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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20240520BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240520BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H01F37/00 F
H01F37/00 M
H01F27/28 152
H01F27/29 V
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020015665
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021125480
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍太
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-032718(JP,A)
【文献】国際公開第2016/185712(WO,A1)
【文献】特開2019-080021(JP,A)
【文献】特開2015-126148(JP,A)
【文献】特開2010-166013(JP,A)
【文献】特開2019-121665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/28-27/29、27/32、30/10、37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアに装着されるコイルとを備えたリアクトル本体と、
前記リアクトル本体を内部に収容するケースと、
樹脂材料により形成され、前記ケースの外側に設けられ、外部との電気的な接続のための接続端子を支持する端子台と、
一端が前記コイルの引出端に電気的に接続された導電性の部材であり、コイルの巻軸方向に交差する方向に、前記ケース内の前記リアクトル本体を非接触で跨ぐように延び、他端が前記端子台に支持された前記接続端子であるバスバーと、
前記バスバーの一部が埋め込まれた樹脂材料により形成され、前記ケースに固定された固定部と、
を有し、
前記バスバーの前記リアクトル本体を非接触で跨ぐ部分が、前記バスバーの前記一端と前記他端との間の胴部であり、
前記胴部は、前記固定部を形成する前記樹脂材料に埋め込まれる前記バスバーの一部であ
前記固定部の前記ケースへの固定箇所が、前記コイルの一対の引出端と前記バスバーとの接続箇所の間である
ことを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記端子台と前記固定部とは、一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記コイルの一対の引出端が、前記コイルの巻軸方向に沿って延び、互いに対向する位置に配置され、
前記端子台は、前記ケースの一側面であって、前記コイルの巻軸方向の側面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは、ハイブリッド自動車、電気自動車や燃料電池車の駆動システム等をはじめ、種々の用途で使用されている。リアクトルは、コアと、コアの周囲に装着されたコイルとを有するリアクトル本体を備える。コアの周囲とコイルとの間は樹脂部材により絶縁されている。リアクトル本体は、アルミニウムなどの金属製のケースに収容され、リアクトル本体とケースの間には充填材が注入されて固化されている。
【0003】
コイルは、導体を巻回して構成される。コイルの巻き始めと巻き終わりは、外部の機器に接続するための一対の引出端となる。コイルの引出端は、導電性のバスバーの一方の端部に接続されている。バスバーの他方の端部は、外部の機器との接続端子として、ケースの外部まで引き出されて端子台に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-121665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リアクトルの設置位置と、これに接続される外部の機器の設置位置との都合上、端子台をケースの特定の位置にまとめて設けることが行われている。すると、コイルの引出端から端子台までの距離が長くなる場合がある。このような場合には、バスバーを長くする必要がある。また、バスバーは、リアクトル本体との絶縁を確保するために、リアクトル本体との間隔を空ける必要がある。しかし、リアクトル本体を避けてケースの縁部を引き回すようにすると、バスバーが非常に長くなる。
【0006】
このようにバスバーが長くなると、バスバーが振動しやすくなり、リアクトル本体の振動及び外部からの振動によりバスバーが振動し、さらに共振が発生する場合もある。このように、バスバーの振動が継続すると、コイルの引出端とバスバーの端部との接続不良の原因となる。特に、共振が発生すると、リアクトル本体の振動や外部からの振動と比較して、数倍の力が加わることになるため、これに対する対策が必要となる。さらに、バスバーが長い場合、バスバーの端部の位置が不安定となりやすい。すると、バスバーの端部をコイルの引出端に接続する際に、位置決めが難しい。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、バスバーの位置が安定し、振動し難いリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリアクトルは、コアと、前記コアに装着されるコイルとを備えたリアクトル本体と、前記リアクトル本体を内部に収容するケースと、樹脂材料により形成され、前記ケースの外側に設けられ、外部との電気的な接続のための接続端子を支持する端子台と、一端が前記コイルの引出端に電気的に接続された導電性の部材であり、コイルの巻軸方向に交差する方向に、前記ケース内の前記リアクトル本体を非接触で跨ぐように延び、他端が前記端子台に支持された前記接続端子であるバスバーと、前記バスバーの一部が埋め込まれた樹脂材料により形成され、前記ケースに固定された固定部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バスバーをリアクトル本体を跨ぐようにして短くし、固定部によりケースに固定することで、バスバーの位置が安定し、振動し難いリアクトルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
図2】リアクトル本体を示す分解斜視図である。
図3】ケース及び樹脂部材を示す斜視図である。
図4】バスバー及び端子台を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に係るリアクトルについて、図面を参照しつつ説明する。図1は、実施形態に係るリアクトル100の全体構成を示す斜視図である。図2は、リアクトル本体1を示す分解斜視図、図3は、ケース3及び充填成形部Rを示す斜視図、図4は、バスバー4及び端子台5を示す分解斜視図である。
【0012】
[概要]
リアクトル100は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品であり、電圧の昇降圧等に使用される。本実施形態は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等で使用される大容量のリアクトル100である。リアクトル100は、これら自動車に搭載される昇圧回路の主要部品である。
【0013】
リアクトル100は、リアクトル本体1、ケース3、バスバー4、端子台5、固定部6を有する。リアクトル本体1は、コア10(図2参照)と、コア10に装着されるコイル20を備える。本実施形態のコイル20は、巻軸が平行となるように並置された2つのコイル21、22を含む。コイル21、22を区別しない場合には、コイル20として説明する。ケース3は、リアクトル本体1を内部に収容する。端子台5は、樹脂材料により形成され、ケース3の外側面に沿って設けられ、外部との電気的な接続のための接続端子を支持する。
【0014】
バスバー4は、一端がコイル21、22の引出端に電気的に接続された導電性の部材であり、コイル21、22の巻軸方向に交差する方向に、ケース3内のリアクトル本体1を非接触で跨ぐように延び、他端が端子台5に支持された接続端子である。交差する方向とは、平行でない方向であり、本実施形態では直交する方向である。ここで、リアクトル本体1を跨ぐとは、平面視でリアクトル本体1に重なるように配置されることをいう。但し、リアクトル本体1の幅や奥行のような外形寸法の全長に亘る必要はなく、リアクトル本体1の一部に重なっていればよい。本実施形態のバスバー4は、3本のバスバー41、42、43を含む。バスバー41、42、43を区別しない場合には、バスバー4として説明する。固定部6は、バスバー4の一部が埋め込まれた樹脂材料により形成され、ケース3に固定されている。本実施形態の固定部6は、バスバー41、42の一部が埋め込まれた固定部61と、バスバー43の一部が埋め込まれた固定部62を含む。固定部61、62を区別しない場合には、固定部6として説明する。
【0015】
なお、本明細書において、コイル20の巻軸に平行な方向を奥行方向とする。奥行方向と直交し、2つのコイル21、22の横並び方向と平行な方向を幅方向とする。奥行方向及び幅方向と直交する方向を高さ方向とする。図1では、奥行方向をx軸、幅方向をy軸、高さ方向をz軸で示す。また、高さ方向の矢印が示す方向を上、その逆方向を下とする。下は底とも称する。これらの方向は、リアクトル100の各構成の位置関係を示すための表現であり、リアクトル100が設置対象に設置された際の位置関係及び方向を限定するものではない。
【0016】
[リアクトル本体]
図2に示すように、リアクトル本体1を構成するコア10は、圧粉磁心、フェライト磁心又は積層鋼板などの磁性体である。コア10の内部には、コイル20により発生した磁束の通り道となって磁気回路を形成する。コア10は、直方体形状の部分コアを、矩形の環状となるように組み合わせて接着剤で接着することにより形成されている。部分コアは、コイル21、22が巻回される一対の直線状部分が脚部、コイル21、22から露出して、脚部を連結する一対の直線状部分がヨーク部となる。コア10は、PPS等の絶縁性の樹脂部材11によって被覆されている。樹脂部材11には、複数の取付孔11aが形成されている。
【0017】
コイル21、22は、樹脂部材11を介して、コア10の一対の脚部にそれぞれ巻回されることにより、互いの巻軸の方向が平行となっている。コイル21、22は、絶縁被覆を有する平角線のエッジワイズコイルである。但し、コイル21、22の線材や巻き方は、これには限定されず、他の態様であってもよい。
【0018】
コイル21の巻回部分から直線状に延ばされた端部、コイル22の巻回部分から直線状に延ばされた端部は、それぞれリアクトル本体1の外方に引き出された引出端21a、21b、22a、22bとなっている。引出端21a、21bは、巻軸方向に沿って互いに相反する側に延びている。引出端22a、22bは、巻軸方向に沿って互いに相反する側に延びている。一対の引出端21a、22aは、互いに対向する位置に配置され、一対の引出端21b、22bは、互いに対向する位置に配置されている。引出端21a、21b、22a、22bは、幅広の平面が縦、つまり上下方向となり、幅狭の側面がリアクトル本体1に対向する。なお、コイル21、22の巻回部分とは、線材が巻回されてコイル21、22としての機能を発揮する部分であり、本実施形態では筒状の部分である。
【0019】
なお、リアクトル本体1は、あらかじめ巻回したコイル21、22に、樹脂部材11に被覆された脚部を挿入した後、樹脂部材11に被覆されたヨーク部を組み合わせることにより組み立てる。
【0020】
[ケース]
図3に示すように、ケース3は、支持体31、壁部32を有する直方体形の箱状の部材である。ケース3は、熱伝導性が高く、磁気シールド効果が得られる材料で形成することが好ましい。支持体31はケース3の底部を構成し、その外面は設置面に支持される外底面となる。支持体31のリアクトル本体1を収容する側の面は、内底面となる。内底面には、リアクトル本体1の形状に沿う凹凸が形成されている。但し、リアクトル本体1と支持体31の内底面との間には、隙間が設けられるように収容される。
【0021】
壁部32は、リアクトル本体1の周囲を覆うように支持体31に立設され、ケース3の周面を構成する。壁部32は、リアクトル本体1の巻軸方向の一対の側壁321、322と、幅方向の一対の側壁323、324を含む。壁部32の内面と、支持体31の内対面によって、リアクトル本体1の収容空間が形成されている。
【0022】
ケース3は開口33を有する。開口33は、壁部32の支持体31と反対側の縁部に形成された開放部分である。本実施形態では、開口33により、ケース3の上部が開放され、リアクトル本体1の一部がケース3から突出している(図1参照)。つまり、ケース3にリアクトル本体1が収容された状態では、コイル21、22の上部が開口33から突出している。
【0023】
壁部32には、樹脂部材11の複数の取付孔11aに対応する位置に、それぞれ取付穴32aが形成されている。樹脂部材11の各取付孔11aを、壁部32の各取付穴32aに合わせて、ボルトBを挿入してねじ込むことにより、リアクトル本体1がケース3に固定される。上記のように、リアクトル本体1とケース3の支持体31との間には隙間が形成される。ケース3内に収容されたリアクトル本体1のコイル21、22は、その巻軸方向が、側壁321、322と平行となる。
【0024】
また、ケース3は、端子台5を取り付けるための複数の取付穴32bを有する。取付穴32bは、奥行方向の一対の側壁321、322のうち、一方の側壁322の外方に突出した部分に設けられている。さらに、ケース3は、固定部6を固定するための複数の取付穴32cを有する。取付穴32cは、一対の側壁323、324のそれぞれの幅方向の中央に設けられている。取付穴32b、32cには、ねじ溝が切られている。
【0025】
ケース3内のリアクトル本体1の収容空間には、充填材が充填され、固化された充填成形部Rが設けられる。充填材としては、リアクトル本体1の放熱性能の確保及びリアクトル本体1からケース3への振動伝搬の軽減のため、比較的柔らかく熱伝導性の高い樹脂が適している。
【0026】
[バスバー]
図4に示すように、バスバー4は、コイル21と外部電源などの不図示の外部機器との間に介在して、両者を電気的に接続する。バスバー4は、帯状の平板部材であり、その材料としては、例えば、銅やアルミニウムなどを用いる。
【0027】
本実施形態では、3つのバスバー41、42、43が用いられる。図1及び図4に示すように、バスバー41の一方の端部は、コイル21の一方の引出端21aに、溶着等により接続された固定端子411となっている。バスバー41の他方の端部は、端子台5まで延びて、外部機器との接続用の接続端子412となっている。接続端子412には、端子孔412aが形成されている。バスバー41の固定端子411と接続端子412との間の細長の部分を胴部413と呼ぶ。
【0028】
バスバー42の一方の端部は、コイル22の一方の引出端22aに溶着等により接続された固定端子421となっている。バスバー42の他方の端部は、端子台5まで延びて、外部機器との接続用の接続端子422となっている。接続端子422には、端子孔422aが形成されている。バスバー42の固定端子421と接続端子422との間の細長の部分を胴部423と呼ぶ。
【0029】
バスバー43の一方の端部は、コイル21の他方の引出端21bに溶着等により接続された固定端子431となっている。バスバー43の他方の端部は、端子台5まで延びて、外部機器との接続用の接続端子432となっている。接続端子432には、端子孔432aが形成されている。バスバー43の一部は分岐していて、その端部はコイル22の他方の引出端22bに接続された固定端子433となっている。接続端子432は、コイル21、22の共通の入力端子を構成している。バスバー43の固定端子431と接続端子432との間の細長の部分を胴部434と呼ぶ。
【0030】
固定端子411、421、431、433は、引出端21a、21b、22a、22bと同様に、幅広の平面が縦となり、幅狭の側面がリアクトル本体1に対向する。接続端子412、422、432の平面は、支持体31と平行である。バスバー41、42、43において、胴部413、423、434のリアクトル本体1を跨ぐ部分は、フラットワイズ曲げによりリアクトル本体1に非接触で沿うように配置され、平面がリアクトル本体1に略平行となるように対向している。これにより、平面が縦方向となるよりも、高さ方向へのスペースの拡大が抑えられる。
【0031】
[端子台]
図1及び図4に示すように、端子台5は、ケース3の一対の側壁321、322のうち、一方の側壁322の外側に取り付けられる。本実施形態の端子台5は、ケース3の外側面、つまり側壁322の外側面に沿って設けられている。但し、端子台5の位置は、ケース3の外側面に沿って設ける場合には限定されない。例えば、ケース3の側面から外へ飛び出した位置に配置する場合や、ケース3の側面の開口33側に設ける場合等、ケース3の外部であればよい。端子台5は、絶縁性を有する樹脂材料により形成されたブロック状の部材である。例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、BMC(バルクモールディングコンパウンド)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)等を、樹脂材料として用いることができる。
【0032】
端子台5には、バスバー41、42、43の一部が埋め込まれているが、接続端子412、422、432は露出している。端子台5は、支持体31の平面と平行な台座51を有し、この面に接続端子412、422、432が支持される。台座51には、接続端子412、422、432の端子孔412a、422a、432aに対応する固定孔52が設けられている。図示はしないが、固定孔52の下部には、ナットが埋め込まれている。また、端子台5には、ケース3の複数の取付穴32bに対応する位置に、取付孔53が設けられている。
【0033】
[固定部]
固定部6は、バスバー4の一部が埋め込まれ、ケース3内のリアクトル本体1を非接触で跨ぐように、幅方向に延設された部材である。固定部6は、端子台5と共通の樹脂材料により、端子台5と一体的に形成される。一体的に形成とは、両者を別々に形成してから合体させる場合も、継ぎ目なく連続的に形成させる場合も含む。
【0034】
本実施形態では、2つの固定部61、62が設けられている。バスバー41、42は、胴部413、423の一部が、固定部61及び端子台5に埋め込まれていて、固定端子421、接続端子422は露出している。バスバー43は、胴部434の一部が、固定部62及び端子台5に埋め込まれていて、固定端子431、接続端子432、固定端子433が露出している。なお、図1及び図4に示すように、本実施形態のバスバー41、42は、固定部61、62に埋め込まれている部分が、端子台5に達するまでの比較的長尺の部分となっているため、安定性が向上する。但し、バスバー41、42は、固定のために必要な部分のみ固定部6に埋め込まれていればよい。例えば、バスバー41、42を、後述する延設部611、621に対応する部分のみ固定部61、62に埋め込み、この埋め込み部分から端子台5までの間は露出させてもよい。これにより、使用する樹脂量を節約することができる。
【0035】
固定部61は延設部611を有する。延設部611は、固定部61からケース3の側壁323の取付穴32cまで延びている。延設部611の端部には、取付穴32cに対応する取付孔611aが形成されている。固定部62は延設部621を有する。延設部621は、固定部62からケース3の側壁324の取付穴32cまで延びている。延設部621の端部には、取付穴32cに対応する取付孔621aが形成されている。
【0036】
延設部611は、一対のコイル21、22の引出端21aと引出端22aとの間に設けられている。延設部621は、一対のコイル21、22の引出端21bと引出端22bとの間に設けられている。このため、固定部61、62のケース3への固定箇所は、一対の引出端21a、22aと固定端子411、421との接続箇所の間、一対の引出端21b、22bと固定端子431、433との接続箇所の間となる。
【0037】
以上のような端子台5及び固定部6は、取付穴32b、32cに取付孔53、611a、621aが合うように、ケース3に装着する。そして、取付孔53、611a、621aにボルトBを挿入してねじ込むことにより、端子台5及び固定部6が、ケース3に固定される。さらに、引出端21a、22aと固定端子411、421とを溶着により接続し、引出端21b、22bと固定端子431、433とを溶着により接続する。
【0038】
これにより、バスバー41、42、43は、コイル21、22の巻軸方向に交差する方向に、ケース3内のリアクトル本体1を非接触で跨ぐように、端子台5まで延びるように配置される。また、バスバー41、42、43の一部が埋め込まれる固定部61、62も、ケース3内のリアクトル本体1を非接触で跨ぐように配置される。バスバー41、42、43の胴部413、423、434がリアクトル本体1を非接触で跨ぐ部分は、平面がリアクトル本体1に向かっているため、平面が縦となって側面がリアクトル本体1に向かう場合に比べると、リアクトル本体1の振動による振れは発生しやすい。ただし、この部分は、固定部61、62に埋め込まれ、延設部611、621によってケース3に固定されるので、振動を抑えることができる。
【0039】
[作用効果]
(1)本実施形態のリアクトル100は、コア10と、コア10に装着されるコイル20とを備えたリアクトル本体1と、リアクトル本体1を内部に収容するケース3と、樹脂材料により形成され、ケース3の外側に設けられ、外部との電気的な接続のための接続端子を支持する端子台5と、一端がコイル20の引出端に電気的に接続された導電性の部材であり、コイル20の巻軸方向に交差する方向に、ケース3内のリアクトル本体1を非接触で跨ぐように延び、他端が端子台5に支持された接続端子であるバスバー4と、バスバー4の一部が埋め込まれた樹脂材料により形成され、ケース3に固定された固定部6と、を有する。
【0040】
このように、バスバー4を、コイル20の引出端から端子台5まで、リアクトル本体1を跨ぐように配置するため、ケース3の縁部を引き回す場合に比べて、バスバー4を短くすることができ、振動が発生し難くなる。また、バスバー4は、リアクトル本体1に非接触であるため、リアクトル本体1の振動が伝達し難い。このため、共振によるバスバー4の固定端子とコイル20の引出端との接続不良を防止できる。なお、バスバー4は、リアクトル本体1を跨ぐため、ケース3の側面の外方への所要スペースの拡大を抑えることができる。
【0041】
また、バスバー4の一部が埋め込まれた固定部6が、ケース3に固定されるため、さらに振動を抑制できる。コア10が振動するため、樹脂部材11に固定するよりも、ケース3に固定することにより、振動抑制効果が期待できる。そして、バスバー4の固定端子の位置が安定するため、コイル21の引出端との接続の際の位置決めがしやすい。
【0042】
なお、本実施形態では、ケース3の開口33の縁部に固定箇所が設けられているので、固定部6を短くでき、振動を抑えることができる。また、本実施形態では、2本のバスバー41、42が固定部61に埋め込まれているので、2本が独立している場合に比べて、それぞれが別々に振動することを抑えて、振動抑制効果を高めることができる。
【0043】
(2)固定部6のケース3への固定箇所が、コイル20の一対の引出端とバスバー4の固定端部との接続箇所の間である。このため、固定箇所を多数設けなくても、一対の引出端と固定端部との接続箇所のいずれも、固定箇所から遠くならないため、接続箇所の振動が防止される。また、一対の引出端と固定端部との2つの接続箇所、固定部6のケース3への固定箇所の3つの固定箇所があるため、位置が安定して振動抑制効果が高まる。また、固定部6をケース3に固定した際の一対の引出端と固定端部とのずれも生じ難いため、接続作業がしやすい。
【0044】
(3)端子台5と固定部6とは、一体的に構成されている。このため、端子台5に支持された接続端子と固定部6に支持された固定端子ともに位置が安定し、振動に対して強くなる。また、端子台5、固定部6及びバスバー4のケース3への取り付けが容易となる。
【0045】
(4)コイル20の一対の引出端が、コイル20の巻軸方向に沿って延び、互いに対向する位置に配置され、端子台5は、ケース3の一側面であって、コイル20の巻軸に沿う方向の側面に設けられている。このため、いずれか一方の引出端が、他方の引出端よりも端子台5から遠くなり、バスバー4が長くなる部分が生じるが、固定部6により安定して支持される。
【0046】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、上記実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【0047】
例えば、リアクトル本体1のコア10、コイル20の形状、数等は、上記の態様には限定されない。例えば、コイル20の数は、1つであっても、3つ以上であってもよい。一対の引出端とは、共通のコイル20の引出端であっても、別のコイル20の引出端であってもよい。また、端子台5と固定部6とは、別体であってもよい。バスバー4の一部が端子台5に埋め込まれていなくてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 リアクトル本体
3 ケース
4 バスバー
5 端子台
6 固定部
10 コア
11 樹脂部材
11a 取付孔
20、21、22 コイル
21a、21b、22a、22b 引出端
30 コイル
31 支持体
32 壁部
32a、32b、32c 取付穴
33 開口
41、42、43 バスバー
51 台座
52 固定孔
53 取付孔
6、61、62 固定部
100 リアクトル
321、322、323、324 側壁
411、421、431、433 固定端子
412、422、432 接続端子
412a、422a、432a 端子孔
413、423、434 胴部
611、621 延設部
611a、621a 取付孔
B ボルト
R 充填成形部
図1
図2
図3
図4