(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】半導体素子および半導体素子形成用樹脂シート
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20240520BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240520BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20240520BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240520BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240520BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240520BHJP
H01F 1/28 20060101ALN20240520BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08L9/00
C08K3/01
H01L23/30 Z
H01F17/04 F
H01F1/28
(21)【出願番号】P 2020016161
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】村松 大輔
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-174142(JP,A)
【文献】特開2009-295671(JP,A)
【文献】特開2015-111576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00-63/10
C08L 9/00-9/10
C08K 3/00-13/08
H01L 23/28-23/30
H01F 1/00-1/117
H01F 17/00-21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、ジエン系ゴムと、磁性体粉末とを含む混合物からなり、
前記混合物における前記エポキシ樹脂と、前記ジエン系ゴムと、前記磁性体粉末との合計含有率は90質量%以上であり、
前記混合物における前記磁性体粉末の含有率は70~93質量%であり、
前記エポキシ樹脂と前記ジエン系ゴムとの合計量に対する前記エポキシ樹脂の質量割合(エポキシ樹脂の質量/(エポキシ樹脂の質量+ジエン系ゴムの質量)×100)が30~80質量%
(ただし48.2質量%以上を除く)である、半導体素子形成用の樹脂シート。
【請求項2】
前記ジエン系ゴムがランダム共重合体である、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
前記ジエン系ゴムがNBRおよび/またはSBRである、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
前記磁性体粉末が、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、鉄粉、ケイ素鋼、センダストおよびソフトフェライトからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂シート。
【請求項5】
磁性体粉末が分散しており、内部に回路が含まれている樹脂硬化体を含む半導体素子であって、
前記樹脂硬化体がエポキシ樹脂とジエン系ゴムとの反応生成物であり、
前記樹脂硬化体における前記エポキシ樹脂と、前記ジエン系ゴムと、前記磁性体粉末との合計含有率は90質量%以上であり、
前記樹脂硬化体における前記磁性体粉末の含有率は70~93質量%であり、
前記エポキシ樹脂と前記ジエン系ゴムとの合計量に対する前記エポキシ樹脂の質量割合(エポキシ樹脂の質量/(エポキシ樹脂の質量+ジエン系ゴムの質量)×100)が30~80質量%
(ただし48.2質量%以上を除く)である、半導体素子。
【請求項6】
前記ジエン系ゴムがNBRおよび/またはSBRである、請求項5に記載の半導体素子。
【請求項7】
前記磁性体粉末が、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、鉄粉、ケイ素鋼、センダストおよびソフトフェライトからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項5または6に記載の半導体素子。
【請求項8】
磁性体粉末が分散しており、内部に回路が含まれている樹脂硬化体を含むインダクタであって、
前記樹脂硬化体がエポキシ樹脂とジエン系ゴムとの反応生成物であり、
前記樹脂硬化体における前記エポキシ樹脂と、前記ジエン系ゴムと、前記磁性体粉末との合計含有率は90質量%以上であり、
前記樹脂硬化体における前記磁性体粉末の含有率は70~93質量%であり、
前記エポキシ樹脂と前記ジエン系ゴムとの合計量に対する前記エポキシ樹脂の質量割合(エポキシ樹脂の質量/(エポキシ樹脂の質量+ジエン系ゴムの質量)×100)が30~80質量%
(ただし48.2質量%以上を除く)である、インダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体素子および半導体素子形成用樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ等の半導体素子がいくつか提案されている。例えば特許文献1には、金属粉末と、非晶質エポキシ樹脂と、を含み、前記金属粉末の重量比が75~98wt%であるフィルム状の混合物からなる、インダクタ用の金属-ポリマー複合体フィルムおよびこれを用いたインダクタの製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に挙げられるようなインダクタは、基板等に実装される際に、フラックス入り半田やフラックスを塗布した上に半田付けされる。
その後、フラックスが残渣として残留してしまうと、後工程でのボンディング不良、半田ボールの発生、絶縁信頼性の低下の懸念が生じる場合があるので、通常、フラックスはフラックス洗浄剤を用いて洗浄される。
【0005】
しかしながら、従来の半導体素子における樹脂部分は、フラックス洗浄剤に対する耐性が低かった。フラックス洗浄剤によって樹脂部分がダメージを受けてしまうと、樹脂部分が膨潤等し、半導体素子の透磁率が低下してしまう恐れがある。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明はフラックス洗浄剤に対する耐性が高い樹脂部分を備える半導体素子およびそれを形成するために用いることができる樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)~(8)である。
(1)エポキシ樹脂と、ジエン系ゴムと、金属粉末とを含む混合物からなる、半導体素子形成用の樹脂シート。
(2)前記ジエン系ゴムがランダム共重合体である、上記(1)に記載の樹脂シート。
(3)前記ジエン系ゴムがNBRおよび/またはSBRである、上記(1)または(2)に記載の樹脂シート。
(4)前記エポキシ樹脂と前記ジエン系ゴムとの合計量に対する前記エポキシ樹脂の質量割合(エポキシ樹脂の質量/(エポキシ樹脂の質量+ジエン系ゴムの質量)×100)が30~80質量%である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の樹脂シート。
(5)金属粉末が分散しており、内部に回路が含まれている樹脂硬化体を含む半導体素子であって、
前記樹脂硬化体がエポキシ樹脂とジエン系ゴムとの反応生成物である、半導体素子。
(6)前記ジエン系ゴムがNBRおよび/またはSBRである、上記(5)に記載の半導体素子。
(7)前記エポキシ樹脂と前記ジエン系ゴムとの合計量に対する前記エポキシ樹脂の質量割合(エポキシ樹脂の質量/(エポキシ樹脂の質量+ジエン系ゴムの質量)×100)が30~80質量%である、上記(5)または(6)に記載の半導体素子。
(8)インダクタである、上記(5)~(7)のいずれかに記載の半導体素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フラックス洗浄剤に対する耐性が高い樹脂部分を備える半導体素子およびそれを形成するために用いることができる樹脂シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の半導体素子の形成過程を説明するための概略斜視図である。
【
図2】本発明の半導体素子の形成過程を説明するための別の概略斜視図である。
【
図3】本発明の半導体素子の例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について説明する。
本発明は、エポキシ樹脂と、ジエン系ゴムと、金属粉末とを含む混合物からなる、半導体素子形成用の樹脂シートである。
このような樹脂シートを、以下では「本発明のシート」ともいう。
【0011】
また、本発明は、金属粉末が分散しており、内部に回路が含まれている樹脂硬化体を含む半導体素子であって、前記樹脂硬化体がエポキシ樹脂とジエン系ゴムとの反応生成物である、半導体素子である。
このような半導体素子を、以下では「本発明の半導体素子」ともいう。
【0012】
以下において、単に「本発明」と記した場合、「本発明のシート」および「本発明の半導体素子」の両方を意味するものとする。
【0013】
<本発明のシート>
本発明のシートについて説明する。
本発明のシートは、エポキシ樹脂と、ジエン系ゴムと、金属粉末とを含む混合物からなる。
【0014】
本発明においてエポキシ樹脂は特に限定されず、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。
エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2個以上有する。エポキシ樹脂は、フェノールノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ナフタレン型、ビフェニル型、ジシクロペンタジエン型のものが好ましい。エポキシ当量は90~100,000g/eqが好ましく、200~20,000g/eqがさらに好ましく、500~5,000g/eqが特に好ましい。
エポキシ樹脂の分子量については、数平均分子量(Mn)が100~100,000が好ましく、200~50,000がさらに好ましく、500~10,000が特に好ましい。
【0015】
本発明においてジエン系ゴムは特に限定されず、従来公知のジエン系ゴムを用いることができる。
ジエン系ゴムとして、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS:スチレンとブタジエンからなるブロック共重合体の二重結合部分を水素添加したポリマー)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム(EPDM)、スチレン-イソプレンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム等が挙げられる。
ジエン系ゴムの末端は、官能基により修飾されていてもよい。官能基としては例えば、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、水酸基等が挙げられる。
【0016】
本発明においてジエン系ゴムはNBRおよび/またはSBRであることが好ましい。フラックス洗浄剤に対する耐性がより高まるからである。
【0017】
本発明においてジエン系ゴムは、ランダム共重合体であることが好ましい。フラックス洗浄剤に対する耐性がより高まるからである。
【0018】
本発明において、前記エポキシ樹脂と前記ジエン系ゴムとの合計量に対する前記エポキシ樹脂の質量割合(エポキシ樹脂の質量/(エポキシ樹脂の質量+ジエン系ゴムの質量)×100)が30~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましい。フラックス洗浄剤に対する耐性がより高まるからである。
【0019】
本発明において金属粉末は磁性粉であることが好ましい。磁性粉としては、公知の磁性体粉末を用いることができる。例えば、硬磁性体であるフェライト磁石や、サマリウムコバルト磁石などや、軟磁性体である鉄粉、ケイ素鋼、センダスト、ソフトフェライトなどが挙げられる。
【0020】
金属粉末の粒子径は特に限定されず、例えば、従来公知のレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定される平均粒子径が0.5~150μm程度のものを用いることができる。
金属粉末の形状は特に限定されず、例えば、球状、楕円状、扁平状、針状、繊維状、樹状、不定形状などが挙げられる。本発明の半導体素子における樹脂硬化体または本発明のシートに含まれる金属粉末比率を向上させる観点から、球状、または扁平状であることが好ましい。
金属粉末の形状は、前記形状の1種類、または2種類以上を混合して用いることができる。
金属粉末の表面は、絶縁被覆されていてもよい。例えば、金属粉末を形成する金属の酸化物を表面に形成させる方法や、絶縁性を示す樹脂膜を金属粉末の表面にコーティングする方法、絶縁性の微粒子を金属粉末の周囲に付着させる方法等により、絶縁被覆することができる。
【0021】
本発明のシートに含まれる金属粉末の含有率は70~93質量%であることが好ましく、80~90質量%であることがより好ましい。
【0022】
本発明のシートは、エポキシ樹脂と、ジエン系ゴムと、金属粉末とを含む混合物からなるが、この混合物におけるエポキシ樹脂と、ジエン系ゴムと、金属粉末との合計含有率は90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明のシートを構成する混合物は、エポキシ樹脂、ジエン系ゴムおよび金属粉末以外の成分として、例えば硬化剤、分散剤などを含んでもよい。
ここで硬化剤は、熱を加えることによって、エポキシ樹脂とジエン系ゴムとを架橋する機能を備えるもの(架橋剤)であり、例えばイミダゾール、アミン系硬化剤が挙げられる。
また、分散剤は混合物中において金属粉末の凝集を抑制する機能を備えるものであり、具体的には、金属粉末との親和性が良い官能基を有する高分子共重合物のエステル塩などが挙げられる。
【0024】
本発明のシートは、上記のようなエポキシ樹脂と、ジエン系ゴムと、金属粉末とを十分に混錬してなる混合物を、シート状に加工してなるものである。
混合物をシート状に加工する方法としては、混錬物を加熱圧縮してシート化する方法や、混錬物を有機溶媒に希釈してコーティングし溶媒を乾燥させてシート化する方法が挙げられる。
【0025】
本発明のシートの厚さは特に限定されないが、0.03~5mmであることが好ましく、0.05~3mmであることがより好ましい。
【0026】
<本発明の半導体素子>
本発明の半導体素子について説明する。
本発明の半導体素子は、内部に回路が含まれている樹脂硬化体を含む。樹脂硬化体には、前記金属粉末が分散している。
【0027】
回路は外部電極と繋がることで導通可能なものであれば特に限定されない。形状等も特に限定されず、例えばコイルであってよい。回路がコイルである場合、その半導体素子はインダクタとなり得る。
【0028】
樹脂硬化体は、前記エポキシ樹脂と前記ジエン系ゴムとが反応してなる反応生成物である。
前記エポキシ樹脂と前記ジエン系ゴムとは硬化剤(架橋剤)によって架橋してなる反応生成物であってよい。
樹脂硬化体を構成するエポキシ樹脂と、ジエン系ゴムと、金属粉末との量比、その他成分や、エポキシ樹脂とジエン系ゴムとの好ましい比率等については、前述の本発明のシートの場合と同様である。
【0029】
樹脂硬化体の回路以外の部分における金属粉末の含有率は、前述の本発明のシートに含まれる金属粉末の含有率と同様であってよい。
【0030】
<製造方法>
本発明のシートから本発明の半導体素子を製造する方法について、図を用いて説明する。
図1は、2つの本発明のシート1、3を用意し、そのうちの一方の本発明のシート1の主面上に回路5を形成した状態を示している。
その後、
図2に示すように、回路5を2つの本発明のシート1、3によって挟み込むように、本発明のシート1と本発明のシート3との主面同士を付ける。
そして、2つの本発明のシート1、3を押し付け合うように、熱プレスを施す。ここで加熱温度は、本発明のシート1、3に含まれるエポキシ樹脂とジエン系ゴムとが熱硬化(熱の作用によって架橋)する温度であればよい。例えば、ジエン系ゴムとしてNBRを用い、架橋剤としてイミダゾールを用いる場合、165℃以上であることが好ましく、165~200℃程度に保持した状態で、0.1~10MPakgf/m
2、真空度0.1Torr以下でのプレス加工を施すことが好ましい。そうすると、2つの本発明のシート同士が反応して、これらを一体化することができる。
その後、
図3に示すように、内部の回路と導通する外部電極7を取り付けることが好ましい。
このようにして、本発明の半導体素子10を得ることが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下の原材料を用意し、これらを特定の配合比で混合して組成物を得た。各実施例および各比較例における配合比を第1表に示す。
・エポキシ樹脂:jER1009F、三菱化学株式会社製
・SEBS(水添スチレン系熱可塑性エラストマー):タフテックM1913、旭化成ケミカルズ社製
・アクリルゴム:NIPOL AR 51、日本ゼオン社製
・分散剤:DISPERBYK142、ビックケミー社製
・硬化剤(イミダゾール):2PHZ-PW、四国化成工業社製
・磁性粉:ケイ素を3.5wt%、クロムを4.5wt%含む球状鉄粉を扁平化処理し、平均粒子径30μmの磁性粉を用いた。
なお、NBRは以下の方法で合成した。
<NBRの合成方法>
反応容器に、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル28.0部、マレイン酸モノn-ブチル3部、及びt-ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部の順に加え、内部を窒素置換した後、1,3-ブタジエン43部を仕込んだ。反応器を5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を加え、攪拌した。18時間重合反応後、濃度10%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレーターを用いて残留単量体を除去し、NBRを得た。次いで、得られNBRに2容量のメタノールを加えて凝固した後、ろ過して固形物を取り出し、これを60℃で12時間真空乾燥することにより、NBR固形物を得た。得られたNBRはアクリロニトリル単量体単位含有量が27質量%、質量平均分子量30万であった。
【0032】
次に、各実施例および各比較例の組成物に、195℃、8MPakgf/m2、真空度0.1Torrでの熱プレス加工を施して硬化させ、樹脂硬化体を得た。
そして、得られた樹脂硬化体を用いて、以下の試験を行った。
【0033】
<耐溶剤性試験>
ノルマルプロピルアルコールと、イソプロパノールと、エタノールとを1:1:1の質量比で混合した溶剤を作成した。この溶剤の組成は、一般的に用いられているフラックス洗浄剤に近い。
このような溶剤中に、各樹脂硬化体を65℃、20分間浸漬し、耐溶剤性を評価した。評価基準は以下の通りである。結果を第1表に示す。
◎:浸漬後、厚み変化が5%未満であったもの。
○:浸漬後、厚み変化が5%以上、10%未満であったもの。
△:浸漬後、厚み変化が10%以上、20%未満であったもの。
×:浸漬後、厚み変化が20%以上増加したもの。
【0034】
<粉落ち試験>
磁性粉が樹脂硬化体の内部に保持される程度を評価した。評価基準は以下の通りである。結果を第1表に示す。
◎:硬化後の成形体を指先で触れた時、指に転写する粉の転写がほとんどないもの。
○:硬化後の成形体を指先で触れた時、指に転写する粉の転写がほとんどないが、こすると磁性粉が付着するもの。
△:硬化後の成形体を指先で触れた時、指に転写する粉の少ないもの。
×:硬化後の成形体を指先で触れた時、指全面に粉が転写するもの。
【0035】
<加工性確認試験>
各樹脂硬化体をダイサーでカットしたときの加工性を評価した。評価基準は以下の通りである。結果を第1表に示す。
◎:加工後の端面において、バリ、ひげ、粒子の脱落等がないもの。
○:加工後の端面において、バリ、ひげ、粒子の脱落等が極一部で発生したもの。
×:加工時にバリ、ひげ、粒子の脱落等の欠陥が発生した、または、硬化物に著しい変形があったもの。
【0036】
【0037】
エポキシ樹脂と、ジエン系ゴム(NBRまたは水添スチレン系熱可塑性エラストマー)と、金属粉末(磁性粉)とを含む混合物からなる実施例1~10の樹脂硬化体は、いずれも耐溶剤性に優れることが確認できた。
また、エポキシ樹脂の質量/(エポキシ樹脂の質量+ジエン系ゴムの質量)×100の値が30~80質量%である実施例3~5の樹脂シートは、耐溶剤性、粉落ち性、加工性のいずれもが優れることが確認できた。
【0038】
これに対してジエン系ゴムを含まない比較例1の樹脂硬化体は、耐溶剤性及び粉落ち性が劣っていた。
また、ジエン系ゴムを含まない(代わりにアクリルゴムを含む)比較例2の樹脂硬化体は、耐溶剤性が顕著に劣っていた。
【符号の説明】
【0039】
1 本発明のシート
3 本発明のシート
5 回路
7 外部電極
10 本発明の半導体素子