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特許7490351シャント抵抗モジュール及び、シャント抵抗モジュールの実装構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】シャント抵抗モジュール及び、シャント抵抗モジュールの実装構造
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/00 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
G01R15/00 500
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019202170
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021076435
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 保
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-072150(JP,A)
【文献】特開2003-315371(JP,A)
【文献】特開2011-174909(JP,A)
【文献】特開2016-217829(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012150(WO,A1)
【文献】特開2015-215167(JP,A)
【文献】特開平07-043387(JP,A)
【文献】実公昭40-021677(JP,Y1)
【文献】特開2005-188945(JP,A)
【文献】特開2005-188931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗体と、前記抵抗体の一方の端部に設けられた第1の電極と、前記抵抗体の他方の端部に設けられた第2の電極と、を備えた平板状のシャント抵抗器と、
前記第1の電極に電気的に接続されるとともに、前記第2の電極及び前記抵抗体との間に間隔を空けて配置され、前記シャント抵抗器に流れる電流経路と逆向きの電流経路を構成する板状の導電部材と、を具備し、
前記導電部材により形成された、前記第1の電極、前記第2の電極および前記抵抗体と並列した前記電流経路において、前記第1の電極及び前記第2の電極と並列する距離よりも、前記抵抗体と並列する距離が短く、
前記抵抗体の両側部に電圧検出端子が形成され、
前記電圧検出端子が形成された面に電流計測回路に接続する基板が配置された、
ことを特徴とするシャント抵抗モジュール。
【請求項2】
前記第2の電極及び前記抵抗体と、前記導電部材との間に、絶縁部材が介在していることを特徴とする請求項1に記載のシャント抵抗モジュール。
【請求項3】
前記第2の電極から前記第2の電極と対向する位置の前記導電部材にかけて、貫通孔が形成されており、前記貫通孔に、絶縁された固定部材が挿通されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシャント抵抗モジュール。
【請求項4】
前記導電部材は、バスバーを兼ねることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシャント抵抗モジュール。
【請求項5】
前記第2の電極の端部と前記導電部材の端部にそれぞれ貫通した貫通孔が形成され、且つ、前記第2の電極の端部と前記導電部材の端部とが近接して構成されたことを特徴とする請求項1に記載のシャント抵抗モジュール。
【請求項6】
シャント抵抗モジュール電流計測回路とパワー半導体モジュールを有し、前記シャント抵抗モジュールと前記電流計測回路と前記パワー半導体モジュールを接続したシャント抵抗モジュールの実装構造であって、
前記シャント抵抗モジュールは、抵抗体と、前記抵抗体の一方の端部に設けられた第1の電極と、前記抵抗体の他方の端部に設けられた第2の電極と、を備えた平板状のシャント抵抗器と、前記第1の電極に電気的に接続されるとともに、前記第2の電極及び前記抵抗体との間に間隔を空けて配置され、前記シャント抵抗器に流れる電流経路と逆向きの電流経路を構成する板状の導電部材と、を具備し、
前記第1の電極、前記第2の電極および前記抵抗体と並列した前記導電部材による前記電流経路において、前記第1の電極及び前記第2の電極と並列する距離よりも、前記抵抗体と並列する距離が短く、
前記第2の電極の端部には貫通孔が形成され、
前記シャント抵抗モジュールの前記第2の電極と対向する位置に前記パワー半導体モジュールの外部接続端子配置され
前記貫通孔に、前記シャント抵抗モジュールを前記外部接続端子に固定する固定部材挿通されて、前記第2の電極が前記外部接続端子に電気的に接続固定されることを特徴とするシャント抵抗モジュールの実装構造。
【請求項7】
前記抵抗体の両側部に電圧検出端子が形成され、前記電圧検出端子が形成された面に前記電流計測回路に接続する基板が配置されたことを特徴とする請求項6に記載のシャント抵抗モジュールの実装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シャント抵抗器を備えたシャント抵抗モジュール及び、シャント抵抗モジュールの実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パワー半導体装置等の電流を検出するために、シャント抵抗器が用いられる。
【0003】
特許文献1には、抵抗体とその両側に電極(配線部材)を備えたシャント抵抗器の構造が開示されており、電極にはバスバーが接続されている。また、シャント抵抗器には、電極間の電圧値を測定する電圧検出端子が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-217829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シャント抵抗器に電流が流れた際に磁束が生じるが、この磁束の影響を、電圧検出端子が受けると、電圧値が変動し、正確な電流値を計測できない問題が生じた。
【0006】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、精度良く電流検出を行うことができるシャント抵抗モジュール及び、シャント抵抗モジュールの実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のシャント抵抗モジュールは、抵抗体と、前記抵抗体の一方の端部に設けられた第1の電極と、前記抵抗体の他方の端部に設けられた第2の電極と、を備えた平板状のシャント抵抗器と、前記第1の電極に電気的に接続されるとともに、前記第2の電極及び前記抵抗体との間に間隔を空けて配置され、前記シャント抵抗器に流れる電流経路と逆向きの電流経路を構成する板状の導電部材と、を具備し、前記導電部材により形成された、前記第1の電極、前記第2の電極および前記抵抗体と並列した前記電流経路において、前記第1の電極及び前記第2の電極と並列する距離よりも、前記抵抗体と並列する距離が短く、前記抵抗体の両側部に電圧検出端子が形成され、前記電圧検出端子が形成された面に電流計測回路に接続する基板が配置された、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様のシャント抵抗モジュールの実装構造は、シャント抵抗モジュール電流計測回路とパワー半導体モジュールを有し、前記シャント抵抗モジュールと前記電流計測回路と前記パワー半導体モジュールを接続したシャント抵抗モジュールの実装構造であって、前記シャント抵抗モジュールは、抵抗体と、前記抵抗体の一方の端部に設けられた第1の電極と、前記抵抗体の他方の端部に設けられた第2の電極と、を備えた平板状のシャント抵抗器と、前記第1の電極に電気的に接続されるとともに、前記第2の電極及び前記抵抗体との間に間隔を空けて配置され、前記シャント抵抗器に流れる電流経路と逆向きの電流経路を構成する板状の導電部材と、を具備し、前記第1の電極、前記第2の電極および前記抵抗体と並列した前記導電部材による前記電流経路において、前記第1の電極及び前記第2の電極と並列する距離よりも、前記抵抗体と並列する距離が短く、前記第2の電極の端部には貫通孔が形成され、前記シャント抵抗モジュールの前記第2の電極と対向する位置に前記パワー半導体モジュールの外部接続端子配置され、前記貫通孔に、前記シャント抵抗モジュールを前記外部接続端子に固定する固定部材挿通されて、前記第2の電極が前記外部接続端子に電気的に接続固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシャント抵抗モジュールによれば、シャント抵抗器に間隔を空けて導電部材を対向配置し、このとき、シャント抵抗器の第1の電極と導電部材とを電気的に接続した。これにより、シャント抵抗器と導電部材に互いに逆向きの電流経路を形成でき、磁束をキャンセルすることができるため、精度良く電流検出を行うことが可能である。
【0010】
本発明のシャント抵抗モジュールの実装構造によれば、シャント抵抗器と導電部材とで逆向きの電流経路を損なうことなく、シャント抵抗モジュールを電流計測回路に適切に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態のシャント抵抗モジュールを備えたパワー半導体モジュールの斜視図である。
図2】本実施の形態のシャント抵抗モジュールの分解斜視図である。
図3】本実施の形態のシャント抵抗モジュールのパワー半導体モジュールへの接続構造を拡大して示した分解斜視図である。
図4】本実施の形態のシャント抵抗モジュールの断面図である。
図5】別の実施の形態を示すシャント抵抗モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係るシャント抵抗モジュールについて説明する。
【0013】
<本実施の形態のシャント抵抗モジュール1>
例えば、パワー半導体モジュールに取り付けた電流検出用のシャント抵抗器に電流が流れると、右ねじの法則により磁束が生じる。このとき、シャント抵抗器には大電流が流れることで、大きな磁束が発生し、この磁束が、シャント抵抗器の電極間の電圧値を変動させる。その結果、精度良く電流値を検出できない不具合が生じる。そこで本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、シャント抵抗器に電流が流れた際に生じる磁束をキャンセル可能な構造を開発するに至った。
【0014】
すなわち、本実施の形態のシャント抵抗モジュール1は、以下の特徴点を有している。
(1)抵抗体5と、抵抗体5の一方の端部に設けられた第1の電極6と、抵抗体5の他方の端部に設けられた第2の電極7と、を備えたシャント抵抗器2を備えること。
(2)第1の電極6に電気的に接続されるとともに、第2の電極7及び抵抗体5との間に間隔を空けて配置され、シャント抵抗器2に流れる電流経路C1と逆向きの電流経路C2を構成する導電板4を備えること。
以下、本実施の形態のシャント抵抗モジュール1の構造を具体的に説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態のシャント抵抗モジュール1を備えたパワー半導体モジュール10の斜視図である。図2は、本実施の形態のシャント抵抗モジュール1の分解斜視図である。図3は、本実施の形態のシャント抵抗モジュール1のパワー半導体モジュール10への接続構造を拡大して示した分解斜視図である。図4は、本実施の形態のシャント抵抗モジュール1の断面図である。
【0016】
図1に示すパワー半導体モジュール10は、筐体15内に半導体素子等が配置されており、筐体15の表面にドライブ基板16が配置されている。また、筐体15のY方向の両端には、複数の外部接続端子10a~10dが設けられ、例えば、シャント抵抗モジュール1は外部接続端子10aに取り付けられる。また、外部接続端子10a~10dのX方向の両側には、パワー半導体モジュール10を、外部の放熱フィン等に固定するためにボルト等を挿通可能な固定穴17が設けられている。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態のシャント抵抗モジュール1及びバスバー11を、パワー半導体モジュール10の外部接続端子10a上に重ねて、固定部材18にて固定することができる。
【0018】
図2に示すように、本実施の形態のシャント抵抗モジュール1は、図2に示すように、シャント抵抗器2と、絶縁部材としての絶縁シート3と、導電部材としての導電板4を具備する。なお、図2に示すX1-X2方向と、Y1-Y2方向は、平面上にて直交する2方向である。
【0019】
(シャント抵抗器2)
図2及び図4に示すように、シャント抵抗器2は、X1-X2方向の幅寸法よりもY1-Y2方向に長い平板状であり、抵抗体5と、抵抗体5の一方の端部(Y1側端部)に設けられる第1の電極6と、抵抗体5の他方の端部(Y2側端部)に設けられる第2の電極7を有して構成される。第1の電極6及び第2の電極7は、抵抗体5より電気抵抗値が低い。材質を限定するものではないが、例えば、抵抗体5は、Cu-Ni系、Cu-Mn系、或いは、Ni―Cr系等の金属であり、電極6、7は、Cu等の金属である。
【0020】
図2図4に示すように、第1の電極6のY1-Y2方向の長さ寸法L1は、第2の電極7のY1-Y2方向の長さ寸法L2よりも短い。ここで「長さ寸法」は、第1の電極6及び第2の電極7に形成される電流経路C1と平行な方向の長さを示す。第2の電極7は、外部接続端子10aの位置からドライブ基板16の表面にまで延出する長さ寸法を有している。これにより、第2の電極7を、外部接続端子10aに接続できるとともに、後述する第2の電極7に設けられたピン状の電圧検出端子8bを、パワー半導体モジュール10のドライブ基板16の表面に形成された接続穴16bに適切に挿入することができる。一方、第1の電極6は、導電板4と電気的に接続し、且つ電圧検出端子8aを配置できる面積を有していればよく、第1の電極6の長さ寸法L1を第2の長さ寸法L2より短くすることができる。これにより、シャント抵抗器2の大型化を抑制しつつ、パワー半導体モジュール10に適切且つ確実に接続固定することが可能になる。
【0021】
図2及び図4に示すように、第2の電極7には、貫通孔2aが形成されている。この貫通孔2aは後述するように、固定部材18を挿通するための固定穴である。
【0022】
図2及び図4に示すように、第1の電極6及び第2の電極7の下面(パワー半導体モジュール10に対向する側)には、電圧検出端子8a、8bが形成されている。これら電圧検出端子8a、8bは、例えば、パワー半導体モジュール10の方向に突き出すピン形状である。電圧検出端子8a、8bを、第1の電極6及び第2の電極7の下面に溶接などにより取り付けることができる。
【0023】
(絶縁シート3)
図2及び図4に示すように、平板状のシャント抵抗器2上に重ねて、絶縁シート3が配置される。「シート」とは、薄い板状であることを意味しており、絶縁シート3の材質やシート構造は、第2の電極7及び抵抗体5と、導電板4とが電気的に絶縁されることを条件に、特に限定されるものではない。一例であるが、絶縁シート3は、ポリエチレン系等の絶縁性高分子からなるシートである。また、絶縁シート3は、一枚でなく、複数に分離等されてもよい。また、絶縁シート3は、可撓性の有無を問わない。
【0024】
図4に示すように、絶縁シート3の長さ寸法L3は、シャント抵抗器2の長さ寸法L4よりも短い。図4に示すように、絶縁シート3により、第2の電極7及び抵抗体5の表面は覆われる一方、第1の電極6の表面のY1側端部6aは、絶縁シート3に覆われず露出した状態とされる。
【0025】
図2に示すように、例えば、絶縁シート3の幅寸法(X1-X2方向の長さ寸法)は、シャント抵抗器2の幅寸法と同程度で形成されるが、幅寸法を限定するものではない。
【0026】
図2図4に示すように、絶縁シート3には、第2の電極7に形成された貫通孔2aと重なる位置に、同程度の大きさの貫通孔3aが形成されている。
【0027】
また、本実施の形態では、絶縁部材の一例として絶縁シート3を説明したが、第2の電極7及び抵抗体5と導電板4との間を絶縁する構成として、絶縁層を、第2の電極7及び抵抗体5の表面に塗布などして形成することもできる。ただし、絶縁シート3を用いることが、第2の電極7及び抵抗体5と導電板4との間をより確実に電気的に絶縁することができ、また、シャント抵抗モジュール1の組み立ても煩雑にならず好ましい。
【0028】
(導電板4)
図2及び図4に示すように、絶縁シート3上に重ねて導電板4が配置される。この実施の形態では、導電板4は、シャント抵抗器2と同程度の長さ寸法L5を有している。導電板4は、シャント抵抗器2よりY1-Y2方向に長く形成されてもよい。このとき、導電板4は、シャント抵抗器2の第2の電極7のY2側端部からY2方向に延出される。導電板4の材質を限定するものではないが、導電性に優れた材質であることが好ましく、例えば、導電板4には、電極6、7と同じ材料、或いは、主成分を同じとした材料を選択でき、具体的には、導電板4を、Cu板で形成することができる。
【0029】
図4に示すように、導電板4のY1側端部4bは、絶縁シート3に覆われずに露出した第1の電極6のY1側端部6aに当接し、電気的に接続される。このとき、第1の電極6と電気的に接続しやすいように、導電板4のY1側端部4bを、第1の電極6の方向(図4に示す図示下方向)に突出する凸部状とすることが好ましい。
【0030】
図2及び図4に示すように、導電板4には、貫通孔2a、3aと厚さ方向にて重なる位置に、同程度の大きさの貫通孔4aが形成されている。
【0031】
導電板4は、平板状であり、シャント抵抗器2と同様に、Y1-Y2方向に長く形成されている。導電板4は、平板状以外の形態であってもよいが、平板状とすることで、第1の電極6と精度良く電気的に接続させることができ、また、シャント抵抗モジュール1の薄型化を実現することができる。
【0032】
(シャント抵抗モジュール1の組み立て)
上記したシャント抵抗器2、絶縁シート3及び導電板4を厚み方向に重ね合わせ、このとき、各貫通孔2a、3a、4aが厚み方向に連続するように位置を合わせつつ、導電板4のY1側端部4bと第1の電極6を溶接等で接合する。これにより、導電板4と第1の電極6は電気的に接続されるとともに、第2の電極7及び抵抗体5と導電板4の間には、絶縁シート3が介在し、電気的に絶縁された状態とされる。接合方法は、溶接に限定するものでなく、導電性接着剤の使用や、はんだ接合等であってもよい。また、後述する他の実施の形態で示すように、第1の電極6と導電板4間を、ねじ止めすることも可能である。上記接合により、導電板4のY1側端部4bと第1の電極6を、確実に電気的接続することができる。シャント抵抗モジュール1の第2の電極7から導電板4にかけて貫通する貫通孔1a(以下、連続する各貫通孔2a、3a、4aを一つの貫通孔と見做して記載する)は、シャント抵抗器2、絶縁シート3及び導電板4を重ね合わせ、導電板4のY1側端部4bと第1の電極6を接合した後に、一度に形成することもできる。
【0033】
導電板4のY1側端部4bと第1の電極6の接合領域以外では、図4に示すように、貫通孔1aにネジ等の固定部材18を挿通して固定するため、第2の電極7の位置も、絶縁シート3及び導電板4とともに固定することができる。なお、シャント抵抗器2と絶縁シート3、及び、絶縁シート3と導電板4間を接着剤等を用いて接合してもよい。
【0034】
<シャント抵抗モジュール1の実装構造>
図3は、本実施の形態のシャント抵抗モジュール1のパワー半導体モジュール10への接続構造を拡大して示した分解斜視図である。図3に示すように、本実施の形態のシャント抵抗モジュール1は、例えば、パワー半導体モジュール10の外部接続端子10aに取り付けられる。
【0035】
このとき、図3図4に示すように、外部接続端子10aと、パワー半導体モジュール10の表面に位置するドライブ基板16との間には段差が生じている。このため、シャント抵抗モジュール1と外部接続端子10aの間に、高さ調整用の導電リング(台座)22を介在させてシャント抵抗モジュール1の高さが、ドライブ基板16の表面と同程度の高さとなるように調整することが好ましい。また、シャント抵抗モジュール1と外部接続端子10aとの間は、導電リング22を介して電気的に接続される。
【0036】
図3に示すように、バスバー11を、シャント抵抗モジュール1の上面に重ね合わせる。このとき、バスバー11に形成された貫通孔11aを、シャント抵抗モジュール1の貫通孔1aに位置合わせした状態で、例えば、絶縁ワッシャ23、ワッシャ24及びスプリングワッシャ25を介して、固定部材18を貫通孔1a、11aに挿通する。固定部材18の先端はねじ部18aであり、同様に、外部接続端子10aにもネジが切られている。よって、固定部材18を貫通孔1a、11aに挿通するととおに、外部接続端子10aにねじ止めすることができ、これにより、シャント抵抗モジュール1及びバスバー11を、外部接続端子10aに固定支持することができる。
【0037】
図3に示すように、固定部材18の周囲表面には、先端のねじ部18aを除いて、例えば、絶縁チューブ26が取り付けられている。絶縁チューブ26を固定部材18に挿入し収縮させることで、固定部材18の周囲に固定することができる。図4に示すように、絶縁チューブ26は、固定部材18を貫通孔1aに挿通した状態では、シャント抵抗器2、絶縁シート3、導電板4及び、バスバー11にまで至っている。このため、外部接続端子10aとバスバー11間に、シャント抵抗モジュール1を介して電流が流れる際、電流が固定部材18を介して流れる不具合を防止することができる。絶縁チューブ26を用いる構成以外に、例えば、絶縁材料を固定部材18の表面に塗装、スプレー、或いは、蒸着等して絶縁層を形成してもよい。
【0038】
図3に示すように、パワー半導体モジュール10のドライブ基板16の表面には、シャント抵抗モジュール1の電圧検出端子8a、8bと対向する位置に、ピン状の電圧検出端子8a、8bを挿入可能な接続穴16a、16bが形成されている。電圧検出端子8a、8bを接続穴16a、16bに挿入することで、電圧検出端子8a、8bを接続穴16a、16b内に配置された電流計測回路の接続部27a、27bに電気的に接続することができる。
【0039】
以上により、本実施の形態のシャント抵抗モジュール1を、パワー半導体モジュール10の外部接続端子10aに取り付けることができるとともに、電圧検出端子8a、8bを、電流計測回路の接続部27a、27bに電気的に接続することができる。
【0040】
電流計測の際には、シャント抵抗モジュール1を介して、パワー半導体モジュール10とバスバー11間に電流が流れた際に、電圧検出端子8a、8b間の電圧値、すなわちシャント抵抗器2の電極6、7間の電圧値を計測する。このとき、シャント抵抗器2の抵抗体5の抵抗値は既知であるため、オームの法則により、電流値を検出することができる。このように、シャント抵抗モジュール1を、電流検出装置として用いることができる。
【0041】
<本実施の形態の効果について>
本実施の形態のシャント抵抗モジュール1によれば、シャント抵抗器2の厚み方向に間隔を空けて導電板4を配置するとともに、シャント抵抗器2の第1の電極6と導電板4を電気的に接続した。これにより、図1のように、シャント抵抗モジュール1を、パワー半導体モジュール10に取り付けて電流計測を行うと、シャント抵抗モジュール1に流れる電流経路は、シャント抵抗器2と導電板4とで折り返される。このため、図4に示すように、シャント抵抗器2に形成される電流経路C1と、導電板4に形成される電流経路C2は、逆向きとなる。このとき、シャント抵抗器2及び導電板4には、右ねじの法則により、磁束(磁場)が生じるが、電流経路C1、C2が互いに逆向きであるため、シャント抵抗器2及び導電板4にて生じる磁束は逆回りとなり、磁束を互いに打ち消す(キャンセルする)ことができる。その結果、第1の電極6及び第2の電極7に設けられた電圧検出端子8a、8bに対する磁束の影響を抑制することができ、電流検出を精度良く行うことが可能になる。
【0042】
本実施の形態では、図2及び図4に示すように、第2の電極7及び抵抗体5と、導電板4との間に、絶縁シート3を介在させている。これにより、第2の電極7及び抵抗体5と、導電板4との間を、確実に、電気的に絶縁することができ、シャント抵抗器2及び導電板4に逆向きの電流経路C1、C2を精度良く形成でき、磁束のキャンセル効果を高めることができる。
【0043】
また、本実施の形態では、シャント抵抗モジュール1には、第2の電極7から、第2の電極7と厚み方向で対向する導電板4にかけて、貫通孔1aが形成されており、貫通孔1aに、絶縁された固定部材18が挿通される。これにより、シャント抵抗モジュール1を適切に固定支持することができるとともに、固定部材18を介して、シャント抵抗器2と導電板4間に電流が流れる不具合を防止することができる。また、固定部材18により、バスバー11をシャント抵抗モジュール1に接続することができる。
【0044】
また、本実施の形態では、第1の電極6及び第2の電極7には、導電板4側とは逆側(図4の図示下側)に電圧検出端子8a、8bが設けられている。これにより、電圧検出端子8a、8bを、適切に形成することができる。特に、シャント抵抗モジュール1の実装構造において、電圧検出端子8a、8bを、簡単且つ確実に、電流計測回路に接続することが可能になる。
【0045】
また、本実施の形態のシャント抵抗モジュール1の実装構造においては、シャント抵抗モジュール1の第2の電極7と対向する位置に外部接続端子10aを有し、固定部材18が挿通されることで、シャント抵抗モジュール1が外部接続端子10aに固定されるとともに、第2の電極7が外部接続端子10aに電気的に接続される。このように、本実施の形態では、シャント抵抗モジュール1の固定支持と、外部接続端子10aへの電気的接続を同時に行うことができる。
【0046】
また、本実施の形態のシャント抵抗モジュール1の実装構造においては、シャント抵抗モジュール1の外部接続端子10aへの固定とともに、電圧検出端子8a、8bが電流計測回路に接続される。本実施の形態では、パワー半導体モジュール10のドライブ基板16には、電圧検出端子8a、8bを挿入可能な接続穴16a、16bが設けられており、接続穴16a、16b内に位置する接続部27a、27bは、電流計測回路に接続されている。このため、本実施の形態では、シャント抵抗モジュール1を外部接続端子10aに取り付けた際に、電圧検出端子8a、8bを接続穴16a、16bに挿入することができ、電圧検出端子8a、8bを電流計測回路に接続することができる。このように本実施の形態では、シャント抵抗モジュール1のパワー半導体モジュール10への取付と同時に、簡単且つ確実に、電圧検出端子8a、8bを電流計測回路に接続することができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態では、パワー半導体モジュール10へのシャント抵抗モジュール1及びバスバー11の取付を、容易且つ確実に行うことが可能である。
【0048】
<別の実施の形態のシャント抵抗モジュールの形態>
図5は、別の実施の形態を示すシャント抵抗モジュール30の断面図である。図5に示すシャント抵抗モジュール30は、シャント抵抗器31と導電板32とを具備するが、図2及び図4に示す絶縁シート3は設けられていない。なお、図2図4と同じ符号の部分は、実質的に同じ構成である。図5に示すように、導電板32のY1側端部32bを、シャント抵抗器31の方向(図示した方向)に突出する凸部状として、第2の電極7と導電板32との間に所定の間隔を空けている。
【0049】
図5に示すように、第2の電極7と導電板32に設けられた貫通孔7a、32aに、第1の固定部材33が挿通される。これにより、第2の電極7と導電板32との間の間隔を所定寸法に維持することができる。ただし、第2の電極7と導電板32の間を空気層とせず、図2及び図4で示す絶縁シート3を、第2の電極7と導電板32の間に介在させることで、より確実に、第2の電極7と導電板32の間を電気的に絶縁することが可能である。第1の固定部材33は、図4に示す固定部材18と同様に、表面が絶縁された構成である。これにより、第1の固定部材33を介して、第2の電極7と導電板32の間に電流が流れる不具合を抑制することができる。
【0050】
また、図5に示す実施の形態では、シャント抵抗モジュール30の第1の電極6と、導電板32のY1側端部32bに連続する貫通孔30aが形成されており、該貫通孔30aに第2の固定部材34を挿通することで、第1の電極6と導電板32のY1側端部32bとを固定支持している。このとき、第1の電極6と導電板32のY1側端部32bの各表面は当接しており電気的に接続される。また、第2の固定部材34の表面は、導電性であることが好ましい。第2の固定部材34には、通常のネジを使用することができる。これにより、第1の電極6と導電板32間を、より確実に電気的に接続することができる。
【0051】
また、図5に示す導電板32は、バスバーを兼ねており、したがって、導電板32は、シャント抵抗器2の第2の電極7のY2側端部よりもY2方向に長く延出して形成されている。このように、導電板32がバスバーを兼ねることで、部品点数を減らすことができ、シャント抵抗モジュール30の製造コストを抑えることができる。
以上のように、本実施の形態及び変形例を説明したが、他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0052】
また、本実施の形態は上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらに、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0053】
例えば、本実施の形態では、シャント抵抗モジュール1の実装構造として、パワー半導体モジュール10を例に挙げたが、シャント抵抗モジュール1を実装する電子部品は、パワー半導体モジュール10以外であってもよい。
下記に、上記実施の形態における特徴点を整理する。
【0054】
上記実施の形態に記載のシャント抵抗モジュールは、抵抗体と、前記抵抗体の一方の端部に設けられた第1の電極と、前記抵抗体の他方の端部に設けられた第2の電極と、を備えたシャント抵抗器と、前記第1の電極に電気的に接続されるとともに、前記第2の電極及び前記抵抗体との間に間隔を空けて配置され、前記シャント抵抗器に流れる電流経路と逆向きの電流経路を構成する導電部材と、を具備することを特徴とする。
【0055】
また、本実施の形態のシャント抵抗モジュールでは、前記第2の電極及び前記抵抗体と、前記導電部材との間に、絶縁部材が介在していることが好ましい。
【0056】
また、本実施の形態のシャント抵抗モジュールでは、前記第2の電極から前記第2の電極と対向する位置の前記導電部材にかけて、貫通孔が形成されており、前記貫通孔に、絶縁された固定部材が挿通されることが好ましい。
【0057】
また、本実施の形態のシャント抵抗モジュールでは、前記導電部材は、バスバーを兼ねることができる。
【0058】
また、本実施の形態のシャント抵抗モジュールでは、前記第1の電極及び前記第2の電極には、前記導電部材側とは逆側に電圧検出端子が設けられていることが好ましい。
【0059】
また、上記実施の形態のシャント抵抗モジュールの実装構造は、シャント抵抗モジュールを電流計測回路に接続する実装構造であって、前記シャント抵抗モジュールの前記第2の電極と対向する位置に外部接続端子を有し、上記に記載の前記固定部材が挿通されて、前記シャント抵抗モジュールが前記外部接続端子に固定されるとともに、前記第2の電極が前記外部接続端子に電気的に接続されることを特徴とする。
【0060】
また、本実施の形態のシャント抵抗モジュールの実装構造では、前記シャント抵抗モジュールの前記外部接続端子への固定とともに、上記に記載の前記電圧検出端子が前記電流計測回路に接続されることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明のシャント抵抗モジュールは、精度良く電流検出を行うことができ、例えば、パワー半導体装置等の制御用途の電流検出、バッテリーのエネルギーマネジメントに適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1、30 :シャント抵抗モジュール
1a、30a :貫通孔
2、31 :シャント抵抗器
3 :絶縁シート
4、32 :導電板
5 :抵抗体
6 :第1の電極
7 :第2の電極
8a、8b :電圧検出端子
10 :パワー半導体モジュール
10a :外部接続端子
11 :バスバー
15 :筐体
16 :ドライブ基板
16a、16b :接続穴
18 :固定部材
22 :導電リング
26 :絶縁チューブ
27a、27b :接続部
33 :第1の固定部材
34 :第2の固定部材
C1、C2 :電流経路
図1
図2
図3
図4
図5