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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】宅配ボックス
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20240520BHJP
   E05B 65/00 20060101ALI20240520BHJP
   A47G 29/124 20060101ALI20240520BHJP
   H04L 9/32 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
E05B49/00 J
E05B65/00 D
A47G29/124
H04L9/32 200B
H04L9/32 200F
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021165077
(22)【出願日】2021-10-06
(65)【公開番号】P2023055574
(43)【公開日】2023-04-18
【審査請求日】2024-01-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502340756
【氏名又は名称】ヒロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098350
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 睦彦
(72)【発明者】
【氏名】栗須 基弘
(72)【発明者】
【氏名】栗須 顕人
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-085761(JP,A)
【文献】特開2020-018539(JP,A)
【文献】特開2013-215335(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066425(WO,A1)
【文献】特開2021-140381(JP,A)
【文献】特開2019-146761(JP,A)
【文献】特開2019-024581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
E05B 65/00
A47G 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宅配ボックスとユーザ端末と宅配業者の業者端末とサーバとにより構成される宅配システムにおける宅配ボックスであって、
開口部を有するボックス本体と、
前記ボックス本体に取り付けられ、前記開口部を開閉するボックス開閉部と、
前記ボックス本体に対して前記ボックス開閉部を開錠/施錠することができる電子錠部と、
近距離無線通信部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記近距離無線通信部により近距離内に位置する端末に対して、自宅配ボックスに付与された公開鍵Aで暗号化した認証要求を発出し、
自宅配ボックスに付与された公開鍵Bで暗号化された認証応答を当該端末から受信したとき、自宅配ボックスに予め割り当てられた秘密鍵Bで当該認証応答を復号し、
この復号結果が所定の条件に合致したとき、当該端末からの開錠/施錠指示を許可し、
当該端末から前記公開鍵Bで暗号化された開錠/施錠指示を受けて前記秘密鍵Bで復号し、前記電子錠部を開錠/施錠し、
前記端末が前記宅配ボックスのユーザに係るユーザ端末である場合、前記認証応答および開錠/施錠指示の生成およびそれらの暗号化を当該ユーザ端末が実行し、
前記端末が宅配業者の業者端末である場合、前記認証要求は当該業者端末が通信ネットワークを介して前記サーバへ転送し、
前記サーバが前記認証応答および開錠/施錠指示の生成およびそれらの暗号化を実行し、前記サーバから通信ネットワークを介して得た前記認証応答および開錠/施錠指示の暗号文を前記業者端末が当該宅配ボックスへ返送する
宅配ボックス。
【請求項2】
前記認証要求および前記認証応答には当該宅配ボックスの識別情報を含む請求項1に記載の宅配ボックス。
【請求項3】
前記制御部は、前記端末が業者端末である場合、
前記秘密鍵Bで当該認証応答の暗号文を復号した復号結果が所定の条件に合致したとき、当該業者端末に対して業者情報および配達物情報を要求して当該業者端末からそれらの情報を受信した後、前記公開鍵Aで暗号化した当該情報を含めた開錠/施錠指示要求を当該業者端末経由で前記サーバ宛に送出する
請求項に記載の宅配ボックス。
【請求項4】
前記ボックス開閉部に設けられた覗き窓をさらに備え、
前記覗き窓は、手動で開閉可能なシャッタ機構およびその閉鎖状態を前記制御部の制御下でロックするロック手段を有し、前記シャッタ機構の開放時にボックス内部を視認でき、閉鎖時にボックス内部の視認が阻止され、
前記制御部は、ボックス内への配達物の収納に伴って、前記電子錠部の施錠後に前記覗き窓のロックが解除され、前記業者端末による撮影像を受領した前記サーバからの指示に応じて閉鎖状態の前記覗き窓をロックする請求項1に記載の宅配ボックス。
【請求項5】
前記ボックス開閉部に設けられた覗き窓をさらに備え、
前記覗き窓は、前記制御部により開閉可能なシャッタ機構を有し、前記シャッタ機構の開放時にボックス内部を視認でき、閉鎖時にボックス内部の視認が阻止され、
前記制御部は、ボックス内への配達物の収納に伴って、前記電子錠部の施錠後に前記シャッタ機構を開放し、前記業者端末による撮影像を受領した前記サーバからの指示に応じて前記シャッタ機構を閉鎖する請求項1に記載の宅配ボックス。
【請求項6】
前記ボックス開閉部に設けられた覗き窓をさらに備え、
前記覗き窓は、前記制御部により光透過を制御できる調光フィルムを有し、
前記制御部は、ボックス内への配達物の収納に伴って、前記電子錠部の施錠後に前記調光フィルムを透明化し、前記業者端末による撮影像を受領した前記サーバからの指示に応じて前記調光フィルムを不透明化する請求項1に記載の宅配ボックス。
【請求項7】
バッテリと、
前記電子錠部を駆動する電源回路部と、
前記バッテリと前記電源回路部との間に配置され、利用者に操作されて前記バッテリと前記電源回路部間を導通させる自動復帰型の第1のスイッチと、
前記第1のスイッチに並列に接続され、制御信号に基づいてオンオフ制御される第2のスイッチとをさらに備え、
前記制御部は、前記第1のスイッチが利用者によりオンされたとき、前記第2のスイッチをオンするとともに前記端末の操作に応じて前記電子錠部を開錠/施錠を制御し、当該端末の操作による前記宅配ボックスの処理が終了した後、前記第2のスイッチをオフする
請求項1~のいずれかに記載の宅配ボックス。
【請求項8】
前記電子錠部の開錠/施錠動作に連動する可動部材を備え、前記可動部材の動作に応じて開錠/施錠状態を色表示する状態表示部を備える請求項1~のいずれかに記載の宅配ボックス。
【請求項9】
電子錠で施錠することができる宅配ボックスであって、
ボックス本体と、
前記ボックス本体に取り付けられるボックス開閉部と、
前記ボックス本体に対して前記ボックス開閉部を開錠/施錠することができる電子錠部と、
バッテリと、
前記電子錠部を駆動する電源回路部と、
前記バッテリと前記電源回路部との間に配置され、利用者に操作されて前記バッテリと前記電源回路部間を導通させる自動復帰型の第1のスイッチと、
前記第1のスイッチに並列に接続され、制御信号に基づいてオンオフ制御される第2のスイッチと、
前記第1のスイッチが利用者によりオンされたとき、前記第2のスイッチをオンするとともに利用者の操作に応じて前記電子錠部を開錠/施錠を制御し、前記利用者の操作による前記宅配ボックスの処理が終了した後、前記第2のスイッチをオフする制御部と
を備えた宅配ボックス。
【請求項10】
前記ボックス開閉部に設けられた覗き窓をさらに備え、
前記覗き窓は、手動で開閉可能なシャッタ機構およびその閉鎖状態を前記制御部の制御下でロックするロック手段を有し、前記シャッタ機構の開放時にボックス内部を視認でき、閉鎖時にボックス内部の視認が阻止され、
前記制御部は、ボックス内への配達物の収納に伴って、前記電子錠部の施錠後に前記覗き窓のロックが解除され、業者端末による撮影像を受領したサーバからの指示に応じて閉鎖状態の前記覗き窓をロックする請求項に記載の宅配ボックス。
【請求項11】
前記ボックス開閉部に設けられた覗き窓をさらに備え、
前記覗き窓は、前記制御部により開閉可能なシャッタ機構を有し、前記シャッタ機構の開放時にボックス内部を視認でき、閉鎖時にボックス内部の視認が阻止され、
前記制御部は、ボックス内への配達物の収納に伴って、前記電子錠部の施錠後に前記シャッタ機構を開放し、業者端末による撮影像を受領したサーバからの指示に応じて前記シャッタ機構を閉鎖する請求項に記載の宅配ボックス。
【請求項12】
前記ボックス開閉部に設けられた覗き窓をさらに備え、
前記覗き窓は、前記制御部により光透過を制御できる調光フィルムを有し、
前記制御部は、ボックス内への配達物の収納に伴って、前記電子錠部の施錠後に前記調光フィルムを透明化し、業者端末による撮影像を受領したサーバからの指示に応じて前記調光フィルムを不透明化する請求項に記載の宅配ボックス。
【請求項13】
前記制御部は、前記電子錠部の施錠を行い、前記覗き窓が閉鎖またはロックされた後、前記第2のスイッチをオフする請求項10~12のいずれかに記載の宅配ボックス。
【請求項14】
前記電子錠部の開錠/施錠動作に連動する可動部材を備え、前記可動部材の動作に応じて開錠/施錠状態を色表示する状態表示部を備える請求項13のいずれかに記載の宅配ボックス。
【請求項15】
宅配ボックスとユーザ端末と宅配業者の業者端末とサーバとにより構成される宅配システムにおける宅配ボックスであって、
開口部を有するボックス本体と、
前記ボックス本体に取り付けられ、前記開口部を開閉するボックス開閉部と、
前記ボックス本体に対して前記ボックス開閉部を開錠/施錠することができる電子錠部と、
近距離無線通信部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記近距離無線通信部により近距離内に位置する端末に対して、自宅配ボックスに付与された公開鍵Aで暗号化した認証要求を発出し、
自宅配ボックスに付与された公開鍵Bで暗号化された認証応答を当該端末から受信したとき、自宅配ボックスに予め割り当てられた秘密鍵Bで当該認証応答を復号し、
この復号結果が所定の条件に合致したとき、当該端末からの開錠/施錠指示を許可し、
当該端末から前記公開鍵Bで暗号化された開錠/施錠指示を受けて前記秘密鍵Bで復号し、前記電子錠部を開錠/施錠し、
前記ボックス開閉部に設けられた覗き窓をさらに備え、
前記覗き窓は、手動で開閉可能なシャッタ機構およびその閉鎖状態を前記制御部の制御下でロックするロック手段を有し、前記シャッタ機構の開放時にボックス内部を視認でき、閉鎖時にボックス内部の視認が阻止され、
前記制御部は、ボックス内への配達物の収納に伴って、前記電子錠部の施錠後に前記覗き窓のロックが解除され、前記業者端末による撮影像を受領した前記サーバからの指示に応じて閉鎖状態の前記覗き窓をロックす
配ボックス。
【請求項16】
宅配ボックスとユーザ端末と宅配業者の業者端末とサーバとにより構成される宅配システムにおける宅配ボックスであって、
開口部を有するボックス本体と、
前記ボックス本体に取り付けられ、前記開口部を開閉するボックス開閉部と、
前記ボックス本体に対して前記ボックス開閉部を開錠/施錠することができる電子錠部と、
近距離無線通信部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記近距離無線通信部により近距離内に位置する端末に対して、自宅配ボックスに付与された公開鍵Aで暗号化した認証要求を発出し、
自宅配ボックスに付与された公開鍵Bで暗号化された認証応答を当該端末から受信したとき、自宅配ボックスに予め割り当てられた秘密鍵Bで当該認証応答を復号し、
この復号結果が所定の条件に合致したとき、当該端末からの開錠/施錠指示を許可し、
当該端末から前記公開鍵Bで暗号化された開錠/施錠指示を受けて前記秘密鍵Bで復号し、前記電子錠部を開錠/施錠し、
前記ボックス開閉部に設けられた覗き窓をさらに備え、
前記覗き窓は、前記制御部により開閉可能なシャッタ機構を有し、前記シャッタ機構の開放時にボックス内部を視認でき、閉鎖時にボックス内部の視認が阻止され、
前記制御部は、ボックス内への配達物の収納に伴って、前記電子錠部の施錠後に前記シャッタ機構を開放し、前記業者端末による撮影像を受領した前記サーバからの指示に応じて前記シャッタ機構を閉鎖す
配ボックス。
【請求項17】
宅配ボックスとユーザ端末と宅配業者の業者端末とサーバとにより構成される宅配システムにおける宅配ボックスであって、
開口部を有するボックス本体と、
前記ボックス本体に取り付けられ、前記開口部を開閉するボックス開閉部と、
前記ボックス本体に対して前記ボックス開閉部を開錠/施錠することができる電子錠部と、
近距離無線通信部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記近距離無線通信部により近距離内に位置する端末に対して、自宅配ボックスに付与された公開鍵Aで暗号化した認証要求を発出し、
自宅配ボックスに付与された公開鍵Bで暗号化された認証応答を当該端末から受信したとき、自宅配ボックスに予め割り当てられた秘密鍵Bで当該認証応答を復号し、
この復号結果が所定の条件に合致したとき、当該端末からの開錠/施錠指示を許可し、
当該端末から前記公開鍵Bで暗号化された開錠/施錠指示を受けて前記秘密鍵Bで復号し、前記電子錠部を開錠/施錠し、
前記ボックス開閉部に設けられた覗き窓をさらに備え、
前記覗き窓は、前記制御部により光透過を制御できる調光フィルムを有し、
前記制御部は、ボックス内への配達物の収納に伴って、前記電子錠部の施錠後に前記調光フィルムを透明化し、前記業者端末による撮影像を受領した前記サーバからの指示に応じて前記調光フィルムを不透明化す
配ボックス。
【請求項18】
宅配ボックスとユーザ端末と宅配業者の業者端末とサーバとにより構成される宅配システムにおける宅配ボックスであって、
開口部を有するボックス本体と、
前記ボックス本体に取り付けられ、前記開口部を開閉するボックス開閉部と、
前記ボックス本体に対して前記ボックス開閉部を開錠/施錠することができる電子錠部と、
近距離無線通信部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記近距離無線通信部により近距離内に位置する端末に対して、自宅配ボックスに付与された公開鍵Aで暗号化した認証要求を発出し、
自宅配ボックスに付与された公開鍵Bで暗号化された認証応答を当該端末から受信したとき、自宅配ボックスに予め割り当てられた秘密鍵Bで当該認証応答を復号し、
この復号結果が所定の条件に合致したとき、当該端末からの開錠/施錠指示を許可し、
当該端末から前記公開鍵Bで暗号化された開錠/施錠指示を受けて前記秘密鍵Bで復号し、前記電子錠部を開錠/施錠し、
バッテリと、
前記電子錠部を駆動する電源回路部と、
前記バッテリと前記電源回路部との間に配置され、利用者に操作されて前記バッテリと前記電源回路部間を導通させる自動復帰型の第1のスイッチと、
前記第1のスイッチに並列に接続され、制御信号に基づいてオンオフ制御される第2のスイッチとをさらに備え、
前記制御部は、前記第1のスイッチが利用者によりオンされたとき、前記第2のスイッチをオンするとともに前記端末の操作に応じて前記電子錠部を開錠/施錠を制御し、当該端末の操作による前記宅配ボックスの処理が終了した後、前記第2のスイッチをオフす
配ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離無線通信機能を有する端末を用いて開錠/施錠動作を行うことができる宅配ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネット通販やネットオークション等の拡大に伴って宅配便の取り扱い個数が大幅に増加したことにより、受取人の不在等による再配達の増加が大きな問題となっている。また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って、非対面による受取の需要も増している。このような背景において、ユーザ宅に設置される宅配ボックスとして、業者が配達物をボックス内に収納して施錠し、受取人が開錠して取り出すことができるものの需要が増加している。
【0003】
商品として市販ないし発表されている既存の宅配ボックスとしては、大略、次のようなものがある。
【0004】
例えば、南京錠式の宅配ボックスは、予め南京錠を開錠した状態で宅配人に配達物を収納した後、施錠して貰い、受取人が鍵を用いて開錠し、配達物を取り出すものである(非特許文献1)。
【0005】
ダイヤル錠式の宅配ボックスは、宅配人に開錠状態のボックス内に配達物を収納した後、ダイヤルを回すことにより施錠してもらい、受取人が予め設定された暗証番号にダイヤルを合わせて開錠し、配達物を取り出すものである(非特許文献2)。
【0006】
電子錠を用いる宅配ボックスでは、宅配業者が送り状のバーコードを宅配ボックスの読み取り部にかざして開錠し、配達物を投函した後、受取人が専用のスマートフォンアプリのインストール済スマートフォン(端末)で、その画面に所定のQRコード(登録商標)を表示させ、これを読み取り部にかざすことにより開錠するものが知られている(非特許文献3)。
【0007】
その他、宅配ボックスに設けられたテンキー付きの操作パネルにパスワードを入力することにより電子錠を開錠するものも知られている(非特許文献3)。
【0008】
特許文献1には、配送業者が収容ボックスに配送物を収納して開閉キーを新たな解錠番号で施錠して配送物の配送が完了した旨を配送業者端末がサーバに送信し、受取人端末が、収納ボックスの開閉キーの新たな解錠番号をサーバから受信して、解錠する宅配ボックス装置を使用した配送システムが開示されている。
【0009】
特許文献2には、外部から扉の施錠および開錠の指示を受信する通信装置を備え、伝票捺印口に配達伝票が挿入されたとき操作機構により扉の施錠および捺印が行われ、通信装置の通信が可能になり、受取人は携帯型情報端末装置の操作画面から「開錠」ボタンを押すことによりWi-Fiルータを介する通信により、開錠暗証番号を入力することなく扉が開錠される宅配ボックスが開示されている。電源としては電池を利用することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2018-119037号公報
【文献】特開2019-146761号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】インターネット上の広告記事 URL: https://direct.sanwa.co.jp/ItemPage/300-DLBOX016
【文献】インターネット上の広告記事 URL: https://www.shinyei-shc.co.jp/product/post/post_box_skcbx202.html
【文献】インターネット上の広告記事 URL: https://direct.sanwa.co.jp/ItemPage/300-DLBOX017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した従来の宅配ボックスには以下のような改善すべき問題がある。
【0013】
従来の南京錠式の宅配ボックスでは鍵の紛失のおそれがある。また、業者による開錠が行えないので集荷用に利用することができない。
【0014】
ダイヤル錠式の宅配ボックスでは鍵の紛失のおそれはないが、暗証番号が漏洩や偶然による開錠などのおそれがある。また、この宅配ボックスにおいても業者による開錠が行えないので集荷用に利用することができない。
【0015】
上述した電子錠を用いる宅配ボックスでは、これらの問題は解消されるが、宅配ボックスにバーコードやQRコード(登録商標)の読み取り部を設ける必要があり、コスト増となるのみならず、その読み取り操作は不慣れな利用者にとって煩雑である。
【0016】
特許文献1に記載の宅配ボックス装置では、開閉キーの解錠(開錠)の際に、利用者が収容ボックスに付属のテンキーから解錠番号(暗証番号)を入力する必要があり、解錠番号の漏洩が問題となる他、解錠番号の入力が煩雑であるとともに誤入力のおそれもある。
【0017】
特許文献2に記載の宅配ボックスでは、そのユーザである受取人が宅配物を受け取る際には、宅配ボックス本体での番号キー操作や端末上での暗証番号の入力を行うことなく携帯型情報端末装置の利用により宅配ボックスの開錠を行うことができる。しかしながら、宅配人による開錠時には宅配人が指定された暗証番号を入力する必要がある。
【0018】
また、電子錠を用いる宅配ボックスはバッテリ駆動のものが設置が容易となるが、バッテリ切れは避けられない。そこで、バッテリの長寿命化のために電子錠の操作時のみ電源をオンし、通常時は電源オフとすることが好ましいが、任意の時点での無線通信による外部からのアクセスに対して宅配ボックスが応答するためには電源オフ期間中もある程度の待機電流を流しておく必要がある。
【0019】
この代わりに、宅配ボックスの電源ボタンをオフしたときに完全に電源が遮断される構成とし、必要時のみに電源ボタンをオンする構成も考えられるが、使用後に利用者が電源をオフし忘れるおそれがある。
【0020】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、その課題は配達時および集荷時に受取人のみならず宅配人も、宅配ボックス本体での番号キー操作や端末上での暗証番号の入力を行うことなく、開錠/施錠動作を行うことができる宅配ボックスを提供することにある。
【0021】
本発明の他の課題は、受取人および宅配人が近距離無線通信機能を有する端末を用いて開錠/施錠動作を行う際のセキュリティを向上させることができる宅配ボックスを提供することにある。
【0022】
本発明によるさらに他の課題は、バッテリで駆動される際にバッテリ寿命を伸ばすとともに電源オフのし忘れを防止することができる宅配ボックスを提供することにある。
【0023】
本発明においてこれらの課題は互いに独立であり、必ずしもすべての課題が達成さる必要はなく、少なくとも1つの課題が達成されれば足りる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明による宅配ボックスは、宅配ボックスとユーザ端末と宅配業者の業者端末とサーバとにより構成される宅配システムにおける宅配ボックスであって、開口部を有するボックス本体と、前記ボックス本体に取り付けられ、前記開口部を開閉するボックス開閉部と、前記ボックス本体に対して前記ボックス開閉部を開錠/施錠することができる電子錠部と、近距離無線通信部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記近距離無線通信部により近距離内に位置する端末に対して、自宅配ボックスに付与された公開鍵Aで暗号化した認証要求を発出し、自宅配ボックスに付与された公開鍵Bで暗号化された認証応答を当該端末から受信したとき、自宅配ボックスに予め割り当てられた秘密鍵Bで当該認証応答を復号し、この復号結果が所定の条件に合致したとき、当該端末からの開錠/施錠指示を許可し、当該端末から前記公開鍵Bで暗号化された開錠/施錠指示を受けて前記秘密鍵Bで復号し、前記電子錠部を開錠/施錠し、する前記端末が前記宅配ボックスのユーザに係るユーザ端末である場合、前記認証応答および開錠/施錠指示の生成およびそれらの暗号化を当該ユーザ端末が実行し、前記端末が宅配業者の業者端末である場合、前記認証要求は当該業者端末が通信ネットワークを介して前記サーバへ転送し、前記サーバが前記認証応答および開錠/施錠指示の生成およびそれらの暗号化を実行し、前記サーバから通信ネットワークを介して得た前記認証応答および開錠/施錠指示の暗号文を前記業者端末が当該宅配ボックスへ返送するものである。
【0025】
この宅配ボックスの電子錠の開錠および施錠は近距離無線通信部により無線通信を介して近接する端末からの指示により行われる。その際、宅配ボックスと通信相手との間の相互の認証および要求、指示は公開暗号方式による暗号化/復号によって行われる。これによって、セキュリティの高い宅配サービスが実現される。
【0026】
記構成において、前記端末が前記宅配ボックスのユーザに係るユーザ端末である場合、前記認証応答および開錠/施錠指示の生成およびそれらの暗号化を当該ユーザ端末が実行し、前記端末が宅配業者の業者端末である場合、前記認証要求は当該業者端末が通信ネットワークを介して前記サーバへ転送し、前記サーバが前記認証応答および開錠/施錠指示の生成およびそれらの暗号化を実行し、前記サーバから通信ネットワークを介して得た前記サーバから通信ネットワークを介して得た前記サーバから通信ネットワークを介して得た前記認証応答および開錠/施錠指示の暗号文を前記業者端末が当該宅配ボックスへ返送することにより、業者端末を暗号化および復号に関与しないようにすることができる。
【0027】
本発明の他の態様として、上記構成において、前記認証要求および前記認証応答には当該宅配ボックスの識別情報を含めることができる。これにより、当該認証要求および認証応答が対象とする宅配ボックスが特定される。
【0028】
本発明の他の態様として、前記制御部は、前記端末が業者端末である場合、前記秘密鍵Bで当該認証応答の暗号文を復号した復号結果が所定の条件に合致したとき、当該業者端末に対して業者情報および配達物情報を要求して当該業者端末からそれらの情報を受信した後、前記公開鍵Aで暗号化した当該情報を含めた開錠/施錠指示要求を当該業者端末経由で前記サーバ宛に送出する。これにより、業者端末を暗号化/復号への関与を排除しつつ、業者情報および配達物情報を取得して宅配ボックス側で暗号化してサーバへ渡すことができる。
【0029】
本発明の他の態様として、上記構成において、前記ボックス開閉部に設けられた覗き窓をさらに備え、前記覗き窓は、手動で開閉可能なシャッタ機構およびその閉鎖状態を前記制御部の制御下でロックするロック手段を有し、前記シャッタ機構の開放時にボックス内部を視認でき、閉鎖時にボックス内部の視認が阻止され、前記制御部は、ボックス内への配達物の収納に伴って、前記電子錠部の施錠後に前記覗き窓のロックが解除され、前記業者端末による撮影像を受領した前記サーバからの指示に応じて閉鎖状態の前記覗き窓をロックするようにしてもよい。
【0030】
本発明の他の態様として、上記構成において、前記ボックス開閉部に設けられた覗き窓をさらに備え、前記覗き窓は、前記制御部により開閉可能なシャッタ機構を有し、前記シャッタ機構の開放時にボックス内部を視認でき、閉鎖時にボックス内部の視認が阻止され、前記制御部は、ボックス内への配達物の収納に伴って、前記電子錠部の施錠後に前記シャッタ機構を開放し、前記業者端末による撮影像を受領した前記サーバからの指示に応じて前記シャッタ機構を閉鎖するようにしてもよい。
【0031】
本発明の他の様として、上記構成において、前記ボックス開閉部に設けられた覗き窓をさらに備え、前記覗き窓は、前記制御部により光透過を制御できる調光フィルムを有し、前記制御部は、ボックス内への配達物の収納に伴って、前記電子錠部の施錠後に前記調光フィルムを透明化し、前記業者端末による撮影像を受領した前記サーバからの指示に応じて前記調光フィルムを不透明化するようにしてもよい。
【0032】
宅配ボックスの施錠後にこれらの覗き窓を通したボックス内部の撮影により、宅配による配達物が受取人の宅配ボックスに確実に収容配達されたことの証明が得られる。
【0033】
本発明による他の態様としては、上記構成において、バッテリと、前記電子錠部を駆動する電源回路部と、前記バッテリと前記電源回路部との間に配置され、利用者に操作されて前記バッテリと前記電源回路部間を導通させる自動復帰型の第1のスイッチと、前記第1のスイッチに並列に接続され、制御信号に基づいてオンオフ制御される第2のスイッチとをさらに備え、前記制御部は、前記第1のスイッチが利用者によりオンされたとき、前記第2のスイッチをオンするとともに前記端末の操作に応じて前記電子錠部を開錠/施錠を制御し、当該端末の操作による前記宅配ボックスの処理が終了した後、前記第2のスイッチをオフするようにしてもよい。この構成により、宅配ボックスの不使用時の消費電力をゼロにしてバッテリの寿命化が図れる。
【0034】
本発明の他の態様として、前記電子錠部の開錠/施錠動作に連動する可動部材を備え、前記可動部材の動作に応じて開錠/施錠状態を色表示する状態表示部を備えてもよい。この構成により、宅配ボックスが電源オフ状態でも開錠/施錠状態を表示することができる。
【0035】
本発明による他の宅配ボックスは、電子錠で施錠することができる宅配ボックスであって、ボックス本体と、前記ボックス本体に取り付けられるボックス開閉部と、前記ボックス本体に対して前記ボックス開閉部を開錠/施錠することができる電子錠部と、バッテリと、前記電子錠部を駆動する電源回路部と、前記バッテリと前記電源回路部との間に配置され、利用者に操作されて前記バッテリと前記電源回路部間を導通させる自動復帰型の第1のスイッチと、前記第1のスイッチに並列に接続され、制御信号に基づいてオンオフ制御される第2のスイッチと、前記第1のスイッチが利用者によりオンされたとき、前記第2のスイッチをオンするとともに利用者の操作に応じて前記電子錠部を開錠/施錠を制御し、前記利用者の操作による前記宅配ボックスの処理が終了した後、前記第2のスイッチをオフする制御部とを備えたものである。この構成により、宅配ボックスの不使用時の消費電力をゼロにしてバッテリの寿命化が図れる。
【0036】
この宅配ボックスにおいても、上述した覗き窓の構成を採用することができる。
【0037】
そのような構成において、前記制御部は、前記電子錠部の施錠を行い、前記覗き窓が閉鎖またはロックされた後、前記第2のスイッチをオフするようにしてもよい。これにより、宅配ボックスの電源オフを延期して覗き窓に関連した処理を確実に完了させることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の一形態によれば、配達時および集荷時に受取人のみならず宅配人も、宅配ボックス本体での番号キー操作や端末上での暗証番号の入力を行うことなく、近距離無線通信機能を有する端末を用いて開錠/施錠動作を行うことができる。
【0039】
本発明の他の形態によれば、受取人および宅配人が近距離無線通信機能を有する端末を用いて開錠/施錠動作を行う際のセキュリティを向上させることができる。
【0040】
本発明によるさらに他の形態によれば、バッテリで駆動される際にバッテリ寿命を伸ばすとともに電源オフのし忘れを防止することができる
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の実施の形態に係る宅配ボックスの概略の外観を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る宅配システムの概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係る宅配ボックスの概略構成を示すブロック図である。
図4図1に示した宅配ボックスの電子錠部に含まれるロック機構の構成例を示す図である。
図5図1に示した宅配ボックスの施錠状態表示部の構成例を説明するための図である。
図6図1に示した宅配ボックスの覗き窓の構成例を示す図である。
図7図1に示した宅配ボックスの覗き窓の他の構成例を示す図である。
図8】本発明の実施形態における宅配システムの構成要素間の公開鍵暗号方式の鍵の関係および概略の通信データの授受の様子を示した図である。
図9】本発明の実施形態におけるユーザ端末の画面例を示す図である。
図10】本発明の実施形態における配達時開錠プロセスの具体的な処理ステップを示したシーケンス図である。
図11】本発明の実施形態における配達時施錠プロセスの具体的な処理ステップを示したシーケンス図である。
図12】本発明の実施形態におけるユーザ開錠/施錠プロセスの具体的な処理ステップを示したシーケンス図である。
図13】本発明の実施形態における集荷時開錠プロセスの具体的な処理ステップを示したシーケンス図である。
図14】本発明の実施形態における集荷時施錠プロセスの具体的な処理ステップを示したシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0043】
<実施形態の構成>
図1は、本実施の形態に係る宅配ボックス10の概略の外観を示している。図1(a)はボックス開閉部13が閉鎖された閉鎖状態を示し、図1(b)はボックス開閉部13が開放された開放状態を示している。ボックス開閉部13は、開口部12aを有するボックス本体12に開閉可能に取り付けられ、開口部12aを開閉する部材であり、この例では開口部12aが鉛直上方へ開口しているので、蓋部として認識される。この代わりに、開口部が鉛直側方へ開口していてもよい。その場合にはボックス開閉部13は扉部として認識される。したがって、本明細書において「ボックス開閉部」とは蓋部および扉部の両方を包含するものとする。
【0044】
図1(a)に示すように、ボックス開閉部13には宅配ボタン14、施錠状態表示部15および覗き窓16が設けられている。また、ボックス開閉部13の内側には、電子錠部(電子錠モジュール)17および高輝度LED18が設けられている。
【0045】
宅配ボタン14は、宅配ボックス10の利用者(ユーザまたは宅配業者の宅配人)が宅配ボックス10を開錠/施錠する際に操作する操作部であり、実質的に宅配ボックス10の電源を投入するための電源ボタンとして機能する。この宅配ボタン14は本実施形態では押しボタンで構成され、後述するモーメンタリスイッチと連動し、押圧されている間だけ後退し、押圧力が解除されると元の位置に復帰する自動復帰型のものである。
【0046】
施錠状態表示部15は、電子錠部17の開錠/施錠に係る現在の状態を表示する部位である。施錠状態表示部15としては発光ダイオード(LED)等の電子デバイスを用いて構成することも可能であるが、ここでは機械的な表示部の一例として、ボックス開閉部13に設けた開口に透明部材を配設し、内部機構の変化が色変化として透過して見えるようにしたものである。色変化としては例えば「赤」が施錠状態、「青」が開錠状態である。その具体的な構成例については後述する。状態の表示は色変化に限るものではなく、濃度、文字、記号、等、状態の別を表示できる任意の表示形態を採用可能である。
【0047】
覗き窓16は、宅配ボックス10のボックス開閉部13に設けられる窓部であり、ボックス開閉部13が閉鎖された状態でもこの窓部を通してボックス内部を外側から視認することを可能とするものである。覗き窓16も開閉可能であり、覗き窓16の開放時にボックス内部を視認でき、閉鎖時にボックス内部の視認が阻止される。覗き窓16の開閉は手動の場合と自動の場合とが考えられる。自動の場合の開閉制御は、宅配業者(以下、単に業者ともいう)による配達時の電子錠部17の開錠および施錠動作に伴って制御部100の制御に従って行われる。手動の場合、覗き窓16は少なくともボックス開閉部13の施錠後にロックが解除(開放が許可)され、閉鎖後に閉鎖状態がロックされることが好ましい。
【0048】
より具体的には例えば、覗き窓16は、業者の宅配人が配達物を宅配ボックス10内に収納(入庫)に伴って、電子錠部17の施錠後に覗き窓16を開放し、庫内の配達物をボックス外からカメラで撮影できるようにする。さらに、業者端末30による撮影像を受領した後のサーバ40からの窓閉鎖指示に応じて覗き窓16を閉鎖かつロックする。このような仕様により、宅配人が一旦収納した配達物を施錠前に撮影し、配達物を取り出した後に施錠するという不正を防止できる。
【0049】
覗き窓16の幾つかの具体例については後述する。
【0050】
電子錠部17は、ボックス本体12に対してボックス開閉部13を開錠/施錠することができるデバイスであり、ボックス開閉部13の内側に取り付けられる。このデバイスは、ボックス本体12に対してボックス開閉部13を閉じた状態をロックする施錠状態と、そのロックを解除した開錠状態との間を、外部の端末との無線通信によって切り替えることができる。本実施形態の電子錠部17は、バッテリ(電池)で駆動される制御部(CPUを含む)、種々の機能を実現するための電子回路、および施錠のためのロック機構を有している。ロック機構はモータを利用したものや自己保持ソレノイドを利用したものが使用可能である。
【0051】
高輝度LED18は本実施形態における庫内照明部を構成するデバイスであり、覗き窓16を通して、外部からボックス内部を撮影する際にボックス内部を照明するためのものである。この例では高輝度LED18を2個用いているが、個数は特に限定されるものではない。
【0052】
また、特に図示しないが、宅配ボックス10の盗難を防止するために、宅配ボックス10を家屋の一部に固定したり鎖で連結したりしてもよい。
【0053】
このような宅配ボックス10は、図2に示すような宅配システムの一構成要素として機能する。この宅配システムは、宅配ボックス10と、ユーザ端末20と、業者端末30と、サーバ(管理サーバ)40とにより構成される。
【0054】
宅配ボックス10は、ブルートゥース(BLUETOOTH)(登録商標)、特に低消費電力のBluetooth Low Energy(BLE)のような近距離無線通信を介して、外部のユーザ端末20および業者端末30と無線通信を行う。
【0055】
ユーザ端末20は、宅配ボックス10に係るユーザのスマートフォン、タブレット等の携帯情報端末である。宅配ボックス10とユーザ端末20の組み合わせはユーザ宅25毎に存在しうる。
【0056】
業者端末30は、宅配業者の配達員が所持する携帯情報端末である。
【0057】
サーバ40は、複数のユーザ宅25の個々の宅配ボックス10を管理するためのコンピュータであり、インターネット等の通信ネットワーク27を介して、ユーザ端末20および業者端末30と接続される。
【0058】
図3は、宅配ボックス10の概略構成を示すブロック図である。
【0059】
宅配ボックス10は、制御部100、バッテリ101、第1のスイッチ103、第2のスイッチ105、電源回路部109、ボックス開閉部開閉検出部111、覗き窓開閉検出部113、庫内照明部115、記憶部121、近距離無線通信部123、庫内温度測定部125、開錠/施錠駆動部127、覗き窓駆動部128および音出力部129を備えて構成される。
【0060】
制御部100は、CPUや暗号・復号モジュールを含み、宅配ボックス10の動作を司る部位である。
【0061】
バッテリ101は宅配ボックス10の動作電力を提供する電池である。バッテリ切れに備えて、バッテリ101の出力に代えて、非常用外部電源入力107が利用可能とされている。
【0062】
電源回路部109は、バッテリ101の電圧を所望の電圧に変換して制御部100および必要な各部へ提供する部位である。
【0063】
第1のスイッチ103は、利用者による宅配ボタン14の押下時にバッテリ101の出力を電源回路部109へ一時的に導通させるモーメンタリスイッチである。
【0064】
第2のスイッチ105は、第1のスイッチ103に並列に接続され、制御部100の制御下で通常オフ状態にあり、利用者により宅配ボタン14が押下されることによるモーメンタリスイッチ103の一時的なオン動作に応じてオン状態となり、その後、宅配ボックス10の処理(開錠/施錠動作)の終了に伴ってオフ状態に戻るスイッチである。
【0065】
このような第1のスイッチ103および第2のスイッチ105により、宅配ボックス10の開錠/施錠動作時以外は待機電流すら流れることなく、完全な電源オフ状態となる。また、利用者による電源オフのし忘れも回避される。これによって、バッテリ101の電力消費が抑制され、バッテリ101の使用可能期間の長時間化が可能となる。
【0066】
ボックス開閉部開閉検出部111は、ボックス本体12に対してボックス開閉部13が閉鎖されているか否か検出する部位であり、その出力は制御部100へ入力される。その動作原理は機械的、光学的、磁気的等、任意である。
【0067】
覗き窓開閉検出部113は、覗き窓16の開閉の別を検出する部位であり、その出力は制御部100へ入力される。「覗き窓16の開閉」の手段には機械的な開閉手段に限らず、光学的な開閉手段等の他の手段も含むものとする。
【0068】
庫内照明部115は、前述したような高輝度LED等の照明用の発光デバイスである。
【0069】
記憶部121は、制御部100に接続され、データを不揮発的に記憶する不揮発性メモリ等のデバイスである。
【0070】
近距離無線通信部123は、制御部100の制御下で近距離にある端末等との間で近距離無線通信を行う部位であり、好ましくはピアツーピア動作を行うことができるデバイスである。本実施形態ではBLEの使用を想定している。
【0071】
庫内温度測定部125は、宅配ボックス10内の温度を測定する部位であり、その出力は制御部100へ入力される。庫内温度測定部125はユーザ端末20のような外部の端末からの要求に応じて起動され、測定結果は当該端末へ返される。
【0072】
開錠/施錠駆動部127は、制御部100の制御下で動作する電子錠部17の開錠/施錠のための機能部である。
【0073】
覗き窓駆動部128は、制御部100の制御下で動作する覗き窓16の開閉動作(透明化/不透明化を含む)やロック動作等を行う機能部であり、後述するシャッタ機構、ロック機構、調光フィルム等を含みうる。
【0074】
音出力部129は、制御部100の制御下で開錠/施錠に伴って動作音や音声等の音を発生する部位である。好ましくは、施錠時と開錠時とで異なる音を発生する。
【0075】
図4に、電子錠部17に含まれるロック機構の構成例を示す。このロック機構は、モータ51、減速ギア53(ギア53a,53b)、ねじ軸54、可動テーブル57および軸受部59を有する。ねじ軸54、可動テーブル57および軸受部59はボールねじ55を構成する。ロック機構は、その動作時、モータ51が回転し、この回転が減速ギア53で減速されてボールねじ55に伝達され、このボールねじ55の回転動作がナット部57aの直線動作に変換されることにより、可動テーブル57がボールねじ55に沿って移動する。モータ51の回転方向に応じて、可動テーブル57の棒状部57bがボックス本体12に設けられた凹部(図示せず)に突出/後退することにより、宅配ボックス10(の電子錠部17)の開錠/施錠動作が実現される。モータ51が停止したとき、その電源がオフされても可動テーブル57の位置は変わらず維持される。この代わりに、自己保持ソレノイドを用いてもよい。自己保持ソレノイドは電磁的な動作原理により同様の開錠/施錠動作を実現するデバイスであり、永久磁石を利用することにより、コイルに電流が流れていないときでも、永久磁石によって可動鉄芯の吸引状態を保つことができる。
【0076】
図5により施錠状態表示部15の構成例を説明する。この施錠状態表示部15は、電子錠部17の開錠/施錠動作に連動する可動部材を備え、この可動部材の動作に応じて開錠/施錠状態を色表示するものである。具体的には例えば、図4に示した電子錠部17のロック機構におけるボールねじ55のねじ軸54に対して、可動テーブル57とは別の可動テーブル58を設けるとともに、軸受部59に開口または透明部材製の窓15aを設ける。この窓15aの背景には「開錠」を示す色(ここでは青)を施しておく。他方、可動テーブル58のスライド部58bの少なくとも窓15aに面する箇所には「施錠」を示す色(ここでは赤)を施しておく。このような構成により、窓15aには開錠時には青、施錠時には赤の表示色が現れる。このような機械的な表示機構を利用することにより、宅配ボックス10が完全電源オフの状態でも施錠(または開錠)状態を正しく表示し続けることができる。
【0077】
図6により、覗き窓16の構成例を説明する。覗き窓16のサイズは、少なくとも、端末のカメラでボックス内部の撮影ができる大きさである。この覗き窓16は手動による機械的なシャッタ機構60を用いるものである。このシャッタ機構60は、覗き窓16に重ねるようにボックス開閉部13上に配置された透明部材63に対して、これとほぼ同サイズの不透明部材61を透明部材63上にスライド可能に保持したものである。不透明部材61には利用者が手動でスライド操作するためのノブ(操作部)62が付与されている。好ましくは、この不透明部材61で透明部材63を完全に遮蔽した状態を検知する覗き窓開閉検出部113が設けられる。この覗き窓開閉検出部113は、上述したボックス開閉部開閉検出部111と同様に、その動作原理は機械的、光学的、磁気的等、任意である。
【0078】
また、このシャッタ機構60のロック手段として、不透明部材61で透明部材63を完全に遮蔽した状態をロックするシャッタロック機構127aが設けられる。このシャッタロック機構127aとしては、上述したモータを利用したものや自己保持ソレノイドを利用したものが使用可能である。
【0079】
覗き窓16としては機械的な手段の変形例として他の構成も可能である。特に図示しないが、例えば、上述したようなモータ駆動のボールねじに係合するナット部に機械的なシャッタとしてのシャッタプレートを固定しておき、ボールねじに係合したナット部の移動とともにシャッタプレートが移動するという構成例も採用可能である。このシャッタプレートが覗き窓16を覆うときボックス内部の視認が遮断され、覗き窓16の前から後退したとき視認が許容されるものである。
【0080】
図7に本実施形態における覗き窓16の他の構成例を示す。覗き窓16による宅配ボックス内部の視認を遮断する手段として機械的な手段に代えて、図7は調光フィルム19を利用する例を示している。この例では、覗き窓16に光透過を制御できる調光フィルム19が設置される。調光フィルム19は電気的な制御により透明化/不透明化される(透明状態と不透明状態とを切り替えることができる)フィルムである。必須ではないが、この例では調光フィルム19に対して、視認方向19bに沿って庫内を広角に視認できるようにするためのレンズ19aを配置している。これにより、通常、配達物の上部に貼付された伝票の記載事項やコード情報(バーコードや2次元コード等)の全体を撮影できる。本明細書では、調光フィルム19の透明状態/非透明状態の切り替えを便宜上、覗き窓16の開閉の概念に含める。
【0081】
図8は、本実施形態における宅配システムの構成要素間の公開鍵暗号方式(例えばRSA)の鍵の関係および概略の通信データの授受の様子を示した図である。
【0082】
サーバ40内には、データの暗号化および復号を行う暗号・復号モジュール41と、宅配ボックス10毎の宅配ボックス識別情報としての宅配ボックス番号#1~#Nおよびこれに対応づけられた秘密鍵A1~ANおよび公開鍵B1~BNが保持される。宅配ボックス10内には、暗号・復号モジュール11と、その宅配ボックス番号#Nおよびこれに対応づけられた公開鍵ANおよび秘密鍵BNが保持される。宅配ボックス10内の公開鍵ANとサーバ40内の秘密鍵ANとが公開鍵暗号システムにおける1対の鍵を構成している。同様に、宅配ボックス10内の秘密鍵BNとサーバ40内の公開鍵BNとが公開鍵暗号システムにおける1対の鍵を構成している。基本的に、公開鍵暗号システムにおける公開鍵は情報を暗号化するために用いられ、その公開鍵に対応する秘密鍵はその公開鍵で暗号化された情報を復号するために用いられる。宅配ボックス10内の公開鍵ANと秘密鍵BNとは宅配ボックス10の出荷時または事後的に宅配ボックス10の記憶部121内に保存される。
【0083】
ユーザ端末20内には、暗号・復号モジュール21と、このユーザに係る宅配ボックス10の宅配ボックス番号#Nおよび秘密鍵ANおよび公開鍵BNが保持される。これらの宅配ボックス番号#Nおよび秘密鍵ANおよび公開鍵BNは初期設定時にユーザ端末20に保存される。そのために、宅配ボックス10のユーザは、宅配ボックス10の使用に先立って、ユーザ端末20を用いて所定の初期設定を行う。この初期設定および以後の宅配ボックス10の使用のための専用のアプリ(アプリケーションプログラム)を、通信ネットワーク27上の所定のサイトからダウンロードしてユーザ端末20内にインストールすることができる。但し、専用のアプリは必須ではなく、所定のウェブサイトなどにその都度ログインして所要の動作を行うことも可能である。
【0084】
初期設定において、ユーザはユーザ端末20に、メインのユーザ(マスター)の氏名、住所、電話番号、メールアドレス等のユーザ情報を入力し、サーバ40へ初期設定認証要求を発する(S201)。(宅配ボックス10の設置場所が住所と異なる場合には、設置場所も入力する。)これに応じてサーバ40は、受信した宅配ボックス番号#Nが正規の番号であること、および、未だユーザ情報が登録されていないこと等を確認する。この際、サーバ40は、宅配ボックス10に割り当てられた仮ユーザIDや仮パスワードの入力を求めるようにしてもよい。このような確認がなされた後、サーバ40は当該宅配ボックス番号#Nに対応づけて当該ユーザのユーザ情報を登録し、認証および登録がなされた旨の認証応答をユーザ端末20へ返す(S202)。この初期設定時に、当該ユーザによる以後のサーバアクセスのために、ユーザのログインIDおよびパスワードの登録も行う。
【0085】
次いで、ユーザ端末20はサーバ40へ鍵要求を発し(S203)、これに応じてサーバ40は当該宅配ボックス番号#Nに対応した秘密鍵ANおよび公開鍵BNをユーザ端末20に返す(S204)。これに併せて、サーバ40から当該ユーザへ初期設定(登録)が完了した旨のメールまたはメッセージを送信するようにしてもよい。
【0086】
ユーザ端末20は受信した秘密鍵ANおよび公開鍵BNを当該当該宅配ボックス番号#Nとともに内部に保存する。
【0087】
さらに宅配ボックス10側の初期設定として、ユーザが宅配ボックス10の宅配ボタン14を操作(例えば長押し)することにより、宅配ボックス10からユーザ端末20へ初期設定情報要求を行い(S211)、これに応じてユーザ端末20が初期設定情報を返送する(S212)。この初期設定情報は例えば上述したユーザ情報を含み、宅配ボックス10はこの初期設定情報を受けて、内部の記憶部121に保存する。これで、初期設定が完了する。
【0088】
結局、宅配ボックス10が内部に保持する情報は、宅配ボックス番号#N、メインのユーザ(マスター)の氏名、住所、電話番号(携帯電話番号)、メールアドレス、公開鍵AN、秘密鍵BN等である。
【0089】
なお、複数のユーザが同じ宅配ボックス10を利用する場合、同様の手順でユーザの追加登録を行うことが可能である。ただし、セキュリティの観点から、最初のユーザ(マスター)が予め登録した他のユーザのID(携帯電話番号等)のみの登録が許可されるようにすることが好ましい。
【0090】
その後、ユーザが宅配ボックス10の開錠または施錠(以下、「開錠/施錠」と表記)を行いたいときに、登録済のユーザ端末20で専用アプリ等を起動した状態でユーザ端末20を宅配ボックス10の近くに置いて(ユーザが所持して)、宅配ボックス10の宅配ボタン14を押す。これにより、宅配ボックス10の制御部100が近距離無線通信部123により認証要求暗号文を発出する(S213)。この認証要求暗号文は認証要求を公開鍵ANで暗号化したものである。ここでの「認証要求」は相手端末を認証するための要求である。
【0091】
ユーザ端末20は認証要求暗号文を受信し、これを自身の保持する秘密鍵ANで復号する。さらに、これに応じてユーザ端末20は認証応答を用意し、これを公開鍵BNで暗号化した認証応答暗号文を発出する(S214)。ここでの「認証応答」はユーザ端末自身の認証のための情報であり、ユーザ端末20が保持しているユーザ情報(の一部)等、例えば、ユーザ端末20が保持している宅配ボックス番号#Nやユーザの携帯電話番号等である。
【0092】
宅配ボックス10は、認証応答暗号文を受信して秘密鍵BNで復号して得られた認証応答の情報が所定の条件に合致したとき、当該端末からの開錠/施錠要求を許可する。具体的には、認証応答の情報が宅配ボックス10の保持する情報と一致すること、当該ユーザ端末20が宅配ボックス10に登録済であること等を確認した後、相手端末に指示を要求する指示要求を公開鍵ANで暗号化した指示要求暗号文を発出する(S215)。ユーザ端末20はこの指示要求暗号文を秘密鍵ANで復号して指示要求を認識し、開錠/施錠指示を公開鍵BNで暗号化した開錠/施錠指示暗号文を発出する(S216)。宅配ボックス10はこの開錠/施錠指示暗号文を秘密鍵BNで復号して得られた開錠/施錠指示に応じて電子錠部17の開錠/施錠を実行する。
【0093】
ここに「開錠/施錠指示」は、「開錠」指示、「施錠」指示、またはトグル指示のいずれかである。「トグル」指示とは、電子錠の状態を反転する指示、すなわち、指示の時点での状態が「施錠」状態であれば開錠を要求し、「開錠」状態であれば施錠を要求する指示である。但し、トグル指示は必ずしも無くてもよい。
【0094】
本実施形態において業者端末30には業者を識別するための情報である業者IDを保持する。業者端末30は何らの公開鍵および秘密鍵を保持せず、暗号・復号に関与しない。
【0095】
業者による配達物の配達時に宅配人は宅配ボックス10の開錠/施錠を行いたい場合、まず、宅配ボタン14を押す。これにより、宅配ボックス10は上述したような認証要求暗号文を発出する(S221)。この認証要求暗号文を受けた業者端末30は、この暗号文に自身の業者ID等の業者端末電文(業者IDを含む)を付加してサーバ40へ送信する(S231)。業者端末30がサーバ40に情報を送出する際の送出先情報(例えばIPアドレス)は宅配ボックス10が予め保持しておき、宅配ボックス10が発出する認証要求暗号文に送出先情報を付加する。送出先情報は暗号化しない。サーバのIPアドレスを業者端末30が保持している場合には、宅配ボックス10が発出する認証要求暗号文に送出先情報を付加する必要はない。
【0096】
認証要求暗号文を受信したサーバ40は、認証要求暗号文を当該宅配ボックス番号Nの秘密鍵ANでこれを復号し、当該宅配ボックス番号Nが登録済であることを確認するとともに業者端末電文が正当であることを確認した上で所定の認証応答を作成して、これを公開鍵BNで暗号化し、認証応答暗号文として業者端末30へ返送する(S232)。ここでの認証応答には、サーバ40の識別情報(例えばIPアドレス)、当該宅配ボックス番号や業者ID等の情報を含みうる。
【0097】
この認証応答暗号文を受けた業者端末30はこれをそのまま宅配ボックス10へ送信する(S222)。
【0098】
宅配ボックス10は、受信した認証応答暗号文を自身の秘密鍵BNで復号し、得られた認証応答の情報が所定の条件に合致したとき、業者開錠/施錠要求を発出する(S223)。所定の条件に合致したときとは、例えば、サーバ40からの情報に基づいてサーバ40の識別情報(例えばIPアドレス)、当該宅配ボックス番号や業者ID等の情報が宅配ボックス10に保存しているそれらの情報と一致することを確認できたときである。これに対して業者端末30は業者情報応答を返す(S224)。この業者情報応答には、開錠/施錠要求、業者ID、宅配識別情報(伝票番号や送り状番号等)、配達物や配達住所等の配達情報を含みうる。
【0099】
次いで宅配ボックス10は、開錠/施錠指示要求を公開鍵ANで暗号化した開錠/施錠指示要求暗号文を発出する(S225)。開錠/施錠指示要求は外部の端末に対して開錠/施錠指示を要求する(許可する)メッセージである。これを受信した業者端末30はこの開錠/施錠指示要求暗号文に業者端末電文(業者IDを含む)を付加してサーバ40宛へ送信する(S233)。サーバ40は受信した開錠/施錠指示要求暗号文を秘密鍵ANで復号し、登録済の宅配ボックス番号および既知の業者IDからの開錠/施錠指示要求であることを確認した後、当該宅配ボックス番号とともに開錠/施錠指示を公開鍵BNで暗号化した開錠/施錠指示暗号文を生成し、当該業者端末30へ返送する(S234)。
【0100】
業者端末30はこの開錠/施錠指示暗号文を宅配ボックス10に転送する(S226)。宅配ボックス10はこの開錠/施錠指示暗号文を秘密鍵BNで復号し、サーバ40から自身への指示であることを確認して開錠/施錠指示を実行する。
【0101】
この間、業者端末30は暗号化/復号に全く関与しておらず、初期登録を行っていない外部の端末が不正に宅配ボックス10の操作に関与することはできない。
【0102】
なお、本実施形態において認証要求暗号文S213と認証要求暗号文S221とは同じ内容で区別が付かないものであり、この段階で宅配ボックス10には相手端末がユーザ端末20か業者端末30ひいてはサーバ40かは認識していない。相手端末からの応答内容に基づいて、当該相手端末がユーザ端末20か業者端末30かを認識する。すなわち、相手端末がユーザ端末20である場合、認証応答および開錠/施錠要求の生成およびそれらの暗号化を当該ユーザ端末20が実行する。これに対し、相手端末が業者端末30である場合、認証要求は業者端末30がサーバ40へ転送するとともに、業者端末30が接続されたサーバ40が認証応答および開錠/施錠要求の生成およびそれらの暗号化を実行し、認証応答および開錠/施錠要求の暗号文を業者端末30が当該宅配ボックス10へ返送する。
【0103】
この宅配システムにおける構成要素間の電文(メッセージ)は、例えば、次のような項目を含みうる。電文は暗号化される部分とそうでない部分を含みうる。
【0104】
a.電文タイプ(要求 応答 認証 などのタイプ)
b.電文長 (これ以降の文のサイズ)
c.送出先アドレス (サーバIPアドレス)
d.送信元アドレス (宅配ボックス番号)
e.暗号文の中身
f.宅配ボックス番号
g.送信元住所
h. CRC32等の エラー補正コード(暗号文を含めた全体のCRC)
【0105】
業者端末30の出力する電文については、電文タイプを業者電文タイプとして、業者ID、配達情報等の追加情報を含みうる。
【0106】
図9により、本実施形態におけるユーザ端末20の画面例を説明する。
【0107】
図9(a)は、サーバ40から、または宅配業者からユーザ端末20へ送信された電子メールまたはメッセージが表示されたユーザ端末20の画面例を示している。この例では、ユーザ宛の宅配便の配達物がユーザの宅配ボックス10内に収納され、配達が完了した旨を知らせるテキストとして、「ユーザ登録された端末を宅配ボックスの近くにおいて「宅配ボタン」を押してください。」という操作指示71が表示されている。専用アプリを用いている場合、サーバ40からのプッシュ通知に応じて、ユーザをこの画面に導くことができる。
【0108】
図9(b)は図9(a)の通知とともに採用される専用アプリの画面例である。この画面には、サーバ40や宅配ボックス10からの通知が表示される通知欄72、集荷依頼ボタン74、初期設定ボタン75、庫内温度測定ボタン76が表示されている。
【0109】
通知欄72には、通知の内容が表示される。業者による配達物の配達があった場合にはその旨の通知がなされ、これによりユーザは図9(a)の画面へ導かれる。但し、図9(a)の画面を表示しなくても、ユーザ端末20が宅配ボックス10に近接することにより、宅配ボックス10の宅配ボタン押下により宅配ボックス10の開錠がなされる。通知欄72における宅配ボックス10内への宅配完了の通知は、その後のユーザによる開錠操作に応じて消去される。通知欄72における通知は最新のものが表示され、古い通知はその日時情報とともに履歴に残される。この履歴は図示しない操作によりユーザが確認可能である。
【0110】
集荷依頼ボタン74は、ユーザ宅の宅配ボックス10を利用した配達物の集荷を宅配業者に依頼するためにユーザが操作するボタンである。ユーザはこのボタンを押下(タッチ)することにより、集荷依頼画面(図示せず)が開き、この画面から複数の宅配業者の中から希望する業者を選択して、集荷依頼をすることができる。この依頼指示はサーバ40を経由して、当該宅配業者へ通知される。
【0111】
初期設定ボタン75は、宅配ボックス10の初期設定を行うためにユーザが操作するボタンであり、このボタンを押下することにより上述したような初期設定動作が行える。
【0112】
庫内温度測定ボタン76は、このボタンが押下された時点で、宅配ボックス10の庫内温度測定部125が内部の温度を測定してユーザ端末20の画面上に測定値を表示するための操作ボタンである。この庫内温度測定は当然ながら宅配ボックス10の電源がオンしている期間内のみ有効である。宅配ボックス10が保冷対応の場合、受領する予定の配達物が要冷蔵品であり、かつ、配達完了後に直ちに取り出せないようなとき、ユーザは配達に先立って庫内に保冷剤を入れておくことが可能である。このような場合、保冷剤を入れた後の時点や配達物の取り出し時点で、庫内温度を確認することができる。また、宅配人が配達物とともに保冷剤を入れる場合には、ユーザは配達物の取り出し時に庫内温度を確認することにより、宅配ボックス内での保存温度を測定することができる。
【0113】
図9(c)は、図9(b)に代わる画面例である。この画面例では、開錠/施錠ボタン73を設けている。開錠/施錠ボタン73は、ユーザが宅配ボックス10の開錠/施錠状態を交互に切り替えるためのトグル指示を行う操作ボタンである。他のボタンは図9(b)と同じであり、説明を省略する。
【0114】
図9(d)は、さらに別の画面例を示している。この画面例では、開錠/施錠ボタン73に代えて、独立した開錠ボタン73aと施錠ボタン73bを設けている点で図9(c)の画面と異なる。他のボタンは図9(c)と同じであり、説明を省略する。
【0115】
なお、ユーザは、上記のような通知がなくても、また、宅配ボックス10内に宅配物が入っていない空の状態であっても、宅配ボックス10の開錠および施錠を行うことが可能である。
【0116】
<実施形態の動作例>
以下、具体的な動作モードにおける宅配ボックス10および宅配システムの動作例を説明する。個別の動作モードとしては、配達時開錠モード、配達時施錠モード、ユーザ開錠/施錠モード、集荷時開錠モード、および集荷時施錠モードがあり、それぞれのプロセスについて具体的な処理ステップを説明する。本実施形態におけるすべての動作モードのプロセスは宅配ボタン14が押下されることにより開始される。
【0117】
図10は配達時開錠プロセスの具体的な処理ステップを示したシーケンス図である。これは、業者の配達時に目的の宅配ボックス10が施錠されている場合に宅配人が宅配ボックス10を開錠するプロセスである。配達時に宅配ボックス10が開錠状態にあれば、このプロセスは省略することができる。
【0118】
配達時開錠プロセスでは、宅配人が宅配ボタン14を押すと(S11)、宅配ボックス10の電源がオンされ、動作が起動される(S12)。このとき、業者端末30と宅配ボックス10の間でBLEのペアリングが行われ、近距離無線通信の接続がなされる。
【0119】
宅配ボックス10はまず、上述の認証要求暗号文を発出する(S13)。これを受信した業者端末30はこの認証要求暗号文に業者端末電文(業者IDを含む)を付加して通信ネットワーク27経由でサーバ40へ送信する(S14)。サーバ40はこれを受信し、認証要求暗号文を秘密鍵ANで復号(解読)し、当該宅配ボックス番号Nが登録済であることを確認するとともに業者端末電文が正当であることを確認した上で所定の認証応答を作成し、これを公開鍵BNで暗号化した認証応答暗号文を生成して(S15)、業者端末30へ返送する(S16)。ここでの認証応答には、サーバ40の識別情報(例えばIPアドレス)、当該宅配ボックス番号や業者ID等の情報を含みうる。この認証応答暗号文は業者端末30が近距離無線通信によりこれをそのまま宅配ボックス10へ転送する(S17)。
【0120】
宅配ボックス10は受信した認証応答暗号文を秘密鍵BNで復号(解読)し(S18)、得られた認証応答の情報が所定の条件に合致したとき、当該端末からの開錠/施錠要求を許可する。所定の条件に合致したときとは、例えば、サーバ40からの情報に基づいてサーバ40の識別情報(例えばIPアドレス)、当該宅配ボックス番号や業者ID等の情報が宅配ボックス10に保存しているそれらの情報と一致することを確認できたときである。そのために、まず、業者開錠/施錠情報要求を発出する。ここでの業者開錠/施錠情報要求は、現在宅配ボックス10が施錠状態にあるので、業者開錠情報要求となる(S19)。この際、宅配ボックス10は、自身が施錠状態にあることは電子錠部17により認識できる。電子錠部17にそのような機能がない場合には、現在の状態をフラグとして記憶部121に記憶しておく。業者端末30は業者開錠情報要求に応じて、業者情報応答を返す(S20)。上述したように、この業者情報応答には、開錠/施錠要求(ここでは開錠要求)、業者ID、宅配識別情報(伝票番号や送り状番号等)、配達物や配達住所等の配達情報を含みうる。
【0121】
業者情報応答を受信した宅配ボックス10は、開錠指示要求を生成し、これを公開鍵ANで暗号化した開錠指示要求暗号文を発出する(S21)。この開錠指示要求には、宅配ボックス番号、業者ID、配達情報等を含む。開錠指示要求を受信した業者端末30はこの開錠指示要求暗号文に業者端末電文(業者IDを含む)を付加してサーバ40宛へ送信する(S22)。サーバ40はこれを受信し、秘密鍵ANで開錠指示要求暗号文を復号(解読)し(S23)、内容を確認して一時保存した後、開錠指示を公開鍵BNで暗号化した開錠指示暗号文を当該業者端末30へ返送する(S24)。この開錠指示暗号文には少なくとも当該宅配ボックス番号を含みうる。業者端末30はこの開錠指示暗号文をそのまま宅配ボックス10に転送する(S25)。
【0122】
宅配ボックス10はこの開錠指示暗号文を秘密鍵BNで復号して、自身への指示であることを確認して開錠指示を実行する(S26)。その後、宅配ボックス10は自身の宅配ボックス番号を含む開錠完了応答を発出し(S27)、業者端末30がこれをサーバ40へ転送する(S28)。これを受けたサーバ40は当該宅配ボックス10の開錠が完了したことを認識し、当該宅配ボックス10について上記一時保存した情報を含めて開錠完了記録を行う(S29)。その後、サーバ40は開錠完了ACKを業者端末30へ送出し(S30)、業者端末30がこれを宅配ボックス10へ転送する(S31)。宅配ボックス10はこれを受けて電源をオフする(S32)。
【0123】
宅配人は、宅配ボックス10が開錠状態に変化したことを音出力部129の音出力により認識できるとともに、施錠状態表示部15により宅配ボックス10が開錠状態になったことを即座に視認することができる。
【0124】
上述したように、このようなプロセスの間、業者端末30は暗号化/復号に全く関与しておらず、初期登録を行っていない外部の端末が不正に宅配ボックス10の操作に関与することはできない。後述する他の動作モードのプロセスにおいても同様である。
【0125】
なお、宅配ボックス10内に既に他の配達物が収納され、未だユーザによる取り出しがなされていない場合、宅配ボックス10は宅配人による開錠を拒否するようにしてもよい。そのためには例えば、ステップS19の業者開錠情報要求の発出の前提として、直前の配達時施錠プロセス(後述)後にユーザの開錠プロセスが行われていることを確認することができる。
【0126】
図11は配達時施錠プロセスの具体的な処理ステップを示したシーケンス図である。これは、業者の配達時に宅配人が配達物を宅配ボックス10に収納した後に、宅配ボックスを施錠するプロセスである。
【0127】
配達時施錠プロセスでは、宅配人が宅配ボタン14を押すと(S41)、宅配ボックス10の電源がオンされ、動作が起動される(S42)。このとき、業者端末30と宅配ボックス10の間の近距離無線通信のペアリングは保存されており直ちに接続がなされる。但し、配達時に宅配ボックス10が開錠状態にあった場合に、業者端末30が初めて当該宅配ボックス10に接続するときには、両者間の近距離無線通信はBLEのペアリングから開始される。
【0128】
宅配ボックス10はまず、上述の認証要求暗号文を発出する(S43)。これを受信した業者端末30はこの認証要求暗号文に業者端末電文(業者IDを含む)を付加して通信ネットワーク27経由でサーバ40へ送信する(S44)。サーバ40はこれを受信し、認証要求暗号文を秘密鍵ANで復号(解読)し、当該宅配ボックス番号Nが登録済であることを確認するとともに業者端末電文が正当であることを確認した上で所定の認証応答を作成し、これを公開鍵BNで暗号化した認証応答暗号文を生成して(S45)、業者端末30へ返送する(S46)。ここでの認証応答には、サーバ40の識別情報(例えばIPアドレス)、当該宅配ボックス番号や業者ID等の情報を含みうる。業者端末30は近距離無線通信によりこれをそのまま宅配ボックス10へ転送する(S47)。
【0129】
宅配ボックス10は受信した認証応答暗号文を秘密鍵BNで復号(解読)し(S48)、得られた認証応答の情報が所定の条件に合致したとき、当該端末からの開錠/施錠要求を許可する。所定の条件に合致したときとは、例えば、サーバ40からの情報に基づいてサーバ40の識別情報(例えばIPアドレス)、当該宅配ボックス番号や業者ID等の情報が宅配ボックス10に保存しているそれらの情報と一致することを確認できたときである。そのために、まず、業者開錠/施錠情報要求を発出する。ここでの業者施錠/施錠情報要求は、現在宅配ボックス10が開錠状態にあるので、業者施錠情報要求となる(S49)。この際、宅配ボックス10は、自身が施錠状態にあることは電子錠部17により認識できる。電子錠部17にそのような機能がない場合には、現在の状態をフラグとして記憶部121に記憶しておく。業者端末30は業者施錠情報要求に応じて、業者情報応答を返す(S50)。上述したように、この業者情報応答には、開錠/施錠要求(ここでは施錠要求)、業者ID、宅配識別情報(伝票番号や送り状番号等)、配達物や配達住所等の配達情報を含みうる。
【0130】
業者情報応答を受信した宅配ボックス10は、施錠指示要求を生成し、これを公開鍵ANで暗号化した施錠指示要求暗号文を発出する(S51)。この施錠指示要求には、宅配ボックス番号、業者ID、配達情報等を含む。施錠指示要求を受信した業者端末30はこの施錠指示要求暗号文に業者端末電文(業者IDを含む)を付加してサーバ40宛へ送信する(S52)。サーバ40はこれを受信し、秘密鍵ANで施錠指示要求暗号文を復号(解読)し(S53)、内容を確認して一時保存した後、施錠指示を公開鍵BNで暗号化した施錠指示暗号文を当該業者端末30へ返送する(S54)。この施錠指示暗号文には少なくとも当該宅配ボックス番号を含みうる。業者端末30はこの施錠指示暗号文をそのまま宅配ボックス10に転送する(S55)。
【0131】
宅配ボックス10はこの施錠指示暗号文を秘密鍵BNで復号して、自身への指示であることを確認して施錠指示を実行する(S56)。この際、施錠の前提として、宅配ボックス10が閉鎖状態にあることをボックス開閉部開閉検出部111により確認するようにしてもよい。宅配人は、宅配ボックス10が施錠状態に変化したことを音出力部129の音出力により認識できるとともに、施錠状態表示部15により宅配ボックス10が施錠状態になったことを即座に視認することができる。
【0132】
その後、宅配ボックス10は映像取込要求を発出し(S57)、業者端末30は宅配人に配達物の撮影を指示する。このとき、宅配ボックス10は庫内照明部115を点灯する。覗き窓16の開閉が制御部100の制御による場合には、制御部100により覗き窓16を開放する。覗き窓16の開閉が手動の場合には宅配人に手動で覗き窓16のロック状態を解除し、覗き窓16を開放させる。宅配ボックス10の内部の配達物が覗き窓16を介して撮影されると、業者端末30はこの映像(撮影画像)をサーバ40へ送信する(S58)。この映像には宅配識別情報や宅配ボックス番号、撮影日時等の他の情報を付加してもよい。
【0133】
この映像を受けたサーバ40は、施錠が完了したことを認識するとともに、当該宅配識別情報および当該宅配ボックス10に対応づけて、上記一時保存した情報を含めて、この映像を保存する(S59)。これは当該宅配サービスが無事完了したことの証拠となる。その後、サーバ40は窓施錠指示を業者端末30へ送出し(S60)、業者端末30がこれを宅配ボックス10へ転送する(S61)。宅配ボックス10はこれを受けて、覗き窓16を閉鎖・施錠(またはロック)し、その後に電源をオフする(S62)。その際、覗き窓16の開放が制御部100の制御による場合には制御部100の指示に応じて覗き窓駆動部108により閉鎖が行われる。手動の場合には宅配人が覗き窓16を閉鎖し、覗き窓開閉検出部113により閉鎖が検出された後、覗き窓駆動部108により覗き窓16のロックが行われる。
【0134】
図12はユーザ開錠/施錠プロセスの具体的な処理ステップを示したシーケンス図である。これは、ユーザが自身の宅配ボックス10を開錠/施錠するプロセスである。
【0135】
このユーザ開錠/施錠プロセスでは、ユーザが宅配ボタン14を押すと(S71)、宅配ボックス10の電源がオンされ、動作が起動される(S72)。このとき、ユーザ端末20と宅配ボックス10の間でBLEのペアリングは初期設定時に実行済であり、直ちに近距離無線通信の接続がなされる。
【0136】
宅配ボックス10はまず、上述の認証要求暗号文を発出する(S73)。これを受信したユーザ端末20はこの認証要求暗号文を秘密鍵ANで復号(解読)し、受信した宅配ボックス番号が自身のものと一致することを確認した後、認証応答を生成してこれを公開鍵BNで暗号化した認証応答暗号文を生成し(S74)、これを宅配ボックス10へ返送する(S75)。
【0137】
宅配ボックス10は、受信した認証応答暗号文を秘密鍵BNで解読し(S76)、得られた認証応答の情報が所定の条件に合致したとき、当該端末からの開錠/施錠要求を許可する。所定の条件に合致したときとは、例えば、ユーザ端末20からの情報に基づいて、受信した宅配ボックス番号が自身の宅配ボックス番号と一致すること、ユーザ端末20が登録済みのユーザ端末であること等を確認できたときである。次いで、ユーザ開錠/施錠要求を公開鍵ANで暗号化したユーザ開錠/施錠要求暗号文を発出する(S77)。ここでのユーザ開錠/施錠要求は、現在宅配ボックス10の現在の開錠/施錠状態を反転するトグル指示を要求するものである。ユーザ端末20はこれに応じて、開錠/施錠指示としてトグル指示を公開鍵BNで暗号化した開錠/施錠指示暗号文を生成し(S78)、これを宅配ボックス10へ返す(S79)。この開錠/施錠指示には当該宅配ボックス番号を含んでもよい。
【0138】
宅配ボックス10はこの開錠/施錠指示暗号文を秘密鍵BNで復号して、自身への指示であることを確認して開錠/施錠指示を実行する(S80)。施錠の際、その前提として、宅配ボックス10が閉鎖状態にあることをボックス開閉部開閉検出部111により確認するようにしてもよい。その後、宅配ボックス10は自身の宅配ボックス番号を含む開錠/施錠完了応答を発出する(S81)。これを受けたユーザ端末20は開錠/施錠動作が完了したことを認識し、開錠/施錠完了表示を行う(S82)。次いで完了ACKを宅配ボックス10へ返す(S83)。宅配ボックス10はこれを受けて電源をオフする(S84)。ユーザは、宅配ボックス10の開錠/施錠状態が変化したことを音出力部129の音出力により認識できるとともに、施錠状態表示部15により宅配ボックス10が施錠状態にあるか開錠状態にあるかを即座に視認することができる。
【0139】
なお、ユーザ端末20は、トグル指示に代えて、業者端末30の場合と同様に、開錠指示または施錠指示を個別に指定するようにしてもよい。
【0140】
図13は集荷時開錠プロセスの具体的な処理ステップを示したシーケンス図である。これは、業者の集荷時に集荷対象の配達物が収納され施錠された宅配ボックス10を開錠するプロセスである。
【0141】
集荷時開錠プロセスでは、宅配人が宅配ボタン14を押すと(S91)、宅配ボックス10の電源がオンされ、動作が起動される(S92)。このとき、業者端末30と宅配ボックス10の間でBLEのペアリングが行われ、近距離無線通信の接続がなされる。
【0142】
宅配ボックス10はまず、上述の認証要求暗号文を発出する(S93)。これを受信した業者端末30はこの認証要求暗号文に業者端末電文(業者IDを含む)を付加して通信ネットワーク27経由でサーバ40へ送信する(S94)。サーバ40はこれを受信し、認証要求暗号文を秘密鍵ANで復号(解読)し、当該宅配ボックス番号Nが登録済であることを確認するとともに業者端末電文が正当であることを確認した上で所定の認証応答を作成し、これを公開鍵BNで暗号化した認証応答暗号文を生成し(S95)、業者端末30へ返送する(S96)。ここでの認証応答には、サーバ40の識別情報(例えばIPアドレス)、当該宅配ボックス番号や業者ID等の情報を含みうる。業者端末30は近距離無線通信によりこれをそのまま宅配ボックス10へ転送する(S97)。
【0143】
宅配ボックス10は受信した認証応答暗号文を秘密鍵BNで復号(解読)し(S98)、得られた認証応答の情報が所定の条件に合致したとき、当該端末からの開錠/施錠要求を許可する。所定の条件に合致したときとは、例えば、サーバ40からの情報に基づいてサーバ40の識別情報(例えばIPアドレス)、当該宅配ボックス番号や業者ID等の情報が宅配ボックス10に保存しているそれらの情報と一致することを確認できたときである。そのために、まず、業者開錠/施錠情報要求を発出する。ここでの業者開錠/施錠情報要求は、現在宅配ボックス10が施錠状態にあるので、業者開錠情報要求となる(S99)。この際、宅配ボックス10は、自身が施錠状態にあることは電子錠部17により認識できる。電子錠部17にそのような機能がない場合には、現在の状態をフラグとして記憶部121に記憶しておく。業者端末30は業者開錠情報要求に応じて、業者情報応答を返す(S100)。上述したように、この業者情報応答には、開錠/施錠要求(ここでは開錠要求)、業者ID、宅配識別情報(伝票番号や送り状番号等)、配達物や配達住所等の配達情報(集荷情報)を含む。
【0144】
業者情報応答を受信した宅配ボックス10は、開錠指示要求を生成し、これを公開鍵ANで暗号化した開錠指示要求暗号文を発出する(S101)。この開錠指示要求には、宅配ボックス番号、業者ID、配達情報(集荷情報)等を含む。開錠指示要求を受信した業者端末30はこの開錠指示要求暗号文に業者端末電文(業者IDを含む)を付加してサーバ40宛へ送信する(S102)。サーバ40はこれを受信し、秘密鍵ANで開錠指示要求暗号文を復号(解読)し(S103)、内容を確認して一時保存した後、開錠指示を公開鍵BNで暗号化した開錠指示暗号文を当該業者端末30へ返送する(S104)。この開錠指示暗号文には少なくとも当該宅配ボックス番号を含みうる。業者端末30はこの開錠指示暗号文をそのまま宅配ボックス10に転送する(S105)。
【0145】
宅配ボックス10はこの開錠指示暗号文を秘密鍵BNで復号して、自身への指示であることを確認して開錠指示を実行する(S106)。その後、宅配ボックス10は自身の宅配ボックス番号を含む開錠完了応答を発出し(S107)、業者端末30がこれをサーバ40へ転送する(S108)。これを受けたサーバ40は開錠が完了したことを認識し、当該宅配ボックス10について上記一時保存した情報を含めて開錠完了記録を行う(S109)。その後、サーバ40は開錠完了ACKを業者端末30へ送出し(S110)、業者端末30がこれを宅配ボックス10へ転送する(S111)。宅配ボックス10はこれを受けて電源をオフする(S112)。
【0146】
宅配人は、宅配ボックス10が開錠状態に変化したことを音出力部129の音出力により認識できるとともに、施錠状態表示部15により宅配ボックス10が開錠状態になったことを即座に視認することができる。
【0147】
図14は集荷時施錠プロセスの具体的な処理ステップを示したシーケンス図である。これは、業者の集荷時に集荷対象の配達物が取り出された後に宅配ボックス10を施錠するプロセスである。集荷対象の配達物を宅配ボックス10から取り出した後の施錠が不要である場合には、この集荷時施錠プロセスは不要である。
【0148】
この集荷時施錠プロセスでは、宅配人(集荷人)が宅配ボタン14を押すと(S121)、宅配ボックス10の電源がオンされ、動作が起動される(S122)。このとき、業者端末30と宅配ボックス10の間での近距離無線通信のペアリングおよび接続が行われる。
【0149】
その後、宅配ボックス10はまず、上述の認証要求暗号文を発出する(S123)。これを受信した業者端末30はこの認証要求暗号文に業者端末電文(業者IDを含む)を付加して通信ネットワーク27経由でサーバ40へ送信する(S124)。サーバ40はこれを受信し、認証要求暗号文を秘密鍵ANで復号(解読)し、当該宅配ボックス番号Nが登録済であることを確認するとともに業者端末電文が正当であることを確認した上で所定の認証応答を作成し、これを公開鍵BNで暗号化した認証応答暗号文を生成して(S125)、業者端末30へ返送する(S126)。ここでの認証応答には、サーバ40の識別情報(例えばIPアドレス)、当該宅配ボックス番号や業者ID等の情報を含みうる。業者端末30は近距離無線通信によりこれをそのまま宅配ボックス10へ転送する(S127)。
【0150】
宅配ボックス10は受信した認証応答暗号文を秘密鍵BNで復号(解読)し(S128)、得られた認証応答の情報が所定の条件に合致したとき、当該端末からの開錠/施錠要求を許可する。所定の条件に合致したときとは、例えば、サーバ40からの情報に基づいてサーバ40の識別情報(例えばIPアドレス)、当該宅配ボックス番号や業者ID等の情報が宅配ボックス10に保存しているそれらの情報と一致することを確認できたときである。そのために、まず、業者開錠/施錠情報要求を発出する。ここでの業者開錠/施錠情報要求は、現在、宅配ボックス10が開錠状態にあるので、業者施錠情報要求となる(S129)。この際、宅配ボックス10は、自身が施錠状態にあることは電子錠部17により認識できる。電子錠部17にそのような機能がない場合には、現在の状態をフラグとして記憶部121に記憶しておく。業者端末30は業者施錠情報要求に応じて、業者情報応答を返す(S130)。上述したように、この業者情報応答には、開錠/施錠要求(ここでは施錠要求)、業者ID、宅配識別情報(伝票番号や送り状番号等)、配達物や配達住所等の配達情報(集荷情報)を含む。
【0151】
業者情報応答を受信した宅配ボックス10は、施錠指示要求を生成し、これを公開鍵ANで暗号化した施錠指示要求暗号文を発出する(S131)。この施錠指示要求には、宅配ボックス番号、業者ID、配達情報(集荷情報)等を含む。施錠指示要求を受信した業者端末30はこの施錠指示要求暗号文に業者端末電文(業者IDを含む)を付加してサーバ40宛へ送信する(S132)。サーバ40はこれを受信し、秘密鍵ANで施錠指示要求暗号文を復号(解読)し(S133)、内容を確認して一時保存した後、施錠指示を公開鍵BNで暗号化した施錠指示暗号文を当該業者端末30へ返送する(S134)。この施錠指示暗号文には少なくとも当該宅配ボックス番号を含みうる。業者端末30はこの施錠指示暗号文をそのまま宅配ボックス10に転送する(S135)。
【0152】
宅配ボックス10はこの施錠指示暗号文を秘密鍵BNで復号して、自身への指示であることを確認して施錠指示を実行する(S136)。この際、施錠の前提として、宅配ボックス10が閉鎖状態にあることをボックス開閉部開閉検出部111により確認するようにしてもよい。その後、宅配ボックス10は自身の宅配ボックス番号を含む施錠完了応答を発出し(S137)、業者端末30がこれをサーバ40へ転送する(S138)。これを受けたサーバ40は、当該宅配ボックス10について施錠が完了したことを認識し、当該宅配ボックス10について上記一時保存した情報を含めて施錠完了記録を行う(S139)。その後、サーバ40は施錠完了ACKを業者端末30へ送出し(S140)、業者端末30がこれを宅配ボックス10へ転送する(S141)。宅配ボックス10はこれを受けて電源をオフする(S142)。
【0153】
宅配人は、宅配ボックス10が開錠状態に変化したことを音出力部129の音出力により認識できるとともに、施錠状態表示部15により宅配ボックス10が施錠状態になったことを即座に視認することができる。
【0154】
<実施形態の効果>
本実施形態の宅配ボックスの利用により、業者による再配達の必要性、配達物の対面手渡しの必要性を大幅に軽減することができる。
【0155】
この宅配ボックスは電池で動作するので、電源の引き込みが不要であり、設置が簡単である。
【0156】
公開鍵暗号方式を利用することにより、宅配ボックスはユーザ端末との間、およびサーバとの間でメッセージを暗号化することにより、ユーザ以外の不正な開錠/施錠を防止したり業者のなりすまし等を防止したりすることができるセキュリティの高い宅配ボックスを実現することが可能となる。その際、業者端末には暗号化/復号にいっさい関与させないことにより、配達人のなりすまし等の不正を防止することができる。
【0157】
宅配ボックスと端末との間で近距離無線通信による通信を行うことにより、宅配ボックスに伝票の読み取り装置やテンキー入力部などを設けることなく、また、利用者が暗証番号(パスワード)等の入力操作を行うことなく、自動車のキーレスエントリー的な開錠/施錠動作を行うことが可能となる。
【0158】
宅配ボックスの開錠/施錠等の動作はすべて宅配ボックスに設けた宅配ボタンを押下することにより電源オン(起動)され、当該動作の終了後に自動的に電源オフされるので、バッテリ駆動の宅配ボックスの消費電力を抑制し、バッテリの寿命を伸ばすことができる。特に、第1のスイッチと第2のスイッチの組み合わせにより、電源オフ時には待機電流すら流さず、完全な消費電力ゼロ状態を達成できる。電源オフは自動的に行われるので、電源オフのし忘れを防止できる。その結果、バッテリ駆動で長期間の運用に耐える宅配ボックスを実現することができる。
【0159】
また、業者による配達完了時に、覗き窓16を介して宅配ボックスの外から内部の配達物を撮影して、納品した状態を撮影画像として記録することができるので、受取人の受領印による受取確認に代えることが可能となる。
【0160】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記の構成および動作に関して、特に支障が生じない限り、種々の変形、変更、追加、削除等を行うことが可能である。
【0161】
例えば、本実施形態の宅配ボックスを用いた宅配サービスは、一定の期間当たりの所定額(例えば月額○円)の使用料をユーザに課金するというようないわゆるサブスクリプションサービスとして提供することができる。
【0162】
ユーザ端末20がGPS(Global Positioning Satellite, 全地球測位システム)機能を備える場合、宅配ボックス10の利用時のユーザ情報にユーザ端末20の位置情報を含めてもよい。
【0163】
バッテリを長寿命化するための第1および第2の2つのスイッチ構成は、本実施形態の宅配ボックスに用いて好適であるが、必ずしも宅配ボックスの用途に限られるものではない。また、宅配ボックスの用途においても上述した他の特徴とは独立に成立しうる特徴である。
【符号の説明】
【0164】
10 宅配ボックス
10 ユーザ端末
11 暗号・復号モジュール
12 ボックス本体
12a 開口部
13 ボックス開閉部
14 宅配ボタン(電源ボタン)
15 施錠状態表示部
15a 窓
16 覗き窓
17 電子錠部
19 調光フィルム
19a レンズ
19b 視認方向
20 ユーザ端末
21 暗号・復号モジュール
25 ユーザ宅
27 通信ネットワーク
30 業者端末
40 サーバ
41 暗号・復号モジュール
51 モータ
53 減速ギア
57 可動テーブル
57a ナット部
57b 棒状部
58 可動テーブル
58b スライド部
59 軸受部
60 シャッタ機構
61 不透明部材
63 透明部材
71 操作指示
72 通知欄
73 開錠/施錠ボタン
73a 開錠ボタン
73b 施錠ボタン
74 集荷依頼ボタン
75 初期設定ボタン
76 庫内温度測定ボタン
100 制御部
101 バッテリ
103 第1のスイッチ(モーメンタリスイッチ)
105 第2のスイッチ(半導体スイッチ)
107 非常用外部電源入力
109 電源回路部
111 ボックス開閉部開閉検出部
113 覗き窓開閉検出部
115 庫内照明部
121 記憶部
123 近距離無線通信部
125 庫内温度測定部
127 開錠/施錠駆動部
127a シャッタロック機構
128 覗き窓駆動部
129 音出力部
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