(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】一体型光ファイバを有するガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
A61M25/09
A61M25/09 500
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019148378
(22)【出願日】2019-08-13
【審査請求日】2022-06-17
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0112128(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0009806(US,A1)
【文献】特表2018-516623(JP,A)
【文献】特表2011-505893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体型ガイドワイヤであって、
患者の解剖学的物質輸送系内で移動するような大きさ及び形状である、ワイヤと、
近位端及び遠位端を有する光ファイバであって、前記近位端が、前記患者の外部の装置に連結されており、前記光ファイバが、前記遠位端と前記装置との間で光信号を伝達するように構成されており、前記ワイヤ及び前記光ファイバが、互いに絡み合っている、光ファイバと、を備え、
前記患者の器官内の流体を移送するように構成された可撓性チューブを更に備え、前記可撓性チューブが、前記ワイヤ及び前記光ファイバと絡み合っており、前記可撓性チューブの第1の遠位端は、前記患者の器官内に配置され、前記可撓性チューブの第1の近位端は、ポンプに連結され、前記患者の器官内の前記流体が、前記可撓性チューブの前記第1の遠位端から前記可撓性チューブ内に入り、前記可撓性チューブの前記第1の近位端から排出されるようになっている、一体型ガイドワイヤ。
【請求項2】
流体リザーバに連結された第2の近位端、及び、前記患者の器官内に配置される第2の遠位端を有する第2の可撓性チューブを更に備え、前記流体リザーバ内の第2の流体を前記第2の可撓性チューブを介して、前記患者の器官内に移動することができるようになっている、請求項1に記載の一体型ガイドワイヤ。
【請求項3】
前記光ファイバにより、前記患者の器官内の状態を調べ、その後に、前記可撓性チューブにより、前記患者の器官内の前記流体を排出できるようになっている、請求項1に記載の一体型ガイドワイヤ。
【請求項4】
前記ワイヤ及び前記光ファイバが、前記遠位端と前記近位端との間に位置するか又は前記遠位端及び前記近位端に位置する1つ又は2つ以上の連結点において互いに直接固定されている、請求項1に記載の一体型ガイドワイヤ。
【請求項5】
前記患者の器官から反射された光信号を受信するように、かつ前記反射された光信号を使用して前記患者の器官の画像を生成するように構成された画像センサを備える、請求項1に記載の一体型ガイドワイヤ。
【請求項6】
前記絡み合ったワイヤ及び前記光ファイバが、前記遠位端と前記近位端との間で、前記一体型ガイドワイヤの軸の周囲に複数の巻線を有する、請求項1に記載の一体型ガイドワイヤ。
【請求項7】
前記巻線の数が、前記一体型ガイドワイヤの剛性及び可撓性レベルを決める、請求項6に記載の一体型ガイドワイヤ。
【請求項8】
前記巻線が、前記遠位端と前記近位端との間で均等に分布されている、請求項6に記載の一体型ガイドワイヤ。
【請求項9】
前記巻線が、前記遠位端と前記近位端との間で不均等に分布されている、請求項6に記載の一体型ガイドワイヤ。
【請求項10】
追加の光ファイバを備え、前記追加の光ファイバが、前記ワイヤ及び前記光ファイバと絡み合っている、請求項1に記載の一体型ガイドワイヤ。
【請求項11】
前記解剖学的物質輸送系が、脈管系、耳鼻咽喉(ENT)系、及び神経系からなるリストから選択される前記患者の解剖学的システムを含む、請求項1に記載の一体型ガイドワイヤ。
【請求項12】
一体型ガイドワイヤを製造するための方法であって、
患者の解剖学的物質輸送系内で移動するような大きさ及び形状であるワイヤを提供することと、
前記ワイヤ、光ファイバ、及び、前記患者の器官内の流体を移送するように構成された可撓性チューブを互いに絡み合わせることと、
を含み、
前記可撓性チューブの第1の遠位端は、前記患者の器官内に配置され、前記可撓性チューブの第1の近位端は、ポンプに連結され、前記患者の器官内の前記流体が、前記可撓性チューブの前記第1の遠位端から前記可撓性チューブ内に入り、前記可撓性チューブの前記第1の近位端から排出されるようになっている、方法。
【請求項13】
流体リザーバに連結された第2の近位端、及び、前記患者の器官内に配置される第2の遠位端を有する第2の可撓性チューブを、前記ワイヤ、前記光ファイバ、及び、前記可撓性チューブ
と絡み合わせ、
前記流体リザーバ内の第2の流体を前記第2の可撓性チューブを介して、前記患者の器官内に移動することができるようになっている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記光ファイバにより、前記患者の器官内の状態を調べ、その後に、前記可撓性チューブにより、前記患者の器官内の前記流体を排出できるようになっている、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ワイヤ、前記光ファイバ、及び、前記可撓性チューブを絡み合わせることが、前記光ファイバの遠位端と近位端との間に位置するか又は前記遠位端及び前記近位端に位置する1つ又は2つ以上の連結点において、前記ワイヤと前記光ファイバとを互いに連結することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記患者の器官から反射された光信号を受信するため、かつ前記反射された光信号を使用して前記患者の器官の画像を生成するための画像センサを、前記光ファイバに連結することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記ワイヤ及び前記光ファイバを絡み合わせることが、前記光ファイバの遠位端と近位端との間で、前記一体型ガイドワイヤの軸の周囲に複数の巻線を形成することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の巻線を形成することが、前記巻線の数により、前記一体型ガイドワイヤの剛性及び可撓性レベルを決めることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の巻線を形成することが、前記遠位端と前記近位端との間で均等に前記巻線を分布させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の巻線を形成することが、前記遠位端と前記近位端との間で不均等に前記巻線を分布させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記ワイヤ、前記光ファイバ、及び、前記可撓性チューブを絡み合わせることが、前記ワイヤ及び前記光ファイバと共に、追加の光ファイバ及び可撓性チューブのうちの少なくとも1つを絡み合わせることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記ワイヤが、脈管系、耳鼻咽喉(ENT)系、及び神経系からなるリストから選択される前記患者の解剖学的システム内で移動するような大きさ及び形状である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療用装置に関し、特に、一体型ガイドワイヤを製造するための方法及びシステム、並びに医療処置においてこれらのガイドワイヤを適用するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガイドワイヤは、神経学、心臓学、及びサイナプラスティなどの様々な医療用途に使用される。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2003/0181894号は、再狭窄を防止して血管形成術を効率化するための装置及び方法を記載している。この装置及び方法は、光ファイバガイドワイヤ、又は代替的に導光カテーテルを提供して、血管形成装置の寸法を減少させ、手術時間全体を減少させ、手術の安全性を高める。
【0004】
米国特許第5,441,497号は、医学的状態の診断及び治療のために、血管などの管腔表面に光を照射する能力を有する光拡散ガイドワイヤを記載している。ガイドワイヤは、近位端と遠位(侵襲)端とを有する細長い本体部分を有する。本体部分の一部は、近位端から遠位端付近の本体部分内の光拡散素子へ光を伝送する。
【0005】
米国特許出願公開第2006/0074442号は、閉塞性物質を除去し、体腔内の閉塞及び他の物質を通過するために、偏向可能かつトルク付与可能な中空ガイドワイヤ装置を記載している。中空ガイドワイヤは、一般に、軸方向内腔を有する細長い管状ガイドワイヤ本体を備える。機械的に移動するコア要素が、管状ガイドワイヤ本体の遠位端又はその付近に位置付けられており、軸方向内腔を通って伸長する。
【0006】
米国特許第5,372,587号は、横方向に偏向可能な遠位先端を有する、細長い可撓性管状本体を備える操舵可能な管状シースを記載している。先端の横方向の偏向は、ハウジングを通って伸長する少なくとも1つのプルワイヤの軸方向の変位によって達成される。ハウジングは、医療用具、光ファイバ、灌注又は薬物送達用などの流体の吸引又は伝送を受容するために、ハウジングを通って軸方向に伸長する少なくとも1つの中央内腔を備える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で説明する本発明の一実施形態は、ワイヤ及び光ファイバを含む一体型ガイドワイヤを提供する。ワイヤは、患者の解剖学的物質輸送系内で移動するような大きさ及び形状である。光ファイバは、近位端及び遠位端を有し、近位端は、患者の外部の装置に連結されており、光ファイバは、遠位端と装置との間で光信号を伝達するように構成されており、ワイヤ及び光ファイバは、互いに絡み合っている。
【0008】
いくつかの実施形態では、ワイヤ及び光ファイバは、遠位端と近位端との間に位置するか又は遠位端及び近位端に位置する1つ又は2つ以上の連結点において互いに直接固定されている。他の実施形態では、一体型ガイドワイヤは、患者の器官から反射された光信号を受信するように、かつ反射された光信号を使用して器官の画像を生成するように構成された画像センサを含む。更に他の実施形態では、絡み合ったワイヤ及び光ファイバは、遠位端と近位端との間で、一体型ガイドワイヤの軸の周囲に複数の巻線を有する。
【0009】
一実施形態では、巻線の数は、一体型ガイドワイヤの剛性及び可撓性レベルを決める。別の実施形態では、巻線は、遠位端と近位端との間で均等に分布されている。更に別の実施形態では、巻線は、遠位端と近位端との間で不均等に分布されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、一体型ガイドワイヤは、追加の光ファイバ及び遠位端と近位端との間で流体を移送するように構成された可撓性チューブのうちの少なくとも1つを含み、追加の光ファイバ及び可撓性チューブのうちの少なくとも1つは、ワイヤ及び光ファイバと絡み合っている。他の実施形態では、解剖学的物質輸送系は、脈管系、耳鼻咽喉(ENT)系、及び神経系からなるリストから選択される患者の解剖学的システムを含む。
【0011】
本発明の一実施形態に従って、患者の解剖学的物質輸送系に一体型ガイドワイヤを挿入することを含む方法が更に提供され、この一体型ガイドワイヤは、(i)解剖学的物質輸送系内で移動するような大きさ及び形状である、ワイヤと、(ii)近位端及び遠位端を有する光ファイバであって、近位端が、患者の外部の装置に連結されており、光ファイバが、遠位端と装置との間で光信号を伝達するように構成されており、ワイヤ及び光ファイバが、互いに絡み合っている、光ファイバと、を含む。解剖学的情報は、遠位端と装置との間で光信号を伝達することによって患者から取得される。
【0012】
本発明の一実施形態に従って、一体型ガイドワイヤを製造するための方法が更に提供され、この方法は、患者の解剖学的物質輸送系内で移動するような大きさ及び形状であるワイヤを提供することを含む。ワイヤ及び光ファイバは、互いに絡み合っている。
【0013】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による、サイナプラスティ外科用システムの概略的な絵画図である。
【
図2A】本発明の一実施形態による、一体型ガイドワイヤの概略的な絵画図である。
【
図2B】本発明の一実施形態による、一体型ガイドワイヤの概略的な絵画図である。
【
図2C】本発明の一実施形態による、一体型ガイドワイヤの概略的な絵画図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、医療処置に一体型ガイドワイヤを適用するための方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態による、一体型ガイドワイヤの製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
以下に記載する本発明の実施形態は、光ファイバ及び/又は流体移送チューブなどの1つ又は2つ以上の移送装置を備える一体型ガイドワイヤを製造及び適用するための改善された方法及びシステムを提供する。
【0016】
原則として、光ファイバは、チューブ内に螺旋をレーザ切削し(チューブを可撓性にするために)、チューブを通して光ファイバを供給することなどによって、様々な方法を使用してガイドワイヤに一体化され得る。別の可能な方法では、ワイヤ内に螺旋溝を切削するためにレーザを利用することができ、溝内には光ファイバが入る。しかしながら、これらの方法はコストがかかり、大量生産(HVM)に適用することは困難である。更に、いくつかの医療処置は、患者の体の狭い管腔(例えば、脳内血管)から流体を排出させるか、又はそこに流体を投与することを必要とする。このような処置は、ガイドワイヤを使用して実施することができるが、一体型チューブを有するガイドワイヤは製造が困難である。
【0017】
本発明の実施形態は、ワイヤと、(i)光ファイバ及び(ii)可撓性チューブのうちの少なくとも1つとを互いに絡み合わせることによって、このような一体型ガイドワイヤを製造するための改善された技術を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、一体型ガイドワイヤは、脳の血管系内又は患者の耳鼻咽喉(ENT)系内などの、患者の解剖学的物質輸送系内で移動するような大きさ及び形状である、ワイヤを備える。いくつかの実施形態では、一体型ガイドワイヤは、光ファイバ及び可撓性チューブなどの1つ又は2つ以上の移送装置を更に備える。
【0019】
移送装置の近位端は、典型的には患者の体外に留まる装置に連結されており、一方で移送装置の遠位端は、患者の体内に挿入される。いくつかの実施形態では、光ファイバは、遠位端と外部装置との間で光信号を伝達するように構成されており、可撓性チューブは、遠位端と外部装置との間で流体及び異物を移送するように構成されている。一実施形態では、ワイヤ及び1つ又は2つ以上の移送装置は、互いに絡み合っている。
【0020】
いくつかの実施形態では、可撓性チューブは、患者の体外の流体リザーバに連結され、流体をリザーバから問題の器官に移送するように構成されていてもよい。他の実施形態では、可撓性チューブは、流体及び異物を患者の体外に排出するように構成されたポンプに連結されてもよい。
【0021】
例示的な実施形態では、医師は、互いに絡み合っているワイヤ、光ファイバ、及び可撓性チューブを備える一体型ガイドワイヤを、患者の脳に挿入することができる。医師は、一体型ガイドワイヤを、凝固していることが疑われる位置に脳血管系を通してナビゲートすることができる。この実施形態では、医師は、一体型ガイドワイヤを血塊に極めて接近させ、光ファイバを使用して血塊を照射することによって、血塊を調べることができる。この調査で収集された情報に基づいて、医師は、(i)患者の脳から血塊を排出させるために、若しくは(ii)リザーバから物質を投与することによって血塊を溶解するために、又は患者の脳の血塊を灌注すること及び/又は灌注及び吸引の組み合わせなどの、任意の他の好適な技術を使用するために、可撓性チューブを適用してもよい。
【0022】
別の実施形態では、医師は、異なる種類の2つの一体型ガイドワイヤ、例えば、絡み合ったワイヤ及び光ファイバを備える診断用ガイドワイヤと、絡み合ったワイヤ及び可撓性チューブを備える治療用ガイドワイヤとを、順次適用してもよい。この実施形態では、医師はまず、血塊を調べるために診断用ガイドワイヤを適用し、次いで診断用ガイドワイヤを引き出して、上記のような血塊の治療のために治療用ガイドワイヤを挿入してもよい。
【0023】
開示される技術は、ワイヤと少なくとも光ファイバ及び/又は可撓性チューブとの一体化を可能にすることによって、診断及び治療手順を実施するための一体型ガイドワイヤの機能性を改善する。更に、これらの技術は、複雑さを低減し、したがってこのような一体型ガイドワイヤの製造コストを低減する。
【0024】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、外科システム20を使用するサイナプラスティ手術の概略的な絵画図である。
図1の例では、システム20はカテーテル28を備え、医師24は、患者22の1つ又は2つ以上の副鼻腔における感染など、耳鼻咽喉(ENT)の疾患を治療するために、このカテーテル28を患者22の鼻部26の中に挿入する。他の実施形態では、システム20は、患者の脳又は他の器官内の血塊の診断及び治療などの、他の医療処置に使用されてもよい。追加的に又は代替的に、システム20は、患者22の器官又は解剖学的物質輸送系に物質を投与するか、若しくはそこから物質を吸引するために、又は患者22の器官又は解剖学的物質輸送系を灌注するために使用されてもよい。
【0025】
ここで、患者22のENT系の前側の解剖学的画像を示す挿入
図40を参照する。患者22のENT系は、前頭洞42と上顎洞46とを含んでいる。小孔44及び48は鼻部(図示せず)の空洞と副鼻腔42及び46との間をそれぞれ接続している。カテーテル28は、遠位端38を有する一体型ガイドワイヤ29を備えている。本発明の文脈において、「一体型ガイドワイヤ」という用語は、簡潔にするために以下で単に「ガイドワイヤ」とも称される。一実施形態では、遠位端38の先端は、ガイドワイヤ29の残りの末端区分55の末端に取り付けられた位置センサ56を備え得る。
【0026】
カテーテル28は膨張式バルーン50を更に備え、この膨張式バルーン50は、2つの状態、例えば、展開(膨張)状態と圧縮状態とに構成され得る。バルーン50が圧縮状態にあるとき、カテーテルは目標ロケーションへとナビゲートされ得る。バルーンは次いで、患者22のENT系における目標ロケーション(例えば、小孔44)にカテーテル28を係留するために、好適な流体(例えば食塩水)を用いて展開状態へと膨張される。
【0027】
カテーテル28はハンドル30を更に備え、ハンドル30はカテーテル28の近位端に配置される。ハンドル30は、ガイドワイヤ29のナビゲーション及びガイドワイヤ29に沿ったバルーン50の運動を制御するように構成されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、システム20は、テーブル31上に横になっている患者22の外部の既知の位置に配置されたロケーションパッド60を更に備え、パッド60は、フレーム66上に固定された磁場発生器64を備える。
図1に示される例示的な構成では、パッド60は、5つの磁場発生器64を備えるが、代替的に、任意の他の好適な数の磁場発生器64を備えてもよい。パッド60は、磁場発生器64が頭部41の外部の固定された既知の位置に位置するように、患者22の頭部41の下に配置された枕(図示せず)を更に備える。
【0029】
いくつかの実施形態では、システム20は、コンソール33を備え、コンソール33は、頭部41の周囲の空間内の既定の作業体積内に磁場を発生させるためにケーブル37を介して好適な信号で磁場発生器64を駆動するよう構成された駆動回路62を備える。いくつかの実施形態では、コンソール33は、プロセッサ34、典型的には汎用コンピュータを含み、これは、ケーブル32を介して、カテーテル28から信号を受信するための好適なフロントエンド及びインターフェース回路を含む。コンソール33は、入力デバイス39と表示装置36とを更に備え、表示装置36は、プロセッサ34から受信されたデータ(例えば、画像)又はユーザ(例えば、医師24)によって挿入された入力を表示するように構成されている。一実施形態では、位置センサ56の位置は、典型的には、システム20に備えられたカテーテル位置追跡システムの磁気位置検知によって測定される。
【0030】
この位置検知方法は、様々な医療用途において、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)により製造されているCARTO(商標)システムにおいて実施されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号及び同第2004/0068178(A1)号に詳述されており、これらの開示は全て、参照により本明細書に組み込まれている。
【0031】
いくつかの実施形態では、システム20は、コンソール33内又はハンドル30内などのシステム20の好適な装置内に配置され得る光源(図示せず)と、遠位端38上に取り付けられ得る画像センサ(図示せず)とを備える、光モジュールを備えてもよい。いくつかの実施形態では、光源及び画像センサは、以下の
図2A、
図2B、及び
図2Cに示す光ファイバなどの光伝送装置を介して互いに光学的に連結されている。
【0032】
他の実施形態では、システム20は、器官を灌注するための灌注流体などの医療用流体、又は患者22の器官内の感染症若しくは腫瘍を治療するためのいくつかの物質で充填された流体リザーバ(図示せず)を備える、流体分配モジュールを備えてもよい。リザーバは、コンソール33内若しくはハンドル30内などのシステム20の任意の好適な装置内、又は別個の流体タンク内に配置されてもよい。
【0033】
一実施形態では、流体は、以下の
図2A、
図2B、及び
図2Cに示す可撓性チューブなどの流体移送装置を介してリザーバから遠位端38に移送され、遠位端38に形成された流体分配孔(図示せず)を通って標的器官に配送され得る。いくつかの実施形態では、流体移送装置は、1つ又は2つ以上の開口部、例えば、灌注孔(図示せず)を有する可撓性灌注チューブを備えてもよい。可撓性灌注チューブは、灌注孔を介して、リザーバから問題の器官に灌注流体を移送するように構成されている。他の実施形態では、流体移送装置は、問題の器官内の感染症又は腫瘍を治療するために、薬物などの液体物質を移送するように構成されている。
【0034】
代替的な実施形態では、システム20は、吸引ポンプ(図示せず)を備える物質排出モジュール(図示せず)を備えてもよく、この吸引ポンプは、物質を患者22の器官から流体移送装置を介して、例えば、患者22の外部に位置するシンク(図示せず)内に圧送するように構成されている。
【0035】
サイナプラスティ手術の間、医師24は、副鼻腔42の中へとガイドワイヤ29の先端をナビゲートする。場合によっては、例えば、副鼻腔内の感染を治療するとき、医師が、例えば小孔44内でバルーン50を膨張させることによって、カテーテルの遠位先端を係留することが重要である。一実施形態では、バルーン50は、Acclarent Inc.(カタログ番号RSP0516MFS)によって製造されているサイナプラスティバルーンなどのように、16mm長であってよく、また5mmの直径を有してもよいが、他の寸法を有する更に他の任意の好適なバルーンが、開示される技法で使用されてもよい。
【0036】
ENT系の中に遠位端38を挿入した後、医師36は小孔44にバルーン50をナビゲートする。通常、バルーン50は位置センサを備えておらず、そうでなくても表示装置36上に撮像されないことに留意されたい。安全にかつ効率的に治療を実施するためには、小孔44内でバルーン50を正確に位置決めすることが重要である。例えば、鼻腔内で小孔44の手前にバルーン50を位置決めすると、医師が副鼻腔42内に末端区分55を係留できないことがあるのに対し、副鼻腔42内で小孔44より奥にバルーンを位置決めすると、医師がその中の感染を治療する妨げになり得る。
【0037】
図1の例では、バルーン50は、副鼻腔42内に末端区分55を係留するために使用されている。別の実施形態では、バルーン50の代わりに、任意の他の好適なデバイスが、開示する技法を用いて位置決めされ得る。そのようなデバイスは、例えば、末端区分を係留するための又は任意の他の診断若しくは治療を目的とした、代替的な係留デバイスを含んでもよい。例えば、バルーンは、肺静脈(Pulmonary Vein、PV)隔離術において肺静脈における心不整脈を治療するために使用されてもよい。他の用途では、上記で説明した技法を用いて、薬物分配デバイス又はステントがヒトの器官内の特定のロケーションにナビゲートされ得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、医師24が小孔44内でバルーン50を正確に位置決めすることを補助するように構成される。
図1は、簡潔性かつ明瞭性のため、開示技法に関連する要素のみを示す。システム20は、典型的に、開示技法に直接には関連せず、したがって
図1及び対応する説明から意図的に省略されている付加的なモジュール及び要素を備える。
【0039】
プロセッサ34は、システムによって使用される機能を実行するように、かつソフトウェアによって処理されるか、又は別様に使用されるデータをメモリ(図示せず)に記憶するように、ソフトウェアでプログラムされ得る。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でプロセッサにダウンロードされてもよく、又は代替的若しくは追加的に、光学的、磁気的、若しくは電子的メモリ媒体などの非一時的な有形媒体上に提供されてもよい。あるいは、プロセッサ34の機能の一部又は全ては、専用の構成要素又はプログラマブルデジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、カテーテル28及びガイドワイヤ29は、限定されるものではないが、脈管系、ENT系、神経系、及び患者の心臓などの様々な人体解剖学的システムに医療処置を適用するのに使用され得る。例示的な実施形態では、ガイドワイヤ29は、以下に詳述するように、患者22の脳内血管の内腔を照射して脳内の血塊若しくは血管内の裂傷を調べるために、又は患者22の任意の器官若しくは物質輸送系における任意の他の診断若しくは治療の目的のために使用され得る、光ファイバ(以下の
図2に示す)を備えてもよい。別の例示的な実施形態では、ガイドワイヤ29は、患者22の器官を灌注するために(例えば、アブレーション中に器官を冷却するために)、又は患者22の器官内に物質を投与するために(例えば、感染症若しくは腫瘍を治療するために)、又は患者の器官から除去されるべきいくつかの物質を吸引するために使用され得る、可撓性チューブ(以下の
図2に示す)を備えてもよい。
【0041】
光ファイバ及び/又は可撓性チューブを備える一体型ガイドワイヤ
図2Aは、本発明の一実施形態による、一体型ガイドワイヤ65の概略的な絵画図である。ガイドワイヤ65は、例えば、上記の
図1のガイドワイヤ29と置換し得る。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ65は、患者22の解剖学的物質輸送系内で移動するような大きさ及び形状である、ワイヤ70を備える。輸送系は、
図1の例に示されるENT系の小孔44及び48並びに副鼻腔42及び46、又は心臓(図示せず)と脳などの患者22の任意の器官との間を接続する血管を含み得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、ワイヤ70は、ニッケル-チタン、ステンレス鋼、チタン、ニッケルの合金などの任意の好適な生体適合性材料から、又は金、若しくは白金から作製される。他の実施形態では、ワイヤ70は、2つ以上の部分から作製され、そのうちの1つは、任意の好適な材料から作製され、生体適合性材料で被覆された、コアを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ65は、ワイヤ70及び移送装置72が互いに絡み合うように、近位端73及び遠位端71を有する移送装置72を備える。
図2Aの構成では、ワイヤ70は、真っ直ぐに配置され、ガイドワイヤ65の長手方向軸78と整列しており、一方で移送装置72は、軸78の周囲に巻き付けられ、ワイヤ70の外側表面に連結されている。いくつかの実施形態では、移送装置72は、光源(図示せず)に連結された光ファイバを備えてもよく、光源と遠位端71との間で光信号を伝達するように構成されている。
【0044】
例示的な実施形態では、医師24は、患者の脳の血管内でガイドワイヤ65を移動させて、遠位端71を脳内の血塊に隣接させるために、ハンドル30を利用することができる。この実施形態では、光ファイバは、脳及び血塊の区域を照射するように、光源から遠位端に向けて光を伝送し、更に血塊及び脳の区域における解剖学的情報を取得するように、脳及び血塊によって反射された光を、上記の
図1に記載したような近位端の画像センサに伝送する。
【0045】
別の実施形態では、移送装置72は、上記の
図1に記載した流体リザーバに連結された可撓性チューブを備えてもよく、リザーバと遠位端71との間で流体を移送するように構成されている。一実施形態では、流体の移送は、例えば、アブレーション処置中に器官を灌注するために使用され得る。あるいは、可撓性チューブは、上記のように感染症又は腫瘍を治療するために、リザーバから患者22の器官に薬剤を投与するために使用され得る。
【0046】
代替的な実施形態では、移送装置72は、上記の可撓性チューブを備えてもよく、可撓性チューブは、ポンプに連結され、感染部又は任意の望ましくない物質などの物質を患者22の体から排出するように構成されている。これらの実施形態では、可撓性チューブの遠位端71は、問題の器官内に配置され、近位端73は、上記の
図1に記載したポンプ及びシンクに連結されている。
【0047】
いくつかの実施形態では、一体型ガイドワイヤ65の製造時に、移送装置72がワイヤ70の周囲に巻き付けられ、それによって既定のピッチ寸法を有する巻線74及び76などの複数の巻線を形成する。ピッチ寸法及び巻線の数は、一体型ガイドワイヤ65の可撓性と剛性との所望のトレードオフを得るように変更され得ることが理解されるであろう。
図2Aの例示的な実施形態では、一体型ガイドワイヤ65は、ワイヤ70の周囲に移送装置72の8個の巻線を含む。別の実施形態では、ガイドワイヤは、
図2Aの例示的な実施形態と比較してより低い剛性とより高い可撓性とをもたらす、5個の巻線のみを含んでもよい。換言すれば、ピッチ寸法が小さいと、一体型ガイドワイヤの剛性が高くなり、可撓性が低くなる。
【0048】
ピッチ寸法は、均一であってもよく、又は一体型ガイドワイヤに沿って異なるレベルの剛性及び可撓性を得るように、一体型ガイドワイヤに沿って変化してもよいことに留意されたい。
【0049】
いくつかの実施形態では、移送装置72及びワイヤ70は、典型的には遠位端71及び近位端73を含む、一体型ガイドワイヤ65に沿って選択された位置で、互いに固定されている。例えば、移送装置72及びワイヤ70は、遠位端71と近位端73との間に位置する少なくとも1つの連結点で互いに連結され得る。本発明の文脈において、「固定される」という用語は、接着又ははんだ付けなどの任意の好適な連結技術を使用して、移送装置72とワイヤ70との間を連結することを指す。いくつかの実施形態では、装置72とワイヤ70との間の固定に使用される材料は、典型的には生体適合性であるか、又は固定処理後に生体材料で被覆される。
【0050】
一体型ガイドワイヤ65の様々な構成は、単に例として示される。代替的な実施形態では、ガイドワイヤ65は、任意の好適な巻線構成でワイヤ70の周囲に巻き付けられた任意の好適な数及び種類の移送装置を備えてもよい。例えば、一体型ガイドワイヤ65は、ワイヤ70の外側表面上に、軸78の周囲に絡み合った2つ以上の移送装置を備えてもよい。
【0051】
図2Bは、本発明の別の実施形態による、一体型ガイドワイヤ75の概略的な絵画図である。ガイドワイヤ75は、例えば、上記の
図1のガイドワイヤ29と置換し得る。いくつかの実施形態では、一体型ガイドワイヤ75は、ワイヤ80及び移送装置82が互いに絡み合うように、
図2Aのワイヤ70と同様の特性を有するワイヤ80と、近位端83及び遠位端81を有する移送装置82とを備える。
【0052】
図2Bの構成では、移送装置82は、真っ直ぐに配置され、ガイドワイヤ75の長手方向軸88と整列しており、一方でワイヤ80は、軸88の周囲に巻き付けられ、移送装置82の外側表面に連結されている。
【0053】
いくつかの実施形態では、移送装置82は、上記の
図1に記載した光源(図示せず)に連結された光ファイバを備えてもよく、また上記の
図2Aに記載したように、光源と遠位端81との間で光信号を伝達するように構成されている。
【0054】
別の実施形態では、移送装置82は、上記の
図1に記載した流体リザーバに連結された可撓性チューブを備えてもよい。可撓性チューブの形態では、移送装置82は、上記の
図2Aに記載したように、リザーバと遠位端81との間で灌注流体又は薬剤物質などの流体を移送するように構成されている。
【0055】
代替的な実施形態では、移送装置82は、可撓性チューブを備えてもよく、可撓性チューブは、ポンプに連結され、感染部又は任意の望ましくない物質などの物質を患者22の体から排出するように構成されている。これらの実施形態では、可撓性チューブの遠位端81は、問題の器官内に配置され、近位端83は、上記の
図1に記載したポンプ及びシンクに連結されている。
【0056】
いくつかの実施形態では、一体型ガイドワイヤ75の製造時に、ワイヤ80が移送装置82の周囲に巻き付けられ、それによって均一又は可変のピッチ寸法を有する巻線84及び86などの複数の巻線を形成する。これらの実施形態では、巻線は、遠位端81と近位端83との間で、一体型ガイドワイヤ75に沿って均等に分布されている。上記の
図2Aに記載したように、ピッチ寸法及び巻線の数は、一体型ガイドワイヤ75の各区分の可撓性及び剛性を決定するように軸88に沿って変化してもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、移送装置82及びワイヤ80は、上記の
図2Aに記載した技術を使用して互いに固定されている。
【0058】
図2Cは、本発明の別の実施形態による、一体型ガイドワイヤ85の概略的な絵画図である。ガイドワイヤ85は、例えば、上記の
図1のガイドワイヤ29と置換し得る。いくつかの実施形態では、一体型ガイドワイヤ85は、
図2Aのワイヤ70と同様の特性を有するワイヤ90と、近位端93及び遠位端91を有する移送装置92とを備える。
【0059】
一体型ガイドワイヤ85の製造時に、移送装置92及びワイヤ90は、ツイストペア構成のように互いに絡み合わされ、次いで上記の
図2Aに記載した固定技術を使用して互いに固定される。
【0060】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ85の製造時に、移送装置92及びワイヤ90は、一方の端部(例えば、近位端93)において恒久的又は一時的に互いに連結される。その後、装置92及びワイヤ90は、ワイヤ90及び移送装置92がいずれも真っ直ぐに配置されないように、ガイドワイヤ85の長手方向軸98の周囲で互いに対して編組される。
【0061】
ガイドワイヤ85を編組として成形した後、装置92及びワイヤ90は、上記の
図2Aに記載した技術を使用して、典型的には遠位端及び近位端で互いに恒久的に連結され得る。
【0062】
図2Cの例では、一体型ガイドワイヤ85は、ガイドワイヤ75のピッチ84よりも実質的に小さい均一のピッチ94を有し、ガイドワイヤ75の5mm当たり8個の巻線と比較して、ガイドワイヤ85では直線長さ5mm当たり13個の巻線を生じる。結果として、ガイドワイヤ85は、ワイヤ80及び90が実質的に同一であると仮定して、実質的に同一の移送装置82及び92を使用すると、ガイドワイヤ75と比較してより高い剛性とより低い可撓性とを有する。他の構成において、ピッチ94の寸法は、一体型ガイドワイヤ85の各区分で所望の剛性及び可撓性を得られるように、ガイドワイヤ85の軸98に沿って変化してもよいことに留意されたい。剛性を高めることが望ましい場合、ワイヤ90及び移送装置92のツイストペアは、任意の好適な固定技術、例えば、エポキシ、ポリウレタン、ステープル、又は圧着バンドを使用して直接固定されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、移送装置92は、上記の
図1に記載した光源(図示せず)に連結された光ファイバを備えてもよく、また上記の
図2Aに記載したように、光源と遠位端91との間で光信号を伝達するように構成されている。
【0064】
別の実施形態では、移送装置92は、上記の
図1に記載した流体リザーバに連結された可撓性チューブを備えてもよい。可撓性チューブの形態では、移送装置92は、上記の
図2Aに記載したように、リザーバと遠位端91との間で灌注流体又は薬剤物質などの流体を移送するように構成されている。
【0065】
代替的な実施形態では、移送装置92は、可撓性チューブを備えてもよく、可撓性チューブは、ポンプに連結され、感染部又は任意の望ましくない物質などの物質を患者22の体から排出するように構成されている。これらの実施形態では、可撓性チューブの遠位端91は、問題の器官内に配置され、近位端93は、上記の
図1に記載したポンプ及びシンクに連結されている。
【0066】
一体型ガイドワイヤ65、75、及び85の特定の構成は、本発明の実施形態によって対処される特定の問題を例示するため、及びシステム20などの医療システムの性能を向上させることにおけるこれらの実施形態の適用を実証するため、例として示される。
【0067】
しかしながら、本発明の実施形態は、この特定の種類の例示的な一体型ガイドワイヤに限定されるものではなく、本明細書に記載される原理は、他の種類の一体型ガイドワイヤにも同様に適用され得る。代替的な実施形態では、別の種類の一体型ガイドワイヤは、2つ以上の移送装置を備えてもよい。例示的な実施形態では、ガイドワイヤは、単一のワイヤと2つの可撓性チューブとを備えてもよく、第1のチューブは、問題の器官に流体を圧送するためのものであり、第2のチューブは、患者の体から物質を排出するためのものである。ワイヤ及び可撓性チューブは、上記の
図2A~
図2Cに記載した技術などの任意の好適な巻線技術を使用して、一体型ガイドワイヤの長手方向軸の周囲に巻き付けられ得る。この構成は、第1のチューブから流入する流体の流れを使用し、望ましくない物質と流入する流体との混合物を排出するために第2のチューブを使用して、患者の体から望ましくない物質を除去するために使用され得る。代替的な実施形態では、一体型ガイドワイヤは、光ファイバ及び吸引チューブを備えてもよく、例えば、それによって脳内の血塊を調べ、医学的に適用可能であれば、その後に吸引チューブを使用して血塊を脳から排出させる。
【0068】
他の実施形態では、一体型ガイドワイヤは、1つ又は2つ以上の光ファイバ、及び/又は1つ又は2つ以上の可撓性チューブ、及び/又は任意の他の1つ又は2つ以上の好適な種類の移送装置と共に軸の周囲に巻き付けられた、1つ又は2つ以上のワイヤの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0069】
図3は、本発明の一実施形態による、様々な医療処置に一体型ガイドワイヤ75を適用するための方法を概略的に示すフローチャートである。一体型ガイドワイヤ75は、単に例として選択されたことに留意されたい。代替的な実施形態では、ガイドワイヤ75に加えて、又はガイドワイヤ75の代わりに、上記のガイドワイヤ65及び85などの任意の他の好適な種類の一体型ガイドワイヤを適用してもよい。
【0070】
この方法は、ガイドワイヤ挿入工程100において、医師24が一体型ガイドワイヤ75を患者22の解剖学的物質輸送系に挿入することから開始される。上記の
図2Bに記載したように、ガイドワイヤ75は、光ファイバ又は可撓性チューブなどの移送装置82と絡み合ったワイヤ80を備える。
【0071】
ナビゲーション工程102において、医師24は、患者22の脳又は前頭洞42などの問題の器官に一体型ガイドワイヤ75をナビゲートする。第1の決定工程104において、医師24は、患者22の脳内の潜在的な血塊の調査が必要かどうかを確認する。
【0072】
工程104で医師24が潜在的な血塊を調べることを決定し、ガイドワイヤ75が光ファイバを備えると仮定すると、医師24は、ガイドワイヤ75を適用して、解剖学的画像取得工程106において、血塊の画像などの解剖学的情報を取得することができる。血塊画像の取得を完了した後、医師24は、ガイドワイヤ引き出し工程118において、患者22の体からガイドワイヤ75を引き出してもよい。
【0073】
第2の決定工程108において、医師24は、例えば、ENT系の小孔44で閉塞を開通させるために、患者22の器官の灌注が必要かどうかを確認する。工程108で医師が灌注が必要と判断すると、医師24は、灌注工程110において、ガイドワイヤ75を適用して小孔44を灌注することができる。
【0074】
小孔44の灌注後、医師24は、ガイドワイヤ引き出し工程118において、患者22の体からガイドワイヤ75を引き出してもよい。
【0075】
第3の決定工程112において、一実施形態では、医師は、前頭洞42内の感染を特定してもよく、感染症を治療するために抗生物質などの好適な物質を投与するかどうかを決定する必要がある。別の実施形態では、工程106で取得した画像に基づいて、医師24は、患者22の脳内の血塊を溶解することを検討してもよい。物質投与工程114において、医師は、ガイドワイヤ75を適用して、患者22の問題の器官に物質を投与することができる。例えば、前頭洞42に抗生物質を投与することによるか、又は患者22の脳内で血塊を溶解するのに適した物質を投与することによる。
【0076】
物質投与工程114を完了した後、医師24は、ガイドワイヤ引き出し工程118において、患者22の体からガイドワイヤ75を引き出してもよい。
【0077】
代替処置工程116において、医師24は、物質投与に代わる技術を使用して、患者22の前頭洞42内の感染症及び/又は脳内の血塊を治療することを決定してもよい。例えば、医師24は、例えば、上記の
図2Aに記載した吸引チューブを有するガイドワイヤ75を適用してもよい。この実施形態では、医師24は、ガイドワイヤ75の吸引チューブを適用して、副鼻腔42から感染部を排出するか、及び/又は患者22の脳から血塊を回収することができる。
【0078】
工程116で物質の排出を完了した後、医師24は、ガイドワイヤ引き出し工程118において、患者22の体からガイドワイヤ75を引き出してもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、工程106、110、114、及び116に記載した処置は、引き出し工程118が各処置の方法を完結するように、別個に実施され得る。他の実施形態では、工程106、110、114、及び116のうちの2つ以上を、それぞれの工程間でガイドワイヤ75を引き出すことなく、順次又は同時に実施してもよい。例えば、上記のように、ガイドワイヤ75などの任意の一体型ガイドワイヤは、光ファイバ及び吸引チューブなどの2つの移送装置82を備えることができる。これらの実施形態では、医師は、上記の工程106に記載したように、血塊を調べるために光ファイバを適用し、次いで患者22の脳から血塊を排出させるように吸引チューブを適用し、その後ようやくガイドワイヤ75を引き出してもよい。
【0080】
図4は、本発明の一実施形態による、一体型ガイドワイヤ65の製造方法を概略的に示すフローチャートである。一体型ガイドワイヤ65は、単に例として選択されたことに留意されたい。代替的な実施形態では、ガイドワイヤ65に加えて、又はガイドワイヤ65の代わりに、上記のガイドワイヤ75及び85などの任意の他の好適な種類の一体型ガイドワイヤを製造してもよい。
【0081】
この方法は、ワイヤ供給工程200において、患者22の血管内又は任意の他の解剖学的物質輸送系内で移動するような大きさ及び形状である、ワイヤ70を提供することから開始される。ワイヤ70は、代替的には、例えば、連続ワイヤから一部分を切断及び成形することによって製造されてもよいことに留意されたい。絡み合わせ工程202において、製造作業者は、ワイヤ70と1つ又は2つ以上の移送装置72とを絡み合わせることにより、一体型ガイドワイヤ65を形成し、1つ又は2つ以上の移送装置72は、上記のような1つ又は2つ以上の光ファイバ及び/又は1つ又は2つ以上の可撓性チューブを含む。
【0082】
一体型ガイドワイヤ65の製造方法を完結する連結工程202において、製造作業者は、一体型ガイドワイヤの近位端を、患者22の体外に位置する医療用装置又はシステムに連結する。上記のように、医療用装置又はシステムは、ハンドル30、コンソール33、流体リザーバ、ポンプ、光源、画像センサ、並びに任意の他の好適な装置、器具、及び/又はシステムのうちの少なくとも1つを備えてもよい。
【0083】
本明細書に記載される実施形態は主にサイナプラスティ手術に対処するが、本明細書に記載される方法及びシステムは更に、神経学、心臓学、及び脈管系などの他の用途にも用いられ得る。
【0084】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていない、それらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0085】
〔実施の態様〕
(1) 一体型ガイドワイヤであって、
患者の解剖学的物質輸送系内で移動するような大きさ及び形状である、ワイヤと、
近位端及び遠位端を有する光ファイバであって、前記近位端が、前記患者の外部の装置に連結されており、前記光ファイバが、前記遠位端と前記装置との間で光信号を伝達するように構成されており、前記ワイヤ及び前記光ファイバが、互いに絡み合っている、光ファイバと、を備える、一体型ガイドワイヤ。
(2) 前記ワイヤ及び前記光ファイバが、前記遠位端と前記近位端との間に位置するか又は前記遠位端及び前記近位端に位置する1つ又は2つ以上の連結点において互いに直接固定されている、実施態様1に記載の一体型ガイドワイヤ。
(3) 前記患者の器官から反射された光信号を受信するように、かつ前記反射された光信号を使用して前記器官の画像を生成するように構成された画像センサを備える、実施態様1に記載の一体型ガイドワイヤ。
(4) 前記絡み合ったワイヤ及び前記光ファイバが、前記遠位端と前記近位端との間で、前記一体型ガイドワイヤの軸の周囲に複数の巻線を有する、実施態様1に記載の一体型ガイドワイヤ。
(5) 前記巻線の数が、前記一体型ガイドワイヤの剛性及び可撓性レベルを決める、実施態様4に記載の一体型ガイドワイヤ。
【0086】
(6) 前記巻線が、前記遠位端と前記近位端との間で均等に分布されている、実施態様4に記載の一体型ガイドワイヤ。
(7) 前記巻線が、前記遠位端と前記近位端との間で不均等に分布されている、実施態様4に記載の一体型ガイドワイヤ。
(8) 追加の光ファイバ及び前記遠位端と前記近位端との間で流体を移送するように構成された可撓性チューブのうちの少なくとも1つを備え、前記追加の光ファイバ及び前記可撓性チューブのうちの前記少なくとも1つが、前記ワイヤ及び前記光ファイバと絡み合っている、実施態様1に記載の一体型ガイドワイヤ。
(9) 前記解剖学的物質輸送系が、脈管系、耳鼻咽喉(ENT)系、及び神経系からなるリストから選択される前記患者の解剖学的システムを含む、実施態様1に記載の一体型ガイドワイヤ。
(10) 方法であって、
患者の解剖学的物質輸送系に一体型ガイドワイヤを挿入することであって、前記一体型ガイドワイヤが、
前記解剖学的物質輸送系内で移動するような大きさ及び形状である、ワイヤと、
近位端及び遠位端を有する光ファイバであって、前記近位端が、前記患者の外部の装置に連結されており、前記光ファイバが、前記遠位端と前記装置との間で光信号を伝達するように構成されており、前記ワイヤ及び前記光ファイバが、互いに絡み合っている、光ファイバと、を備える、ことと、
前記遠位端と前記装置との間で光信号を伝達することによって、前記患者から解剖学的情報を取得することと、を含む、方法。
【0087】
(11) 前記ワイヤ及び前記光ファイバが、前記遠位端と前記近位端との間に位置するか又は前記遠位端及び前記近位端に位置する1つ又は2つ以上の連結点において互いに直接固定されている、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記一体型ガイドワイヤを挿入することが、前記患者の器官から反射された光信号を受信するため、かつ前記反射された光信号を使用して前記器官の画像を生成するための画像センサを挿入することを含む、実施態様10に記載の方法。
(13) 前記絡み合ったワイヤ及び前記光ファイバが、前記遠位端と前記近位端との間で、前記一体型ガイドワイヤの軸の周囲に複数の巻線を有する、実施態様10に記載の方法。
(14) 前記巻線の数が、前記一体型ガイドワイヤの剛性及び可撓性レベルを決める、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記巻線が、前記遠位端と前記近位端との間で均等に分布されている、実施態様13に記載の方法。
【0088】
(16) 前記巻線が、前記遠位端と前記近位端との間で不均等に分布されている、実施態様13に記載の方法。
(17) 前記一体型ガイドワイヤを挿入することが、追加の光ファイバ及び前記遠位端と前記近位端との間で流体を移送するための可撓性チューブのうちの少なくとも1つを挿入することを含み、前記追加の光ファイバ及び可撓性チューブのうちの前記少なくとも1つが、前記ワイヤ及び前記光ファイバと絡み合っている、実施態様10に記載の方法。
(18) 前記一体型ガイドワイヤを挿入することが、脈管系、耳鼻咽喉(ENT)系、及び神経系からなるリストから選択される前記患者の解剖学的システムに前記一体型ガイドワイヤを挿入することを含む、実施態様10に記載の方法。
(19) 一体型ガイドワイヤを製造するための方法であって、
患者の解剖学的物質輸送系内で移動するような大きさ及び形状であるワイヤを提供することと、
前記ワイヤ及び光ファイバを互いに絡み合わせることと、を含む、方法。
(20) 前記ワイヤ及び前記光ファイバを絡み合わせることが、前記光ファイバの遠位端と近位端との間に位置するか又は前記遠位端及び前記近位端に位置する1つ又は2つ以上の連結点において、前記ワイヤと前記光ファイバとを互いに連結することを含む、実施態様19に記載の方法。
【0089】
(21) 前記患者の器官から反射された光信号を受信するため、かつ前記反射された光信号を使用して前記器官の画像を生成するための画像センサを、前記光ファイバに連結することを含む、実施態様19に記載の方法。
(22) 前記ワイヤ及び前記光ファイバを絡み合わせることが、前記光ファイバの遠位端と近位端との間で、前記一体型ガイドワイヤの軸の周囲に複数の巻線を形成することを含む、実施態様19に記載の方法。
(23) 前記複数の巻線を形成することが、前記巻線の数により、前記一体型ガイドワイヤの剛性及び可撓性レベルを決めることを含む、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記複数の巻線を形成することが、前記遠位端と前記近位端との間で均等に前記巻線を分布させることを含む、実施態様22に記載の方法。
(25) 前記複数の巻線を形成することが、前記遠位端と前記近位端との間で不均等に前記巻線を分布させることを含む、実施態様22に記載の方法。
【0090】
(26) 前記ワイヤ及び前記光ファイバを絡み合わせることが、前記ワイヤ及び前記光ファイバと共に、追加の光ファイバ及び可撓性チューブのうちの少なくとも1つを絡み合わせることを含む、実施態様19に記載の方法。
(27) 前記ワイヤが、脈管系、耳鼻咽喉(ENT)系、及び神経系からなるリストから選択される前記患者の解剖学的システム内で移動するような大きさ及び形状である、実施態様19に記載の方法。