(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】塗装ブースの改造方法及び塗装ブース
(51)【国際特許分類】
B05B 14/40 20180101AFI20240520BHJP
B05B 16/00 20180101ALI20240520BHJP
B01D 47/02 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
B05B14/40
B05B16/00
B01D47/02 A
(21)【出願番号】P 2023214389
(22)【出願日】2023-12-20
【審査請求日】2024-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523478551
【氏名又は名称】株式会社SBヤード
(74)【代理人】
【識別番号】100136847
【氏名又は名称】▲高▼山 嘉成
(72)【発明者】
【氏名】根来 義昌
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-319362(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008350(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/131564(WO,A1)
【文献】特開2005-82418(JP,A)
【文献】特開昭62-298469(JP,A)
【文献】特開2015-66542(JP,A)
【文献】特開平5-68920(JP,A)
【文献】実開昭61-33663(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-17/08
B05D 1/00-7/26
B01D 47/00-47/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を塗装するための塗装スペースと、負圧を発生させて浄化された気体を排出する洗浄室と、前記塗装スペースと前記洗浄室との間仕切りの下部に設けられた鋸刃板と、前記鋸刃板の下部でありかつ洗浄室内に設けられた渦巻板とを備える塗装ブースの改造方法であって、
直方体状の一以上のユニットを、前記渦巻板の底に敷いて、前記渦巻板の底面と前記ユニットとの間に隙間が生じないようにすることを特徴とする、塗装ブースの改造方法。
【請求項2】
前記ユニットは、前記塗装スペースの底の少なくとも一部にも敷かれていることを特徴とする、請求項1に記載の塗装ブースの改造方法。
【請求項3】
前記塗装スペースの底で前記ユニットが敷かれている領域の洗浄液用の水槽は浅くなっており、
前記塗装スペースの底で前記ユニットが敷かれていない領域の洗浄液用の水槽は深くなっていることを特徴とする、請求項2に記載の塗装ブースの改造方法。
【請求項4】
前記洗浄室には、前記洗浄室で自然落下した洗浄液を受け止めるための基板が、前記洗浄室の下部に設けられており、
前記塗装ブースが前記洗浄室からの
前記洗浄液を貯める浮遊槽を有する構造の場合、
前記基板を取り外す場合は落下した前記洗浄液を前記ユニットで受け止めるようにするか、又は、前記基板を取り外さない場合は前記基板で前記洗浄液を受け止めるようにして、前記浮遊槽に循環させるように改造することを特徴とする、請求項1に記載の塗装ブースの改造方法。
【請求項5】
前記浮遊槽の角に、湾曲部分を有する別なユニットを配置することを特徴とする、請求項4に記載の塗装ブースの改造方法。
【請求項6】
前記塗装スペース側の水槽の角に、湾曲部分を有するさらに別なユニットを配置することを特徴とする、請求項5に記載の塗装ブースの改造方法。
【請求項7】
前記塗装ブースが前記洗浄室からの洗浄液を貯める浮遊槽を有しておらず、前記洗浄室から直接塗装スペース側に洗浄液を循環させる構造の場合、
前記ユニットに、還流用の水路を構成しておき、
前記洗浄室で落下した洗浄液を受け止めるための基板と、前記水路とを連結して、前記水路を通じて、前記塗装スペース側の水槽に循環させるように改造することを特徴とする、請求項1に記載の塗装ブースの改造方法。
【請求項8】
前記塗装ブースが前記洗浄室からの洗浄液を貯める浮遊槽を有する構造の場合、
前記浮遊槽に、
前記洗浄液及び/又は塗装カスの吸引装置を取り付けることを特徴とする、請求項1に記載の塗装ブースの改造方法。
【請求項9】
前記吸引装置で回収した洗浄液及び/又は塗装カスから、塗装カスを濾過する濾過装置を設置し、さらに、濾過後の洗浄液を、再度に前記塗装ブースに戻す洗浄液還流装置を設置する、請求項8に記載の塗装ブースの改造方法。
【請求項10】
対象物を塗装するための塗装スペースと、負圧を発生させて浄化された気体を排出する洗浄室と、前記塗装スペースと前記洗浄室との間仕切りの下部に設けられた鋸刃板と、前記鋸刃板の下部でありかつ洗浄室内に設けられた渦巻板とを備える塗装ブースであって、
直方体状の一以上のユニットが、前記渦巻板の底に敷かれており、前記渦巻板の底面と前記ユニットとの間に隙間が生じないように構成されていることを特徴とする、塗装ブース。
【請求項11】
前記ユニットは、前記塗装スペースの底の少なくとも一部にも敷かれていることを特徴とする、請求項10に記載の塗装ブース。
【請求項12】
前記塗装スペースの底で前記ユニットが敷かれている領域の洗浄液用の水槽は浅くなっており、
前記塗装スペースの底で前記ユニットが敷かれていない領域の洗浄液用の水槽は深くなっていることを特徴とする、請求項11に記載の塗装ブース。
【請求項13】
前記洗浄室からの洗浄液を貯める浮遊槽をさらに備え、
落下した前記洗浄液を前記ユニットで受け止めて、前記浮遊槽に循環させる構造となっていることを特徴とする、請求項10に記載の塗装ブース。
【請求項14】
前記浮遊槽の角に、湾曲部分を有する別なユニットを配置していることを特徴とする、請求項13に記載の塗装ブース。
【請求項15】
前記塗装ブース側の水槽の角に、湾曲部分を有する別なユニットを配置していることを特徴とする、請求項14に記載の塗装ブース。
【請求項16】
前記塗装ブースが前記洗浄室からの洗浄液を貯める浮遊槽を有しておらず、前記洗浄室から直接塗装スペース側に洗浄液を循環させる構造となっており、
前記ユニットに、還流用の水路を構成しておき、
前記洗浄室で落下した洗浄液を受け止めるための基板と、前記水路とを連結して、前記水路を通じて、前記塗装スペース側の水槽に循環させる構造となっていることを特徴とする、請求項10に記載の塗装ブース。
【請求項17】
前記塗装ブースが前記洗浄室からの洗浄液を貯める浮遊槽を有する構造の場合、
前記浮遊槽に取り付けられた、
前記洗浄液及び/又は塗装カスの吸引装置をさらに備えることを特徴とする、請求項10に記載の塗装ブース。
【請求項18】
前記吸引装置で回収した洗浄液及び/又は塗装カスから、塗装カスを濾過する濾過装置と、
濾過後の洗浄液を、再度に前記塗装ブースに戻す洗浄液還流装置とを、さらに備える、請求項17に記載の塗装ブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ブースの改造方法及び塗装ブース関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図9には、オーバーフロー堰部(浮遊槽ともいう。以下同様。)を備えない塗装ブースが記載されている。
特許文献1の
図1~5には、オーバーフロー堰部を備える塗装ブースが記載されている。
非特許文献1にも、浮遊槽(オーバーフロー堰部)を備える塗装ブースが記載されている。
非特許文献2及び3には、塗装ブースの洗浄方法について記載がされている。
【0003】
これらの先行技術文献の記載を踏まえて、従来の塗装ブースの構造について、説明する。
図7及び
図8は、浮遊槽を備えない従来の塗装ブース100の内部構造を示す図である。
従来の塗装ブース100は、塗装室101と、洗浄室102とを備える。塗装室101と洗浄室102とは、前板103で仕切られている。塗装室101の下部に、水槽104が構成されている。水槽104には、洗浄液(水及びペイント処理剤などの薬剤など)が溜められている。
塗装室101で対象物を塗装する。
【0004】
洗浄室102の上部には、電動機105が設けられ、電動機105にファン(図示せず)が取付けられており、ファンケーシング106に収容されている。ファンで吸い上げた気体は、吐出口111を介して、ダクト(図示せず)から排気される。
【0005】
前板103の下部には、可動前板107が取付けられている。可動前板107の下部には、鋸刃板108が取付けられている。
図8では、鋸刃板108の鋸刃状のギザギザ部は一部のみ図示しているが、下辺部分のほぼ全てが鋸刃状のギザギザ部となっている。
【0006】
渦巻板109は、
図7に示すように、洗浄室102側が湾曲した形状となっており、塗装室102側に設けられた複数の渦巻板支柱112を有する構造となっている。渦巻板109は、可動前板107に取付けられた複数の渦巻板押え金具110によって押えられるようにして、鋸刃板108の下部に配置されている。
【0007】
洗浄室102には、基板受支柱113が設けられている。
渦巻板109の上端に、斜めに傾斜して配置された基板(受け止め部ともいう。以下同様。)114が設けられている。基板114には、穴が開いている。固定水路115は、基板114の穴から、水槽104に向けて形成された水路である。
渦巻板109は、基板114の右端に引っ掛けられている。
基板受支柱113は、鋸刃板108が洗浄室102側に負圧で入り込むのを防ぐ支柱である。
【0008】
固定水路115の先端には、可動水路116が取付けられている。
図8では、内部が分かるように可動水路116がむき出しとなるように図示しているが、実際は、可動水路116の上部は、渦巻板109で覆われている。したがって、可動水路116は、渦巻板109の下を通って、固定水路115から、水槽の前面(
図8の紙面前面側)に向けて流れる水路となる。
【0009】
洗浄室102内は、上方に向けて、段違いに、互い違いに配置された複数のエリミネーター(水切り板ともいう。以下同様)117を備える。
【0010】
従来の塗装ブース100の動作原理について説明する。
洗浄室102の上部のファンによる負圧によって、洗浄室102内で上昇気流が生じているが、鋸刃板108と水槽104の水面との間に隙間が生じているので、塗装室101から洗浄室102に向けた流れが発生する。
塗装ミスト(粉塵も含む。以下同様。)は、上記の流れにしたがって、鋸刃板108の隙間部分に吸い込まれ、鋸刃板108付近の洗浄液に捕捉される。
塗装ミストを捕捉した洗浄液は、上記の流れにしたがって、水槽104の水面と鋸刃板108との間にできた隙間を通じて、渦巻板109側に移動する。
【0011】
洗浄液は、渦巻板109に沿って高速で円形運動をする。洗浄液は、円運動によって生じる遠心力及びファンによる吸引作用によって、洗浄室102内にある壁面に当たって、飛沫化する。
飛沫化した洗浄液は、複数のエリミネーター117に当たりながら上昇して、水切りされていく。水切りされた水滴は、基板114まで自然落下していく。エリミネーター117で浄化された気体は、ファンから排気される。
【0012】
塗装室101から洗浄室102に向けた流れがあるため、塗装室101における水槽104の上層部分は、塗装室101から洗浄室102に向けた流れとなっている。基板114に自然落下した洗浄液は、固定水路115及び可動水路116を通じて、塗装室101側に戻る。ただし、従来の水槽104は、深いため、水槽104の鋸刃板108付近の洗浄液が、渦巻板109側に吸い込まれるものの、水槽104内が全体的に対流しているわけではなく、水槽104内で、滞留している洗浄液も存在する。
【0013】
洗浄液に捕捉された塗料ミストに含まれる塗料成分は、塗装カス(スカムやスラッジともいう。以下同様。)となって集まり、洗浄液とは分離された状態となる。
浮遊槽がない塗装ブース100では、分離された塗装カスが水槽104に溜まってくことになる。
浮遊槽がある塗装ブースの場合には、分離された塗装カスが浮遊槽で浮上して分離される。
【0014】
浮遊槽の有無に関わらず、塗装カスが水槽内に溜まっていく。上記したように、水槽内で滞留して部分もあるため、水槽内に塗装カスが沈殿したり、付着したりする状態となる。
そのため、従来、非特許文献2及び非特許文献3に記載されているように、塗装ブースを分解して、塗装ブース内に溜まった塗装カスを洗浄する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【非特許文献】
【0016】
【文献】サンエス工業株式会社,“ポンプレスブース製品紹介一覧”,[online],[2023年12月12日検索],インターネット<URL:https://www.sanesu-ind.co.jp/product_cat/pumpless/>
【文献】株式会社 テクノクリーン,“塗装ブースの各種清掃・メンテナンス & 水幕板(スクリーン)等の新設・改修工事”,[online],[2023年12月12日検索],インターネット<URL:http://www.techno-clean.co.jp/service.html>
【文献】NCC株式会社,“[事例レポ]プロが行う塗装ブースの清掃”,[online],[2023年12月12日検索],インターネット<URL:https://ncc-3clab.com/expedition/639/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来の塗装ブースにおいては、浮遊槽の有無に関係なく、渦巻板109は、複数の渦巻板支柱112で支えられた構造となっている。そのため、渦巻板109の下部も水槽104となっている。
【0018】
図8に示したように、浮遊槽が存在しない塗装ブースの場合、循環用の水路は水槽104の一部分に設けられているだけであるので、渦巻板109の下では、洗浄液は循環せずに滞留している。
浮遊槽が存在する塗装ブースであっても、たとえば、特許文献1の
図1を見れば分かるように、渦巻板の下の洗浄液は循環しないことが分かる。
【0019】
そのため、洗浄液に捕捉されている塗装カスは、沈殿して、水槽の壁面に付着していくこととなる。水槽内の塗装カスを除去するためには、洗浄液を全て抜き取り、渦巻板を取り外して、水槽の奥に溜まった塗装カスを取り除く必要があった。
この洗浄作業は、非常に大変な作業であった。
【0020】
それゆえ、本発明は、塗装ブースを洗浄しやすくするための塗装ブースの改造方法及び塗装ブースを提供することを目的とする。
【0021】
さらに、従来の塗装ブースにおいては、運転中に、水槽内の塗装カスを回収するのが難しかった。
【0022】
それゆえ、本発明は、水槽内の塗装カスを回収しやすくするための塗装ブースの改造方法及び塗装ブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。
本発明は、対象物を塗装するための塗装スペースと、負圧を発生させて浄化された気体を排出する洗浄室と、塗装スペースと洗浄室との間仕切りの下部に設けられた鋸刃板と、鋸刃板の下部でありかつ洗浄室内に設けられた渦巻板とを備える塗装ブースの改造方法であって、渦巻板の底面との間に隙間が生じないように、直方体状の一以上のユニットを、渦巻板の底に敷いて、渦巻板の底面とユニットとの間に隙間が生じないようにすることを特徴とする。
【0024】
好ましくは、ユニットは、塗装スペースの底の少なくとも一部にも敷かれている。
【0025】
好ましくは、塗装スペースの底でユニットが敷かれている領域の洗浄液用の水槽は浅くなっており、塗装スペースの底でユニットが敷かれていない領域の洗浄液用の水槽は深くなっている。
【0026】
洗浄室には、洗浄室で自然落下した洗浄液を受け止めるための基板が、洗浄室の下部に設けられており、塗装ブースが洗浄室からの洗浄液を貯める浮遊槽を有する構造の場合、好ましくは、基板を取り外す場合は落下した洗浄液をユニットで受け止めるようにするか、又は、基板を取り外さない場合は基板で洗浄液を受け止めるようにして、浮遊槽に循環させるように改造する。
【0027】
好ましくは、浮遊槽の角に、湾曲部分を有する別なユニットを配置する。
【0028】
好ましくは、塗装スペース側の水槽の角に、湾曲部分を有するさらに別なユニットを配置する。
【0029】
塗装ブースが洗浄室からの洗浄液を貯める浮遊槽を有しておらず、洗浄室から直接塗装スペース側に洗浄液を循環させる構造の場合、好ましくは、ユニットに、還流用の水路を構成しておき、洗浄室で落下した洗浄液を受け止めるための基板と、水路とを連結して、水路を通じて、塗装スペース側の水槽に循環させるように改造する。
【0030】
好ましくは、塗装ブースが前記洗浄室からの洗浄液を貯める浮遊槽を有する構造の場合、浮遊槽に、洗浄液及び/又は塗装カスの吸引装置を取り付ける。
【0031】
好ましくは、吸引装置で回収した洗浄液及び/又は塗装カスから、塗装カスを濾過する濾過装置を設置し、さらに、濾過後の洗浄液を、再度に塗装ブースに戻す洗浄液還流装置を設置する。
【0032】
また、本発明は、以下の構造を有する塗装ブースである。
本発明は、対象物を塗装するための塗装スペースと、負圧を発生させて浄化された気体を排出する洗浄室と、塗装スペースと洗浄室との間仕切りの下部に設けられた鋸刃板と、鋸刃板の下部でありかつ洗浄室内に設けられた渦巻板とを備える塗装ブースであって、直方体状の一以上のユニットが、渦巻板の底に敷かれており、渦巻板の底面とユニットとの間に隙間が生じないように構成されている。
【0033】
好ましくは、ユニットは、塗装スペースの底の少なくとも一部にも敷かれている塗装ブースである。
【0034】
好ましくは、塗装スペースの底でユニットが敷かれている領域の洗浄液用の水槽は浅くなっており、塗装スペースの底でユニットが敷かれていない領域の洗浄液用の水槽は深くなっている塗装ブースである。
【0035】
好ましくは、洗浄室からの洗浄液を貯める浮遊槽をさらに備え、落下した洗浄液をユニットで受け止めて、浮遊槽に循環させる構造となっている塗装ブースである。
【0036】
好ましくは、浮遊槽の角に、湾曲部分を有する別なユニットを配置している塗装ブースである。
【0037】
好ましくは、塗装ブース側の水槽の角に、湾曲部分を有する別なユニットを配置している塗装ブースである。
【0038】
好ましくは、塗装ブースが洗浄室からの洗浄液を貯める浮遊槽を有しておらず、洗浄室から直接塗装スペース側に洗浄液を循環させる構造となっており、ユニットに、還流用の水路を構成しておき、洗浄室で落下した洗浄液を受け止めるための基板と、水路とを連結して、水路を通じて、塗装スペース側の水槽に循環させる構造となっている塗装ブースである。
【0039】
好ましくは、塗装ブースが洗浄室からの洗浄液を貯める浮遊槽を有する構造の場合、浮遊槽に取り付けられた、洗浄液及び/又は塗装カスの吸引装置をさらに備える塗装ブースである。
【0040】
好ましくは、吸引装置で回収した洗浄液及び/又は塗装カスから、塗装カスを濾過する濾過装置と、濾過後の洗浄液を、再度に塗装ブースに戻す洗浄液還流装置とを、さらに備える、塗装ブースである。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、渦巻板の下には、水槽が構成されないこととなるので、渦巻板の下に塗装カスが溜まることがなくなり、洗浄しやすい塗装ブースが提供されることとなる。
【0042】
また、塗装カスが水槽内で滞留したり沈殿したりするのを防止できるので、水槽内の塗装カスを回収しやすい塗装ブースが提供されることとなる。
【0043】
塗装スペース側の水槽は、鋸刃板側が浅くなっており、それ以外が深くなっている。これにより、洗浄液の循環がスムーズになるため、水槽での塗装カスの滞留や沈殿を出来る限り減らすことが可能となる。結果、洗浄や塗装カスの回収が容易となる。
【0044】
浮遊槽の角や水槽の角に湾曲部分を有する別なユニットを配置することで、洗浄液の循環がスムーズになるため、水槽での塗装カスの滞留や沈殿を出来る限り減らすことが可能となる。結果、洗浄や塗装カスの回収が容易となる。
【0045】
浮遊槽を有する塗装ブースの場合は、ユニット又は基板で落下する洗浄液を受け止めるので、洗浄室での洗浄には、何ら支障が生じない。
【0046】
浮遊槽を有さない塗装ブースの場合は、基板とユニットに形成された水路とを連結させて、洗浄液が循環するようにするが、この場合、基板で落下する洗浄液を受け止めるので、洗浄室での洗浄には、何ら支障が生じない。
【0047】
洗浄液及び/又は塗装カスの吸引装置を設ければ、水槽を綺麗な状態に保てるため、塗装ブースの洗浄頻度を少なくすることができる。
【0048】
塗装カスを濾過して、濾過後の洗浄液を塗装ブースに戻すようにすれば、洗浄液の廃棄頻度を少なくすることができる。
【0049】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1A】
図1Aは、塗装ブース(浮遊槽有り)の改造に用いるユニットを示す斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、塗装ブース(浮遊槽有り)の改造に用いるユニットを示す斜視図である。
【
図1C】
図1Cは、塗装ブース(浮遊槽有り)の改造に用いるユニットを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、改造前の塗装ブース(浮遊槽有り)の構造を示す斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、改造後の塗装ブース(浮遊槽有り)の構造を示す斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、改造後の塗装ブース(浮遊槽有り)の構造を示す斜視図であり、水槽部分をハッチングした図である。
【
図4】
図4は、塗装ブース(浮遊槽無し)の改造に用いるユニットを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、改造前の塗装ブース(浮遊槽無し)の構造を示す斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、改造後の塗装ブース(浮遊槽無し)の構造を示す斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、改造後の塗装ブース(浮遊槽無し)の構造を示す斜視図であり、水槽部分をハッチングした図である。
【
図7】
図7は、従来の塗装ブース(浮遊槽無し)の構造を示す図である。
【
図8】
図8は、従来の塗装ブース(浮遊槽無し)の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(第1の実施形態:浮遊槽有りの塗装ブースの改造)
図1A~
図3Bを参照しながら、浮遊槽有りの塗装ブースの改造方法及び改造後の塗装ブースの構造について説明する。
図1A~
図3Bにおいて、
図7及び
図8の従来の塗装ブース(浮遊槽無し)に存在した機能と同様の部分については、同一の参照符号を用いて、背景技術に記載の欄の説明を援用して、説明を省略することとする。
なお、塗装室101はむき出しになっていてもよく、塗装のための塗装スペースと言い換えることができるものとする(後述の第2の実施形態についても同様)。
【0052】
改造前の浮遊槽有りの塗装ブース200の構造を
図2に示す。なお、
図2に示す改造前の塗装ブース(浮遊槽有り)200においても、図示していないファンが洗浄室102の上部に取付けられている(後述の第2の実施形態についても同様)。
図2の基板114には、
図7及び
図8に示した浮遊槽無しの塗装ブース100と異なり、水路は形成されていない。
【0053】
洗浄室102の側面であって、基板114の下部に、循環用の穴201が形成されている。基板114は、穴201に向けて下がるように傾斜して取り付けられている。洗浄室102で自然落下した洗浄液は、当該傾斜に沿って、穴201に向けて流れていく。
穴201は、浮遊槽204と繋がっているため、洗浄液は、浮遊槽204に溜まる。
【0054】
また、塗装室101の下部の側面板部202にも、循環用の穴203が形成されている。穴203は、浮遊槽204と繋がっている。
【0055】
図示しないファンによる負圧によって、水槽104では、塗装室101から洗浄室102への流れが生じるため、水槽104の洗浄室102側の穴201から、浮遊槽204に向けての流れが生じ、浮遊槽204から、塗装室101側の穴203に向けての流れが生じる。このようにして、水槽104と浮遊槽204との間で循環することになる。改造前の塗装ブース200では、浮遊槽204に塗装カスが浮遊することとなる。
【0056】
しかし、改造前の塗装ブース200では、
図7及び
図8に示した場合と同様、渦巻板109の下部が水槽104となっており、当該下部にも、塗装カスが沈殿するため、洗浄は、大変な作業となっていた。
そこで、第1の実施形態では、この塗装ブース200を改造する改造方法及び改造後の塗装ブース210(
図3A)を提供する。
【0057】
改造のために使用する部材を、
図1A~
図1Cに示す。
図1Aに示すユニット211,212,213,214,215,216は、
図2の水槽104に敷き詰めるための部材である。
【0058】
たとえば、ユニット211~215は、鋼板やアルミ板などで形成された直方体となっている。ユニット216は、穴201の出口に合うような傾斜216aを有している。
なお、ユニット215及び216は、穴201に向けて全体が傾斜していてもよい。
なお、ユニット211~216については、塗装ブース200が設置されている現場で組み立てるようにしてもよいし、事前に組み立てておいてもよい。
【0059】
ユニット217は、浮遊槽204での液体の流れを良くするために湾曲部分を有する別のユニットである。ユニット217は、浮遊槽204において、塗装室101の穴203に対向する角に設置される。
ユニット218は、ユニット211~216を水槽204に設置した後に生じる水槽側浮遊部220での液体の流れを良くするために湾曲部分を有する別のユニットである。水槽側浮遊部220の角に設置される。
【0060】
上記のユニット211~218を用意した上で、塗装ブース200を改造する。
まず、
図2の塗装ブース200について、基板114を取り除く。
さらに、渦巻板109を支えている複数の渦巻板支柱112を取り除く。
なお、改造前の塗装ブース200の内部構造等によっては、基板114を取り外さなくてもよい場合がある。
【0061】
そして、洗浄室102側の水槽104の底面及び塗装室101側の水槽104の底面の一部に、ユニット211~216を敷き詰める。塗装室101側には、水槽側浮遊部220が形成されるように、塗装室101側の水槽104の全てにユニットを敷き詰めないようにする。
ユニット211~216の高さは、
図3Aに示すように、渦巻板109の底面の高さまである。したがって、
図3Aに示すように、渦巻板109とユニット213及び214との間には、隙間がなくなることとなる。
したがって、循環する液体は、渦巻板109の下には流れないようになる。
【0062】
ユニット215及びユニット216は、洗浄室102の下部に配置されることとなる。
ユニット211及びユニット212は、塗装室101の下部に配置されることとなる。
ユニット213及びユニット214は、一部が洗浄室102となり、残りが、塗装室101側となる。
なお、多少の液体の漏れ等は、本発明の本質から外れるので、ここでは、無視して説明している。防水加工の有無は、本発明を限定するものではない。
【0063】
なお、ユニットの数や形状、材質は、塗装ブースのサイズや構造に応じて、適宜適切なものとする。本発明では、渦巻板の下部に水槽部分が生じないようにするために、渦巻板の下部に水槽を底上げする一以上のユニットを配置し、当該ユニットに洗浄液が入り込まないようにすることを本発明の主旨としている。従って、ユニットの数量や形状、材質等は、本発明の主旨に従って、適宜決定すればよいのであり、図示した例は、本発明を限定するものでない。
【0064】
上記のように改造した塗装ブースを
図3Aに示す。
図3Aに示すように、渦巻板109の下部には、ユニットが配置されているので、水槽部分は構成されていない。また、塗装室101側の水槽104には、溝状になった水槽側浮遊部220が形成される。
図3Bのハッチングで示した領域が、洗浄液の溜まる領域である。もちろん、浮遊槽の有無204にも洗浄液が溜まる。
【0065】
以上のように構成された改造後の塗装ブース210を用いた場合の作用効果について説明する。
図3Bに示すように、塗装室101側の水槽では、深い部分と浅い部分が存在する。浮遊槽と繋がっている部分(水槽側浮遊部220)は深くなっており、鋸刃板108側は浅くなっている。
【0066】
水槽側浮遊部220では、浮遊槽204から漏れてきた一部の塗装カスが浮遊している。ファンの負圧によって生じる流れによって、水槽側浮遊部220の上層にある洗浄液及び水槽104の浅い部分の洗浄液が洗浄室102に吸い込まれることとなる。
【0067】
塗装ミストを捕捉した洗浄液が、鋸刃板108との間の隙間から洗浄室102に吸い込まれる。洗浄室102に吸い込まれた洗浄液は、渦巻板109を伝って、遠心力及び吸引力で飛沫化して、エリミネーター117によって、水滴となって、ユニット215及びユニット216に落下する。落下した水滴は、穴201を通じて、浮遊槽204に移動する。浮遊槽204では、塗装カスが集まり、浮遊する。ファンの負圧によって生じる流れによって、洗浄液が浮遊槽204から、穴203を通じて、水槽側浮遊部220に移動する。
【0068】
以上のような対流が生じることとなるが、渦巻板109の下に、洗浄液及び塗装カスが滞留することはなく、塗装室101側の水槽も、浮遊槽204と繋がる部分が深くなっているだけで、鋸刃板108側は浅くなっており、表層の洗浄液が勢いよく循環することとなる。
【0069】
したがって、水槽104内では、塗装カスが滞留する箇所がほとんどない。
【0070】
さらに、ユニット217及びユニット218のように、湾曲した構造のユニットを水槽104及び浮遊槽204の角に配置することで、角での洗浄液の対流を良くし、角での塗装カスの滞留を解消している。
【0071】
よって、塗装カスの滞留を極力減らすことができる改造後の塗装ブース210が提供されることとなる。結果、塗装ブース210を洗浄する際も、洗浄が容易となるのである。
【0072】
さらに、上記したように、塗装カスが水槽104内で、ほとんど滞留しないので、塗装カスの沈殿も極力減らすことが可能となっている。そのため、浮遊槽204に、生じた塗装カスを浮遊させておくことができる。
浮遊槽204で浮遊した塗装カスを別途設けた吸引装置で吸引すれば、水槽104内の塗装カスを取り除くことができる。
【0073】
さらに、塗装カスだけを吸引するのではなく、浮遊槽204から、塗装カスも含めて洗浄液を吸引して、塗装カスを濾過して、綺麗になった洗浄液を再び浮遊槽204又は水槽104に戻すことも可能である。
【0074】
また、浮遊槽204から、塗装カスも含めて洗浄液を吸引して、塗装カスを濾過して、綺麗になった洗浄液をタンクに貯めておくことも可能である。貯めておいた洗浄液を再び浮遊槽204又は水槽104に戻すことも可能である。
【0075】
このように、改造後の塗装ブース210では、洗浄液及び/又は塗装カスの吸引装置、塗装カスの濾過装置、並びに洗浄液の貯蔵装置をさらに設置することもできるし、さらに、塗装カスの濾過後の洗浄液を塗装ブース210に戻す洗浄液還流装置を設置することもできる。
【0076】
(第2の実施形態:浮遊槽無しの塗装ブースの改造)
次に、
図5に示す従来の浮遊槽無しの塗装ブース300の改造方法及び
図6Aに示す改造後の塗装ブース310について説明する。
図4~
図6Bにおいて、
図7及び
図8の従来の塗装ブース(浮遊槽無し)に存在した機能と同様の部分については、同一の参照符号を用いて、背景技術に記載の欄の説明を援用して、説明を省略することとする。
【0077】
図5に示す改造前の塗装ブース300には、基板114に設けられた穴から、水槽104に洗浄液を循環させる水路114a(破線で示す)が設けられている。基板114に落下した洗浄液は、二つの水路114aを介して、水槽104に戻るようになっている。
【0078】
図5に示すように、改造前の従来の塗装ブース300は、渦巻板109の下も水槽104となっているので、洗浄液が滞留し、塗装カスが沈殿しやすい構造となっていた。そのため、塗装カスの洗浄作業が大変であった。
【0079】
そこで、
図5に示す従来の塗装ブース300の改造方法及び改造後の塗装ブース310について、第2の実施形態では説明する。
【0080】
図4は、改造に用いるユニットを示す。改造のために、ユニット311,312,313を予め用意するか、現場で組み立てる。ユニット311,312,313は、鋼板やアルミ板などで製造する。
ユニット311及び312には、塗装室101側への還流用の溝314,315が形成されている。
ユニット313には、基板114に設けられた穴に取り付けられる固定水路316が設けられている。
さらに、ユニット313には、固定水路316と連結した内部水路317が形成されている。
ユニット312にも、内部水路317が形成されている。
【0081】
なお、ユニットの数や形状、配置については、一例に過ぎない。
渦巻板の下部に水槽を底上げする一以上のユニットを配置し、当該ユニットに洗浄液が入り込まないようにしつつ、基板からの洗浄液を戻す水路が形成されているのであれば、ユニットの数や形状、配置については、適宜変更してよい。
【0082】
ユニットに関して、その他の留意点については、第1の実施形態と同様である。
【0083】
図6Aに示すように、ユニット311,312,313を、塗装室101の底、渦巻板109の下、洗浄室102の底に設置する。このとき、基板114には、固定水路316用の新たな穴を設ける。既に開いている基板114の穴は閉じる。若しくは、新しく基板114を製造しておく。
【0084】
第1の実施形態と同様、塗装室101側の水槽104には、水槽側浮遊部220ができるように、塗装室101の底は、ユニットで敷き詰めないようにする。
塗装ブース310で水が溜まる部分を
図6Bのハッチング部分で示す。
【0085】
基板114に落下した洗浄液は、固定水路316、内部水路317、溝315,314を通じて、水槽104の水槽側浮遊部220に戻る。なお、溝315,314は上から閉じられていてもよい。
【0086】
このような構造によって、水槽側浮遊部220から鋸刃板108、渦巻板109、基板114、内部水路317、溝315,314という対流が生じることになる。
渦巻板109の下部には、ユニットが敷き詰められているので、洗浄液の塗装カスが沈殿することはない。
したがって、浮遊槽がないタイプの塗装ブースについても、洗浄が容易な改造を行うことができる。
【0087】
塗装カスは、水槽側浮遊部220で浮遊する。第1の実施形態と同様に、水槽側浮遊部220に、洗浄液及び/又は塗装カスの吸引装置、塗装カスの濾過装置、並びに洗浄液の貯蔵装置をさらに設置することもできるし、さらに、塗装カスの濾過後の洗浄液を塗装ブース210に戻す洗浄液還流装置を設置することもできる。
【0088】
なお、第2の実施形態において、基板114に既に開いている穴を流用できる場合は、新たに固定水路316用の穴を基板に開ける必要がないのは、言うまでもない。要するに、ユニット311,312,313の水路と基板114とが連結されていればよい。
【0089】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。本明細書に開示されている発明の構成要件は、それぞれ独立に単独した発明として成立するものとする。各構成要件をあらゆる組み合わせ方法で組み合わせた発明も、本発明に含まれることとする。本明細書上の具体的な表現については、あくまでも、例示であり、本発明には、当該例示的表現を概念化したものも含まれることとする。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、塗装ブースの改造方法及び改造後の塗装ブースであり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
100 塗装ブース
101 塗装室
102 洗浄室
103 前板
104 水槽
105 電動機
106 ファンケーシング
107 可動前板
108 鋸刃板
109 渦巻板
110 渦巻板押え金具
111 吐出口
112 渦巻板支柱
113 基板受支柱
114 基板
114a 水路
115 固定水路
116 可動水路
117 エリミネーター
200 改造前の塗装ブース
201 穴
202 側面板部
203 穴
204 浮遊槽
210 改造後の塗装ブース
211 ユニット
212 ユニット
213 ユニット
214 ユニット
215 ユニット
216 ユニット
216a 傾斜
220 水槽側浮遊部
300 改造前の塗装ブース
310 改造後の塗装ブース
311 ユニット
312 ユニット
313 ユニット
314 溝
315 溝
316 固定水路
317 内部水路
【要約】
【課題】塗装ブースを洗浄しやすい構造に改造する。
【解決手段】対象物を塗装するための塗装室101と、負圧を発生させて浄化された気体を排出する洗浄室102と、塗装室101と洗浄室102との間仕切りの下部に設けられた鋸刃板108と、鋸刃板108の下部でありかつ洗浄室102内に設けられた渦巻板109とを備える塗装ブース200を改造する。渦巻板109の底面との間に隙間が生じないように、直方体状の一以上のユニット211,212,213,214,215,216を、渦巻板109の底面に敷く。
【選択図】
図3A