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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】スプールバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 47/08 20060101AFI20240520BHJP
   F16K 3/24 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
F16K47/08
F16K3/24 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021548860
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2020035283
(87)【国際公開番号】W WO2021060146
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2019172708
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】西村 直己
(72)【発明者】
【氏名】川戸 惟寛
(72)【発明者】
【氏名】星 政輝
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-522201(JP,A)
【文献】特開2018-013184(JP,A)
【文献】特開2011-017381(JP,A)
【文献】特開2015-102150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/00- 3/36
39/00-51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項7】
前記流入ポートは、周方向に長い長孔形状に形成されている請求項1ないし6のいずれかに記載のスプールバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体回路に用いられるスプールバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
スプールバルブは、スリーブ内に収容されたスプールをソレノイドなどの駆動力により軸方向に移動させて、スリーブに設けられた流入ポートに流入された流体を同スリーブに設けられた流出ポートから圧力や流量を調整して流出させるものである。
【0003】
スプールバルブは、ハウジングに設けられた取付穴に装着されて使用されるものが知られており、ハウジングに形成された流体供給孔にスリーブの流入ポートが位置合わせされるとともに、ハウジングに形成された流体流出孔にスリーブの流出ポートが位置合わせされる。また、流体供給孔は圧力源に接続され、流体流出孔は負荷等に接続される。
【0004】
例えば、特許文献1のスプールバルブは、駆動部に電源が供給されないオフ状態においては、スプールが流入ポートと流出ポートとの連通を遮り、流入ポートからスリーブ内に流体が流入されないノーマルクローズタイプのスプールバルブとなっている。駆動部に電源が供給されたオン状態においては、スプールが軸方向に移動されることで、流入ポートからスリーブ内に流体が流入されるようになり、流入ポートと流出ポートが連通され、スプールの軸方向移動量により流出ポートから流出される流体の流量が調整可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-236310号公報(第7頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなスプールバルブを流体回路に配設し利用した際、スプールが円滑に移動されず所定の制御が行えないことがあった。これは、流入ポートにおける流体の供給動圧によって、スプールがスリーブに径方向に押し付けられ、スプールの外周面とスリーブの内周面との間に大きな摩擦力が生じていることが原因と考えられる。特に近年、流体の制御圧力が高まってきており、スプールバルブにこのような高圧の流体を使用すると、上述した所定の制御を実行し難い傾向が多く見られた。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、圧力の高低を問わずスプールが円滑に制御されるスプールバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のスプールバルブは、
スリーブの内方側にスプールが長手方向に移動可能に配置され、外部の流体供給孔から流体が供給される流入ポートと、外部に流体を流出させる流出ポートと、を有するスプールバルブであって、
前記スリーブの外周には供給溝が形成されており、
前記供給溝は、前記流体供給孔から流体が流入される導入空間と、該導入空間の軸方向流入ポート側に形成されている導出空間と、により構成されている。
これによれば、流体供給孔から供給溝に供給された流体は、まず、導入空間に流入する際に供給動圧が緩衝され、次いで、流入ポート側に形成されている導出空間に移動する際に更に供給動圧が緩衝されるので、流体の制御圧力の高低を問わずスプールは円滑に制御される。
【0009】
前記導入空間は、環状に形成にされていてもよい。
これによれば、環状の導入空間内に流体が保持されるので流体を緩衝させ易い。
【0010】
前記導入空間と隣接し、前記スリーブの径方向に突出して成る仕切壁を有し、前記仕切壁には、前記導入空間と前記導出空間を連通させる連通部が形成されていてもよい。
これによれば、導入空間に流入された流体が仕切壁に形成された連通部に迂回されて導出空間に流出されるので、流体を緩衝させることができる。
【0011】
前記連通部は、前記仕切壁の外周に形成された切欠部であってもよい。
これによれば、導入空間に流入された流体が切欠部を径方向に乗り越えた後、軸方向へ移動されるので、流体を緩衝させることができる。
【0012】
前記連通部と、前記流入ポートとは、同位相に形成されていてもよい。
これによれば、弁開の際に連通部を通過した流体を流入ポートにスムーズに入力させることができる。
【0013】
前記流入ポートは、前記スリーブの外周において前記スプールの中心に対して対称に形成されていてもよい。
これによれば、導出空間へ流入された流体がスプールを径方向から略均等なバランスで押圧するので、スプールにかかる一方側への圧力を打ち消すこととなり、円滑に制御させることができる。
【0014】
前記流入ポートは、周方向に長い長孔形状に形成されていてもよい。
これによれば、スプールを押圧する流体の圧力を周方向に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1におけるスプールバルブを一部切り欠いて示す側面図である。
図2】実施例1におけるバルブ部を示す斜視図である。
図3】実施例1における流体の供給動圧が高い場合の供給動圧の伝達を示す模式図である。
図4】実施例1における図3のA-A断面図である。
図5】実施例1における図3のB-B断面図である。
図6】本発明の実施例2におけるバルブ部を示す斜視図である。
図7】本発明の実施例3におけるバルブ部を示す斜視図である。
図8】実施例3における流体の供給動圧が高い場合の供給動圧の伝達を示す模式図である。
【0016】
本発明に係るスプールバルブを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0017】
実施例1に係るスプールバルブにつき、図1から図5を参照して説明する。以下、図1の紙面左側をスプールバルブの軸方向一端側とし、図1の紙面右側をスプールバルブの軸方向他端側として説明する。
また、流入ポートを第1ポート24、流出ポートを第2ポート25、として説明する。
【0018】
スプールバルブ1は、スプールタイプのソレノイドバルブであって、例えば車両の自動変速機等の油圧により制御される装置に用いられるものである。
【0019】
図1に示されるように、スプールバルブ1は、油等の制御流体の流量を調整するバルブ部2が駆動部としてのソレノイド部3に一体に取付けられて構成されている。また、図1の紙面右側上方にはバルブ部2の外観図を示し、紙面右側下方には後述するスプールの外観とバルブ部2の一部断面図を示している。尚、ソレノイド部3に電源が供給されないオフ状態においては、後述するスプールが第1ポートと第2ポートとの連通を遮り、第1ポートからスリーブ内に流体が流入されないノーマルクローズタイプのスプールバルブとなっている。以下、ソレノイド部3に電源が供給されている状態についてはオン状態、ソレノイド部3に電源が供給されていない状態についてはオフ状態として説明する。
【0020】
まず、バルブ部2の構造について説明する。図1及び図2に示されるように、バルブ部2は、長孔形状に開口された第1ポート24と略円形状に開口された第2ポート25とが設けられた略円筒形のスリーブ21と、スリーブ21の内径側において軸方向に形成される内部空間に液密に収容されるスプール23(図1図4参照)と、から主に構成されている。尚、スリーブ21、スプール23は、アルミ、鉄、ステンレス、樹脂等の材料により形成されている。
【0021】
スリーブ21の外周面には、周方向に連続し無端環状の供給溝4が形成されている。供給溝4は、仕切壁22によって軸方向に区画されており、環状の第1環状溝41と、環状の第2環状溝42と、仕切壁22と、から構成されている。第2環状溝42の底面42aには、周方向において対称の位置、すなわち径方向断面におけるスプール中心に対して対称位置にそれぞれ第1ポート24が形成されており、いずれも周方向に長い長孔形状となっている。また、第1環状溝41と、第2環状溝42の溝幅は略同幅に形成されており、第1環状溝41の方が第2環状溝42より深溝に形成されている。また、仕切壁22の外径は、第1ランド部26及び第2ランド部27と同径となっている。
【0022】
仕切壁22の外周には、周方向において対向する位置、言い換えると流体が供給される径方向に対して対称位置、つまり、流体供給孔8bから周方向等距離の位置にそれぞれ切欠部22aが形成されている。後述するが、切欠部22aとハウジング8の装着穴8aとの間の空間は、第1環状溝41と、第2環状溝42とを連通させる連通部L(図4参照)として機能するようになっている。
【0023】
図3に示されるようにバルブ部2は、ハウジング8の装着穴8a内に挿入されて使用される。装着穴8aには、バルブ部2へ流体を供給させる流体供給孔8bと、バルブ部2からハウジング8へ流体を流出させる図示しない流体流出孔と、が形成されている。尚、ハウジング8内において流体供給孔8bは図示しない圧力源側に連通されており、流体流出孔は図示しない負荷側に連通されている。
【0024】
具体的には、バルブ部2を、第1環状溝41と流体供給孔8bとの軸方向位置が合うように、かつ流体供給孔8bに対し、切欠部22aを、略90度位相が異なるように装着穴8aに装着する。より詳細には、第1環状溝41の溝幅は、流体供給孔8bの軸方向の開口幅と略同幅に形成されており、それぞれの中心位置を軸方向に合致させる。また、第2ポート25(図2参照)に対して図示しない流体流出孔を位置合わせし配設する。
【0025】
図3に示されるように、バルブ部2がハウジング8の装着穴8aへ装着されると、流体がハウジング8の流体供給孔8bから第1環状溝41へ供給可能となる。
【0026】
ここで、図3は、ソレノイド部3が比較的長いオフ状態の後にオン状態に切替えられる際に流体に供給動圧が生じている態様を示している。このような、供給動圧が生じる頻度は少ないものの上述した切替時に起こることがある。なお、図3は当該切替時において、第1ポート24がスプール23により閉塞されている状態を示しており、図3における矢印は、供給動圧の伝達を説明するものである。また、図3に示される第1ポート24の閉塞状態にあっては流体に流れは略生じないが、便宜上、以下において圧力の伝達方向や流体の流れ込もうとする方向を単に流れとして説明する。尚、後述する図4図5の矢印も同様である。
【0027】
第1環状溝41は、底面41a,側面41b,側面22bから構成され、周方向に連続する環状の溝となっている。底面41aは、スプール23の軸芯に対して平行でスリーブ21の内径側に形成されており、側面41b,側面22bは底面41aに対して直交し、スリーブ21の外径側へ向けて延びていることから、装着穴8aの内面と第1環状溝41とにより流体を保持可能な導入空間Tが形成されている。流体供給孔8bから導入空間T内へ流れ込む流体は、導入空間T内に保持されている流体によって、その供給動圧がならされ平滑化される、すなわち導入空間Tは緩衝機能を奏するようになっている。
【0028】
また、図4に示されるように流体供給孔8bと底面41aとが対向していることから、流体供給孔8bから導入空間Tに流入される流体は、図4における左方側と右方側にそれぞれ分岐されることとなり、当該分岐によって流体の供給動圧が更に緩衝される。尚、第1環状溝41の流体供給孔8bと対向する底面41aを直線形状にしてもよく、この場合直線と流体供給孔8bの延在方向は直交することが好ましい。また、流体供給孔8bと2つの切欠部22aとが略90度位相が異なるように配設されることが好ましい。
【0029】
図3に戻り、仕切壁22には、2つの切欠部22aが周方向に対向して形成されていることから、装着穴8aの内面と切欠部22aとにより第1環状溝41と、第2環状溝42とを連通させる連通部L(図4参照)がそれぞれ形成されている。また、連通部Lが流体供給孔8bに対して略90度位相が異なるように配設され、連通部Lは導入空間Tよりも軸方向第1ポート24側に位置していることから、導入空間Tに流入された流体は、周方向から軸方向へ湾曲した経路で連通部L側へ流出されることとなる。このように、流体は導入空間Tから連通部Lにかけて移動する際に周方向から軸方向へ方向転換させられることから、流体の供給動圧が更に緩衝される。
【0030】
さらに、図4に示されるように、連通部Lは、径方向に突出する仕切壁22の外周に形成されていることから、導入空間Tの流体は仕切壁22の側面22bを径方向に乗り越えて移動することとなる。このことから、流体が導入空間Tから連通部Lに移動する際に、上述した方向転換に加えて乗り越えによっても供給動圧が緩衝されることとなる。
【0031】
図3に示されるように、連通部Lを通過した流体は、導出空間Rへ流入する。第2環状溝42は、底面42a,側面42b,側面22cから構成され、周方向に連続する環状の溝となっていることから、装着穴8a内面と第2環状溝42とにより流体を保持可能な導出空間Rが形成されている。オフ状態において、連通部Lから導出空間R内へ流体が流れ込むと、導出空間R内に保持されている流体により更に供給動圧が平滑化され、緩衝されるようになっている。また、連通部Lよりも導出空間Rの方が容積が大きくなっていることから、連通部Lから導出空間Rへ流入された流体は、導出空間R内で拡がるようになっている。このことから、流体の供給動圧が更に緩衝されることとなる。上述した緩衝作用により、流体がスプール23を径方向に押圧し難くなっている。
【0032】
また、連通部Lと、第1ポート24とは、同位相に形成されているのでオン状態の際には、連通部Lを通過した流体をスムーズに第1ポート24からスリーブ21内へ入力可能となっている。
【0033】
また、第1環状溝41は、第2環状溝42よりも深溝に形成されているので、第2環状溝42に形成される導出空間Rよりも、第1環状溝41に形成される導入空間Tの方が流体を多く収容できるようになっている(図3参照)。このことから、流体供給孔8bから供給される供給動圧を確実に緩衝させることができる。
【0034】
また、第2環状溝42は、導出空間R内に流体を保持させることができるので、第2ポート25(図1参照)と接続されている負荷への急激な流体の供給が必要になった際、導出空間R内に保持されている流体を第1ポート24を介して負荷に送り出す貯留槽としての機能も兼ねている。
【0035】
また、長孔形状に形成された第1ポート24の開口面積は、第2ポート25の開口面積より大きくなっている。このことから、第2ポート25の接続先で必要な流体の流量を十分に第2ポート25へ向けて供給させることができる。
【0036】
図5に示されるように、第2環状溝42の底面42aには、周方向において対象の位置、すなわち径方向断面におけるスプール中心に対して対称位置にそれぞれ第1ポート24が形成されており、いずれも周方向に長い長孔形状となっている。これによれば、オフ状態の際に導出空間R内の緩衝された流体が図5における左右から均等な圧力でスプール23を押圧することとなり、スプール23に径方向に作用する流体による力が小さい若しくは略発生しないことから、オン状態にされた際にスプール23をスリーブ21の内壁に押し付けることなく円滑に軸方向へ移動させることができるようになっている。また、第1ポート24が周方向に長い長孔形状であることから、流体がスプール23を押圧する力を周方向に分散させることとなり、スプール23を軸方向に移動させ易い。
【0037】
また、スリーブ21に対してスプール23を円滑に移動させるために、スリーブ21やスプール23にアルマイト処理を行ったり、めっき厚膜の均一性が高い無電解めっきを施すことが好ましい。例えば、Ni(ニッケル)-P(リン)-B(ホウ素)を主被膜組成とするめっきを施すことで、硬度や摩擦耐性を向上させることとしてもよい。また、スリーブ21やスプール23にNi(ニッケル)-P(リン)を主被膜組成とし、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子を加えた複合めっきを施すことで、スリーブ21とスプール23との摩擦を抑えることとしてもよい。
【0038】
このように、第1ポート24と、第2ポート25と、が形成されたスリーブ21の内方側にスプール23が長手方向に移動可能に配置され、ハウジング8の流体供給孔8bから第1ポート24に流体が供給されるスプールバルブであって、スリーブ21の外周には供給溝4が形成されており、供給溝4は、流体供給孔8bから流体が流入される導入空間Tと、導入空間Tの軸方向第1ポート24側に形成されている導出空間Rと、により構成されていることから、流体供給孔8bから供給溝4に供給された流体は、まず、導入空間Tに流入する際に供給動圧が緩衝され、次いで、第1ポート24側に形成されている導出空間Rに移動する際に更に供給動圧が緩衝されるので、流体の制御圧力の高低を問わずスプール23は円滑に制御される。
【0039】
また、導入空間Tは、環状に形成にされていることから、環状の導入空間T内に流体が保持されるので流体を緩衝させ易い。
【0040】
また、導入空間Tと隣接し、スリーブ21の径方向に突出して成る仕切壁22を有し、仕切壁22には、導入空間Tと導出空間Rを連通させる連通部Lが形成されていることから、導入空間Tに流入された流体が仕切壁22に形成された連通部Lに迂回されて導出空間Rに流出されるので、流体を緩衝させることができる。
【0041】
連通部Lは、仕切壁22の外周に形成された切欠部22aであることから、導入空間Tに流入された流体が切欠部22aを径方向に乗り越えた後、軸方向へ移動されるので、流体を緩衝させることができる。
【0042】
また、連通部Lと、第1ポート24とは、同位相に形成されているので、ON状態の際に連通部Lを通過した流体を第1ポート24にスムーズに入力させることができる。
【0043】
また、第1ポート24は、スリーブ21の外周において対称に形成されているので、導出空間Rへ流入された流体がスプール23を径方向から略均等なバランスで押圧するので、スプール23にかかる一方側への圧力を打ち消すこととなり、円滑に制御させることができる。
【0044】
また、第1ポート24は、周方向に長い長孔形状に形成されているので、スプール23を押圧する流体の圧力を周方向に分散させることができる。
【0045】
また、供給溝4の導出空間Rは導入空間Tよりも第2ポート25側に配置されていることから、流体供給孔8bは第3環状溝25Aから離れた位置に配置され、流体は装着穴8aとスリーブ21の間を通って第2ポート25に漏れにくくなっている。
【0046】
また、導入空間Tは導出空間Rとはソレノイド部3と反対側に配置され、流体の圧力によって主にスリーブ21には装着穴8aの深さ方向への力が作用するので、スプールバルブ1がハウジング8から脱落しにくくなっている。
【実施例2】
【0047】
次に、実施例2に係るスプールバルブにつき、図6を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0048】
実施例2のスプールバルブの供給溝240は、第1環状溝41と、仕切壁122に形成される切欠部122aと、から主に構成されており、第1環状溝41の側面122bは、仕切壁122の一部を構成している。
【0049】
実施例2における仕切壁122は、実施例1の仕切壁22よりも軸方向に長く延びて形成されており、第1環状溝41から第2ポート25が底面に形成されている環状の第3環状溝25Aまで軸方向に延びて形成されている。
【0050】
仕切壁122は、側面122b側から第3環状溝25Aに向けて軸方向の途中まで環状の外周が平面(図6において紙面に平行な平面)で切欠かれた切欠部122aが周方向において対向する位置、言い換えると流体が供給される径方向に対して対称位置、つまり、流体供給孔8bから周方向等距離の位置にそれぞれ形成されることで軸方向視略スタジアム形状を成している。尚、該切欠部122aには、第1ポート24がそれぞれ形成されている。
【0051】
上述した実施例2のバルブ部32をハウジング8の装着穴8aに挿入し、第1環状溝41と、流体供給孔8bとを位置合わせさせる。装着穴8aの内周面と第1環状溝41により、流体供給孔8bから第1環状溝41内へ流れ込む流体の供給動圧をならし平滑化させる緩衝機能を奏する導入空間Tが形成される。また、装着穴8aの内周面と切欠部122aとにより、オフ状態の際は流体を保持可能で、オン状態の際は第1ポート24に流体を入力させる導出空間Rが形成されるようになっている。
【0052】
第1環状溝41を構成する側面122bが切欠かれているので、流体が導入空間Tで緩衝された後、導出空間Rへ移動される。また、側面122bが第1環状溝41の底面41aよりも径方向に突出しているので、流体が導入空間Tから導出空間Rに流れる際、流体は周方向から軸方向に方向転換させられるとともに、仕切壁122の側面122bを径方向に乗り越えることとなり、更に供給動圧を緩衝されることとなる。
【実施例3】
【0053】
次に、実施例3に係るスプールバルブにつき、図7を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0054】
実施例3のスプールバルブの供給溝340は、周方向に連続し無端環状の環状溝141から主に構成されている。環状溝141は、底面141a,側面141b,側面141cから構成されており、底面141aの周方向において対称の位置には、第1ポート24がそれぞれ形成されている。環状溝141は、前記実施例1における第1環状溝41よりも軸方向に長く形成されている。
【0055】
図8に示されるように、バルブ部52をハウジング8の装着穴8aに挿入させ、流体供給孔8bの軸方向他端位置と、環状溝141の側面141bの軸方向位置を合わせて配設させる。また、図8は、ソレノイド部3(図1参照)が比較的長いオフ状態の後にオン状態に切替えられる際に流体に供給動圧が生じている態様を示している。このような、供給動圧が生じる頻度は少ないものの上述した切替時に起こることがある。なお、図8は当該切替時において、第1ポート24がスプール23により閉塞されている状態を示しており、図8における矢印は、供給動圧の伝達を説明するものである。また、図8に示される第1ポート24の閉塞状態にあっては流体に流れは略生じないが、便宜上、圧力の伝達方向や流体の流れ込もうとする方向を単に流れとして説明する。
【0056】
環状溝141は、周方向に連続する環状の溝となっており、装着穴8aの内面と環状溝141とにより流体を保持可能な導入空間T,導出空間Rが隣接して形成される。導入空間Tは、流体供給孔8bと環状溝141とが軸方向に対向する箇所に環状に形成され、環状溝141内に保持している流体によって、流体供給孔8bから環状溝141内へ流れ込む流体の供給動圧をならし平滑化させる緩衝機能を奏するようになっている。
【0057】
このように、流体供給孔8bから供給溝40としての環状溝141に供給された流体は、まず、導入空間Tに流入する際に供給動圧が緩衝され、次いで、軸方向に隣接して形成されている導出空間Rに移動する際に周方向から軸方向へ方向転換させられることから、更に供給動圧が緩衝されるので、流体の制御圧力の高低を問わずスプール23は円滑に制御されるようになっている。
【0058】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0059】
例えば、前記実施例では、スプールをソレノイドにより駆動する例について説明したが、スプールを駆動する手段はソレノイド以外、例えば電動機であってもよい。
【0060】
また、前記実施例では、駆動部に電源が供給されないオフ状態においては、第1ポートからスリーブ内に流体が流入されないノーマルクローズタイプとして説明したが、これに限られず、ノーマルオープンタイプのスプールバルブに適用してもよい。
【0061】
また、第1ポート24は、スリーブ21の周方向に長い長穴形状と説明したが、これに限られず、円形状としてもよい。また、第1ポート24はスリーブ21の周方向の対称の位置にそれぞれ配設されているとしたが、これに限られず、スリーブ21の周方向に複数等配させることとしてもよい。この場合、円形状の第1ポートをスリーブ21の複数の第1ポート同士を対称に設けることが好ましい。
【0062】
また、前記実施例では、スリーブ21の外周には、供給溝4の導出空間Rは導入空間Tよりも第2ポート25側に形成された例について説明したが、導入空間Tが導出空間Rよりも第2ポート25側に形成されたものであってもよい。
【0063】
また、第2ポート25が第1ポート24よりもソレノイド3部側に形成された例について説明したが、第1ポート24が第2ポート25よりもソレノイド部3側に形成されたものであってもよい。
【0064】
また、流入ポートを第1ポート、流出ポートを第2ポート、として説明したが、これに限られない。スプールバルブの外部からスリーブへと向かう流体の向きを考慮し、第2ポートを流入ポート、第2ポートからスプールバルブに流入した流体をスプールバルブ外へと排出する排出ポートを流出ポートとしてもよい。つまり、外部からスプールバルブへ流体が流入するポートが流入ポートであり、スプールバルブからスプールバルブ外に流体が流出するポートが流出ポートである。本発明の供給溝は外部からスプールバルブへ流体が流入するポートの周囲に形成されていればよい。また、加えて、流入ポートが複数でもよい、例えば、複数のポートのそれぞれが流入ポートとして機能し、他のポートが流出ポートとして機能するような構造としてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 スプールバルブ
2 バルブ部
3 ソレノイド部
4 供給溝
8 ハウジング
8a 装着穴
8b 流体供給孔
21 スリーブ
22 仕切壁
22a 切欠部
23 スプール
24 第1ポート
25 第2ポート
25A 第3環状溝
31 スリーブ
32 バルブ部
40 供給溝
41 第1環状溝
42 第2環状溝
51 スリーブ
52 バルブ部
122 仕切壁
122a 切欠部
122b 側面
141 環状溝
240 供給溝
340 供給溝
R 導出空間
L 連通部
T 導入空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8