスで、インクジェットヘッド21Dとインクジェットヘッド21Eから同時にインクを吐出してインクを棒状部材3の外周面に付与し、フロー4の光線照射動作シーケンスで、活性光線照射装置53Aと活性光線照射装置53Bから同時に光線照射を実施する。このように、複数のインクジェットヘッド21と活性光線照射装置53とを各々作動させて同時にインク付与動作と光線照射動作を実施することで、より広い印刷領域を一度に印刷でき、生産タクトを向上させることができる。
【0118】
そして、
図7のフローチャートに従い、フロー1からフロー5までを適宜繰り返し、第4スキャン、第5スキャンと順次印刷動作を実施する。
【0119】
その後、印刷動作を継続すると、キャリッジ移動動作をすることで、インク付与を実施すべきインクジェットヘッド21と、光線照射を実施すべき活性光線照射装置53とが対向する位置関係にないものが発生しない状態となる。
【0120】
図8の例では、第9スキャンまで実施すると、インクジェットヘッド21Aからインクジェットヘッド21E各々と、活性光線照射装置53Aから活性光線照射装置53E各々とがすべて対向する位置関係となる。
【0121】
そこで、第9スキャン以降は、再度、キャリッジ移動動作をすることで、インク付与を実施すべきインクジェットヘッド21と、光線照射を実施すべき活性光線照射装置53とが対向する位置関係にないものが発生するまでは、フロー5の位置関係調整動作を実施せず、フロー2からフロー4までを繰り返し、第10スキャン、第11スキャンと、印刷
方向下流へ順次印刷動作を実施する。
【0122】
その後、インクジェット印刷装置1の構成によっては、上記の通り、印刷動作を順次繰り返し、第1キャリッジ31と第2キャリッジ51とが、印刷終了位置までたどり着いた場合において、機械構成の制限から第2キャリッジ51の移動範囲に制限がある場合、第2キャリッジ51をさらに印刷方向下流に移動させることができない状況が発生する場合がある。
【0123】
図8の例では、第28スキャンにおいてフロー3とフロー4を実施した時点で、第2キャリッジ51をさらに印刷方向下流に移動させることができない場合に、そのままフロー2にもどり第29スキャンを実施しようとすると、第1キャリッジ31は印刷方向下流に第1の距離移動できるが、第2キャリッジ51は印刷方向下流に第2の距離移動できない。よって、第29スキャンで印刷を実施すべきインクジェットヘッド21Aからインクジェットヘッド21Dの全てが、活性光線照射装置53と対向する位置関係にない状態が発生する。
【0124】
そこで、このような場合も、フロー5の位置関係調整動作を実施することが有効となる。本説明例の第29スキャンを例に説明すると、第1キャリッジ31を印刷方向下流に第1の距離だけ移動させ、第2キャリッジ51を印刷方向上流に第2の距離だけ移動させる。これにより、第29スキャンにおいては、インクジェットヘッド21Aと活性光線照射装置53B、インクジェットヘッド21Bと活性光線照射装置53C、インクジェットヘッド21Cと活性光線照射装置53D、インクジェットヘッド21Dと活性光線照射装置53Eとが、各々いずれも対向した位置関係となる。
【0125】
以上のように、本実施形態では、第1キャリッジ31が、印刷開始位置または印刷終了位置を通過するときに実施されている。
【0126】
なお、第29スキャンにおいては、インクジェットヘッド21Eは既に棒状部材3の外周面に対して、軸方向の一方端部から他方端部までの所定の印刷領域に対して、必要なインク付与を完了させているため、活性光線照射装置53を対向させる必要はない。
【0127】
以上のように、
図7のフローチャートに従い、フロー1からフロー5までを適宜繰り返して、第30スキャン、第31スキャンと、すべての印刷領域に対する印刷が完了するまで印刷動作を継続する。
図8の例であれば、第36スキャンまで実施し、すべての印刷動作が完了する。
【0128】
その後、フローチャートに従い、フロー6の本硬化動作を実施する。第1キャリッジ31に搭載した本硬化用活性光線照射装置35を作動させ、第1キャリッジ移動手段33により第1キャリッジ31を移動させながら、棒状部材3の外周面の一方端部から他方端部まで、活性光線照射装置53から照射される活性光線より強力な活性光線を照射して、付与したインクを完全硬化させる。
【0129】
以上のシーケンスを経て、本実施形態におけるインクジェット印刷装置1による印刷が完了し、棒状部材3の外周面に対して効率よく高速で印刷することができた。
【0130】
以上のシーケンスの適用例として、
図8の模式図に基づく印刷シーケンスを、スキャンごとに詳述する。
【0131】
第1キャリッジ31に搭載されたインクジェットヘッド21のうち印刷開始位置に最も近い側に搭載されているインクジェットヘッド21Eを、棒状部材3の印刷領域の印刷開始位置に移動させるとともに、第2キャリッジ51に搭載された活性光線照射装置53のうち印刷開始位置に最も近い活性光線照射装置53である活性光線照射装置53Aを印刷開始位置に移動させて、インクジェットヘッド21Eと活性光線照射装置53Aとを棒状部材3を介して(挟んで)対向する位置関係に設定する。
【0132】
この状態で、保持回動ユニット41により回転する棒状部材3の外周面に対し、インクジェットヘッド21Eのノズル長L2に対応する複数のノズルからインクE(以下、インクジェットヘッド21Aからインクジェットヘッド21Eから吐出されるインク各々をインクAからインクEと称する。)を吐出して棒状部材3の外周面にインクEを付与するとともに、活性光線照射装置53Aを駆動して活性光線を棒状部材3の外周面に照射して棒状部材3の外周面に付与されたインクEを硬化させる(1スキャン)。
【0133】
次に第1キャリッジ31及び第2キャリッジ51を前記ノズル列方向下流側にノズル長L2に対応する距離移動させる。この状態で、保持回動ユニット41により回転する前記棒状部材3の外周面に対し、インクジェットヘッド21Eのノズル長L2に対応する複数のノズルからインクEを吐出して棒状部材3の外周面にインクEを付与するとともに、活性光線照射装置53Aを駆動して活性光線を棒状部材3の外周面に照射して棒状部材3の外周面に付与されたインクEを硬化させる(2スキャン)。
【0134】
次に第1キャリッジ31を前記ノズル列方向下流側にノズル長L2に対応する距離移動させる。一方第2キャリッジ51は第1キャリッジ31の移動方向とは反対側の前記ノズル列方向上流側にノズル長L2に対応する距離移動させる。これにより、棒状部材3を介して(挟んで)インクジェットヘッド21Eが活性光線照射装置53Bと対向し、更にインクジェットヘッド21Dが活性光線照射装置53Aと対向する位置関係となる。
【0135】
この状態で、保持回動ユニット41により回転する前記棒状部材3の外周面に対し、インクジェットヘッド21Eのノズル長L2に対応する複数のノズル及びインクジェットヘッド21Dのノズル長L2に対応する複数のノズルから、各々インクE及びインクDを吐出して棒状部材3の外周面にインクを付与するとともに、活性光線照射装置53A及び活性光線照射装置53Bを駆動して活性光線を棒状部材3の外周面に照射して棒状部材3の外周面に付与されたインクを硬化させる(3スキャン)。
【0136】
この後(2スキャン)及び(3スキャン)と同様の動作を繰り返し行い、インクジェットヘッド21C~Bを順番に印刷開始位置に移動させて棒状部材3の外周面に対するインク付与動作及び付与されたインクの硬化処理を行う(4スキャン~8スキャン)。そして最後尾のインクジェットヘッド21Aが印刷開始位置に移動する。これにより、棒状部材3を介して(挟んで)インクジェットヘッド21Aが活性光線照射装置53Aと対向し、インクジェットヘッド21Bが活性光線照射装置53Bと対向し、インクジェットヘッド21Cが活性光線照射装置53Cと対向し、インクジェットヘッド21Dが活性光線照射装置53Dと対向し、インクジェットヘッド21Eが活性光線照射装置53Eと対向する位置関係となる。
【0137】
この状態で、保持回動ユニット41により回転する前記棒状部材3の外周面に対し、インクジェットヘッド21Aのノズル長L2に対応する複数のノズル~インクジェットヘッド21Eのノズル長L2に対応する複数のノズルから、各々インクA、インクB、インクC、インクD及びインクEを吐出して棒状部材3の外周面にインクを付与するとともに、活性光線照射装置53A~活性光線照射装置53Eを駆動して活性光線を棒状部材3の外周面に照射して棒状部材3の外周面に付与されたインクを硬化させる(9スキャン)。
【0138】
この後、第1キャリッジ31及び第2キャリッジ51を前記ノズル列方向下流側にノズル長L2に対応する距離移動させる。そしてこの状態で、保持回動ユニット41により回転する前記棒状部材3の外周面に対し、インクジェットヘッド21Aのノズル長L2に対応する複数のノズル~インクジェットヘッド21Eのノズル長L2に対応する複数のノズルから、各々インクA、インクB、インクC、インクD及びインクEを吐出して棒状部材3の外周面にインクを付与するとともに、活性光線照射装置53A~活性光線照射装置53Eを駆動して活性光線を棒状部材3の外周面に照射して棒状部材3の外周面に付与されたインクを硬化させる(10スキャン)。
【0139】
この後(9スキャン)及び(10スキャン)と同様な動作処理をインクジェットヘッド21Eが印刷終了位置に到達するまで繰り返し実行し、棒状部材3の印刷領域に対するインクA~Eの付与及び付与されたインクの硬化処理を行う(11スキャン~27スキャン)。
【0140】
そして、インクジェットヘッド21Eが印刷終了位置に到達し、その状態でインクジェットヘッド21A~Eによるインク付与動作及び第2キャリッジ51に搭載された活性光線照射装置53A~Eによるインクの硬化処理を行った後(28スキャン)、第1キャリッジ31を前記ノズル列方向下流側にノズル長L2に対応する距離移動させる。一方第2キャリッジ51は第1キャリッジ31の移動方向とは反対側の前記ノズル列方向上流側にノズル長L2に対応する距離移動させる。これにより、インクジェットヘッド21Aが活性光線照射装置53Bと対向し、インクジェットヘッド21Bが活性光線照射装置53Cと対向し、インクジェットヘッド21Cが活性光線照射装置53Dと対向し、インクジェットヘッド21Dが活性光線照射装置53Eと対向する位置関係となる。
【0141】
この状態で、保持回動ユニット41により回転する前記棒状部材3の外周面に対し、インクジェットヘッド21Aのノズル長L2に対応する複数のノズル~インクジェットヘッド21Dのノズル長L2に対応する複数のノズルから、各々インクA、インクB、インクC及びインクDを吐出して棒状部材3の外周面にインクを付与するとともに、活性光線照射装置53B~活性光線照射装置53Eを駆動して活性光線を棒状部材3の外周面に照射して棒状部材3の外周面に付与されたインクを硬化させる(29スキャン)。
【0142】
この後第1キャリッジ31及び第2キャリッジ51を前記ノズル列方向下流側にノズル長L2に対応する距離移動させる。この状態で、保持回動ユニット41により回転する前記棒状部材3の外周面に対し、インクジェットヘッド21Aのノズル長L2に対応する複数のノズル~インクジェットヘッド21Dのノズル長L2に対応する複数のノズルから、各々インクA、インクB、インクC及びインクDを吐出して棒状部材3の外周面にインクを付与するとともに、活性光線照射装置53B~活性光線照射装置53Eを駆動して活性光線を棒状部材3の外周面に照射して棒状部材3の外周面に付与されたインクを硬化させる(30スキャン)。
【0143】
この後(29スキャン)及び(30スキャン)と同様の動作処理を繰り返し行い、インクジェットヘッド21D~Aを順番に印刷終了位置に移動させながら棒状部材3の外周面に対するインク付与動作及び付与されたインクの硬化処理を行う(31スキャン~35スキャン)。そして最後尾のインクジェットヘッド21Aが印刷終了位置に移動する。これにより、棒状部材3を介して(挟んで)インクジェットヘッド21Aが活性光線照射装置53Eと対向する位置関係となる。
【0144】
この状態で、保持回動ユニット41により回動する前記棒状部材3の外周面に対し、インクジェットヘッド21Aのノズル長L2に対応する複数のノズルから、インクAを吐出して棒状部材3の外周面にインクを付与するとともに、活性光線照射装置53Eを駆動して活性光線を棒状部材3の外周面に照射して棒状部材3の外周面に付与されたインクを硬化させる(35スキャン)。
【0145】
図8の例では、以上の工程をすべて実施することで、棒状部材3の外周面に対して、インクを付与して画像を形成することができた。35スキャン完了後、必要に応じて本硬化動作を実施し、インクを完全硬化して印刷動作をすべて完了させる。
【符号の説明】
【0146】
1 インクジェット印刷装置
3 棒状部材
21 インクジェットヘッド
23 ノズル面
25 ノズル構成部
27 ノズル
31 第1キャリッジ
33 第1キャリッジ移動手段
34 第1キャリッジ上下移動手段
35 本硬化用活性光線照射装置
36 高さ検知手段
41 保持回動ユニット
42 回転モーター
43 上下移動手段
44 ピボット
45 保持回動ユニット移動手段
46 振れ抑えユニット
47 第1振れ抑えユニット移動手段
48 第2振れ抑えユニット移動手段
51 第2キャリッジ
53 活性光線照射装置
54 光線照射面
55 第2キャリッジ移動手段
57 照射面積制限ユニット
58 活性光線
60 制御コンピューター
61 コントローラー
62 モーター駆動ドライバ
63 直動モーター
64 モーター駆動ドライバ
65 直動モーター
66 駆動ドライバ
68 ドライバ
69 ヘッド制御ボード