(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】操作支援システムおよび操作支援機能付き操作スイッチユニット
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20240520BHJP
H01H 50/00 20060101ALI20240520BHJP
H01H 13/62 20060101ALN20240520BHJP
B23Q 11/00 20060101ALN20240520BHJP
【FI】
B25J19/06
H01H50/00 J
H01H13/62
B23Q11/00 D
(21)【出願番号】P 2020018376
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 繁年
(72)【発明者】
【氏名】前田 育男
(72)【発明者】
【氏名】笠間 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】吉井 英二
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/107376(WO,A1)
【文献】特開2002-224990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/06
H01H 50/00
H01H 13/62
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作支援システムであって、
操作者により手操作可能かつ作動部により作動可能に設けられ、装置を非常停止させるための非常停止スイッチと、
前記非常停止スイッチを操作しようとする操作者の意志を含む操作支援情報としての操作者の音声情報または動作情報を検知する検知部と、
前記検知部で検知された前記操作支援情報を処理する音声処理部または画像処理部と、
前記音声処理部または画像処理部による処理結果に基づいて、操作者の危険レベルに応じ、前記作動部により前記非常停止スイッチを作動させて前記装置を非常停止させるための人工知能
とを備え
、
前記人工知能が、前記危険レベルに応じ、前記非常停止のみならずソフト停止をも含む制御を前記装置に対して行っている、
ことを特徴とする操作支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作支援システムおよび操作支援機能付き操作スイッチユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2016/181734号パンフレットには、スタッカクレーン(30)の制御装置(100)との間で無線通信可能な非常停止端末(200)が記載されている。非常停止端末(200)の非常停止ボタン(210)が押されると、スタッカクレーン(30)の動力回路が遮断されて、スタッカクレーン(30)が停止するようになっている(段落[0068]~[0070]、[0073]、[0121]~[0123]および
図1~
図3、
図8参照)。
【0003】
一方、特開2019-102838号公報には、無線端末(2)により無線操作可能な非常停止スイッチ(52)が記載されている(段落[0032]および
図10参照)。非常停止スイッチ(52)は、当該非常停止スイッチ(2)を作動させる電磁ソレノイドからなるアクチュエータ(11)を有している(段落[0028]および
図10参照)。ロボット(R)の稼動中に操作者により無線端末(2)のボタン(20)が押し込み操作されると、無線端末(2)から操作信号が送信され、これをロボット(R)側の非常停止スイッチ(52)が受信し、これにより、非常停止スイッチ(2)のアクチュエータ(11)が駆動されて非常停止スイッチユニット(2)が操作され、その結果、ロボット(R)が非常停止するようになっている(段落[0032]参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記国際公開第2016/181734号パンフレットに記載のものでは、稼動中のスタッカクレーン(30)を停止させるには、操作者が非常停止端末(200)の非常停止ボタン(210)を手で押し込む必要があり、同様に、特開2019-102838号公報に記載のものでは、稼動中のロボット(R)を停止させるには、操作者が無線端末(2)のボタン(20)を押し込む必要がある。
【0005】
そのため、操作者の手が塞がっていて操作者が押しボタンを手ですぐに押せないような状況下では、非常停止の必要なときに迅速に対応できない恐れがある。また、上肢の全部や一部が欠損した身体障害者の場合には、元々押しボタンの押し込み操作が困難である。
【0006】
その一方、特開昭57-75794号公報(第1図、第2図)および特開2004-351533号公報(段落[0015]、
図2)には、ロボットに音声認識装置を設け、操作者の音声によりロボットの駆動制御を行うシステムについて記載されている。しかしながら、これらのシステムは、操作者の音声信号に基づいてロボットの駆動回路を直接制御したり、電気回路に直接作用したりするように構成されている。そのため、ロボットを非常停止させた場合、ロボット側の非常停止ボタンが押されていない状態でロボットが停止することになり、操作者以外の者にとってロボットの停止が人為的な操作の非常停止によるものなのか、他の機械的/電気的異常による停止なのか判断できないおそれがある。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、操作支援システムまたは作支援機能付き操作スイッチユニットにおいて、操作者が操作スイッチを手操作することができない場合でも、操作スイッチの操作支援を行えるようにして、より安全なシステムを構築できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る操作支援システムは、操作者により手操作可能かつ作動部により作動可能に設けられ、装置を非常停止させるための非常停止スイッチと、非常停止スイッチを操作しようとする操作者の意志を含む操作支援情報としての操作者の音声情報または動作情報を検知する検知部と、検知部で検知された操作支援情報を処理する音声処理部または画像処理部と、音声処理部または画像処理部による処理結果に基づいて、操作者の危険レベルに応じ、作動部により非常停止スイッチを作動させて装置を非常停止させるための人工知能とを備えている。人工知能は、危険レベルに応じ、非常停止のみならずソフト停止をも含む制御を装置に対して行っている。
【0009】
本発明によれば、装置の運転中には、検知部により、非常停止スイッチを操作しようとする操作者の意志を含む操作支援情報としての操作者の音声情報または動作情報が検知される。すると、音声処理部または画像処理部により、検知部で検知された操作支援情報が処理され、その処理結果に基づいて、人工知能が、操作者の危険レベルに応じ、作動部により非常停止スイッチを作動させ、これにより、装置が非常停止する。また、人工知能は、危険レベルに応じ、非常停止のみならずソフト停止をも含む制御を装置に対して行う。
【0010】
このように、非常停止スイッチを操作しようとする操作者の意志を含む操作支援情報としての操作者の音声情報または動作情報の処理結果に基づいて、人工知能が、操作者の危険レベルに応じ、作動部により非常停止スイッチを作動させるので、操作者が非常停止スイッチを手操作することができない状況下でも、非常停止スイッチを操作できるようになるとともに、手操作以外の方法で非常停止スイッチを操作できるようになるので、非常停止スイッチの操作支援を行える。しかも、この場合には、検知部で検知された操作支援情報に基づいて装置が非常停止する際には、非常停止スイッチが作動しているので、操作者は装置の停止が非常停止スイッチの作動によるものであることを認識でき、これにより、より安全なシステムを構築できる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、非常停止スイッチを操作しようとする操作者の意志を含む操作支援情報としての操作者の音声情報または動作情報の処理結果に基づいて、人工知能が、操作者の危険レベルに応じ、作動部により非常停止スイッチを作動させるので、操作者が非常停止スイッチを手操作することができない場合でも、非常停止スイッチを操作できるようになるとともに、手操作以外の方法で非常停止スイッチを操作できるようになるので、非常停止スイッチの操作支援を行える。しかも、この場合には、操作支援情報としての操作者の音声情報または動作情報に基づいて装置が非常停止する際には、非常停止スイッチが作動しているので、操作者は装置の停止が非常停止スイッチの作動によるものであることを認識でき、これにより、より安全なシステムを構築できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施例による操作支援システムの全体斜視図である。
【
図2】前記操作支援システム(
図1)の平面図である。
【
図3】前記操作支援システム(
図1)の側面図である。
【
図4】前記操作支援システム(
図1)を構成する非常停止スイッチ(操作スイッチ/操作支援機能付き操作スイッチユニット)の縦断面概略図であって、非常停止スイッチの非操作時の状態を示している。
【
図5】前記非常停止スイッチ(
図4)の操作時の状態を示している。
【
図6】前記操作支援システム(
図1)の概略ブロック構成図である。
【
図7】前記操作支援システム(
図1)の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【
図7A】前記操作支援システム(
図1)の制御フローの一例を示すフローチャートである。
【
図8】前記非常停止スイッチ(操作スイッチ/操作支援機能付き操作スイッチユニット)(
図4)の変形例の縦断面概略図であって、非常停止スイッチの非操作時の状態を示している。
【
図9】前記非常停止スイッチ(
図8)の操作時の状態を示している。
【
図10】前記非常停止スイッチ(操作スイッチ/操作支援機能付き操作スイッチユニット)(
図4)の別の変形例の縦断面概略図であって、非常停止スイッチの非操作時の状態を示している。
【
図11】前記非常停止スイッチ(
図10)の操作時の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし
図7Aは、本発明の一実施例による操作支援システムを説明するための図である。
図1ないし
図3は操作支援システムの全体構成を示し、
図4および
図5は非常停止スイッチの概略構成を示し、
図6は当該システムの概略ブロック構成を示し、
図7、
図7Aは当該システムの制御フローの一例を示している。なお、
図4および
図5では、図示の便宜上、ハッチングを省略して示している。
【0020】
図1ないし
図3に示すように、操作支援システム1は、ロボット(装置)Rを備えている。ロボットRの近くには作業者(操作者)Pが位置しており、ロボットRは、作業者Pと協調して作業を行う協調ロボットである。
【0021】
ロボットRは、稼動時には、サブテーブルT’上のワークWをロボットアームRaの先端のハンドによりピックアップし、それを作業テーブルTの上に載置されたトレイt内の所定の位置に順次入れていくといった作業を行う。一方、作業者Pは、ロボットRの稼動時には、ワークWをサブテーブルT’上の空いた位置に順次配置していくといった作業を行う。
【0022】
作業テーブルT上には、プログラマブル表示器50が配置されている。プログラマブル表示器50は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のディスプレイを有している。テーブルTの側面たとえば左右の各側面および背面には、それぞれセーフティレーザスキャナ51が配置されている。各レーザスキャナ51は、作業者Pやその他の人の接近を検知するためのものである。テーブルTの前面には、ロボットRを非常停止させる(操作する)ための非常停止スイッチ(操作スイッチ)/非常停止スイッチユニット(操作支援機能付き操作スイッチユニット)2が配置されている。テーブルTの近傍には、グラフィカルライト53が設置されている。グラフィカルライト53は、ロボットアームRaの先端のハンドが次に移動してくる場所に光を照射することで、作業者PにロボットR側の予告情報を知らせるためのものである。また、サブテーブルT’上には、ワークWに付されたワーク情報である2次元コードを読み取るための2次元コードスキャナ54が配置されている。
【0023】
また、テーブルTの前面には、操作者Pの音声を集音するためのマイク(検知部)55が取り付けられており、ロボットRの上方には、操作者Pを撮影するためのカメラ(検知部)104が配置されている。なお、カメラ55は、マグネット等により着脱自在になっているため、作業内容に応じて適切な任意の位置に取り付けることが可能である。
【0024】
非常停止スイッチ2は、
図4および
図5に示すように、ケース(筐体)20と、ケース20の一端側に設けられ、ケース20に軸方向に移動可能に支持されるとともに、作業者Pが押し込み操作(手操作)するための押圧面21aを有する非常停止ボタン21と、非常停止ボタン21の押圧面21aと逆側の裏面に連結され、非常停止ボタン21の操作に連動して移動するように設けられるとともに、ケース20の内部において軸方向に延びる軸部22とを備えている。
【0025】
軸部22の先端部は、軸方向に直線状に延びる第1の軸部22Aと、第1の軸部22Aの先端から軸方向と斜めに交差する方向に延びる第2の軸部22Bと、第2の軸部22Bの先端から第1の軸部22Aと平行に延びる第3の軸部22Cとから構成されており、これら第1ないし第3の軸部22A~22Cは一体に連設されている。この構成により、第1の軸部22Aと第2の軸部22Bとの間には段差部22b1が形成され、第2の軸部22Bと第3の軸部22Cとの間には段差部22b2が形成されている。この例では、段差部22b1は単一の傾斜面から構成され、段差部22b2は交差する2つの傾斜面から構成されている。
【0026】
一方、軸部22の先端部を挟んで第1の接点281および第2の接点282が対向配置されている。第1、第2の接点281、282は、第1の軸部22Aおよび第3の軸部22Cの軸方向と直交する方向に移動可能に設けられており、その移動によって接点が切り替わるように構成されている。各接点281、282にはそれぞれ端子片351,352が接続されている。第1の接点281は傾斜面からなる突出部を有しており、当該突出部は軸部22の段差部22b2と当接しつつ係合し得るように設けられている。同様に、第2の接点282は傾斜面からなる突出部を有しており、当該突出部は軸部22の段差部22b1と当接しつつ係合し得るように設けられている。第1の接点281はばね291の弾性反発力により軸部22の側に向かって付勢されており、同様に、第2の接点282はばね292の弾性反発力により軸部22の側に向かって付勢されている。
【0027】
図4に示すように、非常停止スイッチ2の非操作時の状態においては、非常停止ボタン21が押し込まれていない。この状態では、第1の接点28
1は、ばね29
1の弾性反発力により軸部22の側に伸長しており、突出部が段差部22b
2と当接しかつ係合していてON状態にある。これに対して、第2の接点28
2は、ばね29
2の弾性反発力に抗してケース20の側に縮退しており、突出部が第3の軸部22Cの外周面と当接していてOFF状態にある。このように、第1の接点28
1がONでかつ第2の接点28
2がOFFのとき、非常停止スイッチ2の接点はONになる。
【0028】
図5に示すように、非常停止スイッチ2の操作時の状態においては、非常停止ボタン21が押し込まれている。この状態では、第1の接点28
1は、ばね29
1の弾性反発力に抗してケース20の側に縮退しており、突出部が第1の軸部22Aの外周面と当接していてOFF状態にある。これに対して、第2の接点28
2は、ばね29
2の弾性反発力により軸部22の側に伸長しており、突出部が第1の軸部22Aの外周面と当接していてON状態にある。このように、第1の接点28
1がOFFでかつ第2の接点28
2がONのとき、非常停止スイッチ2の接点はOFFになる。
【0029】
非常停止スイッチ2の操作(つまり非常停止ボタン21の押し込み操作)の際には、非常停止スイッチ2は、
図4の非操作時の状態から
図5の操作時の状態に移行するが、このとき、第1の接点28
1は段差部22b
2を乗り越えて第1の軸部22Aの外周面と当接し、第2の接点28
2は段差部22b
1を経て第1の軸部22Aの外周面と当接する。また、非常停止スイッチ2の復帰動作(つまり非常停止ボタン21を引っ張って元の位置に戻す操作)の際には、非常停止スイッチ2は、
図5の操作時の状態から
図4の非操作時の状態に移行するが、このとき、第2の接点28
2は段差部22b
1を乗り越えて第3の軸部22Cの外周面と当接し、第2の接点28
2は段差部22b
2と当接して係合する。
【0030】
非常停止スイッチ2は、さらに、ケース20の内部に設けられ、当該非常停止スイッチ2を作動させるための電磁ソレノイド(作動部)3を有している。電磁ソレノイド3は、第1、第2の接点281、282と非常停止ボタン21との間に配置されており、ソレノイド本体(電磁コイル部)30を有している。ソレノイド本体30は、軸部22を軸方向スライド可能に保持しており、軸部22を軸方向に移動させるように作用する。電磁ソレノイド3には、電流供給用のリード線34が接続されている。
【0031】
軸部22は、その略中央において外周側に張り出すフランジ部22aを有している。一方、ケース20の内壁面には、内周側に張り出す張出し部20aが設けられている。張出し部20aは、軸方向に所定の間隔を隔ててフランジ部22aに対向配置されている。フランジ部22aおよび張出し部20a間には、コイルばね25が圧縮状態で配設されている。コイルばね25の一端は、フランジ部22aに当接して係止されることで軸部22の移動とともに移動するようになっており、コイルばね25の他端は、張出し部20aに当接して係止されることでケース20の側に係止されている。コイルばね25は、フランジ部22aおよび張出し部20aに対して弾性反発力を作用させている。この弾性反発力により、軸部22は、非常停止スイッチ2の接点をOFFにする側(すなわち、非常停止ボタン21のON状態からOFF状態の側)に付勢されている。
【0032】
この例では、
図4に示す非常停止スイッチ2の非操作時(操作前)においては、コイルばね25は張出し部20aおよびフランジ部22a間で最大圧縮された状態におかれており、コイルばね25の弾性反発力は最大であって、最大の弾性エネルギーを保有している。これに対して、
図5に示す非常停止スイッチ2の操作時(操作後)においては、コイルばね25は
図5の状態から軸方向に伸びていて、コイルばね25の弾性反発力は減少しており、コイルばね25が保有する弾性エネルギーも減少している。
【0033】
また、軸部22は、非常停止ボタン21の近傍において外周側に突出する突部22bを有している。突部22bは縦断面が台形形状をしており、一対の傾斜面を有している。一方、ケース20の内部には、一対の係合部材26が設けられている。各係合部材26は、突部22bの各傾斜面と係合し得る一対の傾斜面を有している。各係合部材26は、ケース20の内部に配設されたばね27の弾性反発力により、対応する各突部22bの側に付勢されている。
図4に示す非操作時の状態では、突部22bの図示右側の傾斜面に係合部材26の図示左側の傾斜面が係合しており、
図5に示す操作時の状態では、突部22bの図示左側の傾斜面に係合部材26の図示右側の傾斜面が係合している。このように、
図4の非操作時の状態から、非常停止ボタン21が押し込まれるためには、軸部22の各突部22bがそれぞれ対応する係合部材26を確実に乗り越える必要があり、したがって、これら突部22b、係合部材26およびばね27により、非常停止ボタン21が確実に操作されない限り接点がONからOFFに移行しないようになっている。
【0034】
なお、ケース20において、電磁ソレノイド3、コイルばね25、軸部22の突部22bおよび係合部材26が収容された部分は操作部20Aに相当しており、第1、第2の接点281、282が収容された部分は接点部(コンタクト部)20Bに相当している。操作部20Aの一端側に非常停止ボタン21が配置され、他端側に接点部20Bが配置されている。
【0035】
次に、操作支援システム1の概略ブロック構成を
図6に示す。
同図に示すように、当該システム1は、ロボットコントローラ101を有している。ロボットコントローラ101は、CPUおよびメモリを備えており、メモリには、ロボットRの制御プログラムが格納されている。また、当該メモリ内には、カメラ104で撮像された画像と比較してパターンマッチングを行うための種々のデジタル画像パターンが格納されるとともに、マイク55で集音された音声と比較してパターンマッチングを行うための種々のデジタル音声信号パターンが格納されている。
【0036】
デジタル画像パターンには、操作者Pが危険を回避しようとする様々な動作(ジェスチャー)パターンが含まれる。たとえば、操作者PがロボットRに向かって両手または片手を広げている動作パターンや、操作者Pが両手または片手で顔を覆っている動作パターン等。デジタル音声信号パターンには、たとえば、「危ない!」、「危険!」、「停まれ」、「停止!」、「当たる!」、「ぶつかる!」等の危険状態を表現する言語に相当する様々な音声パターンが含まれる。
【0037】
ロボットコントローラ101には、プログラマブル表示器50、レーザスキャナ(LS)51、グラフィカルライト53、2次元コードスキャナ54、アクチュエータやモータを含むロボット駆動部102、カメラ104、マイク55、非常停止ランプ/ブザー103、非常停止スイッチ2が接続されている。カメラ104は画像処理部105に接続され、マイク55は音声処理部56に接続されている。カメラ104としては、好ましくは、動画撮影のためのビデオカメラやデジタルカメラが用いられる。非常停止スイッチ2は、CPUおよびメモリを備えた制御部33を有しており、制御部33にソレノイド3および非常停止ボタン21が接続されている。
【0038】
次に、操作支援システム1において、非常停止スイッチ2に対する操作の制御フローについて、
図7および
図7Aを用いて説明する。
プログラムがスタートすると、ロボットR側のステップC1において、ロボットRの運転が開始される。ロボットRの稼動時には、ロボットRは、ロボットコントローラ101に格納された制御プログラムにしたがって運転される。作業者Pは、ロボットRの稼動中は、所定の手順にしたがってワークWをサブテーブルT’上に載せる等の作業を行って、ロボットRと協調作業を行う。
【0039】
ロボットRの運転開始後、ステップC2では、カメラ104による撮影が開始され、撮影された画像は画像処理部105内に順次取り込まれる。次に、ステップC3では、音声入力があったかどうか判断される。操作者Pの音声がマイク55で集音されれば、ステップC3での判断が「yes」となってステップC4に移行し、
図7Aに示す音声割込みサブルーチンを実行する。
【0040】
図7AのステップT1では、マイク55で集音された音声を音声処理部56に取り込む。音声処理部56は、ステップT2において、ステップT1で取り込まれた音声に対してA/D変換(アナログ-デジタル変換)を行ってデジタル音声信号に変換し、次に、ステップT3において、ノイズ除去等のフィルタリングやデータ圧縮等の音声処理を行う。
【0041】
ステップT4において、音声処理部56は、予めロボットコントローラ101のメモリ内に格納されていた種々のデジタル音声信号パターンと、マイク55で集音されて変換されたデジタル音声信号とを比較してパターンマッチングを行うことにより、マイク55で集音された音声が非常停止スイッチ2を操作しようとする操作者Pの意志を含む操作支援情報(音声情報)であるかどうか、すなわち、非常停止スイッチ2の接点をOFFにしようとするものであるかどうかに基づいて、危険状態か否かの危険判定を行う。
【0042】
次に、ステップT5では、ステップT4における危険判定の結果、危険であると判断されれば、
図7のメインルーチンのステップC7に移行する。一方、ステップT4における危険判定の結果、危険でないと判断されれば、
図7のメインルーチンのステップC5に移行する。
【0043】
ステップC7では、非常停止信号を出力する。出力された非常停止信号は、非常停止スイッチ2の制御部33に入力される。これにより、非常停止スイッチ2側のステップS1では、非常停止スイッチ2のソレノイド3に電流が供給されて、ソレノイド3がONになる。
【0044】
すると、
図4→
図5に示すように、軸部22がソレノイド3内に引き込まれて図示右方に移動し、これにより、非常停止スイッチ2の接点がONからOFFに切り替わる(ステップS2参照)。その結果、ロボットR側では、ロボットRが非常停止する(ステップC8参照)。
【0045】
次に、非常停止スイッチ2の復帰処理の際には、非常停止ボタン21を手前側に引っ張って元の位置に戻す(
図5→
図4参照)。これにより、非常停止スイッチ2の接点がOFFからONに切り替わる(ステップS3参照)。操作者は安全確認を行った後、起動ボタン(図示せず)をONすることにより、ロボットRの運転が再開される(ステップC9参照)。ロボットRの運転再開後、プログラムはステップC2に戻り、ステップC2~C9の処理を繰り返す。
【0046】
一方、ステップC5では、ステップC2で画像処理部105に取り込まれていたカメラ104の撮影画像に対して、画像処理部105が、閾値処理による画像データの2値化等の画像処理を行う。そして、画像処理部105は、予めロボットコントローラ101のメモリ内に格納されていた種々のデジタル画像パターンと、カメラ104で撮影された画像とを比較してパターンマッチングを行うことにより、カメラ104で撮影された画像が非常停止スイッチ2を操作しようとする操作者Pの意志を含む操作支援情報(動作情報)であるかどうか、すなわち、非常停止スイッチ2の接点をOFFにしようとするものであるかどうかに基づいて、危険状態か否かの危険判定を行う。
【0047】
次に、ステップC6では、ステップC5における危険判定の結果、危険であると判断されれば、ステップC7に移行して、非常停止信号を出力する。一方、ステップC5における危険判定の結果、危険でないと判断されれば、プログラムは、ステップC2に戻り、ステップC2~C6の処理を繰り返す。
【0048】
このように本実施例によれば、非常停止スイッチ2を操作しようとする操作者Pの意志を含む操作支援情報に基づいて、ソレノイド3により非常停止スイッチ2が作動されるので、操作者Pが非常停止スイッチ2を手操作することができない場合でも、非常停止スイッチ2を操作できるようになるとともに、手操作以外の方法で非常停止スイッチ2を操作できるようになるので、非常停止スイッチ2の操作支援を行えるようになる。しかも、この場合には、カメラ104やマイク55で検知された操作支援情報(音声情報および動作情報)に基づいてロボットRが操作される際には、非常停止スイッチ2が作動しているので、操作者PはロボットRの操作が非常停止スイッチ2の作動によるものであることを認識でき、これにより、より安全なシステムを構築できる。
【0049】
また、本実施例によれば、操作者Pの音声を画像に優先して処理するようにしたので、咄嗟の場合に操作者Pの安全をより確実に担保できる。
【0050】
〔第1の変形例〕
前記実施例では、操作者Pを撮影するための検知部としてカメラ(つまりイメージセンサ)104を用いた例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。レーザー光をパルス状に照射してその散乱光を測定することにより物体の検出・測距を行うLiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)を用いるようにしてもよく、その他の撮像機器を用いるようにしてもよい。また、前記実施例では、操作者Pの音声を集音するための検知部として専用のマイク55を用いた例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。マイク機能を有する機器(たとえばスマートフォン等)を用いるようにしてもよい。本発明による検知部としては、非常停止スイッチ2を操作しようとする操作者Pの意志を検知可能なものであれば、任意の適切なものを採用し得る。
【0051】
〔第2の変形例〕
前記実施例では、非常停止スイッチ2を操作しようとする操作者Pの意志を含む操作支援情報として、操作者Pの音声情報および動作情報の双方を用いたが、本発明の適用はこれに限定されない。これら音声情報および動作情報のいずれか一方を用いるようにしてもよい。また、操作者Pの視点(注視点または視線)を検知するセンサを備えたアイウエアユニット(スマートグラス含む)やヘッドギヤユニットを操作者が着用し、危険時に操作者Pが非常停止スイッチ2を注視することに基づく視覚情報を用いるようにしてもよい。さらに、これら音声情報、動作情報および視覚情報のうちの2つ以上の情報を組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0052】
〔第3の変形例〕
前記実施例では、画像処理のみならず、音声処理においてもパターンマッチングを行うようにした例を示したが、音声処理に関しては、たとえば自然言語処理(NLP:Natural Language Processing)のような言語処理を行うことにより、操作者Pの発声する言語をコンピュータに認識させるようにしてもよい。その場合、人工知能(AI)を利用してコンピュータ側に学習させるようにすれば、音声認識レベルを向上させることができる。
【0053】
〔第4の変形例〕
前記実施例では、非常停止スイッチ2をロボットRのロボットコントローラ101に接続することにより、危険時には、非常停止スイッチ2がロボットコントローラ101からの非常停止信号を受信して非常停止スイッチ2の接点をOFFにするようにした例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。非常停止スイッチ2をロボットRの電源回路に組み込むことにより、非常停止スイッチ2の操作時にロボットRへの電力供給が遮断されるようにしてもよい。
【0054】
〔第5の変形例〕
前記実施例では、画像処理部105および音声処理部56をそれぞれ専用の装置として設けた例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。ロボットコントローラ101にパソコンを接続し、パソコンにインストールされた音声認識ソフトや画像認識ソフトを利用するようにしてもよい。この場合、声認証ソフトや顔認証ソフトを組み合わせることにより、操作者Pを特定の人に限定して適用することも可能であり、その際に、人工知能(AI)と組み合わせて操作者Pの発声や動作の癖を学習させるようにしてもよい。これにより、誤動作が少なくかつ一層安全なシステムを構築できる。また、人工知能を用いて危険レベルを学習させるようにしてもよく、これにより、危険レベルに応じて、非常停止させるか、あるいはソフト停止(つまり、ロボットRへの電力供給を維持したまま、制御プログラムやシーケンサー、論理回路等によってロボットRを減速させながら停止)させるか等の種々の制御が可能になる。
【0055】
〔第6の変形例〕
前記実施例では、ロボットコントローラ101に各種機器を接続した例を示したが、ロボットコントローラ101の代わりに、またはこれに加えて、PLC(Programmable Logic Controller;プログラマブル・ロジック・コントローラ)を設けるようにしてもよい。
【0056】
〔第7の変形例〕
前記実施例中、
図7のステップC7において、非常停止信号を出力する際には、たとえば、チャンネル数を複数にしてこれらを冗長化するようにしてもよい。この場合、各チャンネルからの信号は論理和回路に入力されており、そのため、少なくともいずれか一の信号が入力されれば、ロボットコントローラ101から非常停止信号が出力されるようになっている。このような冗長化は、とくに、非常停止スイッチ2がロボットコントローラ101に対して無線接続されているような場合において、接続の確実性を向上できる。
【0057】
〔第8の変形例〕
図8、
図9は非常停止スイッチ2の変形例の概略構成を示しており、これらの図において、前記実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
図8は非常停止スイッチ2の非操作時の状態を示し、
図9は非常停止スイッチ2の操作時の状態を示している。
【0058】
この例では、接点の構成が前記実施例とは異なっている。
図8に示すように、軸部22の先端には、軸部22とともに移動する可動接点23が取り付けられ、ケース20の内壁面には、固定接点24が固定されており、固定接点24は可動接点23に対向配置されている。また、コイルばね25の弾性反発力により、可動接点23が固定接点24から離れる方向(つまり接点開離方向)に常時付勢されている。
【0059】
この場合においても、ロボットコントローラ101からの非常停止信号の受信時には、ソレノイド3が駆動されることにより、非常停止スイッチ2の接点がONからOFFに切り替わるようになっている。
【0060】
〔第9の変形例〕
図10、
図11は非常停止スイッチ2の別の変形例の概略構成を示しており、これらの図において、前記実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
図10は非常停止スイッチ2の非操作時の状態を示し、
図11は非常停止スイッチ2の操作時の状態を示している。
【0061】
この例では、接点の構成は前記第6の変形例と同様であるが、ソレノイド3の位置が前記実施例および前記第6の変形例とは異なっている。
図10に示すように、軸部22の凸部22bと係合する一方の係合部材26’の背面には、軸部22の軸方向と直交する方向に延びる支軸26aの一端が取り付けられており、支軸26aはばね27’を挿通して延びている。支軸26aの他端には、ソレノイド3が設けられており、支軸26aはソレノイド3にスライド可能に支持されている。
【0062】
この場合には、
図10に示す状態において、ロボットコントローラ101から非常停止信号を受信することにより、ソレノイド3に電流が供給されると、ソレノイド3に支持された支軸26aがソレノイド3側に引き込まれ、それにともなって、係合部材26’が軸部22の凸部22bから離れようとする。このとき、軸部22はばね25の弾性反発力により図示右側に付勢されているので、軸部22bの各凸部22bは係合部材26、26’を乗り越えて図示右側に移動する。その結果、
図11に示すように、可動接点23が固定接点24から開離して接点がONからOFFに移行する。
【0063】
この場合においても、非常停止信号の受信時には、ソレノイド3が駆動されることにより、非常停止スイッチ2の接点がONからOFFに切り替わるようになっている。
【0064】
〔第10の変形例〕
前記実施例では、非常停止スイッチにより操作される装置として、協調ロボットを例にとって説明したが、本発明は、協調ロボット以外の産業用ロボットにも適用可能である。また、ロボットとしては、垂直多関節ロボットに限定されるものではなく、スカラロボットやパラレルリンクロボット等のその他のロボットでもよく、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)でもよい。さらには、本発明の適用は、FA(ファクトリーオートメーション)の分野に限らず、たとえばパワーショベル等の特殊車両を含む産業車両や工事車両の分野でもよい。また、前記実施例では、単一のロボットRを制御する例を示したが、本発明は複数のロボットを制御対象としてもよい。
【0065】
〔第11の変形例〕
前記実施例では、操作スイッチとして、非常停止スイッチを例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、一旦停止等のその他の停止スイッチでもよい。また、速度切り替えによる速度制御等を行うセレクタスイッチやレバースイッチ、カムスイッチ、フットスイッチ等の離散値を扱うスイッチに限らず、ボリュームのような連続値を扱うポテンショメータ(可変抵抗、可変容量等)等でもよい。
【0066】
〔その他の変形例〕
上述した実施例および各変形例はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施例を構築し得る。
【0067】
〔他の適用例〕
前記実施例および前記各変形例では、本発明が適用される分野として、製造業や建設、土木の分野を例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、本発明は、飲食業界や食品業界、医療、流通の分野にも同様に適用できる。これらの分野においても、協調ロボットやその他のロボットが用いられることがあるからである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、操作者により手操作可能な操作スイッチを備えた操作支援システムおよび操作支援機能付き操作スイッチユニットに有用である。
【符号の説明】
【0069】
1: 操作支援システム
2: 非常停止スイッチ(操作スイッチ)/非常停止スイッチユニット(操作支援機能付き操作スイッチユニット)
3: 電磁ソレノイド(作動部)
55: マイク(検知部)
104: カメラ(検知部)
R: ロボット(装置)
P: 作業者(操作者)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【文献】国際公開第2016/181734号パンフレット(段落[0068]~[0070]、[0073]、[0121]~[0123]および
図1~
図3、
図8)
【文献】特開2019-102838号公報(段落[0028]、[0032]および
図10)
【文献】特開昭57-75794号公報(第1図、第2図)
【文献】特開2004-351533号公報(段落[0015]、
図2)