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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】リザーバタンク
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/00 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
F01P11/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020169517
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022056278
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2020162929
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阪田 俊介
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-081986(JP,U)
【文献】特開2020-081970(JP,A)
【文献】特開2017-101573(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0190385(US,A1)
【文献】特開2021-169815(JP,A)
【文献】特開2019-060275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液冷式冷却システムの冷却液経路に設けられるリザーバタンクであって、
冷却液を貯留するタンク本体と、
タンク本体に冷却液を送り込む流入管と、
タンク本体から冷却液を排出する排出管を有しており、
前記流入管は、タンク本体内部に貯留される冷却液の液面よりも鉛直方向下側でタンク本体に接続されており、かつ、
タンク本体内部には柱状部材が立設されていて、
前記柱状部材は、水平面における断面形状がDの字状断面、山形断面、円形断面、C字状断面、十の字状断面、もしくは中央部にスリットを有する山形断面である柱状部材、または、円柱状、角柱状、楕円柱状、円錐状、もしくは角錐状の柱状部材であり、
前記流入管の中心軸に沿って見て、前記柱状部材が略鉛直方向に延在し、
前記流入管の中心軸に沿って見た際の柱状部材の幅は、前記流入管の直径の0.5倍以上3倍以下であり、
前記流入管の中心軸の延長線上に、前記柱状部材の一部が配置されていて、
前記流入管からタンク本体内に流れ込んだ冷却液の噴流が、前記柱状部材の一部にぶつかるように流れ、柱状部材をよけるように略水平方向に分流して流れる、
リザーバタンク。
【請求項2】
複数の柱状部材を有し、
流入管からタンク本体に流れ込んだ冷却液の流れが、第1の柱状部材により略水平方向に分流され、分流された流れが第2の柱状部材によってさらに略水平方向に分流されるように、複数の柱状部材が配置された、
請求項1に記載のリザーバタンク。
【請求項3】
前記流入管の中心軸の延長線と、前記柱状部材とが交差する位置が、前記冷却液の液面よりも鉛直方向下側である、
請求項1に記載のリザーバタンク。
【請求項4】
前記流入管の中心軸が、略水平に延在するとともに、
前記柱状部材が、略鉛直方向に延在している、
請求項3に記載のリザーバタンク。
【請求項5】
柱状部材が、タンク本体の天面と底面の間を接続するように配置されている、
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のリザーバタンク。
【請求項6】
前記柱状部材の水平面における断面形状が、冷却液流れの上流側に凸な形状となっている、
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のリザーバタンク。
【請求項7】
液冷式冷却システムの冷却液経路に設けられるリザーバタンクであって、
冷却液を貯留するタンク本体と、
タンク本体に冷却液を送り込む流入管と、
タンク本体から冷却液を排出する排出管を有しており、
前記流入管は、タンク本体内部に延長されていて、タンク本体内部に貯留される冷却液の液面よりも鉛直方向下側でタンク本体の内部空間に解放されており、かつ、
タンク本体内部には柱状部材が立設されていて、
前記柱状部材は、水平面における断面形状がDの字状断面、山形断面、円形断面、C字状断面、十の字状断面、もしくは中央部にスリットを有する山形断面である柱状部材、または、円柱状、角柱状、楕円柱状、円錐状、もしくは角錐状の柱状部材であり、
前記流入管が解放する部分の流入管管路の中心軸に沿って見て、前記柱状部材が略鉛直方向に延在し、
前記流入管が解放する部分の流入管管路の中心軸に沿って見た際の柱状部材の幅は、前記流入管が解放する部分の流入管管路の直径の0.5倍以上3倍以下であり、
前記流入管が解放する部分の流入管管路の中心軸の延長線上に、前記柱状部材の一部が配置されていて、
前記流入管が解放する部分からタンク本体内に流れ込んだ冷却液の噴流が、前記柱状部材の一部にぶつかるように流れ、柱状部材をよけるように略水平方向に分流して流れる、
リザーバタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リザーバタンクに関する。特に液冷式冷却システムの冷却液経路に設けられるリザーバタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
液冷式冷却システムは、内燃機関や電気素子、電子基板等の冷却に活用されている。液冷式の冷却システムでは、冷却液を循環させて、冷却対象部材から熱を集めて、熱放出器から熱を放散して、冷却対象部材を冷却する。液冷式の冷却システムにおいて、冷却液を循環させる冷却液経路中に、冷却液のタンク、すなわちリザーバタンクを設けることがある。リザーバタンクは、冷却液の気化等による減少を補ったり、冷却液の温度変化による体積変化を吸収したりする。また、冷却液中に気泡が生じると、冷却効率が低下することがあるため、リザーバタンクにより冷却液中の気泡を分離する、すなわち気液分離を行うことがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、リザーバタンク本体の中に、矩形状のバッフルプレートを、特定の向きの風車状となるように配置する技術が開示されている。当該リザーバタンクによれば、通水抵抗の増加や構造の複雑化を招かずに冷却液から気泡を分離できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-248753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、冷却システムをより高性能化するために、特許文献1のようなリザーバタンクを通過する冷却液の流量をより増加させたいとの要請が生じてきている。しかしながら、特許文献1のようなリザーバタンクにおいてリザーバタンクを通過する冷却液の流量が増加すると、タンク本体内部に流れ込んだ冷却液が波打つように暴れやすく、タンク内の空気を巻き込んで気泡が発生してしまい、期待するレベルの気液分離効果が得られにくいことが判明した。
【0006】
特に、近年、リザーバタンクの小型化の要請が高まるにつれて、タンク本体内部の冷却液のあばれが発生しやすくなってきた。
本発明の目的は、リザーバタンクのタンク本体内部の液面のあばれを抑制し、リザーバタンク内部での気泡の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意検討の結果、流入管からの冷却液の流れが、冷却液の液面よりも鉛直方向下側でタンク本体内部の冷却液の中に流れ込むようにするとともに、タンク本体内に柱状部材を設け、流入管から流れ出す流れの中心軸の延長線上に、前記柱状部材の一部を配置すると、タンク本体内部の液面のあばれが抑制できることを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、液冷式冷却システムの冷却液経路に設けられるリザーバタンクであって、冷却液を貯留するタンク本体と、タンク本体に冷却液を送り込む流入管と、タンク本体から冷却液を排出する排出管を有しており、前記流入管は、タンク本体内部に貯留される冷却液の液面よりも鉛直方向下側でタンク本体に接続されており、かつ、タンク本体内部には柱状部材が立設されていて、前記柱状部材は、水平面における断面形状がDの字状断面、山形断面、円形断面、C字状断面、十の字状断面、もしくは中央部にスリットを有する山形断面である柱状部材、または、円柱状、角柱状、楕円柱状、円錐状、もしくは角錐状の柱状部材であり、前記流入管の中心軸に沿って見て、前記柱状部材が略鉛直方向に延在し、前記流入管の中心軸に沿って見た際の柱状部材の幅は、前記流入管の直径の0.5倍以上3倍以下であり、前記流入管の中心軸の延長線上に、前記柱状部材の一部が配置されていて、前記流入管からタンク本体内に流れ込んだ冷却液の噴流が、前記柱状部材の一部にぶつかるように流れ、柱状部材をよけるように略水平方向に分流して流れる、リザーバタンクである(第1発明)。
【0009】
第1発明において、好ましくは、複数の柱状部材を有し、流入管からタンク本体に流れ込んだ冷却液の流れが、第1の柱状部材により略水平方向に分流され、分流された流れが第2の柱状部材によってさらに略水平方向に分流されるように、複数の柱状部材が配置される(第2発明)。また、第1発明において、好ましくは、前記流入管の中心軸の延長線と、前記柱状部材とが交差する位置が、前記冷却液の液面よりも鉛直方向下側である(第3発明)。また、さらに、第3発明において、好ましくは、前記流入管の中心軸が、略水平に延在するとともに、前記柱状部材が、略鉛直方向に延在している(第4発明)。
【0010】
また、第1発明ないし第4発明のいずれかにおいて、好ましくは、柱状部材が、タンク本体の天面と底面の間を接続するように配置されている(第5発明)。また、第1発明ないし第4発明のいずれかにおいて、好ましくは、前記柱状部材の水平面における断面形状が、冷却液流れの上流側に凸な形状となっている(第6発明)
【0011】
また、本発明は、液冷式冷却システムの冷却液経路に設けられるリザーバタンクであって、冷却液を貯留するタンク本体と、タンク本体に冷却液を送り込む流入管と、タンク本体から冷却液を排出する排出管を有しており、前記流入管は、タンク本体内部に延長されていて、タンク本体内部に貯留される冷却液の液面よりも鉛直方向下側でタンク本体の内部空間に解放されており、かつ、タンク本体内部には柱状部材が立設されていて、前記柱状部材は、水平面における断面形状がDの字状断面、山形断面、円形断面、C字状断面、十の字状断面、もしくは中央部にスリットを有する山形断面である柱状部材、または、円柱状、角柱状、楕円柱状、円錐状、もしくは角錐状の柱状部材であり、前記流入管が解放する部分の流入管管路の中心軸に沿って見て、前記柱状部材が略鉛直方向に延在し、前記流入管が解放する部分の流入管管路の中心軸に沿って見た際の柱状部材の幅は、前記流入管が解放する部分の流入管管路の直径の0.5倍以上3倍以下であり、前記流入管が解放する部分の流入管管路の中心軸の延長線上に、前記柱状部材の一部が配置されていて、前記流入管が解放する部分からタンク本体内に流れ込んだ冷却液の噴流が、前記柱状部材の一部にぶつかるように流れ、柱状部材をよけるように略水平方向に分流して流れる、リザーバタンクである(第7発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリザーバタンク(第1発明、第7発明)によれば、タンク本体内部の液面のあばれが抑制され、リザーバタンク内部での気泡の発生を抑制できる。
【0013】
さらに、第2発明ないし第4発明のようにされた場合には、液面のあばれ抑制効果や気泡発生抑制効果が、より向上する。
また、第5発明のようにされた場合には、柱状部材の振動が抑制され、リザーバタンクからの騒音の発生が抑制される。
また、第6発明のようにされた場合には、液面のあばれ抑制効果や気泡発生抑制効果が、より向上する。
また、第7発明によれば、リザーバタンクの流入管の配置の自由度が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態のリザーバタンクの構造を示す縦断面図である。
図2】第1実施形態のリザーバタンクの構造を示す横断面図である。
図3】第1実施形態のリザーバタンクの作用を示す横断面図である。
図4】第1実施形態のリザーバタンクの作用を示す縦断面図である。
図5】第1変形例のリザーバタンクの構造及び作用を示す横断面図である。
図6】第2実施形態のリザーバタンクの構造を示す縦断面図である。
図7】柱状部材の変形例の形状を示す横断面図である。
図8】第3実施形態のリザーバタンクの構造を示す縦断面図である。
図9】参考例のリザーバタンクの作用を示す縦断面図である。
図10】第4実施形態のリザーバタンクの構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面を参照しながら、自動車の内燃機関の液冷式冷却システムに設けられるリザーバタンクを例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。液冷式冷却システムの用途は、内燃機関に限定されず、パワー素子やインバータなどの電気素子や電子回路基板等の電気部品を冷却する用途であってもよく、他の用途であってもよい。
【0016】
図1図2に第1実施形態のリザーバタンク10の構造を示す。図1では、リザーバタンク10の縦断面図を示し、図2では、リザーバタンク10の横断面図を示している。図1の縦断面図は、図2のX-X線を通る鉛直面で取ったX-X断面図である。また、図2の横断面図は、図1のY-Y線を通る水平面で取ったY-Y断面図である。
リザーバタンク10は、中空のタンク本体17に流入管15と排出管16が接続されて構成されている。液冷式冷却システムの冷却液経路の中で、リザーバタンク10は、流入管15から中空のタンク本体17内に冷却液が流れこみ、中空のタンク本体17から排出管16を通じて冷却液が流れ出ていくように、冷却液経路中に配置・接続されて使用される。
【0017】
図1の縦断面図では、図の上側が鉛直方向上側を示している。本実施形態では、下側ケース11と上側ケース12とが一体化されて、リザーバタンク10が構成されている。下側ケース11と上側ケース12とが一体化されることにより、中空のタンク本体17が構成される。本実施形態では、流入管15および排出管16は下側ケース11に一体成形されているが、流入管15および排出管16は別の構成によってタンク本体17に一体化されていてもよい。
【0018】
タンク本体17には、冷却液Lが貯留される。タンク本体17の鉛直方向上部には、空気が貯留されている。
流入管15は、タンク本体内部に貯留される冷却液の液面Sよりも鉛直方向下側でタンク本体に接続されている。かかる構成により、流入管15から送り込まれる冷却液は、タンク内に貯留された冷却液に直接(すなわち空気中を通過せずに)流れ込むことになる。
【0019】
必須ではないが、本実施形態においては、流入管15は、タンク本体17の外部に直管状に設けられている。例えば後述する第4実施形態のように、流入管がタンク本体の内側に延長されていてもよい。
【0020】
排出管16も、タンク本体内部に貯留される冷却液の液面Sよりも鉛直方向下側でタンク本体に接続されている。かかる構成により、冷却液が効率的に排出管16を通じてタンク本体17から排出される。
【0021】
タンク本体17の内部には柱状部材14が立設されている。本実施形態では、1本の柱状部材14が略鉛直方向に延在するように立設されている。後述する変形例のように、柱状部材は複数であってもよい。また、後述する他の実施形態のように、柱状部材は鉛直方向に対し、傾いていてもよい。
【0022】
流入管15の中心軸mに沿って見て、柱状部材14は略鉛直方向に延在している。柱状部材14は厳密に鉛直方向に延在している必要はなく、30度程度以下の傾きであれば、略鉛直方向に延在しているといえる。なお、流入管が曲がり形状や折れ形状の管とされる場合には、流入管とタンク本体の接続部(流入管からタンク本体内部に冷却液が流れ込む部分)付近の管の中心軸を、流入管の中心軸mと考えればよい。
【0023】
流入管15の中心軸mの延長線上に、柱状部材14の一部が配置されている。かかる構成により、流入管15からタンク本体17内に流れ込んだ冷却液の噴流は、柱状部材の一部にぶつかるように流れ、柱状部材14をよけるように略水平方向に分流して流れることになる(図3)。
【0024】
必須ではないが、本実施形態では、柱状部材14は、横断面(水平面での断面)が略Dの字状断面となる、中空形状とされている。そして、円弧状に湾曲する側の面が、流入管15の側に面するように、柱状部材14が設けられている。後述するように、柱状部材14は他の形態のものであってもよい。
【0025】
必須ではないが、本実施形態のように、流入管15の中心軸mの延長線と、柱状部材14とが交差する位置が、冷却液液面Sよりも鉛直方向下側であることが好ましい。流入管15の中心軸mの延長線と、柱状部材14とが交差する位置は、冷却液液面Sと鉛直方向で実質的に同じ高さであってもよい。より好ましくは、流入管15の中心軸mの延長線と、柱状部材14とが交差する位置が、流入管15がタンク本体17に接続される位置よりも、鉛直方向下側とされる。
【0026】
また、必須ではないが、本実施形態のように、流入管15の中心軸mが、略水平に延在するとともに、柱状部材14が、略鉛直方向に延在していることが好ましい。
【0027】
また、必須ではないが、本実施形態のように、柱状部材14が、タンク本体の天面と底面の間を接続するように配置されていることが好ましい。本実施形態のように、柱状部材が下側ケース側と上側ケース側に分割されて形成されていて、それら分割形成された柱状部材が互いに接合(好ましくは溶着)されることが特に好ましい。
【0028】
また、必須ではないが、本実施形態のように、柱状部材14の水平面における断面形状が、冷却液流れの上流側に凸な形状となっていることが好ましい。
【0029】
また、必須ではないが、本実施形態のように、流入管15の中心軸mに沿って見た際の柱状部材の幅D2が、前記流入管の直径(タンク内側に開放する側での内径)d1の0.5倍以上3倍以下である、すなわち、0.5*d1≦D2≦3*d1であることが好ましい。特に、1*d1≦D2≦1.5*d1であることが好ましい。本実施形態ではD2=1.3*d1とされている。0.5*d1≦D2であれば、柱状部材による流れの分流効果が十分に発揮されやすい。また、D2≦3*d1であれば、流れが柱状部材にぶつかって鉛直方向上方に向かうことが抑制でき、冷却液液面のあばれ抑制がより効果的になる。
【0030】
リザーバタンク10のタンク本体17や柱状部材14、流入管15、排出管16が構成できる限りにおいて、具体的に、どのような部材に分割してかかる構造を実現するかは特に限定されない。本実施形態では、下側ケース11と上側ケース12の2つに分割して組み立て、かかる構成を実現したが、別の部材構成によりこうした構造を実現してもよい。たとえば、タンク本体17が鉛直面で2分割されるようにして構成部材を形成し、それらを組み立ててかかる構成を実現してもよい。
【0031】
また、上記実施形態のリザーバタンク10を構成する材料や、リザーバタンク10の製造方法は特に限定されず、公知の材料や公知の製造方法により、リザーバタンク10を製造できる。典型的には、リザーバタンク10は、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂により構成される。使用される冷却液の種類や温度、圧力などに応じて、リザーバタンクの材料や補強構造等が決定される。また、典型的には、リザーバタンク10は、上記下側ケース11、上側ケース12に相当する部材を、それぞれ射出成型により形成し、これら部材を振動溶着や熱板溶着などにより一体化して製造することができる。その場合、流入管15や排出管16、中空部材14は、それぞれ、下側ケース11もしくは上側ケース12に一体成型しておくことが好ましいが、別部材としておいて、後で組み立てて一体化してもよい。
【0032】
上記第1実施形態のリザーバタンク10の作用および効果について説明する。上記第1実施形態のリザーバタンク10によれば、タンク本体内部の液面のあばれを抑制し、気泡の発生を抑制できる。
【0033】
図9には、参考例として、柱状部材のないリザーバタンクにおけるタンク本体内部の冷却液の流れを示す。図9の参考例は、柱状部材14がない点をのぞいて、第1実施形態のリザーバタンク10と同じ構成である。
【0034】
参考例のリザーバタンク99では、流入管から冷却液が勢いよく流れ込んでくると、(流れ込む冷却液の流れQを白抜き矢印で示す、)タンク本体内に流れ込んだ冷却液は、そのまま直進して、流入管と対向するタンク壁面に激しく衝突し、冷却液が上方にも拡散して流れる。この流れにより、タンク本体内部の冷却液の液面は激しく波立つ。この激しい波立ちによって、空気が冷却液中に巻き込まれ、気泡を発生させてしまう。
【0035】
冷却液中の気泡は、冷却液の循環効率を低下させたり、冷却液による熱輸送効率を低下させたりして、冷却システムの冷却性能の低下につながる。
【0036】
上記第1実施形態のリザーバタンク10では、流入管15は、冷却液の液面Sよりも鉛直方向下側でタンク本体に接続されており、かつ、タンク本体内部に、柱状部材が立設されていて、流入管15の中心軸mに沿って見て柱状部材14は略鉛直方向に延在して、流入管15の中心軸mの延長線上に柱状部材14の一部が配置されているので、タンク本体内部の液面のあばれが抑制され、リザーバタンク内部での気泡の発生を抑制できる。
【0037】
即ち、第1実施形態のリザーバタンク10では、流入管15から流れ込む冷却液の流れQが、タンク本体内に貯留された冷却液中に直接流れ込むとともに、冷却管15からの流れが柱状部材14にぶつかるように流れ、図3に示すように、柱状部材14をよけるように、略水平方向に分かれて流れることになる。かかる分流によって、流入管15から流れ込んだ冷却液の激しい勢いは、柱状部材14により分散されて弱くなる。その結果、弱くなった冷却液Lの流れがタンク本体の壁面にぶつかるため、図9の参考例のように激しく液面Sが波立つことが抑制される。したがって、第1実施形態のリザーバタンク10では、タンク本体内部の液面のあばれが抑制され、リザーバタンク内部での気泡の発生を抑制できる(図4)。
【0038】
よりタンク本体内部の液面のあばれを抑制し、リザーバタンク内部での気泡の発生を抑制する観点からは、図5に示した第1変形例のリザーバタンク19のように、リザーバタンク19が、複数の柱状部材14a,14b,14bを有し、流入管15からタンク本体17に流れ込んだ冷却液の流れが、第1の柱状部材14aにより略水平方向に2つに分流され、分流された流れが第2の柱状部材14bによってさらに略水平方向に2つに分流されるように、複数の柱状部材が配置されることが好ましい。柱状部材は2つ、3つ、もしくは4つ以上であってもよい。なお、柱状部材による流れの分流は、2つに分流するものであってもよく、3つ以上に分流するものであってもよい。
【0039】
第1変形例のリザーバタンク19のような構成とすれば、冷却液流れがより拡散、分流して、穏やかな流れとなるため、タンク本体内部の液面のあばれ抑制効果や、リザーバタンク内部での気泡の発生抑制効果がより高められる。また、複数の柱状部材を設ける場合には、流入管15からの冷却液の流れ方向に対し、ボーリングのピンを並べる配置のように、複数の柱状部材が配置されることが好ましい。
【0040】
また、よりタンク本体内部の液面のあばれを抑制し、リザーバタンク内部での気泡の発生を抑制する観点からは、流入管15の中心軸mの延長線と、柱状部材14とが交差する位置が、冷却液液面Sよりも鉛直方向下側であることが好ましい。このようにされていれば、流入管15から流れ込む冷却液が、冷却液の液面から勢いよく上方に吹き出してしまうことが抑制され、より、タンク本体内部の液面のあばれが抑制される。
【0041】
また、よりタンク本体内部の液面のあばれを抑制し、リザーバタンク内部での気泡の発生を抑制する観点からは、流入管15の中心軸mが、略水平に延在するとともに、柱状部材14が、略鉛直方向に延在していることが好ましい。かかる構成により、流入管15から流れ込む冷却液の流れは、柱状部材14により、確実に略水平方向に分流されることになって、上下方向には流れにくく、より確実に、タンク本体内部の液面のあばれが抑制されるからである。
【0042】
また、上記第1実施形態のリザーバタンク10のように、柱状部材14が、タンク本体17の天面と底面の間を接続するように配置されている場合には、柱状部材14の振動が抑制され、リザーバタンクからの騒音の発生が抑制されるとの効果も奏される。柱状部材14には、冷却液が噴流となってぶつかるため、柱状部材が片持ち梁状に立設されていると、柱状部材が振動しやすく、リザーバタンクからの騒音が発生するおそれがある。柱状部材14が、タンク本体17の天面と底面の間を接続するように、両持ち梁状に配置されていれば、柱状部材に冷却液の流れがぶつかる部分の剛性が高められ、柱状部材14の振動が抑制され、リザーバタンクからの異音の発生が抑制される。
【0043】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分については同じ番号を付して説明し、その詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0044】
図6には第2実施形態のリザーバタンク20を示す。図6は、第1実施形態における図1に対応する縦断面図である。第2実施形態のリザーバタンク20は第1実施形態のリザーバタンク10と比べ、流入管25の方向、および柱状部材24の形状が異なっているが、他の構成は、第1実施形態のリザーバタンク10と同様である。
【0045】
第2実施形態のリザーバタンク20では、流入管25が、タンク本体27の外側から内側に向かうにしたがって、鉛直方向下側に向かうように傾斜して設けられている。流入管25をやや下側に傾斜させると、より、タンク本体内部の液面のあばれが抑制される場合がある。なお、本実施形態でも、排出管26はタンク底面から鉛直下方に向けて設けられているが、排出管の位置や方向は、変更可能である。
【0046】
また、第2実施形態のリザーバタンク20では、柱状部材24が、図7(a)に示したような、山形断面の柱状部材24とされている。このような柱状部材24であっても、第1実施形態のリザーバタンク10と同様に、タンク本体内部の液面のあばれを抑制し、リザーバタンク内部での気泡の発生を抑制できる。
【0047】
図7には、柱状部材の他の形態例の水平面における断面形状の例を示す。なお、図7において、白抜き矢印は、流入管からの冷却液の流れの方向を示している。
柱状部材は、図7(a)に示したような、山形断面(くの字型断面)の柱状部材24であってもよい。また、柱状部材は、図7(b)に示したような、円形断面(中空円筒型断面)の柱状部材24bであってもよい。また、柱状部材は、中実の部材、例えば、中実円柱型断面の柱状部材であってもよい。また、柱状部材は、角柱状の部材や、楕円柱状の部材、円錐状の部材、角錐状の部材であってもよい。
【0048】
また、柱状部材は、図7(c)に示したような、C字状断面の柱状部材24cであってもよい。また、柱状部材は、図7(d)に示したような、十の字状断面(上流側が階段状に形成された断面)の柱状部材24dであってもよい。また、柱状部材は、図7(e)に示したような、流れに対向する平板状断面の柱状部材24eであってもよい。また、柱状部材は、図7(f)に示したような、中央部にスリットを有する山形断面の柱状部材24fであってもよい。
【0049】
図2図5図7(a)、(b)、(c)、(d)に示したように、柱状部材は、柱状部材の水平面における断面形状が、冷却液流れの上流側に凸な形状となっていることが好ましい。水平面における柱状部材の断面形状が、冷却液流れの上流側に凸な形状となっていれば、流入口からの冷却液の噴流を効果的に水平方向に分流させ拡散することができるとともに、流入口からの冷却液の噴流が、柱状部材にぶつかって鉛直上方にはね上がることも抑制され、冷却液液面のあばれ抑制効果に優れるからである。
【0050】
また、より流れをスムーズに分流させ、気泡の分裂を抑える観点からは、図7(a)、(c)に示したように、柱状部材は、冷却液の流れに面する部位の角部にR(アール)がけされた形状であることが、より好ましい。例えば、柱状部材の最上流部の角部や、柱状部材の両側端部(図7における上端部と下端部)にRがけされていることが好ましい。これら部位がRがけされていると、冷却液の噴流が柱状部材にぶつかって流れが分かれても、柱状部材の周りで渦が発生することが抑制され、渦によって冷却液中の気泡が細かく分裂して分離しにくくなってしまうことが抑制される。
【0051】
また、図2図5図7(a)、(c)、(f)に示したように、柱状部材は、柱状部材の水平面における断面形状が、冷却液流れの上流側の幅(流入管の中心軸に沿って見た際の柱状部材の幅)が、冷却液流れの下流側の幅よりも小さくされていることが好ましく、下流側に向かうにしたがって柱状部材の幅がより大きくなるような断面形状とされていることが特に好ましい。このような断面形状とされていると、柱状部材による冷却液の分流・拡散効果がより顕著に現れ、冷却液液面のあばれ抑制効果が高められる。
【0052】
柱状部材の水平面における断面形状は、図7(c)、(d)、(e)に示したように、流入口からの冷却液の噴流に実質的に直交するように対向する面を有していてもよい。しかしながら、こうした面は、噴流が鉛直上方にはね上がって冷却液液面を波立たせる要因ともなるため、こうした面の幅を極力狭くすることが好ましい。
【0053】
また、図7(f)に示したように、中央部にスリットを有する柱状部材24fであれば、流入口からの冷却液の噴流を、実質的に3方向に分流、拡散させることができ、柱状部材による冷却液の分流、拡散効果がより顕著に現れ、冷却液液面のあばれ抑制効果が高められる。スリットの大きさは、スリットを通過する噴流が適度に弱められるような細さに調整される。
【0054】
図8には、第3実施形態のリザーバタンク30を示す。図8は、第1実施形態における図1に対応する縦断面図である。第3実施形態のリザーバタンク30は第1実施形態のリザーバタンク10と比べ、タンク本体37の形状、および柱状部材24cの形状や配置、排出管36の位置が異なっているが、他の構成は、第1実施形態のリザーバタンク10と同様である。
【0055】
図1に示した第1実施形態のリザーバタンク10では、タンク本体17は直方体状であったが、第3実施形態のリザーバタンク30では、タンク本体37は球状である。タンク本体の形状は特に限定されず、円筒状、楕円筒状、楕円体状など他の形状であってもよい。
【0056】
また、第3実施形態のリザーバタンク30では、柱状部材24cは図7(c)に示したような、Cの字状(円弧状)の断面とされ、断面が、冷却液の流れの上流側に向けて凸となるように配置されている。また、本実施形態では、柱状部材24cは片持ち梁状に立設されている。
【0057】
図1に示した第1実施形態のリザーバタンク10と同様に、第3実施形態のリザーバタンク30でも、流入管35の中心軸mに沿って見て、柱状部材24cが略鉛直方向に延在し、これにより、流入口からの冷却液の噴流が、実質的に略水平方向に分流、拡散され、冷却液液面のあばれ抑制効果が顕著なものとなる。
【0058】
また、第3実施形態のリザーバタンク30では、図8に示したように、流入管の中心軸mとも鉛直方向とも直交する方向から見て、柱状部材24cが、流入管の中心軸mに対し傾くように設けられている。より具体的には、流入管の中心軸mに沿う方向で測った流入管35と柱状部材24cの間の距離が、柱状部材の下側の基部(タンク本体との接合部)から遠ざかるにつれて、短くなるように、柱状部材24cは傾いて設けられている。
【0059】
このように柱状部材24cが傾けられていると、冷却液の噴流が柱状部材24cにぶつかった際に、やや鉛直方向下側に噴流が向かうような傾向が生じるので、冷却液液面のあばれ抑制効果がより顕著なものとなる。
【0060】
図10には、第4実施形態のリザーバタンク40を示す。図4は、第1実施形態における図1に対応する縦断面図である。第4実施形態のリザーバタンク40は、第1実施形態のリザーバタンク10と比べ、流入管451、452の位置および形状、柱状部材44の形状が異なっているが、排出管46の位置等の他の構成は、第1実施形態のリザーバタンク10と同様である。
【0061】
第4実施形態のリザーバタンク40では、流入管は、タンク本体内部に延長されている。すなわち、本実施形態では、流入管は、タンク本体47の外部に設けられた外部管451と、タンク本体47の内側に設けられた内部管(延長部)452とにより構成されている。外部管451と内部管452は互いに接続されていて、一本の管路を形成している。なお、内部管452はタンク本体17と壁面の一部を共有していてもよい。
【0062】
流入管の延長部分、すなわち内部管452は、タンク本体内部に貯留される冷却液の液面Sよりも鉛直方向下側で、タンク本体の内部空間に解放されている。かかる構成により、流入管から流れ込む冷却液の流れは、タンク内に貯留された冷却液に直接(すなわち空気中を通過せずに)流れ込み、冷却液液面のあばれ抑制効果が確実なものとなる。内部管452は、本実施形態のように、管路が略鉛直方向に延在する部分を有していてもよい。
【0063】
また、本実施形態においては、流入管(内部管452)が解放する部分の流入管の管路の中心軸mに沿って見て、柱状部材44が略鉛直方向に延在し、流入管(内部管452)が解放する部分の流入管の管路の中心軸mの延長線上に、柱状部材44の一部が配置されている。すなわち、内部管452は、管路を通過する冷却液の流れが柱状部材44に向かうように形成される。必須ではないが、本実施形態では、流入管(内部管452)がタンク本体内部に解放する部分の管路の中心軸mが、略水平となることが好ましい。
そして、流入管(内部管452)からタンク本体内部に流れ込む冷却液の流れは、柱状部材44に向かって略水平方向に流れる。
【0064】
第4実施形態のリザーバタンク40のように、流入管が、タンク本体内部に延長されていて、タンク本体内部に貯留される冷却液の液面Sよりも鉛直方向下側でタンク本体の内部空間に解放されている場合には、第1実施形態ないし第3実施形態とは異なり、流入管が、タンク本体内部に貯留される冷却液の液面Sよりも鉛直方向下側でタンク本体に接続されることは必須ではない。第4実施形態では、内部管452が外部管451の延長管として機能し、流入管が冷却液液面Sよりも下側でタンク本体に接続されるのと同様に機能するからである。
【0065】
図1に示した第1実施形態のリザーバタンク10と同様に、第4実施形態のリザーバタンク40でも、柱状部材に向かう冷却液流れ(図10の軸線mの方向)に沿って見て、柱状部材44が略鉛直方向に延在し、流入管からの流れが柱状部材44にぶつかることになる。これにより、流入口からの冷却液の噴流が、実質的に略水平方向に分流、拡散されることになり、冷却液液面のあばれ抑制効果が得られる。
【0066】
また、流入管がタンク内部に延長されて設けられることにより、流入管のうちタンク本体よりも外側に位置する部分(外部管451)の配置の自由度を高めながら、冷却液液面のあばれ抑制効果を得ることができる。すなわち、第4実施形態のリザーバタンク40によれば、冷却液液面Sよりも鉛直方向で高い位置に流入管(外部管451)を配置してもよいので、リザーバタンクのレイアウト自由度が高められる。
【0067】
本発明のリザーバタンクは、更に他の構成を有していてもよい。たとえば、リザーバタンクには、取り外し可能なキャップが設けられていてもよい。このようなキャップを通じてタンクや冷却液経路内部に冷却液を満たすことができる。また、キャップに圧力開放弁を設けてもよい。また、リザーバタンクには、必要に応じ、車体等に取り付けるためのステーやボス部材などが一体化されていてもよい。また、リザーバタンクに要求される耐圧性等に応じて、リザーバタンクには、リブ等の補強構造が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
上記リザーバタンクは冷却システムの冷却液経路中に使用でき、冷却液中の気泡の発生を抑制でき、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0069】
10 リザーバタンク
11 下側ケース
12 上側ケース
14 柱状部材
15 流入管
16 排出管
17 タンク本体
m 流入管の中心軸
L 冷却液
S 冷却液の液面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10