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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】X線CTシステム及び処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
A61B6/03 573
A61B6/03 550R
A61B6/03 550S
A61B6/03 550U
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018235697
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020096693
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-10-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 博基
(72)【発明者】
【氏名】プラブ ベーレカー アクシャイ
(72)【発明者】
【氏名】法野 祐規
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 聡
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-153829(JP,A)
【文献】特開2011-224341(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080311(WO,A1)
【文献】米国特許第11328460(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の周囲を回転しながらX線を照射するX線照射部と、
前記X線照射部が前記被検体の周囲を1回転する間に、前記X線のエネルギーを周期的に変化させるX線制御部と、
前記X線を検出し、前記X線照射部の回転位置毎に投影データセットを収集するX線検出部と、
第1のエネルギーのX線が照射されたときに収集された複数の第1投影データセットに基づいて、前記第1のエネルギーが照射されなかった回転位置に対応する複数の第1補間データセットを生成し、第2のエネルギーのX線が照射されたときに収集された複数の第2投影データセットに基づいて、前記第2のエネルギーが照射されなかった回転位置に対応する複数の第2補間データセットを生成する補間処理を含む処理を実行し、前記X線照射部の回転位置が対応する前記第1投影データセットと前記第2補間データセットとを合成した第1合成データセットを生成し、前記回転位置が対応する前記第2投影データセットと前記第1補間データセットとを合成した第2合成データセットを生成することで、前記第1のエネルギーのX線に基づく情報と前記第2のエネルギーのX線に基づく情報とを含む合成データセットを生成するデータ処理部と、
前記第1合成データセットと前記第2合成データセットとを用いて画像を再構成する再構成部と、
を備え
前記データ処理部は、投影データに基づく補間により生成された補間データセットにおける情報よりも実際に収集された投影データセットに含まれる情報の比率が高くなるように、前記第1投影データセット及び前記第2投影データセットの比率を高くした重み付け加算により前記第1合成データセット及び前記第2合成データセットをそれぞれ生成する、X線CTシステム。
【請求項2】
前記データ処理部は、前記合成データセットを複製し、複製した合成データセットに対してそれぞれ異なるフィルタ処理を実行し、フィルタ処理後の合成データセットを重み付け加算により合成することで、フィルタ処理後合成データセットを生成し、
前記再構成部は、前記フィルタ処理後合成データセットに基づいて画像を再構成する、請求項1に記載のX線CTシステム。
【請求項3】
前記第1のエネルギーのX線が低エネルギーのX線であり、前記第2のエネルギーのX線が高エネルギーのX線である、請求項1に記載のX線CTシステム。
【請求項4】
被検体の周囲を1回転する間に、X線のエネルギーを周期的に変化させ、回転位置毎に収集された投影データセットを用いた処理プログラムであって、
第1のエネルギーのX線が照射されたときに収集された複数の第1投影データセットに基づいて、前記第1のエネルギーが照射されなかった回転位置に対応する複数の第1補間データセットを生成し、第2のエネルギーのX線が照射されたときに収集された複数の第2投影データセットに基づいて、前記第2のエネルギーが照射されなかった回転位置に対応する複数の第2補間データセットを生成する補間処理を含む処理を実行し、回転位置が対応する前記第1投影データセットと前記第2補間データセットとを合成した第1合成データセットを生成し、前記回転位置が対応する前記第2投影データセットと前記第1補間データセットとを合成した第2合成データセットを生成することで、前記第1のエネルギーのX線に基づく情報と前記第2のエネルギーのX線に基づく情報とを含む合成データセットを生成するデータ処理機能と、
前記第1合成データセットと前記第2合成データセットとを用いて画像を再構成する再構成機能と、
をコンピュータに実現させ
前記データ処理機能は、投影データに基づく補間により生成された補間データセットにおける情報よりも実際に収集された投影データセットに含まれる情報の比率が高くなるように、前記第1投影データセット及び前記第2投影データセットの比率を高くした重み付け加算により前記第1合成データセット及び前記第2合成データセットをそれぞれ生成する、処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線CTシステム及び処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT(Computed Tomography)システムにおいては、スキャン後すぐに被検体の動きや、撮影範囲などの確認を行うための確認用の画像を表示することができる。具体的には、X線CTシステムでは、スキャンによって得られたCT画像データが計画通りに収集されているかを確認するための確認用の画像を迅速に操作者に提供することで、以後のワークフローを迅速に進めることを可能にする。例えば、操作者は、スキャン後すぐに表示される確認用の画像を参照して計画通りに収集されていると判断した場合に、寝台装置から被検体を速やかにおろすことができる。また、例えば、操作者は、確認用の画像が計画通りに収集されていないと判断した場合に、再スキャンを速やかに行うことができる。ここで、確認用の画像とは、例えば、スキャンによって収集された投影データに対して補正などの画像処理を行うことなく生成された画像である。
【0003】
また、X線CTシステムにおいては、スキャンにおいて2種類の異なるエネルギーのX線を使用して、デュアルエナジー(Dual-Energy:DE)収集を行う技術や、CTスキャンにおいて3種類以上の異なるエネルギーのX線を使用してマルチエナジー(Multi-Energy:ME)収集を行う技術が知られている。これにより、各エネルギーに対応する投影データを収集し、物質ごとにX線の吸収特性が異なることを利用して被検体に含まれる物質の種類、原子番号、密度等を弁別することが可能である。DE収集又はME収集は、例えば、被検体に対するX線の照射角度ごとにX線のエネルギーを変化させるKVスイッチング方式により実行される。KVスイッチング方式では、例えば、1又は複数のビューごとに、X線のエネルギーを変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-64043号公報
【文献】特表2018-511443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、撮影範囲の確認等を目的とした確認用の画像を効率的に得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のX線CTシステムは、X線照射部と、X線制御部と、X線検出部と、データ処理部と、再構成部とを備える。X線照射部は、被検体の周囲を回転しながらX線を照射する。X線制御部は、前記X線照射部が前記被検体の周囲を1回転する間に、前記X線のエネルギーを周期的に変化させる。X線検出部は、前記X線を検出し、前記X線照射部の回転位置毎に投影データセットを収集する。データ処理部は、第1のエネルギーのX線が照射されたときに収集された複数の第1投影データセットに基づいて、前記第1のエネルギーが照射されなかった回転位置に対応する複数の第1補間データセットを生成し、第2のエネルギーのX線が照射されたときに収集された複数の第2投影データセットに基づいて、前記第2のエネルギーが照射されなかった回転位置に対応する複数の第2補間データセットを生成する補間処理を含む処理を実行する。再構成部は、前記処理後の投影データセットを含む複数の投影データセットに基づいて生成された合成データセットに基づいて画像を再構成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線CTシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るデータ処理機能による処理を説明するための図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るデータ処理機能によるフィルタ処理を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るX線CTシステムの処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図5図5は、その他の実施形態に係るデータ処理機能によるスケーリング処理を説明するための図である。
図6図6は、その他の実施形態に係るX線CTシステムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係るX線CTシステム及び処理プログラムの実施形態について詳細に説明する。なお、本願に係る線CTシステム及び処理プログラムは、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
まず、図1を参照しながら、第1の実施形態に係るX線CTシステム1の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線CTシステム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、X線CTシステム1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。すなわち、第1の実施形態に係るX線CTシステム1は、X線CT装置とも呼ばれる。
【0010】
図1においては、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。なお、図1は、説明のために架台装置10を複数方向から描画したものであり、X線CTシステム1が架台装置10を1つ有する場合を示す。
【0011】
架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、コリメータ17と、DAS18とを有する。
【0012】
X線管11は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することで、被検体Pに対し照射するX線を発生する。例えば、X線管11には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。なお、X線管11は、X線照射部の一例である。
【0013】
X線検出器12は、X線管11から照射されて被検体Pを通過したX線を検出し、検出したX線量に対応した信号をDAS18へと出力する。X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心とした1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャネル方向に複数の検出素子が配列された検出素子列が列方向(スライス方向、row方向)に複数配列された構造を有する。また、X線検出器12は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、フォトダイオード等の光センサを有する。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。また、X線検出器12は、X線検出部の一例である。
【0014】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム13は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やウェッジ16、コリメータ17、DAS18等を更に支持することもできる。更に、回転フレーム13は、図1において図示しない種々の構成を更に支持することもできる。以下では、架台装置10において、回転フレーム13、及び、回転フレーム13と共に回転移動する部分を、回転部とも記載する。
【0015】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管11が発生するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、図示しない固定フレームに設けられても構わない。
【0016】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う。例えば、制御装置15は、回転フレーム13の回転や架台装置10のチルト、寝台装置30及び天板33の動作等について制御を行う。一例を挙げると、制御装置15は、架台装置10をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させる。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0017】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工したフィルタである。
【0018】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。また、図1においては、X線管11とコリメータ17との間にウェッジ16が配置される場合を示すが、X線管11とウェッジ16との間にコリメータ17が配置される場合であってもよい。この場合、ウェッジ16は、X線管11から照射され、コリメータ17により照射範囲が制限されたX線を透過して減衰させる。
【0019】
DAS18は、X線検出器12が有する各検出素子によって検出されるX線の信号を収集する。例えば、DAS18は、各検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS18は、例えば、プロセッサにより実現される。なお、以下では、DASによって生成された検出データを投影データと記載する場合がある。
【0020】
ここで、DAS18は、複数の検出素子によって検出されるX線の信号を逐次収集する逐次収集方式のDASが用いられる場合でもよく、或いは、複数の検出素子によって検出されるX線の信号を同時に収集する同時収集方式のDASが用いられる場合でもよい。
【0021】
DAS18が生成したデータは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば、固定フレーム等。図1での図示は省略している)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。ここで、非回転部分とは、例えば、回転フレーム13を回転可能に支持する固定フレーム等である。なお、回転フレーム13から架台装置10の非回転部分へのデータの送信方法は、光通信に限らず、非接触型の如何なるデータ伝送方式を採用してもよいし、接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。
【0022】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、天板33の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0023】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。なお、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0024】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、投影データやCT画像データを記憶する。また、例えば、メモリ41は、X線CTシステム1に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、メモリ41は、X線CTシステム1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0025】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成されたCT画像や、確認用の画像を表示したり、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示したりする。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0026】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像データを再構成する際の再構成条件、CT画像データからCT画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース43は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、コンソール装置40とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。
【0027】
処理回路44は、X線CTシステム1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、システム制御機能441、データ処理機能442、前処理機能443、再構成機能444及び出力機能445を実行する。すなわち、処理回路44は、メモリ41から各機能に相当するプログラムを読み出して実行することで、X線CTシステム1全体の動作を制御する。なお、システム制御機能441は、X線制御部の一例である。また、データ処理機能442は、データ処理部の一例である。また、再構成機能444は、再構成部の一例である。
【0028】
図1に示すX線CTシステム1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41へ記憶されている。処理回路44は、メモリ41からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0029】
なお、図2においては、システム制御機能441、データ処理機能442、前処理機能443、再構成機能444及び出力機能445の各処理機能が単一の処理回路44によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路44は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0030】
システム制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、X線CTシステム1における種々の処理を制御する。例えば、システム制御機能441は、X線CTシステム1における寝台駆動装置32、コリメータ17、制御装置15、X線高電圧装置14等を制御して、位置決めスキャンや、本スキャンを実行する。
【0031】
ここで、システム制御機能441は、「Rapid kV switching方式」による「Dual Energyによる撮影」を制御する。具体的には、システム制御機能441は、高電圧と低電圧とを切り替える制御信号をX線高電圧装置14に送信することで、X線高電圧装置14からX線管11への高電圧と低電圧の印加を制御する。また、システム制御機能441は、DAS18に対して制御信号を送信することで、検出した検出データが、高電圧のX線照射によるものであるか、或いは、低電圧のX線照射によるものであるかを識別させるように制御する。
【0032】
データ処理機能442は、「Rapid kV switching方式」による「Dual Energyによる撮影」によって収集された投影データに対して種々の処理を行うことで、確認用の画像を生成するための投影データを生成する。具体的には、データ処理機能442は、DAS18によって生成された検出データ(投影データ)に対してスケーリング処理などを施すことで、確認用の画像を生成するための投影データを生成する。例えば、データ処理機能442は、第1の管電圧(例えば、高電圧)の投影データ及び第2の管電圧(例えば、低電圧)の投影データのうち、すくなくとも一方に対して処理を施すことで、確認用の画像を生成するための投影データを生成する。データ処理機能442によって生成された投影データは、メモリ41に記憶される。なお、データ処理機能442による処理の詳細については、後に詳述する。また、以下では、「Rapid kV switching方式」によって管電圧を交互に切り替えながら収集される各管電圧の投影データをそれぞれ投影データセットと記載する。
【0033】
前処理機能443は、DAS18から送信された検出データ(投影データ)に対して、対数変換処理や、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なうことで、前処理後投影データを生成する。例えば、前処理機能443は、第1の管電圧(例えば、高電圧)の検出データ(投影データ)から前処理後投影データセットを生成する。また、前処理機能443は、第2の管電圧(例えば、低電圧)の検出データ(投影データ)から前処理後投影データセットを生成する。
【0034】
また、前処理機能443は、2種類の投影データセットを用いて、撮影の対象部位に存在する、予め決定された2つ以上の基準物質(水、ヨード、カルシウム、ハイドロキシアパタイト、脂肪等)を分離する。そして、前処理機能443は、2つ以上の基準物質のそれぞれに対応する2種類以上の単色X線の前処理後投影データセットを生成する。例えば、前処理機能443は、高エネルギーの前処理後投影データセット及び低エネルギーの前処理後投影データセットから、水とヨードの単色X線の前処理後投影データセットをそれぞれ生成する。なお、前処理機能443によって生成された前処理後投影データセットは、メモリ41によって記憶される。
【0035】
再構成機能444は、メモリ41によって記憶された前処理後投影データセットから各種画像を生成し、生成した画像をメモリ41に格納する。例えば、再構成機能444は、前処理後投影データを種々の再構成法(例えば、FBP(Filtered Back Projection)などの逆投影法や、逐次近似法など)によって再構成することでCT画像データを再構成し、再構成したCT画像データをメモリ41に格納する。また、再構成機能444は、種々の画像処理を行うことにより、CT画像データからMPR画像などのCT画像を生成して、生成したCT画像をメモリ41に格納する。
【0036】
例えば、再構成機能444は、メモリ41によって記憶された基準物質の単色X線の前処理後投影データセットを読み出し、基準物質画像データ(基準物質強調画像データ)を再構成する。一例を挙げると、再構成機能444は、水成分が強調された前処理後投影データセットに基づいて水成分の基準物質画像データを再構成し、ヨード成分が強調された前処理後投影データセットに基づいてヨード成分の基準物質画像データを再構成する。また、再構成機能444は、水成分の基準物質画像データ及びヨード成分の基準物質画像データに対してそれぞれ画像処理を実行することで、水成分の基準物質画像とヨード成分の基準物質画像を生成する。また、再構成機能444は、2つの基準物質画像データを用いて重み付け計算処理を行うことにより、所定のエネルギーにおける単色X線画像や密度画像、実効原子番号画像等、様々な画像を生成することができる。
【0037】
また、例えば、再構成機能444は、メモリ41によって記憶された高エネルギーの前処理後投影データセットと低エネルギーの前処理後投影データセットとを読み出し、各前処理後投影データセットからCT画像データをそれぞれ再構成する。そして、再構成機能444は、CT画像データから高エネルギーに対応する多色X線画像と、低エネルギーに対応する多色X線画像とを生成することもできる。
【0038】
また、再構成機能444は、データ処理機能442によって生成された投影データセットを種々の再構成法(例えば、FBP(Filtered Back Projection)などの逆投影法や、逐次近似法など)によって再構成することでCT画像データを再構成し、再構成したCT画像データをメモリ41に格納する。また、再構成機能444は、種々の画像処理を行うことにより、CT画像データから確認用の画像を生成して、生成した確認用の画像をメモリ41に格納する。
【0039】
出力機能445は、再構成機能444によって生成されたCT画像や、確認用の画像などをディスプレイ42に表示させる。
【0040】
以上、本実施形態に係るX線CTシステム1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係るX線CTシステム1は、撮影範囲の確認等を目的とした確認用の画像を効率的に得ることを可能にする。具体的には、X線CTシステム1は、「Rapid kV switching方式」による複数の異なるエネルギーでの撮影においても、一定の画質を保った確認用の画像を迅速に提供することを可能にする。
【0041】
上述したように、「Rapid kV switching方式」による撮影では、1又は複数のビューごとにX線のエネルギーを変化させるため、異なるエネルギーの投影データ混在することとなる。そのため、各エネルギーに対応する投影データにおけるX線の透過量がそれぞれ異なる。例えば、高エネルギーでは、低エネルギーと比較して、X線の透過量が多くなる。したがって、このような投影データセットを用いて確認用の画像を生成すると、アーチファクトが発生してしまい、確認に用いることができない場合がある。また、例えば、1つのエネルギーに対応する投影データセットのみを用いて確認用の画像を生成することも可能であるが、この場合、間引きされて一部が欠損したデータとなるため、アーチファクトが発生してしまい、確認に用いることができない場合がある。
【0042】
そこで、本実施形態に係るX線CTシステム1では、異なるエネルギーによって収集された投影データセットにおける欠損部分を補間する補間データセットを生成し、生成した補間データセットと実際に収集した投影データセットとを合成する合成処理を実行することで、アーチファクトを低減した確認用の画像を生成する。
【0043】
データ処理機能442は、第1のエネルギーのX線が照射されたときに収集された複数の第1投影データセットに基づいて、第1のエネルギーが照射されなかった回転位置に対応する複数の第1補間データセットを生成し、第2のエネルギーのX線が照射されたときに収集された複数の第2投影データセットに基づいて、第2のエネルギーが照射されなかった回転位置に対応する複数の第2補間データセットを生成する補間処理を含む処理を実行する。そして、データ処理機能442は、X線管11の回転位置が対応する第1投影データセットと第2補間データセットとを合成した第1合成データセットを生成し、回転位置が対応する第2投影データセットと第1補間データセットとを合成した第2合成データセットを生成する。
【0044】
図2は、第1の実施形態に係るデータ処理機能442による処理を説明するための図である。ここで、図2においては、「Rapid kV switching方式」による「Dual Energyによる撮影」によって収集された投影データの一部を示す。すなわち、図2に示す高エネルギーの矩形及び低エネルギーの矩形は、1又は複数のビューごとに高エネルギーと低エネルギーとを切り替えながら照射されたX線をX線検出器12によって収集して、DAS18から出力された投影データセットをそれぞれ示す。
【0045】
例えば、データ処理機能442は、図2に示すように、高エネルギーデータと低エネルギーデータとが混在した投影データセットを、高エネルギーデータの投影データセットと、低エネルギーデータの投影データセットに分離する。そして、データ処理機能442は、図2に示すように、高エネルギーデータの投影データセット及び低エネルギーデータの投影データセットそれぞれについて、欠損部分のデータを補間処理によって生成する。
【0046】
例えば、データ処理機能442は、高エネルギーの複数の投影データセットを用いて、欠損部分(高エネルギーのX線が照射されていない回転位置)の補間データセットを生成する。同様に、データ処理機能442は、低エネルギーの複数の投影データセットを用いて、欠損部分(低エネルギーのX線が照射されていない回転位置)の補間データセットを生成する。すなわち、データ処理機能442は、低エネルギーのX線が照射された回転位置について、高エネルギーの補間データセットを生成し、高エネルギーのX線が照射された回転位置について、低エネルギーの補間データセットを生成する。
【0047】
なお、データ処理機能442によって実行される補間処理の方法は、線形補間、ラグランジェ補間、シグモイドなど、投影データセットから補間データセットを生成することができる補間方法であれば、どのような方法が用いられてもよい。
【0048】
そして、データ処理機能442は、回転位置ごとに、実際に収集された投影データセットと、生成した補間データセットとを合成した合成データセットを生成する。例えば、データ処理機能442は、図2に示すように、高エネルギーデータ(HD1)と低エネルギー補間データ(LID1)とを合成した合成データセット「(HD1)&(LID1)」を生成する。また、データ処理機能442は、図2に示すように、高エネルギー補間データ(HID1)と低エネルギーデータ(LD1)とを合成した合成データセット「(HID1)&(LD1)」を生成する。同様に、データ処理機能442は、実際に収集された投影データセットと、生成した補間データセットとを合成した合成データセットを生成する。
【0049】
ここで、データ処理機能442は、実際に収集した投影データの情報をより多く使うために、補間データセットよりも実際に収集した投影データセットに重みを付けて合成処理を行う。例えば、データ処理機能442は、重み「Wb」を用いた式「(Wb×HD1)+(1-Wb)×LID1」によって、合成データセット「(HD1)&(LID1)」を生成する際に、重みを「Wb=0.75」とする。これにより、合成データセット「(HD1)&(LID1)」における高エネルギーデータ(HD1)の情報量が多くなる。データ処理機能442は、その他の合成データセットを生成する際にも同様に、補間データセットよりも実際に収集した投影データセットに重みを付けた合成処理を行う。
【0050】
再構成機能444は、データ処理機能442による合成処理後の投影データセット(複数の合成データセット)に対して再構成処理等を行うことにより確認用の画像を生成する。出力機能445は、再構成機能444によって生成された確認用の画像をディスプレイ42に表示させる。
【0051】
このように、第1の実施形態に係るX線CTシステム1では、欠損部分の補間データセットを生成して、収集した投影データセットに対して合成処理を行うことで、アーチファクトを低減した確認用の画像を生成することができる。
【0052】
ここで、上述した実施形態では、補間データセットを生成した後に、実際に収集した投影データセットと合成する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、欠損部分を補間した投影データセットを用いて確認用の画像を生成する場合でもよい。一例を挙げると、図2の3段目に示す補間後の投影データセットを用いて確認用の画像を生成する場合でもよい。かかる場合には、再構成機能444は、補間データが補間された高エネルギーの投影データセット、或いは、補間データが補間された低エネルギーの投影データセットを用いて確認用の画像を生成する。
【0053】
ここで、第1の実施形態に係るX線CTシステム1では、さらに、アーチファクトを低減するための処理を実行することができる。具体的には、データ処理機能442は、合成処理後の投影データセットに対してさらにフィルタ処理を施すことで、アーチファクトをさらに低減する。
【0054】
図3は、第1の実施形態に係るデータ処理機能442によるフィルタ処理を説明するための図である。ここで、図3においては、図2に示す合成処理後の投影データセット(複数の合成データセット)を示す。
【0055】
例えば、データ処理機能442は、複数の投影データセットにそれぞれ異なるフィルタを適用した後、適用後の複数の投影データセットを合成する。一例を挙げると、データ処理機能442は、図3に示すように、合成処理後の投影データセットを複製して、各投影データセットに対してそれぞれスムージングフィルタとハイパスフィルタをかける。そして、データ処理機能442は、各フィルタをかけた投影データセットを合成して、フィルタ処理後の投影データセットを生成する。
【0056】
一例を挙げると、データ処理機能442は、スムージングフィルタをかけた合成データセット「(HD1)&(LID1)」と、ハイパスフィルタをかけた合成データセット「(HD1)&(LID1)」とを合成した合成データセット「(HD1)&(LID1)」を生成する。同様に、データ処理機能442は、その他の回転位置における合成データセットについても、スムージングフィルタをかけた合成データセットと、ハイパスフィルタをかけた合成データセットとを合成した合成データセットを生成する。
【0057】
ここで、データ処理機能442は、上記した合成処理において、スムージングフィルタをかけた合成データセットにおける情報とハイパスフィルタをかけた合成データセットにおける情報を均等に含めた合成データセットを生成することもできるが、一方の情報に重み付けを行うこともできる。すなわち、データ処理機能442は、スムージングフィルタをかけた合成データセットとハイパスフィルタをかけた合成データセットのどちらか一方の情報をより多く含むように合成処理を実行することもできる。
【0058】
スムージングフィルタをかけた合成データセットにおける情報とハイパスフィルタをかけた合成データセットにおける情報を均等に含める場合、例えば、データ処理機能442は、スムージングフィルタをかけた合成データセットとハイパスフィルタをかけた合成データセットにそれぞれ重み「0.5」をかけて合成する。一方、どちらか一方の情報をより多く含むように合成処理を実行する場合、データ処理機能442は、スムージングフィルタをかけた合成データセットとハイパスフィルタをかけた合成データセットのうちどちらかに対して値を大きくした重みをかけて合成する。
【0059】
これにより、フィルタ処理前の合成データセットに残ってしまう場合がある一部のストリーク状のアーチファクトを低減することができる。なお、上述した例では、スムージングフィルタとハイパスフィルタの両方を用いたフィルタ処理を行う場合について説明したが、どちらか一方のフィルタを用いたフィルタ処理を行う場合でもよい。
【0060】
次に、X線CTシステム1による処理の手順の一例を、図4を用いて説明する。図4は、第1の実施形態に係るX線CTシステム1の処理の流れを説明するためのフローチャートである。ここで、図4においては、合成処理後にフィルタ処理を行う場合について示す。また、図4においては、「Dual Energyによる撮影」における確認用の画像を表示する場合について示す。
【0061】
ステップS101は、処理回路44がシステム制御機能441に対応するプログラムを読み出して実行することにより実現されるステップである。ステップS102~ステップS108は、処理回路44がデータ処理機能442に対応するプログラムを読み出して実行することにより実現されるステップである。ステップS109は、処理回路44が再構成機能444に対応するプログラムを読み出して実行することにより実現されるステップである。ステップS110は、処理回路44が出力機能445に対応するプログラムを読み出して実行することにより実現されるステップである。
【0062】
まず、処理回路44は、「Rapid kV switching方式」により、高エネルギーデータと低エネルギーデータとを収集する(ステップS101)。次に、処理回路44は、データを高エネルギーデータと低エネルギーデータに分離する(ステップS102)。そして、処理回路44は、高エネルギーデータにおける補間データと、低エネルギーデータにおける補間データをそれぞれ生成する(ステップS103、104)。
【0063】
その後、処理回路44は、実際に収集した投影データセットの情報がより多く含まれるように重み付け加算を実行して(ステップS105)、加算後の投影データセットに対してスムージングフィルタ処理及びハイパスフィルタ処理を実行する(ステップS106、107)。そして、処理回路44は、所望の情報がより多く含まれるように重み付け加算を実行する(ステップS108)。その後、処理回路44は、生成した投影データセットを用いて確認用の画像を生成して(ステップS109)、確認用の画像をディスプレイ42に表示させる(ステップS110)。
【0064】
上述したように、第1の実施形態によれば、X線管11は、被検体の周囲を回転しながらX線を照射する。システム制御機能441は、X線管11が被検体の周囲を1回転する間に、X線のエネルギーを周期的に変化させる。X線検出器12は、X線を検出し、X線照射部の回転位置毎に投影データセットを収集する。データ処理機能442は、第1のエネルギーのX線が照射されたときに収集された複数の第1投影データセットに基づいて、第1のエネルギーが照射されなかった回転位置に対応する複数の第1補間データセットを生成し、第2のエネルギーのX線が照射されたときに収集された複数の第2投影データセットに基づいて、第2のエネルギーが照射されなかった回転位置に対応する複数の第2補間データセットを生成する補間処理を含む処理を実行する。再構成機能444は、処理後の投影データセットを含む複数の投影データセットに基づいて生成された合成データセットに基づいて画像を再構成する。従って、第1の実施形態に係るX線CTシステム1は、「Rapid kV switching方式」によって収集された投影データセットにおける欠損部分を補間した投影データセットを生成することでアーチファクトを低減させた確認用の画像を生成することができ、撮影範囲の確認等を目的とした確認用の画像を効率的に得ることを可能にする。
【0065】
本実施形態は、管電圧を1ビューごとに切り替えるシステム、及び、管電圧を複数のビューごとに切り替えるシステムの両方に適用することができ、それぞれでアーチファクトを低減させた確認用の画像を生成することができる。特に、管電圧を複数のビューごとに切り替えるシステムでは、同じエネルギーで収集される回転角度が大きくなるため、確認用の画像に生じるアーチファクトが顕著になる。したがって、本実施形態は、このような管電圧を複数のビューごとに切り替えるシステムに対して適用することがより有効である。
【0066】
また、第1の実施形態によれば、合成データセットは、複数の投影データセットにそれぞれ異なるフィルタを適用した後、適用後の複数の投影データセットを合成することで生成される。したがって、第1の実施形態に係るX線CTシステム1は、アーチファクトをより低減することを可能にする。
【0067】
また、第1の実施形態によれば、データ処理機能442は、X線管11の回転位置が対応する第1投影データセットと第2補間データセットとを合成した第1合成データセットを生成し、回転位置が対応する第2投影データセットと第1補間データセットとを合成した第2合成データセットを生成する。再構成機能444は、第1合成データセットと第2合成データセットとを用いて画像を再構成する。したがって、第1の実施形態に係るX線CTシステム1は、欠損部分をより正確に補間することができ、アーチファクトをさらに低減することを可能にする。
【0068】
また、第1の実施形態によれば、データ処理機能442は、第1投影データセット及び第2投影データセットの比率が高くなるように重み付けをして第1合成データセット及び第2合成データセットをそれぞれ生成する。したがって、第1の実施形態に係るX線CTシステム1は、収集したデータの情報をより含んだ確認用の画像を生成することを可能にする。
【0069】
(その他の実施形態)
これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよいものである。
【0070】
上述した第1の実施形態では、収集した投影データセットに対して補間処理を行って合成する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、合成前に、エネルギーの透過量の違いを低減させるように処理することもできる。具体的には、その他の実施形態に係るX線CTシステム1では、異なるエネルギーにおける透過量の違いに応じた補正処理を行うことで、アーチファクトを低減した確認用の画像を生成する。具体的には、X線CTシステム1においては、データ処理機能442の処理により、透過量の違いを低減する。なお、以下では、透過量の違いを低減する処理をスケーリング処理と記載する。
【0071】
かかる場合、データ処理機能442は、第1のエネルギーのX線が照射されたときに収集された複数の第1投影データセット、及び第2のエネルギーのX線が照射されたときに収集された複数の第2投影データセットのうち少なくともいずれかに対して、第1のエネルギーのX線と第2のエネルギーのX線との間の透過量の違いに応じた補正処理を含む処理を実行する。具体的には、データ処理機能442は、第1のエネルギーのX線と第2のエネルギーのX線との間の透過量の差を低減するように、複数の第1投影データセット及び複数の第2投影データセットのうち少なくともいずれかに対して補正処理を実行する。
【0072】
図5は、その他の実施形態に係るデータ処理機能442によるスケーリング処理を説明するための図である。例えば、データ処理機能442は、複数の第1投影データセット又は複数の第2投影データセットに対して、透過量の差に基づく係数をかける補正処理を実行する。一例を挙げると、データ処理機能442は、図5の左下の図に示すように、高エネルギーの投影データセット(図中の高エネルギーデータ)それぞれに対して、「係数a」を乗じる。すなわち、データ処理機能442は、高エネルギーの投影データセットに含まれる各ビューにおける投影データの値に対して「係数a」を乗じる。ここで、「係数a」は、透過量の差に基づいて算出されたものであり、高エネルギーの投影データセットにおけるX線の透過量を、低エネルギーの投影データセットにおけるX線の透過量に近似させるための係数である。
【0073】
または、例えば、データ処理機能442は、図5の中央下の図に示すように、低エネルギーの投影データセット(図中の低エネルギーデータ)それぞれに対して、「係数b」を乗じる。すなわち、データ処理機能442は、低エネルギーの投影データセットに含まれる各ビューにおける投影データの値に対して「係数b」を乗じる。ここで、「係数b」は、透過量の差に基づいて算出されたものであり、低エネルギーの投影データセットにおけるX線の透過量を、高エネルギーの投影データセットにおけるX線の透過量に近似させるための係数である。
【0074】
ここで、上記した「係数a」及び「係数b」は、予め算出されてメモリ41に格納される。例えば、事前に高エネルギーデータと低エネルギーデータとを収集して、X線の透過量の差を算出する。そして、算出した透過量の差から係数が算出されて、メモリ41に格納される。このような係数をエネルギーの組み合わせごとにメモリ41に記憶させ、データ処理機能442は、現在用いられているエネルギーの組み合わせに対応する係数をメモリ41から読み出して、スケーリング処理を行う。
【0075】
また、係数をかけるその他の処理として、例えば、データ処理機能442は、複数の第1投影データセットに対して、第1のエネルギーと第3のエネルギーとの差分に基づく係数をかけ、複数の第2投影データセットに対して、第2のエネルギーと第3のエネルギーとの差分に基づく係数をかける補正処理を実行する。すなわち、データ処理機能442は、ターゲットとなる1つのエネルギーにおけるX線の透過量に近似させるように、各エネルギーの投影データセットに係数を乗じる。なお、第3のエネルギーは、例えば第1のエネルギーと第2のエネルギーの間のエネルギーである。
【0076】
一例を挙げると、データ処理機能442は、図5の右下の図に示すように、高エネルギーデータそれぞれに対して、「係数c」を乗じ、低エネルギーデータそれぞれに対して、「係数d」を乗じる。すなわち、データ処理機能442は、高エネルギーの投影データセットに含まれる各ビューにおける投影データの値に対して「係数c」を乗じ、低エネルギーの投影データセットに含まれる各ビューにおける投影データの値に対して「係数d」を乗じる。ここで、「係数c」は、高エネルギーの投影データセットにおけるX線の透過量を、ターゲットのエネルギーにおけるX線の透過量に近似させるための係数である。また、「係数d」は、低エネルギーの投影データセットにおけるX線の透過量を、ターゲットのエネルギーにおけるX線の透過量に近似させるための係数である。
【0077】
ここで、上記した「係数c」及び「係数d」を用いたスケーリング処理は、ビームハードニング補正における処理を応用して実行することができる。例えば、ビームハードニング補正では、ターゲットとなる単色エネルギーの透過量に近似するように、収集された投影データに対して補正処理が実施される。そこで、データ処理機能442は、ターゲットとなる単色エネルギーの透過量に近似するように、高エネルギーの投影データセット及び低エネルギーの投影データセットに対して補正処理を行う。これにより、高エネルギーの投影データセットにおける透過量及び低エネルギーの投影データセットにおける透過量は、ターゲットとなる単色エネルギーの透過量に近似することとなり、相互の透過量も近似することとなる。
【0078】
なお、上述した実施形態では、スケーリング処理に用いる係数を実際の透過量の差から算出する場合、ビームハードニング補正に用いられる係数をスケーリング処理の係数に適用する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、理論的に計算した値を用いる場合でもよい。例えば、第1のエネルギーにおけるX線の透過量と第2のエネルギーにおけるX線の透過量を論理的にそれぞれ計算し、計算した透過量の差から係数を算出する場合でもよい。
【0079】
上述したように、データ処理機能442は、複数の第1投影データセット又は複数の第2投影データセットに対して、透過量の差に基づく係数をかける補正処理を実行する。これにより、X線CTシステム1は、異なるエネルギーが混在する投影データセットにおけるX線の透過量の違いを低減することができる。
【0080】
その他の実施形態に係るX線CTシステム1では、例えば、上述したスケーリング処理を、第1の実施形態における合成処理の前段で実行することで、アーチファクトがより低減された確認用の画像を生成することができる。かかる場合、データ処理機能442は、上述したスケーリング処理後の投影データセットをエネルギーごとの投影データセットに分離して、欠損部分を補間した後、合成処理を実施する。なお、例えば、再構成機能444は、図5の下段に示す係数がかけられた3つの投影データセットのうちいずれのデータを用いた場合でも、アーチファクトが低減された確認用の画像を生成することができる。
【0081】
また、上述した第1の実施形態では、(Dual-Energyによる撮影)を例に挙げて説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、3種類以上の異なるエネルギーのX線を用いた(Multi-Energyによる撮影)で収集された投影データセットに対して適用する場合であってもよい。
【0082】
また、第1の実施形態に係るX線CTシステム1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とが相互に接続されるシステム(X線CT装置)について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、本願のX線CTシステムは、上記した処理の一部がネットワーク上の装置で分散して実施されるように構成される場合でもよい。
【0083】
図6は、その他の実施形態に係るX線CTシステム100の構成の一例を示すブロック図である。なお、その他の実施形態に係るX線CTシステム100は、図1に示したX線CTシステム1と比較して、画像処理サーバ2を有する点、X線CT装置が、通信インターフェース45を有してネットワークNWを介して画像処理サーバ2と接続される点が相違する。以下、第1の実施形態において説明した構成と同様の構成を有する点については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0084】
通信インターフェース45は、処理回路44に接続され、ネットワークNWを介して接続された画像処理サーバ2との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。例えば、通信インターフェース45は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。一例を挙げると、通信インターフェース45は、DAS18によって生成された投影データセットを画像処理サーバ2に送信する。また、通信インターフェース45は、画像処理サーバ2から処理後の投影データセットを受信して、処理回路44に出力する。
【0085】
画像処理サーバ2は、通信インターフェース21と、メモリ22と、処理回路23とを有する。
【0086】
通信インターフェース21は、処理回路23に接続され、ネットワークNWを介して接続されたX線CT装置との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。例えば、通信インターフェース21は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。一例を挙げると、通信インターフェース21は、X線CT装置から投影データセットを受信して、処理回路23に出力する。また、通信インターフェース21は、処理回路23によって処理された処理後の投影データセットをX線CT装置に出力する。
【0087】
メモリ22は、処理回路23に接続され、各種データを記憶する。例えば、メモリ22は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。例えば、メモリは、X線CT装置から受信した投影データセットなどを記憶する。また、メモリ22は、処理回路23によって実行される各処理機能に対応するプログラムを記憶する。
【0088】
処理回路23は、データ処理機能231と、再構成機能232とを実行する。すなわち、処理回路23は、メモリ22から各機能に相当するプログラムを読み出して実行することで、画像処理サーバの動作を制御する。具体的には、データ処理機能231は、上述したデータ処理機能442と同様の処理を実行する。また、再構成機能232は、上述した再構成機能444と同様の処理を実行する。なお、データ処理機能231は、データ処理部の一例である。また、再構成機能232は、再構成部の一例である。
【0089】
図6に示す画像処理サーバ2においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ22へ記憶されている。処理回路23は、メモリ22からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路23は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0090】
なお、図6においては、データ処理機能231及び再構成機能232の各処理機能が単一の処理回路23によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路23は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路23が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0091】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、メモリ41又はメモリ22に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0092】
なお、図1においては、単一のメモリ41が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。また、図6においては、単一のメモリ22が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数のメモリ41を分散して配置するとともに、処理回路44が個別のメモリ41から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、例えば、複数のメモリ22を分散して配置するとともに、処理回路23が個別のメモリ22から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ41又はメモリ22にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0093】
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0094】
また、上述した実施形態で説明した処理プログラムは、予め用意された処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0095】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、撮影範囲の確認等を目的とした確認用の画像を効率的に得ることを可能にすることができる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0097】
1、100 X線CTシステム
11 X線管
12 X線検出器
23、44 処理回路
441 システム制御機能
231、442 データ処理機能
232、444 再構成機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6