(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】クローン病を治療するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240520BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240520BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20240520BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P1/04
C07K16/24 ZNA
(21)【出願番号】P 2017198856
(22)【出願日】2017-10-12
【審査請求日】2020-09-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2016202511
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウエブサイトへの掲載(平成28年5月21日)https://ddw.scientificposters.com/epsAbstractDDW.cfm?id=1
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウエブサイトへの掲載(平成28年4月22日以降)Digestive Disease Week 2016 モバイルアプリ
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会における発表(平成28年5月23日)Digestive Disease Week2016、San Diego,CA,USA
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物における発表(平成28年4月19日)Gastroenterology(2016),Vol.150,Issue 4
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウエブサイトへの掲載(平成28年4月16日)http://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(16)32732-9/pdf
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】安田 信之
(72)【発明者】
【氏名】桶谷 清
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕子
(72)【発明者】
【氏名】仲野 智久
(72)【発明者】
【氏名】森 雅彦
【合議体】
【審判長】光本 美奈子
【審判官】冨永 みどり
【審判官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】最新医学,2015年,Vol.70,pp.280-285
【文献】ClinicalTrials.gov archive [online],2016年1月,NCT02039063,[2021年7月15日検索],インターネット,<URL:https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT02039063?V_8=View#StudyPageTop>
【文献】Gastroenterology, 2015年, Vol. 148, Suppl.1, pp. S684,Abstract Number: Mo1682 (abstract) EMBASE [online],[retrieved on 15 July 2021] Retrieved from STN, Accession no.0051858929
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/CA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローン病を治療するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、抗フラクタルカイン抗体、および薬学的に許容される賦形剤を含んでおり、
前記抗フラクタルカイン抗体は:
その重鎖可変領域が、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含む;
その軽鎖可変領域が、配列番号14(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む;
ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含む;および
前記ヒトIgG2アイソタイプの定常領域のFc領域がV234AおよびG237Aの変異を含む、抗体であり、
前記医薬組成物は、Crohn’s disease activity index(CDAI)が220以上かつ330未満のクローン病ヒト患者に対して1回あたり10~15mg/kgヒト体重の用量で、平均トラフ濃度が80μg/mL以上となるように前記抗フラクタルカイン抗体が静脈内投与されるように用いられることを特徴とする、
前記医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、
クローン病が、少なくとも1回の、コルチコステロイド、免疫調節薬および/ または抗TNF抗体から選択される薬剤による標準治療に対して、十分な治療効果が得られなかった、治療効果が持続しなかった、または不耐性であったクローン病である、前記医薬組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の医薬組成物であって、
クローン病が、過去にアミノサリチル酸製剤、サラゾスルファピリジン、副腎皮質ステロイド、免疫調節剤、インフリキシマブまたはアダリムマブが投与され効果が認められなかった、効果が認められた後に効果が減弱・消失した、又は副作用により投与を継続できなかったクローン病である、
前記医薬組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、前記ヒト患者に対して1回あたり10mg/kgヒト体重または15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が静脈内投与されるように用いられることを特徴とする、
前記医薬組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、
前記ヒト患者に対して単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体1mg/kgヒト体重あたりの前記抗フラクタルカイン抗体の平均Cmaxが21~25μg/mLである、
前記医薬組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、
前記ヒト患者に対して10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体の平均Cmaxが2.4×10
2
μg/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である、
前記医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、
前記ヒト患者に対して10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体の平均AUC(0-t)が7.0×10
4
μg・h/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である、
前記医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、
前記ヒト患者に対して10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体の平均AUC(0-336h)が3.8×10
4
μg・h/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である、
前記医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、
1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与される、
前記医薬組成物。
【請求項10】
抗フラクタルカイン抗体を含有するクローン病治療薬であって、
Crohn’s disease activity index(CDAI)が220以上かつ330未満のヒト患者に対して1回あたり10~15mg/kgヒト体重の抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で平均トラフ濃度が80μg/mL以上となるように静脈内投与されるように用いられることを特徴とし、
前記抗フラクタルカイン抗体は:
その重鎖可変領域が、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含む;
その軽鎖可変領域が、配列番号14(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む;
ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含む;および
前記ヒトIgG2アイソタイプの定常領域Fc領域がV234AおよびG237Aの変異を含む、抗体である、
前記クローン病治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗フラクタルカイン抗体を含む、クローン病を治療するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フラクタルカイン(「FKN」とも称する)は、LPS、TNF-α、IL-1などの炎症刺激により血管内皮細胞の表面に発現する膜結合型ケモカインである。FKN受容体のCX3CR1を発現する細胞はセレクチンまたはインテグリンの介在なしに膜結合型FKNと結合し、強力な細胞接着を引き起こす。また、膜結合型FKNからシェディングされた分泌型FKNは、CX3CR1を有するNK細胞、T細胞、単球に対して細胞遊走活性を示す。
【0003】
FKNの発現は、炎症誘発性サイトカインによって血管内皮細胞の表面上で誘導される。クローン病(「CD」とも称する)を有する患者において、FKNの発現上昇ならびにCX3CR1+細胞傷害性エフェクターリンパ球およびマクロファージの蓄積が報告されている。
【0004】
これまでに、FKNについて、潰瘍性大腸炎(「UC」とも称する)およびCDのような炎症性腸疾患(「IBD」とも称する)に対する有望な治療ターゲットとして考察されている(非特許文献1)。また、FKNとCX3CR1との相互作用を阻害する抗フラクタルカイン抗体が、クローン病を含むIBDを治療し得ることが示唆されている(特許文献1)。このように、FKNに結合し、FKNの作用を阻害できる抗体が、クローン病の治療に有効であることが示唆されている。
【0005】
これまでに、本件出願人により、複数のマウス抗ヒトフラクタルカイン(hFKN)モノクローナル抗体(クローン1F3-1、3A5-2、1F3、1G1、2B2、3D5、3H7、6D1、7F6、および5H7-6)が報告されており、特にクローン3A5-2は、hFKNに対する高い中和活性、結合親和性および種間交差反応性のために、ヒト化され、H3-2L4と命名されている(特許文献2、参照によりその全体が組み入れられる)。
【0006】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Ann.NY Acad.Sci.2009;1173:350-356
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2006/046739
【文献】WO2011/052799
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ヒト被験体への投与後に、クローン病に治療上有効な改善をもたらす、抗フラクタルカイン抗体(本明細書中、「抗FKN抗体」とも称する)を含む医薬組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、クローン病に治療上有効な改善をもたらすように使用される、抗FKN抗体を含む医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の実施形態を包含するものである。
[1]クローン病を治療するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、抗フラクタルカイン抗体、および薬学的に許容される賦形剤を含んでおり、
前記抗フラクタルカイン抗体は:
その重鎖可変領域が、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含む;
その軽鎖可変領域が、配列番号14(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む;
ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含む;および
前記ヒトIgG2アイソタイプの定常領域のFc領域がV234AおよびG237Aの変異を含む、抗体であり、
前記医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり少なくとも10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が静脈内投与されるように用いられることを特徴とする、
前記医薬組成物。
【0011】
[2][1]に記載の医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり10~15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が静脈内投与されるように用いられることを特徴とする、
前記医薬組成物。
【0012】
[3][1]に記載の医薬組成物であって、
ヒトに対して単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体1mg/kgヒト体重あたりの前記抗フラクタルカイン抗体の平均Cmaxが21~25μg/mLである、
前記医薬組成物。
【0013】
[4][1]に記載の医薬組成物であって、
ヒトに対して10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体の平均Cmaxが2.4×102μg/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である、
前記医薬組成物。
【0014】
[5][1]に記載の医薬組成物であって、
ヒトに対して10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体の平均AUC(0-t)が7.0×104μg・h/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である、
前記医薬組成物。
【0015】
[6][1]に記載の医薬組成物であって、
ヒトに対して10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体の平均AUC(0-336h)が3.8×104μg・h/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である、
前記医薬組成物。
【0016】
[7][1]に記載の医薬組成物であって、
1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与される、
前記医薬組成物。
【0017】
[8][1]~[7]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
前記抗フラクタルカイン抗体の平均トラフ濃度が80μg/mL以上となるように静脈内投与される、
前記医薬組成物。
【0018】
[9]クローン病を治療するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、治療有効量の抗フラクタルカイン抗体、および薬学的に許容される賦形剤を含んでおり、
前記抗フラクタルカイン抗体は:
その重鎖可変領域が、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含む;
その軽鎖可変領域が、配列番号14(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む;
ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含む;および
前記ヒトIgG2アイソタイプの定常領域のFc領域がV234AおよびG237Aの変異を含む、抗体であって、
前記治療有効量は、前記抗フラクタルカイン抗体を含む医薬組成物により単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体1mg/kgヒト体重あたりの前記抗フラクタルカイン抗体の平均Cmaxが21~25μg/mLである、
前記医薬組成物。
【0019】
[10]抗フラクタルカイン抗体を含有するクローン病治療薬であって、
ヒトに対して1回あたり10~15mg/kgヒト体重の抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で静脈内投与されるように用いられることを特徴とし、
前記抗フラクタルカイン抗体は:
その重鎖可変領域が、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含む;
その軽鎖可変領域が、配列番号14(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む;
ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含む;および
前記ヒトIgG2アイソタイプの定常領域のFc領域がV234AおよびG237Aの変異を含む、抗体である、
前記クローン病治療薬。
【0020】
上記に挙げた本発明の態様の一または複数を任意に組み合わせて発明も、本発明の範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ヒト被験体への投与後に、クローン病に治療上有効な改善をもたらす、抗FKN抗体を含む医薬組成物が提供される。本発明の医薬組成物は、クローン病に対する治療効果を発揮するのに有用な抗FKN抗体の薬物動態パラメータをもたらすように使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、抗体H3-2L4の単回静脈内投与(それぞれ0.04mg/kg、0.2mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、6mg/kgおよび10mg/kgの投与群)後の、平均血清中H3-2L4濃度を経時的に示す。
【
図2】
図2は、抗体H3-2L4の複数回静脈内投与(2mg/kg、5mg/kg、10mg/kgおよび15mg/kgの投与群)後の、平均血清中H3-2L4濃度を経時的に示す。
【
図3】
図3は、抗体H3-2L4の複数回脈内投与(2mg/kg、5mg/kg、10mg/kgおよび15mg/kgの投与群)後の、平均血清中総FKN濃度を経時的に示す。
【
図4】
図4は、QSS modelを用いたシミュレーションに基づく、mFKNに対する抗体H3-2L4の結合占有率を経時的に示す。
【
図5】
図5は、QSS modelを用いたシミュレーションに基づく、投与開始前のcFKN量に対するcFKN量の割合を経時的に示す。
【
図6】
図6は、コホート3(10mg/kg群)の被験者7例の投与後12週までのCRPを経時的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.発明の概要および定義
本発明は、クローン病に治療上有効な改善をもたらす医薬組成物に関する。
【0024】
本発明の一実施形態において、「クローン病に治療上有効な改善」とは、当該分野で確立された、クローン病の評価基準の1つ以上において、治療上有効な改善を示すことを意味し得る。そのような評価基準として、これに限定されるものではないが、炎症性腸疾患の症状である下痢、腹痛、一般状態、腸管外合併症、肛門周囲膿瘍、瘻孔、発熱、体重減少等の病勢を活動指数として示したCrohn’s disease activity index(「CDAI」とも称する)、The International Organization for the study of Inflammatory Bowel Disease score(「IOIBDscore」とも称する)、Dutch activitity index(「Dutch-AI」とも称する)などを用いることができる。また、患者における血清中C反応性タンパク質(「CRP」とも称する)のレベルを検出することなどが挙げられる。CDAIによる重症度分類として、150未満は寛解を示し、150~219は軽症、220~450は中等症、450超は重症の疾患活動度を示す。
【0025】
本発明の一実施形態において、治療前のCDAIが220以上であって、治療前のCDAIをベースラインとして、治療後のCDAIが70以上の低減を示す場合、好ましくは100以上の低減を示す場合、または、好ましくは治療後のCDAIが150未満の寛解を示す場合、「クローン病に治療上有効な改善」があったことを示す。
【0026】
本発明は、一態様において、ヒト被験体への単回投与または複数回投与後に、治療上有効な血清中抗FKN抗体濃度をもたらす、クローン病を治療するための医薬組成物に関する。
【0027】
本発明の一実施形態において、「治療上有効な血清中抗FKN抗体濃度」は、抗FKN抗体の、20μg/mL以上、30μg/mL以上、40μg/mL以上、50μg/mL以上、60μg/mL以上、70μg/mL以上、または80μg/mL以上の血清中濃度である。また、本発明の別の実施形態において、「治療上有効な血清中抗FKN抗体濃度」は、抗FKN抗体の、20μg/mL以上、30μg/mL以上、40μg/mL以上、50μg/mL以上、60μg/mL以上、70μg/mL以上、または80μg/mL以上の平均トラフ濃度である。好ましい実施形態では、「治療上有効な血清中抗FKN抗体濃度」は、抗FKN抗体の、70μg/mL以上または80μg/mL以上の平均トラフ濃度である。より好ましい実施形態では、「治療上有効な血清中抗FKN抗体濃度」は、抗FKN抗体の、80μg/mL以上の平均トラフ濃度である。
【0028】
したがって、本発明の医薬組成物は、一態様において、抗FKN抗体の、20μg/mL以上、30μg/mL以上、40μg/mL以上、50μg/mL以上、60μg/mL以上、70μg/mL以上、または80μg/mL以上の血清中濃度をもたらすように製剤化される。好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、抗FKN抗体の70μg/mL以上の血清中濃度をもたらすように製剤化される。本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、抗FKN抗体の80μg/mL以上の血清中濃度をもたらすように製剤化される。
【0029】
本発明は、別の態様において、ヒト被験体への単回投与または複数回投与後に、治療上有効な血清中抗FKN抗体濃度をもたらすように使用される、抗FKN抗体を含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、特に限定されないが、典型的には、静脈内投与用に調製された注射用製剤の形態であり得る。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、抗FKN抗体の平均トラフ濃度が、20μg/mL以上、30μg/mL以上、40μg/mL以上、50μg/mL以上、60μg/mL以上、70μg/mL以上、または80μg/mL以上となるように使用される。好ましい実施形態においては、本発明の医薬組成物は、抗FKN抗体の平均トラフ濃度が、70μg/mL以上、または80μg/mL以上となるように使用される。
【0030】
本発明において、濃度-時間曲線の薬物動態特性、例えば最大実測血清中濃度(Cmax)、Cmaxに達する時間(Tmax)、および血清中濃度対時間曲線下の面積(AUC)は、薬物動態学分野で十分に確立されている統計学的手法によって調べられる。試験製剤と標準製剤における上記のような評価パラメータの母平均の比が0.80~1.25であるとき、概して、生物学的に同等であるとみなされる。
【0031】
本発明において、CmaxやAUCなどの薬物動態パラメータの平均値は、幾何平均、算術平均、中央値のいずれかの方法で算出することができる。本明細書中、特に明記しない限り、平均Cmax、平均AUC、平均トラフ濃度および平均tFNK濃度は算術平均値で示す。対象とする平均値が本明細書と異なる方法で算出された場合であっても、本明細書の方法に従って算出した平均値が、特許請求の範囲に記載された数値範囲内となる場合には、当該平均値は本発明に係る特許請求の範囲に属するものであることが企図される。
【0032】
本発明において、抗FKN抗体の投与量に関して「1回」または「1回あたり」とは、1投与あたりの抗FKN抗体の絶対量を指す。したがって、例えば「1回あたり10mg/kgヒト体重」と記載される場合には、10mgにヒトの体重(kg)を乗じた量の抗FKN抗体が、本発明の医薬組成物の1セットもしくは同時に使用される2セット以上により投与されることを意味する。
【0033】
本発明において、抗FKN抗体の投与間隔に関して、例えば「1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔」とは、n回目(nは整数である)の投与からn+1回目の投与までの投与間隔が1週間から2週間であることを指し、n回目とn+1回目の投与間隔とn+1回目とn+2回目の投与間隔は異なっていてもよい。例えば、「1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔」には、1回目の投与から2回目の投与までの投与間隔が1週間であり、2回目の投与から3回目の投与までの投与間隔が2週間ある場合も当然に含まれる。
【0034】
本明細書中、用語「ヒト」または「ヒト被験体」は、健常な成人男性、および典型的には、クローン病またはクローン病を生じさせうる任意の疾患もしくは障害の臨床徴候および症状を示す任意のヒトを意味するものとする。本発明において、「ヒト」または「ヒト被検体」は、少なくとも1回の標準治療(コルチコステロイド、免疫調節薬および/または抗TNF抗体)に対して、十分な治療効果が得られなかった、治療効果が持続しなかった、または不耐性であった、クローン病患者が好ましい。
2.抗FKN抗体
【0035】
本発明において、抗FKN抗体に言及する場合、ヒト化抗ヒトフラクタルカイン抗体H3-2L4、またはこれと機能的に同等な抗体を指すものとする。本発明において、「機能的に同等な抗体」とは、抗体H3-2L4と、ヒトFKNに対する結合親和性、中和活性、交差反応性、血中における薬物動態の少なくともいずれか、好ましくは複数が同等である抗体をいう。
【0036】
本発明において、抗FKN抗体に言及する場合、その抗原結合性断片を含んでもよい。そのような抗原結合性断片は、抗FKN抗体の機能的、構造的断片であって、当該断片がFKNに対する結合性を保持し、かつ、完全抗体と血中における薬物動態が有意に異ならないものであれば特に限定されない。抗体の抗原結合断片の例としては、限定はされないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、1本鎖(ScFv)、それらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および、抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の修飾構造体等が挙げられる。
【0037】
一実施形態において、本発明の抗FKN抗体は、以下のCDR配列を含む任意の抗体であり得る:
(a)配列番号15(NYYIH)のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号16(WIYPGDGSPKFNERFKG)のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号17(GPTDGDYFDY)のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号18(RASGNIHNFLA)のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号19(NEKTLAD)のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および
(f)配列番号20(QQFWSTPYT)のアミノ酸配列を含むCDR-L3
【0038】
別の実施形態において、抗FKN抗体は、抗体が重鎖および軽鎖を含み、前記抗体の重鎖可変領域が、配列番号21(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSDDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)、配列番号22(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTRDKSTNTAYMELSSLRSDDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)、配列番号23(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTMTADTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYFCARGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)、または配列番号24(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYFCARGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)のアミノ酸配列を含み、かつ、前記抗体の軽鎖可変領域が、配列番号25(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKFLVYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTQYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)、配列番号14(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)、または配列番号26(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTQYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)のアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0039】
好ましい実施形態において、抗FKN抗体、抗体が重鎖および軽鎖を含み、前記抗体の重鎖可変領域が、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)のアミノ酸配列を含み、かつ、前記抗体の軽鎖可変領域が、配列番号14(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)のアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0040】
特定の実施形態において、抗FKN抗体は、ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含む抗体である。
【0041】
特定の実施形態において、抗FKN抗体は、前記ヒトIgG2アイソタイプの定常領域のFc領域がV234Aおよび/またはG237Aの変異を含む抗体である。
【0042】
本発明の特に好ましい実施形態において、抗FKN抗体は、配列番号11に示すアミノ酸配列(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPAAAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK)からなる重鎖、および配列番号12に示すアミノ酸配列(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC)からなる軽鎖からなる、抗体H3-2L4である。
【0043】
上記に例示した抗FKN抗体を、当該抗体の機能を保持させたまま、または当該抗体の機能を付加、向上させるために、適宜改変(例えば、抗体の修飾、または、抗体のアミノ酸配列の部分的な置換、付加、欠失)した抗体も、本発明の抗体に含まれる。より具体的には、抗体産生細胞により産生される抗体の不均一性を減少させるため、重鎖のカルボキシ末端(C末端)に位置するリシン(Lys)を遺伝子改変等の人為的方法によって欠失させた抗体も、本発明の範囲に含まれる。また、本発明の医薬組成物に含まれる抗FKN抗体は、必ずしも完全な均一性を有している必要はなく、本発明の医薬組成物が意図する機能を維持する限りにおいて、例えば、重鎖のカルボキシ末端(C末端)に位置するリシン(Lys)が欠失したものと欠失していないものとが混在していてもよい。
【0044】
抗FKN抗体は、所望により、修飾されていてもよい。抗FKN抗体は、(a)例えばシートまたはヘリックスコンホメーション等の、修飾領域におけるアミノ酸配列の三次元的な構造;(b)標的部位での分子の電荷または疎水性の状態;または、(c)側鎖の容積の維持に対する修飾の効果、を変化させる修飾であってもよく、あるいはこれらの変化が明白に観察されないような修飾であってもよい。
【0045】
抗FKN抗体の修飾は、例えば、構成するアミノ酸残基の置換、欠失、付加等によって達成してよい。
【0046】
本明細書において、アミノ酸とは、その最も広い意味で用いられ、天然のアミノ酸、例えばセリン(Ser)、アスパラギン(Asn)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、アラニン(Ala)、チロシン(Tyr)、グリシン(Gly)、リシン(Lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、トレオニン(Thr)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、プロリン(Pro)のみならず、アミノ酸変異体および誘導体といった、非天然アミノ酸も含まれる。当業者であれば、この広い定義を考慮して、本明細書におけるアミノ酸として、例えばL-アミノ酸;D-アミノ酸;アミノ酸変異体、アミノ酸誘導体等の化学修飾されたアミノ酸;ノルロイシン、β-アラニン、オルニチン等、生体内でタンパク質の構成材料とならないアミノ酸;および当業者に公知のアミノ酸の特性を有する、化学的に合成された化合物等が挙げられることを当然に理解する。非天然アミノ酸の例としては、α-メチルアミノ酸(α-メチルアラニン等)、D-アミノ酸(D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸等)、ヒスチジン様アミノ酸(2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン等)、側鎖に余分なメチレンを有するアミノ酸(「ホモ」アミノ酸)および側鎖中のカルボン酸官能基アミノ酸がスルホン酸基で置換されるアミノ酸(システイン酸等)等が挙げられる。
【0047】
天然に存在するアミノ酸残基は、例えば、一般的な側鎖特性に基づいて、次のグループに分類され得る:
(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0048】
抗FKN抗体を構成するアミノ酸配列の非保存的置換は、これらのグループの1つに属するアミノ酸を他のグループに属するアミノ酸と交換することにより行ってもよい。より保存的な置換は、これらのグループの1つに属するアミノ酸を同一グループの他のアミノ酸と交換することにより行ってもよい。同様に、アミノ酸配列の欠失または置換を適宜行ってもよい。
3.医薬組成物および製剤
【0049】
本発明の医薬組成物の投与剤形は特に制限されないが、典型的には、静脈内投与用に調製された製剤(例えば注射用製剤)である。本発明の医薬組成物は、例えば、抗FKN抗体を、非限定的に注射用水、生理食塩水、またはリン酸緩衝生理食塩水中に、薬学的に許容される賦形剤とともに、注射用製剤として調製することができる。本発明に使用される薬学的に許容される賦形剤には、非限定的に、安定化剤、界面活性剤、保存剤などが挙げられる。注射用製剤の製造のための代表的な賦形剤およびプロセスは当技術分野において公知であり、例えば、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,1985,Ansel,H.C.,Lea and Febiger,Philadelphia,Pa.;Remington’s Pharmaceutical Sciences,1995,Mack Publ.Co.,Easton,Pa.を参照することができる。該文献は参照によりその全体がここに組み入れられる。
【0050】
本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、ヒトに対して単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体1mg/kgヒト体重あたりの前記抗フラクタルカイン抗体の平均Cmaxが21~25μg/mLである静脈内投与用製剤である。
【0051】
本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、ヒトに対して10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体の平均Cmaxが2.4×102μg/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である静脈内投与用製剤である。
【0052】
本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、ヒトに対して10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体の平均AUC(0-t)が7.0×104μg・h/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である静脈内投与用製剤である。
【0053】
本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、ヒトに対して10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体の平均AUC(0-336h)が3.8×104μg・h/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である静脈内投与用製剤である。
【0054】
本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、以下の特徴の少なくともいずれか2つを有する静脈内投与用製剤である:
-ヒトに対して単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体1mg/kgヒト体重あたりの前記抗フラクタルカイン抗体の平均Cmaxが21~25μg/mLである;
-ヒトに対して10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体の平均Cmaxが2.4×102μg/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である;
-ヒトに対して10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体の平均AUC(0-t)が7.0×104μg・h/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である;および
-ヒトに対して10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体の平均AUC(0-336h)が3.8×104μg・h/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である。
【0055】
4.投与量、投与間隔および投与回数
本発明の医薬組成物は、クローン病に治療上有効な改善をもたらすような投与量でヒト被験体に投与される。したがって、本発明の医薬組成物は、抗FKN抗体の血中濃度または平均トラフ濃度が、20μg/mL以上、30μg/mL以上、40μg/mL以上、50μg/mL以上、60μg/mL以上、70μg/mL以上、または80μg/mL以上となるように投与される。好ましくは、本発明の医薬品組成物は、抗FKN抗体の平均トラフ濃度が、70μg/mL以上、または80μg/mL以上となるように複数回投与される。
【0056】
本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり少なくとも10mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が静脈内投与されるように用いられる。本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり10mg/kgヒト体重~15mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が静脈内投与されるように用いられる。本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり10mg/kgヒト体重または15mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が静脈内投与されるように用いられる。
【0057】
本発明の医薬組成物の投与回数および投与間隔は、1回あたりに投与される抗FKN抗体の量、および投与経路に応じて変化し得る。
【0058】
本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、1回あたり少なくとも10mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が、1週間に1回から2ヵ月に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒト被験体に複数回静脈内投与されるように使用される。本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1回あたり少なくとも10mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が、1週間に1回から1ヵ月に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒト被験体に複数回静脈内投与されるように使用される。本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1回あたり少なくとも10mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒト被験体に複数回静脈内投与されるように使用される。本発明の特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1回あたり少なくとも10mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が、2回の週1回投与後、隔週の投与間隔で静脈内投与されるように使用される。
【0059】
本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1回あたり10~15mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が、1週間に1回から2ヵ月に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒト被験体に複数回静脈内投与されるように使用される。本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1回あたり10~15mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が、1週間に1回から1ヵ月に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒト被験体に複数回静脈内投与されるように使用される。本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1回あたり10~15mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒト被験体に複数回静脈内投与されるように使用される。本発明の特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1回あたり10~15mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が、2回の週1回投与後、隔週の投与間隔で静脈内投与されるように用いられる。
【0060】
本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1回あたり10mg/ヒト体重kgまたは15mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が、1週間に1回から2ヵ月に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒト被験体に複数回静脈内投与されるように使用される。本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1回あたり10mg/kgヒト体重または15mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が、1週間に1回から1ヵ月に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒト被験体に複数回静脈内投与されるように使用される。本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1回あたり10mg/kgヒト体重または15mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で、それを必要とするヒト被験体に複数回静脈内投与されるように使用される。本発明の特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1回あたり10mg/kgヒト体重または15mg/kgヒト体重の抗FKN抗体が、2回の週1回投与後、隔週の投与間隔で静脈内投与されるように用いられる。
【0061】
本発明の医薬組成物の投与回数は、クローン病に治療上有効な改善をもたらす限り特に制限されず、1回あたりに投与される抗FKN抗体の量、投与経路、および投与間隔に応じて変化し得る。
【0062】
本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、1週間に1回から2ヵ月に1回までの投与間隔で、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、少なくとも16回、少なくとも17回、少なくとも18回、少なくとも19回、少なくとも20回、少なくとも21回、少なくとも22回、少なくとも23回、少なくとも24回、少なくとも25回、少なくとも26回、少なくとも27回またはそれ以上の回数で静脈内投与され得る。
【0063】
本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1週間に1回から1ヵ月に1回までの投与間隔で、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、少なくとも16回、少なくとも17回、少なくとも18回、少なくとも19回、少なくとも20回、少なくとも21回、少なくとも22回、少なくとも23回、少なくとも24回、少なくとも25回、少なくとも26回、少なくとも27回またはそれ以上の回数で静脈内投与され得る。
【0064】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、少なくとも16回、少なくとも17回、少なくとも18回、少なくとも19回、少なくとも20回、少なくとも21回、少なくとも22回、少なくとも23回、少なくとも24回、少なくとも25回、少なくとも26回、少なくとも27回またはそれ以上の回数で静脈内投与され得る。
【0065】
本発明の特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、2回の週1回投与後、隔週の投与間隔で、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、少なくとも16回、少なくとも17回、少なくとも18回、少なくとも19回、少なくとも20回、少なくとも21回、少なくとも22回、少なくとも23回、少なくとも24回、少なくとも25回、少なくとも26回、少なくとも27回またはそれ以上の回数で静脈内投与され得る。
【0066】
本発明の特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、抗FKN抗体の平均トラフ濃度が、20μg/mL以上、30μg/mL以上、40μg/mL以上、50μg/mL以上、60μg/mL以上、70μg/mL以上、または80μg/mL以上となるように、1週間に1回から2ヵ月に1回までの投与間隔で、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、少なくとも16回、少なくとも17回、少なくとも18回、少なくとも19回、少なくとも20回、少なくとも21回、少なくとも22回、少なくとも23回、少なくとも24回、少なくとも25回、少なくとも26回、少なくとも27回またはそれ以上の回数で静脈内投与され得る。
【0067】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、抗FKN抗体の平均トラフ濃度が、20μg/mL以上、30μg/mL以上、40μg/mL以上、50μg/mL以上、60μg/mL以上、70μg/mL以上、または80μg/mL以上となるように、1週間に1回から1ヵ月に1回までの投与間隔で、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、少なくとも16回、少なくとも17回、少なくとも18回、少なくとも19回、少なくとも20回、少なくとも21回、少なくとも22回、少なくとも23回、少なくとも24回、少なくとも25回、少なくとも26回、少なくとも27回またはそれ以上の回数で静脈内投与され得る。
【0068】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、抗FKN抗体の平均トラフ濃度が、20μg/mL以上、30μg/mL以上、40μg/mL以上、50μg/mL以上、60μg/mL以上、70μg/mL以上、または80μg/mL以上となるように、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、少なくとも16回、少なくとも17回、少なくとも18回、少なくとも19回、少なくとも20回、少なくとも21回、少なくとも22回、少なくとも23回、少なくとも24回、少なくとも25回、少なくとも26回、少なくとも27回またはそれ以上の回数で静脈内投与され得る。
【0069】
本発明のさらに実施形態において、本発明の医薬組成物は、抗FKN抗体の平均トラフ濃度が、20μg/mL以上、30μg/mL以上、40μg/mL以上、50μg/mL以上、60μg/mL以上、70μg/mL以上、または80μg/mL以上となるように、2回の週1回投与後、隔週の投与間隔で、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、少なくとも16回、少なくとも17回、少なくとも18回、少なくとも19回、少なくとも20回、少なくとも21回、少なくとも22回、少なくとも23回、少なくとも24回、少なくとも25回、少なくとも26回、少なくとも27回またはそれ以上の回数で静脈内投与され得る。
【0070】
以下、非限定的に、本発明の特定の態様を例示する。
一態様において、本発明は、クローン病を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、抗フラクタルカイン抗体、および薬学的に許容される賦形剤を含んでおり、
前記フラクタルカイン抗体は:
その重鎖可変領域が、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含む;
その軽鎖可変領域が、配列番号14(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む;
ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含む;および
前記ヒトIgG2アイソタイプの定常領域のFc領域がV234AおよびG237Aの変異を含む、抗体であり、
前記医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり少なくとも10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が静脈内投与されるように用いられることを特徴とする、医薬組成物である。
【0071】
別の態様において、本発明は、クローン病を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、抗フラクタルカイン抗体、および薬学的に許容される賦形剤を含んでおり、
前記フラクタルカイン抗体は:
その重鎖可変領域が、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含む;
その軽鎖可変領域が、配列番号14(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む;
ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含む;および
前記ヒトIgG2アイソタイプの定常領域のFc領域がV234AおよびG237Aの変異を含む、抗体であり、
前記医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり10~15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が静脈内投与されるように用いられることを特徴とする、医薬組成物である。
【0072】
さらに別の態様において、本発明は、クローン病を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、抗フラクタルカイン抗体、および薬学的に許容される賦形剤を含んでおり、
前記フラクタルカイン抗体は:
その重鎖可変領域が、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含む;
その軽鎖可変領域が、配列番号14(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む;
ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含む;および
前記ヒトIgG2アイソタイプの定常領域のFc領域がV234AおよびG237Aの変異を含む、抗体であり、
前記医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり10mg/kgヒト体重または15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が静脈内投与されるように用いられることを特徴とする、医薬組成物である。
【0073】
好ましい態様において、本発明は、クローン病を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、抗フラクタルカイン抗体、および薬学的に許容される賦形剤を含んでおり、
前記フラクタルカイン抗体は:
配列番号11に示すアミノ酸配列(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPAAAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK)からなる重鎖;
配列番号12に示すアミノ酸配列(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC)からなる軽鎖
からなる抗体であり、
前記医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり少なくとも10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が静脈内投与されるように用いられることを特徴とする、医薬組成物である。
【0074】
別の好ましい態様において、本発明は、クローン病を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、抗フラクタルカイン抗体、および薬学的に許容される賦形剤を含んでおり、
前記フラクタルカイン抗体は:
配列番号11に示すアミノ酸配列(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPAAAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK)からなる重鎖;
配列番号12に示すアミノ酸配列(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC)からなる軽鎖
からなる抗体であり、
前記医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり10~15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が静脈内投与されるように用いられることを特徴とする、医薬組成物である。
【0075】
さらに別の好ましい態様において、本発明は、クローン病を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、抗フラクタルカイン抗体、および薬学的に許容される賦形剤を含んでおり、
前記フラクタルカイン抗体は:
配列番号11に示すアミノ酸配列(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPAAAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK)からなる重鎖;
配列番号12に示すアミノ酸配列(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC)からなる軽鎖
からなる抗体であり、
前記医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり10mg/kgヒト体重または15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が静脈内投与されるように用いられることを特徴とする、医薬組成物である。
【0076】
本発明の医薬組成物は、別の態様において、抗FKN抗体の40μg/mL以上の平均トラフ濃度をもたらすように、ヒトに対して、1週間に1回から2週間に1回の投与間隔で静脈内反復投与される。好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、抗FKN抗体の60μg/mL以上の平均トラフ濃度をもたらすように、ヒトに対して、1週間に1回から2週間に1回の投与間隔で静脈内反復投与される。さらに好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、抗FKN抗体の80μg/mL以上の平均トラフ濃度をもたらすように、ヒトに対して、1週間に1回から2週間に1回の投与間隔で静脈内反復投与される。
【0077】
好ましい実施形態では、前記医薬組成物は、ヒトに対して単回静脈内投与されたときに前記抗フラクタルカイン抗体1mg/kgヒト体重あたりの前記抗フラクタルカイン抗体の平均Cmaxが21~25μg/mLである、医薬組成物である。
【0078】
好ましい実施形態では、前記医薬組成物は、ヒトに対して10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が単回静脈内投与されたときに、以下の薬物動態パラメータのいずれか1つ、または2つ、または3つをもたらすように製剤化された、静脈内投与用医薬組成物である:
平均Cmaxが2.4×102μg/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である;
平均AUC(0-t)が7.0×104μg・h/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である;および、
平均AUC(0-336h)が3.8×104μg・h/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である。
【0079】
好ましい実施態様では、前記医薬組成物は、ヒトに対して1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与される、医薬組成物である。
【0080】
好ましい実施形態では、前記医薬組成物は、前記抗フラクタルカイン抗体の平均トラフ濃度が80μg/mL以上となるように静脈内投与される、医薬組成物である。
【0081】
好ましい実施形態では、前記医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が、3回の週1回投与後、隔週の投与間隔で、少なくとも7回静脈内投与される、医薬組成物である。
【0082】
別の態様において、本発明は、クローン病を治療するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、治療有効量の抗フラクタルカイン抗体、および薬学的に許容される賦形剤を含んでおり、
前記抗フラクタルカイン抗体は:
その重鎖可変領域が、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含む;
その軽鎖可変領域が、配列番号14(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む;
ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含む;および
前記ヒトIgG2アイソタイプの定常領域のFc領域がV234AおよびG237Aの変異を含む、抗体であって、
前記治療有効量は、前記抗フラクタルカイン抗体を含む医薬組成物により単回静脈内投与されたときに、前記抗フラクタルカイン抗体1mg/kgヒト体重あたりの前記抗フラクタルカイン抗体の平均Cmaxが21~25μg/mLである、
医薬組成物である。
【0083】
さらに別の態様において、本発明は、クローン病を治療するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、治療有効量の抗フラクタルカイン抗体、および薬学的に許容される賦形剤を含んでおり、
前記抗フラクタルカイン抗体は:
その重鎖可変領域が、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含む;
その軽鎖可変領域が、配列番号14(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む;
ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含む;および
前記ヒトIgG2アイソタイプの定常領域のFc領域がV234AおよびG237Aの変異を含む、抗体であって、
前記治療有効量は、前記抗フラクタルカイン抗体を含む医薬組成物により単回静脈内投与されたときに、以下の薬物動態学的パラメータ:
平均Cmaxが2.4×102μg/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である;
平均AUC(0-t)が7.0×104μg・h/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である;および、
平均AUC(0-336h)が3.8×104μg・h/mLの80%~125%の数値範囲内に含まれる値である、
のいずれか1つ、または2つ、または3つをもたらす投与量である、
医薬組成物である。
【0084】
好ましい実施形態では、前記投与量は、1回あたり10~15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体、または、1回あたり10mg/kgヒト体重もしくは15mg/kgヒト体重の抗フラクタルカイン抗体である。
【0085】
好ましい実施態様では、前記医薬組成物は、ヒトに対して1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与される、医薬組成物である。
【0086】
好ましい実施形態では、前記医薬組成物は、前記抗フラクタルカイン抗体の平均トラフ濃度が80μg/mL以上となるように静脈内投与される、医薬組成物である。
【0087】
好ましい実施形態では、前記医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が、3回の週1回投与後、隔週の投与間隔で、少なくとも7回静脈内投与される、医薬組成物である。
【0088】
好ましい実施形態では、前記抗フラクタルカイン抗体は、配列番号11に示すアミノ酸配列(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPAAAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK)からなる重鎖、および配列番号12に示すアミノ酸配列(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC)からなる軽鎖からなる、抗体H3-2L4である。
【0089】
別の態様において、本発明は、抗フラクタルカイン抗体を含有するクローン病治療薬であって、
ヒトに対して1回あたり10~15mg/kgヒト体重の抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で静脈内投与されるように用いられることを特徴とし、
前記抗フラクタルカイン抗体は:
その重鎖可変領域が、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含む;
その軽鎖可変領域が、配列番号14(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む;
ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含む;および
前記ヒトIgG2アイソタイプの定常領域のFc領域がV234AおよびG237Aの変異を含む、抗体である、
クローン病治療薬である。
【0090】
本発明の一実施形態では、抗フラクタルカイン抗体を含有するクローン病治療薬であって、
ヒトに対して1回あたり10mg/kgヒト体重または15mg/kgヒト体重の抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で静脈内投与されるように用いられることを特徴とし、
前記抗フラクタルカイン抗体は:
その重鎖可変領域が、配列番号13(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS)に示すアミノ酸配列を含む;
その軽鎖可変領域が、配列番号14(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK)に示すアミノ酸配列を含む;
ヒトIgG2アイソタイプの定常領域を含む;および
前記ヒトIgG2アイソタイプの定常領域のFc領域がV234AおよびG237Aの変異を含む、抗体である、
医薬組成物である。
【0091】
別の好ましい態様において、本発明は、抗フラクタルカイン抗体を含有するクローン病治療薬であって、
ヒトに対して1回あたり10~15mg/kgヒト体重の抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で静脈内投与されるように用いられることを特徴とし、
前記抗フラクタルカイン抗体は:
配列番号11に示すアミノ酸配列(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPAAAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK)からなる重鎖;
配列番号12に示すアミノ酸配列(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC)からなる軽鎖
からなる抗体である、
クローン病治療薬である。
【0092】
本発明の一実施形態では、抗フラクタルカイン抗体を含有するクローン病治療薬であって、
ヒトに対して1回あたり10mg/kgヒト体重または15mg/kgヒト体重の抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で静脈内投与されるように用いられることを特徴とし、
前記抗フラクタルカイン抗体は:
配列番号11に示すアミノ酸配列(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPAAAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK)からなる重鎖;
配列番号12に示すアミノ酸配列(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC)からなる軽鎖
からなる抗体である、
クローン病治療薬である。
【0093】
本発明の一実施形態では、本発明の医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり少なくとも10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与されるように用いられたときに、平均血清中総FKN濃度が、200ng/mL以上、300ng/mL以上、または400ng/mL以上である、医薬組成物である。
【0094】
本発明の別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり10~15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与されるように用いられたときに、平均血清中総FKN濃度が、200ng/mL以上、300ng/mL以上または400ng/mL以上である、医薬組成物である。
【0095】
本発明の別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり10mg/kgヒト体重または15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与されるように用いられたときに、平均血清中総FKN濃度が、200ng/mL以上、300ng/mL以上または400ng/mL以上である、医薬組成物である。
【0096】
本発明の一実施形態では、本発明の医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり少なくとも10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与されるように用いられたときに、投与開始から12週以降で、CDAIが投与開始前のスコアに対して70以上、好ましくは100以上減少する、医薬組成物である。
【0097】
本発明の別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり10~15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与されるように用いられたときに、投与開始から12週以降で、CDAIが投与開始前のスコアに対して70以上、好ましくは100以上減少する、医薬組成物である。
【0098】
本発明の別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、ヒトに対して1回あたり10mg/kgヒト体重または15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与されように用いられたときに、投与開始から12週以降で、CDAIが投与開始前のスコアに対して70以上、好ましくは100以上減少する、医薬組成物である。
【0099】
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、投与開始前のCDAIのスコアが220以上のヒトに対して、1回あたり少なくとも10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与されるように用いられたときに、投与開始から12週以降で、CDAIが投与開始時のスコアに対して70以上、好ましくは100以上減少する、医薬組成物である。
【0100】
別の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、投与開始前のCDAIのスコアが220以上のヒトに対して、1回あたり10~15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与されるように用いられたときに、投与開始から12週以降で、CDAIが投与開始時のスコアに対して70以上、好ましくは100以上減少する、医薬組成物である。
【0101】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、投与開始前のCDAIのスコアが220以上のヒトに対して、1回あたり10mg/kgヒト体重または15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与されるように用いられたときに、投与開始から12週以降で、CDAIが投与開始時のスコアに対して70以上、好ましくは100以上減少する、医薬組成物である。
【0102】
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、投与開始前のCDAIのスコアが220以上のヒトに対して、1回あたり少なくとも10mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与されるように用いられたときに、投与開始から12週以降で、CDAIが150未満である、医薬組成物である。
【0103】
別の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、投与開始前のCDAIのスコアが220以上のヒトに対して、1回あたり10~15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与されるように用いられたときに、投与開始から12週以降で、CDAIが150未満である、医薬組成物である。
【0104】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、投与開始前のCDAIのスコアが220以上のヒトに対して、1回あたり10mg/kgヒト体重または15mg/kgヒト体重の前記抗フラクタルカイン抗体が、1週間に1回から2週間に1回までの投与間隔で複数回静脈内投与されるように用いられたときに、投与開始から12週以降で、CDAIが150未満である、医薬組成物である。
【0105】
本発明の一実施形態では、「ヒト」は、コルチコステロイドまたは免疫調節薬に対して十分な効果が得られなかった、効果が持続しなかった、もしくは不耐性であった、または、抗TNF抗体に対して十分な効果が得られなかったクローン病患者である。
【0106】
技術的に矛盾しない限り、本明細書に記載の、あらゆる態様の任意の一または複数を、適宜組み合わせて、本発明を実施してよいことを当業者は理解する。さらに、技術的に矛盾しない限り、本明細書に記載の、好ましいまたは有利なあらゆる態様を、適宜組み合わせて、本発明を実施することが好ましいであろうことを当業者は理解する。
【0107】
本明細書中に引用される文献は、参照により、それらのすべての開示が、明確に本明細書に援用されているとみなされるべきであって、当業者は、本明細書の文脈に従って、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、それらの文献における関連する開示内容を、本明細書の一部として援用して理解できる。
【0108】
本明細書中に引用される文献は、本出願の出願日前の関連技術の開示のみを目的として提供され、本発明者らが、先行発明または任意の他の理由によって、かかる開示に先行する権利を持たないことを自認するものとして解釈されてはならない。これらの文献のすべての記述は、本出願人が入手可能であった情報に基づいており、これらの記述内容が正確であるという自認を何ら構成しない。
【0109】
本明細書において用いられる用語は、特定の実施態様を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
【0110】
本明細書において用いられる「を含む(comprise、include)」という用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記載された事項(部材、ステップ、要素または数字等)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素または数字等)が存在することを排除しない。「からなる(consist of)」という用語は、「からなる(consist of)」および/または「実質的に~からなる(consist essentially of)」という用語で記載される態様を包含する。
【0111】
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語および科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書および関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、または、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
【0112】
第1の、第2の等の用語が種々の要素を表現するために用いられるが、これらの要素はこれらの用語自身によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は一つの要素を他の要素と区別するためのみに用いられているのであり、例えば、第1の要素を第2の要素と記し、同様に、第2の要素は第1の要素と記すことは、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。
【0113】
本明細書において、成分含有量や数値範囲等を示すのに用いられる数値は、特に明示がない限り、用語「約」で修飾されているものと理解されるべきである。例えば、「10μg」とは、特に明示がない限り、「約10μg」を意味するものと理解され、その程度を、当業者は技術常識と本明細書の文意に従って、合理的に理解できることは当然である。
【0114】
文脈上明白に他の意味を示す場合を除き、本明細書および請求の範囲で使用される場合、単数形で表される各態様は、技術的に矛盾しない限り、複数形であってもよいことが理解され、逆もまた真である。
【0115】
以下において、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明はいろいろな態様により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。関連技術分野の当業者は、本発明の精神または範囲を変更させることなく、様々な改変、付加、欠失、置換等を伴って本発明を実施できる。
【0116】
実施例において使用される略語は当業者に周知の慣用的な略語である。いくつかの略語を以下に示す。
AUC:area under the serum concentration-time curve
AUC(0-inf):area under the serum concentration-time curve from zero time extrap-olated to infinite time
AUC(0-t):area under the concentration-time curve from zero time to time of last quantifiable concentration
AUC(0-336h):area under the concentration-time curve from zero (predose) to fixed time-point 336 h (2 weeks) after the end of infusion
CDAI:Crohn’s disease activity index
CL:total clearance
CRP:C-reactive protein
Cmax:maximum serum concentration
ELISA:enzyme-linked immunosorbent assay
FKN:fractalkine
IgG:immunoglobulin G
NONMEN:nonlinear mixed effect model
SAS:statistical analysis system
t1/2:serum elimination half-life
tmax:time to reach peak serum concentration
Vd:volume of distribution
【実施例】
【0117】
実施例1:ヒト化抗ヒトフラクタルカイン抗体の調製
以下のヒトへの投与試験では、ヒト化抗ヒトフラクタルカイン抗体H3-2L4を用いた。ヒト化を含む、H3-2L4の作製は、WO2011/052799に記載されたように行った。実施例2以降に使用したH3-2L4は、下記1-1.および1-2.に記載の方法で調製した。
【0118】
1-1.発現ベクター
ヒト化抗ヒトフラクタルカイン抗体(H3-2L4)の発現ベクターの作製は以下のように行った。
まず、ヒト化抗ヒトフラクタルカイン抗体(H3-2L4)の重鎖可変領域(H3-2)のアミノ酸配列(配列番号1)のN末端にシグナル配列(配列番号3)を付加し、2ヶ所の変異(V234AおよびG237A)を挿入したヒトIgG2の定常領域のアミノ酸配列(配列番号4)をC末端に付加した(配列番号5)。次に、ヒト化抗ヒトフラクタルカイン抗体(H3-2L4)の軽鎖可変領域(L4)のアミノ酸配列(配列番号2)のN末端にシグナル配列(配列番号6)を付加し、C末端に、ヒトIgκの定常領域のアミノ酸配列(配列番号7)を付加した(配列番号8)。これらのアミノ酸配列(配列番号5、8)をCHO細胞で発現させるために最適な遺伝子配列に変換し、遺伝子配列の5’末端に制限酵素HindIIIの認識配列とコザック配列を、3’末端に停止コドンと制限酵素EcoRIの認識配列をそれぞれ付加した配列を全合成した(配列番号9、10)。
なお、配列番号1~10で特定される配列は、それぞれ以下のとおりであった。
【0119】
重鎖可変領域(H3-2)のアミノ酸配列(配列番号1)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS
【0120】
軽鎖可変領域(L4)のアミノ酸配列(配列番号2)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK
【0121】
シグナル配列(配列番号3)
MEWSWVFLFFLSVTTGVHS
【0122】
2ヶ所の変異(V234AおよびG237A)を挿入したヒトIgG2の定常領域のアミノ酸配列(配列番号4)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPAAAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0123】
(配列番号5)
MEWSWVFLFFLSVTTGVHSQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPAAAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0124】
シグナル配列(配列番号6)
MSVPTQVLGLLLLWLTDARC
【0125】
ヒトIgκの定常領域のアミノ酸配列(配列番号7)
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0126】
(配列番号8)
MSVPTQVLGLLLLWLTDARCDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0127】
(配列番号9)
AAGCTTGCCGCCACCATGGAATGGTCCTGGGTGTTCCTGTTCTTCCTGTCCGTGACCACCGGCGTGCACTCCCAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGGCGCCGAAGTGAAGAAACCTGGCGCCTCCGTGAAGGTGTCCTGCAAGGCCTCCGGCTACACCTTCACCAACTACTACATCCACTGGGTGAAACAGGCCCCAGGACAGGGCCTGGAATGGATCGGCTGGATCTACCCCGGCGACGGCTCCCCCAAGTTCAACGAGCGGTTCAAGGGCCGGACCACCCTGACCGCCGACAAGTCCACCAACACCGCCTACATGCTGCTGTCCTCCCTGCGGAGCGAGGATACCGCCGTGTACTTCTGCGCCACCGGCCCTACCGACGGCGACTACTTCGACTACTGGGGCCAGGGCACCACCGTGACCGTGTCCTCTGCCTCCACCAAGGGCCCCTCCGTGTTCCCTCTGGCCCCTTGCTCCCGGTCCACCTCTGAGTCTACCGCCGCTCTGGGCTGCCTGGTCAAAGACTACTTCCCCGAGCCTGTGACAGTGTCCTGGAACTCTGGCGCCCTGACCTCTGGAGTGCATACCTTCCCTGCCGTGCTGCAGTCATCCGGCCTGTACTCCCTGTCCTCCGTGGTGACAGTGCCCTCCTCCAACTTCGGCACCCAGACCTACACCTGTAACGTGGACCACAAGCCCTCCAACACCAAGGTGGACAAGACCGTGGAACGGAAGTGCTGCGTGGAATGCCCCCCCTGTCCTGCCCCTCCTGCCGCCGCTCCTTCCGTGTTTCTGTTCCCCCCAAAGCCCAAGGACACCCTGATGATCTCCCGGACCCCCGAAGTGACCTGCGTGGTGGTGGACGTGTCCCACGAGGACCCCGAGGTGCAGTTCAATTGGTACGTGGACGGCGTGGAAGTGCACAACGCCAAGACCAAGCCCAGAGAGGAACAGTTCAACTCCACCTTCCGGGTGGTGTCCGTGCTGACCGTGGTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAAGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAGGGCCTGCCTGCCCCCATCGAAAAGACCATCAGCAAGACCAAGGGCCAGCCCCGCGAGCCCCAGGTGTACACACTGCCCCCCAGCCGGGAAGAGATGACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGTCTGGTGAAAGGCTTCTACCCCTCCGATATCGCCGTGGAATGGGAGTCCAACGGACAGCCCGAGAACAACTACAAGACCACCCCCCCCATGCTGGACTCCGACGGCTCATTCTTCCTGTACTCCAAGCTGACAGTGGACAAGTCCCGGTGGCAGCAGGGCAACGTGTTCTCCTGCAGCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAACCACTACACCCAGAAGTCCCTGAGCCTGAGCCCCGGCAAGTGATGAATTC
【0128】
(配列番号10)
AAGCTTGCCGCCACCATGTCCGTGCCCACCCAGGTGCTGGGCCTGCTGCTGCTGTGGCTGACCGACGCCAGATGCGACATCCAGATGACCCAGTCCCCCTCCAGCCTGTCCGCCTCTGTGGGCGACAGAGTGACCATCACCTGTCGGGCCTCCGGCAACATCCACAACTTTCTGGCCTGGTATCAGCAGAAGCCCGGCAAGGCCCCCAAGCTGCTGATCTACAACGAAAAGACCCTGGCCGACGGCGTGCCCTCCAGATTCTCCGGCTCTGGCTCCGGCACCGACTACACCCTGACCATCTCCAGCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACCTACTTTTGCCAGCAGTTCTGGTCCACCCCCTACACCTTCGGCGGAGGCACCAAGGTGGAAATCAAGCGGACCGTGGCCGCTCCCTCCGTGTTCATCTTCCCACCCTCCGACGAGCAGCTGAAGTCCGGCACCGCCTCCGTGGTGTGCCTGCTGAACAACTTCTACCCCCGCGAGGCCAAGGTGCAGTGGAAGGTGGACAACGCCCTGCAGTCCGGCAACTCCCAGGAATCCGTCACCGAGCAGGACTCCAAGGACAGCACCTACTCCCTGTCCTCCACCCTGACCCTGTCCAAGGCCGACTACGAGAAGCACAAGGTGTACGCCTGCGAAGTGACCCACCAGGGCCTGTCCAGCCCCGTGACCAAGTCCTTCAACCGGGGCGAGTGCTGATGAATTC
【0129】
全合成された重鎖をコードする遺伝子配列を、制限酵素HindIIIとEcoRIにて切り出し、pEE6.4ベクター(Lonza社)のHindIIIとEcoRIサイトに挿入した。全合成された軽鎖をコードする遺伝子配列を、制限酵素HindIIIとEcoRIにて切り出し、pEE12.4ベクター(Lonza社)のHindIIIとEcoRIサイトに挿入した。それぞれのベクターを制限酵素NotIとPvuIで切断し、重鎖と軽鎖を含むベクター断片同士をライゲーションして、発現ベクターを構築した。
【0130】
1-2.抗体H3-2L4を発現する細胞株の構築および抗体H3-2L4の取得
作製した発現ベクターを、CD-CHO/6mM L-グルタミンの培地に馴化させたCHOK1SV細胞(Lonza社)にエレクトロポレーション法にて導入した。遺伝子導入後、CD-CHO/50uM MSXの培地にて、37℃/10%CO2環境下でセレクションを行い、目的の抗体を発現する細胞を取得した。その後、細胞のクローニングを実施し、セルバンクを作製した。作製したセルバンクを蘇生・培養し、培養上清をクロマトグラフィーにて精製し、目的の抗体H3-2L4を取得した。
【0131】
上記にしたがって取得された抗体H3-2L4は、それぞれ配列番号11および12で示すアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖を有するものであった。
【0132】
H3-2L4の重鎖全長(配列番号11)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPAAAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0133】
H3-2L4の軽鎖全長(配列番号12)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0134】
また、抗体H3-2L4の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ以下のとおりであった。
【0135】
H3-2L4の重鎖可変領域(配列番号13)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS
【0136】
H3-2L4の軽鎖可変領域(配列番号14)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK
【0137】
また、抗体H3-2L4のCDR-H1~CDR-H3、およびCDR-L1~CDR-L3のアミノ酸配列は、以下のとおりであった:
【0138】
H3-2L4のCDR-H1(配列番号15)
NYYIH
【0139】
H3-2L4のCDR-H2(配列番号16)
WIYPGDGSPKFNERFKG
【0140】
H3-2L4のCDR-H3(配列番号17)
GPTDGDYFDY
【0141】
H3-2L4のCDR-L1(配列番号18)
RASGNIHNFLA
【0142】
H3-2L4のCDR-L2(配列番号19)
NEKTLAD
【0143】
H3-2L4のCDR-L3(配列番号20)
QQFWSTPYT
【0144】
実施例2:単回投与試験
健康な成人男性を対象に、H3-2L4を単回静脈内投与した際の安全性および忍容性、ならびに薬物動態を評価するための、臨床第1相試験を行った。
【0145】
2-1.[治験デザイン]
本治験は、日本人健康成人男性を対象とし、H3-2L4を単回静脈内投与した際の安全性および忍容性を評価することを主要な目的とした単施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、単回投与用量漸増試験であった。本治験では64例の被験者を、8つのコホート(0.0006、0.006、0.04、0.2、1、3、6、10mg/kg群)に分け、各コホート8例の被験者のうち6例にH3-2L4を、2例にプラセボを単回静脈内投与した。
【0146】
本治験はスクリーニング期、観察入院期、投与入院期(二重盲検)、フォローアップ1期(二重盲検)、およびフォローアップ2期(第5~8コホートのみ設定:非盲検)から構成された。
【0147】
治験薬投与前27日~2日以内にスクリーニング検査を、投与前日に観察入院期の検査を実施し、適格性を確認した。適格性が確認された被験者を、割付責任者が作成した割付表に基づき、無作為にH3-2L4またはプラセボ群に割り付けた。各コホートの第1日目の被験者2例は、H3-2L4およびプラセボが1例となるように割り付けて投与した。残りの被験者6例は、H3-2L4が5例およびプラセボが1例となるように割り付けて、第2日目から第4日目までに投与した。なお、同一日に投与する被験者数は2例までとし、1例目の投与開始から2時間以上空けて、2例目の投与を行った。治験薬の投与はH3-2L4またはプラセボを生理食塩溶液に溶解し、約30分間で点滴静注した。本治験は単回投与試験であり、被験者への投与は1 回のみ、食事時間と関係なく行った。
【0148】
投与後1週間は被験者を入院にて観察・調査し、その後、外来にて第1~4コホート(0.0006、0.006、0.04)では投与終了8週後まで、第5~8コホート(0.2、 1、3、6、10mg/kg群)では投与修了24週後まで観察・調査した。
【0149】
コホート移行は、各コホートで得られた安全性の結果に基づき、治験責任医師及び治験依頼者(医学専門家,治験依頼者の安全性部門担当者及び治験依頼者の代表者)の両者が移行に問題ないと判断した場合に行い、原則として前コホートの1例目の投与から3週間隔で実施した。
【0150】
なお、本試験に使用した治験薬の種類は、下記のとおりであった。
【0151】
【0152】
2-2.[治験薬の投与]
各被験者の体重に応じて、H3-2L4またはプラセボを生理食塩液で希釈して下記表2に示す投与液量を調製した。投与の際は、シリンジポンプ又は輸液ポンプを使用して、インラインフィルター(孔径:0.2μm)を用いて約30分間(生食フラッシュ含む)で点滴静注した。
【0153】
【0154】
2-3.[血清中H3-2L4濃度の解析]
血清中H3-2L4濃度は、バリデートされた測定法を用いて測定した。具体的には、マイクロプレートに固相化されたヒトフラクタルカインに血清中H3-2L4を結合させ、ルテニウム標識された抗H3-2L4ウサギポリクローナル抗体を反応させた後、Sector Imager 6000(Meso Scale Discovery社)にて電気化学発光量を測定することにより定量した。なお、血清中H3-2L4濃度測定のための採血は、下記表3に示す採血時期に行った。
【0155】
【0156】
2-4.[薬物動態解析]
薬物動態の解析は、血清中H3-2L4濃度データに基づき、1つ以上の薬物動態パラメータを算出することが可能なデータを有する被験者の集団(以下、薬物動態解析対象集団と称する)を用いて実施した。本治験では、プラセボを投与した16例と0.0006mg/kg、0.006mg/kgのH3-2L4を投与した各6例については、被験者の血清中H3-2L4濃度が定量下限値(0.100μg/mL)未満であっため、これらの被験者を除く36例を薬物動態解析対象集団とした。投与量別に規定時間ごとに血清中H3-2L4濃度の要約統計量を算出した。血清中H3-2L4濃度推移図を作成し、血清中H3-2L4濃度を用い、ノンコンパートメント解析により、Cmax、tmax、AUC(0-t)、AUC(0-inf)、t1/2、CLおよびVdを含む薬物動態パラメータを算出した。また、得られたCmax、AUC(0-t)、AUC(0-inf)を用いて、用量比例性を検討した。なお、解析は、SAS、WinNonlin、Pharsight Knowledgebase Server、Microsoft Excel、およびS-PLUSを用いて実施した。
【0157】
上記にしたがって算出された結果を下記表4および
図1に示す。なお、表中のt
max以外の薬物動態パラメータの平均値は算術平均値で示す。
【0158】
【0159】
解析の結果、H3-2L4を単回静脈内投与した際の薬物動態は、0.04~10mg/kgにおいて、α相、β相およびγ相の3相性のプロファイルを示すと考えられた。点滴静脈内投与終了後、Cmaxから急速に減少する初期の分布相(α相)が存在し、その後、高濃度では緩やかな消失相(β相)、低濃度では急峻な最終消失相(γ相)が観察された。γ相とβ相の境界点は10μg/mL付近と考えられた。0.04および0.2mg/kg群では、2相性のプロファイルを示し、α相に続いてγ相が出現していると考えられた。1~10mg/kg群では最終消失相であるγ相を正確に評価するために必要な採血数が足らなかったため、γ相に依存した薬物動態パラメータを算出できなかった。30分の点滴静注後、ほとんどの被験者は、0.5時間後でtmaxとなったが、一部の被験者では6.5時間後にtmaxとなった。t1/2,βはt1/2,γよりも長く、用量の増加に伴い延長したが、6および10mg/kg群のt1/2,βは同様となり、プラトーに達したと考えられた。Cmaxは0.04~10mg/kgにおいて用量に比例して増大したが、AUC(0-t)およびAUC(0-inf)は用量に比例せず、H3-2L4は非線形性の薬物動態を示した。
【0160】
実施例3:複数回投与試験
クローン病患者を対象に、H3-2L4を反復静脈内投与した際の安全性および忍容性、薬物動態、クローン病に対する有効性を評価するための、臨床第1/2相試験を行った。
【0161】
3-1.[治験デザイン]
本治験は、日本人クローン病患者を対象とし、H3-2L4を、反復静脈内投与した際の安全性および忍容性を評価することを主要な目的とした多施設共同、非盲検、非対照、反復投与用量漸増(multiple ascending dose、MAD)試験であり、無作為化は行わなかった。本治験では、28例の被験者を4つのコホート1~4(2、5、10、15mg/kg 群)にそれぞれ6例、8例、7例、7例の被験者に分けて、H3-2L4を反復静脈内投与した。
本治験はスクリーニング期、観察期、投与期、継続投与期および追跡調査期から構成された。
【0162】
治験薬投与開始前42日~2日以内にスクリーニング検査を、治験薬初回投与前日または当日投与前に観察期の検査を実施し、適格性が確認された被験者にH3-2L4を投与した。
【0163】
適格性の選択基準は、以下のとおりであった:
(1)20歳以上65歳未満であること;
(2)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班のクローン病診断基準(平成24年)に準じて,クローン病と診断されている患者。;
(3)観察期の重症度が軽症から中等症(CDAI)が150以上450未満、同クローン病診断基準)の患者。
(4)過去にアミノサリチル酸製剤(5-ASA)、サラゾスルファピリジン、副腎皮質ステロイド、免疫調節剤、インフリキシマブ(バイオ後続品を含む、以下同様)又はアダリムマブが投与され、効果が認められなかった患者、効果が認められた後に効果が減弱・消失した患者、又は副作用により投与を継続できなかった患者(ただし、インフリキシマブ、アダリムマブを除く)。
【0164】
H3-2L4は約100mLの生理食塩溶液に溶解し、約30分間で点滴静注した。投与期では、第1(2mg/kg)及び第2コホート(5mg/kg)についてはH3-2L4を2週ごとに10週まで計6回投与し(0週は2倍量)、第3コホート(10mg/kg)及び第4コホート(15mg/kg)についてはH3-2L4を0週、1週、2週、以降2週ごとに10週まで計7回投与した。12週時の評価で、安全性に問題がなく、クローン病活動度指数(CDAI)が150未満又は観察期からの減少が70以上で、かつ継続投与を希望する被験者はさらに2週ごとに20回(40週間)同一用量にて投与を行った(継続投与期)。なお、継続投与期については、治験責任医師又は治験分担医師の判断で同一用量での4週ごとの投与に変更(減量)することができることとした(2週ごとの投与に戻すことも可)。
【0165】
コホート移行は、各コホートで得られた安全性の結果に基づき、治験責任医師及び治験依頼者の両者が移行に問題ないと判断した場合に行った。
【0166】
なお、本試験に使用した治験薬の種類は、下記のとおりであった。
【0167】
【0168】
3-2.[治験薬の投与]
被験者の体重に応じてH3-2L4を生理食塩液で希釈して、各用量のH3-2L4の投与液量(約100mL)を調製した。各用量(2、5、10および15mg/kg)と投与方法については表6に示したとおりである。体重換算の用量(総量)の算出に用いる体重は観察期、12週時、24週時及び36週時に測定した体重とし、その間は体重の増減が認められても換算用量(総量)の変更は行わないものとした。投与の際は、輸液ポンプを使用して、インラインフィルター(孔径:0.2μm)を用いて約30分間(生食フラッシュ含む)で点滴静注した。なお、治験薬は食事時間と関係なく投与することができることとした。
【0169】
【0170】
3-3.[薬物動態および薬力学]
バリデートされた測定法を用い、血清中H3-2L4濃度、血清中総FKN濃度を測定した。血清中H3-2L4濃度は、実施例2の2-4に記載の方法により測定した。血清中総FKN濃度は、WO2011/052799に記載された2種類の抗ヒトフラクタルカインモノクローナル抗体1F3および3A5-2で挟むサンドイッチELISA法により測定した。具体的には、血清中の総FKNをプレートに固相化した1F3で補足し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)で標識した3A5-2でサンドイッチし、さらにHRPの基質である3,3’,5,5’-tetramethylbenzidine(TMB)を反応させてその発色値をオートリーダー(Microplate reader Envision、パーキンエルマージャパン)で測定することにより、血清中総FKN濃度を定量した。
【0171】
薬物動態の解析は、血清中H3-2L4濃度データに基づき、治験薬が投与され、評価可能な血清中EH3-2L4濃度データが1点以上ある被験者の集団(以下、薬物動態解析対象集団と称する)を用いて実施した。投与量別に規定時間ごとに血清中H3-2L4濃度の要約統計量を算出し、血清中H3-2L4濃度推移図を作成した。
【0172】
薬力学の解析は、治験薬が投与され、評価可能な薬力学的バイオマーカーのデータが1点以上ある被験者の集団(以下、薬力学解析対象集団と称する)を用いて実施した。血清中総FKN濃度の測定値について、投与量別に各評価時期における要約統計量を算出した。
【0173】
3-3-1.[血清中H3-2L4濃度および血清中総FKN濃度]
治験薬投与から12週時まで、コホート1および2については表7、コホート3および4については表8の実施スケジュールに示すX印の時期に、投与前および投与終了時(0h)の10分以内に血清中H3-2L4濃度および血清中総FKN濃度測定のための採血を行った。継続投与期に移行した被験者は、さらに4週ごとに52週まで採血を実施した。また、投与期または継続投与期間中に治験を中止した被験者は、中止時に採血を実施した。
【0174】
【0175】
【0176】
投与期(12週)にわたる、2mg/kg投与群、5mg/kg投与群、10mg/kg投与群および15mg/kg投与群における、血清中H3-2L4濃度および血清中総FKN濃度の平均値(算術平均値で示す。)をそれぞれ表9および表10に示す。また、血清中H3-2L4濃度および血清中総FKN濃度の平均値の推移を、それぞれ
図2および
図3に示す。
【0177】
【0178】
【0179】
3-4.[結合占有率(Binding Occupancy)]
実施例2の日本人の健康成人を対象としたH3-2L4の単回投与試験における血清中H3-2L4濃度および血清中総FKN濃度をtwo-target quasi-steady-state(QSS) model (J Pharmacokinet Pharmacodyn 2012;39:217-26)に適用して、結合親和性パラメータ(Km
ss)を推定した。クローン病患者にH3-2L4を反復投与した時の膜結合型FKN(mFKN)に対する結合占有率は、血清中H3-2L4濃度と当該Km
ssを用いてシミュレーションした。また、血中の遊離型FKN(cFKN)濃度は、血清中H3-2L4濃度、血清中総FKN濃度およびcFKNに対するQSS定数(Kc
ss)を用いてシミュレーションした。なお、健康成人とクローン病患者ではQSS定数は変わらないと仮定した。
【0180】
上記シミュレーションに基づく、投与別のmFKNに対する結合占有率および各投与群における投与開始前のcFKN量をベースラインとするcFKN量の割合の経時的な変化を、それぞれ
図4および
図5に示す。この結果より、10mg/kgおよび15mg/kgの抗フラクタルカイン抗体が、mFKNへの結合とcFKNに対する阻害の両方において効果的な1回あたりの投与量であることが示唆された。
【0181】
3-5.[有効性]
有効性の解析は、治験薬が投与され、評価可能な治験薬投与後の有効性データが1点以上ある被験者の集団(最大の解析対象集団(FAS:Full Analysis Set)を用いて実施した。
【0182】
投与量別に各評価時期におけるCDAIおよびCRPの要約統計量を算出した。
【0183】
なお、解析は、WinNonlin,NONMEMおよびSAS等を用いて実施した。
【0184】
[CDAI]
実施スケジュール(表7および表8)に示すX印の時期に被験者日誌及び該当する検査結果等からCDAIを算出した。また、継続投与期に移行した被験者はさらに4週ごとに52週時まで同様にCDAIを算出した。CDAIの算出に際しては、ヘマトクリット値および体重は評価当日の値を、身長については実施スケジュールに従い測定した直近の値を使用した。
CDAIは、観察期より70以上減少した場合を改善と定義し、CDAIが150未満の場合は寛解と定義した。
本治験開始時のコホート1~4における被験者は、それぞれ6例、8例、7例、7例であったが、1回目の投与後12週時までに、コホート1~4でそれぞれ被験者3例、2例、2例、2例の治験を中止した。なお、コホート1~4の被験者は、コホート2の1例を除き抗TNF抗体の使用歴があった。1剤使用の被験者が、それぞれ2例、5例、3例、2例で、2剤使用の被験者が、それぞれ4例、2例、4例、5例で、いずれも抗TNF抗体の使用による効果は不十分であった。
【0185】
治験薬投与前のCDAIが220以上であった被験者のうち、12週時の評価で、治験薬投与前のCDAIをベースラインとして、70以上の減少(CR-70)が確認されたのは、コホート1~4でそれぞれ1例、2例、4例、3例であった。また、コホート1~4でそれぞれ1例、1例、4例、3例の被験者については、100以上の減少(CR-100)が認められた。さらに、コホート3の被験者3例およびコホート4の被験者1例については、寛解を達成した。なお、コホート4の被験者7名のうち3名は、治験薬投与前のCDAIが330以上であった。治験薬投与前のCDAIが330未満であった被験者で層別すると、コホート3の被験者6名のうち4名(66%)、コホート4の被験者4名のうち3名(75%)で100以上の減少(CR-100)が認められた。この結果から、10mg/kgおよび15mg/kgの抗フラクタルカイン抗体が、クローン病において良好な改善効果をもたらす1回あたりの投与量であることが示唆された。
【0186】
また、継続投与期を完了した被験者は、コホート1~3でそれぞれ1例、2例、2例であった。コホート2の1例を除いて、継続投与期を完了した全ての被験者は、52週を通して、改善効果を維持した。52週時の評価で、治験薬投与前のCDAIをベースラインとして、コホート1~3でそれぞれ1例、1例、2例の被験者については、100以上の減少(CR-100)が認められた。さらに、コホート3の被験者については、2例で寛解を達成した。
【0187】
また、コホート4においても12週時の評価で、改善効果が認められた被験者3例が継続投与期へ移行し、そのうち2例の被験者で改善効果を維持した。
【0188】
[CRP]
実施スケジュール(表7および表8)に示すX印の時期にCRPを測定した。
12週にわたるコホート3の被験者7例におけるCRPの推移を
図6に示す。12週時の評価で、CDAIで寛解となった被験者3例(被験者1、3、6)については、CRPも低い値を示していることが認められた。
【配列表】