(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】粒子加速器および粒子線治療装置
(51)【国際特許分類】
H05H 13/04 20060101AFI20240520BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H05H13/04 Q
H05H13/04 G
H05H13/04 E
A61N5/10 H
(21)【出願番号】P 2022532265
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003180
(87)【国際公開番号】W WO2021260988
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2020108088
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】水島 康太
(72)【発明者】
【氏名】白井 敏之
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-022776(JP,A)
【文献】特開2014-053194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 13/04
A61N 5/10
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを周回ビームとして周回させながら加速し、前記周回ビームの一部を出射ビームとして出射する粒子加速器であって、
偏向電磁石を有する複数の偏向部と、
前記偏向電磁石を有さない複数の直線部と、
制御部と、
を備え、
前記複数の直線部には、
前段の出射用偏向器を有する第一の直線部と、
前記第一の直線部よりも前記周回ビームの進行方向の下流側に配置され、四極電磁石を有する第二の直線部と、
前記第二の直線部よりも前記周回ビームの進行方向の下流側に配置され、後段の出射用偏向器を有する第三の直線部とが含まれ、
前記複数の偏向部には、
前記第一の直線部と前記第二の直線部とを接続する第一の偏向部と、
前記第二の直線部と前記第三の直線部とを接続する第二の偏向部とが含まれ、
前記前段の出射用偏向器は、前記周回ビームの周回軌道の内側および外側の一方に向けて前記周回ビームの一部を偏向して前記出射ビームに分離し、
前記後段の出射用偏向器は、前記前段の出射用偏向器によって前記周回ビームから分離された前記出射ビームを、前記周回ビームの周回軌道の内側および外側の他方に向けて偏向し、
前記制御部は、
前記出射ビームのベータトロン振動の位相進度が、前記前段の出射用偏向器から前記後段の出射用偏向器までの区間で270±45度となるように、
少なくとも前記四極電磁石を制御する、
粒子加速器。
【請求項2】
前記制御部は、
前記出射ビームのベータトロン振動の位相進度が、前記前段の出射用偏向器から前記後段の出射用偏向器までの区間で270±45度となるように、少なくとも前記四極電磁石を制御し、
前記出射ビームが、前記第一の偏向部における前記周回ビームの通過領域の近傍を通過するように、かつ、前記出射ビームが、前記第二の偏向部における前記周回ビームの通過領域を通過するか、あるいは、前記第二の偏向部における前記周回ビームの通過領域の近傍を通過するように、かつ、前記出射ビームが、前記第三の直線部における前記周回ビームの通過領域から離れた位置を通過するように、前記前段の出射用偏向器を制御する、
請求項1に記載の粒子加速器。
【請求項3】
前記第一の直線部と前記第三の直線部とは、前記周回ビームの周回軌道上における互いに対向する位置に配置されている、
請求項1または請求項2に記載の粒子加速器。
【請求項4】
前記第一の直線部と前記第三の直線部とは、互いに平行に延びている、
請求項3に記載の粒子加速器。
【請求項5】
前記複数の偏向部のそれぞれは、前記偏向電磁石と偏向部用四極電磁石とを有するか、または、前記偏向電磁石と四極磁場用コイルとを一体化したものである偏向部用四極磁場生成機構とを有し、
前記複数の直線部のそれぞれは、前記四極電磁石を有し、
前記制御部は、
前記出射ビームのベータトロン振動の位相進度が、前記前段の出射用偏向器から前記後段の出射用偏向器までの区間で270±45度となるように、
前記複数の偏向部のそれぞれの前記偏向部用四極電磁石の励磁量または前記偏向部用四極磁場生成機構の励磁量と、前記複数の直線部のそれぞれの前記四極電磁石の励磁量とを調整する、
請求項1に記載の粒子加速器。
【請求項6】
前記制御部は、
前記出射ビームのベータトロン振動の位相進度が、前記前段の出射用偏向器から前記後段の出射用偏向器までの区間で270±45度となるように、前記複数の偏向部のそれぞれの前記偏向部用四極電磁石の励磁量または前記偏向部用四極磁場生成機構の励磁量と、前記複数の直線部のそれぞれの前記四極電磁石の励磁量とを調整し、
前記出射ビームが、前記第一の偏向部における前記周回ビームの通過領域の近傍を通過するように、かつ、前記出射ビームが、前記第二の偏向部における前記周回ビームの通過領域を通過するか、あるいは、前記第二の偏向部における前記周回ビームの通過領域の近傍を通過するように、かつ、前記出射ビームが、前記第三の直線部における前記周回ビームの通過領域から離れた位置を通過するように、前記前段の出射用偏向器の電場強度を調整する、
請求項5に記載の粒子加速器。
【請求項7】
前記複数の直線部のそれぞれは、前記四極電磁石を有し、
前記制御部は、
前記出射ビームのベータトロン振動の位相進度が、前記前段の出射用偏向器から前記後段の出射用偏向器までの区間で270±45度となるように、
前記複数の直線部のそれぞれの前記四極電磁石を調整する、
請求項1に記載の粒子加速器。
【請求項8】
前記制御部は、
前記出射ビームのベータトロン振動の位相進度が、前記前段の出射用偏向器から前記後段の出射用偏向器までの区間で270±45度となるように、前記複数の直線部のそれぞれの前記四極電磁石を調整し、
前記出射ビームが、前記第一の偏向部における前記周回ビームの通過領域の近傍を通過するように、かつ、前記出射ビームが、前記第二の偏向部における前記周回ビームの通過領域を通過するか、あるいは、前記第二の偏向部における前記周回ビームの通過領域の近傍を通過するように、かつ、前記出射ビームが、前記第三の直線部における前記周回ビームの通過領域から離れた位置を通過するように、前記前段の出射用偏向器の電場強度を調整する、
請求項7に記載の粒子加速器。
【請求項9】
前記第一の偏向部による前記荷電粒子ビームの偏向角が60度以上である、
請求項1に記載の粒子加速器。
【請求項10】
前記第一の偏向部と前記第二の偏向部とによる前記荷電粒子ビームの合計の偏向角が180度である、
請求項1または請求項9に記載の粒子加速器。
【請求項11】
前記第一の直線部および前記第三の直線部のそれぞれは、前記四極電磁石を有し、
前記前段の出射用偏向器は、前記第一の直線部の前記四極電磁石よりも前記周回ビームの進行方向の下流側に配置され、
前記後段の出射用偏向器は、前記第三の直線部の前記四極電磁石よりも前記周回ビームの進行方向の下流側に配置されている、
請求項1に記載の粒子加速器。
【請求項12】
前記第一の直線部の前記四極電磁石は、前記周回ビームの進行方向における前記第一の直線部の略中央に配置され、
前記第三の直線部の前記四極電磁石は、前記周回ビームの進行方向における前記第三の直線部の略中央に配置されている、
請求項1に記載の粒子加速器。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の粒子加速器と、
前記粒子加速器から前記出射ビームとして取り出された前記荷電粒子ビームを輸送し、照射対象に照射する照射装置とを備える粒子線治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子加速器および粒子線治療装置に関する。
本願は、2020年6月23日に、日本に出願された特願2020-108088号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
粒子加速器は、高エネルギーの荷電粒子を生成するための装置として、科学、産業、医療などの様々な分野において広く使われている。粒子線治療の分野では、限られたスペースで高いエネルギーまで荷電粒子を加速できることから、円形加速器が現在採用されている。また、粒子線治療施設の導入コストを低減する目的で、超伝導技術を用いて粒子線治療装置を小型化する例が増えてきている。高磁場の超伝導電磁石を用いれば、高エネルギーの荷電粒子も短い曲率半径で偏向することができるため、円形加速器の小型化が可能となる。粒子線治療装置の中で円形加速器が占める設置面積は大きく、粒子線治療装置の小型化のために超伝導電磁石を円形加速器に用いることは非常に効果的である。
円形加速器の1つであるシンクロトロンは、電磁石が発生する磁場で荷電粒子ビームを偏向して周回させながら高周波加速空洞で加速エネルギーを与え、荷電粒子ビームのエネルギー変化に合わせて電磁石の発生磁場を高めることで、荷電粒子ビームの安定な周回軌道を維持しつつ様々なエネルギーに荷電粒子ビームを加速し、出射用偏向器でシンクロトロンの外に取り出す(出射する)ことができる。シンクロトロンを周回する荷電粒子ビームは加速されてエネルギーが変化しても同じ軌道を通るため、電磁石等の1つ1つの構成機器は比較的小型であり、高いエネルギーの荷電粒子の生成には効率が良く、適している。
【0003】
従来から、シンクロトロンの小型化を図るために、短い直線部と曲率の大きい曲線部とからなる全体がほぼ正方形のシンクロトロンが提案されている。このようなシンクロトロンでは、各直線部が短いため曲線部の上流側の直線部には、周回ビームから出射ビームを分離する前段の出射用偏向器が設けられ、その曲線部の下流側の直線部には、周回ビームから分離された出射ビームを外部に取り出す後段の出射用偏向器が設けられている。一方、曲率の大きな曲線部では、冷却手段を必要とする超伝導電磁石等の偏向電磁石が設けられる。
【0004】
図9はこのような従来の粒子加速器およびこのような従来の粒子加速器が適用された粒子線治療装置を示す図である。
図10は
図9に示す従来例における周回ビーム131の通過領域(
図10のハッチング部分)と出射ビーム132の軌道との関係を示す図である。
図10において、S軸方向は周回ビーム131の進行方向を示している。S軸に直交する平面に含まれるX軸は、偏向電磁石102の偏向方向に対応している。S軸に直交する平面に含まれるY軸は、X軸に直交している。
シンクロトロン(粒子加速器)100の小型化に際しては、加速された高エネルギービームを損失なく取り出す(出射する)ことが大きな課題となる。効果的な小型化を行うためには、偏向電磁石102を高磁場化して偏向部121を短くするだけではなく、直線部111、112も合わせて短くしなければいけない。しかし、出射ビーム132を損失なくシンクロトロン(粒子加速器)100の外に取り出すためには、前段の出射用偏向器108で出射ビーム132と周回ビーム131を分離し、後段の出射用偏向器109でシンクロトロン(粒子加速器)100の外まで出射ビーム132を大きく曲げる必要があるが、これらを行うには、前段の出射用偏向器108および後段の出射用偏向器109のそれぞれを配置するための長いスペースが必要であるため、直線部111、112を短くすることと相反してしまう。
そのため、小型化を目指した
図9に示す従来のシンクロトロン(粒子加速器)100では、前段の出射用偏向器108および後段の出射用偏向器109を2つの直線部(第一の直線部111および第二の直線部112)に分けて配置する構成が採用されていた。具体的には、前段の出射用偏向器108が第一の直線部111に配置され、第一の偏向部121が第一の直線部111の下流に接続され、第一の偏向部121は、1台の偏向電磁石102によって、ないしは、2台以上の偏向電磁石102と短直線部との組み合わせによって構成される。また、第一の偏向部121の下流の第二の直線部112には、後段の出射用偏向器109が配置される。
しかし、この方法では、
図10に示すように、ビーム損失を避けるために後段の出射用偏向器109の位置で周回ビーム131と出射ビーム132が大きく分離されていることが条件であるため、出射ビーム132を前段の出射用偏向器108で大きく偏向することが求められ、そうした場合、第一の偏向部121での出射ビーム132の軌道は、周回ビーム131の通過領域(
図10のハッチング部分)から大きく逸れたものとなってしまう。第一の偏向部121の偏向電磁石102は、この中心軌道から大きく離れた出射ビーム132も輸送しなければならず、必然的に第一の偏向部121の偏向電磁石102の磁場生成領域を大幅に広げることになる。その結果、第一の偏向部121の偏向電磁石102の大型化・高コスト化が避けられず、特に、第一の偏向部121の偏向電磁石102として超伝導電磁石を用いる場合には、磁場生成領域の拡幅は製作難度やコスト、冷却を含めた運転コストを各段に高めるため、大きな課題となっていた。
【0005】
詳細には、この方法では、湾曲した形状の第一の偏向部121の偏向電磁石102によって、周回ビーム131から大きく外れた出射ビーム132を第一の偏向部121の湾曲した形状に沿って偏向しなければならないため、第一の偏向部121に設けられる超伝導電磁石等の偏向電磁石102の磁場生成領域を大幅に広げる必要があり、コストがかかる上に大型化してしまう。
【0006】
特に、
図9に示すような小型のシンクロトロン(粒子加速器)100では、機器数を減らしてスペース効率を上げるため、第一の直線部111および第二の直線部112のような直線部と、第一の偏向部121のような偏向部との組を少なくすることが重要であり、直線部と偏向部との組は6組以内、理想的には4組以内にすることが望ましい。そうした場合、1つの偏向部あたりの荷電粒子ビームの偏向角も大きくなり、偏向電磁石102による荷電粒子ビームの収束作用が強まってしまうため、前段の出射用偏向器108は出射ビーム132を周回ビーム131の中心軌道(
図10のハッチング部分)からより大きく逸らすことが求められ、偏向電磁石102の磁場生成領域をさらに広げる結果となってしまう。
また、出射ビーム132が周回ビーム131の中心軌道から大きく逸れた軌道を通ることによって生じる別の問題として、偏向電磁石102が生成する非線形磁場成分の影響を強く受けることにより、出射ビーム132の粒子分布形状が歪んでしまうことがある。広範囲で生成磁場の均一性を保つことは非常に難しいため、一般的には、電磁石の中心から離れるほど理想的な磁場分布との誤差が大きくなり、非線形な磁場成分が加わる。荷電粒子ビームが電磁石の中心からそれほど離れていない位置を通過する場合には非線形磁場成分によるビーム分布への影響は小さいが、荷電粒子ビームが電磁石の中心から大きく離れた軌道を通る場合には非線形磁場成分が荷電粒子ビームに与える影響は大きく、照射ビーム302の分布形状が歪むことになる(
図11(B)参照)。
【0007】
図11は照射ビーム302の理想的な二次元断面分布などを説明するための図である。詳細には、
図11(A)は荷電粒子ビームが電磁石の中心を通過し、照射ビーム302の二次元断面分布302aの形状が歪んでいない例を示している。
図11(B)は荷電粒子ビームが電磁石の中心から大きく離れた軌道を通過し、照射ビーム302の二次元断面分布302a’の形状が歪んでいる例を示している。
図11(A)および
図11(B)のX軸は
図10のX軸に対応し、
図11(A)および
図11(B)のY軸は
図10のY軸に対応している。
図11(A)に示す照射ビーム302の二次元断面分布302aの形状が歪んでいない例では、照射ビーム302の二次元断面分布302aの形状が円形であり、照射ビーム302の水平方向射影プロファイル302bの形状と垂直方向射影プロファイル302cの形状とがほぼ同一である。
図11(B)に示す照射ビーム302の二次元断面分布302a’の形状が歪んでいる例では、照射ビーム302の二次元断面分布302a’の形状が非円形であり、照射ビーム302の水平方向射影プロファイル302b’の形状と垂直方向射影プロファイル302c’の形状とが異なる。
図11(B)に示す例のように、強い非線形磁場成分の影響を受けた二次元断面分布302a’を有する照射ビーム302が粒子線治療に用いられる場合、線量誤差が大きくなり、正常組織の損傷を増やす原因になるおそれがある。
上述した課題を解決するために、本発明者等は、特許文献1に記載された手法を提案した。
【0008】
特許文献1に記載された技術では、特許文献1において符号6で示される偏向電磁石の直前に、符号8cで示される第2の出射デフレクタが設けられ、符号8aで示される第1の出射デフレクタ(前段の出射用偏向器)により、符号10で示される周回ビームから分離された、符号11で示される出射ビームを、符号8cで示される第2の出射デフレクタにより、周回ビームの中心軌道に向けて蹴り入れることで、符号6で示される偏向電磁石において出射ビームが周回ビームの中心軌道を斜めに横切った後、符号7で示される収束電磁石により、再度、周回ビームの中心軌道に向けて曲げられ、符号8bで示される最終の出射デフレクタ(後段の出射用偏向器)により、出射ビームがシンクロトロンの外部に取り出される。これにより、特許文献1に記載された技術では、符号6で示される偏向電磁石において、冷却手段を必要とする超伝導電磁石等の偏向電磁石の磁場生成領域を小型化することができる。
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、符号6で示される偏向電磁石の上流側の直線部に、出射ビームを周回ビームの中心軌道に向けて蹴り入れるための第2の出射デフレクタを設ける必要があるため、符号6で示される偏向電磁石の上流側の直線部と、これに対向する直線部とが長くなり、シンクロトロン全体が大型化してしまう。
【0009】
また、特許文献2および特許文献3には、シンクロトロンおよびシンクロトロンを用いた粒子線治療システムについて記載されている。
詳細には、特許文献3の段落0007には、第1出射用偏向器と第2出射用偏向器の位相差を90度近傍になるように設計する旨が記載されている。また、特許文献3の段落0010には、第1出射用偏向器と第2出射用偏向器までの位相進みを90度+180度×n近傍とする必要がある旨が記載されている。更に、特許文献3の段落0025には、第1出射用偏向器と第3出射用偏向器の位相差を180°近傍に取る旨が記載されている。
一方、特許文献1~特許文献3に記載された技術によっては、出射ビームの粒子分布形状を適切にしつつ、コスト等を抑制してシンクロトロンを小型化することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2016-081729号公報
【文献】特開2012-234805号公報
【文献】特開2012-022776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した点に鑑み、本発明は、小型化を達成することができる粒子加速器および粒子線治療装置を提供することを目的とする。
詳細には、本発明は、偏向部の偏向電磁石に求められる磁場生成領域を縮小し、偏向電磁石にかかわるコスト全般を低減しつつ粒子加速器の小型化を達成することができる粒子加速器および粒子線治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る粒子加速器は、荷電粒子ビームを周回ビームとして周回させながら加速し、前記周回ビームの一部を出射ビームとして出射する粒子加速器であって、偏向電磁石を有する複数の偏向部と、前記偏向電磁石を有さない複数の直線部と、制御部と、を備え、前記複数の直線部には、前段の出射用偏向器を有する第一の直線部と、前記第一の直線部よりも前記周回ビームの進行方向の下流側に配置され、四極電磁石を有する第二の直線部と、前記第二の直線部よりも前記周回ビームの進行方向の下流側に配置され、後段の出射用偏向器を有する第三の直線部とが含まれ、前記複数の偏向部には、前記第一の直線部と前記第二の直線部とを接続する第一の偏向部と、前記第二の直線部と前記第三の直線部とを接続する第二の偏向部とが含まれ、前記前段の出射用偏向器は、前記周回ビームの周回軌道の内側および外側の一方に向けて前記周回ビームの一部を偏向して前記出射ビームに分離し、前記後段の出射用偏向器は、前記前段の出射用偏向器によって前記周回ビームから分離された前記出射ビームを、前記周回ビームの周回軌道の内側および外側の他方に向けて偏向し、前記制御部は、前記出射ビームのベータトロン振動の位相進度が、前記前段の出射用偏向器から前記後段の出射用偏向器までの区間で270±45度となるように、少なくとも前記四極電磁石を制御する。
【0013】
本発明の一態様に係る粒子加速器では、前記制御部は、前記出射ビームのベータトロン振動の位相進度が、前記前段の出射用偏向器から前記後段の出射用偏向器までの区間で270±45度となるように、少なくとも前記四極電磁石を制御し、前記出射ビームが、前記第一の偏向部における前記周回ビームの通過領域の近傍を通過するように、かつ、前記出射ビームが、前記第二の偏向部における前記周回ビームの通過領域を通過するか、あるいは、前記第二の偏向部における前記周回ビームの通過領域の近傍を通過するように、かつ、前記出射ビームが、前記第三の直線部における前記周回ビームの通過領域から離れた位置を通過するように、前記前段の出射用偏向器を制御してもよい。
【0014】
本発明の一態様に係る粒子加速器では、前記第一の直線部と前記第三の直線部とは、前記周回ビームの周回軌道上における互いに対向する位置に配置されていてもよい。
【0015】
本発明の一態様に係る粒子加速器では、前記第一の直線部と前記第三の直線部とは、互いに平行に延びていてもよい。
【0016】
本発明の一態様に係る粒子加速器では、前記複数の偏向部のそれぞれは、前記偏向電磁石と偏向部用四極電磁石とを有するか、または、前記偏向電磁石と四極磁場用コイルとを一体化したものである偏向部用四極磁場生成機構を有し、前記複数の直線部のそれぞれは、前記四極電磁石を有し、前記制御部は、前記出射ビームのベータトロン振動の位相進度が、前記前段の出射用偏向器から前記後段の出射用偏向器までの区間で270±45度となるように、前記複数の偏向部のそれぞれの前記偏向部用四極電磁石の励磁量または前記偏向部用四極磁場生成機構の励磁量と、前記複数の直線部のそれぞれの前記四極電磁石の励磁量とを調整してもよい。これにより、制御部により制御する調整要素(パラメータ)が増えるため、より精度の高い制御が可能である。
【0017】
本発明の一態様に係る粒子加速器では、前記制御部は、前記出射ビームのベータトロン振動の位相進度が、前記前段の出射用偏向器から前記後段の出射用偏向器までの区間で270±45度となるように、前記複数の偏向部のそれぞれの前記偏向部用四極電磁石の励磁量励磁量または前記偏向部用四極磁場生成機構の励磁量と、前記複数の直線部のそれぞれの前記四極電磁石の励磁量とを調整し、前記出射ビームが、前記第一の偏向部における前記周回ビームの通過領域の近傍を通過するように、かつ、前記出射ビームが、前記第二の偏向部における前記周回ビームの通過領域を通過するか、あるいは、前記第二の偏向部における前記周回ビームの通過領域の近傍を通過するように、かつ、前記出射ビームが、前記第三の直線部における前記周回ビームの通過領域から離れた位置を通過するように、前記前段の出射用偏向器の電場強度を調整してもよい。
【0018】
本発明の一態様に係る粒子加速器では、前記複数の直線部のそれぞれは、前記四極電磁石を有し、前記制御部は、前記出射ビームのベータトロン振動の位相進度が、前記前段の出射用偏向器から前記後段の出射用偏向器までの区間で270±45度となるように、前記複数の直線部のそれぞれの前記四極電磁石を調整してもよい。
【0019】
本発明の一態様に係る粒子加速器では、前記制御部は、前記出射ビームのベータトロン振動の位相進度が、前記前段の出射用偏向器から前記後段の出射用偏向器までの区間で270±45度となるように、前記複数の直線部のそれぞれの前記四極電磁石を調整し、前記出射ビームが、前記第一の偏向部における前記周回ビームの通過領域の近傍を通過するように、かつ、前記出射ビームが、前記第二の偏向部における前記周回ビームの通過領域を通過するか、あるいは、前記第二の偏向部における前記周回ビームの通過領域の近傍を通過するように、かつ、前記出射ビームが、前記第三の直線部における前記周回ビームの通過領域から離れた位置を通過するように、前記前段の出射用偏向器の電場強度を調整してもよい。
【0020】
本発明の一態様に係る粒子加速器では、前記第一の偏向部による前記荷電粒子ビームの偏向角が60度以上であってもよい。
【0021】
本発明の一態様に係る粒子加速器では、前記第一の偏向部と前記第二の偏向部とによる前記荷電粒子ビームの合計の偏向角が180度であってもよい。
【0022】
本発明の一態様に係る粒子加速器では、前記第一の直線部および前記第三の直線部のそれぞれは、前記四極電磁石を有し、前記前段の出射用偏向器は、前記第一の直線部の前記四極電磁石よりも前記周回ビームの進行方向の下流側に配置され、前記後段の出射用偏向器は、前記第三の直線部の前記四極電磁石よりも前記周回ビームの進行方向の下流側に配置されていてもよい。
【0023】
本発明の一態様に係る粒子加速器では、前記第一の直線部の前記四極電磁石は、前記周回ビームの進行方向における前記第一の直線部の略中央に配置され、前記第三の直線部の前記四極電磁石は、前記周回ビームの進行方向における前記第三の直線部の略中央に配置されていてもよい。
【0024】
本発明の一態様に係る粒子線治療装置は、前記粒子加速器と、前記粒子加速器から前記出射ビームとして取り出された前記荷電粒子ビームを輸送し、照射対象に照射する照射装置とを備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、小型化を達成することができる粒子加速器および粒子線治療装置を提供することができる。
詳細には、本発明によれば、偏向部の偏向電磁石に求められる磁場生成領域を縮小し、偏向電磁石にかかわるコスト全般を低減しつつ粒子加速器の小型化を達成することができる粒子加速器および粒子線治療装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)およびそのシンクロトロンが適用された粒子線治療装置の一例を示す図である。
【
図2】第1実施形態のシンクロトロンの構成の一部を示すブロック図などである。
【
図3】第1実施形態のシンクロトロンにおける周回ビームの通過領域と出射ビームの軌道との関係を示す図である。
【
図4】第1実施形態のシンクロトロンにおいて設定されている出射ビームのベータトロン振動の位相進度の一例を示す図である。
【
図5】第2実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)の一例を示す図である。
【
図6】第3実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)の一例を示す図である。
【
図7】第4実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)の一例を示す図である。
【
図8】第5実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)の一例を示す図である。
【
図9】従来の粒子加速器およびその粒子加速器が適用された粒子線治療装置を示す図である。
【
図10】
図9に示す従来例における周回ビームの通過領域と出射ビームの軌道との関係を示す図である。
【
図11】照射ビームの理想的な二次元断面分布などを説明するための図である。
【
図12】第6実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)の一例を示す図である。
【
図13】第7実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)の一例を示す図である。
【
図14】第2実施形態のシンクロトロンにおける周回ビームの通過領域と出射ビームの軌道との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照し、本発明の粒子加速器および粒子線治療装置の実施形態について説明する。
【0028】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100およびそのシンクロトロン100が適用された粒子線治療装置の一例を示す図である。
図2は第1実施形態のシンクロトロン100の構成の一部を示すブロック図などである。詳細には、
図2の左側部分は、第1実施形態のシンクロトロン100の構成の一部をブロック図で示しており、
図2の右側の最も上側の部分は、偏向電磁石102に流れる電流Iと時間tとの関係を示しており、
図2の右側の上から2番目の部分は、収束用四極電磁石104に流れる電流Iと時間tとの関係を示しており、
図2の右側の下から2番目の部分は、発散用四極電磁石103に流れる電流Iと時間tとの関係を示しており、
図2の右側の最も下側の部分は、前段の出射用偏向器108の電極間の電圧Vと時間tとの関係を示している。
図1に示す例では、第1実施形態のシンクロトロン100が適用された粒子線治療装置が、シンクロトロン100と、入射器201と、照射装置301とを備えている。
入射器201は、荷電粒子を生成して所定のエネルギーに加速した荷電粒子をシンクロトロン100に供給する。入射器201は、例えばイオン源(図示せず)と線形加速器(図示せず)とを備えている。イオン源は、中性ガスに高速の電子を衝突させるなどしてイオンを生成し、線形加速器にてシンクロトロン100で加速可能な状態に加速する。イオン化される原子、粒子としては、例えば、水素、ヘリウム、炭素、窒素、酸素、ネオン、シリコン、アルゴンなどがある。線形加速器は、イオン源から供給される荷電粒子を所定のエネルギーまで加速してシンクロトロン100に供給する。線形加速器としては、例えば、高周波の四極電場によって荷電粒子の加速と集束を行うRFQ(Radio Frequency Quadrupole)ライナックやドリフトチューブライナックが用いられる。線形加速器によって、荷電粒子は、例えば、核子あたり数MeV程度のエネルギーに加速される。
照射装置301は、シンクロトロン100から出射ビーム132(
図3参照)として取り出された荷電粒子ビームを輸送し、照射ビーム302としての荷電粒子ビームを照射対象に照射する。
図1に示す例では、照射野形成装置が照射装置301に含まれているが、他の例では、照射野形成装置と照射装置301とが別個に粒子線治療装置に備えられていてもよい。
【0029】
図1および
図2に示す例では、シンクロトロン100が、入射器201の線形加速器から供給される荷電粒子ビームを周回ビーム131として周回させながら加速し、周回ビーム131の一部を出射ビーム132として出射する。シンクロトロン100は、例えば、入射用偏向器101と、8つの偏向電磁石102と、4つの発散用四極電磁石103と、4つの収束用四極電磁石104と、2つの共鳴励起用多極電磁石105と、高周波加速空洞106と、高周波キッカー装置107と、前段の出射用偏向器108と、後段の出射用偏向器109と、制御部140と、複数の電源150とを備えている。
入射用偏向器101は、入射器201によって入射された荷電粒子ビームを偏向し、周回ビーム131にする。入射用偏向器101は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の偏向電磁石102に接続されている。
偏向電磁石102は、周回ビーム131を偏向する。1つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の発散用四極電磁石103に接続されている。
図1および
図2に示す例では、偏向電磁石102が、四極磁場成分が付加された機能結合型電磁石ではないが、他の例では、偏向電磁石102が、四極磁場成分などが付加された機能結合型電磁石であってもよい。
また、
図1および
図2に示す例では、偏向電磁石102の端部にエッジ角が無いが、他の例では、偏向電磁石102の端部にエッジ角があってもよい。
【0030】
図1および
図2に示す例では、発散用四極電磁石103が、周回ビーム131を水平方向(
図3のX軸方向)に発散、垂直方向(
図3のY軸方向)に収束させる。1つ目の発散用四極電磁石103は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の偏向電磁石102に接続されている。2つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。
収束用四極電磁石104は、周回ビーム131を水平方向に収束、垂直方向に発散させる。1つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された前段の出射用偏向器108に接続されている。
【0031】
前段の出射用偏向器108は、セプタム電極108a(
図3参照)を備えている。セプタム電極108aは、周回ビーム131の周回軌道(
図3のハッチング部分)の内側(周回ビーム131の周回軌道よりも
図3のX軸の負側)に向けて周回ビーム131の一部を偏向して出射ビーム132に分離する。
図1および
図2に示す例では、出射ビーム132は、ビーム損失を極力減らすように薄いセプタム電極108aで構成された静電型装置である前段の出射用偏向器108によって、周回ビーム131と分離するように曲げられる。
図1に示すように、1つ目の収束用四極電磁石104と、前段の出射用偏向器108とは、第一の直線部111に備えられている。1つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向における第一の直線部111の略中央に配置されている。第一の直線部111は、偏向電磁石102を有さない。
図1に示す例では、1つ目の収束用四極電磁石104が、周回ビーム131の進行方向における第一の直線部111の略中央に配置されているため、第一の偏向部121における周回ビーム131と出射ビーム132とを合わせたビーム通過領域を縮小することができ、第一の偏向部121の偏向電磁石102に必要な磁場生成領域を最小化することができる。
他の例では、1つ目の収束用四極電磁石104が、周回ビーム131の進行方向における第一の直線部111の略中央に配置されていなくてもよい。更に他の例では、1つ目の収束用四極電磁石104が第一の直線部111に設けられていなくてもよい。
【0032】
図3は第1実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100における周回ビーム131の通過領域と出射ビーム132の軌道との関係を示す図である。
図3において、S軸方向は周回ビーム131の進行方向を示している。S軸に直交する平面に含まれるX軸は、偏向電磁石102の偏向方向、前段の出射用偏向器108の偏向方向および後段の出射用偏向器109の偏向方向に対応している。
図15は
図1と
図3とを関連付けた図である。
偏向電磁石102、前段の出射用偏向器108および後段の出射用偏向器109のそれぞれの偏向方向は、全てXYS座標系での同一軸方向であり、偏向方向の正負は異なる。X軸は、偏向電磁石102の偏向方向、前段の出射用偏向器108の偏向方向および後段の出射用偏向器109の偏向方向にそれぞれ平行である。S軸に直交する平面に含まれるY軸は、X軸に直交している。
ここで、
図3において、各X軸、Y軸、S軸の交点をOとして示す。特に、限定する必要はないが、シンクロトロン100における周回ビーム131の周回軌道の外側をX軸の正(+)とし、周回ビーム131の周回軌道の内側をX軸の負(-)として表記している。
図3に示すように、1つ目の収束用四極電磁石104によって、周回ビーム131が収束させられ、次いで、前段の出射用偏向器108のセプタム電極108aによって、周回ビーム131の一部が、周回ビーム131の周回軌道(
図3のハッチング部分)の内側(周回ビーム131の周回軌道よりも
図3の下側)に向けて偏向され、出射ビーム132に分離される。
【0033】
図1~
図3に示す例では、前段の出射用偏向器108が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された3つ目の偏向電磁石102に接続されている。3つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の発散用四極電磁石103に接続されている。2つ目の発散用四極電磁石103は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された4つ目の偏向電磁石102に接続されている。
図1および
図3に示すように、3つ目の偏向電磁石102と、2つ目の発散用四極電磁石103と、4つ目の偏向電磁石102とは、第一の偏向部121に備えられている。
図1~
図3に示す例では、2つの偏向電磁石102が第一の偏向部121に備えられているが、他の例では、3つ以上の偏向電磁石102が第一の偏向部121に備えられていてもよい。
図1~
図3に示す例では、短い直線部を構成する1つの発散用四極電磁石103が第一の偏向部121に備えられているが、他の例では、2つ以上の四極電磁石(発散用でなくてもよい)が第一の偏向部121に備えられていてもよい。
更に他の例では、偏向電磁石102と四極磁場用コイルとを一体化したものである偏向部用四極磁場生成機構が第一の偏向部121に備えられていてもよい。
【0034】
図1~
図3に示す例では、4つ目の偏向電磁石102が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。2つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の共鳴励起用多極電磁石105に接続されている。1つ目の共鳴励起用多極電磁石105は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された高周波加速空洞106に接続されている。
図1および
図3に示すように、2つ目の収束用四極電磁石104と、1つ目の共鳴励起用多極電磁石105と、高周波加速空洞106とは、第二の直線部112に備えられている。第二の直線部112は、偏向電磁石102を有さない。
図1~
図3に示す例では、2つ目の収束用四極電磁石104が、周回ビーム131の進行方向における第二の直線部112の略中央に配置されているため、第二の偏向部122における周回ビーム131と出射ビーム132とを合わせたビーム通過領域を縮小することができ、第二の偏向部122の偏向電磁石102に必要な磁場生成領域を最小化することができる。
他の例では、2つ目の収束用四極電磁石104が、周回ビーム131の進行方向における第二の直線部112の略中央に配置されていなくてもよい。更に他の例では、2つ目の収束用四極電磁石104が第二の直線部112に設けられていなくてもよい。
【0035】
図1~
図3に示す例では、高周波加速空洞106が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された5つ目の偏向電磁石102に接続されている。5つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された3つ目の発散用四極電磁石103に接続されている。3つ目の発散用四極電磁石103は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された6つ目の偏向電磁石102に接続されている。
図1および
図3に示すように、5つ目の偏向電磁石102と、3つ目の発散用四極電磁石103と、6つ目の偏向電磁石102とは、第二の偏向部122に備えられている。
図1~
図3に示す例では、2つの偏向電磁石102が第二の偏向部122に備えられているが、他の例では、3つ以上の偏向電磁石102が第二の偏向部122に備えられていてもよい。
図1~
図3に示す例では、短い直線部を構成する1つの発散用四極電磁石103が第二の偏向部122に備えられているが、他の例では、2つ以上の四極電磁石(発散用でなくてもよい)が第二の偏向部122に備えられていてもよい。
更に他の例では、偏向電磁石102と四極磁場用コイルとを一体化したものである偏向部用四極磁場生成機構が第二の偏向部122に備えられていてもよい。
【0036】
図1~
図3に示す例では、6つ目の偏向電磁石102が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された3つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。3つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された後段の出射用偏向器109に接続されている。
後段の出射用偏向器109は、前段の出射用偏向器108によって周回ビーム131から分離された出射ビーム132を、周回ビーム131の周回軌道の外側(
図3のX軸の正側)に向けて偏向する。
図3に示すように、後段の出射用偏向器109によって、出射ビーム132は、周回ビーム131の周回軌道(
図3のハッチング部分)の外側(
図3の上側)に向けて偏向される。
図1および
図3に示すように、3つ目の収束用四極電磁石104と、後段の出射用偏向器109とは、第三の直線部113に備えられている。3つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向における第三の直線部113の略中央に配置されている。第三の直線部113は、偏向電磁石102を有さない。
図1~
図3に示す例では、出射ビーム132をX軸方向に偏向するセプタム電磁石が後段の出射用偏向器109において用いられているが、他の例では、後段の出射用偏向器109において、出射ビーム132をY軸方向に偏向するランバートソン型電磁石が用いられてもよい。
【0037】
図1~
図3に示す例では、3つ目の収束用四極電磁石104が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された7つ目の偏向電磁石102にも接続されている。7つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された4つ目の発散用四極電磁石103に接続されている。4つ目の発散用四極電磁石103は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された8つ目の偏向電磁石102に接続されている。
8つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された高周波キッカー装置107に接続されている。高周波キッカー装置107は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された4つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。4つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の共鳴励起用多極電磁石105に接続されている。2つ目の共鳴励起用多極電磁石105は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された入射用偏向器101に接続されている。
【0038】
図1~
図3に示す例では、シンクロトロン100が、第一の直線部111と、第一の偏向部121と、第二の直線部112と、第二の偏向部122と、第三の直線部113とを備えている。第二の直線部112は、第一の直線部111よりも周回ビーム131の進行方向の下流側に配置され、第三の直線部113は、第二の直線部112よりも周回ビーム131の進行方向の下流側に配置されている。第一の偏向部121は、第一の直線部111と第二の直線部112とを接続し、第二の偏向部122は、第二の直線部112と第三の直線部113とを接続している。
図1に示すように、第一の直線部111と第三の直線部113とは、周回ビーム131の周回軌道上における互いに対向する位置に配置されている。これにより、第一の直線部111と第三の直線部113とを延長する場合に対称性を保つことができる。
また、第一の直線部111と第三の直線部113とは、互いに平行に延びている。これにより、最低限の対称性を保つことができる。
8つの偏向電磁石102のそれぞれは、電源150を介して制御部140によって制御される。4つの収束用四極電磁石104のそれぞれは、電源150を介して制御部140によって制御される。4つの発散用四極電磁石103のそれぞれは、電源150を介して制御部140によって制御される。前段の出射用偏向器108は、電源150を介して制御部140によって制御される。
図2には示していないが、後段の出射用偏向器109も電源150を介して制御部140によって制御される。
【0039】
周回ビーム131の水平方向の広がり(つまり、
図3のX軸とS軸とを含む平面内の広がり)σ
X(s)は、下記式(1)によって表される。式(1)において、βはベータトロン振幅関数であり、εはビームエミッタンスであり、Dは運動量分散関数であり、△p/pはビームの運動量拡がりを示している。
【0040】
【0041】
ベータトロン振動の位相進度△μX[rad]は、下記式(2)によって表される。式(2)において、S1は周回ビーム131の進行方向(S軸方向)における前段の出射用偏向器108の入口の位置を示しており、S2は周回ビーム131の進行方向(S軸方向)における後段の出射用偏向器109の入口の位置を示している。
【0042】
【0043】
図4は第1実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100において設定されている出射ビーム132のベータトロン振動の位相進度の一例を示す図である。
図4において、縦軸はベータトロン振動の位相進度△μ
X[rad]を示しており、横軸は周回ビーム131の進行方向(S軸方向)の位置Sを示している。
図4に示すように、第1実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100では、出射ビーム132のベータトロン振動の位相進度(詳細には、前段の出射用偏向器108の偏向方向(
図3のX軸方向)に等しい運動軸方向における出射ビーム132のベータトロン振動の位相進度)が、前段の出射用偏向器108から後段の出射用偏向器109までの区間で270±45度となるように設定されている。
具体的には、制御部140は、出射ビーム132のベータトロン振動の位相進度が、前段の出射用偏向器108から後段の出射用偏向器109までの区間で270±45度となるように、発散用四極電磁石103と収束用四極電磁石104とを制御する。次いで(あるいは同時に)、制御部140は、
図3に示すように、出射ビーム132が、第一の偏向部121における周回ビーム131の通過領域(
図3のハッチング部分)の近傍を通過するように、かつ、出射ビーム132が、第二の偏向部122における周回ビーム131の通過領域を通過するか、あるいは、第二の偏向部122における周回ビーム131の通過領域の近傍を通過するように、かつ、出射ビーム132が、第三の直線部113における周回ビーム131の通過領域から離れた位置を通過するように、前段の出射用偏向器108を制御する。
【0044】
詳細には、制御部140は、出射ビーム132のベータトロン振動の位相進度が、前段の出射用偏向器108から後段の出射用偏向器109までの区間で270±45度となるように、発散用四極電磁石103の励磁量と収束用四極電磁石104の励磁量とを電源150を介して調整する。
それと並行して、制御部140は、
図3に示すように、出射ビーム132が、第一の偏向部121における周回ビーム131の通過領域(
図3のハッチング部分)の近傍を通過するように、かつ、出射ビーム132が、第二の偏向部122における周回ビーム131の通過領域を通過するか、あるいは、第二の偏向部122における周回ビーム131の通過領域の近傍を通過するように、かつ、出射ビーム132が、第三の直線部113における周回ビーム131の通過領域から離れた位置を通過するように、前段の出射用偏向器108の電場強度を電源150を介して調整する。
【0045】
また、第1実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100では、第一の偏向部121による荷電粒子ビームの偏向角が60度以上である。好ましくは、第一の偏向部121による荷電粒子ビームの偏向角が90度以上である。そのため、強い収束要素として偏向電磁石102を働かせることができる。更に、第1実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100では、第一の偏向部121と第二の偏向部122とによる荷電粒子ビームの合計の偏向角が180度である。
図1~
図4に示す例では、前段の出射用偏向器108において、周回ビーム131の一部が、周回ビーム131の周回軌道(
図3のハッチング部分)の内側(周回ビーム131の周回軌道よりも
図3のX軸の負側)に向けて偏向され、出射ビーム132に分離される。
他の例では、前段の出射用偏向器108において、周回ビーム131の一部が、周回ビーム131の周回軌道(
図3のハッチング部分)の外側(周回ビーム131の周回軌道よりも
図3のX軸の正側)に向けて偏向され、出射ビーム132に分離されてもよい。この例では、後段の出射用偏向器109において、前段の出射用偏向器108によって周回ビーム131から分離された出射ビーム132が、周回ビーム131の周回軌道の内側(
図3のX軸の負側)に向けて偏向される。
【0046】
第1実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100では、
図1に示すように、後段の出射用偏向器109が第三の直線部113に配置されているため、偏向部121、122の偏向電磁石102の磁場生成領域の大きな拡幅を必要とすることなく、
図3に示す出射ビーム132の軌道を実現すると共に、偏向電磁石102を小型化することができる。
また、第1実施形態のシンクロトロン100では、出射ビーム132は、ビーム損失を極力減らすように薄いセプタム電極108aで構成された静電型装置である前段の出射用偏向器108によって、周回ビーム131と分離するように曲げられ、第一の偏向部121に入る。第一の偏向部121において、出射ビーム132の軌道は、
図10に示す従来例のように周回ビーム131の通過領域(
図3および
図10のハッチング部分)から大きく逸脱することなく、周回ビーム131の通過領域の輪郭に沿うような軌道となる。そのため、出射ビーム132のために広げる偏向電磁石102の生成磁場領域も最小限の範囲に抑制することができる。
第二の直線部112を抜けた後の第二の偏向部122における出射ビーム132の軌道も同様であり、周回ビーム131の通過領域の輪郭に沿うような軌道となる。
【0047】
第1実施形態のシンクロトロン100の各例では、前段の出射用偏向器108から後段の出射用偏向器109までの出射ビーム132のベータトロン振動の位相進度が270±45度となるように、発散用四極電磁石103ないしは収束用四極電磁石104またはそれらの両方の励磁量が調整されている。そのため、第1実施形態のシンクロトロン100の各例では、第三の直線部113において出射ビーム132が、周回ビーム131から大きく分離され、セプタム電磁石である後段の出射用偏向器109によって損失なくシンクロトロン100の外に取り出される。
第1実施形態のシンクロトロン100では、偏向部121、122を通過する出射ビーム132が、偏向電磁石102の中心から離れた位置をさほど長くは通過しないため、
図11(B)に示す従来例のように偏向電磁石102の非線形磁場成分による影響を強く受けることもない。そのため、第1実施形態のシンクロトロン100から取り出され、照射野形成装置を含む照射装置301から照射対象に照射される照射ビーム302は、
図11(A)に示す例のように理想的な二次元断面分布302aに近い形状になり、高い線量精度を維持することができる。
【0048】
上述したように、第1実施形態のシンクロトロン100では、出射ビーム132のベータトロン振動の位相と出射機器配置が最適化されるため、周回ビーム131の通過領域と同程度の磁場生成領域で損失なく輸送できる出射ビーム132の軌道を実現することができ、偏向電磁石102に求められる磁場生成領域を大幅に縮小することができ、偏向電磁石102にかかわるコスト全般を低減することができる。
また、第1実施形態のシンクロトロン100では、
図3に示すように、出射ビーム132が、第一の偏向部121において周回ビーム131の通過領域(
図3のハッチング部分)から大きく逸れない軌道をとり、第二の直線部112において周回ビーム131の中心軌道(
図3のハッチング部分)を斜めに横断するような軌道をとり、第二の偏向部122において周回ビーム131の通過領域(
図3のハッチング部分)から大きく逸れない軌道をとる。また、後段の出射用偏向器109が配置された第三の直線部113において、周回ビーム131と出射ビーム132とが大きく分離される。そのため、第1実施形態のシンクロトロン100では、偏向部121、122の偏向電磁石102の磁場生成領域を大きく広げることなく、損失なく出射ビーム132をシンクロトロン100から取り出すことができる。
【0049】
換言すれば、第1実施形態のシンクロトロン100では、偏向部121、122の偏向電磁石102の磁場生成領域を大きく拡幅することなく、シンクロトロン100の小型化を実現することができる。特に、超伝導電磁石を偏向電磁石102に用いる場合における偏向電磁石102の製作難度、製作コスト、運転コストを抑制することができる。
【0050】
<第2実施形態>
以下、本発明の粒子加速器および粒子線治療装置の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)と同様に構成されている。従って、第2実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)と同様の効果を奏することができる。
【0051】
図5は第2実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100の一例を示す図である。
図5に示す例では、シンクロトロン100が、入射器201(
図1参照)の線形加速器から供給される荷電粒子ビームを周回ビーム131として周回させながら加速し、周回ビーム131の一部を出射ビーム132として出射する。シンクロトロン100は、例えば、入射用偏向器101と、8つの偏向電磁石102と、4つの発散用四極電磁石103と、4つの収束用四極電磁石104と、2つの共鳴励起用多極電磁石105と、高周波加速空洞106と、高周波キッカー装置107と、2つの前段の出射用偏向器108と、2つの後段の出射用偏向器109と、制御部140(
図2参照)と、複数の電源150(
図2参照)とを備えている。
【0052】
つまり、
図5に示す例では、
図1に示す例と比較して、前段の出射用偏向器108および後段の出射用偏向器109が1台ずつ増やされている。
高エネルギーに加速された荷電粒子ビームを曲げるためには高強度の電磁場が必要となるが、真空の放電限界や鉄心の磁束飽和などがあるため、それらを超えて強度を上げることは現実的に難しい。そうした場合には出射用偏向器の機器長を延ばすことで実効的な偏向角を大きくすることが一般的ではあるが、前後に他の機器が近接していると、そのままでは機器長をそれ以上延ばすことができない。直線部111、113自体を延長し、機器長を延ばすためのスペースを作ることも考えられるが、シンクロトロン100の小型化を目指す上では望ましくない。そういった条件においても、
図5に示す例では、前段の出射用偏向器108および後段の出射用偏向器109のそれぞれを他の機器(収束用四極電磁石104)をまたいだ2台の構成とすることで、直線部111、113を延長することなく、出射ビーム132に対する偏向角を大きくすることができる。
【0053】
図5に示す例では、入射用偏向器101が、
図1に示す入射用偏向器101と同様の機能を有する。入射用偏向器101は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の偏向電磁石102に接続されている。
偏向電磁石102は、
図1に示す偏向電磁石102と同様の機能を有する。1つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の発散用四極電磁石103に接続されている。
発散用四極電磁石103は、
図1に示す発散用四極電磁石103と同様の機能を有する。1つ目の発散用四極電磁石103は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の偏向電磁石102に接続されている。2つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の前段の出射用偏向器108に接続されている。
2つの前段の出射用偏向器108のそれぞれは、
図1に示す前段の出射用偏向器108と同様の機能を有する。1つ目の前段の出射用偏向器108は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。
収束用四極電磁石104は、
図1に示す収束用四極電磁石104と同様の機能を有する。1つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の前段の出射用偏向器108に接続されている。
図5に示すように、1つ目の前段の出射用偏向器108と、1つ目の収束用四極電磁石104と、2つ目の前段の出射用偏向器108とは、第一の直線部111に備えられている。1つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向における第一の直線部111の略中央に配置されている。第一の直線部111は、偏向電磁石102を有さない。
他の例では、3つ以上の前段の出射用偏向器108が、第一の直線部111に備えられていてもよい。更に他の例では、1つ目の前段の出射用偏向器108および2つ目の前段の出射用偏向器108のいずれか一方が、第一の直線部111に備えられていなくてもよい。
【0054】
図5に示す例では、2つ目の前段の出射用偏向器108が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された3つ目の偏向電磁石102に接続されている。3つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の発散用四極電磁石103に接続されている。2つ目の発散用四極電磁石103は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された4つ目の偏向電磁石102に接続されている。
図5に示すように、3つ目の偏向電磁石102と、2つ目の発散用四極電磁石103と、4つ目の偏向電磁石102とは、第一の偏向部121に備えられている。
他の例では、偏向電磁石102と四極磁場用コイルとを一体化したものである偏向部用四極磁場生成機構が第一の偏向部121に備えられていてもよい。
【0055】
図5に示す例では、4つ目の偏向電磁石102が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。2つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の共鳴励起用多極電磁石105に接続されている。1つ目の共鳴励起用多極電磁石105は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された高周波加速空洞106に接続されている。
図5に示すように、2つ目の収束用四極電磁石104と、1つ目の共鳴励起用多極電磁石105と、高周波加速空洞106とは、第二の直線部112に備えられている。第二の直線部112は、偏向電磁石102を有さない。
【0056】
図5に示す例では、高周波加速空洞106が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された5つ目の偏向電磁石102に接続されている。5つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された3つ目の発散用四極電磁石103に接続されている。3つ目の発散用四極電磁石103は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された6つ目の偏向電磁石102に接続されている。
図5に示すように、5つ目の偏向電磁石102と、3つ目の発散用四極電磁石103と、6つ目の偏向電磁石102とは、第二の偏向部122に備えられている。
他の例では、偏向電磁石102と四極磁場用コイルとを一体化したものである偏向部用四極磁場生成機構が第二の偏向部122に備えられていてもよい。
【0057】
図5に示す例では、6つ目の偏向電磁石102が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の後段の出射用偏向器109に接続されている。
2つの後段の出射用偏向器109のそれぞれは、
図1に示す後段の出射用偏向器109と同様の機能を有する。1つ目の後段の出射用偏向器109は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された3つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。
3つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の後段の出射用偏向器109に接続されている。
図5に示すように、1つ目の後段の出射用偏向器109と、3つ目の収束用四極電磁石104と、2つ目の後段の出射用偏向器109とは、第三の直線部113に備えられている。3つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向における第三の直線部113の略中央に配置されている。第三の直線部113は、偏向電磁石102を有さない。
他の例では、3つ以上の後段の出射用偏向器109が、第三の直線部113に備えられていてもよい。更に他の例では、1つ目の後段の出射用偏向器109および2つ目の後段の出射用偏向器109のいずれか一方が、第三の直線部113に備えられていなくてもよい。
【0058】
図5に示す例では、3つ目の収束用四極電磁石104が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された7つ目の偏向電磁石102にも接続されている。7つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された4つ目の発散用四極電磁石103に接続されている。4つ目の発散用四極電磁石103は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された8つ目の偏向電磁石102に接続されている。
8つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された高周波キッカー装置107に接続されている。高周波キッカー装置107は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された4つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。4つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の共鳴励起用多極電磁石105に接続されている。2つ目の共鳴励起用多極電磁石105は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された入射用偏向器101に接続されている。
【0059】
図14は第2実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100における周回ビーム131の通過領域と出射ビーム132の軌道との関係を示す図である。
図14において、S軸方向は周回ビーム131の進行方向を示している。S軸に直交する平面に含まれるX軸は、偏向電磁石102の偏向方向、前段の出射用偏向器108の偏向方向および後段の出射用偏向器109の偏向方向に対応している。
第2実施形態のシンクロトロン100では、
図14に示すように、1つ目の収束用四極電磁石104によって周回ビーム131が収束させられる前に、1つ目の前段の出射用偏向器108のセプタム電極108aによって、周回ビーム131の一部が、周回ビーム131の周回軌道(
図14のハッチング部分)の内側(周回ビーム131の周回軌道よりも
図14の下側)に向けて偏向され、出射ビーム132に分離される。
【0060】
<第3実施形態>
以下、本発明の粒子加速器および粒子線治療装置の第3実施形態について説明する。
第3実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)は、後述する点を除き、上述した第2実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)と同様に構成されている。従って、第3実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)によれば、後述する点を除き、上述した第2実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)と同様の効果を奏することができる。
【0061】
図6は第3実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100の一例を示す図である。
上述した
図1および
図5に示す例では、第一の直線部111の長さと、第二の直線部112の長さと、第三の直線部113の長さとが等しい。
前段の出射用偏向器108および後段の出射用偏向器109の偏向角を
図1および
図5に示す例より増やす必要がある場合には、
図6に示す例のようにシンクロトロン100が構成される。
具体的には、
図6に示す例では、第一の直線部111の長さと第三の直線部113の長さとが等しく、第一の直線部111および第三の直線部113は、第二の直線部112よりも長い。
図6に示す例のように、第二の直線部112が延長されることなく、前段の出射用偏向器108が配置される第一の直線部111と、後段の出射用偏向器109が配置される第三の直線部113とが延長されることによって、シンクロトロン100に必要な最低限の機器配置対称性を保ちつつ、できる限りシンクロトロン100の周長を短くすることができる。
第3実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100における周回ビーム131の通過領域と出射ビーム132の軌道との関係は、
図14に示す関係と同様の関係になる。
【0062】
<第4実施形態>
以下、本発明の粒子加速器および粒子線治療装置の第4実施形態について説明する。
第4実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)は、後述する点を除き、上述した第2実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)と同様に構成されている。従って、第4実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)によれば、後述する点を除き、上述した第2実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)と同様の効果を奏することができる。
【0063】
図7は第4実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100の一例を示す図である。
図7に示す例では、シンクロトロン100が、入射器201(
図1参照)の線形加速器から供給される荷電粒子ビームを周回ビーム131として周回させながら加速し、周回ビーム131の一部を出射ビーム132として出射する。シンクロトロン100は、例えば、入射用偏向器101と、8つの偏向電磁石102と、4つの収束用四極電磁石104と、2つの共鳴励起用多極電磁石105と、高周波加速空洞106と、高周波キッカー装置107と、2つの前段の出射用偏向器108と、2つの後段の出射用偏向器109と、制御部140(
図2参照)と、複数の電源150(
図2参照)とを備えている。
【0064】
つまり、
図7に示す例では、
図5に示す例と比較して、短い直線部を構成する4つの発散用四極電磁石103(
図5参照)がシンクロトロン100に備えられていない。
【0065】
図7に示す例では、入射用偏向器101が、
図1に示す入射用偏向器101と同様の機能を有する。入射用偏向器101は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の偏向電磁石102に接続されている。
偏向電磁石102は、
図1に示す偏向電磁石102と同様の機能を有する。1つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の偏向電磁石102に接続されている。2つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の前段の出射用偏向器108に接続されている。
2つの前段の出射用偏向器108のそれぞれは、
図1に示す前段の出射用偏向器108と同様の機能を有する。1つ目の前段の出射用偏向器108は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。
収束用四極電磁石104は、
図1に示す収束用四極電磁石104と同様の機能を有する。1つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の前段の出射用偏向器108に接続されている。
図7に示すように、1つ目の前段の出射用偏向器108と、1つ目の収束用四極電磁石104と、2つ目の前段の出射用偏向器108とは、第一の直線部111に備えられている。1つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向における第一の直線部111の略中央に配置されている。第一の直線部111は、偏向電磁石102を有さない。
他の例では、3つ以上の前段の出射用偏向器108が、第一の直線部111に備えられていてもよい。更に他の例では、1つ目の前段の出射用偏向器108および2つ目の前段の出射用偏向器108のいずれか一方が、第一の直線部111に備えられていなくてもよい。
【0066】
図7に示す例では、2つ目の前段の出射用偏向器108が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された3つ目の偏向電磁石102に接続されている。3つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された4つ目の偏向電磁石102に接続されている。
図7に示すように、3つ目の偏向電磁石102と、4つ目の偏向電磁石102とは、第一の偏向部121に備えられている。
他の例では、偏向電磁石102と四極磁場用コイルとを一体化したものである偏向部用四極磁場生成機構が第一の偏向部121に備えられていてもよい。
【0067】
図7に示す例では、4つ目の偏向電磁石102が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。2つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の共鳴励起用多極電磁石105に接続されている。1つ目の共鳴励起用多極電磁石105は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された高周波加速空洞106に接続されている。
図7に示すように、2つ目の収束用四極電磁石104と、1つ目の共鳴励起用多極電磁石105と、高周波加速空洞106とは、第二の直線部112に備えられている。第二の直線部112は、偏向電磁石102を有さない。
【0068】
図7に示す例では、高周波加速空洞106が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された5つ目の偏向電磁石102に接続されている。5つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された6つ目の偏向電磁石102に接続されている。
図7に示すように、5つ目の偏向電磁石102と、6つ目の偏向電磁石102とは、第二の偏向部122に備えられている。
他の例では、偏向電磁石102と四極磁場用コイルとを一体化したものである偏向部用四極磁場生成機構が第二の偏向部122に備えられていてもよい。
【0069】
図7に示す例では、6つ目の偏向電磁石102が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の後段の出射用偏向器109に接続されている。
2つの後段の出射用偏向器109のそれぞれは、
図1に示す後段の出射用偏向器109と同様の機能を有する。1つ目の後段の出射用偏向器109は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された3つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。
3つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の後段の出射用偏向器109に接続されている。
図7に示すように、1つ目の後段の出射用偏向器109と、3つ目の収束用四極電磁石104と、2つ目の後段の出射用偏向器109とは、第三の直線部113に備えられている。3つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向における第三の直線部113の略中央に配置されている。第三の直線部113は、偏向電磁石102を有さない。
他の例では、3つ以上の後段の出射用偏向器109が、第三の直線部113に備えられていてもよい。更に他の例では、1つ目の後段の出射用偏向器109および2つ目の後段の出射用偏向器109のいずれか一方が、第三の直線部113に備えられていなくてもよい。
【0070】
図7に示す例では、3つ目の収束用四極電磁石104が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された7つ目の偏向電磁石102にも接続されている。7つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された8つ目の偏向電磁石102に接続されている。
8つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された高周波キッカー装置107に接続されている。高周波キッカー装置107は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された4つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。4つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の共鳴励起用多極電磁石105に接続されている。2つ目の共鳴励起用多極電磁石105は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された入射用偏向器101に接続されている。
【0071】
図7に示す例では、制御部140は、出射ビーム132のベータトロン振動の位相進度が、前段の出射用偏向器108から後段の出射用偏向器109までの区間で270±45度となるように、第一の直線部111の四極電磁石104と、第二の直線部112の四極電磁石104と、第三の直線部113の四極電磁石104とを調整する。
詳細には、制御部140は、出射ビーム132のベータトロン振動の位相進度が、前段の出射用偏向器108から後段の出射用偏向器109までの区間で270±45度となるように、第一の直線部111の四極電磁石104と、第二の直線部112の四極電磁石104と、第三の直線部113の四極電磁石104とを調整する。
それと並行して、制御部140は、出射ビーム132が、第一の偏向部121における周回ビーム131の通過領域の近傍を通過するように、かつ、出射ビーム132が、第二の偏向部122における周回ビーム131の通過領域を通過するか、あるいは、第二の偏向部122における周回ビーム131の通過領域の近傍を通過するように、かつ、出射ビーム132が、第三の直線部113における周回ビーム131の通過領域から離れた位置を通過するように、前段の出射用偏向器108の電場強度を調整する。
第4実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100における周回ビーム131の通過領域と出射ビーム132の軌道との関係は、
図14に示す関係と同様の関係になる。
【0072】
<第5実施形態>
以下、本発明の粒子加速器および粒子線治療装置の第5実施形態について説明する。
第5実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)は、後述する点を除き、上述した第4実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)と同様に構成されている。従って、第5実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)によれば、後述する点を除き、上述した第4実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)と同様の効果を奏することができる。
【0073】
図8は第5実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100の一例を示す図である。
図8に示す例では、シンクロトロン100が、入射器201(
図1参照)の線形加速器から供給される荷電粒子ビームを周回ビーム131として周回させながら加速し、周回ビーム131の一部を出射ビーム132として出射する。シンクロトロン100は、例えば、入射用偏向器101と、4つの偏向電磁石102と、4つの収束用四極電磁石104と、2つの共鳴励起用多極電磁石105と、高周波加速空洞106と、高周波キッカー装置107と、2つの前段の出射用偏向器108と、2つの後段の出射用偏向器109と、制御部140(
図2参照)と、複数の電源150(
図2参照)とを備えている。
【0074】
つまり、
図8に示す例では、
図7に示す例における1つ目の偏向電磁石102と2つ目の偏向電磁石102とがまとめられて、1つ目の偏向電磁石102が構成されている。また、
図8に示す例では、
図7に示す例における3つ目の偏向電磁石102と4つ目の偏向電磁石102とがまとめられて2つ目の偏向電磁石102が構成され、
図7に示す例における5つ目の偏向電磁石102と6つ目の偏向電磁石102とがまとめられて3つ目の偏向電磁石102が構成され、
図7に示す例における7つ目の偏向電磁石102と8つ目の偏向電磁石102とがまとめられて4つ目の偏向電磁石102が構成されている。
【0075】
図8に示す例では、入射用偏向器101が、
図1に示す入射用偏向器101と同様の機能を有する。入射用偏向器101は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の偏向電磁石102に接続されている。
偏向電磁石102は、
図1に示す偏向電磁石102と同様の機能を有する。1つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の前段の出射用偏向器108に接続されている。
2つの前段の出射用偏向器108のそれぞれは、
図1に示す前段の出射用偏向器108と同様の機能を有する。1つ目の前段の出射用偏向器108は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。
収束用四極電磁石104は、
図1に示す収束用四極電磁石104と同様の機能を有する。1つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の前段の出射用偏向器108に接続されている。
図8に示すように、1つ目の前段の出射用偏向器108と、1つ目の収束用四極電磁石104と、2つ目の前段の出射用偏向器108とは、第一の直線部111に備えられている。1つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向における第一の直線部111の略中央に配置されている。第一の直線部111は、偏向電磁石102を有さない。
他の例では、3つ以上の前段の出射用偏向器108が、第一の直線部111に備えられていてもよい。更に他の例では、1つ目の前段の出射用偏向器108および2つ目の前段の出射用偏向器108のいずれか一方が、第一の直線部111に備えられていなくてもよい。
【0076】
図8に示す例では、2つ目の前段の出射用偏向器108が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の偏向電磁石102に接続されている。2つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。
図8に示すように、2つ目の偏向電磁石102は、第一の偏向部121に備えられている。
他の例では、偏向電磁石102と四極磁場用コイルとを一体化したものである偏向部用四極磁場生成機構が第一の偏向部121に備えられていてもよい。
【0077】
図8に示す例では、2つ目の収束用四極電磁石104が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の共鳴励起用多極電磁石105に接続されている。1つ目の共鳴励起用多極電磁石105は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された高周波加速空洞106に接続されている。
図8に示すように、2つ目の収束用四極電磁石104と、1つ目の共鳴励起用多極電磁石105と、高周波加速空洞106とは、第二の直線部112に備えられている。第二の直線部112は、偏向電磁石102を有さない。
【0078】
図8に示す例では、高周波加速空洞106が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された3つ目の偏向電磁石102に接続されている。3つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の後段の出射用偏向器109に接続されている。
図8に示すように、3つ目の偏向電磁石102は、第二の偏向部122に備えられている。
他の例では、偏向電磁石102と四極磁場用コイルとを一体化したものである偏向部用四極磁場生成機構が第二の偏向部122に備えられていてもよい。
【0079】
図8に示す例では、2つの後段の出射用偏向器109のそれぞれが、
図1に示す後段の出射用偏向器109と同様の機能を有する。1つ目の後段の出射用偏向器109は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された3つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。
3つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の後段の出射用偏向器109に接続されている。
図8に示すように、1つ目の後段の出射用偏向器109と、3つ目の収束用四極電磁石104と、2つ目の後段の出射用偏向器109とは、第三の直線部113に備えられている。3つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向における第三の直線部113の略中央に配置されている。第三の直線部113は、偏向電磁石102を有さない。
他の例では、3つ以上の後段の出射用偏向器109が、第三の直線部113に備えられていてもよい。更に他の例では、1つ目の後段の出射用偏向器109および2つ目の後段の出射用偏向器109のいずれか一方が、第三の直線部113に備えられていなくてもよい。
【0080】
図8に示す例では、3つ目の収束用四極電磁石104が、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された4つ目の偏向電磁石102にも接続されている。4つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された高周波キッカー装置107に接続されている。
高周波キッカー装置107は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された4つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。4つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の共鳴励起用多極電磁石105に接続されている。2つ目の共鳴励起用多極電磁石105は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された入射用偏向器101に接続されている。
第5実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100における周回ビーム131の通過領域と出射ビーム132の軌道との関係は、
図14に示す関係と同様の関係になる。
【0081】
<第6実施形態>
以下、本発明の粒子加速器および粒子線治療装置の第6実施形態について説明する。
第6実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)は、後述する点を除き、上述した第4実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)と同様に構成されている。従って、第6実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)によれば、後述する点を除き、上述した第4実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)と同様の効果を奏することができる。
【0082】
図12は第6実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100の一例を示す図である。
図12に示す例では、シンクロトロン100が、入射器201(
図1参照)の線形加速器から供給される荷電粒子ビームを周回ビーム131として周回させながら加速し、周回ビーム131の一部を出射ビーム132として出射する。シンクロトロン100は、例えば、入射用偏向器101と、8つの偏向電磁石102と、4つの収束用四極電磁石104と、2つの共鳴励起用多極電磁石105と、高周波加速空洞106と、高周波キッカー装置107と、1つの前段の出射用偏向器108と、2つの後段の出射用偏向器109と、制御部140(
図2参照)と、複数の電源150(
図2参照)とを備えている。
【0083】
つまり、
図7に示す例では、シンクロトロン100が2つの前段の出射用偏向器108を備えているのに対し、
図12に示す例では、シンクロトロン100が1つの前段の出射用偏向器108を備えている。
【0084】
図12に示す例では、入射用偏向器101が、
図1に示す入射用偏向器101と同様の機能を有する。入射用偏向器101は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の偏向電磁石102に接続されている。
偏向電磁石102は、
図1に示す偏向電磁石102と同様の機能を有する。1つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の偏向電磁石102に接続されている。2つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。
収束用四極電磁石104は、
図1に示す収束用四極電磁石104と同様の機能を有する。1つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された前段の出射用偏向器108に接続されている。
前段の出射用偏向器108は、
図1に示す前段の出射用偏向器108と同様の機能を有する。前段の出射用偏向器108は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された3つ目の偏向電磁石102に接続されている。
図12に示すように、1つ目の収束用四極電磁石104と、前段の出射用偏向器108とは、第一の直線部111に備えられている。1つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向における第一の直線部111の略中央に配置されている。第一の直線部111は、偏向電磁石102を有さない。
第6実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100における周回ビーム131の通過領域と出射ビーム132の軌道との関係は、
図3に示す関係と同様の関係になる。
【0085】
<第7実施形態>
以下、本発明の粒子加速器および粒子線治療装置の第7実施形態について説明する。
第7実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)は、後述する点を除き、上述した第5実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)と同様に構成されている。従って、第7実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)によれば、後述する点を除き、上述した第5実施形態の粒子加速器(シンクロトロン100)と同様の効果を奏することができる。
【0086】
図13は第7実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100の一例を示す図である。
図13に示す例では、シンクロトロン100が、入射器201(
図1参照)の線形加速器から供給される荷電粒子ビームを周回ビーム131として周回させながら加速し、周回ビーム131の一部を出射ビーム132として出射する。シンクロトロン100は、例えば、入射用偏向器101と、4つの偏向電磁石102と、4つの収束用四極電磁石104と、2つの共鳴励起用多極電磁石105と、高周波加速空洞106と、高周波キッカー装置107と、1つの前段の出射用偏向器108と、2つの後段の出射用偏向器109と、制御部140(
図2参照)と、複数の電源150(
図2参照)とを備えている。
【0087】
つまり、
図8に示す例では、シンクロトロン100が2つの前段の出射用偏向器108を備えているのに対し、
図13に示す例では、シンクロトロン100が1つの前段の出射用偏向器108を備えている。
【0088】
図13に示す例では、入射用偏向器101が、
図1に示す入射用偏向器101と同様の機能を有する。入射用偏向器101は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の偏向電磁石102に接続されている。
偏向電磁石102は、
図1に示す偏向電磁石102と同様の機能を有する。1つ目の偏向電磁石102は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された1つ目の収束用四極電磁石104に接続されている。
収束用四極電磁石104は、
図1に示す収束用四極電磁石104と同様の機能を有する。1つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された前段の出射用偏向器108に接続されている。
前段の出射用偏向器108は、
図1に示す前段の出射用偏向器108と同様の機能を有する。前段の出射用偏向器108は、周回ビーム131の進行方向の下流側に配置された2つ目の偏向電磁石102に接続されている。
図13に示すように、1つ目の収束用四極電磁石104と、前段の出射用偏向器108とは、第一の直線部111に備えられている。1つ目の収束用四極電磁石104は、周回ビーム131の進行方向における第一の直線部111の略中央に配置されている。第一の直線部111は、偏向電磁石102を有さない。
第7実施形態のシンクロトロン(粒子加速器)100における周回ビーム131の通過領域と出射ビーム132の軌道との関係は、
図3に示す関係と同様の関係になる。
【0089】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0090】
100…シンクロトロン(粒子加速器)、101…入射用偏向器、102…偏向電磁石、103…(発散用)四極電磁石、104…(収束用)四極電磁石、105…共鳴励起用多極電磁石、106…高周波加速空洞、107…高周波キッカー装置、108…前段の出射用偏向器、108a…セプタム電極、109…後段の出射用偏向器、111…(第一の)直線部、112…(第二の)直線部、113…(第三の)直線部、121…(第一の)偏向部、122…(第二の)偏向部、131…周回ビーム、132…出射ビーム、140…制御部、150…電源、201…入射器、301…照射装置、302…照射ビーム、302a…二次元断面分布、302b…水平方向射影プロファイル、302c…垂直方向射影プロファイル、302a’…二次元断面分布、302b’…水平方向射影プロファイル、302c’…垂直方向射影プロファイル