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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】解析装置および超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
A61B8/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020027454
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2020138018
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2019032948
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 悠
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正毅
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-015155(JP,A)
【文献】特開2016-153005(JP,A)
【文献】特開2017-038837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 ー 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフレームに対応する第1の医用画像と、前記第1のフレームよりも2フレーム以上前の第2のフレームに対応する第2の医用画像とのそれぞれについて、被検体内の移動体の位置を示す第1の移動体位置データおよび第2の移動体位置データをそれぞれ生成するデータ生成部と、
前記第1の移動体位置データおよび前記第2の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示すベクトルを算出する算出部と、
前記ベクトルを示す形状を有する表示画像データを生成する表示画像生成部と
を具備し、
前記データ生成部は、前記第1のフレームよりも前、且つ前記第2のフレームよりも後の第3のフレームに対応する第3の医用画像について、移動体の位置を示す第3の移動体位置データを生成し、
前記算出部は、前記第1の移動体位置データおよび前記第3の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示す他のベクトルを算出し、
前記表示画像生成部は、前記他のベクトルを示す形状を有する他の表示画像データを生成
前記表示画像データおよび前記他の表示画像データの少なくとも一方を表示させる表示制御部
を更に具備し、
前記表示制御部は、前記表示画像データおよび前記他の表示画像データを重畳して表示させる、解析装置。
【請求項2】
第1のフレームに対応する第1の医用画像と、前記第1のフレームよりも2フレーム以上前の第2のフレームに対応する第2の医用画像とのそれぞれについて、被検体内の移動体の位置を示す第1の移動体位置データおよび第2の移動体位置データをそれぞれ生成するデータ生成部と、
前記第1の移動体位置データおよび前記第2の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示すベクトルを算出する算出部と、
前記ベクトルを示す形状を有する表示画像データを生成する表示画像生成部と
を具備し、
前記データ生成部は、前記第1のフレームよりも前、且つ前記第2のフレームよりも後の第3のフレームに対応する第3の医用画像について、移動体の位置を示す第3の移動体位置データを生成し、
前記算出部は、前記第1の移動体位置データおよび前記第3の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示す他のベクトルを算出し、
前記表示画像生成部は、前記他のベクトルを示す形状を有する他の表示画像データを生成し、
前記表示画像データおよび前記他の表示画像データの少なくとも一方を表示させる表示制御部
を更に具備し、
前記表示制御部は、前記表示画像データおよび前記他の表示画像データを同時に並べて表示させる、解析装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記表示画像データまたは前記他の表示画像データの表示に関する指示に従って、前記表示画像データまたは前記他の表示画像データを表示させる、
請求項1または請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
第1のフレームに対応する第1の医用画像と、前記第1のフレームよりも2フレーム以上前の第2のフレームに対応する第2の医用画像とのそれぞれについて、被検体内の移動体の位置を示す第1の移動体位置データおよび第2の移動体位置データをそれぞれ生成するデータ生成部と、
前記第1の移動体位置データおよび前記第2の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示すベクトルを算出する算出部と、
前記ベクトルを示す形状を有する表示画像データを生成する表示画像生成部と
を具備し、
前記データ生成部は、前記第1のフレームよりも前、且つ前記第2のフレームよりも後の第3のフレームに対応する第3の医用画像について、移動体の位置を示す第3の移動体位置データを生成し、
前記算出部は、前記第1の移動体位置データおよび前記第3の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示す他のベクトルを算出し、
前記表示画像生成部は、前記他のベクトルを示す形状を有する他の表示画像データを生成し、
前記表示画像データおよび前記他の表示画像データの少なくとも一方を表示させる表示制御部と、
前記第1の移動体位置データおよび前記第2の移動体位置データの類似度と、前記第1の移動体位置データおよび前記第3の移動体位置データの類似度とを比較し、類似度の高い方に対応する前記表示画像データまたは前記他の表示画像データの表示に関する指示を出力する判定部と
を更に具備し、
前記表示制御部は、前記指示に従って、前記表示画像データまたは前記他の表示画像データを表示させる、解析装置。
【請求項5】
前記類似度は、移動体位置データ同士の相関関係を示す相関係数であり、
前記第1の移動体位置データおよび前記第2の移動体位置データの第1の相関係数を算出し、前記第1の移動体位置データおよび前記第3の移動体位置データの第2の相関係数を算出する係数算出部
を更に具備し、
前記判定部は、前記第1の相関係数と、前記第2の相関係数とを比較し、相関係数の高い方に対応する前記表示画像データまたは前記他の表示画像データの表示に関する指示を出力する、
請求項に記載の解析装置。
【請求項6】
前記係数算出部は、パターンマッチングを用いて相関係数を算出する、
請求項に記載の解析装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記第1のフレームと前記第2のフレームとの間のフレームに対応する医用画像を用いずに、前記ベクトルを算出する、
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項8】
前記第1のフレームと前記第2のフレームとの間のフレーム数は、前記移動体の移動量に基づいて可変する、
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項9】
前記移動体は、造影剤または赤血球である、
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項10】
第1のフレームに対応する第1の医用画像と、前記第1のフレームから第1のフレーム数だけ前の第2のフレームに対応する第2の医用画像とのそれぞれについて、被検体の移動体の位置を示す第1の移動体位置データおよび第2の移動体位置データをそれぞれ生成し、
前記第1の移動体位置データおよび前記第2の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示す第1のベクトルを算出し、
前記第1のベクトルを示す形状を有する第1の表示画像データを生成し、
前記第1のフレームから前記第1のフレーム数より多い第2のフレーム数だけ前の第3のフレームに対応する第3の医用画像について、移動体の位置を示す第3の移動体位置データを生成し、
前記第1の移動体位置データおよび前記第3の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示す第2のベクトルを算出し、
前記第2のベクトルを示す形状を有する第2の表示画像データを生成する
処理部と
を具備する、解析装置。
【請求項11】
第1のフレームに対応する第1の超音波画像と、前記第1のフレームよりも2フレーム以上前の第2のフレームに対応する第2の超音波画像とのそれぞれについて、被検体内の移動体の位置を示す第1の移動体位置データおよび第2の移動体位置データをそれぞれ生成するデータ生成部と、
前記第1の移動体位置データおよび前記第2の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示すベクトルを算出する算出部と、
前記ベクトルを示す形状を有する表示画像データを生成する表示画像生成部と
を具備し、
前記データ生成部は、前記第1のフレームよりも前、且つ前記第2のフレームよりも後の第3のフレームに対応する第3の超音波画像について、移動体の位置を示す第3の移動体位置データを生成し、
前記算出部は、前記第1の移動体位置データおよび前記第3の移動体位置データに基づいて、移動体の位置を示す他のベクトルを算出し、
前記表示画像生成部は、前記他のベクトルを示す形状を有する他の表示画像データを生成
前記表示画像データおよび前記他の表示画像データの少なくとも一方を表示させる表示制御部
を更に具備し、
前記表示制御部は、前記表示画像データおよび前記他の表示画像データを重畳して表示させる、超音波診断装置。
【請求項12】
第1のフレームに対応する第1の超音波画像と、前記第1のフレームよりも2フレーム以上前の第2のフレームに対応する第2の超音波画像とのそれぞれについて、被検体内の移動体の位置を示す第1の移動体位置データおよび第2の移動体位置データをそれぞれ生成するデータ生成部と、
前記第1の移動体位置データおよび前記第2の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示すベクトルを算出する算出部と、
前記ベクトルを示す形状を有する表示画像データを生成する表示画像生成部と
を具備し、
前記データ生成部は、前記第1のフレームよりも前、且つ前記第2のフレームよりも後の第3のフレームに対応する第3の超音波画像について、移動体の位置を示す第3の移動体位置データを生成し、
前記算出部は、前記第1の移動体位置データおよび前記第3の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示す他のベクトルを算出し、
前記表示画像生成部は、前記他のベクトルを示す形状を有する他の表示画像データを生成し、
前記表示画像データおよび前記他の表示画像データの少なくとも一方を表示させる表示制御部
を更に具備し、
前記表示制御部は、前記表示画像データおよび前記他の表示画像データを同時に並べて表示させる、超音波診断装置。
【請求項13】
第1のフレームに対応する第1の超音波画像と、前記第1のフレームよりも2フレーム以上前の第2のフレームに対応する第2の超音波画像とのそれぞれについて、被検体内の移動体の位置を示す第1の移動体位置データおよび第2の移動体位置データをそれぞれ生成するデータ生成部と、
前記第1の移動体位置データおよび前記第2の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示すベクトルを算出する算出部と、
前記ベクトルを示す形状を有する表示画像データを生成する表示画像生成部と
を具備し、
前記データ生成部は、前記第1のフレームよりも前、且つ前記第2のフレームよりも後の第3のフレームに対応する第3の超音波画像について、移動体の位置を示す第3の移動体位置データを生成し、
前記算出部は、前記第1の移動体位置データおよび前記第3の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示す他のベクトルを算出し、
前記表示画像生成部は、前記他のベクトルを示す形状を有する他の表示画像データを生成し、
前記表示画像データおよび前記他の表示画像データの少なくとも一方を表示させる表示制御部と、
前記第1の移動体位置データおよび前記第2の移動体位置データの類似度と、前記第1の移動体位置データおよび前記第3の移動体位置データの類似度とを比較し、類似度の高い方に対応する前記表示画像データまたは前記他の表示画像データの表示に関する指示を出力する判定部と
を更に具備し、
前記表示制御部は、前記指示に従って、前記表示画像データまたは前記他の表示画像データを表示させる、超音波診断装置。
【請求項14】
第1のフレームに対応する第1の超音波画像と、前記第1のフレームから第1のフレーム数だけ前の第2のフレームに対応する第2の超音波画像とのそれぞれについて、被検体の移動体の位置を示す第1の移動体位置データおよび第2の移動体位置データをそれぞれ生成し、
前記第1の移動体位置データおよび前記第2の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示す第1のベクトルを算出し、
前記第1のベクトルを示す形状を有する第1の表示画像データを生成し、
前記第1のフレームから前記第1のフレーム数より多い第2のフレーム数だけ前の第3のフレームに対応する第3の超音波画像について、移動体の位置を示す第3の移動体位置データを生成し、
前記第1の移動体位置データおよび前記第3の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示す第2のベクトルを算出し、
前記第2のベクトルを示す形状を有する第2の表示画像データを生成する
処理部と
を具備する、超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、解析装置および超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置では、コントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)と呼ばれる造影エコー法が行われている。造影エコー法は、例えば、心臓や肝臓などの検査において、静脈から造影剤を注入して画像化を行う。造影エコー法で用いられる造影剤の多くは、微小気泡(マイクロバブル)を反射源として用いるものである。造影エコー法により、例えば、被検体内の血管を明瞭に描出させたり、血管内の造影剤の流れを描出させたりすることができる。
【0003】
この超音波診断装置は、例えば、造影剤のフレーム毎の動きをトラッキングして血管内の造影剤の流れを描出させる場合、血流の速度に合わせてフレームレートを設定している。しかし、フレーム間の動きが小さい造影剤においては、変位を検出できず、造影剤のトラッキングが安定しない恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-15155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、移動量の少ない被検体内の移動体の流れを描出することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る解析装置は、取得部と、データ生成部と、算出部と、表示画像生成部とを備える。取得部は、連続する複数のフレームにそれぞれ対応する複数の医用画像を取得する。データ生成部は、複数の医用画像のうちの、第1のフレームに対応する第1の医用画像と、第1のフレームよりも2フレーム以上前の第2のフレームに対応する第2の医用画像とのそれぞれについて、被検体内の移動体の位置を示す第1の移動体位置データおよび第2の移動体位置データをそれぞれ生成する。算出部は、第1の移動体位置データおよび第2の移動体位置データに基づいて、移動体の移動を示すベクトルを算出する。表示画像生成部は、ベクトルを示す形状を有する表示画像データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るデータ生成機能の処理を説明するための図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るデータ生成機能の処理を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る算出機能の処理を説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るカラーバーの表示例を説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る表示画像データにおけるバブルの表示例を説明するための図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る通常時の表示条件についてのカラーバーを説明する図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る通常時の表示画像データの生成例を説明するための図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る低速時の表示条件についてのカラーバーを説明する図である。
図10図10は、第1の実施形態に係るデシメーション処理時の表示画像データの生成例を説明するための図である。
図11図11は、第1の実施形態に係るデシメーション処理を実行する処理回路の動作を示すフローチャートである。
図12図12は、第1の実施形態に係るデシメーション処理を実行した表示例を示す図である。
図13図13は、第1の実施形態に係るデシメーション処理を実行する場合の表示画像データの他の生成例を説明するための図である。
図14図14は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
図15図15は、第2の実施形態に係るハイブリッド処理の実行によるカラーバーを説明する図である。
図16図16は、第2の実施形態に係るハイブリッド処理の概要を説明するための図である。
図17図17は、第2の実施形態に係る表示画像生成機能の処理を説明する図である。
図18図18は、第2の実施形態に係るハイブリッド処理を実行する処理回路の動作を示すフローチャートである。
図19図19は、第2の実施形態に係るハイブリッド処理を実行した表示例を示す図である。
図20図20は、第3の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
図21図21は、第3の実施形態に係る判定機能および表示画像生成機能の処理を説明する図である。
図22図22は、第4の実施形態に係る解析装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、超音波診断装置および解析装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101とを有している。装置本体100は、入力装置102および表示装置103と接続されている。また、装置本体100は、ネットワークNWを介して外部装置104と接続されている。
【0010】
超音波プローブ101は、例えば、装置本体100からの制御に従い、被検体である生体P内のスキャン領域について超音波スキャンを実行する。超音波プローブ101は、例えば、複数の圧電振動子、圧電振動子に設けられる整合層、および圧電振動子から後方への超音波の伝搬を防止するバッキング材等を有する。超音波プローブ101は、例えば、複数の超音波振動子が所定の方向に沿って配列された一次元アレイリニアプローブである。超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。超音波プローブ101には、オフセット処理、および超音波画像のフリーズ等の際に押下されるボタンが配置されてもよい。
【0011】
複数の圧電振動子は、装置本体100が有する後述の超音波送信回路110から供給される駆動信号に基づいて超音波を発生する。これにより、超音波プローブ101から生体Pへ超音波が送信される。超音波プローブ101から生体Pへ超音波が送信されると、送信された超音波は、生体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として複数の圧電素子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流または心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。超音波プローブ101は、生体Pからの反射波信号を受信して電気信号に変換する。
【0012】
図1には、超音波スキャンに用いられる超音波プローブ101と装置本体100との接続関係のみを例示している。しかしながら、装置本体100には、複数の超音波プローブを接続することが可能である。接続された複数の超音波プローブのうちいずれを超音波スキャンに使用するかは、切り替え操作によって任意に選択することができる。
【0013】
装置本体100は、超音波プローブ101により受信された反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体100は、超音波送信回路110と、超音波受信回路120と、内部記憶回路130と、画像メモリ140と、入力インタフェース150と、出力インタフェース160と、通信インタフェース170と、処理回路180とを有している。
【0014】
超音波送信回路110は、超音波プローブ101に駆動信号を供給するプロセッサである。超音波送信回路110は、例えば、トリガ発生回路、遅延回路、およびパルサ回路等により実現される。トリガ発生回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返して発生する。遅延回路は、超音波プローブから発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子毎の遅延時間を、トリガ発生回路が発生する各レートパルスに対し与える。パルサ回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に設けられる複数の超音波振動子へ駆動信号(駆動パルス)を印加する。遅延回路により各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向が任意に調整可能となる。
【0015】
また、超音波送信回路110は、駆動信号によって、超音波の出力強度を任意に変更することができる。超音波診断装置では、出力強度を大きくすることにより、生体P内での超音波の減衰の影響を小さくすることができる。超音波診断装置は、超音波の減衰の影響が少なくなることによって、受信時において、S/N比の大きい反射波信号を取得することができる。
【0016】
一般的に、超音波が生体P内を伝播すると、出力強度に相当する超音波の振動の強さ(これは、音響パワーとも称する)が減衰する。音響パワーの減少は、吸収、散乱および反射などによって起こる。また、音響パワーの減少の度合いは、超音波の周波数および超音波の放射方向の距離に依存する。例えば、超音波の周波数を大きくすることにより、減衰の度合いは大きくなる。また、超音波の放射方向の距離が長くなるほど、減衰の度合いは大きくなる。
【0017】
超音波受信回路120は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を施し、受信信号を生成するプロセッサである。超音波受信回路120は、超音波プローブ101によって取得された超音波の低音圧信号に対する受信信号を生成する。具体的には、超音波受信回路120は、例えば、プリアンプ、A/D変換器、復調器、およびビームフォーマ等により実現される。プリアンプは、超音波プローブ101が受信した反射波信号をチャネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をディジタル信号に変換する。復調器は、ディジタル信号を復調する。ビームフォーマは、例えば、復調されたディジタル信号に受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与えて、遅延時間が与えられた複数のディジタル信号を加算する。ビームフォーマの加算処理により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調された受信信号が発生する。
【0018】
内部記憶回路130は、例えば、磁気的若しくは光学的記憶媒体、または半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。内部記憶回路130は、超音波送受信を実現するためのプログラム、各種データ等を記憶している。プログラム、および各種データは、例えば、内部記憶回路130に予め記憶されていてもよい。また、例えば、非一過性の記憶媒体に記憶されて配布され、非一過性の記憶媒体から読み出されて内部記憶回路130にインストールされてもよい。また、内部記憶回路130は、入力インタフェース150を介して入力される操作に従い、処理回路180で生成されるBモード画像データおよび造影画像データ等を記憶する。内部記憶回路130は、記憶しているデータを、通信インタフェース170を介して外部装置104等に転送することも可能である。
【0019】
なお、内部記憶回路130は、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、およびフラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。内部記憶回路130は、記憶しているデータを可搬性記憶媒体へ書き込み、可搬性記憶媒体を介してデータを外部装置104に記憶させることも可能である。
【0020】
画像メモリ140は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、または半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。画像メモリ140は、入力インタフェース150を介して入力されるフリーズ操作直前の複数フレームに対応する画像データを保存する。画像メモリ140に記憶されている画像データは、例えば、連続表示(シネ表示)される。
【0021】
内部記憶回路130、および画像メモリ140は、必ずしもそれぞれが独立した記憶装置により実現されなくてもよい。内部記憶回路130、および画像メモリ140が単一の記憶装置により実現されてもよい。また、内部記憶回路130、および画像メモリ140のそれぞれが複数の記憶装置により実現されてもよい。
【0022】
入力インタフェース150は、入力装置102を介し、操作者からの各種指示を受け付ける。入力装置102は、例えば、マウス、キーボード、パネルスイッチ、スライダースイッチ、トラックボール、ロータリーエンコーダ、操作パネル、およびタッチコマンドスクリーン(TCS:Touch Command Screen)である。入力インタフェース150は、例えばバスを介して処理回路180に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を処理回路180へ出力する。なお、入力インタフェース150は、マウスおよびキーボード等の物理的な操作部品と接続するものだけに限られない。例えば、超音波診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路180へ出力する回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0023】
出力インタフェース160は、例えば処理回路180からの電気信号を表示装置103へ出力するためのインタフェースである。表示装置103は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ等の任意のディスプレイである。出力インタフェース160は、例えばバスを介して処理回路180に接続され、処理回路180からの電気信号を表示装置に出力する。
【0024】
通信インタフェース170は、例えばネットワークNWを介して外部装置104と接続され、外部装置104との間でデータ通信を行う。
【0025】
処理回路180は、例えば、超音波診断装置1の中枢として機能するプロセッサである。処理回路180は、内部記憶回路130に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。処理回路180は、例えば、Bモード処理機能181と、ドプラ処理機能182と、画像生成機能183(画像生成部)と、データ生成機能184(データ生成部)と、算出機能185(算出部)と、表示画像生成機能186(表示画像生成部)と、表示制御機能187(表示制御部)と、システム制御機能188とを有している。
【0026】
Bモード処理機能181は、超音波受信回路120から受け取った受信信号に基づき、Bモードデータを生成する機能である。Bモード処理機能181において処理回路180は、例えば、超音波受信回路120から受け取った受信信号に対して包絡線検波処理、および対数圧縮処理等を施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。生成されたBモードデータは、2次元的な超音波走査線(ラスタ)上のBモードRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0027】
また、処理回路180は、Bモード処理機能181により、造影エコー法、例えば、コントラストハーモニックイメージング(Contrast Harmonic Imaging:CHI)を実行することができる。即ち、処理回路180は、造影剤が注入された被検体Pの反射波データ(高調波成分または分周波成分)と、被検体P内の組織を反射源とする反射波データ(基本波成分)とを分離することができる。これにより、処理回路180は、被検体Pの反射波データから高調波成分または分周波成分を抽出して、造影画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0028】
造影画像データを生成するためのBモードデータは、造影剤を反射源とする反射波の信号強度を輝度で表したデータとなる。また、処理回路180は、被検体Pの反射波データから基本波成分を抽出して、組織画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0029】
なお、CHIを行う際、処理回路180は、上述したフィルタ処理を用いた方法とは異なる方法により、ハーモニック成分(高調波成分)を抽出することができる。ハーモニックイメージングでは、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)法や位相変調(PM:Phase Modulation)法、AM法及びPM法を組み合わせたAMPM法と呼ばれる映像法が行なわれる。
【0030】
AM法、PM法及びAMPM法では、同一の走査線に対して振幅や位相が異なる超音波送信を複数回(複数レート)行う。これにより、超音波受信回路120は、各走査線で複数の反射波データを生成し出力する。そして、処理回路180は、各走査線の複数の反射波データを、変調法に応じた加減算処理することで、高調波成分を抽出する。そして、処理回路180は、高調波成分の反射波データに対して包絡線検波処理等を行なって、Bモードデータを生成する。
【0031】
例えば、PM法が行われる場合、超音波送信回路110は、処理回路180が設定したスキャンシーケンスにより、例えば(-1,1)のように、位相極性を反転させた同一振幅の超音波を、各走査線で2回送信させる。そして、超音波受信回路120は、「-1」に対応する反射波データと、「1」に対応する反射波データとを生成し、処理回路180は、これら2つの反射波データを加算する。これにより、基本波成分が除去され、2次高調波成分が主に残存した信号が生成される。そして、処理回路180は、この信号に対して包絡線検波処理等を行って、CHIのBモードデータ(造影画像データを生成するためのBモードデータ)を生成する。
【0032】
CHIのBモードデータは、造影剤を反射源とする反射波の信号強度を輝度で表わしたデータとなる。また、CHIでPM法が行われる場合、処理回路180は、例えば、「1」の送信による反射波データをフィルタ処理することで、組織画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0033】
ドプラ処理機能182は、超音波受信回路120から受け取った受信信号を周波数解析することで、スキャン領域に設定されるROI(Region Of Interest:関心領域)内にある移動体のドプラ効果に基づく運動情報を抽出したデータ(ドプラ情報)を生成する機能である。生成されたドプラ情報は、2次元的な超音波走査線上のドプラRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0034】
画像生成機能183は、Bモード処理機能181により生成されたデータに基づいて、Bモード画像データを生成する機能である。例えば、画像生成機能183において処理回路180は、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の画像データを生成する。具体的には、処理回路180は、RAWデータメモリに記憶されたBモードRAWデータに対してRAW-ピクセル変換、例えば、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じた座標変換を実行することで、ピクセルから構成される2次元Bモード画像データ(超音波画像データとも称する)を生成する。換言すると、処理回路180は、画像生成機能183により、超音波の送受信によって、連続する複数のフレームにそれぞれ対応する複数の超音波画像(医用画像)を生成する。
【0035】
また、処理回路180は、2次元Bモード画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、およびγカーブ補正、並びにRGB変換等の各種処理を実行することで、画像データをビデオ信号に変換する。処理回路180は、ビデオ信号を表示装置103に表示させる。なお、処理回路180は、操作者が入力装置により各種指示を入力するためのユーザインタフェース(GUI:Graphical User Interface)を生成し、GUIを表示装置103に表示させてもよい。
【0036】
システム制御機能188は、超音波診断装置1全体の動作を統括して制御する機能である。尚、データ生成機能184、算出機能185、表示画像生成機能186および表示制御機能187については、後述される。
【0037】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の基本的な構成について説明した。次に、このような構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、以下に説明する処理により、造影剤の流れを描出することができる。例えば、超音波診断装置1は、造影エコー法にて造影剤として用いられる微小気泡(マイクロバブル)の一つ一つをトラッキング(追跡)することで、造影剤が流れる向きおよび移動速度を定量的に表示することができる。
【0038】
なお、以下の実施形態では、被検体Pに造影剤を注入して撮像された超音波画像データに対して略リアルタイムの処理を行って造影剤の流れを描出する場合を説明する。このとき、例えば画像メモリ140には、連続する複数のフレームにそれぞれ対応する複数の超音波画像(医用画像)、或いは複数の組織画像が記憶される。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、撮影済みの超音波画像データ(若しくは反射波データなど)に対して事後的に処理を行うことも可能である。なお、以下では、造影剤を、単に「バブル」とも表記する。
【0039】
データ生成機能184は、隣接するフレームに対応する二つの医用画像のそれぞれにおける造影剤の位置を特定する機能である。例えば、データ生成機能184において処理回路180は、二つの医用画像のそれぞれにおける組織の動きを補正し、補正後の二つの医用画像それぞれにおける造影剤の位置を特定する。そして、データ生成機能184は、二つの医用画像それぞれにおける固定位置に基づく高調波成分を除去し、除去後の二つの医用画像それぞれにおける造影剤に基づく高調波成分を用いて造影剤の位置を特定する。
【0040】
まず、処理回路180は、データ生成機能184により、略リアルタイムで撮像される造影画像データにおいて、組織の動きを補正する処理を実行する。ここで、補正対象となる組織の動きは、例えば、被検体Pの実質組織の動き(体動)や超音波プローブ101のずれ(揺れ)に基づく画像の全体的な位置ずれである。つまり、このような位置ずれがある場合には、造影画像データによって描出されるバブルの位置は、被検体の動きや超音波プローブ101のずれを含んだものとなってしまうため、造影画像データにおける組織の動きを補正する。
【0041】
例えば、処理回路180は、現在のフレーム(「Nフレーム」とも表記する)の組織画像データと、N-1フレーム目の組織画像データとを、画像メモリ140から読み出す。ここで、組織画像データは、反射波データからフィルタ処理により分離された基本波成分に基づいて生成された超音波画像データ(Bモード画像データ)である。そして、処理回路180は、Nフレーム目の組織画像データと、N-1フレーム目の組織画像データとの相互相関法によるパターンマッチングを行って、Nフレーム目の組織画像データと、N-1フレーム目の組織画像データとの間におけるずれ量を求める。そして、処理回路180は、求めたずれ量を用いて、Nフレーム目の組織画像データの座標系をN-1フレーム目の組織画像データの座標系に一致させるための補正量を算出する。そして、処理回路180は、算出した補正量を用いて、Nフレーム目の造影画像データの座標系を補正する。
【0042】
このように、処理回路180は、N-1フレーム目とNフレーム目との間における組織の動き(位置ずれ)を、Nフレーム目の造影画像データから除く補正を行う。これにより、処理回路180は、略リアルタイムで連続的に撮像される各フレームの造影画像データの組織の動きを、N-1フレーム目の組織の位置を基準として補正する。
【0043】
なお、上記の説明では、フィルタ処理によって得られた基本波成分に基づく組織画像データを用いて処理を行う場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、PM法により造影画像データが生成される場合には、PM法で得られる反射波データから生成された組織画像データであってもよい。例えば、PM法において、(-1,1)の2回の送信により反射波データが得られる場合には、「1」に対応する反射波データから得られるBモード画像データを、上記の組織画像データとして利用しても良い。若しくは、「1」に対応する反射波データから「-1」に対応する反射波データを減算した減算信号から得られるBモード画像データを、上記の組織画像データとして利用してもよい。
【0044】
次に、処理回路180は、固定位置に基づく高調波成分を除去する。ここで、固定位置に基づく高調波成分とは、例えば、被検体Pの組織(固定組織)に由来する高調波成分や、体内で停滞してしまったバブル(停滞バブル)に由来する高調波成分を指す。例えば、肝臓組織では、バブルがクッパー細胞に取り込まれて固定化し、停滞バブルとなることが知られている。このため、処理回路180は、固定位置に基づく高調波成分を造影画像データから除去する。
【0045】
例えば、処理回路180は、組織の動きを補正後の造影画像データから、フレーム方向の信号の統計的な処理に基づいて、固定位置に基づく高調波成分を除去する。一例としては、処理回路180は、Nフレーム目からN-10フレーム目までの造影画像データにおける各画素の値(信号値)の分散を算出する。ここで、算出された分散値が高い場合には、その画素における信号値が経時的に変化していることを表しているため、その画素の高調波成分は移動体(つまりバブル)に基づいていると判断される。一方、算出された分散値が低い場合には、その画素における信号値が経時的に変化していないことを表しているため、その画素の高調波成分は固定位置に基づくと判断される。そこで、処理回路180は、算出された分散値と閾値とを比較し、閾値より低い分散値が算出された画素の高調波成分を固定位置に基づく高調波成分として除去する。
【0046】
このように、処理回路180は、組織の動きを補正後の造影画像データから、固定位置に基づく高調波成分を除去する。なお、上記の説明では、Nフレーム目からN-10フレーム目までの信号値を用いて分散値を算出する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、処理回路180は、任意のフレーム数の信号値を用いて分散値を算出してもよい。また、例えば、処理回路180は、任意の2つのフレームの信号値を用いて分散値を算出しても良い。例えば、処理回路180は、Nフレーム目とN-10フレーム目の2つのフレームにおける信号値を用いて分散値を算出しても良い。なお、2つのフレームを用いて分散値を算出する場合には、連続する2つのフレームではなく、数フレーム程度離れた2つのフレームのデータが用いられるのが好ましい。
【0047】
また、上記の説明では、フレーム方向の信号の統計的な処理として、複数フレームにおける信号値の分散値を算出して比較する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、処理回路180は、分散値に代えて、標準偏差や標準誤差などのばらつきを表す統計値を算出し、閾値との比較に用いても良い。
【0048】
そして、処理回路180は、バブルの位置を特定する。例えば、処理回路180は、固定位置に基づく高調波成分を除去した造影画像データを生成することで、バブルの位置(バブル位置)を特定する。
【0049】
図2は、第1の実施形態に係るデータ生成機能の処理を説明するための図である。図2には、組織の動きが補正され、固定位置に基づく高調波成分が除去された造影画像データを例示する。図2において、黒丸印は、バブル位置を示す。
【0050】
図2に示すように、処理回路180は、データ生成機能184により、造影画像データが撮像されるごとに、組織の動きを補正し、固定位置に基づく高調波成分を除去する造影画像データを生成する。例えば、処理回路180は、Nフレーム目の造影画像データが生成されると、Nフレーム目の造影画像データから組織の動きを補正し、固定位置に基づく高調波成分を除去することで、図2に示す造影画像データを生成する。そして、処理回路180は、生成した造影画像データにおいて、閾値以上の輝度を有する画素の位置(座標)を、バブル位置として特定する。図2に示す例では、処理回路180は、黒丸印で示される位置をバブル位置として特定する。尚、造影画像データにおいて、バブルの位置を強調するフィルタ処理によって得られた画素値や信号強度に閾値判定を行なっても良い。また、上記処理によりバブルの位置が特定された造影画像データは、「造影位置データ」と呼ばれてもよい。
【0051】
このように、処理回路180は、バブル位置を特定する。なお、上記の説明では、処理回路180により生成される造影画像データを例示したが、例示の造影画像データを表示装置103に表示することに限定されるものではない。つまり、処理回路180の処理は、造影画像データを表示装置103に表示しなくとも、処理回路180の内部処理として実行可能である。このことは、以降についても同様である。
【0052】
さらに、処理回路180は、データ生成機能184により、N-1フレームに対応する医用画像における造影剤の位置を参照することにより、Nフレームに対応する医用画像に探索範囲を設定する。例えば、処理回路180は、前のフレームのバブル位置に基づいて、現在のフレームに探索範囲を設定する。
【0053】
図3は、第1の実施形態に係るデータ生成機能の処理を説明するための図である。なお、図3に示すN-1フレーム目およびNフレーム目の造影画像データには、それぞれ3つのバブルが描出されている。また、N-1フレーム目の造影画像データに描出されたバブルB1、バブルB2およびバブルB3には、それぞれバブルID「1」、「2」、および「3」が付与されている。なお、バブルIDは、バブルを識別するための識別番号である。
【0054】
図3に示すように、処理回路180は、Nフレーム目の造影画像データにおいて、N-1フレーム目の各バブル位置に対応する位置をそれぞれ特定する。そして、処理回路180は、特定した各位置を中心とする所定の大きさおよび形状を有する範囲を、探索範囲として設定する。
【0055】
具体的には、処理回路180は、N-1フレーム目のバブルB1の座標を取得する。そして処理回路180は、Nフレーム目の造影画像データにおいて、取得したバブルB1の座標に対応する位置を、位置P1として特定する。そして、処理回路180は、位置P1を中心とする所定の大きさの矩形範囲を、探索範囲R1として設定する。また、処理回路180は、N-1フレーム目のバブルB2の座標を取得する。そして、処理回路180は、Nフレーム目の造影画像データにおいて、取得したバブルB2の座標に対応する位置を、位置P2として特定する。そして、処理回路180は、位置P2を中心とする所定の大きさの矩形範囲を、探索範囲R2として設定する。また、処理回路180は、N-1フレーム目のバブルB3の座標を取得する。そして、処理回路180は、Nフレーム目の造影画像データにおいて、取得したバブルB3の座標に対応する位置を、位置P3として特定する。そして、処理回路180は、位置P3を中心とする所定の大きさの矩形範囲を、探索範囲R3として設定する。
【0056】
このように、処理回路180は、N-1フレーム目のバブル位置に基づいて、Nフレーム目の造影画像データに探索範囲を設定する。なお、上記の説明はあくまで一例であり、これに限定されるものではない。例えば、探索範囲の中心位置は、必ずしもN-1フレーム目のバブル位置に一致していなくても良い。また、例えば、探索範囲の大きさおよび形状は、任意に設定されても良い。また、上記の説明では、造影画像データ上に探索範囲を設定する場合を例示したが、造影画像データを表示装置103に表示することに限定されるものではない。つまり、データ生成機能184の処理は、造影画像データを表示装置103に表示しなくとも、処理回路180の内部処理として実行可能である。このことは、以降についても同様である。
【0057】
算出機能185は、造影剤の移動を表すベクトルを算出する機能である。例えば、処理回路180は、算出機能185により、隣接するフレームに対応する二つの医用画像それぞれにおける造影剤の位置に基づいて、造影剤の移動を表すベクトルを算出する。処理回路180は、探索範囲内における造影剤の位置と、探索範囲を設定するために参照した造影剤の位置に基づいてベクトルを算出する。
【0058】
まず、処理回路180は、バブルの追跡処理(トラッキング)を行う。この追跡処理は、N-1フレーム目のバブル位置と、Nフレーム目のバブル位置との間の対応関係を推定することで、各バブルが移動したのか、消滅したのか、若しくは新規に出現したのかを識別する処理である。
【0059】
図4は、第1の実施形態に係る算出機能の処理を説明するための図である。図4の左図には、探索範囲R1~R3が設定されたNフレーム目の造影画像データが例示される。
【0060】
図4の左図に示すように、探索範囲R1の中にはバブルが存在しない。ここで、探索範囲R1は、N-1フレーム目のバブルB1の位置に対応する位置P1を中心として設定された範囲である。この場合、処理回路180は、N-1フレーム目のバブルB1に対応するバブルがNフレーム目に存在しないと識別する。言い換えると、処理回路180は、N-1フレーム目のバブルB1のバブルが、Nフレーム目において消滅したものと識別する。この結果、処理回路180は、N-1フレーム目のバブルB1を消滅させる。
【0061】
また、探索範囲R2の中にはバブルが一つ存在する。ここで、探索範囲R2は、N-1フレーム目のバブルB2の位置に対応する位置P2を中心として設定された範囲である。この場合、処理回路180は、探索範囲R2の中のバブルが、N-1フレーム目のバブルB2に対応するバブルであると識別する。言い換えると、処理回路180は、探索範囲R2の中のバブルが、位置P2から移動したバブルであると識別する。この結果、処理回路180は、N-1フレーム目のバブルB2を、探索範囲R2の中のバブルに割り当てる(図4の右図参照)。
【0062】
また、探索範囲R3の中にはバブルが一つ存在する。ここで、探索範囲R3は、N-1フレーム目のバブルB3の位置に対応する位置P3を中心として設定された範囲である。この場合、処理回路180は、探索範囲R3の中のバブルが、N-1フレーム目のバブルB3に対応するバブルであると識別する。言い換えると、処理回路180は、探索範囲R3の中のバブルが、位置P3から移動したバブルであると識別する。この結果、処理回路180は、N-1フレーム目のバブルB3を、探索範囲R3の中のバブルに割り当てる(図4の右図参照)。
【0063】
また、探索範囲R1~R3のいずれにも含まれないバブルが存在する場合、処理回路180は、このバブルは、Nフレーム目において新規に出現したバブルであると識別する。図4の例では、Nフレーム目の右下のバブルB4がいずれの探索範囲にも含まれないバブルである。この場合、処理回路180は、Nフレーム目の右下のバブルが新規に出現したバブルであると識別する。この結果、処理回路180は、新規のバブルID「4」を発番し、新規に出現したバブルB4に割り当てる。
【0064】
なお、探索範囲の中にバブルが二つ以上存在する場合もある。この場合、処理回路180は、探索範囲を設定するために参照したN-1フレーム目のバブル位置との距離が最も近い位置のバブル、若しくは形状が最も類似するバブルを、N-1フレーム目から移動したバブル(移動後のバブル)と識別すればよい。或いは、処理回路180は、距離と形状に基づくスコアが最も優れたバブルを、N-1フレーム目から移動したバブルと識別してもよい。
【0065】
また、探索範囲の中にバブルが一つしか存在しない場合においても、N-1フレーム目とNフレーム目のバブルの形状を比較する処理を行っても良い。この場合、類似度が低い(所定の閾値未満)の場合には、両者を異なるバブルであると識別する。この場合、処理回路180は、N-1フレーム目のバブルは消滅したものと識別し、Nフレーム目のバブルは新規に出現したバブルであると識別する。
【0066】
次に、処理回路180は、現在のフレームにおける造影剤の位置と、前のフレームにおける造影剤の位置とに基づいて、造影剤の移動を表すベクトルを算出する。例えば、処理回路180は、N-1フレームからNフレームにかけて継続してバブルIDが割り当てられたバブルについて、ベクトルを算出する。
【0067】
図4に示す例では、バブルB2およびバブルB3は、N-1フレームからNフレームにかけて継続してバブルIDが割り当てられたバブルである。この場合、処理回路180は、図4の右図において、位置P2を始点とし、Nフレーム目のバブルB2の位置を終点とするベクトルV1を算出する。ここで、ベクトルV1は、バブルが移動した向きと、バブルが移動した移動速度とを示す。ここで、バブルの移動速度は、始点と終点との間の距離を実空間における長さ(ピッチサイズ)に変換し、フレーム間隔で除算することで算出される。バブルB3についても同様に、処理回路180は、位置P3を始点とし、Nフレーム目のバブルB3の位置を終点とするベクトルV2を算出する。すなわち、処理回路180は、隣接するフレームの間の時間差およびベクトルの実空間における長さから造影剤の移動速度を算出する。
【0068】
このように、処理回路180は、バブルの移動を表すベクトルを算出する。なお、上記の説明はあくまで一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上記の説明では、造影画像データ上でベクトルを算出する場合を例示したが、造影画像データを表示装置103に表示することに限定されるものではない。つまり、処理回路180の処理は、造影画像データを表示装置103に表示しなくとも、処理回路180の内部処理として実行可能である。このことは、以降についても同様である。
【0069】
また、処理回路180は、隣接するフレームのどちらかと基準フレームとの間の時間差を算出する。例えば、処理回路180は、撮像開始時点から各バブルが検出された時点までの時間を、バブルの到達時間として算出する。この場合、各フレームの撮影時刻が到達時間に対応する。処理回路180は、各フレームにおいて各バブルが検出されるごとに、各バブルの到達時間を算出する。
【0070】
なお、上記の説明では、撮像開始時点から各バブルの検出時点までを到達時間として算出する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、所定の時刻を基準フレームとして指定し、指定された基準フレームと現在のフレームとの間の経過時間を算出してもよい。例えば、処理回路180は、造影剤を注入後、バブルが最初に造影画像データ上に検出された時刻のフレームを基準フレームとし、この基準フレームからの経過時間を各バブルの到達時間として算出してもよい。
【0071】
表示画像生成機能186は、バブルの移動を表すベクトルを示す形状を有する表示画像データを生成する機能である。具体的には、処理回路180は、表示画像生成機能186により、現在のフレームで特定されたバブル(トラッキングができたバブル)に対して、ベクトルを用いて算出された移動速度に応じた色を割り当てる。この時、処理回路180は、一度トラッキングができたバブルについては、処理終了時までバブルを残しておくこととする。即ち、表示画像データには、撮像開始時点からある基準時点までの、フレーム毎にトラッキングされたバブルが累積して示される。
【0072】
なお、処理回路180は、表示画像データにおいて、後述する表示条件の範囲外にあるバブルについては、表示装置103には表示させないこととする。しかし、処理回路180は、表示条件の範囲外にあるバブルについて、造影画像データ内に当該バブルの情報を保持してもよい。
【0073】
図5は、第1の実施形態に係るカラーバーの表示例を説明する図である。処理回路180は、トラッキングができたバブルに対して、予め設定された表示条件に応じた色を割り当てる。図5に示す表示条件DC1には、0[mm/s]から100.0[mm/s]までのレンジを有するカラーバーCB1が示されている。即ち、図5の例では、表示されるバブルの移動速度は、例えば、0[mm/s]から100.0[mm/s]までに設定されている。尚、移動速度の範囲の設定は任意に変更されてもよい。
【0074】
図6は、第1の実施形態に係る造影画像データにおけるバブルの表示例を説明するための図である。例えば、バブルB10、バブルB20およびバブルB30は、それぞれN-1フレーム目のバブル位置を示し、バブルB11、バブルB21およびバブルB31は、それぞれNフレーム目のバブル位置を示している。
【0075】
処理回路180は、バブルB10の位置を始点とし、バブルB11の位置を終点とするベクトルV11を算出する。同様に、処理回路180は、バブルB20の位置を始点とし、バブルB21の位置を終点とするベクトルV21を算出する。処理回路180は、バブルB30の位置を始点とし、バブルB31の位置を終点とするベクトルV31を算出する。
【0076】
そして、処理回路180は、ベクトルV11から算出した移動速度に対応する色をバブルB11に割り当てる。同様に、処理回路180は、ベクトルV21から算出した移動速度に対応する色をバブルB21に割り当てる。処理回路180は、ベクトルV31から算出した移動速度に対応する色をバブルB31に割り当てる。
【0077】
このように、処理回路180は、ベクトルから算出した移動速度に対応する色をバブルに割り当てる。よって、操作者は、造影画像を参照することによって、あるフレームにおいてトラッキングされたバブルの速度を確認することができる。
【0078】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1における、バブルのトラッキングについての基本的な処理について説明した。次に、このような処理のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、後述するデシメーション処理により、低速のバブルを安定してトラッキングすることができる。以下ではまず、通常時のトラッキングについて説明し、次いで本実施形態でのデシメーション処理を用いたトラッキングについて説明する。
【0079】
図7は、第1の実施形態に係る通常時の表示条件についてのカラーバーを説明する図である。本実施形態における通常時は、例えば、生体Pの血管内を流れるバブルをトラッキングする場合に利用される。
【0080】
表示条件DC2は、例えば、通常時のトラッキング表示に用いられる。表示条件DC2には、例えば、15.0[mm/s]から60.0[mm/s]までのレンジを有するカラーバーCB2が示されている。
【0081】
通常時のトラッキングでは、例えば表示条件DC2の下限値は、所定の値(例えば、図7では15.0[mm/s])に決められている。バブルの移動速度は、上述したように、ベクトルの移動量とフレームレートとに基づいて算出される。そのため、フレーム間のバブルの移動量があまりにも小さい場合、動いていない(止まっている)バブルと特定され、ベクトルが算出されないことがある。
【0082】
図8は、第1の実施形態に係る通常時の表示画像データの生成例を説明するための図である。図8には、フレームF1からフレームF9までにそれぞれ対応する、造影画像データ11から造影画像データ19までがそれぞれ示されている。また、造影画像データ11から造影画像データ19には、バブル11aからバブル19aまでがそれぞれ特定されている。尚、バブル11aからバブル19aまでは、それぞれ同一のバブルであるものとする。このことは以降も同様である。
【0083】
フレームF2において、算出領域22内のバブル11aの位置およびバブル12aの位置が近接しているため、処理回路180は、バブル11aおよびバブル12aを止まっているバブルと特定する。そして、処理回路180は、算出されるベクトルがないため、バブル12aを含まない表示画像データ32を生成する。
【0084】
同様に、フレームF3において、算出領域23内のバブル12aの位置およびバブル13aの位置が近接しているため、処理回路180は、バブル12aおよびバブル13aを止まっているバブルと特定する。そして、処理回路180は、算出されるベクトルがないため、バブル13aを含まない表示画像データ33を生成する。
【0085】
以降のフレームF4からフレームF9までにおいても、上記と同様に、処理回路180は、算出されるベクトルがないため、バブルを含まない表示画像データ34から表示画像データ39をそれぞれ生成する。
【0086】
(デシメーション処理)
次に、本実施形態に係るデシメーション処理を適用したトラッキングについて説明する。デシメーション処理とは、ベクトルを算出する際にフレームを間引く処理である。「フレームを間引く」とは、ベクトルを算出する際に用いる二つの造影画像データの間を1フレーム以上開けることである。例えば、1フレーム間引く場合、処理回路180は、Nフレーム目に対応する造影画像データと、N-2フレーム目に対応する造影画像データとを用いて、ベクトルを算出する。このとき、N-2フレームは、Nフレームよりも2フレーム前のフレームである。
【0087】
データ生成機能184において処理回路180は、画像メモリ140に記憶された複数の医用画像のうちの、第1のフレームに対応する第1の医用画像と、第1のフレームよりも2フレーム以上前の第2のフレームに対応する第2の医用画像とのそれぞれについて、造影剤の位置を示す第1の造影位置データおよび第2の造影位置データをそれぞれ生成する。
【0088】
算出機能185において処理回路180は、生成された第1の造影位置データおよび第2の造影位置データに基づいて、造影剤の移動を示すベクトルを算出する。
【0089】
表示画像生成機能186は、造影剤の流れを表す表示画像データを生成する機能である。例えば、表示画像生成機能186において処理回路180は、算出されたベクトルを示す形状を有する表示画像データを生成する。
【0090】
表示制御機能187は、生成された表示画像データを表示装置103に表示させる機能である。具体的には、表示制御機能187において処理回路180は、表示画像データを表示装置103にそのまま表示させてもよいし、表示画像データを所定の医用画像データ上に重畳させて表示装置103に表示させてもよい。
【0091】
図9は、第1の実施形態に係る低速時の表示条件についてのカラーバーを説明する図である。本実施形態における低速時は、例えば、腫瘍などの組織内を漂う(Pooling)停滞気味のバブルをトラッキングする場合に利用される。
【0092】
表示条件DC3は、例えば、低速時のトラッキング表示に用いられる。表示条件DC3には、例えば、1.0[mm/s]から15.0[mm/s]までのレンジを有するカラーバーCB3が示されている。尚、本実施形態では、表示条件DC3の下限値は、前述の表示条件DC2の下限値よりも下げることができる。これはデシメーション処理によって、実現するものである。
【0093】
図10は、第1の実施形態に係るデシメーション処理を実行する場合の表示画像データの生成例を説明するための図である。図10の例では、3フレーム分を間引いてベクトルが算出される。図10には、フレームF1、フレームF5およびフレームF9にそれぞれ対応する、造影画像データ11、造影画像データ15および造影画像データ19がそれぞれ示されている。また、造影画像データ11、造影画像データ15および造影画像データ19には、バブル11a、バブル15aおよびバブル19aがそれぞれ特定されている。
【0094】
フレームF5において、処理回路180は、算出領域45内のバブル11aおよびバブル15aを同一のバブルであると特定する。そして、処理回路180は、バブル11aの位置を始点とし、バブル15aの位置を終点とするベクトル45bを算出する。ベクトル45bを算出した後、処理回路180は、ベクトル45bと間引かれたフレーム間の時間長(図10では、4フレーム分の時間長)とに基づいて、バブル15aの移動速度を算出する。バブル15aの移動速度が算出された後、処理回路180は、バブル15aの移動速度に応じた色を、バブル15aに割り当て、着色されたバブル15aを含む表示画像データ55を生成する。
【0095】
同様に、フレームF9において、処理回路180は、算出領域49内のバブル15aおよびバブル19aを同一のバブルであると特定する。そして、処理回路180は、バブル15aの位置を始点とし、バブル19aの位置を終点とするベクトル49bを算出する。ベクトル49bを算出した後、処理回路180は、ベクトル49bと間引かれたフレーム間の時間長とに基づいて、バブル19aの移動速度を算出する。バブル19aの移動速度が算出された後、処理回路180は、バブル19aの移動速度に応じた色を、バブル19aに割り当て、着色されたバブル19aを含む表示画像データ59を生成する。尚、表示画像データ59には、フレームF5において着色されたバブル15aが含まれる。
【0096】
なお、間引かれるフレームの数は、3つに限らない。例えば、処理回路180は、図9に示した表示条件DC3の上限値に応じて、間引かれるフレームの数(擬似的なフレームレートの値)を決定してもよい。また、処理回路180は、擬似的なフレームレートの値に応じて、表示条件DC3の上限値を決定してもよい。擬似的なフレームレートとは、例えば、通常のフレームレートが60fpsの場合、3フレーム分を毎回間引く(スキップする)ことにより、総フレーム数が1/4になり、フレームレートが15fpsになることを意味する。
【0097】
図11は、第1の実施形態に係るデシメーション処理を実行する処理回路の動作を示すフローチャートである。図11に示す処理は、例えば、超音波診断装置1によるバブルトラッキング処理において、さらに操作者からデシメーション処理を実行する指示を受け付けることにより開始される。尚、以降の説明では、処理回路180は、略リアルタイムで連続的に撮像される各フレームの造影画像データを取得しているものとする。
【0098】
(ステップS101)
デシメーション処理が開始すると、処理回路180は、データ生成機能184を実行する。データ生成機能184を実行すると、処理回路180は、複数の医用画像(例えば、超音波画像)のうちの、第1のフレームに対応する第1の医用画像と、第1のフレームよりも2フレーム以上前の第2のフレームに対応する第2の医用画像とのそれぞれについて、造影剤の位置を示す第1の造影位置データおよび第2の造影位置データをそれぞれ生成する。
【0099】
図10を例に説明すると、処理回路180は、フレームF5(第1のフレーム)に対応する造影画像データ15(第1の医用画像)と、フレームF5よりも4フレーム前のフレームF1(第2のフレーム)に対応する造影画像データ11(第2の医用画像)とのそれぞれについて、バブル15aの位置を示すデータ(第1の造影位置データ)およびバブル11aの位置を示すデータ(第2の造影位置データ)をそれぞれ生成する。
【0100】
(ステップS102)
造影位置データが算出された後、処理回路180は、算出機能185を実行する。算出機能185を実行すると、処理回路180は、第1の造影位置データおよび第2の造影位置データに基づいて、造影剤の位置を示すベクトルを算出する。
【0101】
図10を例に説明すると、処理回路180は、バブル15aの位置を示すデータ(第1の造影位置データ)およびバブル11aの位置を示すデータ(第2の造影位置データ)に基づいて、バブル11aの位置を始点とし、バブル15aの位置を終点とするベクトル45bを算出する。
【0102】
(ステップS103)
ベクトルが算出された後、処理回路180は、表示画像生成機能186を実行する。表示画像生成機能186を実行すると、処理回路180は、ベクトルを示す形状を有する表示画像データを生成する。
【0103】
図10を例に説明すると、処理回路180は、着色されたバブル15a(ベクトルを示す形状)を含む表示画像データ55を生成する。
【0104】
(ステップS104)
表示画像データが生成された後、処理回路180は、表示制御機能187を実行する。表示制御機能187を実行すると、処理回路180は、表示画像データを所定の医用画像上に重畳表示する。尚、表示画像データを所定の医用画像上に重畳表示した後、デシメーション処理の終了の指示があるまで、上記ステップS101からステップS104を繰り返す。上記では、図10のフレームF5の時点において説明したが、デシメーション処理が繰り返される場合、後続する処理は、フレームF9の時点で実行される。
【0105】
図12は、第1の実施形態に係るデシメーション処理を実行した表示例を示す図である。図12に示される表示領域60には、デシメーション処理の実行中を示す「Decimation ON」の文字が表示される。表示領域60には、解析画像AIおよび超音波画像UIが並べて表示される。
【0106】
解析画像AIには、関心領域に相当する領域VI1が設定されている。この領域VI1内に表示されるデータは、上記の表示画像データに相当する。領域VI1には、連続するバブルの移動を示す軌跡Ca1が表示されている。この軌跡Ca1には、表示条件DC4のカラーバーCB4に対応する色が割り当てられている。即ち、領域VI1には、トラッキングされたバブルの移動速度を表す色が割り当てられた点(或いは、連続する点の集合)が表示されている。
【0107】
超音波画像UIには、領域VI1に対応する領域DI1が設定されている。領域DI1には、軌跡Ca1の移動方向に対応する軌跡が表示されている。領域DI1の軌跡には、方向カラースケールDCSに対応する色が割り当てられている。即ち、領域DI1には、トラッキングされたバブルの移動方向を表す色が割り当てられた点(或いは、連続する点の集合)が表示されている。
【0108】
上記で説明したデシメーション処理では、間引いたフレームを利用せずに、擬似的にフレームレートを下げて、低速のバブルをトラッキングしていたが、これに限らない。例えば、間引くフレームの数を一定にしたまま、ベクトルを算出するフレームのペアをずらしてもよい。
【0109】
図13は、第1の実施形態に係るデシメーション処理を実行する場合の造影画像データの他の生成例を説明するための図である。図13には、フレームF1からフレームF9までにそれぞれ対応する、造影画像データ11から造影画像データ19までがそれぞれ示されている。また、造影画像データ11から造影画像データ19には、バブル11aからバブル19aまでがそれぞれ特定されている。
【0110】
フレームF5における処理は、前述の図10と同様である。図13の例では、フレームF5の次に、フレームF6にて処理が行われる。フレームF6において、処理回路180は、算出領域46内のバブル12aおよびバブル16aを同一のバブルであると特定する。そして、処理回路180は、バブル12aの位置を始点とし、バブル16aの位置を終点とするベクトル46bを算出する。ベクトル46bを算出した後、処理回路180は、ベクトル46bと間引かれたフレーム間の時間長とに基づいて、バブル16aの移動速度を算出する。バブル16aの移動速度が算出された後、処理回路180は、バブル16aの移動速度に応じた色を、バブル16aに割り当て、着色されたバブル16aを含む表示画像データ76を生成する。尚、表示画像データ76には、フレームF5において着色されたバブル15aが含まれる。
【0111】
以降同様に、フレームF7からフレームF9までのそれぞれにおいて、ベクトル47bからベクトル49bまでが算出され、バブル17aからバブル19aに色が割り当てられる。そして、フレームF9における表示画像データ79には、着色されたバブル15aからバブル19aまでが含まれる。
【0112】
よって、図13に例示される処理では、間引いたフレームを利用することによって、フレームレートを下げること無く低速のバブルをトラッキングすることができる。
【0113】
以上説明したように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波の送受信によって、連続する複数のフレームにそれぞれ対応する複数の超音波画像(複数の医用画像)を生成し、複数の超音波画像のうちの、第1のフレームに対応する第1の超音波画像(第1の医用画像)と、第1のフレームよりも2フレーム以上前の第2のフレームに対応する第2の超音波画像(第2の医用画像)とのそれぞれについて、造影剤(被検体内の移動体)の位置を示す第1の造影位置データ(第1の移動体位置データ)および第2の造影位置データ(第2の移動体位置データ)をそれぞれ生成し、第1の造影位置データおよび第2の造影位置データに基づいて、造影剤(移動体)の移動を示すベクトルを算出し、ベクトルを示す形状を有する表示画像データを生成する。
【0114】
従って、本超音波診断装置は、フレームをスキップさせてバブル(造影剤)をトラッキングするため、フレーム間(frame by frame)のトラッキングでは描出が困難な移動量の少ない造影剤の流れを描出することができる。
【0115】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、デシメーション処理を用いて低速のバブルをトラッキングする方法について説明した。第2の実施形態では、通常のバブルトラッキングと、デシメーション処理によるバブルトラッキングとを併用する場合について説明する。以降では、この二つのトラッキングを併用する処理を、ハイブリッド処理と呼ぶ。
【0116】
図14は、第2の実施形態に係る超音波診断装置1Aの構成例を示すブロック図である。超音波診断装置1Aは、装置本体100Aと、超音波プローブ101とを有している。装置本体100Aは、入力装置102および表示装置103と接続されている。また、装置本体100Aは、ネットワークNWを介して外部装置104と接続されている。
【0117】
装置本体100Aは、超音波プローブ101により受信された反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体100Aは、超音波送信回路110と、超音波受信回路120と、内部記憶回路130と、画像メモリ140と、入力インタフェース150と、出力インタフェース160と、通信インタフェース170と、処理回路180Aとを有している。
【0118】
処理回路180Aは、例えば、超音波診断装置1Aの中枢として機能するプロセッサである。処理回路180Aは、内部記憶回路130に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。処理回路180Aは、例えば、Bモード処理機能181と、ドプラ処理機能182と、画像生成機能183(画像生成部)と、データ生成機能184(データ生成部)と、算出機能185A(算出部)と、表示画像生成機能186A(表示画像生成部)と、表示制御機能187(表示制御部)と、システム制御機能188とを有している。
【0119】
算出機能185Aは、異なるフレームのペアのそれぞれのベクトルを略同時に算出する機能である。異なるフレームのペアとは、例えば、フレームF1およびフレームF5のペアと、フレームF4およびフレームF5のペアとを意味する。
【0120】
表示画像生成機能186Aは、異なるフレームのペアから算出されたそれぞれのベクトルに対応する表示画像データを生成する機能である。例えば、処理回路180Aは、表示画像生成機能186Aにより、通常のバブルトラッキングによって得られる表示画像データと、デシメーション処理によるバブルトラッキングによって得られる表示画像データとを両方生成することができる。
【0121】
(ハイブリッド処理)
図15は、第2の実施形態に係るハイブリッド処理の実行によるカラーバーを説明する図である。表示条件DC5は、例えば、ハイブリッド処理時のトラッキング表示に用いられる。表示条件DC5には、例えば、1.0[mm/s]から60.0[mm/s]までのレンジを有するカラーバーCB5が示されている。
【0122】
図16は、第2の実施形態に係るハイブリッド処理の概要を説明するための図である。前述したように、第2の実施形態に係るハイブリッド処理では、通常の隣接するフレーム間のバブルトラッキングと、フレーム間隔を間引いたバブルトラッキングが併用される。隣接するフレーム間のバブルトラッキングは、例えば、流れが速い造影剤(バブル)に対するトラッキングに用いられる。フレーム間隔を間引いたバブルトラッキングは、例えば、流れが遅い造影剤(バブル)に対するトラッキングに用いられる。
【0123】
図17は、第2の実施形態に係る表示画像生成機能の処理を説明する図である。処理回路180Aは、表示画像生成機能186Aにより、領域VI1に対応する表示画像データと、領域VI2に対応する表示画像データとを生成する。尚、領域VI1および領域VI2は、あるフレームに対応する造影画像における同一の領域である。
【0124】
領域VI1には、軌跡Ca1が表示されている。この軌跡Ca1には、表示条件DC5のカラーバーCB5の低速域に対応する色が割り当てられている。即ち、領域VI1に対応する表示画像データは、流れが遅いバブルが示されている。
【0125】
領域VI2には、軌跡Ca2が表示されている。この軌跡Ca2には、表示条件DC5のカラーバーCB5の高速域に対応する色が割り当てられている。即ち、領域VI2に対応する表示画像データは、流れが速いバブルが示されている。
【0126】
二つの表示画像データが生成された後、処理回路180Aは、表示制御機能187により、領域VI1および領域VI2を重畳させた領域VI3に対応する表示画像データを表示させる。この表示画像データには、軌跡Ca1および軌跡Ca2の両方が表示されている。
【0127】
図18は、第2の実施形態に係るハイブリッド処理を実行する処理回路の動作を示すフローチャートである。図18に示す処理は、例えば、超音波診断装置1によるバブルトラッキング処理において、さらに操作者からハイブリッド処理を実行する指示を受け付けることにより開始される。尚、以降の説明では、処理回路180Aは、略リアルタイムで連続的に撮像される各フレームの造影画像データを取得しているものとする。また、以降のステップS201aからステップS203aまでの一連の処理は、デシメーション処理によるバブルトラッキングの処理に対応し、ステップS201bからステップS203bまでの一連の処理は、通常時のバブルトラッキングの処理に対応する。これら一連の処理は、それぞれほぼ同時に並行して実行される。
【0128】
(ステップS201a)
ハイブリッド処理が開始すると、処理回路180Aは、データ生成機能184を実行する。データ生成機能184を実行すると、処理回路180Aは、複数の医用画像(例えば、超音波画像)のうちの、第1のフレームに対応する第1の医用画像と、第1のフレームよりも2フレーム以上前の第2のフレームに対応する第2の医用画像とのそれぞれについて、造影剤の位置を示す第1の造影位置データおよび第2の造影位置データをそれぞれ生成する。
【0129】
(ステップS202a)
造影位置データが算出された後、処理回路180Aは、算出機能185Aを実行する。算出機能185Aを実行すると、処理回路180Aは、第1の造影位置データおよび第2の造影位置データに基づいて、造影剤の位置を示す第1のベクトルを算出する。
【0130】
(ステップS203a)
ベクトルが算出された後、処理回路180Aは、表示画像生成機能186Aを実行する。表示画像生成機能186Aを実行すると、処理回路180Aは、第1のベクトルを示す形状を有する第1の表示画像データを生成する。ステップS203aの後、処理はステップS204へと進む。
【0131】
(ステップS201b)
処理回路180Aは、ステップS201aの処理と略同時にステップS201bの処理を実行する。データ生成機能184を実行すると、処理回路180Aは、複数の医用画像(例えば、超音波画像)のうちの、第1のフレームよりも前、且つ第2のフレームよりも後の第3のフレームに対応する第3の医用画像について、造影剤の位置を示す第3の造影位置データを生成する。
【0132】
(ステップS202b)
処理回路180Aは、ステップS202aの処理と略同時にステップS202bの処理を実行する。算出機能185Aを実行すると、処理回路180Aは、第1の造影位置データおよび第3の造影位置データに基づいて、造影剤の位置を示す第2のベクトル(他のベクトル)を算出する。
【0133】
(ステップS203b)
処理回路180Aは、ステップS203aの処理と略同時にステップS203bの処理を実行する。表示画像生成機能186Aを実行すると、処理回路180Aは、第2のベクトルを示す形状を有する第2の表示画像データ(他の表示画像データ)を生成する。ステップS203bの後、処理はステップS204へと進む。
【0134】
(ステップS204)
二つの表示画像データが生成された後、処理回路180Aは、表示制御機能187を実行する。表示制御機能187を実行すると、処理回路180Aは、第1の表示画像データおよび第2の表示画像データを所定の医用画像上に重畳表示する。尚、二つの表示画像データを所定の医用画像上に重畳表示した後、ハイブリッド処理の終了の指示があるまで、上記の一連のステップを繰り返す。
【0135】
なお、ステップS204において、処理回路180Aは、表示制御機能187により、第1の表示画像データおよび第2の表示画像データを同時に並べて所定の医用画像上に表示してもよい。即ち、表示画面には、デシメーション処理によるバブルトラッキングの処理の結果と、通常時のバブルトラッキングの処理の結果とが並列して表示される。
【0136】
図19は、第2の実施形態に係るハイブリッド処理を実行した表示例を示す図である。図19に示される表示領域80には、ハイブリッド処理の実行中を示す「Hybrid」の文字が表示される。表示領域80には、解析画像AIおよび超音波画像UIが並べて表示される。
【0137】
解析画像AIの領域VI3には、低速のバブルの移動を示す軌跡Ca1および高速のバブルの移動を示す軌跡Ca2がそれぞれ表示されている。これらの軌跡Ca1およびCa2には、表示条件DC6のカラーバーCB6に対応する色が割り当てられている。即ち、領域VI3には、異なる手段でトラッキングされたバブルの移動速度を表す色が割り当てられた点(或いは、連続する点の集合)が表示されている。
【0138】
超音波画像UIの領域DI3には、軌跡Ca1および軌跡Ca2のそれぞれの移動方向に対応する軌跡が表示されている。これらの軌跡には、方向カラースケールDCSに対応する色が割り当てられている。即ち、領域DI3には、異なる手段でトラッキングされたバブルの移動方向を表す色が割り当てられた点(或いは、連続する点の集合)が表示されている。
【0139】
以上説明したように、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波の送受信によって、連続する複数のフレームにそれぞれ対応する複数の超音波画像(複数の医用画像)を生成し、複数の医用画像のうちの、第1のフレームに対応する第1の医用画像と、第1のフレームよりも2フレーム以上前の第2のフレームに対応する第2の医用画像とのそれぞれについて、造影剤の位置を示す第1の造影位置データおよび第2の造影位置データをそれぞれ生成し、第1の造影位置データおよび第2の造影位置データに基づいて、造影剤の移動を示すベクトル(第1のベクトル)を算出し、ベクトル(第1のベクトル)を示す形状を有する表示画像データ(第1の表示画像データ)を生成する。同時に、本超音波診断装置は、複数の医用画像のうちの、第1のフレームよりも前、且つ第2のフレームよりも後の第3のフレームに対応する第3の医用画像について、造影剤の位置を示す第3の造影位置データを生成し、第1の造影位置データおよび第3の造影位置データに基づいて、造影剤の移動を示す他のベクトル(第2のベクトル)を算出し、他のベクトル(第2のベクトル)を示す形状を有する他の表示画像データ(第2の表示画像データ)を生成する。
【0140】
従って、本超音波診断装置は、フレーム間のトラッキングでは描出が困難な移動量の少ない造影剤の流れと併せて、血流中のバブルなど、移動量の多い造影剤の流れも同時に描出することができる。
【0141】
また、本超音波診断装置は、表示画像データおよび他の表示画像データの少なくとも一方を表示させることができる。よって、本超音波診断装置は、通常時のトラッキングに係る表示と低速時(デシメーション処理)のトラッキングに係る表示とを切り替えることもできる。
【0142】
また、本超音波診断装置は、表示画像データおよび他の表示画像データを同時に並べて表示させることができる。よって、本超音波診断装置は、デシメーション処理によるバブルトラッキングの処理の結果と、通常時のバブルトラッキングの処理の結果とを比較しやすく操作者に提示することができる。
【0143】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、ハイブリッド処理を用いて低速のバブルおよび高速のバブルの両方をトラッキングする方法について説明した。第3の実施形態では、ハイブリッド処理における異なる二つのトラッキングのそれぞれにおいて、同一のバブルがトラッキングされた場合の処理について説明する。尚、本実施形態の第1の造影位置データ、第2の造影位置データおよび第3の造影位置データは、第2の実施形態で説明されているそれぞれの造影位置データと同様である。
【0144】
図20は、第3の実施形態に係る超音波診断装置1Bの構成例を示すブロック図である。超音波診断装置1Bは、装置本体100Bと、超音波プローブ101とを有している。装置本体100Bは、入力装置102および表示装置103と接続されている。また、装置本体100Bは、ネットワークNWを介して外部装置104と接続されている。
【0145】
装置本体100Bは、超音波プローブ101により受信された反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体100Bは、超音波送信回路110と、超音波受信回路120と、内部記憶回路130と、画像メモリ140と、入力インタフェース150と、出力インタフェース160と、通信インタフェース170と、処理回路180Bとを有している。
【0146】
処理回路180Bは、例えば、超音波診断装置1Bの中枢として機能するプロセッサである。処理回路180Bは、内部記憶回路130に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。処理回路180Bは、例えば、Bモード処理機能181と、ドプラ処理機能182と、画像生成機能183(画像生成部)と、データ生成機能184(データ生成部)と、算出機能185A(算出部)と、表示画像生成機能186A(表示画像生成部)と、係数算出機能201(係数算出部)と、判定機能202(判定部)と、表示制御機能187(表示制御部)と、システム制御機能188とを有している。
【0147】
係数算出機能201は、第1の造影位置データおよび第2の造影位置データの第1の相関係数を算出し、第1の造影位置データおよび第3の造影位置データの第2の相関係数を算出する機能である。例えば、処理回路180は、係数算出機能201により、トラッキング処理で用いられるパターンマッチング(相互相関法)を用いて相関係数を算出する。
【0148】
なお、処理回路180は、相関係数を算出する二つの造影位置データがフレーム単位で間引かれている場合、隣接するフレーム間の相関係数の平均を利用してもよい。具体的には、フレームF1およびフレームF5にそれぞれ対応する二つの造影位置データの相関係数を算出する場合、処理回路180は、フレームF1およびフレームF2にそれぞれ対応する二つの造影位置データの相関係数と、フレームF2およびフレームF3にそれぞれ対応する二つの造影位置データの相関係数と、フレームF3およびフレームF4にそれぞれ対応する二つの造影位置データの相関係数と、フレームF4およびフレームF5にそれぞれ対応する二つの造影位置データの相関係数とを足し合わせた平均を利用してもよい。
【0149】
判定機能202は、第1の造影位置データおよび第2の造影位置データの類似度と、第1の造影位置データおよび第3の造影位置データの類似度とを比較し、類似度の高い方に対応する表示画像データまたは他の表示画像データの表示に関する指示を出力する機能である。
【0150】
具体的には、類似度が造影位置データ同士の相関関係を示す相関係数の場合、処理回路180Bは、判定機能202により、第1の相関係数と、第2の相関係数とを比較し、相関係数の高い方に対応する表示画像データまたは他の表示画像データの表示に関する指示を出力する。
【0151】
図21は、第3の実施形態に係る判定機能および表示画像生成機能の処理を説明する図である。処理回路180Bは、表示画像生成機能186Aにより、領域VI4に対応する表示画像データと、領域VI5に対応する表示画像データとを生成する。尚、領域VI4および領域VI5は、あるフレームに対応する造影画像における同一の領域である。
【0152】
領域VI4には、軌跡Ca1および軌跡Ca3が表示されている。この軌跡Ca3には、表示条件DC5のカラーバーCB5の準低速域(図15では、例えば、20.0[mm/s]付近)に対応する色が割り当てられている。
【0153】
領域VI5には、軌跡Ca2および軌跡Ca4が表示されている。この軌跡Ca4には、表示条件DC5のカラーバーCB5の準低速域に対応する色が割り当てられている。
【0154】
図21において、軌跡Ca3および軌跡Ca4は、少なくとも一部が重複している。この重複した軌跡に対して、処理回路180Bは、判定機能202により、フレーム毎に、領域VI4に対応おける類似度と、領域VI5における類似度とを比較し、類似度の高い方に対応する領域に対応する表示画像データの表示に関する指示を出力する。処理回路180Bは、表示制御機能187により、当該指示に従って、当該表示画像データを表示装置103に表示させる。図21の例では、処理回路180Bは、判定機能202によって、軌跡Ca3ではなく、軌跡Ca4を表示する判定結果となっている。
【0155】
重複した軌跡についての判定が行われた後、処理回路180Bは、表示制御機能187により、領域VI4および領域VI5を重複させた領域VI6に対応する表示画像データを表示させる。この表示画像データには、軌跡Ca1、軌跡Ca2および軌跡Ca4が表示されている。
【0156】
以上説明したように、第3の実施形態に係る超音波診断装置は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理に加えて、次の処理を行うことができる。本超音波診断装置は、第1の造影位置データおよび第2の造影位置データの類似度と、第1の造影位置データおよび第3の造影位置データの類似度とを比較し、類似度の高い方に対応する表示画像データまたは他の表示画像データの表示に関する指示を出力し、当該指示に従って、表示画像データまたは他の表示画像データを表示させる。または、本超音波診断装置は、第1の造影位置データおよび第2の造影位置データの第1の相関係数を算出し、第1の造影位置データおよび第3の位置データの第2の相関係数を算出し、第1の相関係数と、第2の相関係数とを比較し、相関係数の高い方に対応する表示画像データまたは他の表示画像データの表示に関する指示を出力し、当該指示に従って、表示画像データまたは他の表示画像データを表示させる。
【0157】
(第4の実施形態)
上記各実施形態では、デシメーション処理およびハイブリッド処理などに係る複数の機能を有する超音波診断装置について説明した。第4の実施形態では、これら複数の機能を有する解析装置について説明する。以下では、第3の実施形態で説明した各機能を含む解析装置を例に説明するが、これに限定されず、幾つかの機能が省略されてもよい。
【0158】
図22は、第4の実施形態に係る解析装置300の構成例を示すブロック図である。解析装置300は、入力装置301および表示装置302と接続されている。また、解析装置300は、ネットワークNWを介して医用撮像装置303と接続されている。尚、入力装置301および表示装置302は、前述の入力装置102および表示装置103と略同様である。また、医用撮像装置303は、例えば超音波診断装置に相当する。
【0159】
解析装置300は、デシメーション処理およびハイブリッド処理などを実行し表示画像データを生成する装置である。解析装置300は、記憶回路310と、入力インタフェース320と、出力インタフェース330と、通信インタフェース340と、処理回路350とを有している。
【0160】
記憶回路310は、例えば、磁気的若しくは光学的記憶媒体、または半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。記憶回路310は、デシメーション処理およびハイブリッド処理などを実現するためのプログラム、各種データ等を記憶している。プログラム、および各種データは、例えば、記憶回路310に予め記憶されていてもよい。また、例えば、非一過性の記憶媒体に記憶されて配布され、非一過性の記憶媒体から読み出されて記憶回路310にインストールされてもよい。また、記憶回路310は、入力インタフェース320を介して入力される操作に従い、医用撮像装置303で生成されるBモード画像データおよび造影画像データ等を記憶する。
【0161】
なお、記憶回路310は、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、およびフラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。記憶回路310は、記憶しているデータを可搬性記憶媒体へ書き込み、可搬性記憶媒体を介してデータを外部装置に記憶させることも可能である。
【0162】
入力インタフェース320は、入力装置301を介し、操作者からの各種指示を受け付ける。入力インタフェース320は、例えばバスを介して処理回路350に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を処理回路350へ出力する。なお、入力インタフェース320は、マウスおよびキーボード等の物理的な操作部品と接続するものだけに限られない。例えば、解析装置300とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路350へ出力する回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0163】
出力インタフェース330は、例えば処理回路350からの電気信号を表示装置302へ出力するためのインタフェースである。出力インタフェース330は、例えばバスを介して処理回路350に接続され、処理回路350からの電気信号を表示装置302に出力する。
【0164】
通信インタフェース340は、例えばネットワークNWを介して医用撮像装置303と接続され、医用撮像装置303との間でデータ通信を行う。
【0165】
処理回路350は、例えば、解析装置300の中枢として機能するプロセッサである。処理回路350は、記憶回路310に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。処理回路350は、例えば、取得機能351(取得部)と、データ生成機能352(データ生成部)と、算出機能353(算出部)と、表示画像生成機能354(表示画像生成部)と、係数算出機能355と、判定機能356と、表示制御機能357(表示制御部)とを有している。
【0166】
取得機能351は、医用撮像装置303などから連続する複数のフレームにそれぞれ対応する複数の医用画像を取得する機能である。取得機能351において処理回路350は、例えば、入力装置301を介して入力されたデシメーション処理およびハイブリッド処理などの実行指示を受け付けた後、複数の医用画像を取得する。また、処理回路350は、表示画像データまたは他の表示画像データの表示に関する指示を取得してもよい。
【0167】
なお、データ生成機能352と、算出機能353と、表示画像生成機能354と、係数算出機能355と、判定機能356と、表示制御機能357とのそれぞれは、例えば、第3の実施形態におけるデータ生成機能184と、算出機能185Aと、表示画像生成機能186Aと、係数算出機能201と、判定機能202と、表示制御機能187とのそれぞれと略同様の機能を有する。
【0168】
以上説明したように、第4の実施形態に係る解析装置は、連続する複数のフレームにそれぞれ対応する複数の医用画像を取得し、複数の医用画像のうちの、第1のフレームに対応する第1の医用画像と、第1のフレームよりも2フレーム以上前の第2のフレームに対応する第2の医用画像とのそれぞれについて、造影剤(被検体内の移動体)の位置を示す第1の造影位置データ(第1の移動体位置データ)および第2の造影位置データ(第2の移動体位置データ)をそれぞれ生成し、第1の造影位置データおよび第2の造影位置データに基づいて、造影剤(移動体)の移動を示すベクトルを算出し、ベクトルを示す形状を有する表示画像データを生成する。また、本解析装置は、第1の実施形態から第3の実施形態までにおけるデシメーション処理およびハイブリッド処理などを実行することができる。
【0169】
従って、本解析装置は、第1の実施形態から第3の実施形態までにおけるそれぞれの効果と同様の効果が期待できる。
【0170】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、デシメーション処理において、間引かれるフレーム数は一定であったがこれに限らない。例えば、間引かれるフレーム数は可変でもよい。他の実施形態では、デシメーション処理において、間引かれるフレーム数が可変であることについて説明する。以下では、固定フレーム数を間引きするデシメーション処理(固定デシメーション処理)と区別するため、可変フレーム数を間引きするデシメーション処理を「可変デシメーション処理」と称する。尚、可変デシメーション処理は、前述の処理回路180,180A,180B,350にて実行されてよい。
【0171】
固定デシメーション処理は、バブルの最低移動速度を基準として、間引かれるフレーム数が決定される。換言すると、固定デシメーション処理は、間引きの間隔に応じて、低速のバブルの検出限界が決定される。即ち、固定デシメーション処理は、間引かれるフレーム数とバブルの最低移動速度とが実質的に対応付けられた処理である。
【0172】
一方で、可変デシメーション処理は、バブルの移動量に応じて処理を行う。例えば、可変デシメーション処理は、全てのフレームにおいてバブルトラッキングを行い、バブルの移動量が所定の値以上となった場合に動いているバブルであると特定する。
【0173】
具体例を挙げると、例えば図8において、可変デシメーション処理は、フレームF1と、後続するフレームF2、フレームF3・・・とをそれぞれベクトルの算出対象とする。フレームF2では、バブルの移動量が所定の値未満であるため、バブル12aが止まっているバブルであると特定される。フレームF3では、バブルの移動量が所定の値以上であるため、バブル13aが動いているバブルであると特定される。
【0174】
フレームF3において動いているバブルを特定した後、可変デシメーション処理は、フレームF3と、後続するフレームF4、フレームF5、フレームF6・・・とをそれぞれベクトルの算出対象とする。フレームF4では、バブルの移動量が所定の値未満であるため、バブル14aが止まっているバブルであると特定される。フレームF5では、バブルの移動量が所定の値未満であるため、バブル15aが止まっているバブルであると特定される。フレームF6では、バブルの移動量が所定の値以上であるため、バブル16aが動いているバブルであると特定される。
【0175】
以降、可変デシメーション処理は、動いているバブルが特定された時点のフレームと、後続するフレームとをベクトルの算出対象とする。
【0176】
よって、可変デシメーション処理は、動いているバブルが特定されることにより、ベクトルを算出するためにフレームが間引かれる。上記の例では、ベクトルを算出するフレームのペアは、フレームF1およびフレームF3、ならびにフレームF4およびフレームF6である。これらは、それぞれ1フレーム分の間引き、および2フレーム分の間引きである。
【0177】
以上のように、可変デシメーション処理は、バブルの移動量を基準として間引かれるフレーム数が決定する。これにより、例えば、一時的に停滞するバブルであっても、可変デシメーション処理は、正確にバブルをトラッキングすることができる。
【0178】
また、可変デシメーション処理には、可変フレーム数の間引きを適用する対象として次の二つの場合がある。一つ目は、可変デシメーション処理をフレーム内に含まれる全てのバブル各々に適用する場合である。これを第1の可変デシメーション処理と呼ぶ。二つ目は、固定デシメーション処理の間引き間隔を一定時間ごとに可変させる場合である。これを第2の可変デシメーション処理と呼ぶ。
【0179】
第1の可変デシメーション処理は、各フレームにおいて特定される全てのバブルに対して適用される。よって、第1の可変デシメーション処理は、特定されるバブル単位でベクトルを算出するフレームのペアが決定する。具体例を挙げると、例えば、フレームF1において、バブルAおよびバブルBが特定されたとする。この時、バブルAは動きが速いためフレームF1およびフレームF3のペアを用いてベクトルが算出されるが、バブルBは動きが遅いためフレームF1およびフレームF5を用いてベクトルが算出される。
【0180】
第2の可変デシメーション処理は、例えば、プレスキャン中に第1の可変デシメーション処理が行われた後に適用される。具体的には、第1の可変デシメーション処理により、フレーム内の全てのバブルにおける優勢な速度レンジを算出し、優勢な速度レンジに基づいて間引き間隔を決定し、フレーム全体に一律に間引き間隔を設定する。そして、一定時間おきにプレスキャンを行うことによって、間引き間隔をフレーム全体へフィードバックすることができる。
【0181】
以上説明したように、可変デシメーション処理は、バブルの移動量によって間引かれるフレーム数を決定することができる。よって、可変デシメーション処理は、ベクトルを算出する際に間引かれるフレーム数を可変させることができる。
【0182】
(応用例)
本明細書では、トラッキング対象を造影剤として説明したが、これに限らない。トラッキング対象は、被検体内の移動体であれば種類を問わない。移動体には、例えば、血管中の赤血球などがある。このことから、本明細書で用いられる「造影位置データ」は、「移動体位置データ」に言い換えられてもよい。
【0183】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、移動量の少ない被検体内の移動体の流れを描出することができる。
【0184】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0185】
1,1A,1B 超音波診断装置
180,180A,180B,350 処理回路
183 画像生成機能
184,352 データ生成機能
185,185A,353 算出機能
186,186A,354 表示画像生成機能
187,357 表示制御機能
201,355 係数算出機能
202,356 判定機能
300 解析装置
351 取得機能
図1
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