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特許7490341化学蓄熱装置、及び化学蓄熱材の蓄熱方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】化学蓄熱装置、及び化学蓄熱材の蓄熱方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
F28D20/00 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019116805
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021001717
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-03-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】平田 一弘
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-206363(JP,A)
【文献】特開2015-014234(JP,A)
【文献】特開2018-044699(JP,A)
【文献】特開2012-172900(JP,A)
【文献】特開2015-183984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00- 20/02
F01N 3/20- 5/02
F25B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に化学蓄熱材を保持する反応器と、
蓄熱時に、前記化学蓄熱材を加熱することで、前記化学蓄熱材から脱離する反応媒体を凝縮器側へ移動させる化学蓄熱装置であって、
前記化学蓄熱材から脱離する反応媒体の流出量を調整する流出量調整手段と、を備え、
蓄熱時は、前記流出量調整手段により、前記凝縮器への反応媒体の流出量を抑制することで、前記反応器の内部の圧力を、前記凝縮器の圧力よりも高い圧力に維持し、その後、前記流出量調整手段により、前記凝縮器への反応媒体の流出量を促進させることを特徴とする、化学蓄熱装置。
【請求項2】
前記流出量調整手段を制御する制御部と、を備えることを特徴とする、請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【請求項3】
前記流出量調整手段は、化学蓄熱材の温度値、反応器の温度値、反応器の圧力値、化学蓄熱材に熱を供給する熱媒体の温度の変化量に基づいて制御することを特徴とする、請求項1又は2に記載の化学蓄熱装置。
【請求項4】
前記流出量調整手段は、予め設定された時間に基づいて制御することを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の化学蓄熱装置。
【請求項5】
内部に化学蓄熱材を保持する反応器と、
蓄熱時に、前記化学蓄熱材を加熱することで、前記化学蓄熱材から脱離する反応媒体を凝縮器側へ移動させる化学蓄熱装置であって、
前記化学蓄熱材から脱離する反応媒体の流出量を調整する流出量調整手段と、を備え、
蓄熱時は、前記流出量調整手段を制御することにより、前記凝縮器への反応媒体の流出量を抑制することで、前記化学蓄熱材の温度を、前記凝縮器の圧力における反応温度よりも高い温度に維持し、その後、前記流出量調整手段により、前記凝縮器への反応媒体の流出量を促進させることを特徴とする、化学蓄熱装置。
【請求項6】
反応器の内部に保持された化学蓄熱材を加熱することで、前記化学蓄熱材から脱離する反応媒体を凝縮器側へ移動させて熱を蓄積する化学蓄熱材の蓄熱方法において、
前記化学蓄熱材から脱離する反応媒体の流出量を調整する流出量調整手段と、を備え、
蓄熱時は、前記流出量調整手段を制御することにより、前記凝縮器への反応媒体の流出量を抑制することで、以下の<1>又は<2>の条件で蓄熱反応を行い、その後、前記流出量調整手段により、前記凝縮器への反応媒体の流出量を促進させることを特徴とする、化学蓄熱材の蓄熱方法。
<1>反応器の内部の圧力を、凝縮器の圧力よりも高い圧力に維持する。
<2>化学蓄熱材の温度を、凝縮器の圧力における反応温度よりも高い温度に維持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学蓄熱装置、及び化学蓄熱材の蓄熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の化学蓄熱装置としては、例えば、特許文献1に記載されるように、酸化触媒を加熱するための化学蓄熱装置が知られている。この化学蓄熱装置は、エンジンの排気系に設けられ、供給される排ガスの温度に応じて供給部と反応器の間に設けられたバルブの開閉を制御する。これにより、蓄熱反応と発熱反応を排ガスの温度に応じて適切に行うことができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-14234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化学蓄熱装置は、自動車等のエンジン、工場やごみ焼却場等から発生する排ガス等の熱を化学蓄熱材に蓄え、熱エネルギーの再利用を図るものである。そのため、排ガス等の熱源から効率よく熱を回収することが求められる。
本発明の課題は、蓄熱時において、化学蓄熱の反応を促進することが可能な化学蓄熱装置及び化学蓄熱材の蓄熱方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題について鋭意検討した結果、蓄熱時において、化学蓄熱材から脱離する反応媒体の移動を制限し、反応器内部の圧力を出口側の圧力より高い状態とすることにより、化学蓄熱の反応が促進されることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の化学蓄熱装置、化学蓄熱材の蓄熱方法である。
【0006】
上記課題を解決するための本発明の化学蓄熱装置は、内部に化学蓄熱材を保持する反応器と、を備え、前記反応器の内部の圧力を、前記反応器の外部の圧力よりも高い圧力に維持することを特徴とする。
化学蓄熱材の蓄熱反応では、化学蓄熱材に外部から熱を与えることにより、気体として反応媒体が発生する。そのため、反応器を閉鎖した状態とすると、反応器の内部の圧力が上昇する。蓄熱反応時における化学蓄熱材の温度は、所定の圧力に対応する反応温度によるものであり、高温雰囲気下であれば反応器内の分離反応が促進され、より短時間で蓄熱反応を行うことができる。
一方、化学蓄熱材と発生した反応媒体を分離するために、反応器の開口部を開口した状態で反応器を加熱すると、化学蓄熱材から脱離した反応媒体は反応器から流出し続けるため、反応器内の圧力は外部の圧力と同等に維持される。つまりは、反応器内の化学蓄熱材は、反応器の外部の圧力に対応する反応温度で蓄熱反応することになる。
この化学蓄熱装置によれば、反応器の内部の圧力が、反応器の外部の圧力よりも高い圧力に維持される(反応器の外部の圧力よりも圧力を下げないようにする)ため、内部に保持された化学蓄熱材の温度を反応器の外部の圧力における反応温度よりも高く維持することができる。そのため、蓄熱反応速度が高くなり、蓄熱反応を促進するという効果を奏する。
【0007】
更に、本発明の化学蓄熱装置の一実施態様としては、反応器の外部の圧力は、反応器の接続先の圧力であることを特徴とする。
この特徴によれば、反応器が凝縮器などの接続先と接続されている場合に、反応器の内部の圧力を、反応器と接続された接続先の圧力よりも高く維持されるため、化学蓄熱材の温度が接続先の圧力における反応温度より高くなり、蓄熱反応を促進するという効果を奏する。
【0008】
更に、本発明の化学蓄熱装置の一実施態様としては、化学蓄熱材から脱離する反応媒体の流出量を調整する流出量調整手段と、を備え、流出量調整手段を制御することにより、反応器の内部の圧力を、反応器の外部の圧力よりも高い圧力に維持することを特徴とする。
この化学蓄熱装置によれば、化学蓄熱材から脱離する反応媒体の流出量を調整する流出量調整手段を制御することにより、簡便な操作で、反応器の内部の圧力を、反応器の外部の圧力よりも高い圧力に維持することができる。そして、反応器の内部の圧力を高めることにより、内部に保持された化学蓄熱材の温度を、反応器の外部の圧力における反応温度よりも高く維持することができる。そのため、蓄熱反応速度が高くなり、蓄熱反応を促進するという効果を奏する。
【0009】
更に、本発明の化学蓄熱装置の一実施態様としては、流出量調整手段を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
この特徴によれば、流出量調整手段を制御するための制御部を有するため、事前の設定に基づいて、自動的に反応の進行を制御することができる。
【0010】
更に、本発明の化学蓄熱装置の一実施態様としては、流出量調整手段は、化学蓄熱材の温度値、反応器の温度値、反応器の圧力値、化学蓄熱材に熱を供給する熱媒体の温度の変化量に基づいて制御するという特徴を有する。
この特徴によれば、化学蓄熱材の温度値、反応器の温度値や圧力値、又は熱媒体の温度の変化量に基づいて流出量調整手段を制御するため、蓄熱時における化学蓄熱材の反応温度や反応器の内部の圧力を適切に制御し、化学蓄熱反応が促進された状態を維持することが可能となる。
【0011】
更に、本発明の化学蓄熱装置の一実施態様としては、流出量調整手段は、予め設定された時間に基づいて制御することを特徴とする。
この化学蓄熱装置によれば、熱媒体の種類や温度、化学蓄熱材の種類や反応態様、及び反応規模などに基づいて、効率的な化学蓄熱反応となるように、反応媒体の流出時間を予め設定するため、細かな制御をすることなく、容易に化学蓄熱反応を促進することができる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の化学蓄熱装置は、内部に化学蓄熱材を保持する反応器と、を備え、化学蓄熱材の温度を、反応器の外部の圧力における反応温度よりも高い温度に維持することを特徴とする。
化学蓄熱材の温度が高くなれば、反応速度が増加し、蓄熱反応が促進される。本発明の化学蓄熱装置によれば、化学蓄熱材の温度を、反応器の外部の圧力における反応温度よりも高い温度に維持するため、蓄熱反応速度を向上し、蓄熱反応を促進するという効果を奏する。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の化学蓄熱材の蓄熱方法は、反応器の内部に保持された化学蓄熱材に熱を蓄積する化学蓄熱材の蓄熱方法において、以下の<1>又は<2>の条件で蓄熱反応を行うことを特徴とする。
<1>反応器の内部の圧力を、反応器の外部の圧力よりも高い圧力に維持する。
<2>化学蓄熱材の温度を、反応器の外部の圧力における反応温度よりも高い温度に維持する。
この蓄熱方法によれば、反応器の内部の圧力を、前記反応器の外部の圧力よりも高い圧力に維持するため、化学蓄熱材の反応温度を高く維持し、蓄熱反応をより促進できるという効果を奏する。
また、化学蓄熱材の温度を、反応器の外部の圧力における反応温度よりも高い温度に維持することで蓄熱反応をより促進できるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蓄熱時において、化学蓄熱の反応を促進することが可能な化学蓄熱装置及び化学蓄熱材の蓄熱方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一の実施態様の化学蓄熱装置における化学蓄熱の反応模式図である。
図2】本発明の第一の実施態様の化学蓄熱装置の構造を示す概略説明図である。
図3】本発明の蓄熱時におけるバルブ操作の一例を示す動作模式図である。
図4】本発明の蓄熱時におけるバルブ開閉に伴う圧力と反応温度の関係を示すグラフの一例を示す図である。
図5】本発明の蓄熱時におけるバルブ操作の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第二の実施態様のバルブ制御装置を備えた化学蓄熱装置の構造を示す概略説明図である。
図7】本発明の第三の実施態様の化学蓄熱装置の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に係る好適な実施態様について詳細に説明する。尚、実施態様に記載する化学蓄熱装置、及び化学蓄熱材の蓄熱方法については、本発明に係る化学蓄熱装置、及び化学蓄熱材の蓄熱方法を説明するために例示したに過ぎず、同様の効果を奏する限り、これらに限定されるものではない。
【0017】
[化学蓄熱装置]
本発明の化学蓄熱装置は、蓄熱時には、化学蓄熱材を加熱して蓄熱生成物と生成気体に分離し、放熱時には、前記蓄熱生成物と反応気体を反応させて前記化学蓄熱材を生成する化学蓄熱装置である。ここで、蓄熱時に発生する生成気体と、放熱時に供給する反応気体は同一種類の物質であり、生成気体を凝縮器で回収して、反応気体として再利用してもよいし、生成気体を蓄熱時に大気に放出し、放熱時には別の同一種類の反応気体を用いてもよい。なお、生成気体と反応気体を「反応媒体」と称することがある。
【0018】
一般的な化学蓄熱(放熱)反応としては、例えば、下記式(1)のような反応が例示される。
【化1】
固体である化学蓄熱材ABにQの熱を付与すると、固体である蓄熱生成物Aと気体である反応媒体Bを生成する。この反応は可逆的な平衡反応であり、放熱時には、蓄熱生成物Aと反応媒体Bが反応する。なお、式中の「(s)」は、固体状態を表し、式中の「(g)」は、気体状態であることを表す。
【0019】
この化学蓄熱を利用した化学蓄熱装置ついて、簡略化した装置模式図を図1に示す。ここで、図の左側が反応器であり、図の右側は蓄熱反応により発生した反応媒体を凝縮して回収するための凝縮器である。化学蓄熱では、反応器側において熱Qを付与することにより、反応媒体B(g)が生成し、生成した反応媒体B(g)は、圧力差により右側の凝縮器に移動する。凝縮器側においては、反応媒体B(g)の有する熱Qを放熱することにより反応媒体B(g)の温度が低下し、凝縮反応により液化して反応媒体B(l)となる。そして、反応媒体B(g)が液化して反応媒体B(l)となることにより、凝縮器内の圧力が低下するため、反応器で生成した反応媒体B(g)は、自然に凝縮器側に移動することができる。
【0020】
放熱時には、この逆方向に反応を進行させるものであり、凝縮器側において反応媒体B(l)に熱Qを付与することにより反応媒体B(g)に気化させ、反応器側において反応媒体B(g)と蓄熱生成物A(s)と、を反応させることにより、化学蓄熱材AB(s)となる発熱反応により熱Qが放熱される。なお、反応器側の内圧が凝縮器側の内圧より低い場合には、バルブの開放により凝縮器側の内圧が低下するため、熱Qを付与することなく反応媒体B(l)が気化して反応媒体B(g)となり、反応器側に自然と移動することができる。
【0021】
化学蓄熱装置は、自動車のエンジン、工場やごみ焼却場等から発生する排熱を化学蓄熱材に貯蔵して、熱を必要とする際に蓄熱生成物から放熱して熱を利用する。なお、化学蓄熱装置は、輸送が可能な装置とし、熱を必要とする熱需要地に輸送して利用してもよいし、所定の位置に固定し、熱媒体からの熱供給がないときに、放熱により熱を供給するように利用してもよい。
【0022】
本発明の化学蓄熱装置は、内部に化学蓄熱材を保持する反応器と、を備え、前記反応器の内部の圧力を、前記反応器の外部の圧力よりも高い圧力に維持することを特徴とするものである。また、別の観点から見れば、本発明の化学蓄熱装置は、内部に化学蓄熱材を保持する反応器と、を備え、化学蓄熱材の温度を、反応器の外部の圧力における反応温度よりも高い温度に維持することを特徴とするものである。
【0023】
〔第一の実施態様〕
図2は、本発明の第一の実施態様の化学蓄熱装置1aの構造を示す概略説明図である。この化学蓄熱装置1aは、化学蓄熱材4を保持する反応器2と、化学蓄熱材4から発生する生成気体を凝縮して貯蔵する凝縮器3を有する。反応器2の内部と凝縮器3の内部は、連通部7を介して気密に接続されており、連通部7には、生成気体の移動を制御可能なバルブV1を有している。また、反応器2の内部には排ガスなどの熱媒体が通過する熱交換部5が設けられている。
以下に、各構成について詳細に説明する。
【0024】
(化学蓄熱材)
化学蓄熱材4とは、加熱時に蓄熱生成物と生成気体に分離され、また、この逆の反応により熱を放出する化学物質である。例えば、蓄熱生成物と生成気体として、酸化カルシウム(CaO)と水蒸気(HO)、塩化カルシウム(CaCl)と水蒸気(HO)、臭化カルシウム(CaBr)と水蒸気(HO)、ヨウ化カルシウム(CaI)と水蒸気(HO)、酸化マグネシウム(MgO)と水蒸気(HO)、塩化マグネシウム(MgCl)と水蒸気(HO)、塩化亜鉛(ZnCl)と水蒸気(HO)、塩化ストロンチウム(SrCl)とアンモニア(NH)、臭化ストロンチウム(SrBr)とアンモニア(NH)等が挙げられる。放熱時に調達が容易であるという観点から、化学蓄熱材4は、生成気体及び反応気体として水蒸気を利用するものであることが好ましい。
【0025】
化学蓄熱材4の構造及び形状については、特に限定するものではなく、例えば、粉体状、粒状、顆粒状、ペレット状、フレーク状などが挙げられる。また、粉体を成型して得られる成型体、又は化学蓄熱材4を多孔質体に担持させたものであってもよい。反応性を高めるために表面積が大きいという観点から、粉体状であることが好ましい。
【0026】
さらには、粉体状の化学蓄熱材4を金属製のメッシュからなる容器又は袋体に充填したカートリッジとしてもよい。カートリッジとすることにより、粉体状の化学蓄熱材4が反応器2から流出することを防止したり、反応器2の内部における化学蓄熱材4の配置の偏りを防止したりすることができる。また、カートリッジとすることにより、化学蓄熱材4の交換が容易になり、取扱性に優れるという効果もある。
【0027】
(反応器)
反応器2は、化学蓄熱材4を保持するための構成であり、密閉可能な構造物からなる。反応器2の形状や材質は、特に制限されないが、耐圧性を有することが好ましい。耐圧性を有することにより、反応器2の内部の圧力の変化による内容積の変化が抑制されるため、内部の圧力を制御しやすいという効果を奏する。
【0028】
反応器2には、化学蓄熱材4から脱離する反応媒体が流出入するための開口部6を備えており、開口部6は、連通部7と接続されている。また、連通部7には、反応媒体の流出量(放熱時においては流入量)を調整するためのバルブV1を備えている。そして、加温することにより発生した反応媒体の流出をバルブV1で制限することにより反応器内の圧力が高めることができる。すなわち、バルブV1の開閉を制御することにより、反応器内部の圧力をバルブV1の出口側(凝縮器側)の圧力以上に維持するように調整することができる。また、反応器内部の圧力を出口側の圧力以上に維持することにより、化学蓄熱材の温度を、反応器の外部の圧力における反応温度よりも高い温度に維持することが可能となる。すなわち、反応媒体の流出を制限することで蓄熱反応を促進することができる。なお、バルブV1による反応器2の内部の圧力の調整については、後述する。
【0029】
(流出量調整手段)
本発明の第一の実施態様の化学蓄熱装置1aは、流出量調整手段として、バルブV1を備える。流出量調整手段は、蓄熱反応時に化学蓄熱材から脱離する反応媒体の流出量を調整するためのものであり、例えば、反応器2の開口部を開閉するためのバルブや、連通部の径を縮小する絞り部などが挙げられる。流出量調整手段により反応媒体が接続先へ向かう際に、移動の制限を受けることで、反応器の内部圧力を接続先の圧力よりも高い状態に維持できる。
【0030】
バルブV1は、全開又は全閉の2段階で制御する制御弁でも、開口度を段階的に調整する制御弁でもよい。前者の制御弁では、簡素な構造で反応器2の内部の圧力を調整することができる。また、後者の制御弁では、反応器2の内部の圧力を厳密に調整できるという効果がある。
【0031】
反応器2に複数の開口部6を形成し、各開口部6に、それぞれ連通部7及びバルブV1を設けて、複数のバルブV1により反応器2の内部の圧力を調整してもよい。これにより、反応器2の内部の圧力の制御をより厳密に調整することができる。なお、複数の開口部6の配置は、反応器2の近接する位置に配置してもよいし、反応器2の異なる位置に配置してもよい。反応器2の近接する位置に配置する場合には、複雑な配管構造を形成する必要がなく、反応器2の構造を簡素な構造とすることが可能である。反応器2の異なる位置に配置する場合には、反応器2の内部に配置された化学蓄熱材4の近接する位置に、それぞれ開口部6を配置することができるため、化学蓄熱材4から発生する反応媒体の流出入を速やかに行うことができるという効果がある。
【0032】
反応器2は、化学蓄熱装置1aから取り外し可能な構造物としてもよい。取り外し可能な構造物とすることにより、化学蓄熱材4を保持する反応器2のみを、放熱が必要な熱需要地に移送することができる。また、反応器2の内部の化学蓄熱材4のみを、密閉可能な容器や袋体に封入して熱需要地に移送してもよい。
【0033】
また、反応器2は、反応器2を保温するための保温部(不図示)を有してもよい。保温部は、断熱材や熱反射材などの放熱を抑制する部材からなり、反応器2の周囲を覆うように設けられているものである。断熱材は、反応器2の放熱を抑制する材質からなるものであり、例えば、発泡ポリエチレンや発泡スチロールなどの発泡樹脂、合成樹脂、無機材などが挙げられる。また、熱反射部材は、反応器2から放出される輻射熱を反射可能な材質からなるものである。輻射熱を反射可能な材質としては、例えば、金属としては、アルミニウム、鉄、銅、黄銅、銀、金、白金、ニッケル、ステンレス、クロム、タングステンなどが挙げられる。また、非金属としては、石英ガラス、アルミナセラミクス、マグネシアセラミクス、耐火レンガなどが挙げられる。
【0034】
(熱交換部)
反応器2には、内部に保持された化学蓄熱材4と外部との熱の伝達を行うための熱交換部5、該熱交換部5に熱媒体を供給するための熱媒体供給口8、熱交換部5から熱媒体を排出するための熱媒体排出口9を有する。また、熱媒体供給口8、熱媒体排出口9を介して熱媒体を流通する配管には、それぞれバルブV2、V3が設けられ、熱交換部5への熱媒体の供給及び排出を制御する。
【0035】
熱交換部5は、反応器2の内部に収納された化学蓄熱材4と外部との熱の伝達を行うことができれば、どのような形状のものでもよく、例えば、反応器2の内部に蛇行して設置された熱交換チューブや、2重円筒型の反応器の内筒部などにより構成される。また、反応器2の外壁を介して熱交換を行ってもよい。
その他、反応器2の内部に熱媒体を供給して、熱媒体と化学蓄熱材4とを直接接触することにより、化学蓄熱材4に熱媒体の熱を供給してもよい。
【0036】
熱媒体としては、化学蓄熱材4に熱を供給することができる温度のものであればよく、気体や液体等の流体や、固体であってもよい。熱の伝達の効率に優れるという観点から、流体を使用することが好ましい。更に取り扱い性に優れるという観点でみれば、気体を使用することが特に好ましい。
【0037】
(凝縮器)
本発明の第一の実施態様の化学蓄熱装置1aは、反応器2の接続先として凝縮器3を備える。凝縮器3は、蓄熱時に化学蓄熱材4から気体として発生する反応媒体を、液体状態の反応媒体10として貯留するための構造物であり、凝縮器3の上部の気相部と開口部6が連通部7により連結されている。凝縮器3は、気体として発生する反応媒体を凝縮する温度に調整されており、気体状態の反応媒体が凝縮器3に流入すると液体状態に凝縮する。凝縮器3の温度の調整は、特に制限されず、冷却装置等により冷却してもよいし、自然放熱により冷却してもよい。
【0038】
反応器2の内部と凝縮器3の内部は、連通部7を介して気密に連通し、凝縮器3の内部を陰圧としている。これにより、化学蓄熱材4から気体として発生した反応媒体は、自然と凝縮器3側に移動することができる。そして、凝縮器3で気体状態の反応媒体が液体状態に凝縮すると、凝縮器3の内圧が低下するため、化学蓄熱材4から気体として発生した反応媒体は、自然と凝縮器3側に移動し続けることができる。
なお、反応器2の内部と凝縮器3の内部は、気密に連通しなくてもよい。この場合、凝縮器3は、化学蓄熱材4から気体として発生した反応媒体が大気に開放する前に、単に回収するために利用される。
また、凝縮器3を設けずに、反応媒体を大気に放出してもよい。
【0039】
(連通部)
連通部7は、反応器2の内部と凝縮器3の内部を連通するものであれば、特に制限されず、例えば、配管などが挙げられる。また、配管を介さずに、反応器2の内部と凝縮器3の内部を直接連通してもよい。
【0040】
[蓄熱時の化学蓄熱装置の操作]
蓄熱時には、熱媒体供給口8及び熱媒体排出口9を開口し、熱媒体を熱交換部5に流通する。また、バルブV1を開口し、反応器2と凝縮器3を連通する。これにより、熱交換部5に供給された熱媒体により化学蓄熱材4が加熱され、蓄熱生成物と生成気体に分離する。生成気体は、バルブV1を通過し、凝縮器3に移動する。凝縮器3に流入した生成気体は冷却され、液体状態の反応媒体10として、凝縮器3に貯留される。冷却する方法は、放置して外気により冷却してもよく、冷却装置(不図示)により冷却することもできる。
【0041】
ここで、本発明の化学蓄熱装置1aは、化学蓄熱の進行時において、バルブV1を少なくとも1以上の回数、好ましくは2以上の回数、開閉動作を行うことにより、反応器2の内部の圧力を、バルブV1の出口側、即ち、凝縮器3側の圧力以上の圧力値を維持したまま、化学蓄熱を制御することができる。反応器2の内部の圧力を高く維持することにより、化学蓄熱材4の反応温度を、反応器の外部の圧力における反応温度よりも高い温度に維持することができるため、化学蓄熱材4の蓄熱反応がより高い温度で行われる。よって、蓄熱反応速度が向上し、蓄熱時間を短縮するなどの効果を奏する。また、反応器2の内部の圧力が高まることにより、バルブV1を開口した際に、反応媒体の流出を促進することができる。よって、バルブV1の開閉動作を繰り返すことにより、反応媒体の流出が促進され、蓄熱時間を短縮するという効果を奏する。より詳細には、図3の動作模式図、図4の圧力に対応する反応温度を示す図、及び図5のフローチャートを参照しながら以下操作の説明をする。
【0042】
(従来技術におけるバルブ操作)
まず、図3の上段に示す動作模式図(a)は、従来の蓄熱時におけるバルブ操作を示したものである。ここで、T_openは、化学蓄熱材の温度変化を示しており、P_openは、反応容器の内部の圧力変化を示している。又、Valveは、バルブV1の開閉動作を示しており、縦軸CLOSEにおいては、バルブV1が閉口されていることを示し、縦軸OPENにおいては、バルブV1が開口されていることを示している。尚、横軸は時間の経過を表しており、数字はその一例を示している。
【0043】
バルブV1を閉口した状態で、熱媒体供給口8より供給された熱媒体により熱交換部5を介して化学蓄熱材4を加熱すると、熱媒体の温度(Th)を上限として化学蓄熱材4が加熱される。このとき、反応容器の内部の圧力はPhとなり、反応温度はThとなる。
次に、時間0において、バルブV1を開口すると、反応器2の内部の圧力がPまで低下し、それに伴い、反応温度もTHまで低下して平衡状態となる。反応温度がTHまで低下すると、化学蓄熱材の温度もTHまで低下する。そして、バルブV1を開口した状態で維持することにより、化学蓄熱材4から発生した反応媒体が反応器2から流出するため、反応器2の内部の圧力は外部の圧力と同等に維持され、反応温度も外部の圧力における反応温度THと同等となる。よって、化学蓄熱材の温度もTHに維持された状態で蓄熱反応が進行する。
【0044】
ここで、圧力に対応する反応温度を示すグラフによりバルブ操作を説明する。図4は、圧力に対応する反応温度を示すグラフの一例を表す図である。左側のグラフPHは、反応器2の内部の圧力に対応する化学蓄熱材4の反応温度を示し、右側のグラフPLは、凝縮器3の内部の圧力に対応する反応媒体Bの凝縮温度を示している。横軸は温度の逆数であり、縦軸は圧力の対数を示している。この図に示すように、バルブV1を開口すると、反応器2の内部の圧力は凝縮器3側の圧力Pと等しくなる。よって、バルブV1を開口した状態で維持すると、反応器2の内部の圧力が凝縮器3側の圧力Pと等しい圧力で維持され、化学蓄熱材4の反応温度は、この圧力Pにおける反応温度で維持される。
【0045】
凝縮器3側の温度は、自然放熱又は冷却によりTLより低く制御されているため、凝縮器3に流入した気体状態の反応媒体は、液体に凝縮し、凝縮器3の内圧が低下する。この凝縮反応により、バルブV1を開口した状態で維持すると、反応器2の気体状態の反応媒体は、自然と凝縮器3に移動し、蓄熱反応が進行する。
即ち、バルブV1を開口すると、反応器2の圧力がPhからPに減少し、同時に反応器2に保持された化学蓄熱材4の反応温度もThからTHに向かって下降する。そして、これに伴い、反応器2に保持された化学蓄熱材4の温度もTHに向かって下降する。その後は、凝縮器3側の蒸気圧Pの状態で維持されることになり、化学蓄熱材4の温度もTHで維持される。
そして、蓄熱反応が終了すると、反応媒体の発生が止まり、気体の移動がなくなることから、反応器2の温度が上限値Thまで上昇することになる。
【0046】
次に、図5のフローチャート(a)において、従来技術のバルブ操作の制御について説明する。バルブ操作の制御では、化学蓄熱材4の加熱を開始した後、化学蓄熱材4の温度が上限値に達した否かについて確認する。上限値に達した場合は、バルブV1を開放し、他方、上限値に達しない場合には、温度が上限値に達するまで、前記ループを繰り返すこととなる。ここで、上限値とは、使用した熱媒体に由来する温度であり、本態様においてはThである。
【0047】
上述したとおり、バルブV1を開口した後は、反応器2の温度がTHまで低下し、その状態で蓄熱反応が進行する。そして、蓄熱反応が終了すると、反応媒体の発生が止まり、反応器2の温度が上限値Thまで上昇することになる。
【0048】
バルブV1の開口後の制御では、継続的に反応器2の温度を検知し、反応器2の温度が上限値Thに達したか否かについて確認する。上限値Thに達した場合には、蓄熱反応が終了したと判断し、バルブV1を閉口する。他方、上限値Thに達しない場合には、温度が上限値に達するまで、前記ループを繰り返すこととなる。即ち、バルブV1開口後、一度THに下降した反応器の温度が化学蓄熱の進行により、再び上限値Thに達した場合に、化学蓄熱を終了させることとなる。
従って、Thよりも低いTHにて化学蓄熱が進行していくこととなる。
【0049】
(本発明におけるバルブ操作)
他方、図3下段に示した動作模式図(b)は、本発明に係る化学蓄熱におけるバルブ操作の一例を示したものである。ここで、T_o/cは、化学蓄熱材4の温度変化を示しており、次に、P_o/cは、反応器2の内部の圧力変化を示している。又、Valveは、バルブV1の動作を示している。
【0050】
バルブV1を閉口した状態で、熱媒体供給口8より供給された熱媒体により熱交換部5を介して化学蓄熱材4を加熱すると、熱媒体の温度を上限として化学蓄熱材4が加熱され、平衡状態となる。このとき、化学蓄熱材4の温度はThとなり、生成気体の蒸気圧はPhとなる。
次に、時間0において、バルブV1を開口すると、反応器2の内部の圧力がPまで低下し、それに伴い、化学蓄熱材4の温度もTHまで低下して平衡状態となる。ここで、バルブV1を再び閉口する。すると、反応器2の内部の圧力がPからPhに向かって再び上昇し、同時に、化学蓄熱材4の温度も、熱交換器5から供給された熱媒体に由来する温度であるThに向かって再び上昇する。反応器2の内部の圧力がPhに到達後、あるいは、化学蓄熱材4の温度がThに到達後、再びバルブV1を開口すると、圧力はPまで減少し、温度はTHまで下降することとなる。これらのバルブV1の開閉操作を少なくとも1回以上繰り返すこととなる。これにより、反応器2の内部の圧力が外部の圧力よりも高い状態で反応器2を開口するため、反応媒体の流出が促進される。また、化学蓄熱材4の温度を高温状態で維持できるため、蓄熱反応を促進することが可能となる。
【0051】
化学蓄熱が十分に進行すると、生成気体が生成されなくなり、反応器2の内部の圧力は次第に上昇しなくなっていく。そのため、時間当たりの圧力の上昇が小さくなる。十分な化学蓄熱の進行があった時点で、バルブV1の開閉操作を中止し、バルブV1を開口し、最後まで蓄熱反応を行う。蓄熱反応の終了は、反応器2の温度が上限値Thまで上昇することにより判断される。
【0052】
次に、図5のフローチャート(b)を用いて、同様に本発明のバルブ操作の制御について説明する。まず、化学蓄熱材4の加熱を開始した後、化学蓄熱材4の温度が上限値に達した否かについて確認する。上限値に達した場合は、バルブV1を開放し、他方、上限値に達しない場合には、温度が上限値に達するまで、前記ループを繰り返すこととなる。ここで、上限値とは、使用した熱媒体に由来する温度であり、本態様においてはThである。
バルブV1を開口した後、反応器2の圧力下限値に達したか否かについて確認する。反応器2の圧力が下限値に達していない場合には、下限値に達するまで、前記のループを繰り返すこととなる。
【0053】
一方、反応器2の圧力が下限値に達した場合は、化学蓄熱材4の温度は、上限値のまま維持されているか否かを確認する。即ち、バルブV1が開口状態においても化学蓄熱材4の温度が上限値、即ち、Thである場合には、化学蓄熱材4から反応媒体が発生していない状態であるとして、蓄熱反応が終了していると判断する。そして、バルブV1を閉口し、加熱を終了させ、化学蓄熱を終了させる。
【0054】
化学蓄熱材4の温度が低下し、上限値のまま維持されていない場合には、バルブV1を閉口し、化学蓄熱材4の温度を上限値まで上昇させ、バルブV1が開口した際に、圧力が下限値であり、かつ、化学蓄熱材4の温度が上限値のまま維持されるまで、当該ループを繰り返すこととなる。
従って、化学蓄熱材4の温度がThとTHの間の温度を往復しながら化学蓄熱が進行していくこととなる。
【0055】
なお、化学蓄熱材4の温度が上限値に達したか否か、及び反応器2の圧力値が下限値に達したか否かの判断は、それぞれ温度と圧力の変化量ΔTとΔPを算出し、当該微小変化量がほぼ0に達した時点で上限値、又は下限値に達したこととしてもよい。又は、最大変化量から事前に規定した割合以下(例えば5%以下)に変化量が減少した時点を上限値、又は、下限値にそれぞれ達したこととしてもよい。化学蓄熱の態様に基づいて、事前に反応器2の温度の上限値、圧力の下限値を設定しておくこともできる。
【0056】
また、第一の実施態様では、バルブV1の開閉の制御の判断を、化学蓄熱材4の温度及び反応器2の圧力の上限値と下限値に基づいて行っているが、上限値と下限値の間のどの値に基づいて判断を行ってもよい。
さらには、化学蓄熱材4の温度に代えて、反応器2の温度値や熱媒体の温度の変化量など、反応器2の内部の温度状況を表すもので制御することもできる。
【0057】
バルブV1を開口、又は、閉口する時間、回数、及びタイミングは、本発明の効果を奏する限り限定はされない。例えば、化学蓄熱材4の種類や化学蓄熱の態様、熱媒体から提供される反応温度、反応時の圧力、又は実施する規模等によって適宜変更が可能である。例えば、バルブV1を閉口するタイミングは、温度がThからTHとなると同時よいとしてもよく、THとなる前のタイミングでもよいし、THとなってから一定時間経過後としてもよい。
【0058】
化学蓄熱の進行時のより具体的なバルブV1を開閉するタイミングは、化学蓄熱材4の温度値、反応器2の温度値、反応器2の圧力値、化学蓄熱材4に熱を提供する熱媒体の温度の変化量を測定し、これらに基づいて決定してもよい。ここで、反応器の温度値とは、反応器内部の温度を直接測定してもよいし、バルブV1近傍の反応器側の流路内の生成気体の温度を測定することとしてもよい。この測定値に基づき、化学蓄熱材4の温度を算出することとしてもよい。また、反応器の圧力値においても、反応器2の内部の圧力を直接測定してもよいし、バルブV1近傍の反応器側の圧力値を測定することとしてもよい。これらの測定値に基づき、化学蓄熱材の反応温度が決まるため、化学蓄熱の進行について判断することができる。
【0059】
化学蓄熱終了後には、熱媒体供給口8及び熱媒体排出口9を閉口して、熱媒体の流通を停止する。次に、バルブV1を閉じた状態で、反応器2を常温まで低下させる。常温まで低下させる手段としては、そのまま化学蓄熱装置1aを放置して放熱してもよいし、熱交換部5に冷却水を供給してもよい。反応器2が高温の間にバルブV1を閉口し、密閉状態で常温まで低下することにより、温度低下時の内圧の降下による外部気体の流入を防止できる。また、反応器2を密閉状態とすることにより、反応器2の内圧が低下した状態となるため、放熱時における内圧を低下する操作を短縮化することができる。
【0060】
(タイマーによるバルブ開閉の制御)
また、予め設定したタイムテーブルに従い、バルブV1及びV2の開閉を自動的に実施するよう構成してもよい。即ち、上記のように蓄熱時に化学蓄熱の進行に合わせてバルブ開閉の制御を逐一行う態様ではなく、化学蓄熱に係る、熱媒体の態様や温度、化学蓄熱材4の種類、及び平衡反応の態様、化学蓄熱装置1aの規模、並びに化学蓄熱装置1aの耐圧及び耐熱性能等に基づき、バルブ開閉のタイムテーブルを予め設定し、実施するものである。
【0061】
[蓄熱装置のその他の態様]
以下に、化学蓄熱装置1の別の態様について例示する。
〔第二の実施態様〕
図6は、本発明の第二の実施態様の化学蓄熱装置1bの構造を示す概略説明図である。
この化学蓄熱装置1bは、第一の実施態様の化学蓄熱装置1aにおいて、バルブV1の開閉を制御する制御部20を設けたものである。制御部20は、化学蓄熱材の温度値、反応器の温度値、反応器の圧力値、化学蓄熱材4に熱を供給する熱媒体の温度の変化量等に基づいて、自動的にバルブV1の開閉を制御するものである。この化学蓄熱装置1bによれば、作業員などによる化学蓄熱、又は放熱時における監視及び、バルブ操作の必要がなく、確実かつ容易に化学蓄熱の進行の管理が可能な化学蓄熱装置を提供することができる。
【0062】
〔第三の実施態様〕
図7は、本発明の第三の実施態様の化学蓄熱装置1cの構造を示す概略説明図である。
この化学蓄熱装置1cは、第一の実施態様の化学蓄熱装置1aにおいて、凝縮器3と連通部7を除し、開口部6を外部と連通したものである。そのため、化学蓄熱装置1cでは、蓄熱時に発生した反応媒体を凝縮器3に回収せずに、大気中に放出する。また、開口部6には、開閉可能なバルブV4が設けられており、第一の実施態様及び第二の実施態様のバルブV1と同様に、バルブV4の開閉を制御することにより、本発明の効果を奏する。
【0063】
第三の実施態様の化学蓄熱装置1cによれば、凝縮器3を有しないので、簡素な装置構成により本発明の化学蓄熱装置を構成することができる。そのため、装置のコンパクト化、輸送コストの低下等の利点がある。
【0064】
なお、上述した実施態様は化学蓄熱装置の一例を示すものである。本発明に係る化学蓄熱装置は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る化学蓄熱装置を変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の化学蓄熱装置の用途は、工場やごみ焼却場等から発生する排熱を有効利用する方法に利用される。例えば、排熱が発生する熱供給地において本発明の化学蓄熱装置を蓄熱し、熱が必要な熱需要地に化学蓄熱装置を輸送して放熱する方法に利用する。また、昼に蓄熱して、夜に放熱するというように、同一の設置場所において、排熱が発生する時間帯に蓄熱して、熱が要求される時間帯に放熱する方法に利用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1a,1b,1c…化学蓄熱装置、2…反応器、3…凝縮器、4…化学蓄熱材、5…熱交換部、6…開口部、7…連通部、8…熱媒体供給口、9…熱媒体排出口、10…液体状態の反応媒体、20…制御部、V1,V2,V3,V4…バルブ、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7