(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】金属接続部材
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20240520BHJP
H01R 4/02 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R4/02 C
(21)【出願番号】P 2020182431
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一輝
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 洋耶子
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-222283(JP,A)
【文献】特開2006-261012(JP,A)
【文献】特開2012-221831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が金属で筒状に形成され、筒口から電線の端部が挿入された状態で周壁が潰されることによる、前記端部に対する圧着接続が可能な第1接続部と、
前記第1接続部と一体となるように前記第1接続部における筒口から延出し、前記電線の前記端部に対する超音波接続が可能な接続面を有する第2接続部と、
を備え、
前記超音波接続のための前記第2接続部が、前記電線の太さ方向について少なくとも一部が当該電線よりも幅広
となるように、前記第1接続部の前記筒口から離れるに従って幅広となった、前記接続面が台形を有する形状に形成された金属板であり、前記電線の前記端部に前記第1接続部が圧着接続される場合には、表面上を通過して前記第1接続部へと向かう前記電線から
前記台形の下底側における一対の角部が両翼状に外れ、当該電線を抱持した状態で潰されて圧着接続されることで、前記第1接続部による圧着接続を補助する両翼部分を有していることを特徴とする金属接続部材。
【請求項2】
前記第1接続部は、全体が筒状に形成されており、
前記第2接続部が、前記第1接続部の両端のうちの少なくとも一端の側の筒口から延出するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属接続部材。
【請求項3】
前記第1接続部は、各々が周方向について筒の周壁の一部を構成するように湾曲した一対の湾曲壁を有し、前記電線の前記端部に前記第1接続部が圧着接続される場合には、当該一対の湾曲壁で区画される筒口に前記電線の前記端部が挿入された状態で当該一対の湾曲壁が潰されることで前記電線の前記端部に圧着接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属接続部材。
【請求項4】
前記第2接続部における接続面が平坦面であり、
前記第1接続部は、前記第2接続部における前記平坦面と連続して延在する帯状平面を筒の内周面の一部とした帯板壁を、前記周方向について前記周壁の一部を構成するように有しており、
前記一対の湾曲壁は、前記帯板壁における対向一対の側縁から当該帯板壁と協働して蒲鉾型の筒を形作るように延出していることを特徴とする請求項3に記載の金属接続部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばバスバのように電線の端部が接続される金属接続部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バスバのような金属接続部材の一例として、電線の端部が超音波接続によって接続される部材が知られている(例えば特許文献1参照。)。超音波接続は、接続対象物を圧接しつつ超音波振動を加えることによって接続する手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、超音波接続は、電線の端部に対する金属接続部材の接続に利用する場合、電線の太さに比例して設備が大型化しコストが嵩む点や、振動の影響を最小限にするための各種条件設定に手間が掛かる点、等が課題となっている。他方で、接続部分の厚みを小さく抑えられる点や、接続時に表面の金属酸化膜が除去されて電気的な接続抵抗を低減できる点、等といった有利な点もあり、金属接続部材に対する需要も依然として高い。
【0005】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、電線の端部に対する超音波接続による接続を可能としつつ、コストや条件設定の手間を抑えることができる金属接続部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、金属接続部材は、少なくとも一部が金属で筒状に形成され、筒口から電線の端部が挿入された状態で周壁が潰されることによる、前記端部に対する圧着接続が可能な第1接続部と、前記第1接続部と一体となるように前記第1接続部における筒口から延出し、前記電線の前記端部に対する超音波接続が可能な接続面を有する第2接続部と、を備え、前記超音波接続のための前記第2接続部が、前記電線の太さ方向について少なくとも一部が当該電線よりも幅広となるように、前記第1接続部の前記筒口から離れるに従って幅広となった、前記接続面が台形を有する形状に形成された金属板であり、前記電線の前記端部に前記第1接続部が圧着接続される場合には、表面上を通過して前記第1接続部へと向かう前記電線から前記台形の下底側における一対の角部が両翼状に外れ、当該電線を抱持した状態で潰されて圧着接続されることで、前記第1接続部による圧着接続を補助する両翼部分を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記の金属接続部材によれば、超音波接続の接続面を有する第2接続部とともに、圧着接続が可能な第1接続部が設けられている。これら二種類の接続部を設けたことで、電線が、超音波接続によるコストや条件設定の手間が増大しがちな太線である場合には、圧着接続に対応した第1接続部を選択使用することでコストや条件設定の手間を抑えることができる。他方で、コストや条件設定の手間が少ない細線については、超音波接続に対応した第1接続部を選択使用することで接続部分の厚みや電気的な接続抵抗の低減といった超音波接続に特有の効果を享受することができる。このように、上記の金属接続部材によれば、電線の端部に対する超音波接続による接続を可能としつつ、コストや条件設定の手間を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態の金属接続部材を示す模式図である。
【
図2】
図1に示されている金属接続部材が電線の端部に接続される様子を示す模式図である。
【
図3】
図1及び
図2に示されている金属接続部材の第2接続部において電線の端部との超音波接続が行われる様子を示す図である。
【
図4】
図1及び
図2に示されている金属接続部材の第1接続部において電線の端部との圧着接続が行われる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、金属接続部材の一実施形態について説明する。
【0010】
図1は、一実施形態の金属接続部材を示す模式図であり、
図2は、
図1に示されている金属接続部材が電線の端部に接続される様子を示す模式図である。
【0011】
この
図1に示される金属接続部材1は、一端に電線2の端部21が接続されて他端に他の電線が接続される金属バスバや、一端に電線2の端部21が接続されて他端が所定の端子受け部に挿入されて接続される金属端子として利用される部材である。この金属接続部材1は、例えば銅等といった導電性の金属で形成された部材であって、第1接続部11及び第2接続部12を備えている。
【0012】
ここで、本実施形態では、電線2を、撚り線を芯線とした被覆電線とし、金属接続部材1が接続される電線2の端部21を、被覆が除去されて露出した露出芯線とする。尚、接続対象としての電線は、これに限るものではなく、尚、ここにいう電線111の芯線は撚り線であってもよく、金属棒状の単線であってもよい。
【0013】
第1接続部11は、金属で筒状に形成され、筒口11aから電線2の端部21が挿入された状態で周壁11bが潰されることによる、端部21に対する圧着接続が可能な部位である。また、第2接続部12は、第1接続部11と一体となるように第1接続部11における筒口11aから延出し、電線2の端部21に対する超音波接続が可能な接続面121を有する部位である。ここで、本実施形態では、第1接続部11は、全体が筒状に形成されており、第2接続部12は、第1接続部11の両端のうちの一端の側の筒口11aから延出するように1つだけ形成されている。
【0014】
また、第1接続部11は、その周壁11bを構成する部位として、一対の湾曲壁111及び帯板壁112を有している。一対の湾曲壁111は、各々が周方向D11について筒の周壁11bの一部を構成するように湾曲した壁部位である。また、第2接続部12における接続面121は平坦面となっており、第1接続部11における帯板壁112は、この平坦面である接続面121と連続して延在する帯状平面112aを筒の内周面の一部として周壁11bの一部を構成する部位である。一対の湾曲壁111は、帯板壁112における対向一対の側縁112bから当該帯板壁112と協働して蒲鉾型の筒を形作るように延出している。電線2の端部21に第1接続部11が圧着接続される場合には、一対の湾曲壁111で区画される筒口11aに電線2の端部21が挿入された状態で一対の湾曲壁111における筒口11a側の部分が、帯板壁112との間に端部21を挟むように潰される。また、本実施形態では、一対の湾曲壁111における筒口11a側の端縁が、帯板壁112から離れるに従って第2接続部12から遠ざかるように斜行した縁となっている。一対の湾曲壁111の端縁がこのように斜行していることで、圧着接続に際し、電線2の端部21が筒口11aに挿入される際の作業性が良好なものとなっている。
【0015】
また、第2接続部12は、第1接続部11の筒口11aから離れるに従って幅広となった、超音波接続の接続面121が台形の金属平板部位である。また、この第2接続部12は、
図2に示されているように、電線2の太さ方向D12について少なくとも一部が当該電線2よりも幅広となるように形成されている。
【0016】
以上に説明した金属接続部材1は、電線2の端部21に次のように接続される。まず、電線2が、超音波接続によるコストや条件設定の手間が少ない細線である場合には、金属接続部材1の第2接続部12において電線2の端部21との超音波接続が行われる。
【0017】
図3は、
図1及び
図2に示されている金属接続部材の第2接続部において電線の端部との超音波接続が行われる様子を示す図である。
【0018】
この超音波接続では、電線2の端部21である露出芯線が、金属接続部材1の第2接続部12における平坦面となった接続面121の上に載置される。そして、電線2の端部21が、接続面121に圧接されつつ超音波振動が加えられる。このとき、電線2の端部21や接続面121の表面における酸化被膜が超音波振動での摩擦熱等によって蒸散して除去される。このような酸化被膜の除去は、例えば、電線2の芯線が、酸化被膜のできやすいアルミニウムで形成されたものである場合等に特に有効である。
【0019】
次に、電線2が、超音波接続によるコストや条件設定の手間が増大しがちな太線である場合には、金属接続部材1の第1接続部11において電線2の端部21との圧着接続が行われる。
【0020】
図4は、
図1及び
図2に示されている金属接続部材の第1接続部において電線の端部との圧着接続が行われる様子を示す図である。
【0021】
この圧着接続では、電線2の端部21である露出芯線が、金属接続部材1における筒状の第1接続部11における筒口11aに挿入され、第1接続部11が矢印D13方向に加締められて圧着される。このときの加締め圧着は、第1接続部11の帯板壁112が不図示のアンビル上に載置され、一対の湾曲壁111が押し潰されるように圧力を掛けることで行われる。
【0022】
このとき、本実施形態では、超音波接続用に設けられた第2接続部12も圧着接続に供されるように構成されている。電線2の端部21に第1接続部11が圧着接続される場合には、超音波接続の接続面121である第2接続部12の表面上を通過して電線2が第1接続部11へと向かう。上述したように幅広に形成された第2接続部12は、上記のように第1接続部11へと向かう電線2の被覆部分22から両翼状に外れる両翼部分122を有することとなる。本実施形態では、この第2接続部12における両翼部分122が電線2の被覆部分22を抱持した状態で潰されることで被覆部分22に圧着接続される。このように、本実施形態では、電線2の露出芯線としての端部21と、この端部21に隣接する被覆部分22と、の2箇所について圧着接続が行われる。
【0023】
以上に説明した実施形態の金属接続部材1によれば、超音波接続の接続面121を有する第2接続部12とともに、圧着接続が可能な第1接続部11が設けられている。これら二種類の接続部を設けたことで、次のような効果を得ることができる。まず、電線2が、超音波接続によるコストや条件設定の手間が増大しがちな太線である場合には、圧着接続に対応した第1接続部11を選択使用することでコストや条件設定の手間を抑えることができる。他方で、コストや条件設定の手間が少ない細線については、超音波接続に対応した第1接続部11を選択使用することで接続部分の厚みや電気的な接続抵抗の低減といった超音波接続に特有の効果を享受することができる。このように、上記の金属接続部材1によれば、電線2の端部21に対する超音波接続による接続を可能としつつ、コストや条件設定の手間を抑えることができる。
【0024】
ここで、本実施形態では、第1接続部11は、全体が筒状で、第2接続部12が第1接続部11の一端に形成されている。この構成によれば、例えば一部分が筒状で他の部分が平板状となった形状に第1接続部を形成する場合等に比べて加工が容易であり、その分、加工コストを低減させることができる。
【0025】
また、本実施形態では、第1接続部11は、各々が周方向D11について筒の周壁11bの一部を構成するように湾曲した一対の湾曲壁111を有し、これら一対の湾曲壁111が潰されることで圧着接続が行われる。この構成によれば、金属板を曲げる板金加工によって第1接続部11を形成することができ、例えば押出成形で金属パイプ状に形成する場合等と比べて加工が容易であり、その分、加工コストを低減させることができる。
【0026】
また、本実施形態では、第1接続部11は、蒲鉾型の筒を形作るように、一対の湾曲壁111と帯板壁112とを有している。この構成によれば、帯板壁112をアンビル上に載置して一対の湾曲壁111を圧し潰すように圧力を掛けるというように、第1接続部11の姿勢を安定させて圧着接続を行うことができる。
【0027】
また、本実施形態では、第2接続部12が幅広に形成され、圧着接続の際には、第1接続部11へと向かう電線2から両翼状に外れる両翼部分122が電線2を抱持した状態で潰されて圧着接続される。この構成によれば、第1接続部11だけでなく第2接続部12についても圧着接続に利用することができるので、圧着接続における接続強度を向上させることができる。
【0028】
尚、以上に説明した実施形態は金属接続部材の代表的な形態を示したに過ぎず、金属接続部材は、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0029】
例えば、上述の実施形態では、金属接続部材を形成する金属材料の一例として銅が例示され、電線の芯線を形成する金属材料の一例としてアルミニウムが例示されている。しかしながら、金属接続部材や電線の芯線の金属材料は、これらに限るものではなく、他の任意の金属材料を用いることができる。
【0030】
また、上述の実施形態では、金属接続部材の一例として、全体が筒状に形成された圧着接続用の第1接続部11の一端に、超音波接続用の第2接続部12が設けられた金属接続部材1が例示されている。しかしながら、金属接続部材は、これに限るものではなく、例えば、全体が筒状に形成された圧着接続用の第1接続部の両端それぞれに、超音波接続用の第2接続部が設けられたものであってもよい。あるいは、第1接続部が、一部のみが筒状に形成され、その筒状の部分の一端に第2接続部が設けられたものであってもよい。この場合、第1接続部における筒状の部分の他端側には平板状のバスバ等を延出させ、他の電線等の接続が可能となるように構成してもよい。ただし、圧着接続用の第1接続部11の全体を筒状に形成することで、加工コストを低減させることができる点は上述した通りである。
【0031】
また、上述の実施形態では、第1接続部の一例として、筒の周壁の一部を構成する一対の湾曲壁111を有した第1接続部11が例示されている。しかしながら、第1接続部はこれに限るものではなく、例えば金属パイプ状に形成されたもの等であってもよい。ただし、第1接続部11を一対の湾曲壁111を有した構成とすることで、加工コストを低減させることができる点は上述した通りである。
【0032】
また、上述の実施形態では、第1接続部の一例として、一対の湾曲壁111と帯板壁112とで蒲鉾型の筒に形作られた第1接続部11が例示されている。しかしながら、第1接続部はこれに限るものではなく、例えば一対の湾曲壁のみで円筒型に形作られたもの等であってもよい。ただし、蒲鉾型の筒に形作られた第1接続部11によれば、第1接続部11の姿勢を安定させて圧着接続を行うことができる点は上述した通りである。
【0033】
また、上述の実施形態では、第2接続部の一例として、第1接続部11へと向かう電線2から両翼状に外れる両翼部分122が電線2を抱持した状態で潰されて圧着接続される超音波接続用の第2接続部12が例示されている。しかしながら、第2接続部はこれに限るものではなく、圧着接続には全く寄与しないように形成されたものであってもよい。ただし、超音波接続用の第2接続部12が圧着接続にも利用されることで、圧着接続における接続強度を向上させることができる点は上述した通りである。尚、実施形態では、第2接続部12が、電線2よりも全体的に幅広となる台形板状に形成されているが、圧着接続にも利用される場合でも、第2接続部の形状はこれに限るものではない。第2接続部は、少なくとも一部が電線よりも幅広となるのであれば、その形状は任意に設定し得るものである。
【符号の説明】
【0034】
1 金属接続部材
2 電線
11 第1接続部
11a 筒口
11b 周壁
12 第2接続部
21 端部
22 被覆部分
111 湾曲壁
112 帯板壁
112a 帯状平面
112b 側縁
121 接続面
122 両翼部分
D11 周方向
D12 太さ方向
D13 矢印