(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】シリーズハイブリッド方式又は電気式の気動車
(51)【国際特許分類】
B61C 7/04 20060101AFI20240520BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20240520BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20240520BHJP
【FI】
B61C7/04
B60K6/40
B60K6/46 ZHV
(21)【出願番号】P 2020106083
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2019132597
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】北山 茂
(72)【発明者】
【氏名】河合 竜太
(72)【発明者】
【氏名】松井 諒
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-229745(JP,A)
【文献】特開平04-103459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61C 7/04
B60K 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン及び発電機をフレームに取り付けて
台枠に取り付けられたシリーズハイブリッド方式又は電気式の気動車において、
前記台枠は、レール方向に平行に離間して配置される側梁と、該側梁間に渡される横梁を備え、
前記エンジンと前記発電機は連結され、吊り下げ用ブラケットによってその側面を3点で支持され、
前記吊り下げ用ブラケットは、一次防振ゴムを介して前記フレームに係合され、
前記フレームは、
2本の前記横梁を跨ぐように前記側梁近傍に溶接されて設けられるブラケットの下部に二次防振ゴムを介して取り付けられていること、
を特徴とするシリーズハイブリッド方式又は電気式の気動車。
【請求項2】
請求項1に記載のシリーズハイブリッド方式又は電気式の気動車において、
前記フレームは、側梁同士を繋ぐように枕木方向と平行に配置された少なくとも2つの枠梁材を有し、該枠梁材に取り付けられた前記吊り下げ用ブラケットを備えること、
を特徴とするシリーズハイブリッド方式又は電気式の気動車。
【請求項3】
請求項2に記載のシリーズハイブリッド方式又は電気式の気動車において、
前記エンジン及び前記発電機は、前記吊り下げ用ブラケットによって前記エンジン側を1点、前記発電機側を2点で支持し、
前記フレームは、前記台枠の横梁に前記二次防振ゴムを介して取り付けられ、その取り付け位置は前記側梁近傍に2箇所ずつ設けられていること、
を特徴とするシリーズハイブリッド方式又は電気式の気動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリーズハイブリッド方式又は電気式を採用した気動車に関し、具体的には気動車の動力源より生じる振動が客室内に伝達されることを防ぎ、乗り心地の向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両に用いられる気動車の動力源としては、近年、ディーゼルエンジンとモータの2つの駆動源を利用したハイブリッド方式のものも検討され、一部では採用されている。ハイブリッド方式の気動車を用いた鉄道車両に対するニーズはそれほど高くないものの、ユーザーの事情によっては非電化区間を走らせたいというニーズがある。こうしたハイブリッド方式の駆動源からの振動というのは、通常の電車車両とは異なるものではあるが、ハイブリッド方式の気動車の数が少ない事もあって、十分対策が成されていない現状がある。この問題は、電気式の気動車にも言えることである。
【0003】
特許文献1には、車両搭載機器の吊り下げ支持具に関する技術が開示されている。車両のフレーム底面に搭載する機器を、搭載台をロの字状に構成した支持枠で吊り下げることで、車両搭載機器の取り付けの容易化を図っている。
【0004】
特許文献2には、鉄道車両の防振ゴム支持構造に関する技術が開示されている。主変圧器と取付金との間に上側の防振ゴム部材が、取付金とワッシャとの間に下側の防振ゴム部材が設けられ、主変圧器の取付金が上側の防振ゴム部材と下側の防振ゴム部材との間に挟まれた状態にすることで、床下機器からの振動・騒音を低減している。
【0005】
特許文献3には、気動車に関する技術が開示されている。車体の床下にエンジンを備えた気動車において、防振性を備えていると共に車体でエンジンを支持するために車体とエンジンとの間に設けられた振動吸収部材と、車体及びエンジンから離れて車体とエンジンとの間に設置された遮音部材とを有している事で、エンジンの振動・騒音が気動車の車室内に入ることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-105489号公報
【文献】特開2007-308042号公報
【文献】特開2006-27535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1乃至特許文献3に開示される技術の何れも、ハイブリッド方式又は電気式の気動車に用いる事を前提とした技術ではない。そして、近年は鉄道車両に対してより高い静粛性や乗り心地が求められる傾向にあり、ハイブリッド方式又は電気式を採用した気動車もその例外ではない。出願人は、ハイブリッド方式の気動車のうち、シリーズハイブリッド方式の気動車を提案しているが、シリーズハイブリッド方式の気動車にもより一層高いレベルの振動・騒音の低減や、気動車を用いた鉄道車両の高速化などが求められている。高速化すれば振動・騒音の問題がより顕著になるが、特許文献1乃至特許文献3に開示されるような従来技術では、対応できない可能性が高い。この問題は電気式の気動車及びそれを用いた鉄道車両でも同様なことが言える。このため、シリーズハイブリッド方式及び電気式の気動車を用いた鉄道車両においても乗り心地向上のためにより一層高いレベルの振動・騒音の対策が求められている。
【0008】
そこで、本発明はこの様な課題を解決し、より高い乗り心地を実現可能なシリーズハイブリッド方式の気動車又は電気式の気動車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一態様によるシリーズハイブリッド方式又は電気式の気動車は、以下のような特徴を有する。
【0010】
(1)エンジン及び発電機をフレームに取り付けて設けられたシリーズハイブリッド方式又は電気式の気動車において、前記エンジンと前記発電機は連結され、吊り下げ用ブラケットによってその側面を3点で支持され、前記吊り下げ用ブラケットは、一次防振ゴムを介して前記フレームに係合され、前記フレームは、車体の台枠の下部に二次防振ゴムを介して取り付けられていること、を特徴とする。
【0011】
(2)(1)に記載のシリーズハイブリッド方式又は電気式の気動車において、前記フレームは、側梁同士を繋ぐように枕木方向と平行に配置された少なくとも2つの枠梁材を有し、該枠梁材に取り付けられた前記吊り下げ用ブラケットを備えること、が好ましい。
【0012】
(3)(2)に記載のシリーズハイブリッド方式又は電気式の気動車において、前記エンジン及び前記発電機は、前記吊り下げ用ブラケットによって前記エンジン側を1点、前記発電機側を2点で支持し、前記フレームは、前記台枠の横梁に前記二次防振ゴムを介して取り付けられ、その取り付け位置は前記側梁近傍に2箇所ずつ設けられていること、が好ましい。
【0013】
上記(1)乃至(3)に記載の態様によって、気動車の課題である振動の低減を実現できる。これは、車体の台枠の下部にフレームが二次防振ゴムを介して取り付けられ、更に吊り下げ用ブラケットが一次防振ゴムを介してエンジン及び発電機を支持しているためである。つまりエンジンや発電機は車両構体に対して2重防振構造となっており、エンジンや発電機などの振動源となる駆動装置から、車両構体に振動が伝達されることを防ぐことができる。その結果、シリーズハイブリッド方式の気動車又は電気式の気動車において乗客の感じる乗り心地を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】第1実施形態の、発電部分の正面図である。
図2の矢視AAに相当する。
【
図4】第1実施形態の、発電部分の背面図である。
図2の矢視BBに相当する。
【
図5】第1実施形態の、発電部分の上面視図である。
図2の矢視CCに相当する。
【
図6】第1実施形態の、取り付け部分の拡大図である。
図5の矢視DDに相当する。
【
図7】(a)第1実施形態の、気動車の概念図である。(b)第2実施形態の、電気式気動車の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について、図面を用いて説明を行う。
図1に、第1実施形態の、気動車の模式図を示す。気動車100は、シリーズハイブリッド方式を採用した気動車であり、車体10の下部には台車20が配置され、その台車20の間に配置されている艤装30に、発電部分50が備えられている。なお、艤装30に備えられる他の機器に関しては、本発明を説明するのに直接関係が無いので、説明を省略する。
【0016】
図2に、発電部分の側面図を示す。発電部分50には、ハイブリッド方式である為、エンジン60と発電機70が並べられて配置されている。エンジン60はディーゼル機関であり、発電機70と接続されて発電を行う。この電力は、図示しない駆動用モータを回転させて気動車100を動かしている。なお、後述する蓄電池85(
図7(a)参照)には鉄道車両がブレーキをかけた際に発生する回生電力を蓄え、こちらからも電力供給が行われるが、ここでは説明を割愛する。
【0017】
エンジン60及び発電機70は互いに連結され、車体10の下部にある台枠11に取り付けられる。台枠11は、側梁15と横梁16で構成されている。レール方向に平行に配置され、離間して2本並べられる側梁15の間に、枠梁材に相当するフレーム34が取り付けられる。
【0018】
図3に、発電部分の正面図を示す。
図2の矢視AAを示している。
図4に、発電部分の背面図を示す。
図2の矢視BBを示している。
図5に、発電部分の上面視図を示す。
図2の矢視CCを示している。
図6に、取り付け部分の拡大図を示す。
図5の矢視DDを示している。フレーム34は、
図5に示される様に横枠梁35を縦枠梁36で接続する形で構成され、横枠梁35は、側梁15の間に渡される横梁16に溶接されたブラケット17によって支えられている。
【0019】
横枠梁35は、エンジン60及び発電機70を支えるために略ロ型でリブ35bが設けられた断面となっている。また、横枠梁35の両端には梁端部35aが設けられている。この梁端部35aが横梁16に溶接されたブラケット17に取り付けられる。ブラケット17は2本の横梁16を跨ぐような形で設けられている。梁端部35aとブラケット17の取り付け構造は、
図6に詳細が説明される。ブラケット17にはフレーム受け31が固定される。そして、4カ所に設けられた梁端部35aが二次防振ゴム37に挟まれて、フレーム受け31に対して支持されている。
【0020】
こうして車体10の下部に取り付けられたフレーム34に、発電部分50となるエンジン60及び発電機70が取り付けられる。エンジン60と発電機70は一体化されており、エンジン60側は
図3に示すように第1ブラケット41によって支持される。第1ブラケット41は、
図2に示すように横枠梁35の概ね中央部に固定された第1吊り受け39に、一次防振ゴム38である前方一次防振ゴム38aを介して支持されている。ここで、防振ゴムはエンジン60及び発電機70の側から一次防振ゴム38、二次防振ゴム37と称している。必要に応じてそれぞれの減衰力を変えて設定することが可能である。
【0021】
一方、発電機70側は、
図4に示すように、左右2箇所で第2ブラケット42によって吊り下げられている。第2ブラケット42は、横枠梁35に固定され、その下部には一次防振ゴム38である後方一次防振ゴム38bが設けられている。なお一次防振ゴム38はオイルダンパーを内蔵した構造となっており、より高い振動減衰効果が得られる。そして、第2ブラケット42が後方一次防振ゴム38bを介して第3ブラケット43を支持している。第3ブラケット43は発電機70の側面にそれぞれ固定され、発電機70を支持する形になっている。
【0022】
第1実施形態のシリーズハイブリッド方式の気動車は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0023】
まず、第1実施形態の効果として、振動低減効果が得られる点が挙げられる。これは、第1実施形態のシリーズハイブリッド方式の気動車が、エンジン60及び発電機70をフレーム34に取り付けて設けられたシリーズハイブリッド方式の気動車において、エンジン60と発電機70は連結され、エンジン60及び発電機70は、3つの吊り下げ用ブラケットとなる第1ブラケット41及び第3ブラケット43によってその側面を支持され、第1ブラケット41及び第3ブラケット43は、一次防振ゴム38を介してフレーム34に係合され、フレーム34は、車体10の台枠の下部に二次防振ゴム37を介して取り付けられているためである。
【0024】
つまり、第1実施形態の車体10に取り付けられるエンジン60及び発電機70は、二次防振ゴム37と一次防振ゴム38とによって二重防振構造になっている。このため、エンジン60から生じる振動や騒音を効果的に減衰し、車体10の車室側に伝達することを防いでいる。シリーズハイブリッド方式ではエンジン60は一番効率の良い回転数で運転し、発電することができるため、振動や騒音による影響は少ないと考えられるが、近年は車体10に対してより乗り心地の向上を求められ、同時に高速化も求められるようになってきている。そこで、本発明ではこれまで考慮されてこなかった、0~200Hzの低周波の振動をより高い効果的に遮断できる二重防振構造を採用している。
【0025】
ここで、エンジン60と発電機70は、エンジン60が第1吊り受け39と第1ブラケット41によって1箇所で、発電機70が第2ブラケット42と第3ブラケット43によって2箇所で支持されていて、第1ブラケット41はエンジン60の側面に、第3ブラケット43は発電機70の側面に、それぞれ固定されている。即ち、エンジン60と発電機70が一体となるように接続された上で、3箇所で吊り下げられていることで、振動や騒音が伝達されることを抑制する効果が得られる。
【0026】
また、フレーム34は、台枠11の側梁15の付近に二次防振ゴム37を介して吊られる構造となっている。側梁15の強度を維持する観点からも直接的に穴を開けたり溶接箇所を増やしたりすることは避け、横梁16の側梁15近傍にこのフレーム34を保持するためのフレーム受け31を固定している。そして、これに加えて、一次防振ゴム38及び二次防振ゴム37を用いて二重防振構造になっていることで、シリーズハイブリッド方式を採用した気動車100の乗り心地の向上に貢献する。
【0027】
また、シリーズハイブリッド方式である為に、エンジン60及び発電機70は一体的に取り付けられる必要があるが、図示しない蓄電池や駆動用モータなどとは切り離して配置する事が可能となる。すなわち、発電部分50をフレーム34によって車体10から吊り下げる構造にすることでユニット化し、駆動用モータと切り離して配置する事も可能なので、艤装の配置の効率化が可能となる。その結果、床下艤装のスペースの縮小化やメンテナンス性の向上に寄与することができる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図7(a)に、第1実施形態のシリーズハイブリッド方式の気動車に関する概念図を示す。
図7(b)に、第2実施形態の電気式の気動車に関する概念図を示す。第2実施形態の気動車101では、第1実施形態の気動車100の構成と比較して蓄電池85を備えていない点で異なる。なお、同じ部品には同じ符号を付して説明している。また、
図7(a)は
図7(b)の比較に用いる為に例示したもので、第1実施形態の構成を何ら変えるものではない。
【0029】
第2実施形態の電気式の気動車101には、第1実施形態のシリーズハイブリッド方式の気動車100に関して
図2、
図5、及び
図6に示すようにエンジン60と発電機70が直結されて備えられ、発電機70は主変換装置80が電気的に接続されている。なお、主変換装置80は艤装30の一部に備えられている。気動車100では主変換装置80と蓄電池85が電気的に接続されている一方で、気動車101の主変換装置80には蓄電池85が備えられていない。この主変換装置80では、発電機70で発電された電力の供給を受けて単相交流から三相交流に変換されて台車20に備えられたモータ90に電力を供給して、車輪25を回転させる。したがって、電気式の気動車101では、ハイブリッド方式の気動車100と同様にエンジン60を回して発電機70で電気を作り、車輪25を動かす点では同じである。異なる点は、一時的に蓄電池85に電力を蓄えるか否かである。
【0030】
したがって、シリーズハイブリッド方式の気動車100と電気式の気動車101に関して、艤装30の構造は同じ構造を採用することが可能であり、第1実施形態のシリーズハイブリッド方式の気動車100と同様に、第2実施形態の電気式の気動車101においても、3箇所で吊り下げられていることで、発電部分50に備えられたエンジン60や発電機70から発生する振動や騒音を車体10に伝達することを抑制し、鉄道車両の乗り心地の向上に貢献する。また、床下艤装のスペースの縮小化やメンテナンス性の向上に寄与することができる。
【0031】
以上、本発明に係るシリーズハイブリッド方式及び電気式の気動車に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、具体的なフレーム34の構造について例示しているが、発明の趣旨に沿った形でこれを変更することを妨げない。
【符号の説明】
【0032】
10 車体
20 台車
30 艤装
34 フレーム
35 横枠梁
36 縦枠梁
37 二次防振ゴム
38 一次防振ゴム
50 発電部分
60 エンジン
70 発電機
100 気動車