(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】塗り替え用水性プライマー
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20240520BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240520BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D5/00 D
C09D133/00
(21)【出願番号】P 2019223827
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-10-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232542
【氏名又は名称】日本特殊塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼田 恒平
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-066357(JP,A)
【文献】特開2004-224825(JP,A)
【文献】特開2018-178082(JP,A)
【文献】特開2006-028485(JP,A)
【文献】特開2016-180045(JP,A)
【文献】特開平09-136978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 175/04
C09D 5/00
C09D 133/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水材と塗り替え塗膜の間に用いる塗り替え用水性プライマーであって、
ヒドロキシ基(OH)を有するアクリル樹脂及び水を含有するA液と、
イソシアネート基(NCO)を有する化合物を含有するB液とを含み、
NCO/OH比が2.
5以上4.0以下である、塗り替え用水性プライマー。
【請求項2】
前記NCO/OH比が2.5以上3.0以下である、請求項1に記載の塗り替え用水性プライマー。
【請求項3】
前記防水材が、ウレタンゴム系塗膜防水材及びトップコートからなる防水材、塩化ビニルシートからなる防水材、又は塩化ビニルシート及びトップコートからなる防水材である、請求項1又は2に記載の塗り替え用水性プライマー。
【請求項4】
前記イソシアネート基を有する化合物が脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートである、請求項1~3のいずれか1項に記載の塗り替え用水性プライマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水材の塗り替えの際に、防水材と新たに設ける塗り替え塗膜との間に用いる塗り替え用水性プライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
プライマーは、下地と上塗りされる材料との密着性を改善するために用いられる下塗り材である。
従来、プライマーとして様々なものが知られており、例えば、特許文献1には、ウレタン系防水材層と無機質仕上げトップコート層との間に用いる水性層間プライマーとして、水性ポリウレタンポリオール水分散液からなる主剤と、水性ポリイソシアネート化合物からなる硬化剤とからなるプライマーであって、主剤中のヒドロキシ基と硬化剤中のイソシアネート基との当量比OH/NCOが2:3であるプライマーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物の陸屋根やバルコニーなどの防水処理として、ウレタン樹脂塗膜や塩化ビニルシートなどの防水材が用いられている。
これらの防水材が経年劣化した場合などには、既存の防水材の上に、新たな塗膜を塗装する塗り替え工事を行う必要がある。この際、既存の防水材と新たな塗膜(塗り替え塗膜)との密着性を向上させる観点からプライマーを用いることが考えられるが、従来知られている水性プライマーを塗り替え用のプライマーとして用いた場合、密着性が不十分であることが分かった。また、十分な密着性を有するものとして、溶剤系プライマーがあるが、臭気や作業者への負担、環境への配慮から、水性化が求められている。
【0005】
本発明の課題は、既存の防水材の上に塗り替え塗膜を塗装する場合において、防水材と塗り替え塗膜との密着性を改善することができる塗り替え用水性プライマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
[1]
防水材と塗り替え塗膜の間に用いる塗り替え用水性プライマーであって、
ヒドロキシ基(OH)を有するアクリル樹脂及び水を含有するA液と、
イソシアネート基(NCO)を有する化合物を含有するB液とを含み、
NCO/OH比が2.5以上4.0以下である、塗り替え用水性プライマー。
[2]
前記NCO/OH比が2.5以上3.0以下である、[1]に記載の塗り替え用水性プライマー。
[3]
前記防水材が、ウレタンゴム系塗膜防水材及びトップコートからなる防水材、塩化ビニルシートからなる防水材、又は塩化ビニルシート及びトップコートからなる防水材である、[1]又は[2]に記載の塗り替え用水性プライマー。
[4]
前記イソシアネート基を有する化合物が脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の塗り替え用水性プライマー。
本発明は、上記[1]~[4]に関するものであるが、本明細書には参考のためその他の事項についても記載した。
【0007】
<1>
防水材と塗り替え塗膜の間に用いる塗り替え用水性プライマーであって、
ヒドロキシ基(OH)を有するアクリル樹脂及び水を含有するA液と、
イソシアネート基(NCO)を有する化合物を含有するB液とを含み、
NCO/OH比が2.0以上4.0以下である、塗り替え用水性プライマー。
<2>
前記NCO/OH比が2.5以上3.0以下である、<1>に記載の塗り替え用水性プライマー。
<3>
前記防水材が、ウレタンゴム系塗膜防水材及びトップコートからなる防水材、塩化ビニルシートからなる防水材、又は塩化ビニルシート及びトップコートからなる防水材である、<1>又は<2>に記載の塗り替え用水性プライマー。
<4>
前記イソシアネート基を有する化合物が脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートである、<1>~<3>のいずれか1項に記載の塗り替え用水性プライマー。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、既存の防水材の上に塗り替え塗膜を塗装する場合において、防水材と塗り替え塗膜との密着性を改善することができる塗り替え用水性プライマーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の塗り替え用水性プライマーの使用例の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の塗り替え用水性プライマーは、防水材と塗り替え塗膜の間に用いる塗り替え用水性プライマーであって、ヒドロキシ基(OH)を有するアクリル樹脂及び水を含有するA液と、イソシアネート基(NCO)を有する化合物を含有するB液とを含み、NCO/OH比が2.0以上4.0以下である、塗り替え用水性プライマーである。
【0011】
以下、本発明の塗り替え用水性プライマーについて説明する。以下の実施形態における各構成及びそれらの組み合わせは例であり、本発明は実施形態によって限定されることはない。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0012】
本発明の塗り替え用水性プライマーは、ヒドロキシ基を有するアクリル樹脂及び水を含有するA液と、イソシアネート基を有する化合物を含有するB液とを含む組成物であり、典型的には、2液型のウレタンプライマー組成物である。
本発明の塗り替え用水性プライマーを使用する際には、A液とB液とを混合して硬化させることでウレタン樹脂塗膜(プライマー層)を形成することができる。
本発明の塗り替え用水性プライマーはA液とB液とを混合することにより反応が開始され、常温により硬化乾燥しウレタン樹脂塗膜(プライマー層)が形成される。
【0013】
<A液>
A液は、少なくとも、ヒドロキシ基を有するアクリル樹脂及び水を含有する。
ヒドロキシ基を有するアクリル樹脂としては、典型的にはアクリルポリオール(ヒドロキシ基を2個以上有するアクリル樹脂)である。
アクリルポリオールの水酸基価は特に限定されないが、30~100mgKOH/gであることが好ましい。
アクリルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば下記一般式(1)で表される化合物を重合してなるモノマー単位を含むポリマーなどを挙げることができる。
【0014】
【0015】
一般式(1)中、Rは水素原子又は置換基を表し、Lは2価の連結基を表す。
Rは水素原子又はメチル基であることが好ましい。
Lは特に限定されないが、例えばアルキレン基(例えば炭素数1~10のアルキレン基など)であることが好ましい。
【0016】
アクリルポリオールとしては、一般式(1)で表される化合物に加えて、更に別の単量体を共重合してなるポリマーであってもよい。
【0017】
アクリルポリオールとしては市販品を用いることもでき、例えば、DIC株式会社製バーノック(登録商標)WD-551、WE-300、WE-301、WE-304、WE-306、WE-307、WE-314、WE-317、WE-321等が例示できる。
【0018】
A液中のヒドロキシ基を有するアクリル樹脂の配合量は特に限定されないが、例えば、A液100質量部に対して、30~60質量部であることが好ましく、40~50質量部であることがより好ましい。
【0019】
A液は水を含有する。A液において水は溶剤として用いられることが好ましい。
A液中の水の配合量は特に限定されないが、例えば、A液100質量部に対して、40~70質量部であることが好ましく、50~60質量部であることがより好ましい。
【0020】
A液は上記した以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては特に限定されないが、例えば、消泡剤、造膜助剤、防腐剤、レベリング剤、硬化促進剤、触媒、光安定剤、表面調整剤等が挙げられる。
A液がその他の成分を含有する場合、その他の成分の配合量は特に限定されないが、A液100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0021】
<B液>
B液は、少なくとも、イソシアネート基を有する化合物を含有する。イソシアネート基を有する化合物としては、典型的にはポリイソシアネート(イソシアネート基を2個以上有する化合物)であり、水分散型のポリイソシアネートであることが好ましく、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどを挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0022】
B液に用いるイソシアネート基を有する化合物としては、黄変しにくい(無黄変)という観点から、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートであることが最も好ましい。
【0023】
ポリイソシアネートとしては市販品を用いることもでき、例えば、DIC株式会社製のバーノック(登録商標)DNW-5000、5500、6000、旭化成株式会社製のデュラネート(登録商標)WB40-100、WB40-80D、WT20-100、WT30-100、WL70-100、WR80-70P、WE50-100等を挙げることができる。
【0024】
B液中のイソシアネート基を有する化合物の配合量は特に限定されないが、例えば、B液100質量部に対して、70~100質量部であることが好ましく、80~100質量部であることがより好ましい。
【0025】
B液は溶剤を含有してもよい。
溶剤としては水又は有機溶剤を挙げることができる。
B液中の溶剤の配合量は特に限定されないが、例えば、B液100質量部に対して、0~30質量部であることが好ましく、0~20質量部であることがより好ましい。
【0026】
B液は上記した以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては特に限定されないが、例えば、消泡剤、造膜助剤、防腐剤、レベリング剤、硬化促進剤、触媒、光安定剤、表面調整剤等が挙げられる。
B液がその他の成分を含有する場合、その他の成分の配合量は特に限定されないが、B液100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0027】
<NCO/OH比>
本発明の塗り替え用水性プライマーにおいて、NCO/OH比は、2.0以上4.0以下である。
ここで、NCO/OH比は、A液中のヒドロキシ基(OH)を有するアクリル樹脂のOHと、B液中のイソシアネート基(NCO)を有する化合物のNCOの比であるが、具体的には下記式(a)により求められる。
【0028】
NCO/OH比=561/OHV×100/Z1×NCO%/4200×Z2 式(a)
【0029】
式(a)において、OHVは、ヒドロキシ基を有するアクリル樹脂の水酸基価(mgKOH/g)である。Z1はA液100質量部中のヒドロキシ基を有するアクリル樹脂の配合量(質量部)を表す。Z2はB液100質量部中のイソシアネート基を有する化合物の配合量(質量部)を表す。NCO%はB液中のイソシアネート基(NCO)を有する化合物中のNCOの比率(質量比率)を表す。
【0030】
NCO/OH比が2.0未満では、既存の防水材の上に塗り替え塗膜を塗装する場合において、防水材と塗り替え塗膜との密着性が不十分になる。
また、NCO/OH比が4.0を超えると、原料の価格が高価となる。また、タック感が残りやすくなったり、A液とB液の混合後の使用可能時間が短くなったりする。
【0031】
NCO/OH比は2.5以上3.0以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の塗り替え用水性プライマーにおいて、A液とB液の含有量比(質量比)は特に限定されないが、A液/B液が5/1~20/1の範囲で用いることが好ましい。
【0033】
本発明の塗り替え用水性プライマーは、1回の塗装による乾燥膜厚において5~30μmの塗膜を形成できることが好ましく、10~20μmの塗膜を形成できることがより好ましい。
【0034】
本発明の塗り替え用水性プライマーによって形成された塗膜(プライマー層)は、従前のプライマー塗膜と比較して、反応余剰のNCO基が既存塗膜表面と反応することにより、強力な密着性が発揮される。更にはビュレット結合、アロファネート結合が生じることにより、塗膜内部の架橋密度を向上させることもできる。
【0035】
本発明の塗り替え用水性プライマーは、従来公知の混合、分散方法によって製造することができる。例えば、ディゾルバー、アトライター等の混合機が使用できる。
【0036】
本発明の塗り替え用水性プライマーの塗装は従来公知の方法により行うことができ、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、ローラー塗装、刷毛塗装等の塗装機が使用できる。塗着効率や環境への飛散防止から、ローラー塗装、刷毛塗装が望ましい。
【0037】
<防水材>
本発明の塗り替え用水性プライマーは、防水材と塗り替え塗膜の間に用いる塗り替え用水性プライマーである。
防水材としては、ウレタンゴム系塗膜防水材及びトップコート(好ましくはウレタンゴム系塗膜防水材用トップコート)からなる防水材、塩化ビニルシートからなる防水材、又は塩化ビニルシート及びトップコート(好ましくは塩化ビニルシート用トップコート)からなる防水材であることが好ましい。
図1に示すように、ウレタンゴム系塗膜防水材及びトップコートからなる防水材5は、通常は、ウレタンゴム系塗膜防水材1の上にウレタンゴム系塗膜防水材用トップコート2を積層させる。
本発明の塗り替え用水性プライマーは、ウレタンゴム系塗膜防水材及びウレタンゴム系塗膜防水材用トップコートからなる防水材5の塗り替えの際に用いる場合は、ウレタンゴム系塗膜防水材用トップコート2の上に塗装されるものであることが好ましい。すなわち、経年によって劣化したウレタンゴム系塗膜防水材用トップコート2の上に本発明の塗り替え用水性プライマー3を塗装し、その上に新しい塗り替え塗膜4を塗装することで、ウレタンゴム系塗膜防水材用トップコート2と塗り替え塗膜4との密着性を改善することができる。このように、本発明の塗り替え用水性プライマーは、既存の防水材(ウレタンゴム系塗膜防水材用トップコート)と極めて強力な密着性を実現することができるため、塗り替え工事により既存の防水材(ウレタンゴム系塗膜防水材用トップコート)を除去する必要が無く、塗り替え工事において人手と手間、時間を大幅に省略、省力化することができる。
【0038】
ウレタンゴム系塗膜防水材用トップコートとしては特に限定されず、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などを含むものが挙げられる。また、ウレタンゴム系塗膜防水材用トップコートには無機フィラーを含有していてもよい。
【0039】
また、ウレタンゴム系塗膜防水材としては特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0040】
塩化ビニルシートからなる防水材、塩化ビニルシート及びトップコート(好ましくは塩化ビニルシート用トップコート)からなる防水材については特に限定されない。塩化ビニルシート用トップコートとしては、例えば前述のウレタンゴム系塗膜防水材用トップコートと同じものが挙げられる。
【0041】
<塗り替え塗膜>
塗り替え塗膜としては特に限定されず、例えば、ウレタン樹脂塗膜、ウレタン樹脂塗膜用トップコート等が挙げられる。ウレタン樹脂塗膜用トップコートには無機フィラーを含有していてもよいが、無機フィラーの含有量はウレタン樹脂塗膜用トップコートの全質量に対して25質量%未満であることが好ましい。
なお、本発明の塗り替え用水性プライマーを塗装した後、24時間以内に塗り替え塗膜を塗装することが密着性の観点から好ましい。
【0042】
本発明の塗り替え用水性プライマーは、既存の防水材と極めて強力な密着性を実現することができるため、塗り替え工事により既存の防水材を除去する必要が無く、塗り替え工事において人手と手間、時間を大幅に省略、省力化することができる。また、本発明の塗り替え用水性プライマーは臭気の発生が少なく、塗り替え工事の使用に好適である。
【実施例】
【0043】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。
【0044】
(A液の調製)
下記表1に記載した成分を混合してA液を調製した。
【0045】
【0046】
(B液の調製)
水分散型の脂肪族ポリイソシアネート80質量%、有機溶剤20質量%の配合物をB液として用いた。
【0047】
(実施例1)
上記A液及びB液を、A液/B液=9/1(質量比)で用いて塗り替え用プライマー1を調製した。
塗り替え用プライマー1について、前述の式(a)で求めたNCO/OH比は3.0であった。
【0048】
(実施例2)
上記A液及びB液を、A液/B液=10/1(質量比)で用いて塗り替え用プライマー2を調製した。
塗り替え用プライマー2について、前述の式(a)で求めたNCO/OH比は2.7であった。
【0049】
(実施例3)
上記A液及びB液を、A液/B液=13/1(質量比)で用いて塗り替え用プライマー3を調製した。
塗り替え用プライマー3について、前述の式(a)で求めたNCO/OH比は2.0であった。
【0050】
(比較例1)
上記A液及びB液を、A液/B液=22/1(質量比)で用いて塗り替え用プライマーR1を調製した。
塗り替え用プライマーR1について、前述の式(a)で求めたNCO/OH比は1.2であった。
【0051】
(比較例2)
塗り替え用プライマーとして東日本塗料株式会社製の「塗替えプライマーエコ」を用いた。塗替えプライマーエコについて、前述の式(a)で求めたNCO/OH比は0.8以上1.9以下であった。
【0052】
<密着性の評価>
以下のようにして実施例1~3、比較例1~2の塗り替え用プライマーについて密着性を評価した。
【0053】
下記表2及び3に示したウレタンゴム系塗膜防水材上に、表2及び3に示したウレタンゴム系塗膜防水材用トップコートを塗装し、十分養生期間をとり、防水材を作成した。次に、ウレタンゴム系塗膜防水材用トップコート上に、表2及び3に示した各実施例又は比較例の塗り替え用プライマーを塗装した。塗り替え用プライマーを塗装した直後に、塗り替え塗膜として上塗塗料(日本特殊塗料株式会社製、「プルーフロン(登録商標)エコ水性GRトップ」)を塗装した。このようにして密着性評価用の試験片を作成した。
【0054】
クロスカット法(JIS K5600)にて、防水材と塗り替え塗膜との密着性を評価した。
なお、密着性の評価は、試験片を23℃で1週間養生した後と、試験片を50℃の温水中に1週間浸漬させた後との2種類行った。試験片を23℃で1週間養生した後に密着性を評価したものを「1次付着」とし、50℃の温水中に1週間浸漬させた後に密着性を評価したものを「2次付着」とする。1次付着の試験結果を表2に示した。2次付着の試験結果を表3に示した。
クロスカット法の評価結果は剥がれが生じなかったマスの割合で表し、分類0から分類5の6段階で表され、分類0が最も密着性に優れ、分類5が最も密着性に劣る。
分類0 100%
分類1 95%以上100%未満
分類2 85%以上95%未満
分類3 65%以上85%未満
分類4 35%以上65%未満
分類5 35%未満
【0055】
【0056】
【0057】
なお、「バリュー」とは、日本特殊塗料株式会社製の「プルーフロン(登録商標)バリュー」を表し、「エコ」とは、日本特殊塗料株式会社製の「プルーフロン(登録商標)エコ」を表し、「エコDX」とは、日本特殊塗料株式会社製の「プルーフロン(登録商標)エコDX」を表し、「エコ速乾」とは、日本特殊塗料株式会社製の「プルーフロン(登録商標)エコ速乾」を表し、「C-200エコ」とは、日本特殊塗料株式会社製の「プルーフロン(登録商標)C-200エコ」を表し、「GRトップ」とは、日本特殊塗料株式会社製の「プルーフロン(登録商標)GRトップ」を表し、「エコ水性GRトップ」とは、日本特殊塗料株式会社製の「プルーフロン(登録商標)エコ水性GRトップ」を表し、「EGトップシリコン」とは、日本特殊塗料株式会社製の「プルーフロン(登録商標)EGトップシリコン」を表す。
【0058】
表2及び3の結果より、本発明の塗り替え用プライマーは、防水材と塗り替え塗膜との間に設けられることで、層間の密着性を良好にすることができることが分かった。
【0059】
また、実施例1~3の塗り替え用プライマーは、防水材として塩化ビニルシート(アーキヤマデ社製及びタキロンシーアイ社製の2種)の劣化品を用いた場合も上記と同様に優れた密着性を示した。
【符号の説明】
【0060】
1 ウレタンゴム系塗膜防水材
2 ウレタンゴム系塗膜防水材用トップコート
3 塗り替え用水性プライマーから形成されたプライマー層
4 塗り替え塗膜
5 防水材