IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新明和工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-吸引車 図1
  • 特許-吸引車 図2
  • 特許-吸引車 図3
  • 特許-吸引車 図4
  • 特許-吸引車 図5
  • 特許-吸引車 図6
  • 特許-吸引車 図7
  • 特許-吸引車 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】吸引車
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/10 20060101AFI20240520BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20240520BHJP
   F04F 3/00 20060101ALI20240520BHJP
   B65F 3/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
E03F7/10 Z
B60P3/00 Q
F04F3/00 A
B65F3/00 K
B65F3/00 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020165058
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057016
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】中津 俊介
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-084627(JP,A)
【文献】特開2006-096509(JP,A)
【文献】特開2010-227803(JP,A)
【文献】特公昭60-043504(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 7/10
B60P 3/00
F04F 3/00
B65F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収対象物を回収するレシーバタンクと、
前記レシーバタンクの内部の空気を加減圧して空気の流れを発生させる吸引装置とを備えた吸引車であって、
前記吸引装置は、真空ポンプと、吸引時に前記レシーバタンク内から排出された空気の除塵を行う第1のキャッチャと、前記真空ポンプを通った空気の気水分離を行う第2のキャッチャとを備え、
前記第2のキャッチャは、本体部と、前記本体部から少なくとも一部が水平方向に延びる水平延長部とを有し、
前記水平延長部は、前記真空ポンプを通った空気の気水分離を行う水槽であり、
前記水平延長部の内部には、前記第1のキャッチャが前記水平延長部を上下方向に貫通した状態で設けられていることを特徴とする吸引車。
【請求項2】
請求項1に記載の吸引車において、
前記第2のキャッチャの前記本体部の下部の側面と、前記水平延長部の底面と、この水平延長部から下方に突出された前記第1のキャッチャの下部の側面とによって形成された空間に、前記真空ポンプが配置されていることを特徴とする吸引車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吸引車において、
前記第2のキャッチャは、上下方向に延びる前記本体部と、内部で当該本体部と連通するとともに本体部の側面から水平方向に突出する前記水平延長部とを有しており、
前記水平延長部には、前記真空ポンプからの空気が流入する流入口が設けられる一方で、前記本体部には、空気の流出口が設けられ、
前記水平延長部の内部には、整流壁が設けられており、前記整流壁によって、前記流入口から入った空気が、前記水平延長部の内部に挿入された前記第1のキャッチャの外周壁の回りを流れるように案内されることを特徴とする吸引車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レシーバタンク(ホッパ)と、吸引装置とを車台(走行車体)の上に搭載した吸引車が知られている(例えば、特許文献1参照)。この吸引車では、吸引装置として、レシーバタンク内から排出される汚れた空気の除塵を行う第1のキャッチャとしてのサイクロン集塵機と、レシーバタンク内を真空状態にする水封式の真空ポンプと、この真空ポンプを通って流れる空気の除塵および消音を行う第2のキャッチャとしての消音水槽とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-96509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような吸引車において、真空ポンプと第1のキャッチャと第2のキャッチャとは、車台前部のキャブと車台後部のレシーバタンクとの間の車台上において個別に水平方向に並べて設けられており、水平方向のレイアウトスペースが制限されていた。特に、レシーバタンクの前後長をできるだけ長くしてレシーバタンクの収容スペースを確保するためには、第1のキャッチャや第2のキャッチャは、できるだけ水平方向に拡がらないようにする必要があり、上下方向に長い形状となっていた。その結果、第1のキャッチャや第2のキャッチャの上端の高さが高くなり、車両重心が高くなりやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、吸引装置をできるだけコンパクトに配置して、レシーバタンクの収容スペースを大きくすることが可能であり、しかも、重量バランスに優れた吸引車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、回収対象物を回収するレシーバタンクと、前記レシーバタンクの内部の空気を加減圧して空気の流れを発生させる吸引装置とを備えた吸引車であって、前記吸引装置は、真空ポンプと、吸引時に前記レシーバタンク内から排出された空気の除塵を行う第1のキャッチャと、前記真空ポンプを通った空気の気水分離を行う第2のキャッチャとを備え、前記第2のキャッチャは、本体部と、前記本体部から少なくとも一部が水平方向に延びる水平延長部とを有し、前記水平延長部は、前記真空ポンプを通った空気の気水分離を行う水槽であり、前記水平延長部の内部には、前記第1のキャッチャが前記水平延長部を上下方向に貫通した状態で設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、吸引装置をできるだけコンパクトに配置して、レシーバタンクの収容スペースを大きくすることが可能であり、しかも、重量バランスに優れた吸引車を提供することができる。詳細には、第1のキャッチャと第2のキャッチャが一体化されることにより、一方のキャッチャが水平延長部を有するにもかかわらず、吸引装置の水平方向の拡がりを抑えることができる。これにより、吸引装置をできるだけコンパクトに配置して、レシーバタンクの収容スペースを大きくすることができる。
【0008】
これに加え、一方のキャッチャは、水平延長部に必要な機能を備えさせることができるので、上端の高さを抑えて車両重心を低くすることができ、吸引車の重量バランスを保つことができる。また、2つのキャッチャ同士を強固に接続することができるので、2つのキャッチャを個々に車台に取り付ける場合と比較して取り付け部分の構造を簡素化でき、軽量化を図ることができる。その結果、重量バランスに優れた吸引車を提供することができる。また、水平延長部を水槽とすることによって、多量の水を搭載しても吸引車の水平方向のバランスを保つことができる。特に、水平延長部が車幅方向に延びている場合には、水の増減に起因して車両の車幅方向の重量バランスが崩れることを抑制できる。
【0009】
上記構成の吸引車において、前記第2のキャッチャの前記水平延長部の底面と、この水平延長部から下方に突出された前記第1のキャッチャの下部の側面とによって形成された空間に、前記真空ポンプが配置されていることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、水平方向において、真空ポンプ、第1のキャッチャおよび第2のキャッチャが略同じ位置に配置されるので、吸引装置全体の水平方向の拡がりを抑えてコンパクトにすることができる。
【0013】
上記構成の吸引車において、前記第2のキャッチャは、上下方向に延びる前記本体部と、内部で当該本体部と連通するとともに本体部の側面から水平方向に突出する前記水平延長部とを有しており、前記水平延長部には、前記真空ポンプからの空気が流入する流入口が設けられる一方で、前記本体部には、空気の流出口が設けられ、前記水平延長部の内部には、整流壁が設けられており、前記整流壁によって、前記流入口から入った空気が、前記水平延長部の内部に挿入された前記第1のキャッチャの外周壁の回りを流れるように案内されることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、水平延長部の内部を貫通している第1のキャッチャの外周壁を有効利用し、さらに整流壁を設けることによって、水平延長部内で空気ができるだけ回り道をするように整流し、第2のキャッチャの除塵機能と水回収機能とを高めることができる。これにより、別途キャッチャを追加することなく全体としてコンパクトに吸引装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸引装置をできるだけコンパクトに配置して、レシーバタンクの収容スペースを大きくすることが可能であり、しかも、重量バランスに優れた吸引車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る吸引車の概略構成を示す側面図である。
図2図1の吸引車の平面図である。
図3図1の吸引車に搭載された吸引装置のエア配管図であって、吸引時のエアの流れを示す図である。
図4図3のエア配管図において、加圧時のエアの流れを示す図である。
図5図1の吸引車に搭載された吸引装置の水封式ポンプ、3次キャッチャ、4次キャッチャ等を左前方から見た斜視図である。
図6図1の吸引車に搭載された吸引装置の水封式ポンプ、3次キャッチャ、4次キャッチャ等を左後方から見た斜視図である。
図7】一体化された3次キャッチャおよび4次キャッチャを示す背面図である。
図8図7のX1-X1線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1図2は、本発明の実施形態に係る吸引車2を示している。この吸引車2の車台3上のサブフレーム4上に吸引装置1が設けられている。具体的には、サブフレーム4の後部に、例えば、汚泥、土砂、廃液等よりなる回収対象物を回収するレシーバタンク5が搭載されている。
【0019】
レシーバタンク5は、例えば、後端開口を有する断面円形容器状のタンク本体5aと、この後端開口を開閉するテールゲート5cとを有する。テールゲート5cは、例えば、タンク本体5aの上部後端部にヒンジピン5bを介して回動自在に軸支されている。タンク本体5aとテールゲート5cとの間には、開閉シリンダ5dが設けられており、この開閉シリンダ5dを伸縮操作することで、テールゲート5cがタンク本体5aの後端開口を開閉可能となっている。
【0020】
テールゲート5cの下部には、回収対象物の吸引口となる開閉弁付の吸引口8と、回収対象物の排出口となる開閉弁付の排出口9とが設けられている。レシーバタンク5は、サブフレーム4の後方に設けた傾倒軸10を介してサブフレーム4に対して傾倒可能に軸支されている。すなわち、サブフレーム4とレシーバタンク5との間には、傾倒シリンダ11が設けられている。この傾倒シリンダ11を伸縮操作することで、レシーバタンク5が傾倒軸10の周りに起立回動または倒伏回動するようになっている。
【0021】
詳しくは後述するが、吸引装置1がレシーバタンク5内に回収対象物を吸引し回収する場合、レシーバタンク5内の減圧およびエアの流れにより、吸引口8に接続した図示しない吸引ホースを通じて外部からレシーバタンク5内に回収対象物を吸引するようになっている。一方、吸引装置1でレシーバタンク5内の回収対象物を、例えば汚泥処理場等に排出する場合、レシーバタンク5内のエアを加圧し、排出口9に接続した図示しない排出ホースを通じてレシーバタンク5内の回収対象物を外部へ排出するようになっている。また、テールゲート5cを開いてレシーバタンク5を起立回動させることによって、レシーバタンク5内の回収対象物を排出することも可能となっている。
【0022】
また、運転室13とレシーバタンク5との間のサブフレーム4上には、レシーバタンク5内のエアを加減圧し、エアの流れを発生させる水封式ポンプ25が設けられている。詳しくは図示しないが、水封式ポンプ25は、吸引車2のPTOのドライブシャフトを介して連結された図示しないエンジンの駆動力によって回転駆動されるようになっている。この水封式ポンプ25の周辺には、水封式ポンプ25に接続された配管類、各種バルブ、操作パネル15等が配置されている。
【0023】
図3図6に示すように、吸引装置1は、1次キャッチャとしてのレシーバタンク5、サイクロン式の集塵機よりなる2次キャッチャ20および3次キャッチャ(本発明の「第1のキャッチャ」)21、気水分離器兼水タンクよりなる4次キャッチャ(本発明の「第2のキャッチャ」)22等を備えており、これらの機器が、例えば金属製丸鋼管等よりなるレシーバタンク加減圧配管7を介して接続されている。本実施形態では、3次キャッチャ21および4次キャッチャ22が一体的に設けられている。3次キャッチャ21および4次キャッチャ22の具体的な構成ついては後述する。
【0024】
レシーバタンク5は、2次キャッチャ20と第1配管7aにより接続されている。また、2次キャッチャ20は、3次キャッチャ21と第2配管7bにより接続されている。なお、2次キャッチャ20は、図3および図4に図示しているが、図1図2図5図6では図示を省略している。
【0025】
水封式ポンプ25、3次キャッチャ21、4次キャッチャ22、および一体型サイレンサ23は、エア切換式四方弁24と配管を介して接続されるようになっている。具体的には、水封式ポンプ25は、吸引口25aと吐出口25bとを有している。3次キャッチャ21とエア切換式四方弁24とが、第3配管7cにより接続されている。また、水封式ポンプ25の吸引口25aとエア切換式四方弁24とが、第4配管7dにより接続されている。また、4次キャッチャ22とエア切換式四方弁24とが、第5配管7eにより接続されている。また、一体型サイレンサ23とエア切換式四方弁24とが、第6配管7fにより接続されている。水封式ポンプ25の吐出口25bは、4次キャッチャ22と第7配管7gにより接続されている。
【0026】
吸引時には、3次キャッチャ21と水封式ポンプ25の吸引口25aとがエア切換式四方弁24を介して接続される一方、4次キャッチャ22と一体型サイレンサ23とがエア切換式四方弁24を介して接続されるようになっている。また、エア切換式四方弁24を切り換えることにより、加圧時には、一体型サイレンサ23と水封式ポンプ25の吸引口25aとがエア切換式四方弁24を介して接続される一方、4次キャッチャ22と3次キャッチャ21とがエア切換式四方弁24を介して接続されるようになっている。
【0027】
そして、レシーバタンク5と水封式ポンプ25とをつなぐ配管には、この配管の上流側よりも高い圧力のエアを駆動エアとして導入するエゼクタ30が介設されている。具体的には、エア切換式四方弁24と水封式ポンプ25との間の第4配管7dにエゼクタ30が介設されている。なお、第4配管7dには、このエゼクタ30を通さずにエア切換式四方弁24から吸引口25aへ通るバイパス通路(図示せず)を設けてもよい。エゼクタ30の駆動エアは、図示しないエアタンクから配管を通じて供給されるようになっている。エアタンクは、例えば、車台3側に設けられ、車両制動時に使用される加圧エアを蓄積するものである。エアタンクからは、例えば0.7MPaの加圧エアが供給されるようになっている。
【0028】
エア切換式四方弁24には、図示しない四方弁切換バルブユニットが接続されており、エアタンクからの加圧エアが供給可能になっている。操作パネル15(図1参照)に設けられた吸引ボタン15a、中正ボタン15b、加圧ボタン15cのいずれかが押されたことに基づいて、エアタンクから加圧エアがエア切換式四方弁24に供給され、この加圧エアの圧力によりエア切換式四方弁24が切換制御されるようになっている。
【0029】
上記構成の吸引装置1の作動について説明する。
【0030】
まず、吸引車2の走行を停止した状態で、運転室13等に設けられたPTOスイッチをオンにする。すると、車両の走行用エンジンの駆動力が水封式ポンプ25に供給されるようになる。
【0031】
次に、吸引開始のために、作業者が操作パネル15の吸引ボタン15aを押す。すると、エアタンクの加圧エアの圧力でエア切換式四方弁24のスプールが吸引側へ移動する。
【0032】
次いで、図3の状態にエア切換式四方弁24が切り換わり、水封式ポンプ25の駆動と共に、吸引口8からエアが吸い込まれてレシーバタンク5に回収対象物が回収される。エアは、レシーバタンク5、2次キャッチャ20、3次キャッチャ21を通り、エア切換式四方弁24を通って水封式ポンプ25の吸引口25aから吸い込まれる。このとき、エア切換式四方弁24からのエアは、エゼクタ30を通る。
【0033】
吸引開始時には、レシーバタンク5内は負圧が所定値よりも高まっていない(圧力が所定値以上である)ので、外部エア導入管を介して外部エア(大気)が吸引される。これにより、エゼクタ30内に大気が導入される。このように、水封式ポンプ25の駆動時など大気とレシーバタンク5内との差圧が小さいときは、水封式ポンプ25は発熱しにくいため、大気圧を利用しても冷却能力を十分に発揮できる。そして、封水より温度の低い外部エアが水封式ポンプ25に送り込まれるので、水封式ポンプ25および封水の温度上昇が抑制される。
【0034】
一方、レシーバタンク5内の負圧が高まってくると、水封式ポンプ25の負荷が増大し、発熱が大きくなって、水温上昇しやすくなる。負圧が高まると封水は蒸発しやすくなり、キャビテーションが発生しやすくなる。そこで、レシーバタンク5内の負圧が所定値よりも高まると、エアタンクの加圧エアがエゼクタ30に送られる。これにより、レシーバタンク5内の負圧がエゼクタ効果によりさらに高められる。また、水封式ポンプ25にはエゼクタ30から大量のエアが供給される。エゼクタ30から噴出された加圧エアは、圧力が下がると膨張して温度が下がるので、水封式ポンプ25には大量の冷たいエアが供給されることになる。これにより、水封式ポンプ25の封水温度の上昇を抑えることができ、キャビテーション発生の心配も無くなる。
【0035】
水封式ポンプ25に吸い込まれたエアは、吐出口25bから吐出され、4次キャッチャ22を通ってエア切換式四方弁24に戻り、一体型サイレンサ23を通って外部に排気される。
【0036】
一方、吸引から中正に切り換えるときには、作業者が操作パネル15の中正ボタン15bを押す。すると、エアタンクの加圧エアの圧力によりエア切換式四方弁24のスプールが中正側に戻る。
【0037】
そして、中正から加圧に切り換えるときには、作業者が操作パネル15の加圧ボタン15cを押す。すると、エアタンクの加圧エアの圧力によりエア切換式四方弁24のスプールが中正側から加圧側へ移動する。
【0038】
次いで、図4の状態にエア切換式四方弁24が切り換わり、水封式ポンプ25の駆動と共に、吐出口25bから加圧エアが吐出され、4次キャッチャ22を通過したエアは、エア切換式四方弁24を通って3次キャッチャ21および2次キャッチャ20を通り、レシーバタンク5に到達して回収した回収対象物と共に、排出口9から排出される。
【0039】
本実施形態では、吸引装置1の3次キャッチャ(第1のキャッチャ)21と4次キャッチャ(第2のキャッチャ)22とが一体的に設けられている。具体的には、4次キャッチャ22は、一部が水平方向に延びた水平延長部22bを有し、この水平延長部22bの内部に3次キャッチャ21が上下方向に貫通した状態で設けられている。この点について、図5図8を参照して説明する。
【0040】
4次キャッチャ22は、上下方向に延びる円筒状の本体部22aと、内部で当該本体部22aと連通するとともに本体部22aの上端部の側面から左右方向(車幅方向)に突出する円筒状の水平延長部22bとを有している。本体部22aの上端部には、円筒状に形成された洗浄水タンク22cが一体的に設けられている。洗浄水タンク22cに貯留された洗浄水を、図示しない洗浄用ポンプ(例えば電動式ポンプ)によって吸引装置1およびその周辺に散水して洗浄できるようになっている。
【0041】
本体部22aの上端面には、空気の流出口22dが設けられており、この流出口22dが、洗浄水タンク22cの内部に収容された第5配管7eの一端部に接続されている。第5配管7eは、洗浄水タンク22cの洗浄水の貯留部とは遮断されている。本体部22aの内部の空気は、流出口22dおよび第5配管7eを介して、エア切換式四方弁24側へ排出されるようになっている。
【0042】
本体部22aおよび水平延長部22bの内部には、水が貯留されており、本体部22aおよび水平延長部22bは、水封式ポンプ25を通った空気の除塵を行う水槽となっている。本体部22aの側面には、オーバーフロー口22gが設けられており、本体部22aおよび水平延長部22bの底壁からオーバーフロー口22gまでが水貯留部となっている。オーバーフロー口22gは、水平延長部22bが接続されていない側の本体部22aの外壁に設けられている。図7の1点鎖線で示すように、オーバーフロー口22gの高さ位置が最大水位に設定され、この最大水位以上に水が溜まらないようにオーバーフロー口22gから排水させるようになっている。なお、オーバーフロー口22gには、排水させないときに4次キャッチャ22内の気密を保つためのバルブ22oが取り付けられる。
【0043】
水平延長部22bの左右方向の中間部には、上下方向に延びる凹部22hが形成されている。この凹部22h内に、エア切換式四方弁24と水封式ポンプ25とを接続する第4配管7dが配設されている。
【0044】
水平延長部22bの本体部22aに接続されていない側の端部(図6等では、左端部)には、上下方向に延びる円筒状の外周壁を有する3次キャッチャ21が挿入されている。3次キャッチャ21が、水平延長部22bの内部に上下方向に貫通した状態で配置されている。具体的には、水平延長部22bの左端部には、上下一対の貫通孔22iが形成されており、上下の貫通孔22iに3次キャッチャ21の中間部21aが挿入されている。3次キャッチャ21の中間部21aの外径と、上下の貫通孔22iの内径とが略一致しており、3次キャッチャ21の中間部21aの外周壁が上下の貫通孔22iの内周縁に溶接等の手段によって接続されている。このように、3次キャッチャ21の中間部21aが4次キャッチャ22の水平延長部22bに固定されており、3次キャッチャ21と4次キャッチャ22とが一体化されている。3次キャッチャ21の内部と、水平延長部22bの内部とは遮断されており、3次キャッチャ21と4次キャッチャ22との間で水が流通しないようになっている。3次キャッチャ21の内部には、サイクロン式の集塵機構が設けられている。なお、水平延長部22bの上部の左右方向の中間部には、ベース部22lが設けられている。一体型サイレンサ23は、その下端部がベース部22lに取り付けられている。一体型サイレンサ23は、水平延長部22bの内部とは遮断されている。
【0045】
4次キャッチャ22の本体部22aの下部の側面と、水平延長部22bの底面と、この水平延長部22bから下方に突出された3次キャッチャ21の下部21bの側面とによって空間S1が形成されており、この空間S1に水封式ポンプ25が配置されている。
【0046】
水平延長部22bには、水封式ポンプ25の吐出口25bから送られた空気が流入する流入口22jが設けられている一方で、本体部22aには、上述した空気の流出口22dが設けられている。流入口22jには、第7配管7gが接続されている。流入口22jは、貫通孔22iから比較的接近した位置に設けられている一方で、本体部22aから比較的離れた位置に設けられている。水平延長部22bの内部には、流入口22jから入った空気を案内する整流壁22kが設けられている。整流壁22kは、平面視でL字状の部材であって、水平延長部22bの内部に挿入された3次キャッチャ21の中間部21aの外周壁と、水平延長部22bの前方側の壁部とをつなぐように設けられている。整流壁22kは、平面視で流入口22jに対し本体部22a側にわずかにオフセットした位置に設けられている。
【0047】
図7の2点鎖線A1、図8の2点鎖線A2で示すように、流入口22jから入った空気は、水平延長部22bの内部において、3次キャッチャ21の中間部21aの外周壁と、4次キャッチャ22の水平延長部22bの内壁との間の空間を流れる。この際、整流壁22kによって、3次キャッチャ21の中間部21aの外周壁の回りを一方向に向けてのみ、流入口22jから入った空気が流れるようになっている。図8の例では、平面視で、流入口22jから入った空気が、中間部21aの外周壁の回りを反時計方向に向けてのみ流れており、時計方向の流れは整流壁22kによって規制されている。このように、流入口22jから入った空気が、直接、本体部22a側へ向かうことが整流壁22kによって規制され、中間部21aの外周壁の回りを経由した後、本体部22a側へ向かうようになっている。整流壁22kによって案内された空気は、水平延長部22bの内部を通って本体部22aの内部へ送られ、上述した流出口22d、第5配管7eを通ってエア切換式四方弁24側へ送られる。
【0048】
本実施形態では、上述したように、3次キャッチャ21および4次キャッチャ22のうちの一方の4次キャッチャ22は、本体部22aとこの本体部から少なくとも一部が水平方向に延びる水平延長部22bとを有し、この水平延長部22bの内部に他方の3次キャッチャ21が上下方向に貫通した状態で設けられている。
【0049】
本実施形態によれば、吸引装置1をできるだけコンパクトに配置して、レシーバタンク5の収容スペースを大きくすることが可能であり、しかも、重量バランスに優れた吸引車2を提供することができる。詳細には、3次キャッチャ21および4次キャッチャ22が一体化されることにより、4次キャッチャ22が水平延長部22bを有するにもかかわらず、吸引装置1の水平方向の拡がりを抑えることができる。これにより、吸引装置1をできるだけコンパクトに配置して、レシーバタンク5の収容スペースを大きくすることができる。
【0050】
これに加え、4次キャッチャ22は、水平延長部22bに必要な機能を備えさせることができるので、上端の高さを抑えて車両重心を低くすることができ、吸引車2の重量バランスを保つことができる。また、2つのキャッチャ同士を強固に接続することができるので、2つのキャッチャを個々に車台3に取り付ける場合と比較して取り付け部分の構造を簡素化でき、軽量化を図ることができる。その結果、重量バランスに優れた吸引車2を提供することができる。
【0051】
また、3次キャッチャ21および4次キャッチャ22のうちの一方の4次キャッチャ22の本体部22aの下部の側面と、水平延長部22bの底面と、この水平延長部22bから下方に突出された他方の3次キャッチャ21の下部21bの側面とによって形成された空間S1に、水封式ポンプ25が配置されている。これにより、水平方向において、水封式ポンプ25、3次キャッチャ21および4次キャッチャ22が略同じ位置に配置されるので、吸引装置1全体の水平方向の拡がりを抑えてコンパクトにすることができる。
【0052】
また、4次キャッチャ22の水平延長部22bは、水封式ポンプ25を通った空気の除塵を行う水槽となっているので、多量の水を搭載しても吸引車2の水平方向のバランスを保つことができる。4次キャッチャ22の水槽部分が車幅方向の一方側にのみ存在する場合には、水の増減に起因して車両の車幅方向の重量バランスが崩れることが懸念されるが、本実施形態では水平延長部22bが車幅方向に延びているので、そのような不具合の発生を抑制できる。
【0053】
また、4次キャッチャ22は、上下方向に延びる本体部22aと、内部で当該本体部22aと連通するとともに本体部22aの側面から水平方向に突出する水平延長部22bとを有しており、水平延長部22bには、水封式ポンプ25からの空気が流入する流入口22jが設けられる一方で、本体部22aには、空気の流出口22dが設けられ、水平延長部22bの内部には、整流壁22kが設けられており、この整流壁22kによって、流入口22jから入った空気が、水平延長部22bの内部に挿入された3次キャッチャ21の外周壁の回りを流れるように案内される。
【0054】
この構成によれば、水平延長部22bの内部を貫通している3次キャッチャ21の外周壁を有効利用し、さらに整流壁22kを設けることによって、水平延長部22b内で空気ができるだけ回り道をするように整流し、4次キャッチャ22の除塵機能と水回収機能とを高めることができる。これにより、別途キャッチャを追加することなく全体としてコンパクトに吸引装置1を構成することができる。
【0055】
今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0056】
上記実施形態では、4次キャッチャ22は、一部が水平方向に延びた水平延長部22bを有し、この水平延長部22bの内部に3次キャッチャ21が上下方向に貫通した状態で設けられていた。本発明はこれに限らず、3次キャッチャと4次キャッチャとのいずれか一方のキャッチャが、少なくとも一部が水平方向に延びた水平延長部を有して、この水平延長部の内部に他方のキャッチャが上下方向に貫通した状態で設けられればよい。すなわち、3次キャッチャが水平延長部を有し、この水平延長部に4次キャッチャが上下方向に貫通した状態に設けてもよい。
【0057】
上記実施形態では、真空ポンプとして水封式ポンプ25を用いたが、これ以外の真空ポンプを用いてもよい。なお、真空ポンプとして水封式ポンプ25を用いた場合には、水がポンプの一部を形成するため、清浄かつ静粛で金属接触がなく、オイルも不要であるといった多くの利点を有する。さらに、インペラとケーシングとの間に大きなスキがあるため異物に強いという利点や、水が無くなるとポンプとして動作しなくなることから焼付きしにくいという利点も有する。
【0058】
上記実施形態では、洗浄水タンク22cを4次キャッチャ22に一体的に設けたが、洗浄水タンクを4次キャッチャ22とは別体で設ける構成としてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、一体型サイレンサ23を3次キャッチャ21および4次キャッチャ22に一体的に設けたが、サイレンサを3次キャッチャ21および4次キャッチャ22とは別体で設ける構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、レシーバタンクの内部空気を加減圧して空気の流れを発生させる吸引装置を搭載した吸引車に利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 吸引装置
2 吸引車
5 レシーバタンク
21 3次キャッチャ(第1のキャッチャ)
22 4次キャッチャ(第2のキャッチャ)
22a 本体部
22b 水平延長部
22c 洗浄水タンク
22k 整流壁
25 水封式ポンプ(真空ポンプ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8