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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】重合体微粒子および樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/06 20060101AFI20240520BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240520BHJP
   C08K 7/16 20060101ALI20240520BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C08F265/06
C08L101/00
C08K7/16
C08L51/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019229527
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021095548
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】波多江 薫
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-181357(JP,A)
【文献】特開平11-049922(JP,A)
【文献】特開2006-131803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最内層であるコア内層、および
前記コア内層の少なくとも一部を覆うように形成されたコア外層、を有するコア層と、
前記コア外層の少なくとも一部を覆うように形成されたシェル層とを有し、
前記コア層の屈折率と前記シェル層の屈折率との差の絶対値は0~0.003であり、
前記コア層は、当該コア層100重量%中、前記コア外層を2重量%~20重量%含有し、
以下、(i)~(iii)の全てを満たし、
(i)0.3≦|δ-δ|、
(ii)0.3≦|δ-δ|、および
(iii)0.1≧|δ-δ|;
ここで、
δは、前記コア内層を構成する単量体のハンセン溶解度パラメータであり、
δは、前記コア外層を構成する単量体のハンセン溶解度パラメータであり、
δは、前記シェル層を構成する単量体のハンセン溶解度パラメータであり、
前記コア内層は、
(i)構成単位として、
(i-1)アルキルアクリレートに由来する構成単位(単位a)50重量%~90重量%と、
(i-2)芳香族ビニル系化合物に由来する構成単位(単位b)10重量%~50重量%と、
(i-3)前記アルキルアクリレートおよび/または前記芳香族ビニル系化合物と共重合可能な、前記アルキルアクリレートおよび前記芳香族ビニル系化合物以外のビニル系化合物に由来する構成単位(単位c)0重量%~20重量%と、を含有し、
(ii)前記単位a、前記単位bおよび前記単位cの合計が100重量%であり、
前記シェル層は、
(i)構成単位として、
(i-1)アルキルアクリレートに由来する構成単位(単位a)85重量%~97重量%と、
(i-2)芳香族ビニル系化合物に由来する構成単位(単位b)3重量%~15重量%と、
(i-3)前記アルキルアクリレートおよび/または前記芳香族ビニル系化合物と共重合可能な、前記アルキルアクリレートおよび前記芳香族ビニル系化合物以外のビニル系化合物に由来する構成単位(単位c)0重量%~12重量%と、を含有し、
(ii)前記単位a、前記単位bおよび前記単位cの合計が100重量%であり、
前記コア外層は、
(i)構成単位として、
(i-1)アルキルアクリレートに由来する構成単位(単位a)90重量%~100重量%と、
(i-2)芳香族ビニル系化合物に由来する構成単位(単位b)0重量%~10重量%と、
(i-3)前記アルキルアクリレートおよび/または前記芳香族ビニル系化合物と共重合可能な、前記アルキルアクリレートおよび前記芳香族ビニル系化合物以外のビニル系化合物に由来する構成単位(単位c)0重量%~10重量%と、を含有し、
(ii)前記単位a、前記単位bおよび前記単位cの合計が100重量%である、重合体微粒子
【請求項2】
前記重合体微粒子の表面にブロッキング防止剤をさらに含み、
前記コア外層は、ガラス転移温度が-60℃~30℃であり、
前記コア外層は、構成単位として、多官能性単量体および/または架橋性単量体に由来する構成単位をさらに含み、
前記コア外層における、多官能性単量体に由来する構成単位と架橋性単量体に由来する構成単位との合計含有量は、前記コア外層における多官能性単量体および架橋性単量体以外の単量体に由来する全構成単位100重量%に対して、0.1重量%~1.0重量%である、請求項に記載の重合体微粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の重合体微粒子と、マトリクス樹脂とを含有し、
前記重合体微粒子の屈折率と、前記マトリクス樹脂の屈折率との差の絶対値は0~0.003である、樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体微粒子および樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の成形体または熱硬化性樹脂の硬化物の強度および耐衝撃性等を改善するために、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の樹脂組成物にエラストマー、特に、重合体微粒子を添加する方法が広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、以下の塗装代替用アクリル樹脂フィルムが開示されている:特定の構成を有する熱可塑性重合体(I)75~94.5質量部、および、特定の構成を有するゴム含有重合体(II)5.5~25質量部を含んでなり、ゴム含有重合体(II)中の最内層重合体(II-A)およびゴム重合体(II-B)からなる弾性重合体((II-A)+(II-B))の量が5~18質量部[成分(I)および成分(II)の合計100質量部]であることを特徴とする塗装代替用アクリル樹脂フィルム。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-080679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、熱可塑性樹脂(熱可塑性重合体)に添加する重合体微粒子(ゴム含有重合体)の二次粒子が互いに付着し易く、耐ブロッキング性に劣るという問題がある。
【0006】
さらに、熱可塑性樹脂の成形体または熱硬化性樹脂の硬化物に透明性が求められる場合がある。そのような場合、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の樹脂組成物に添加される重合体微粒子にもまた、透明性が求められる。
【0007】
本発明の一実施形態は、前記問題点等に鑑みなされたものであり、その目的は、耐ブロッキング性および透明性に優れる、新規の重合体微粒子、および当該重合体微粒子を含む樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、本発明者らは、コア内層およびコア外層を有するコア層とシェル層とを有し、各層の屈折率およびハンセン溶解度パラメータを特定の範囲内とすることにより、前記課題を解決できることを初めて見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕最内層であるコア内層、および前記コア内層の少なくとも一部を覆うように形成されたコア外層、を有するコア層と、前記コア外層の少なくとも一部を覆うように形成されたシェル層とを有し、前記コア層の屈折率と前記シェル層の屈折率との差の絶対値は0~0.003であり、前記コア層は、当該コア層100重量%中、前記コア外層を2重量%~20重量%含有し、以下、(i)~(iii)の全てを満たす、重合体微粒子:(i)0.3≦|δ-δ|、(ii)0.3≦|δ-δ|、および(iii)0.1≧|δ-δ|;ここで、δは、前記コア内層を構成する単量体のハンセン溶解度パラメータであり、δは、前記コア外層を構成する単量体のハンセン溶解度パラメータであり、δは、前記シェル層を構成する単量体のハンセン溶解度パラメータである。
〔2〕前記コア内層は、(i)構成単位として、(i-1)アルキルアクリレートに由来する構成単位(単位a)50重量%~90重量%と、(i-2)芳香族ビニル系化合物に由来する構成単位(単位b)10重量%~50重量%と、(i-3)前記アルキルアクリレートおよび/または前記芳香族ビニル系化合物と共重合可能な、前記アルキルアクリレートおよび前記芳香族ビニル系化合物以外のビニル系化合物に由来する構成単位(単位c)0重量%~20重量%と、を含有し、(ii)前記単位a、前記単位bおよび前記単位cの合計が100重量%である、〔1〕に記載の重合体微粒子。
〔3〕前記シェル層は、(i)構成単位として、(i-1)アルキルアクリレートに由来する構成単位(単位a)85重量%~97重量%と、(i-2)芳香族ビニル系化合物に由来する構成単位(単位b)3重量%~15重量%と、(i-3)前記アルキルアクリレートおよび/または前記芳香族ビニル系化合物と共重合可能な、前記アルキルアクリレートおよび前記芳香族ビニル系化合物以外のビニル系化合物に由来する構成単位(単位c)0重量%~12重量%と、を含有し、(ii)前記単位a、前記単位bおよび前記単位cの合計が100重量%である、〔1〕または〔2〕に記載の重合体微粒子。
〔4〕前記コア外層は、(i)構成単位として、(i-1)アルキルアクリレートに由来する構成単位(単位a)90重量%~100重量%と、(i-2)芳香族ビニル系化合物に由来する構成単位(単位b)0重量%~10重量%と、(i-3)前記アルキルアクリレートおよび/または前記芳香族ビニル系化合物と共重合可能な、前記アルキルアクリレートおよび前記芳香族ビニル系化合物以外のビニル系化合物に由来する構成単位(単位c)0重量%~10重量%と、を含有し、(ii)前記単位a、前記単位bおよび前記単位cの合計が100重量%である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の重合体微粒子。
〔5〕前記重合体微粒子の表面にブロッキング防止剤をさらに含み、前記コア外層は、ガラス転移温度が-60℃~30℃であり、前記コア外層は、構成単位として、多官能性単量体および/または架橋性単量体に由来する構成単位をさらに含み、前記コア外層における、多官能性単量体に由来する構成単位と架橋性単量体に由来する構成単位との合計含有量は、前記コア外層における多官能性単量体および架橋性単量体以外の単量体に由来する全構成単位100重量%に対して、0.1重量%~1.0重量%である、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の重合体微粒子。
〔6〕〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の重合体微粒子と、マトリクス樹脂とを含有し、前記重合体微粒子の屈折率と、前記マトリクス樹脂の屈折率との差の絶対値は0~0.003である、樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、耐ブロッキング性および透明性に優れる、重合体微粒子、および当該重合体微粒子を含む樹脂組成物を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0012】
〔1.本発明の一実施形態の技術的思想〕
本発明者は、透明性に優れる重合体微粒子を得るべく、鋭意検討を行った。その結果、コア層とシェル層とを有する、すなわちコアシェル構造を有する重合体微粒子について、コア層の屈折率とシェル層の屈折率との差を一定の範囲内とすることにより、透明性に優れる重合体微粒子が得られるという新規知見を得た。さらに、発明者は、コア層の屈折率とシェル層の屈折率との差が一定の範囲内であり、透明性に優れる重合体微粒子は、耐ブロッキング性に劣る傾向があるため、耐ブロッキング性の点で改善の余地がある、という知見を独自に得た。発明者は、透明性に優れる重合体微粒子が耐ブロッキング性に劣る原因について鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、透明性に優れる重合体微粒子が耐ブロッキング性に劣る原因は、以下の点であることを独自に見出した:(a)透明性に優れる重合体微粒子では、シェル層がコア層に入り込んでおり、シェル層がコア層を覆えておらず、重合体微粒子の最表面にコア層の大部分が露出していること;および(b)その結果、重合体微粒子同士がくっ付き易く、重合体微粒子が耐ブロッキング性に劣ること。本発明者は、かかる新規知見に基づき、鋭意検討した結果、以下の知見を初めて見出し、本発明を完成させるに至った:コア内層およびコア外層を有するコア層とシェル層とを有し、各層の屈折率およびハンセン溶解度パラメータを特定の範囲内とすることにより、耐ブロッキング性と透明性との両方に優れる重合体微粒子を得ることができる。
【0013】
〔2.重合体微粒子〕
本発明の一実施形態に係る重合体微粒子は、最内層であるコア内層、および前記コア内層の少なくとも一部を覆うように形成されたコア外層、を有するコア層と、前記コア外層の少なくとも一部を覆うように形成されたシェル層とを有する。前記コア層の屈折率と前記シェル層の屈折率との差の絶対値は0~0.003であり、前記コア層は、当該コア層100重量%中、前記コア外層を2重量%~20重量%含有する。本発明の一実施形態に係る重合体微粒子は、以下、(i)~(iii)の全てを満たす:(i)0.3≦|δ-δ|、(ii)0.3≦|δ-δ|、および(iii)0.1≧|δ-δ|。ここで、δは、前記コア内層を構成する単量体のハンセン溶解度パラメータであり、δは、前記コア外層を構成する単量体のハンセン溶解度パラメータであり、δは、前記シェル層を構成する単量体のハンセン溶解度パラメータである。
【0014】
「本発明の一実施形態に係る重合体微粒子」を、以下「本重合体微粒子」と称する場合もある。本重合体微粒子は、後述するマトリクス樹脂と混合されると樹脂組成物となる。
【0015】
本重合体微粒子は、前記構成を有するため、特に、コア層の屈折率とシェル層の屈折率との差の絶対値が0~0.003であり、コア層が、当該コア層100重量%中、コア外層を20重量%以下含有するため、透明性に優れるという利点を有する。本重合体微粒子は、前記構成を有するため、特に、コア層とシェル層とを有するため、コアシェル構造を有するともいえる。本重合体微粒子は、前記構成を有するため、特に、コア内層およびシェル層の各々に対してハンセン溶解度パラメータの差の絶対値が0.3以上であるコア外層を、コア層100重量%中、2重量%以上含有するため、コアシェル構造が明瞭である。換言すれば、本重合体微粒子において、シェル層はコア層に入り込み難く、シェル層はコア層を広く覆っている。その結果、本重合体微粒子は、耐ブロッキング性に優れるという利点を有する。
【0016】
以下、本重合体微粒子におけるコア内層、コア外層、コア層およびシェル層の各態様について詳説する。なお、以下のコア層に関する態様は、特に言及する場合を除き、コア内層のみに適用されてもよく、コア外層のみに適用されてもよく、さらに、コア内層およびコア外層の両方に適用されてもよい。
【0017】
(2-1.コア層)
コア層は、最内層であるコア内層、および、コア内層の少なくとも一部を覆うように形成されたコア外層を有する。コア外層は、コア内層の全周囲を覆っていることが好ましい。コア外層は、コア内層およびシェル層の両方に接する(隣接する)ものであることが好ましい。当該構成によると、シェル層は、前記(ii)を満たすコア外層と接するため、シェル層がコア層に入り込む可能性が小さくなる。その結果、得られる重合体微粒子は、耐ブロッキング性に優れるという利点を有する。コア外層は、コア内層の全周囲を覆っていることが好ましい。当該構成によると、シェル層は、前記(ii)を満たすコア外層のみと接するため、シェル層がコア層に入り込む可能性がより小さくなる。その結果、得られる重合体微粒子は、耐ブロッキング性により優れるという利点を有する。コア層は、コア内層とコア外層との間に層が設けられていてもよい。
【0018】
コア層は、弾性体であることが好ましい。コア層は、ゴムとしての性質を有する弾性体からなる層を有することが好ましく、コア内層が弾性体からなる層であることがより好ましい。当該構成によると、得られる樹脂組成物の成形体または硬化物が靱性に優れるという利点を有する。コア層は、コア内層、コア外層またはその他の層として、非弾性体からなる層を有していてもよい。
【0019】
コア層の組成としては、特に限定されない。コア層としては、天然ゴム、ジエン系ゴム、アクリレート系ゴムおよびオルガノシロキサン系ゴムなどが挙げられる。コア層は、ジエン系ゴム、アクリレート系ゴムおよびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。弾性体は、上述したゴム以外に、天然ゴムを含んでいてもよい。弾性体は、弾性部、またはゴム粒子と言い換えることもできる。
【0020】
ジエン系ゴムは、構成単位として、ジエン系単量体に由来する構成単位を含む弾性体である。コア層がジエン系ゴムを含む場合、得られる重合体微粒子を含む樹脂組成物は、靱性および耐衝撃性に優れる成形体または硬化物を提供することができる。
【0021】
ジエン系単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2-クロロ-1,3-ブタジエンなどが挙げられる。これらのジエン系単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
ジエン系ゴムは、構成単位として、ジエン系単量体と共重合可能なジエン系単量体以外のビニル系単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。ジエン系単量体と共重合可能なジエン系単量体以外のビニル系単量体(以下、ビニル系単量体A、とも称する。)としては、例えば、芳香族ビニル系化合物、シアン化ビニル系化合物、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸エステル、などが挙げられる。
【0023】
芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレンなどが好適に挙げられる。
【0024】
シアン化ビニル系化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが好適に挙げられる。
【0025】
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸などが好適に挙げられる。
【0026】
不飽和カルボン酸エステルとしては、炭素数1~12のアルキルエステルを有するアクリル酸エステル、炭素数1~12のアルキルエステルを有するメタクリル酸エステルなどが好適に挙げられる。
【0027】
ビニル系単量体Aは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ビニル系単量体Aの中でも、特に好ましくはスチレンである。
【0028】
ジエン系ゴムとしては、(a)1,3-ブタジエンに由来する構成単位のみからなるブタジエンゴム、(b)1,3-ブタジエンとスチレンとの共重合体であるブタジエン-スチレンゴム、(c)アクリロニトリルと1,3-ブタジエンとの共重合体であるアクリロニトリル-ブタジエンスゴム、および(d)1,3-ブタジエンとアクリル酸エステル単量体との共重合体であるブタジエン-アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。ブタジエン-スチレンゴムは、屈折率の調整により、得られる成形体または硬化物の透明性を高めることができる。
【0029】
アクリレート系ゴムは、構成単位として、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位を含む弾性体である。コア層がアクリレート系ゴムを含む場合、多種の単量体の組合せにより、様々な構成単位の組成を有するコア層を設計することができる。本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0030】
(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、(a)メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類;(b)フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環含有(メタ)アクリレート類;(c)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;(d)グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアルキル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどのグリシジル(メタ)アクリレート類;(e)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(メタ)アクリレート系ゴムは、構成単位として、(メタ)アクリレート系単量体と共重合可能な(メタ)アクリレート系単量体以外のビニル系単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。(メタ)アクリレート系単量体と共重合可能な(メタ)アクリレート系単量体以外のビニル系単量体(以下、ビニル系単量体B、とも称する。)としては、例えば、上述したジエン系単量体、芳香族ビニル系化合物およびシアン化ビニル系化合物、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸エステルなどが挙げられる。ビニル系単量体Bは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
コア層がオルガノシロキサン系ゴムを含む場合、得られる重合体微粒子を含む樹脂組成物は、十分な耐熱性を有し、かつ低温での耐衝撃性に優れる成形体または硬化物を提供することができる。
【0033】
オルガノシロキサン系ゴムとしては、例えば、(a)ジメチルシリルオキシ、ジエチルシリルオキシ、メチルフェニルシリルオキシ、ジフェニルシリルオキシ、ジメチルシリルオキシ-ジフェニルシリルオキシなどの、アルキルもしくはアリール2置換シリルオキシ単位から構成されるオルガノシロキサン系重合体、および(b)側鎖のアルキルの一部が水素原子に置換されたオルガノハイドロジェンシリルオキシなどの、アルキルもしくはアリール1置換シリルオキシ単位から構成されるオルガノシロキサン系重合体、が挙げられる。これらのオルガノシロキサン系重合体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
コア内層は、構成単位として、(i)アルキルアクリレートに由来する構成単位(単位a)と、(ii)芳香族ビニル系化合物に由来する構成単位(単位b)とを含有することが好ましい。コア内層は、構成単位として、任意で、アルキルアクリレートおよび/または芳香族ビニル系化合物と共重合可能な、アルキルアクリレートおよび前記芳香族ビニル系化合物以外のビニル系化合物に由来する構成単位(単位c)をさらに含有していてもよい。単位cとしては、アルキルアクリレート以外の(メタ)アクリレート系単量体、および/または、芳香族ビニル系化合物以外のビニル系単量体Aに由来する構成単位が挙げられる。コア内層が、構成単位として、単位aと単位bと、任意で単位cとを含有する場合、得られる重合体微粒子は、耐ブロッキング性により優れるという利点を有する。
【0035】
コア内層において、単位aは、安価であり、かつ安定的に供給されていることから、ブチルアクリレートに由来する構成単位であることが好ましい。
【0036】
コア内層において、単位bは、熱安定性が高く、安価であり、かつ安定的に供給されていることから、スチレンであることが好ましい。
【0037】
コア内層は、構成単位として、単位a、単位bおよび単位cの合計100重量%中、(i)単位a50重量%~90重量%と、単位b10重量%~50重量%と、単位c0重量%~20重量%とを有することが好ましく、(ii)単位a55重量%~85重量%と、単位b15重量%~45重量%と、単位c0重量%~15重量%とを有することがより好ましく、(iii)単位a60重量%~80重量%と、単位b20重量%~40重量%と、単位c0重量%~10重量%とを有することがより好ましく、(iv)単位a65重量%~75重量%と、単位b25重量%~35重量%と、単位c0重量%~5重量%とを有することがさらに好ましく、(v)単位a66重量%~72重量%と、単位b28重量%~34重量%とを有することが特に好ましい。本重合体微粒子は特定の構成を有するコア外層を含有するため、コア内層が単位bを上述した範囲で含む場合であっても、シェル層がコア層に入り込む可能性は小さい。その結果、得られる重合体微粒子は、耐ブロッキング性にさらに優れるという利点を有する。
【0038】
コア外層は、構成単位として、アルキルアクリレートに由来する構成単位(単位a)を含有することが好ましい。コア外層は、構成単位として、任意で、(i)芳香族ビニル系化合物に由来する構成単位(単位b)、および/または、(ii)アルキルアクリレートおよび/または芳香族ビニル系化合物と共重合可能な、アルキルアクリレートおよび前記芳香族ビニル系化合物以外のビニル系化合物に由来する構成単位(単位c)をさらに含有していてもよい。単位cとしては、アルキルアクリレート以外の(メタ)アクリレート系単量体、および/または、芳香族ビニル系化合物以外のビニル系単量体Aに由来する構成単位が挙げられる。コア外層が、構成単位として、単位aと、任意で単位bおよび/または単位cとを含有する場合、得られる重合体微粒子は、耐ブロッキング性により優れるという利点を有する。
【0039】
コア外層において、単位aは、安価であり、かつ安定的に供給されていることから、ブチルアクリレートに由来する構成単位であることが好ましい。
【0040】
コア外層は、構成単位として、単位a、単位bおよび単位cの合計100重量%中、(i)単位a90重量%~100重量%と、単位b0重量%~10重量%と、単位c0重量%~10重量%とを有することが好ましく、(ii)単位a92重量%~100重量%と、単位b0重量%~8重量%と、単位c0重量%~8重量%とを有することがより好ましく、(iii)単位a95重量%~100重量%と、単位b0重量%~5重量%と、単位c0重量%~5重量%とを有することがより好ましく、(iv)単位a97重量%~100重量%と、単位b0重量%~3重量%と、単位c0重量%~3重量%とを有することがさらに好ましく、(v)単位a100重量%を有し、すなわち単位aのみを有することが特に好ましい。コア外層の構成単位をこれらの構成とすることにより、前記(i)および(ii)を容易に満たすことができる。その結果、得られる重合体微粒子は、耐ブロッキング性にさらに優れるという利点を有する。
【0041】
(コア層の架橋構造)
重合体微粒子の、マトリクス樹脂中での分散安定性を保持できることから、コア層には、架橋構造が導入されていることが好ましい。コア層に対する架橋構造の導入方法としては、一般的に用いられる手法を採用することができる。当該導入方法としては、例えば、コア層の製造において、コア層を構成し得る単量体に、架橋剤として、多官能性単量体および/またはメルカプト基含有化合物などの架橋性単量体を混合し、次いで重合する方法が挙げられる。本明細書において、コア層など重合体を製造することを、重合体を重合する、とも称する。本明細書において、(a)多官能性単量体、および(b)メルカプト基含有化合物などの架橋性単量体は、「架橋剤」と称する場合もある。
【0042】
また、オルガノシロキサン系ゴムに架橋構造を導入する方法としては、次のような方法も挙げられる:(a)オルガノシロキサン系ゴムを重合するときに、多官能性のアルコキシシラン化合物と他の材料とを併用する方法、(b)ビニル反応性基、メルカプト基などの反応性基をオルガノシロキサン系ゴムに導入し、その後ビニル重合性の単量体または有機過酸化物などを添加してラジカル反応させる方法、または、(c)オルガノシロキサン系ゴムを重合するときに、多官能性単量体および/またはメルカプト基含有化合物などの架橋性単量体を他の材料と混合し、次いで重合を行う方法、など。
【0043】
多官能性単量体は、同一分子内にラジカル重合性反応基を2つ以上有する単量体ともいえる。前記ラジカル重合性反応基は、好ましくは炭素-炭素二重結合である。多官能性単量体としては、ブタジエンは含まれず、アリル(メタ)アクリレート類、アリルアルキル(メタ)アクリレート類およびアリルオキシアルキル(メタ)アクリレート類のような、エチレン性不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートなどが例示される。多官能性単量体の具体例として、(メタ)アクリル基を2つ以上有する単量体を以下に列挙する。(メタ)アクリル基を2つ有する単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、およびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類が挙げられる。前記ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレートなどが例示される。(メタ)アクリル基を3つ有する単量体としては、アルコキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類、グリセロールプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどが例示される。前記アルコキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(メタ)アクリル基を4つ有する単量体としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、などが例示される。(メタ)アクリル基を5つ有する単量体としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが例示される。(メタ)アクリル基を6つ有する単量体としては、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレートなどが例示される。多官能性単量体としては、さらに、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなども挙げられる。
【0044】
本重合体微粒子において、コア層に架橋構造を導入するために使用する多官能性単量体としては、安価であり、かつ安定的に供給されていることから、アリル(メタ)アクリレートが好ましく、アリルメタクリレートがより好ましい。
【0045】
本発明の一実施形態において、コア内層には架橋構造が導入されていることが好ましいものの、架橋構造の導入率は小さいことが好ましい。換言すれば、コア内層は、構成単位として、多官能性単量体および/または架橋性単量体に由来する構成単位をさらに含むことが好ましいものの、コア内層における、多官能性単量体および/または架橋性単量体に由来する前記構成単位の含有量は、少ない方が好ましい。コア内層における、多官能性単量体に由来する構成単位と架橋性単量体に由来する構成単位との合計含有量は、コア内層における架橋剤以外の単量体に由来する全構成単位100重量%に対して、10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。当該構成によると、得られる重合体微粒子は、透明性に優れるという利点を有する。コア内層における、多官能性単量体に由来する構成単位と架橋性単量体に由来する構成単位との合計含有量は、コア内層における架橋剤以外の単量体に由来する全構成単位100重量%に対して、0.1重量%~5重量%であることがより好ましく、0.1重量%~3重量%であることがより好ましく、0.1重量%~2.0重量%であることがより好ましく、0.1重量%~1.5重量%であることがより好ましく、0.1重量%~1.0重量%であることがより好ましく、0.2重量%~0.9重量%であることがより好ましく、0.3重量%~0.8重量%であることがさらに好ましく、0.4重量%~0.6重量%であることが特に好ましい。当該構成によると、得られる重合体微粒子を含む樹脂組成物の成形体または硬化物が耐衝撃性に優れるという利点を有する。
【0046】
本発明の一実施形態において、コア外層には架橋構造が導入されていることが好ましいものの、架橋構造の導入率は小さいことが好ましい。換言すれば、コア外層は、構成単位として、多官能性単量体および/または架橋性単量体に由来する構成単位をさらに含むことが好ましいものの、コア外層における、多官能性単量体および/または架橋性単量体に由来する前記構成単位の含有量は、少ない方が好ましい。コア外層における、多官能性単量体に由来する構成単位と架橋性単量体に由来する構成単位との合計含有量は、コア外層における架橋剤(多官能性単量体および架橋性単量体)以外の単量体に由来する全構成単位100重量%に対して、10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。当該構成によると、得られる重合体微粒子は、透明性に優れるという利点を有する。コア外層における、多官能性単量体に由来する構成単位と架橋性単量体に由来する構成単位との合計含有量は、コア外層における架橋剤(多官能性単量体および架橋性単量体)以外の単量体に由来する全構成単位100重量%に対して、0.1重量%~5重量%であることがより好ましく、0.1重量%~3重量%であることがより好ましく、0.1重量%~2.0重量%であることがより好ましく、0.1重量%~1.5重量%であることがより好ましく、0.1重量%~1.0重量%であることがより好ましく、0.2重量%~0.9重量%であることがより好ましく、0.3重量%~0.8重量%であることがさらに好ましく、0.4重量%~0.6重量%であることが特に好ましい。当該構成によると、得られるコア層の表面は軟質となる。それ故に、ブロッキング防止剤を有する重合体微粒子の製造過程、例えば、ブロッキング防止剤を有する重合体微粒子の粉粒体の製造過程において、当該粉粒体同士の衝突および粉粒体と製造装置壁面との衝突などにより、重合体微粒子(粉粒体)の表面に付着しているブロッキング防止剤の剥離が少ないものとなる。その結果、得られる重合体微粒子は、耐ブロッキング性により優れるという利点を有する。
【0047】
(コア層のガラス転移温度)
コア層のガラス転移温度は、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がより好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がより好ましく、20℃以下がより好ましく、10℃以下がより好ましく、5℃以下がより好ましく、0℃以下がより好ましく、-3℃以下がより好ましく、-5℃以下がより好ましく、-7℃以下が特に好ましい。本明細書において、「ガラス転移温度」を「Tg」と称する場合もある。当該構成によると、低いTgを有する重合体微粒子を得ることができる。その結果、得られる重合体微粒子を含む樹脂組成物は、優れた靱性を有する成形体または硬化物を提供できる。
【0048】
一方、得られる成形体または硬化物の弾性率(剛性)の低下を抑制することができる、すなわち十分な弾性率(剛性)を有する成形体または硬化物が得られることから、コア層のTgは、0℃よりも大きいことが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることが特に好ましく、120℃以上であることが最も好ましい。
【0049】
コア外層は、ガラス転移温度が-60℃~30℃であることが好ましく、-60℃~0℃であることがより好ましく、-60℃~-20℃であることがより好ましく、-60℃~-40℃であることがさらに好ましく、-60℃~-50℃であることが特に好ましい。当該構成によると、得られるコア層の表面は軟質となる。それ故に、得られる重合体微粒子およびブロッキング防止剤を含む樹脂組成物の製造過程において、樹脂組成物の衝突および樹脂組成物と製造装置壁面との衝突などにより、樹脂組成物の表面に付着しているブロッキング防止剤の剥離が少ないものとなる。その結果、得られる重合体微粒子は、耐ブロッキング性により優れる樹脂組成物を提供できる。
【0050】
(コア層の体積平均粒子径)
コア層の体積平均粒子径は、0.03μm~50.00μmが好ましく、0.05μm~10.00μmがより好ましく、0.08μm~2.00μmがより好ましく、0.09μm~1.00μmがより好ましく、0.09μm~0.80μmがより好ましく、0.09μm~0.50μmがより好ましく、0.10μm~0.40μmがさらに好ましく、0.20μm~0.30μmが特に好ましい。コア層の体積平均粒子径が(a)0.03μm以上である場合、所望の体積平均粒子径を有するコア層を安定的に得ることができ、(b)50.00μm以下である場合、得られる成形体または硬化物の耐熱性および耐衝撃性が良好となる。コア層の体積平均粒子径は、コア層を含む水性ラテックスを試料として、動的光散乱式粒子径分布測定装置などを用いて、測定することができる。コア層の体積平均粒子径の測定方法については、下記実施例にて詳述する。
【0051】
(コア層の屈折率)
コア層の屈折率は、特に限定されない。コア層の屈折率は、1.200~1.700が好ましく、1.300~1.650がより好ましく、1.400~1.600がさらに好ましく、1.450~1.550が特に好ましい。
【0052】
本明細書において、コア層の屈折率は、(a)コア内層の屈折率に、コア層におけるコア内層の重量分率を乗じて得られた積と、(b)コア外層の屈折率に、コア層におけるコア外層の重量分率を乗じて得られた積と、の和である。
【0053】
本明細書におけるコア内層の屈折率について説明する。まず、コア内層が1種の構成単位からなる場合、換言すればコア内層の重合に使用する単量体が1種類である場合の、コア内層の屈折率について説明する。この場合、本明細書において、コア内層の屈折率は、(a)コア内層を構成する構成単位の由来である単量体の屈折率であり、(b)コア内層の重合に使用する単量体の屈折率であるともいえる。コア内層が2種以上の構成単位からなる場合、換言すればコア内層の重合に使用する単量体が2種類以上である場合の、コア内層の屈折率について説明する。この場合、本明細書において、コア内層の屈折率は、(a)コア内層に含まれる各構成単位の由来である各単量体の屈折率に、コア内層の全構成単位に対する当該各構成単位の重量比率を乗じて、得られた各積の和であり、(b)コア内層の重合に使用する各単量体の屈折率に、コア内層の重合に使用する全単量体に対する、当該各単量体の使用割合(重量%)を乗じて、得られた各積の和であるともいえる。
【0054】
本明細書では、屈折率を算出するときに考慮する単量体から、架橋剤は除外する。すなわち本明細書では、屈折率を算出するときに考慮する単量体から、(a)多官能性単量体、および(b)メルカプト基含有化合物などの架橋性単量体は除外する。すなわち、本明細書では、屈折率の算出における「全構成単位」とは、構成単位のうち、架橋剤以外の単量体に由来する構成単位の全てを意図する。また、本明細書では、屈折率の算出における「重合に使用する全単量体」とは、重合に使用する単量体のうち、架橋剤以外の単量体の全てを意図する。
【0055】
本明細書におけるコア外層の屈折率については、上述した「コア内層の屈折率」に関する記載を、「コア内層」を「コア外層」に置き換えた上で、援用する。下記実施例にて、コア層の屈折率の算出方法を詳述する。
【0056】
(コア内層のハンセン溶解度パラメータδおよびコア外層のハンセン溶解度パラメータδ
コア内層のハンセン溶解度パラメータδは、特に限定されない。コア内層のハンセン溶解度パラメータδは、16.0~20.0が好ましく、16.5~19.5がより好ましく、17.0~19.0がさらに好ましく、17.5~18.5が特に好ましい。
【0057】
本明細書におけるコア内層のハンセン溶解度パラメータδについて説明する。まず、コア内層が1種の構成単位からなる場合、換言すればコア内層の重合に使用する単量体が1種類である場合の、コア内層のハンセン溶解度パラメータδについて説明する。この場合、本明細書において、コア内層のハンセン溶解度パラメータδは、(a)当該構成単位の由来である単量体のハンセン溶解度パラメータであり、(b)コア内層の重合に使用する単量体のハンセン溶解度パラメータであるともいえる。次に、コア内層が2種以上の構成単位からなる場合、換言すればコア内層の重合に使用する単量体が2種類以上である場合の、コア内層のハンセン溶解度パラメータδについて説明する。この場合、本明細書において、コア内層のハンセン溶解度パラメータδは、(a)コア内層に含まれる各構成単位の由来である各単量体のハンセン溶解度パラメータに、コア内層の全構成単位に対する当該各構成単位の重量比率を乗じて、得られた各積の和であり、(b)コア内層の重合に使用する各単量体のハンセン溶解度パラメータに、コア内層の重合に使用する全単量体に対する、当該各単量体の使用割合(重量%)を乗じて、得られた各積の和であるともいえる。
【0058】
本明細書では、ハンセン溶解度パラメータを算出するときに考慮する単量体から、架橋剤として機能する多官能性単量体および架橋性単量体は除外する。すなわち、本明細書では、ハンセン溶解度パラメータの算出における「全構成単位」とは、構成単位のうち、多官能性単量体以外でありかつ架橋性単量体以外である単量体に由来する構成単位の全てを意図する。また、本明細書では、ハンセン溶解度パラメータの算出における「重合に使用する全単量体」とは、重合に使用する単量体のうち、多官能性単量体以外でありかつ架橋性単量体以外である単量体の全てを意図する。
【0059】
コア外層のハンセン溶解度パラメータδは、特に限定されない。コア外層のハンセン溶解度パラメータδは、16.0~20.0が好ましく、16.5~19.5がより好ましく、17.0~19.0がさらに好ましく、17.5~18.5が特に好ましい。
【0060】
本明細書におけるコア外層のハンセン溶解度パラメータδについては、上述した「コア内層のハンセン溶解度パラメータδ」に関する記載を、「コア内層」を「コア外層」に置き換えた上で、援用する。下記実施例にて、コア内層のハンセン溶解度パラメータδおよびコア外層のハンセン溶解度パラメータδの算出方法を詳述する。
【0061】
(コア層の割合)
重合体微粒子中に占めるコア層の割合は、重合体微粒子全体を100重量%として、40~97重量%が好ましく、50~93重量%がより好ましく、60~85重量%がより好ましく、65~80重量%がさらに好ましく、68~76重量%が特に好ましい。コア層の前記割合が40重量%以上である場合、得られる重合体微粒子を含む樹脂組成物は、靱性および耐衝撃性に優れる成形体または硬化物を提供することができる。コア層の前記割合が、97重量%以下である場合、重合体微粒子は凝集しにくいため、得られる重合体微粒子を含む樹脂組成物が高粘度となることがない。その結果、当該樹脂組成物は取り扱い易いものとなり得る。
【0062】
(コア外層の割合)
コア層は、当該コア層100重量%中コア外層を、2重量%~20重量%含有し、5重量%~20重量%含有することが好ましく、8重量%~20重量%含有することがより好ましく、11重量%~20重量%含有することがさらに好ましく、15重量%~20重量%含有することが特に好ましい。当該構成によると、得られる重合体微粒子は、透明性および耐ブロッキング性により優れるという利点を有する。
【0063】
コア内層またはコア外層の各々は、構成単位の組成が同一である1種類の重合体のみからなってもよい。コア内層またはコア外層の各々は、構成単位の組成がそれぞれ異なる複数種の重合体からなってもよい。換言すれば、コア内層またはコア外層の各々は、それぞれ別々に重合された複数の重合体の複合体を含んでいてもよく、それぞれ順に重合して得られる1つの重合体を含んでいてもよい。複数の重合体をそれぞれ順に重合することを、多段重合とも称し、多段重合により得られる1つの重合体を、多段重合体とも称する。多段重合体において、複数の重合体のそれぞれが、層構造を形成していてもよい。複数の重合体のそれぞれが層構造を形成している多段重合体は、多層重合体ともいえる。すなわち、本発明の一実施形態において、コア内層またはコア外層の各々は、複数種の重合体の複合体、多段重合体および/または多層重合体を含んでいてもよい。
【0064】
(2-2.シェル層)
シェル層は、コア層に対してグラフトしている重合体により構成される層である。シェル層は、コア外層の少なくとも一部を覆っており、コア外層の全周囲を覆っていることが好ましい。本重合体微粒子では、コア外層がコア内層の全周囲を覆っており、かつ、シェル層がコア外層の全周囲を覆っていることが特に好ましい。当該構成によると、マトリクス樹脂中の重合体微粒子の分散性が良好となるという利点を有する。
【0065】
以下、シェル層の各態様について説明するが、以下に詳説した事項以外は、適宜、(2-1.コア層)の記載を援用する。
【0066】
シェル層の組成としては、特に限定されない。シェル層は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含むことが好ましい。当該構成によると、得られるシェル層は、重合体微粒子において、例えば以下の(a)~(c)のような役割を担うことができる:(a)マトリクス樹脂と重合体微粒子との相溶性を向上させること、(b)マトリクス樹脂中の重合体微粒子の分散性を向上させること、および(c)得られる重合体微粒子を含む樹脂組成物中または成形体もしくは硬化物中において重合体微粒子が一次粒子の状態で分散することを可能にすること。芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体の各々の具体例については上述した説明を援用する。
【0067】
シェル層は、構成単位として、(i)アルキルアクリレートに由来する構成単位(単位a)と、(ii)芳香族ビニル系化合物に由来する構成単位(単位b)とを含有することが好ましい。シェル層は、構成単位として、任意で、アルキルアクリレートおよび/または芳香族ビニル系化合物と共重合可能な、アルキルアクリレートおよび前記芳香族ビニル系化合物以外のビニル系化合物に由来する構成単位(単位c)をさらに含有していてもよい。単位cとしては、アルキルアクリレート以外の(メタ)アクリレート系単量体、および/または、芳香族ビニル系化合物以外のビニル系単量体Aに由来する構成単位が挙げられる。シェル層が、構成単位として、単位aと単位bと、任意で単位cとを含有する場合、得られる重合体微粒子は、耐ブロッキング性により優れるという利点を有する。
【0068】
シェル層において、単位aは、安価であり、かつ安定的に供給されていることから、ブチルアクリレートに由来する構成単位であることが好ましい。
【0069】
シェル層において、単位bは、熱安定性が高く、安価であり、かつ安定的に供給されていることから、スチレンであることが好ましい。
【0070】
シェル層は、構成単位として、単位a、単位bおよび単位cの合計100重量%中、(i)単位a85重量%~97重量%と、単位b3重量%~15重量%と、単位c0重量%~12重量%とを有することが好ましく、(ii)単位a86重量%~96重量%と、単位b4重量%~14重量%と、単位c0重量%~8重量%とを有することがより好ましく、(iii)単位a88重量%~94重量%と、単位b6重量%~12重量%と、単位c0重量%~4重量%とを有することがさらに好ましく、(iv)単位a90重量%~92重量%と、単位b8重量%~10重量%とを有することが特に好ましい。本重合体微粒子は特定の構成を有するコア外層を含有するため、シェル層が単位bを上述した範囲で含む場合であっても、シェル層がコア層に入り込む可能性は小さい。その結果、得られる重合体微粒子は、耐ブロッキング性にさらに優れるという利点を有する。
【0071】
シェル層は、構成単位として、反応性基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。前記反応性基を有する単量体は、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、アミノ基、イミド基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、環状エステル、環状アミド、ベンズオキサジン基、およびシアン酸エステル基からなる群から選択される1種以上の反応性基を有する単量体であることが好ましく、エポキシ基、水酸基、およびカルボン酸基からなる群から選択される1種以上の反応性基を有する単量体であることがより好ましい。前記構成によると、得られる重合体微粒子を含む樹脂組成物中で重合体微粒子のシェル層とマトリクス樹脂とを化学結合させることができる。これにより、得られる重合体微粒子を含む樹脂組成物中または成形体もしくは硬化物中で、重合体微粒子を凝集させることなく、重合体微粒子の良好な分散状態を維持することができる。
【0072】
本発明の一実施形態において、シェル層には架橋構造が導入されていてもよい。本発明の一実施形態において、マトリクス樹脂中の重合体微粒子の分散性が良好となることから、シェル層には架橋構造が導入されていないことが好ましい。
【0073】
(シェル層のガラス転移温度)
シェル層のガラス転移温度は、高いほど好ましく、0℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上がより好ましく、70℃以上がより好ましく、90℃以上がより好ましく、95℃以上がさらに好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。
【0074】
シェル層は、構成単位の組成が同一である1種類の重合体のみからなってもよい。シェル層は、構成単位の組成がそれぞれ異なる複数種の重合体からなってもよい。換言すれば、シェル層は、それぞれ別々に重合された複数の重合体の複合体を含んでいてもよく、多段重合体を含んでいてもよい。シェル層の多段重合体は、多層重合体であってもよい。すなわち、本発明の一実施形態において、シェル層は、複数種の重合体の複合体、多段重合体および/または多層重合体を含んでいてもよい。
【0075】
(シェル層の屈折率)
シェル層の屈折率は、特に限定されない。シェル層の屈折率は、1.200~1.700が好ましく、1.300~1.650がより好ましく、1.400~1.600がさらに好ましく、1.450~1.550が特に好ましい。
【0076】
本明細書におけるシェル層の屈折率については、上述した「コア内層の屈折率」に関する記載を、「コア内層」を「シェル層」に置き換えた上で、援用する。下記実施例にて、シェル層の屈折率の算出方法を詳述する。
【0077】
コア層の屈折率とシェル層の屈折率との差の絶対値は、小さいほど好ましく、例えば、0以上0.003未満であることが好ましい。当該構成によると、得られる重合体微粒子は、透明性により優れるという利点を有する。
【0078】
本明細書において、「コア内層の屈折率」、「コア外層の屈折率」、「コア層の屈折率」、「シェル層の屈折率」および「コア層の屈折率とシェル層の屈折率との差の絶対値」の各々は、小数点以下第4位を四捨五入して得られた値であってもよい。
【0079】
(シェル層のハンセン溶解度パラメータδ
シェル層のハンセン溶解度パラメータδは、特に限定されない。シェル層のハンセン溶解度パラメータδは、16.0~20.0が好ましく、16.5~19.5がより好ましく、17.0~19.0がさらに好ましく、17.5~18.5が特に好ましい。
【0080】
本明細書におけるシェル層のハンセン溶解度パラメータであるδについては、上述した「コア内層のハンセン溶解度パラメータであるδ」に関する記載を、「コア内層」を「シェル層」に置き換えた上で、援用する。下記実施例にて、シェル層のハンセン溶解度パラメータであるδの算出方法を詳述する。
【0081】
本重合体微粒子は、0.4≦|δ-δ|を満たすことが好ましく、0.5≦|δ-δ|を満たすことがより好ましい。当該構成によると、得られる重合体微粒子は、耐ブロッキング性により優れるという利点を有する。本重合体微粒子は、0.4≦|δ-δ|を満たすことが好ましく、0.5≦|δ-δ|を満たすことがより好ましい。当該構成によると、得られる重合体微粒子は、耐ブロッキング性により優れるという利点を有する。本重合体微粒子は、0.4≦|δ-δ|、0.4≦|δ-δ|および0.1≧|δ-δ|を満たすことがさらに好ましく、0.5≦|δ-δ|、0.5≦|δ-δ|および0.1≧|δ-δ|を満たすことが特に好ましい。当該構成によると、得られる重合体微粒子は、耐ブロッキング性にさらに優れるという利点を有する。
【0082】
(2-4.ブロッキング防止剤)
本重合体微粒子は、さらにブロッキング防止剤を含むことが好ましい。重合体微粒子の表面にブロッキング防止剤を含むことがより好ましく、重合体微粒子の凝集体(例えば粉粒体)の表面にブロッキング防止剤を含むことがさらに好ましい。当該構成によると、得られる重合体微粒子は、(a)耐ブロッキング性に優れ、かつ(b)マトリクス樹脂中で重合体微粒子が均一に分散した樹脂組成物を提供できる。
【0083】
ブロッキング防止剤は、本発明の一実施形態の効果を奏するものであれば特に制限されない。ブロッキング防止剤としては、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土、ゼオライト、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、ヒドロケイ酸マグネシウムなどの無機微粒子からなるブロッキング防止剤;有機微粒子からなるブロッキング防止剤;ポリエチレンワックス、高級脂肪酸アミド、金属セッケン、シリコーン油などの油脂系ブロッキング防止剤が挙げられる。これらの中で、無機微粒子からなるブロッキング防止剤および有機微粒子からなるブロッキング防止剤が好ましく、有機微粒子からなるブロッキング防止剤がより好ましい。有機微粒子からなるブロッキング防止剤としては、芳香族ビニルモノマー、ビニルシアンモノマー、(メタ)アクリレートモノマーより選択される1種以上の単量体単位を含む重合体の有機微粒子からなるブロッキング防止剤が特に好ましい。
【0084】
無機微粒子または有機微粒子からなるブロッキング防止剤は、一般に、無機微粒子または有機微粒子が液中に分散してなるもの、またはコロイド状のものである。無機微粒子または有機微粒子からなるブロッキング防止剤は、体積平均粒子径(Mv)が、通常10μm以下であり、0.01μm~10.00μmが好ましく、0.03μm~5.00μmがより好ましく、0.05μm~1.00μmがより好ましく、0.07μm~0.50μmがさらに好ましく、0.08μm~0.35μmが特に好ましい。当該構成によると、単位重量当たりのブロッキング防止剤の粒子数が多いため、重合体微粒子の凝集体(例えば粉粒体)の表面に付着するブロッキング防止剤の数が増大する。その結果、重合体微粒子の凝集体表面のブロッキング防止剤による被覆効果が大きくなり、ブロッキング防止効果が大きくなるという利点を有する。
【0085】
ブロッキング防止剤のガラス転移温度は、重合体微粒子(例えば粉粒体)の保管環境の温度よりも高いほど好ましく、例えば、50℃~160℃が好ましく、60℃~150℃がより好ましく、70℃~140℃がさらに好ましく、80℃~130℃が特に好ましい。当該構成によると、ブロッキング防止効果が増大するという利点を有する。
【0086】
本重合体微粒子におけるブロッキング防止剤の含有量は、重合体微粒子の総重量(100重量%)に対して、0.01重量%~5.00重量%が好ましく、0.50重量%~3.00重量%がより好ましい。
【0087】
(2-5.その他の任意成分)
本重合体微粒子は、必要に応じて、前述した成分以外の、その他の任意成分を含有してもよい。その他の任意成分としては、後述する(3-3.その他添加剤)の項で説明する各種成分を挙げることができる。
【0088】
ブロッキング防止剤およびその他の任意成分は、本重合体微粒子の製造方法における任意の工程中で適宜添加することができる。例えば、ブロッキング防止剤およびその他の任意成分は、重合体微粒子の粉粒体の製造過程において、適宜添加することができる。例えば、重合体微粒子を凝集させる前もしくは凝集させた後の水懸濁液(水性ラテックス)中へ添加することができる。ブロッキング防止剤およびその他の任意成分は、また、重合体微粒子または重合体微粒子の粉粒体へ直接添加することができる。
【0089】
(2-1-4.重合体微粒子の物性)
以下、重合体微粒子の物性について説明する。
【0090】
(重合体微粒子の体積平均粒子径(Mv))
重合体微粒子の体積平均粒子径(Mv)は、所望の粘度を有し、かつ高度に安定した樹脂組成物を得ることができることから、0.03μm~50.00μmが好ましく、0.05μm~10.00μmがより好ましく、0.08μm~2.00μmがより好ましく、0.09μm~1.00μmがより好ましく、0.09μm~0.80μmがより好ましく、0.09μm~0.50μmがより好ましく、0.09μm~0.23μmがさらに好ましく、0.10μm~0.23μmが特に好ましい。また、重合体微粒子の体積平均粒子径(Mv)が前記範囲内である場合、マトリクス樹脂における重合体微粒子の分散性が良好となるという利点も有する。また、重合体微粒子の体積平均粒子径(Mv)が大きいほど、重合体微粒子の凝集力は小さくなる。なお、本明細書において、「重合体微粒子の体積平均粒子径(Mv)」とは、特に言及する場合を除き、重合体微粒子の1次粒子の体積平均粒子径を意図する。重合体微粒子の体積平均粒子径は、重合体微粒子を含む水性ラテックスを試料として、動的光散乱式粒子径分布測定装置などを用いて、測定することができる。重合体微粒子の体積平均粒子径の測定方法については、下記実施例にて詳述する。重合体微粒子の体積平均粒子径は、樹脂組成物の硬化物または成形体を切断し、切断面を電子顕微鏡などを用いて撮像し、得られた撮像データ(撮像画像)を用いて測定することもできる。
【0091】
マトリクス樹脂中における重合体微粒子の体積平均粒子径の個数分布は、低粘度であり取り扱い易い樹脂組成物が得られることから、体積平均粒子径の0.5倍以上1倍以下の半値幅を有することが好ましい。
【0092】
(重合体微粒子の屈折率)
重合体微粒子の屈折率は、特に限定されない。重合体微粒子の屈折率は、1.200~1.700が好ましく、1.300~1.650がより好ましく、1.400~1.600がさらに好ましく、1.450~1.550が特に好ましい。
【0093】
本明細書において、重合体微粒子の屈折率は、(a)コア層の屈折率に、重合体微粒子におけるコア層の重量分率を乗じて得られた積と、(b)シェル層の屈折率に、重合体微粒子におけるシェル層の重量分率を乗じて得られた積と、の和である。
【0094】
(2-3.重合体微粒子の製造方法)
本重合体微粒子は、公知の方法、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、マイクロサスペンジョン重合法などの方法により製造することができる。具体的には、コア内層を形成する単量体を重合することにより、コア内層を製造することができる。さらに、得られたコア内層の存在下にてコア外層を形成する単量体を重合することにより、最内層であるコア内層と、コア内層の少なくとも一部を覆うように形成されたコア外層とを有するコア層を製造することができる。さらに、得られたコア層の存在下にてシェル層を形成する単量体を重合することにより、コア層と、コア層の少なくとも一部を覆うように形成されたシェル層とを有する重合体微粒子を製造することができる。
【0095】
本重合体微粒子におけるコア内層の重合、コア外層の重合およびシェル層の重合は、公知の方法、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、マイクロサスペンジョン重合法などの方法により製造することができる。本重合体微粒子の製造方法、換言すれば本重合体微粒子におけるコア内層の重合、コア外層の重合およびシェル層の重合としては、乳化重合法が好ましい。当該構成によると、(a)重合体微粒子の組成設計が容易である、(b)工業生産が容易である、および(c)後述する本樹脂組成物の製造に好適に用いられ得る重合体微粒子の水性ラテックスが容易に得られる、という利点を有する。
【0096】
本重合体微粒子の製造方法として、乳化重合法を採用する場合、本重合体微粒子の製造には、公知の乳化剤(分散剤)、熱分解型開始剤および/またはレドックス型開始剤を用いることができる。前記熱分解型開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、過酸化水素、過硫酸カリウム、および過硫酸アンモニウムなどの公知の開始剤を挙げることができる。レドックス型開始剤は、(a)有機過酸化物および無機過酸化物などの過酸化物と、(b)必要に応じてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グルコースなどの還元剤、および必要に応じて硫酸鉄(II)などの遷移金属塩、さらに必要に応じてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート剤、さらに必要に応じてピロリン酸ナトリウムなどのリン含有化合物などと、を併用した開始剤である。有機過酸化物としては、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、およびt-ヘキシルパーオキサイドなどが挙げられる。無機過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0097】
コア内層、コア外層および/またはシェル層に架橋構造を導入する目的で、コア内層、コア外層および/またはシェル層の重合にて、架橋剤として多官能性単量体を使用する場合、当該重合において、公知の連鎖移動剤を公知の使用量の範囲で用いることができる。コア内層、コア外層および/またはシェル層の重合において、連鎖移動剤を使用することにより、得られるコア内層、コア外層および/またはシェル層の分子量および/または架橋度を容易に調節することができる。
【0098】
本重合体微粒子の製造には、上述した成分に加えて、さらに界面活性剤を用いることができる。前記界面活性剤の種類および使用量は、公知の範囲である。
【0099】
本重合体微粒子の製造において、重合における重合温度、圧力、および脱酸素などの条件は、公知の範囲のものを適用することができる。
【0100】
上述した態様を有する製造方法により製造されることにより、本重合体微粒子は重合体微粒子を含む水性ラテックスとして得られる。重合体微粒子を含む水性ラテックスを物理的処理および/または化学的処理することにより、水性ラテックスから重合体微粒子の凝集体(例えば粉粒体)を得ることができる。本重合体微粒子の粉粒体もまた、本発明の一実施形態である。
【0101】
物理的処理としては特に限定されない。重合体微粒子を含む水性ラテックスを、物理的処理として、例えば、噴霧乾燥および凍結乾燥することにより、水性ラテックスから重合体微粒子の粉粒体を得ることができる。
【0102】
化学的処理としては、重合体微粒子を含む水性ラテックスに対する凝固剤の添加などを挙げることができる。凝固剤としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの塩、並びに、塩酸、硫酸などの酸を上げることができる。重合体微粒子を含む水性ラテックスに凝固剤を添加することにより、水性ラテックス中の重合体微粒子を凝集させることができ、重合体微粒子の凝集体を含むスラリーを得ることができる。重合体微粒子を含む水性ラテックスに凝固剤を添加することに加えて、水性ラテックスを加熱処理してもよい。重合体微粒子の凝集体を含むスラリーから水相を分離することにより、重合体微粒子の凝集体を得ることができる。得られた重合体微粒子の凝集体を洗浄してもよく、および/または、乾燥してもよい。上述したような、凝固剤の添加、加熱、洗浄および乾燥などにより、重合体微粒子の粉粒体を得ることができる。
【0103】
本明細書において、「粉粒体」とは、粉体と粒体の両方を含み、粉、粒などが集まった集合体を意味する。また、特に区別する場合、「粉体」とは体積平均粒子径が0.01mm~0.1mmのもの、「粒体」とは体積平均粒子径が0.1mm~10mmのものを意味する。ただし、粉粒体には粗粒として10mm以上のものが含まれていてもよい。また10μm未満の範囲の「体積平均粒子径」は、動的光散乱式(DLS)粒度分布測定装置Nanotrac WaveII-EX150(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定でき、10μm以上の範囲の「体積平均粒子径」は、レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT3000II(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定することができる。本明細書において、重合体微粒子の粉粒体とは、重合体微粒子の一次粒子の集合体、換言すれば重合体微粒子の二次粒子であってもよい。
【0104】
〔3.樹脂組成物〕
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、〔2.重合体微粒子〕に記載の重合体微粒子と、マトリクス樹脂とを含有し、前記重合体微粒子の屈折率と、前記マトリクス樹脂の屈折率との差の絶対値は0~0.003である。
【0105】
「本発明の一実施形態に係る樹脂組成物」を、以下「本樹脂組成物」と称する場合もある。本樹脂組成物がマトリクス樹脂として熱可塑性樹脂を含む場合、当該樹脂組成物を成形することにより、成形体を製造できる。本樹脂組成物がマトリクス樹脂として熱硬化性樹脂を含む場合、当該樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物を製造できる。
【0106】
本樹脂組成物は、前記構成を有するため、透明性に優れる成形体または硬化物を提供できる。また、本樹脂組成物は、前記構成を有するため、マトリクス樹脂中で重合体微粒子が均一に分散している。従って、本樹脂組成物は、重合体微粒子に由来する機械物性(例えば靱性および弾性など)に優れる成形体を提供できる。
【0107】
(3-1.マトリクス樹脂)
マトリクス樹脂は、特に限定されない。マトリクス樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよく、または任意の熱硬化性樹脂と任意の熱可塑性樹脂との組み合わせであってもよい。
【0108】
マトリクス樹脂における熱硬化性樹脂としては、特に限定されない。マトリクス樹脂における熱硬化性樹脂としては、例えば、エチレン性不飽和単量体を重合させてなる重合体を含む樹脂、芳香族ポリエステル原料を重合させてなる重合体を含む樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリオール樹脂およびアミノ-ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
マトリクス樹脂における熱可塑性樹脂としては、特に限定されない。マトリクス樹脂における熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系重合体、ビニル系共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリウレタンおよびポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
本樹脂組成物において、重合体微粒子の屈折率と、マトリクス樹脂の屈折率との差の絶対値は、0~0.003であり、得られる樹脂組成物の成形体または硬化物が透明性により優れるため、差の絶対値が小さいほど好ましい。重合体微粒子の屈折率と、マトリクス樹脂の屈折率との差の絶対値は、0~0.003であることが好ましく、0~0.002であることがより好ましく、0~0.001であることがさらに好ましく、0以上0.001未満であることが特に好ましい。
【0111】
(3-2.酸化防止剤)
本樹脂組成物は、本発明の一実施形態に係る効果を損なわない範囲において、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤としては、公知のヒンダートフェノール系酸化防止剤およびヒンダードアミン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0112】
(3-3.その他添加剤)
本樹脂組成物は、必要に応じて、前述した成分以外の、その他添加剤をさらに含有してもよい。その他添加剤としては、染料、顔料、安定剤、酸化防止剤、補強剤、充填剤、難燃剤、発泡剤、滑剤、可塑剤などのその他添加剤を含んでいてもよい。換言すれば、本樹脂組成物に対して、必要に応じて、上述したその他添加剤を配合してもよい。
【0113】
(3-4.樹脂組成物の製造方法)
本樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、本発明の一実施形態に係る重合体微粒子と、マトリクス樹脂と、必要に応じて酸化防止剤および/またはその他添加剤とを混合し、得られた混合物を溶融混練することにより、本樹脂組成物を得ることができる。
【0114】
本樹脂組成物の製造方法において、原料の混合には、ヘンシェルミキサーおよびタンブラーミキサーなどが利用でき、得られた混合物の溶融混練には、単軸または二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダーおよびミキシングロールなどの混練機を利用することができる。
【0115】
(3-5.用途)
本重合体微粒子および本樹脂組成物の用途としては特に限定されない。本重合体微粒子および本樹脂組成物は、特に、耐衝撃性が求められる光学用途に好適に利用することができる。例えば、本樹脂組成物の成形体または硬化物は、自動車内外装、パソコン内外装、携帯電話もしくはスマートフォンの内外装、太陽電池内外装などに好適に利用することができる。本樹脂組成物の成形体または硬化物は、(a)カメラ用の撮影レンズ、VTR用の撮影レンズ、プロジェクター用の撮影レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなどの映像分野;(b)CDプレイヤー、DVDプレイヤー、MDプレイヤーなどにおける光ディスク用ピックアップレンズ、一般カメラ用レンズ,ビデオカメラ用レンズ,レーザーピックアップ用の対物レンズ,回折格子,ホログラム,及びコリメータレンズ,レーザープリンター用のfθレンズ,シリンドリカルレンズ,液晶プロジェクター用のコンデンサーレンズ、液晶プロジェクター用の投射レンズ,フレネルレンズ,眼鏡用レンズなどのレンズ分野;(c)CD、DVD、MDなどの光ディスク用の光記録分野;(d)光導波路、プリズム、光ファイバ、光スイッチ、光コネクターなどの光通信分野;(e)自動車ヘッドライト、テールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフなどの車両分野;(f)眼鏡、コンタクトレンズ、内視鏡用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品などの医療機器分野;並びに(g)道路標識、浴室設備、床材、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓、カーポート、照明用レンズ、照明カバー、建材用サイジングなどの建築および建材分野、などにも好適に利用することができる。本樹脂組成物の成形体または硬化物は、(a)液晶用導光板、拡散板などの液晶ディスプレイ用部材;(b)プロジェクター用スクリーン;(c)ヘッドアップディスプレイなどのディスプレイ関連部材(例えば前面板);(d)電子レンジ調理用の容器(例えば食器);(e)家電製品のハウジング;(f)玩具;(g)サングラス;および(h)文房具、などに使用することができる。
【実施例
【0116】
以下、実施例および比較例によって本発明の一実施形態をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の一実施形態は、前記または後記の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更して実施することが可能であり、それら変更された実施形態はいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0117】
<測定方法>
先ず、実施例および比較例における測定方法について、以下説明する。
【0118】
(重合体微粒子および各層の屈折率)
コア内層、コア外層およびシェル層の各層の屈折率は、以下のように算出した。まず、各層の重合時に使用した各単量体の屈折率に、各層の重合に使用した全単量体に対する、当該各単量体の使用割合(重量%)を乗じた。次に、得られた各積を合算して、各層の屈折率を算出した。具体的には、以下の式1に基づき計算した。ここで、メチルメタクリレート(以下MMAとする)の屈折率を1.4900、ブチルアクリレート(以下BAとする)の屈折率を1.4631、スチレン(以下STとする)の屈折率を1.591とした。式1において、それぞれの単量体の使用割合(重量%)は、各層の重合に使用した全単量体(100%重量)に対するそれぞれの単量体の重量分率(重量%)とした。
(式1)
各層の屈折率=(MMAの屈折率×MMAの使用割合)+(BAの屈折率×BAの使用割合)+(STの屈折率×STの使用割合)。
【0119】
さらに、得られたコア内層の屈折率およびコア外層の屈折率を用いて、以下の式2に基づき、コア層の屈折率を計算した。コア内層およびコア外層の重量分率(重量%)は、コア層全体(100重量%)に対するコア内層およびコア外層の各々の重量分率(重量%)とした。
(式2)
コア層の屈折率=(コア内層の屈折率×コア内層の重量分率)+(コア外層の屈折率×コア外層の重量分率)。
【0120】
さらに、得られたコア層の屈折率およびシェル外層の屈折率を用いて、以下の式3に基づき、重合体微粒子の屈折率を計算した。コア層およびシェル外層の重量分率(重量%)は、重合体微粒子(100重量%)に対するコア層およびシェル層の各々の重量分率(重量%)とした。
(式2)
コア層の屈折率=(コア内層の屈折率×コア内層の重量分率)+(コア外層の屈折率×コア外層の重量分率)。
【0121】
(各層のHansen溶解度パラメータ)
コア内層、コア外層およびシェル層の各層のハンセン溶解度パラメータ(δ、δおよびδ)は、以下のように算出した。まず、各層の重合時に使用した各単量体のハンセン溶解度パラメータに、各層の重合に使用した全単量体に対する、当該各単量体の使用割合(重量%)を乗じた。次に、得られた各積を合算して、各層のハンセン溶解度パラメータ(δ、δおよびδ)を算出した。具体的には、以下の式3に基づき計算した。ここで、MMAのハンセン溶解度パラメータを17.9、BAのハンセン溶解度パラメータを17.5、STのハンセン溶解度パラメータを19.1とした。式3において、それぞれの単量体の使用割合(重量%)は、各層の重合に使用した全単量体(100%重量)に対するそれぞれの単量体の重量分率(重量%)とした。
(式3)
各層のハンセン溶解度パラメータ=(MMAのハンセン溶解度パラメータ×MMAの使用割合)+(BAのハンセン溶解度パラメータ×BAの使用割合)+(STのハンセン溶解度パラメータ×STの使用割合)。
【0122】
(重合転化率)
各層の重合後に、得られた水性ラテックスの一部を採取して試料とし、試料の重量を精秤した。試料を120℃の熱風乾燥器中に1時間放置して乾燥した。乾燥後の試料の重量を固形分量として精秤した。次に、乾燥前後の試料の重量の比率を水性ラテックス中の固形成分比率として求めた。最後に、この固形成分比率を用いて、以下の式4により重合転化率を算出した。なお、下記式4において、「仕込み単量体」に多官能性単量体および架橋性単量体は含まれておらず、「仕込み単量体」は使用した単量体のうち、多官能性単量体および架橋性単量体以外の単量体の量である。
(式4)
重合転化率=(仕込み原料の総重量×固形成分比率-単量体以外の原料の総重量)/仕込み単量体の重量×100(%)
(重合体微粒子の体積平均粒子径)
重合体微粒子の体積平均粒子径は、シェル層が形成された後の重合体微粒子の水性ラテックスを使用して、測定した。測定装置として、日機装株式会社製のMICROTRAC UPA150を使用した。
【0123】
(重合体微粒子の粉粒体の調製)
重合体微粒子の透明性および耐ブロッキング性の評価、並びに、重合体微粒子の粉粒体の壊れ試験には、重合体微粒子の粉粒体を使用した。各実施例および比較例にて得られた、重合体微粒子を含む水性ラテックスから、重合体微粒子の粉粒体を調製する方法を、以下に説明する。
【0124】
まず、塩化カルシウムを25重量%の濃度で含む塩化カルシウム水溶液を調製した。次に、脱イオン水400重量部と塩化カルシウム水溶液3.6重量部との混合液を調製し、かかる混合液の温度を70℃に昇温した。続いて、70℃の混合液に、各実施例および比較例にて得られた、重合体微粒子を含む水性ラテックス100重量部を添加した。かかる操作により、重合体微粒子の凝集体を含むスラリーを得た。その後、得られたスラリーにアクリル系ブロッキング防止剤1.5重量部を添加した。得られた反応液の温度を95℃まで昇温した。続いて、スラリーから脱水することにより重合体微粒子の凝集体を得、得られた凝集体を乾燥させることにより、重合体微粒子の粉粒体を得た。
【0125】
(重合体微粒子の耐ブロッキング性)
重合体微粒子の耐ブロッキング性は、重合体微粒子の付着力を測定することにより、評価した。重合体微粒子は、付着力が小さいほど、耐ブロッキング性に優れているといえる。重合体微粒子の付着力は、以下のように測定した。得られた重合体微粒子の粉粒体を、目開き1μmの篩を用いて篩った。その後、直径50mmの底付き金属製筒状容器内に、篩った後の粉粒体30gを収容した。次に、金属製筒状容器内に収容された粉粒体の上に重石(直径48mm、6.3kg)を乗せ、金属製筒状容器を60℃のオーブンで2時間静置した。その後、金属製筒状容器をオーブンから取り出し、室温で1時間静置した。その後、金属製筒状容器内の粉粒体上から重石を外し、容器内から粉粒体を取り出した。かかる操作により、円柱状の重合体微粒子の塊を得た。得られた重合体微粒子の塊の側面(弧側)に対して、レオメーターを用いて垂直に応力を加えて重合体微粒子の塊を崩壊させた。重合体微粒子の塊が崩壊する時の応力を測定することで重合体微粒子の付着力を測定した。重合体微粒子の付着力は、重合体微粒子の塊を崩壊させるのに必要な最低圧力値と定義した。結果を表2および3に示す。
【0126】
(重合体微粒子の粉粒体の壊れ試験)
得られた重合体微粒子の粉粒体を、目開き1μmの篩を用いて篩った。その後、500mL容積を有するポリ容器内に、篩った後の粉粒体50gおよび直径5mmの鉄球10個を収容し、ポリ容器を密閉した。その後、ポリ容器を、シェーカー(ヤマト科学株式会社製:SA31)を用いて、2時間振とうした。ここで、シェーカースピードをダイヤルのMAX値に設定した。その後、ポリ容器内から粉粒体および鉄球を取り出し、鉄球を除いて粉粒体のみを得た。その後、得られた粉粒体を使用して、上述した方法と同じ方法により、重合体微粒子の付着力測定を行った。結果を表2および3に示す。
【0127】
(重合体微粒子の透明性)
重合体微粒子の透明性は、重合体微粒子の成形体のHaze値を測定することにより、評価した。重合体微粒子は、Haze値が小さいほど、透明性に優れているといえる。重合体微粒子のHaze値は、以下のように測定した。得られた重合体微粒子の粉粒体を、ロール成形機に供し、160℃で5分間混錬し、シート状の成形体を得た。得られたシート状の成形体を複数枚重ねてプレス機に供し、170℃で15分間プレスし、2mmの厚さを有する成形体を得た。この成形体について、Haze値を測定した。結果を表2および3に示す。
【0128】
次に、各製造方法、並びに、各実施例および各比較例について、以下説明する。
【0129】
<重合体微粒子の調製>
各実施例および比較例の重合体微粒子の製造において使用した各単量体の使用割合(重量%)は、表1および3に記載の通りである。また、各実施例および比較例の重合体微粒子におけるコア内層、コア外層およびシェル層の重量割合は、表1および3に記載の通りである。各実施例および比較例の重合体微粒子の製造では、得られる重合体微粒子の粒径を同程度にそろえるため、使用した単量体の組成に応じて、乳化剤の使用量を変更した。
【0130】
[実施例1~5および比較例1~3:重合体微粒子を含む水性ラテックスの調製]
(実施例1)
撹拌機を備え、かつ容積が8Lである耐圧重合器中に、脱イオン水175重量部、ホウ酸0.473重量部、炭酸ナトリウム0.0473重量部およびポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製、商品名:フォスファノールRD-510Y)0.0155重量部を仕込んだ。ここで、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸は、炭酸ナトリウムの存在下で、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムとなり、乳化剤として機能した。
【0131】
次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除き、耐圧重合器内部を実質的に酸素がない状態とした。その後、耐圧重合器内部の温度を80℃に昇温した。その後、(a)架橋剤以外の単量体としてMMA0.684重量部、BA4.34重量部およびST1.976重量部、(b)架橋剤として多官能性単量体であるアリルメタクリレート0.035重量部、並びに(c)クメンハイドロパーオキサイド0.035重量部、からなる混合物を、耐圧重合器内に添加した。次に、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(以下EDTAとする)および硫酸第一鉄を脱イオン水に溶解し、EDTAを0.08重量%の濃度で含み、かつ、硫酸第一鉄を0.02重量%の濃度で含むEDTA/硫酸第一鉄混合液を調製した。また、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムを5重量%の濃度で含むホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム溶液を調製した。次に、EDTA/硫酸第一鉄混合液0.07重量部と、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム溶液0.0645重量部とを、耐圧重合器内に添加した。続いて、耐圧重合器内の反応溶液を15分間攪拌した後、クメンハイドロパーオキサイド0.0583重量部を耐圧重合器内に添加した。その後、耐圧重合器内の反応溶液をさらに15分攪拌した。かかる操作により、シード粒子を得た。重合転化率は93.2%であった。
【0132】
次に、耐圧重合器内部の温度を60℃にした。続いて、水酸化ナトリウムを2重量%の濃度で含む水酸化ナトリウム水溶液を調製した。次に、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム溶液0.023重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.0175重量部、および水酸化ナトリウム水溶液0.042重量部を、耐圧重合器内に添加した。続いて、(a)架橋剤以外の単量体としてMMA5.868重量部、BA37.194重量部およびST16.938重量部、(b)架橋剤として多官能性単量体であるアリルメタクリレート0.3重量部、並びに(c)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸0.363重量部、からなる混合物を、180分間かけて、耐圧重合器内に添加した。前記混合物の添加中、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム溶液0.069重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.105重量部を、断続的に耐圧重合器内に添加した。ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム溶液およびクメンハイドロパーオキサイドの添加のタイミングは、重合進行度に応じて、調節した。その後、さらに、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム溶液0.04重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.0225重量部を、耐圧重合器内に添加した。続いて、耐圧重合器内の反応溶液を30分間攪拌した。攪拌の30分後および60分後に、攪拌を続けた状態で、それぞれ、クメンハイドロパーオキサイド0.0225重量部を、耐圧重合器内に添加した。かかる操作により、コア内層を得た。重合転化率は99.5%であった。コア内層の重合には、架橋剤以外の単量体としてMMA、BAおよびSTを使用した。コア内層の重合において、架橋剤以外の単量体のそれぞれの使用割合(重量%)は、コア内層の重合に使用した、架橋剤以外の全単量体を100重量%としたとき、MMA9.78重量%、BA61.99重量%およびST28.23重量%であった。コア内層の重合には、架橋剤として多官能性単量体であるアリルメタクリレートのみを使用した。コア内層の重合において、架橋剤の使用割合(重量%)は、コア内層の重合に使用した、架橋剤以外の全単量体を100重量%としたとき、アリルメタクリレート0.5重量%であった。
【0133】
次に、(a)架橋剤以外の単量体としてBA5重量部、(b)架橋剤として多官能性単量体であるアリルメタクリレート0.025重量部、および(c)t-ブチルハイドロパーオキサイド0.0089重量部、からなる混合物を、15分間かけて、耐圧重合器内に添加した。添加後、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.0089重量部を耐圧重合器内に添加し、さらに、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.012重量部を耐圧重合器内に添加した。続いて、耐圧重合器内の反応溶液を30分間攪拌した。かかる操作により、コア内層の少なくとも一部を覆うコア外層を重合し、コア内層およびコア外層を有するコア層を得た。重合転化率は99.1%であった。コア外層の重合には、架橋剤以外の単量体としてBAのみを使用した。すなわち、コア外層の重合において、架橋剤以外の単量体の使用割合(重量%)は、コア外層の重合に使用した架橋剤以外の全単量体を100重量%としたとき、BA100重量%であった。コア外層の重合には、架橋剤として多官能性単量体であるアリルメタクリレートのみを使用した。コア外層の重合において、架橋剤の使用割合(重量%)は、コア外層の重合に使用した、架橋剤以外の全単量体を100重量%としたとき、アリルメタクリレート0.5重量%であった。
【0134】
次に、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム溶液0.025重量部を、耐圧重合器内に添加した。続いて、(a)架橋剤以外の単量体としてMMA23.71重量部、BA1.96重量部およびST2.33重量部、および(b)t-ブチルハイドロパーオキサイド0.0255重量部、からなる混合物を、84分間かけて、耐圧重合器内に添加した。添加後、耐圧重合器内の反応溶液を60分間攪拌した。かかる操作により、コア層の少なくとも一部を覆うシェル層を重合し、コア内層およびコア外層を有するコア層とシェル層とを有する重合体微粒子を含む水性ラテックスを得た。重合転化率は99.7%であった。シェル層の重合には、架橋剤以外の単量体としてMMA、BAおよびSTを使用した。シェル層の重合において、架橋剤以外の単量体のそれぞれの使用割合(重量%)は、シェル層の重合に使用した架橋剤以外の全単量体を100重量%としたとき、MMA84.68重量%、BA7重量%およびST8.32重量%であった。
【0135】
(実施例2~5および比較例2)
(a)(a-1)架橋剤以外の単量体のそれぞれの使用割合(重量%)と(a-2)架橋剤の使用割合(重量%)と(a-3)各層の重量分率とを、表1および3に記載の割合に変更し、かつ、(b)上述したように乳化剤の使用量を変更した以外は、実施例1と同様の方法により、重合体微粒子を製造した。
【0136】
実施例1~5において、コア外層の重合には、架橋剤以外の単量体としてBAのみを使用した。そのため、実施例1~5におけるコア外層のTgは、ポリブチルアクリレートのTgと同じとみなすことができる。ポリブチルアクリレートのTgは、非特許文献「ポリマーハンドブック 第4版」(出版社;Wiley-Interscience)によると-54℃である。すなわち、実施例1~5におけるコア外層のTgは-54℃であった。
【0137】
(比較例1)
撹拌機を備え、かつ容積が8Lである耐圧重合器中に、脱イオン水175重量部、ホウ酸0.473重量部、炭酸ナトリウム0.0473重量部およびポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸0.016重量部を仕込んだ。ここで、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸は、炭酸ナトリウムの存在下で、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムとなり、乳化剤として機能した。
【0138】
次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除き、耐圧重合器内部を実質的に酸素がない状態とした。その後、耐圧重合器内部の温度を80℃に昇温した。その後、(a)架橋剤以外の単量体としてMMA0.637重量部、BA4.524重量部およびST1.839重量部、(b)架橋剤として多官能性単量体であるアリルメタクリレート0.035重量部、並びに(c)クメンハイドロパーオキサイド0.035重量部、からなる混合物を、耐圧重合器内に添加した。次に、EDTA/硫酸第一鉄混合液0.07重量部と、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム溶液0.0645重量部とを、耐圧重合器内に添加した。続いて、耐圧重合器内の反応溶液を15分間攪拌した後、クメンハイドロパーオキサイド0.0583重量部を耐圧重合器内に添加した。その後、耐圧重合器内の反応溶液をさらに15分攪拌した。かかる操作により、シード粒子を得た。重合転化率は94.3%であった。
【0139】
次に、耐圧重合器内部の温度を60℃にした。続いて、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム溶液0.023重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.0175重量部、および水酸化ナトリウム水溶液0.042重量部を、耐圧重合器内に添加した。続いて、(a)架橋剤以外の単量体としてMMA5.915重量部、BA42.01重量部およびST17.075重量部、(b)架橋剤として多官能性単量体であるアリルメタクリレート0.325重量部、並びに(c)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸0.363重量部、からなる混合物を、195分間かけて、耐圧重合器内に添加した。前記混合物の添加中、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム溶液0.023重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.0175重量部を、断続的に耐圧重合器内に添加した。ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム溶液およびクメンハイドロパーオキサイドの添加のタイミングは、重合進行度に応じて、調節した。その後、さらに、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム溶液0.04重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.0225重量部を、耐圧重合器内に添加した。続いて、耐圧重合器内の反応溶液を30分間攪拌した。攪拌の30分後および60分後に、それぞれ、クメンハイドロパーオキサイド0.0225重量部を、耐圧重合器内に添加した。かかる操作により、単一の層からなるコア層を得た。重合転化率は98.7%であった。コア層の重合には、架橋剤以外の単量体としてMMA、BAおよびSTを使用した。コア層の重合において、架橋剤以外の単量体のそれぞれの使用割合(重量%)は、コア層の重合に使用した、架橋剤以外の全単量体を100重量%としたとき、MMA9.10重量%、BA64.63重量%およびST26.27重量%であった。コア層の重合には、架橋剤として多官能性単量体であるアリルメタクリレートのみを使用した。コア層の重合において、架橋剤の使用割合(重量%)は、コア層の重合に使用した、架橋剤以外の全単量体を100重量%としたとき、アリルメタクリレート0.5重量%であった。
【0140】
次に、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム溶液0.025重量部を、耐圧重合器内に添加した。続いて、(a)架橋剤以外の単量体としてMMA23.71重量部、BA1.96重量部およびST2.33重量部、および(b)t-ブチルハイドロパーオキサイド0.0255重量部、からなる混合物を、84分間かけて、耐圧重合器内に添加した。添加後、耐圧重合器内の反応溶液を60分間攪拌した。かかる操作により、コア層の少なくとも一部を覆うシェル層を重合し、単一の層からなるコア層とシェル層とを有する重合体微粒子を含む水性ラテックスを得た。重合転化率は98.9%であった。シェル層の重合には、架橋剤以外の単量体としてMMA、BAおよびSTを使用した。シェル層の重合において、架橋剤以外の単量体の使用割合(重量%)は、シェル層の重合に使用した架橋剤以外の全単量体を100重量%としたとき、MMA84.68重量%、BA7重量%およびST8.32重量%であった。
【0141】
(比較例3)
架橋剤以外の単量体として使用した各単量体の使用割合(重量%)を、表3に記載の割合に変更し、かつ、上述したように乳化剤の使用量を変更した以外は、比較例1と同様の方法により、重合体微粒子を製造した。
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
【0144】
【表3】
【0145】
表1および3において、各層の重量分率(重量%)は、重合体微粒子100重量%に対する、各層の重量分率(重量%)とした。表1および3において、各層における「架橋剤以外の単量体の使用割合(重量%)」は、各層の重合に使用した架橋剤以外の全単量体(100重量%)に対する、各層の重合に使用した架橋剤以外の単量体の使用割合(重量%)とした。表1および3において、各層における「架橋剤の使用割合(重量%)」は、各層の重合に使用した架橋剤以外の全単量体(100重量%)に対する、各層の重合に使用した架橋剤の使用割合(重量%)とした。
【0146】
実施例1~5の重合体微粒子は、コア外層のハンセン溶解度パラメータδに対する、コア内層のハンセン溶解度パラメータδおよびシェル層のハンセン溶解度パラメータδそれぞれの差の絶対値、すなわち|δ-δ|および|δ-δ|が0.5である。比較例1は、単一の層からなるコア層を有し、コア層のハンセン溶解度パラメータとシェル層のハンセン溶解度パラメータδとの差の絶対値が0である。実施例1~5の重合体微粒子は、比較例1の重合体微粒子に比べて耐ブロッキング性に優れることがわかる。すなわち、実施例1~5の重合体微粒子は、比較例1の重合体微粒子に比べてシェル層のコア層への含浸が抑えられているといえる。
【0147】
実施例1~5の重合体微粒子は、コア層の屈折率とシェル層の屈折率との差の絶対値が0.0026である。その結果、実施例1~5の重合体微粒子は、Haze値が小さく、透明性に優れることがわかる。
【0148】
実施例1~3の重合体微粒子は、コア内層およびシェル層の組成が同じであり、かつ各層の重量分率が同じである。実施例1および2は、コア外層における、多官能性単量体に由来する構成単位と架橋性単量体に由来する構成単位との合計含有量が、コア外層における架橋剤以外の単量体に由来する全構成単位100重量%に対して、0.1重量%~1.0重量%である。一方、実施例3は、コア外層における、多官能性単量体に由来する構成単位と架橋性単量体に由来する構成単位との合計含有量が、コア外層における架橋剤以外の単量体に由来する全構成単位100重量%に対して、5.0重量%である。実施例1および2の重合体微粒子は、実施例3の重合体微粒子と比較して、粉粒体の壊れ試験前の付着力に対する粉粒体の壊れ試験後の付着力の増大量が小さいことがわかる。すなわち、実施例1および2の重合体微粒子は、実施例3の重合体微粒子と比較して、製造過程において、重合体微粒子(粉粒体)の表面に付着しているブロッキング防止剤の剥離が少ないといえる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の一実施形態に係る重合体微粒子および樹脂組成物は、耐ブロッキング性および透明性に優れる。そのため、本発明の一実施形態は、特に、耐衝撃性が求められる光学用途に好適に利用することができる。本発明の一実施形態は、例えば、カメラ用の撮影レンズなどの映像分野、光ディスク用ピックアップレンズなどのレンズ分野、光ディスク用の光記録分野、光ファイバなどの光通信分野、自動車ヘッドライトなどの車両分野、内視鏡用レンズなどの医療機器分野、道路標識などの建築および建材分野、液晶用導光板などの液晶ディスプレイ用部材、プロジェクター用スクリーン、ヘッドアップディスプレイなどのディスプレイ関連部材、電子レンジ調理用の容器、家電製品のハウジング、玩具、サングラス並びに文房具、などに使用することができる。