IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-画像形成装置 図1
  • 特許-画像形成装置 図2
  • 特許-画像形成装置 図3
  • 特許-画像形成装置 図4
  • 特許-画像形成装置 図5
  • 特許-画像形成装置 図6
  • 特許-画像形成装置 図7
  • 特許-画像形成装置 図8
  • 特許-画像形成装置 図9
  • 特許-画像形成装置 図10
  • 特許-画像形成装置 図11
  • 特許-画像形成装置 図12
  • 特許-画像形成装置 図13
  • 特許-画像形成装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240520BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20240520BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
G03G21/00 314
G03G21/00 310
G03G15/16
G03G21/14
G03G21/00 370
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020053427
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152614
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 寧
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-128613(JP,A)
【文献】特開2020-034699(JP,A)
【文献】特開2013-228599(JP,A)
【文献】特開2013-057818(JP,A)
【文献】特開2015-102751(JP,A)
【文献】特開2011-133664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/16
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
1次転写部で前記像担持体から1次転写されたトナー像を2次転写部で記録材に2次転写するために搬送する回転可能な中間転写体と、
前記中間転写体の回転方向に関して前記2次転写部よりも下流かつ前記1次転写部よりも上流において前記中間転写体の外周面側に配置された第1の導電部材と、
前記中間転写体の内周面側に配置され、前記中間転写体を介して前記第1の導電部材が当接する第1の対向部材と、
前記中間転写体の回転方向に関して前記2次転写部よりも下流かつ前記1次転写部よりも上流において前記第1の導電部材に隣接して前記中間転写体の外周面側に配置された第2の導電部材と、
前記中間転写体の内周面側に配置され、前記中間転写体を介して前記第2の導電部材が当接する第2の対向部材と、
を有し、
前記第1、第2の導電部材と前記第1、第2の対向部材との間にそれぞれ電流が流れている状態で前記中間転写体が回転する動作であって、前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間に流れる電流の絶対値の方が前記第2の導電部材と前記第2の対向部材との間に流れる電流の絶対値よりも大きい期間を有する動作を実行可能な画像形成装置であって、
前記中間転写体を介さずに前記第1の対向部材に電圧を印加して前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間に電流を供給する第1の電源と、
前記第1の電源と前記第1の対向部材との間に発生する電流又は電圧の検知結果に基づいて前記第1の電源の出力を制御する第1の制御部と、
前記中間転写体を介さずに前記第2の導電部材に電圧を印加して前記第2の導電部材と前記第2の対向部材との間に電流を供給する第2の電源と、
前記第2の電源と前記第2の導電部材との間に発生する電流又は電圧の検知結果に基づいて前記第2の電源の出力を制御する第2の制御部と、
を有し、
前記期間は、前記中間転写体上の試験用トナー像が形成された領域が、前記2次転写部を通過した直後に、前記第1、第2の導電部材のうち前記中間転写体の回転方向に関して上流に配置された方と前記中間転写体との接触部に到達してから前記第1、第2の導電部材のうち前記中間転写体の回転方向に関して下流に配置された方と前記中間転写体との接触部を通過し終えるまでの期間を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記期間に、前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間には、前記中間転写体上の正規の帯電極性に帯電したトナーを前記第1の導電部材に引き付ける方向の電流が流れ、前記第2の導電部材と前記第2の対向部材との間には、前記中間転写体上の前記正規の帯電極性とは逆極性に帯電したトナーを前記第2の導電部材に引き付ける方向の電流が流れることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記期間は、記録材に2次転写されるトナー像が形成された前記中間転写体上の画像領域が、前記2次転写部を通過した直後に、前記第1、第2の導電部材のうち前記中間転写体の回転方向に関して上流に配置された方と前記中間転写体との接触部に到達してから前記第1、第2の導電部材のうち前記中間転写体の回転方向に関して下流に配置された方と前記中間転写体との接触部を通過し終えるまでの期間を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記中間転写体の回転方向に関して、前記第1の導電部材は前記第2の導電部材よりも上流に配置されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
トナー像を担持する像担持体と、
1次転写部で前記像担持体から1次転写されたトナー像を2次転写部で記録材に2次転写するために搬送する回転可能な中間転写体と、
前記中間転写体の回転方向に関して前記2次転写部よりも下流かつ前記1次転写部よりも上流において前記中間転写体の外周面側に配置された第1の導電部材と、
前記中間転写体の内周面側に配置され、前記中間転写体を介して前記第1の導電部材が当接する第1の対向部材と、
前記中間転写体の回転方向に関して前記2次転写部よりも下流かつ前記1次転写部よりも上流において前記第1の導電部材に隣接して前記中間転写体の外周面側に配置された第2の導電部材と、
前記中間転写体の内周面側に配置され、前記中間転写体を介して前記第2の導電部材が当接する第2の対向部材と、
を有し、
前記第1、第2の導電部材と前記第1、第2の対向部材との間にそれぞれ電流が流れている状態で前記中間転写体が回転する動作であって、前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間に流れる電流の絶対値の方が前記第2の導電部材と前記第2の対向部材との間に流れる電流の絶対値よりも大きい期間を有する動作を実行可能な画像形成装置であって、
前記中間転写体を介さずに前記第1の対向部材に電圧を印加して前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間に電流を供給する第1の電源と、
前記第1の電源と前記第1の対向部材との間に発生する電流又は電圧の検知結果に基づいて前記第1の電源の出力を制御する第1の制御部と、
前記中間転写体を介さずに前記第2の導電部材に電圧を印加して前記第2の導電部材と前記第2の対向部材との間に電流を供給する第2の電源と、
前記第2の電源と前記第2の導電部材との間に発生する電流又は電圧の検知結果に基づいて前記第2の電源の出力を制御する第2の制御部と、
を有し、
前記中間転写体の回転方向に関して、前記第1の導電部材は前記第2の導電部材よりも上流に配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記期間に、前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間には、前記中間転写体上の正規の帯電極性に帯電したトナーを前記第1の導電部材に引き付ける方向の電流が流れ、前記第2の導電部材と前記第2の対向部材との間には、前記中間転写体上の前記正規の帯電極性とは逆極性に帯電したトナーを前記第2の導電部材に引き付ける方向の電流が流れることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記期間は、記録材に2次転写されるトナー像が形成された前記中間転写体上の画像領域が、前記2次転写部を通過した直後に、前記第1、第2の導電部材のうち前記中間転写体の回転方向に関して上流に配置された方と前記中間転写体との接触部に到達してから前記第1、第2の導電部材のうち前記中間転写体の回転方向に関して下流に配置された方と前記中間転写体との接触部を通過し終えるまでの期間を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
トナー像を担持する像担持体と、
1次転写部で前記像担持体から1次転写されたトナー像を2次転写部で記録材に2次転写するために搬送する回転可能な中間転写体と、
前記中間転写体の回転方向に関して前記2次転写部よりも下流かつ前記1次転写部よりも上流において前記中間転写体の外周面側に配置された第1、第2、第3の導電部材であって、前記中間転写体の回転方向に関して前記第1の導電部材は前記第2の導電部材よりも上流に前記第2の導電部材に隣接して配置されており、前記第2の導電部材は前記第3の導電部材よりも上流に前記第3の導電部材に隣接して配置されている第1、第2、第3の導電部材と、
前記中間転写体の内周面側に配置され、前記中間転写体を介して前記第1、第2、第3の導電部材がそれぞれ当接する第1、第2、第3の対向部材と、
を有し、
前記第1、第2、第3の導電部材と前記第1、第2、第3の対向部材との間にそれぞれ電流が流れている状態で前記中間転写体が回転する動作であって、前記第1、第2、第3の導電部材と前記第1、第2、第3の対向部材との間にそれぞれ流れる電流の絶対値のうち前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間に流れる電流の絶対値が最大である期間を有する動作を実行可能な画像形成装置であって、
前記中間転写体を介さずに前記第1の対向部材に電圧を印加して前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間に電流を供給する第1の電源と、
前記第1の電源と前記第1の対向部材との間に発生する電流又は電圧の検知結果に基づいて前記第1の電源の出力を制御する第1の制御部と、
前記中間転写体を介さずに前記第2の導電部材に電圧を印加して前記第2の導電部材と前記第2の対向部材との間に電流を供給する第2の電源と、
前記第2の電源と前記第2の導電部材との間に発生する電流又は電圧の検知結果に基づいて前記第2の電源の出力を制御する第2の制御部と、
前記中間転写体を介さずに前記第3の導電部材又は前記第3の対向部材に電圧を印加して前記第3の導電部材と前記第3の対向部材との間に電流を供給する第3の電源と、
前記第3の電源と、前記第3の電源が前記中間転写体を介さずに電圧を印加する前記第3の導電部材又は前記第3の対向部材との間に発生する電流又は電圧の検知結果に基づいて前記第3の電源の出力を制御する第3の制御部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記期間に、前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間には、前記中間転写体上の正規の帯電極性に帯電したトナーを前記第1の導電部材に引き付ける方向の電流が流れ、前記第2の導電部材と前記第2の対向部材との間には、前記中間転写体上の前記正規の帯電極性とは逆極性に帯電したトナーを前記第2の導電部材に引き付ける方向の電流が流れ、前記第3の導電部材と前記第3の対向部材との間には、前記中間転写体上の前記正規の帯電極性に帯電したトナーを前記第3の導電部材に引き付ける方向の電流が流れることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第3の電源は、前記中間転写体を介さずに前記第3の対向部材に電圧を印加することを特徴とする請求項又はに記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第3の電源は、前記中間転写体を介さずに前記第3の導電部材に電圧を印加することを特徴とする請求項又はに記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第2の対向部材と前記第3の対向部材とは、前記第2の導電部材と前記第3の導電部材とに対して共用される単一の部材であることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記期間は、記録材に2次転写されるトナー像が形成された前記中間転写体上の画像領域が、前記2次転写部を通過した直後に、前記第1の導電部材と前記中間転写体との接触部に到達してから前記第3の導電部材と前記中間転写体との接触部を通過し終えるまでの期間を含むことを特徴とする請求項乃至12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記期間は、前記中間転写体上の試験用トナー像が形成された領域が、前記2次転写部を通過した直後に、前記第1の導電部材と前記中間転写体との接触部に到達してから前記第3の導電部材と前記中間転写体との接触部を通過し終えるまでの期間を含むことを特徴とする請求項乃至13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置など画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式などを用いた画像形成装置として、複数の像担持体に形成されたトナー像が中間転写体上に重ね合わせるようにして1次転写された後に紙などの記録材に2次転写される中間転写方式の画像形成装置がある。中間転写体としては、無端ベルト状の部材である中間転写ベルトが多く用いられている。1次転写は、複数の像担持体のそれぞれに対応して中間転写ベルトの内周面に接触可能に配置された1次転写部材に1次転写バイアスが印加され、像担持体と中間転写ベルトとが接触する1次転写部に電流が供給されることで行われることが多い。2次転写は、中間転写ベルトの外周面に接触可能に配置された2次転写部材に2次転写バイアスが印加され、中間転写ベルトと2次転写部材とが当接する2次転写部に電流が供給されることで行われることが多い。また、1次転写部材、2次転写部材としては、ローラ状の部材である1次転写ローラ、2次転写ローラが用いられることが多い。
【0003】
2次転写後の中間転写ベルト上に残留したトナー(2次転写残トナー)は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置によって中間転写ベルト上から回収される。ベルトクリーニング装置は、画像濃度制御などのために中間転写ベルト上に形成される試験用トナー像(未転写トナー)を中間転写ベルト上から回収するためにも用いられる。
【0004】
ベルトクリーニング装置として、中間転写ベルト上のトナーを静電的に回収(ここでは、「静電クリーニング」ともいう。)する静電クリーニング装置が知られている(特許文献1)。静電クリーニング装置は、クリーニングブレードによるクリーニングが摩擦力の増大などによって難しくなる弾性層を有する中間転写ベルトのクリーニングなどに有効である。特許文献1に記載される静電クリーニング装置は、中間転写ベルトの表面の移動方向に沿って3つの静電クリーニング部材を有する。中間転写ベルトの表面の移動方向に関して最上流の静電クリーニング部材は、正規の帯電極性に帯電したトナー(ここでは、「正規極性トナー」ともいう。)をクリーニングするためものである。また、中間転写ベルトの表面の移動方向に関して中央の静電クリーニング部材は、正規の帯電極性とは逆極性に帯電したトナー(ここでは、「逆極性トナー」ともいう。)をクリーニングするためのものである。また、中間転写ベルトの表面の移動方向に関して最下流の静電クリーニング部材は、正規極性トナーをクリーニングするためのものである。静電クリーニングは、静電クリーニング部材と、中間転写ベルトを介して静電クリーニング部材と対向する対向部材と、の間に流れる電流を、上記各極性のトナーをクリーニングするのに適した電流に設定することで行われる。なお、ここでは、静電クリーニング部材に関して上流(最上流)、下流(最下流)、中央などの位置は、特に明示しない場合も中間転写ベルトの表面の移動方向に関する位置である。
【0005】
また、中間転写方式の画像形成装置では、画像形成動作を行うことによる通電によって中間転写ベルトの電気抵抗が上昇することがある。この現象は、中間転写ベルトとしてイオン導電性のベルトが使用される場合に顕著となる。中間転写ベルトが複数層、例えば、基材、弾性層及び表層を有し、弾性層の電気抵抗の調整のためにイオン導電系の導電剤が用いられている場合などである。つまり、中間転写ベルトとしてイオン導電性のベルトが使用される場合には、電流が流れることでベルト内に発生する電界により、イオン導電性を担う陽イオンと陰イオンとが力を受ける。そして、正の電荷を帯びた陽イオンは電界の方向に移動し、負の電荷を帯びた陰イオンは電界とは逆方向に移動する。例えば、トナーの正規の帯電極性が負極性の場合を考える。この場合、1次転写のために、中間転写ベルトの内周面に接触する1次転写部材に正極性の電圧が印加されて、1次転写部に中間転写ベルトの内周面側から外周面側に向かう方向(ここでは「外方向」ともいう。)の電流が供給される。そのため、陽イオンは中間転写ベルトの外周面側へ、陰イオンは中間転写ベルトの内周面側へ移動する。また、2次転写のために、中間転写ベルトの外周面に当接する2次転写部材に正極性の電圧が印加されて、2次転写部に中間転写ベルトの外周面側から内周面側に向かう方向(ここでは「内方向」ともいう。)の電流が供給される。そのため、中間転写ベルト内のイオンは1次転写時とは逆方向へ(陽イオンは内周面側へ、陰イオンは外周面側へ)移動する。そして、中間転写ベルトに供給される外方向と内方向との総電荷量のバランスが大きくくずれると、中間転写ベルト内のイオンに偏りが発生し、中間転写ベルトの電気抵抗が上昇する。中間転写ベルトの繰り返し使用量の増加に伴って中間転写ベルトの電気抵抗が上昇し、1次転写や2次転写のために印加することが必要な電圧の絶対値が上昇していくと、1次転写部や2次転写部での放電に起因して画像不良が発生しやすくなる。
【0006】
上述のような中間転写ベルトの電気抵抗の上昇を抑制して、中間転写ベルトの寿命を延ばすためには、画像形成動作を行うことによる中間転写ベルト内のイオンの偏りを均すように中間転写ベルトに電流を供給することが有効である。このように中間転写ベルト内のイオンの偏りを均すように電流を供給する(ここでは、「ディスチャージ」ともいう。)ためのディスチャージ部材として、静電クリーニング装置の静電クリーニング部材を用いることが考えられる。例えば、特許文献1に記載の静電クリーニング装置と同様に、中間転写ベルトの表面の移動方向に沿って3つの静電クリーニング部材を設ける。そして、最上流の静電クリーニング部材を、ディスチャージを行うためのディスチャージ部材として用いることが考えられる。なお、静電クリーニング部材と同様の導電部材が主にディスチャージ部材として用いられる場合、この導電部材はクリーニング機能を有していなくてもよい。ただし、ここでは、説明の便宜上、主に静電クリーニングの目的で用いられる導電部材も、主にディスチャージの目的で用いられる導電部材も、静電クリーニング部材と呼ぶことがある。導電部材は、静電クリーニングとディスチャージとの両方の目的で用いることも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-133664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記複数の静電クリーニング部材が設けられた構成において、例えば最上流の静電クリーニング部材に流れる電流の絶対値を、その静電クリーニング部材に隣接する他の静電クリーニング部材に流れる電流の絶対値よりも大きくする場合が考えられる。上述のように3つの静電クリーニング部材を有する構成を例として更に説明する。最上流の静電クリーニング部材は正規極性トナー、中央の静電クリーニング部材は逆極性トナー、最下流の静電クリーニング部材は正規極性トナーをそれぞれクリーニングするように電流が供給されるものとする。
【0009】
例えば、上述のように静電クリーニング部材をディスチャージ部材として用いる場合が挙げられる。つまり、タンデム型の画像形成装置では、例えば4箇所の1次転写部で外方向の電流が流れ、1箇所の2次転写部で内方向の電流が流れるため、外方向の電流の方が内方向の電流よりも多くなりやすい。そのため、画像形成動作中に静電クリーニング部材によって内方向の電流を供給して中間転写ベルト内のイオンの偏りを均するために、次のような構成とすることが望まれる場合がある。つまり、例えば最上流の静電クリーニング部材に流れる電流の絶対値を、他の静電クリーニング部材に流れる電流の絶対値よりも大きくすることが望まれる場合がある。この際に最上流の静電クリーニング部材に流れる電流は、中間転写ベルト上の2次転写残トナーを回収するのに適した電流(ここでは、「最適クリーニング電流」ともいう。)よりも大きくなることがある。これにより、最上流の静電クリーニング部材においては、放電により極性が反転させられてトナーが中間転写ベルトに再付着する。この再付着したトナーは、最上流の静電クリーニング部材よりも下流の静電クリーニング部材に流れる電流を、最上流の静電クリーニング部材に流れる電流よりも絶対値が小さい最適クリーニング電流とすることで回収することができる。
【0010】
また、例えば、中間転写ベルト上の非画像領域に形成される試験用トナー像を静電クリーニング部材でクリーニングする場合が挙げられる。つまり、画像形成装置は、所定のタイミングで画像濃度制御などのための試験用トナー像を中間転写ベルト上に形成し、未転写状態の試験用トナー像を静電クリーニング装置でクリーニングするシーケンスを実行する場合がある。試験用トナー像は、通常の転写残トナーよりも中間転写ベルト上のトナー量が多く、特に未転写トナーであるので正規極性トナーを多く含む。そのため、試験用トナー像をクリーニングする際には、例えば最上流の静電クリーニング部材に流れる電流の絶対値を、該最上流の静電クリーニング部材よりも下流の静電クリーニング部材に流れる電流の絶対値よりも大きくすることが望まれる場合がある。試験用トナー像に含まれる逆極性トナーの量は少なく、また最下流の静電クリーニング部材に送られる正規極性トナーの量は最上流の静電クリーニング部材に送られるトナー量よりも少ない。そのため、最上流の静電クリーニング部材よりも下流の静電クリーニング部材に流れる電流の絶対値は、最上流の静電クリーニング部材に流れる電流の絶対値よりも小さくする。
【0011】
ここで、中間転写ベルトは、一般に、良好な1次転写や2次転写を可能とするべく、その表面方向の電気抵抗や厚み方向の電気抵抗が最適となるように使用初期における電気抵抗値の範囲が選択される。しかし、中間転写ベルトの表面方向の電気抵抗や厚み方向の電気抵抗は、中間転写ベルトの使用状況、中間転写ベルトの繰り返し使用の程度によっても、徐々に変化していく。この際、1次転写電流、2次転写電流は、それぞれ1次転写部材、2次転写部材と対向部材との間に流されるため、中間転写ベルトの厚み方向の電気抵抗の方が中間転写ベルトの表面方向の電気抵抗よりも上昇しやすい傾向がある。
【0012】
このとき、従来の構成では、上述のように例えば最上流の静電クリーニング部材に流れる電流の絶対値を大きくした場合に、隣接する他の静電クリーニング部材部材と対向部材との間に所望の電流を流すことが難しくなることがある。これは、各静電クリーニング部材に対して、それぞれ各静電クリーニング部材側に配置された電源から互いに逆極性の電流が供給されており、最上流の静電クリーニング部材に流れる電流が隣接する他の静電クリーニング部材側へ流れやすい状況となるためである。その結果、上記隣接する他の静電クリーニング部材と対向部材との間に流れる電流を適切に制御することが難しくなり、該静電クリーニング部材のクリーニング能力が低下してしまうことがある。そのため、静電クリーニング部材間の距離(静電クリーニング部材の配置)や中間転写ベルトの繰り返し使用による電気抵抗の変動などの制約を考慮した設計をする必要があり、設計の自由度が低くなってしまう。
【0013】
したがって、本発明の目的は、導電部材間の距離や中間転写体の繰り返し使用による電気抵抗の変動などの制約が低減した自由度の高い設計を容易にすることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を担持する像担持体と、1次転写部で前記像担持体から1次転写されたトナー像を2次転写部で記録材に2次転写するために搬送する回転可能な中間転写体と、前記中間転写体の回転方向に関して前記2次転写部よりも下流かつ前記1次転写部よりも上流において前記中間転写体の外周面側に配置された第1の導電部材と、前記中間転写体の内周面側に配置され、前記中間転写体を介して前記第1の導電部材が当接する第1の対向部材と、前記中間転写体の回転方向に関して前記2次転写部よりも下流かつ前記1次転写部よりも上流において前記第1の導電部材に隣接して前記中間転写体の外周面側に配置された第2の導電部材と、前記中間転写体の内周面側に配置され、前記中間転写体を介して前記第2の導電部材が当接する第2の対向部材と、を有し、前記第1、第2の導電部材と前記第1、第2の対向部材との間にそれぞれ電流が流れている状態で前記中間転写体が回転する動作であって、前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間に流れる電流の絶対値の方が前記第2の導電部材と前記第2の対向部材との間に流れる電流の絶対値よりも大きい期間を有する動作を実行可能な画像形成装置であって、前記中間転写体を介さずに前記第1の対向部材に電圧を印加して前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間に電流を供給する第1の電源と、前記第1の電源と前記第1の対向部材との間に発生する電流又は電圧の検知結果に基づいて前記第1の電源の出力を制御する第1の制御部と、前記中間転写体を介さずに前記第2の導電部材に電圧を印加して前記第2の導電部材と前記第2の対向部材との間に電流を供給する第2の電源と、前記第2の電源と前記第2の導電部材との間に発生する電流又は電圧の検知結果に基づいて前記第2の電源の出力を制御する第2の制御部と、を有し、前記期間は、前記中間転写体上の試験用トナー像が形成された領域が、前記2次転写部を通過した直後に、前記第1、第2の導電部材のうち前記中間転写体の回転方向に関して上流に配置された方と前記中間転写体との接触部に到達してから前記第1、第2の導電部材のうち前記中間転写体の回転方向に関して下流に配置された方と前記中間転写体との接触部を通過し終えるまでの期間を含むことを特徴とする画像形成装置である。
本発明の他の態様によると、トナー像を担持する像担持体と、1次転写部で前記像担持体から1次転写されたトナー像を2次転写部で記録材に2次転写するために搬送する回転可能な中間転写体と、前記中間転写体の回転方向に関して前記2次転写部よりも下流かつ前記1次転写部よりも上流において前記中間転写体の外周面側に配置された第1の導電部材と、前記中間転写体の内周面側に配置され、前記中間転写体を介して前記第1の導電部材が当接する第1の対向部材と、前記中間転写体の回転方向に関して前記2次転写部よりも下流かつ前記1次転写部よりも上流において前記第1の導電部材に隣接して前記中間転写体の外周面側に配置された第2の導電部材と、前記中間転写体の内周面側に配置され、前記中間転写体を介して前記第2の導電部材が当接する第2の対向部材と、を有し、前記第1、第2の導電部材と前記第1、第2の対向部材との間にそれぞれ電流が流れている状態で前記中間転写体が回転する動作であって、前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間に流れる電流の絶対値の方が前記第2の導電部材と前記第2の対向部材との間に流れる電流の絶対値よりも大きい期間を有する動作を実行可能な画像形成装置であって、前記中間転写体を介さずに前記第1の対向部材に電圧を印加して前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間に電流を供給する第1の電源と、前記第1の電源と前記第1の対向部材との間に発生する電流又は電圧の検知結果に基づいて前記第1の電源の出力を制御する第1の制御部と、前記中間転写体を介さずに前記第2の導電部材に電圧を印加して前記第2の導電部材と前記第2の対向部材との間に電流を供給する第2の電源と、前記第2の電源と前記第2の導電部材との間に発生する電流又は電圧の検知結果に基づいて前記第2の電源の出力を制御する第2の制御部と、を有し、前記中間転写体の回転方向に関して、前記第1の導電部材は前記第2の導電部材よりも上流に配置されていることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0015】
本発明の他の態様によると、トナー像を担持する像担持体と、1次転写部で前記像担持体から1次転写されたトナー像を2次転写部で記録材に2次転写するために搬送する回転可能な中間転写体と、前記中間転写体の回転方向に関して前記2次転写部よりも下流かつ前記1次転写部よりも上流において前記中間転写体の外周面側に配置された第1、第2、第3の導電部材であって、前記中間転写体の回転方向に関して前記第1の導電部材は前記第2の導電部材よりも上流に前記第2の導電部材に隣接して配置されており、前記第2の導電部材は前記第3の導電部材よりも上流に前記第3の導電部材に隣接して配置されている第1、第2、第3の導電部材と、前記中間転写体の内周面側に配置され、前記中間転写体を介して前記第1、第2、第3の導電部材がそれぞれ当接する第1、第2、第3の対向部材と、を有し、前記第1、第2、第3の導電部材と前記第1、第2、第3の対向部材との間にそれぞれ電流が流れている状態で前記中間転写体が回転する動作であって、前記第1、第2、第3の導電部材と前記第1、第2、第3の対向部材との間にそれぞれ流れる電流の絶対値のうち前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間に流れる電流の絶対値が最大である期間を有する動作を実行可能な画像形成装置であって、前記中間転写体を介さずに前記第1の対向部材に電圧を印加して前記第1の導電部材と前記第1の対向部材との間に電流を供給する第1の電源と、前記第1の電源と前記第1の対向部材との間に発生する電流又は電圧の検知結果に基づいて前記第1の電源の出力を制御する第1の制御部と、前記中間転写体を介さずに前記第2の導電部材に電圧を印加して前記第2の導電部材と前記第2の対向部材との間に電流を供給する第2の電源と、前記第2の電源と前記第2の導電部材との間に発生する電流又は電圧の検知結果に基づいて前記第2の電源の出力を制御する第2の制御部と、前記中間転写体を介さずに前記第3の導電部材又は前記第3の対向部材に電圧を印加して前記第3の導電部材と前記第3の対向部材との間に電流を供給する第3の電源と、前記第3の電源と、前記第3の電源が前記中間転写体を介さずに電圧を印加する前記第3の導電部材又は前記第3の対向部材との間に発生する電流又は電圧の検知結果に基づいて前記第3の電源の出力を制御する第3の制御部と、を有することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、導電部材間の距離や中間転写体の繰り返し使用による電気抵抗の変動などの制約が低減した自由度の高い設計を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】画像形成装置の概略断面図である。
図2】ベルトクリーニング装置の近傍の模式的な断面図である。
図3】画像形成装置の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
図4】中間転写ベルトの電気抵抗の変化を説明するためのグラフ図、及びその測定装置の模式図である。
図5】2次転写残トナーのクリーニング性を説明するためのグラフ図である。
図6】実施例、従来例、比較例1、比較例2におけるベルトクリーニング装置の給電方法を説明するための模式的な断面図である。
図7】濃度制御用のパターン画像の配置を説明するための模式図である。
図8】濃度制御のフローチャート図である。
図9】濃度制御時の信号値と電位との関係を説明するためのグラフ図である。
図10】試験用トナー像のクリーニング性を説明するためのグラフ図である。
図11】試験用トナー像のクリーニング性を説明するためのグラフ図である。
図12】ベルトクリーニング装置の他の例を示す模式的な断面図である。
図13】ベルトクリーニング装置の他の例を示す模式的な断面図である。
図14】従来の構成のベルトクリーニング装置を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0019】
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、中間転写方式を採用したタンデム型の複合機(複写機、プリンタ、ファクシミリ装置の機能を有する。)である。
【0020】
画像形成装置100は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する4つの画像形成部UY、UM、UC、UKを有する。各画像形成部UY、UM、UC、UKにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを表す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部Uは、後述する感光ドラム1(1Y、1M、1C、1K)、帯電装置2(2Y、2M、2C、2K)、露光装置3(3Y、3M、3C、3K)、現像装置4(4Y、4M、4C、4K)、1次転写ローラ5(5Y、5M、5C、5K)、ドラムクリーニング装置6(6Y、6M、6C、6K)などを有して構成される。
【0021】
トナー像を担持する像担持体としての、回転可能なドラム型の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1は、図中矢印R1方向に回転駆動される。回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としての帯電装置2によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電時に、帯電装置2には、所定の帯電バイアス(帯電電圧)が印加される。帯電処理された感光ドラム1の表面は、画像情報に基づいて露光手段としての露光装置(レーザースキャナー)3によって走査露光され、感光ドラム1上に静電像(静電潜像)が形成される。感光ドラム1上に形成された静電像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像が形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に画像情報に基づいて露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像方式)。本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。現像時に、現像装置4が備える現像剤担持体としての現像ローラには、所定の現像バイアス(現像電圧)が印加される。
【0022】
4つの感光ドラム1に対向して、これら感光ドラム1の表面に当接可能なように、無端状のベルトで構成された中間転写ベルト7が配置されている。中間転写ベルト7は、1次転写部で像担持体から1次転写されたトナー像を2次転写部で記録材に2次転写するために搬送する回転可能な中間転写体の一例である。中間転写ベルト7は、複数の張架ローラ71~76に掛け回されて所定の張力で張架されている。中間転写ベルト7は、複数の張架ローラのうちの1つである駆動ローラ71が回転駆動されることによって図中矢印R2方向に150~470mm/secの周速度で回転(周回移動)する。複数の張架ローラのうちの他の1つであるテンションローラ74は、中間転写ベルト7の張力を一定に制御する。複数の張架ローラのうちの更に他の1つである2次転写対向ローラ(内ローラ)76は、後述する2次転写ローラ(外ローラ)8の対向部材(対向電極)として機能する。中間転写ベルト7の内周面側には、各感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対応して、1次転写手段としてのローラ型の1次転写部材である1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kが配置されている。本実施例では、1次転写ローラ5は、中間転写ベルト7を介して感光ドラム1に対向して配置されている。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト7を介して感光ドラム1に向けて押圧され、感光ドラム1と中間転写ベルト7とが接触する1次転写部(1次転写ニップ)T1を形成する。上述のように感光ドラム1上に形成されたトナー像は、1次転写部T1において、1次転写ローラ5の作用によって、回転している中間転写ベルト7上に1次転写される。1次転写時に、1次転写ローラ5には、1次転写電源(高圧電源)E1により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である1次転写バイアス(1次転写電圧)が印加され、1次転写部T1に1次転写電流が供給される。例えば、1次転写時に、各1次転写ローラ5の芯金には、+1~+3KV程度の定電圧制御された1次転写バイアスが印加され、各1次転写部T1に1次転写電源E1側から見て+20~+60μA程度の電流が流される。例えばフルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト7上に重ね合わされるようにして順次1次転写される。本実施例では、各1次転写ローラ5には、各色のトナー像が1次転写部T1に搬送されてくるのに同期して1次転写バイアスが印加される。
【0023】
中間転写ベルト7の外周面側において、2次転写対向ローラ76に対向する位置には、2次転写手段としてのローラ型の2次転写部材である2次転写ローラ8が配置されている。2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7を介して2次転写対向ローラ76に向けて押圧され、中間転写ベルト7と2次転写ローラ8とが当接(直接接触又は記録材Pを挟持)する2次転写部(2次転写ニップ)T2を形成する。上述のように中間転写ベルト7上に形成されたトナー像は、2次転写部T2において、2次転写ローラ8の作用によって、中間転写ベルト7と2次転写ローラ8とに挟持されて搬送される紙などの記録材P上に2次転写される。2次転写時に、2次転写ローラ8には、2次転写電源(高圧電源)E2により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である2次転写バイアス(2次転写電圧)が印加され、2次転写部T2に2次転写電流が供給される。例えば、2次転写時に、2次転写ローラ8の芯金には、+1~+7KV程度の定電圧制御された2次転写バイアスが印加され、2次転写部T2に2次転写電源E2側から見て+40~+120μA程度の電流が流される。記録材Pは、記録材収納部(図示せず)から1枚ずつ給送された後、レジストローラ9によって、中間転写ベルト7上のトナー像とタイミングが合わされて2次転写部T2へと搬送される。本実施例では、画像形成装置100は、2次転写ローラ8を中間転写ベルト7に対して離接させる離接手段としての離接機構90(図3)を有している。そして、本実施例では、2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7上のトナー像が2次転写部T2に搬送されてくるのに同期して、中間転写ベルト7に当接させられて、2次転写バイアスが印加される。
【0024】
なお、本実施例における2次転写対向ローラ76を2次転写部材として用いて、これに本実施例とは逆極性(トナーの正規の帯電極性と同極性)の2次転写バイアスを印加してもよい。この場合、本実施例における2次転写ローラ8を対向部材(対向電極)として用いて、これを電気的に接地すればよい。
【0025】
トナー像が転写された記録材Pは、定着前搬送装置11により、定着手段としての定着装置10へと搬送される。定着前搬送装置11は、記録材Pの搬送方向と略直交する方向の中央部に、幅100~110mm、厚み1~3mmの、EPDMなどのゴム材質で形成されたベルト体を回動に有しており、その上に記録材Pを載せて搬送する。このベルト体には直径3~7mmの穴があいており、内側から空気を吸引することで記録材Pの担持力が高められて搬送性が安定させられている。定着装置10は、未定着のトナー像を担持した記録材Pを加熱及び加圧することによって、トナー像を記録材P上に定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Pは、画像形成装置100の装置本体の外部へと排出(出力)される。
【0026】
また、1次転写時に中間転写ベルト7に転写されずに感光ドラム1上に残留したトナー(1次転写残トナー)は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6によって感光ドラム1上から除去されて回収される。また、2次転写時に記録材Pに転写されずに中間転写ベルト7上に残留したトナー(2次転写残トナー)は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置12によって中間転写ベルト7上から除去されて回収される。本実施例では、ベルトクリーニング装置12は、中間転写ベルト7上の2次転写残トナーを静電的に回収してクリーニングする。ベルトクリーニング装置12については、後述して更に詳しく説明する。
【0027】
ここで、本実施例では、1次転写ローラ5は、芯金(基材)と、芯金の外周にイオン導電系発泡ゴムで形成された弾性層と、を有して構成される。本実施例では、1次転写ローラ5の外径は、15~20mmである。また、本実施例では、1次転写ローラ5の電気抵抗値は、N/N環境(23℃、50%RH)で2kVを印加して測定した場合1×10~1×10Ωである。
【0028】
また、本実施例では、2次転写ローラ8は、芯金(基材)と、芯金の外周にイオン導電系発泡ゴムで形成された弾性層と、を有して構成される。本実施例では、2次転写ローラ8の外径は、20~25mmである。また、本実施例では、2次転写ローラ8の電気抵抗値は、N/N環境(23℃、50%RH)で2kVを印加して測定した場合1×10~1×10Ωである。
【0029】
また、本実施例では、2次転写対向ローラ76は、芯金(基材)と、芯金の外周に電子導電性のゴムで形成された弾性層と、を有して構成される。本実施例では、2次転写対向ローラ76の外径は、20~22mmである。また、本実施例では、2次転写対向ローラ76の電気抵抗値は、N/N環境(23℃、50%RH)で50Vを印加して測定した場合1×10~1×10Ωである。
【0030】
また、本実施例では、中間転写ベルト7は、基層(裏面の層)、弾性層(中間層)、表層を有する複数層構成のベルトである。基層は、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂又は各種ゴムなどに帯電防止剤としてカーボンブラックを適当量含有させた材料で形成されており、厚みは0.05~0.15mmである。弾性層は、CRゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの各種ゴムなどにイオン導電剤を適当量含有させた材料で形成されており、厚みは0.1~0.5mmである。イオン導電剤としては、例えば、脂肪族スルホン酸塩などが用いられる。表層は、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などの樹脂で形成されており、厚みは0.0002~0.020mmである。中間転写ベルト7の体積抵抗率は、5×10~1×1014Ω・cm(23℃、50%RH、100V印加)である。また、中間転写ベルト7の表面抵抗率は、5×10~1×1014Ω/□(23℃、50%RH、100V印加)である。また、中間転写ベルト7の硬度は、MD1硬度で60~85°(23℃、50%RH)である。また、中間転写ベルト7の静止摩擦係数は、0.15~0.6(23℃、50%RH、HEIDON社製type94i)である。
【0031】
2.ベルトクリーニング装置
図2は、本実施例におけるベルトクリーニング装置12の近傍の模式的な断面図である。ベルトクリーニング装置12は、中間転写ベルト7の回転方向(表面の移動方向、搬送方向)に関して、2次転写部T2よりも下流かつ1次転写部T1(最上流の1次転写部T1Y)よりも上流に配置されている。特に、本実施例では、ベルトクリーニング装置12は、中間転写ベルト7の回転方向に関して、2次転写対向ローラ76よりも下流かつ駆動ローラ71よりも上流に配置されている。本実施例では、ベルトクリーニング装置12は、中間転写ベルト7上のトナーを静電的に回収する静電クリーニング装置、特に、回転可能なローラ状の導電性ファーブラシ(導電性ファーブラシローラ)を用いた静電式ブラシクリーニング装置で構成されている。
【0032】
本実施例では、ベルトクリーニング装置12は、中間転写ベルト7の近傍に配置された第1、第2、第3の導電部材としての第1、第2、第3の静電クリーニング部材である第1、第2、第3のブラシ122、123、124を有する。また、ベルトクリーニング装置12は、第1、第2、第3の回収部材としての第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127を有する。また、ベルトクリーニング装置12は、第1、第2、第3の掻き取り部材としての第1、第2、第3のブレード128、129、130を有する。また、ベルトクリーニング装置12は、第1、第2、第3の対向部材としての第1、第2、第3の対向ローラ131、132、133を有する。また、ベルトクリーニング装置12は、ハウジング120(図1)と、スクリューなどの搬送部材121(図1)と、を有する。本実施例では、上記第1、第2、第3のブラシ122、123、124、第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127、第1、第2、第3のブレード128、129、130、及び搬送部材121は、ハウジング120の内部に設けられている。なお、ハウジング120及び搬送部材121は、個々のブラシに対して個別に、あるいは複数のブラシに対して共用されるようにして、複数設けられていてもよい(例えば、第1のブラシ122用と第2及び第3のブラシ123、124用)。
【0033】
第1、第2、第3のブラシ122、123、124は、回転可能なローラ状の導電性ファーブラシ(導電性ファーブラシローラ)で構成されている。第1、第2、第3のブラシ122、123、124は、外径が15mmである。また、第1、第2、第3のブラシ122、123、124のブラシ繊維は、糸の電気抵抗値が3×10~1×1013Ω/cm、繊維太さが2~15デニールのカーボン分散型ナイロン繊維、アクリル繊維又はポリエステル繊維で構成されている。そして、第1、第2、第3のブラシ122、123、124は、このブラシ繊維を、植毛密度5万本~50万本/inchの割合で基材としての金属ローラ上に植毛して構成されている。本実施例では、中間転写ベルト7の内周面側において、第1、第2、第3のブラシ122、123、124のそれぞれに対向する位置に、第1、第2、第3の対向ローラ131、132、133が配置されている。第1、第2、第3のブラシ122、123、124は、中間転写ベルト7を介して第1、第2、第3の対向ローラ131、132、133に当接させられている。本実施例では、第1、第2、第3の対向ローラ131、132、133は、回転可能な金属製(本実施例ではアルミニウム製)のローラ(金属ローラ)で構成されている。第1、第2、第3のブラシ122、123、124は、中間転写ベルト7を介して第1、第2、第3の対向ローラ131、132、133に対して約1.0~2.0mmの侵入量を保って配置されている。
【0034】
また、第1、第2、第3のブラシ122、123、124は、駆動手段としての駆動モータ(図示せず)により、中間転写ベルト7の搬送速度(周速度)の20~80%の速度(周速度)で図中矢印R3方向へ回転駆動される。つまり、第1、第2、第3のブラシ122、123、124は、中間転写ベルト7との接触部において中間転写ベルト7の移動方向とは逆方向に移動するように回転し、中間転写ベルト7の表面を摺擦する。第1、第2、第3の対向ローラ131、132、133は、中間転写ベルト7の回転に伴って従動して回転する。第1、第2、第3のブラシ122、123、124は、その回転軸線方向が中間転写ベルト7の表面の移動方向と略直交する幅方向と略平行に配置されている。第1、第2、第3のブラシ122、123、124の回転軸線方向の長さは、中間転写ベルト7の幅方向に関する中間転写ベルト7上の最大画像形成幅よりも長い。第1、第2、第3の対向ローラ131、132、133は、その回転軸線方向が中間転写ベルト7の幅方向と略平行に配置されている。第1、第2、第3の対向ローラ131、132、133の回転軸線方向の長さは、第1、第2、第3のブラシ122、123、124の回転軸線方向の長さと同等とされている。
【0035】
第1のブラシ122と中間転写ベルト7との接触部が第1の接触部CL1である。また、第2のブラシ123と中間転写ベルト7との接触部が第2の接触部CL2である。また、第3のブラシ124と中間転写ベルト7との接触部が第3の接触部CL3である。第1の接触部CL1は、後述するように第1のブラシ122により中間転写ベルト7に電流を供給して中間転写ベルト7内のイオンの偏りを均すこと(ディスチャージ)が行われるディスチャージ部である。なお、第1の接触部CL1は、後述するように第1のブラシ122による中間転写ベルト7上からの少なくとも一部のトナーの回収が行われるクリーニング部でもある。また、第2の接触部CL2は、第2のブラシ123による中間転写ベルト7上からのトナーの回収が行われるクリーニング部である。また、第3の接触部CL3は、第3のブラシ124による中間転写ベルト7上からのトナーの回収が行われるクリーニング部である。第1、第2、第3の接触部CL1、CL2、CL3は、中間転写ベルト7の回転方向に関して、2次転写部T2よりも下流かつ1次転写部T1(最上流の1次転写部T1Y)よりも上流に位置する。そして、本実施例では、中間転写ベルト7の回転方向に関して、第1の接触部CL1は、第2の接触部CL2よりも上流に位置し、第2の接触部CL2は第3の接触部CL3よりも上流に位置する。
【0036】
第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127は、回転可能な金属製(本実施例ではアルミニウム製)のローラ(金属ローラ)で構成されている。第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127は、第1、第2、第3のブラシ122、123、124に対して約1.5~2.5mmの侵入量を保って配置されている。また、第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127は、駆動手段としての駆動モータ(図示せず)により、第1、第2、第3のブラシ122、123、124と同等の速度(周速度)で図中矢印R4方向へ回転駆動される。つまり、第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127は、第1、第2、第3のブラシ122、123、124との接触部において第1、第2、第3のブラシ122、123、124の移動方向と順方向に移動するように回転する。第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127は、その回転軸線方向が中間転写ベルト7の幅方向と略平行に配置されている。第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127の回転軸線方向の長さは、第1、第2、第3のブラシ122、123、124の回転軸線方向の長さと同等とされている。
【0037】
第1、第2、第3のブレード128、129、130は、第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127に当接して配置されている。第1、第2、第3のブレード128、129、130は、弾性部材としてのウレタンゴムなどのゴム材料で形成されている。第1、第2、第3のブレード128、129、130は、板状の部材である。つまり、第1、第2、第3のブレード128、129、130は、第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127の回転軸線方向と略平行に配置される長手方向と、該長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する。第1、第2、第3のブレード128、129、130の厚みは1.6~2.2mm、硬度はIRHD硬度で70~78°(23℃、50%RH)である。また、第1、第2、第3のブレード128、129、130は、第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127に対して0.5~2.0mmの侵入量を保って配置されている。第1、第2、第3のブレード128、129、130は、第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127の回転方向に対してカウンター方向(自由端部が回転方向の上流側を向く方向)となるように、これら回収ローラに当接させられている。第1、第2、第3のブレード128、129、130の回転軸線方向の長さは、第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127の回転軸線方向の長さと同等とされている。
【0038】
本実施例では、第1、第2、第3のブラシ122、123、124は、中間転写ベルト7の回転方向に関して略等間隔に配置されている。本実施例では、第1、第2、第3のブラシ122、123、124のうち隣接する2つのブラシ間の距離(ここでは、単に「ブラシ間距離」ともいう。)は35mmとなっている。なお、ブラシ間距離は、中間転写ベルト7の回転方向に関する第1の接触部CL1の中央と第2の接触部CL2の中央との間の距離、又は第2の接触部CL2の中央と第3の接触部CL3の中央との間の距離で代表される。
【0039】
なお、典型的には、中間転写体の厚み方向の電気抵抗は、クリーニング電流(あるいはディスチャージ電流)を印加した時に1×10~1×1012Ω程度である。また、典型的には、導電部材(第1、第2、第3のブラシ)の電気抵抗は、クリーニング電流(あるいはディスチャージ電流)を印加した時に1×10~1×1010Ω程度である。
【0040】
本実施例では、画像形成動作中(より詳細には画像形成動作中の2次転写残トナーのクリーニング時)には、第1のブラシ122により主にディスチャージを行い、第2、第3のブラシ123、124により2次転写残トナーの回収を行う。つまり、後述するようにディスチャージに適した電界を第1のブラシ122と第1の対向ローラ131との間に形成する。また、後述するようにクリーニングに適した電界を第2のブラシ123と第2の対向ローラ132との間、及び第3のブラシ124と第3の対向ローラ133との間に形成する。これにより、第1のブラシ122により主にディスチャージを行うと共に、中間転写ベルト7上の2次転写残トナーを主に第2、第3のブラシ123、124に吸着して中間転写ベルト7上から除去する。なお、中間転写ベルト7上の2次転写残トナーの少なくとも一部が第1のブラシ122によって中間転写ベルト7上から除去されてよい。第1、第2、第3のブラシ122、123、124に吸着されたトナーは、さらに電界により第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127に転移し、第1、第2、第3のブレード128、129、130により掻き落とされる。第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127から掻き落されたトナーは、ハウジング120(図1)内に収容され、さらに搬送部材121(図1)によって回収容器(図示せず)へと搬送される。
【0041】
本実施例では、直流電源である第1のブラシ電源(高圧電源)134により、第1の対向ローラ131に、トナーの正規の帯電極性と同極性である負極性の直流電圧が定電流制御で印加される。また、本実施例では、第1の回収ローラ125が電気的に接地(グランドに接続)されている。また、本実施例では、第1のブラシ122は電気的にフロートとされている。そして、本実施例では、画像形成動作中の2次転写残トナーのクリーニング時には、一例として第1のブラシ電源134側から見て-90μAの電流が第1のブラシ122に流れるように第1のブラシ122に電流が供給される。尚、例えば第1のブラシ電源134側から見た第1のブラシ122に流れる電流とは、第1のブラシ電源134から第1のブラシ122に向かって流れる電流を正としている(他も同様である。)。これにより、本実施例では、中間転写ベルト7の外周面側から内周面側に向かう方向に流れる電流を負の値で表す場合、一例として-90μAの、中間転写ベルト7内のイオンの偏りを均すためのディスチャージ電流が、第1の接触部CL1に供給される。ディスチャージ電流については後述して更に詳しく説明する。
【0042】
また、本実施例では、直流電源である第2のブラシ電源(高圧電源)135により、第2の回収ローラ126に、トナーの正規の帯電極性と同極性である負極性の直流電圧が定電流制御で印加される。また、本実施例では、第2の対向ローラ132が電気的に接地されている。また、本実施例では、第2のブラシ123は電気的にフロートとされている。そして、本実施例では、画像形成動作中の2次転写残トナーのクリーニング時には、一例として第2のブラシ電源135側から見て-20μAの電流が第2のブラシ123に流れるように第2のブラシ123に電流が供給される。これにより、本実施例では、中間転写ベルト7の内周面側から外周面側に向かう方向に流れる電流を正の値で表す場合、一例として+20μAの、中間転写ベルト7上の2次転写残トナーを回収するためのクリーニング電流が、第2の接触部CL2に供給される。
【0043】
また、本実施例では、直流電源である第3のブラシ電源(高圧電源)136により、第3の対向ローラ133に、トナーの正規の帯電極性と同極性である負極性の直流電圧が定電流制御で印加される。また、本実施例では、第3の回収ローラ127が電気的に接地されている。また、本実施例では、第3のブラシ124は電気的にフロートとされている。そして、本実施例では、画像形成動作中の2次転写残トナーのクリーニング時には、一例として第3のブラシ電源136側から見て-20μAの電流が第3のブラシ124に流れるように第3のブラシ124に電流が供給される。これにより、本実施例では、中間転写ベルト7の外周面側から内周面側に向かう方向に流れる電流を負の値で表す場合、一例として-20μAの、中間転写ベルト7上の2次転写残トナーを回収するためのクリーニング電流が、第3の接触部CL3に供給される。
【0044】
なお、定電流制御は、第1、第2、第3のブラシ電源134、135、136に流れる電流が略一定となるように(目標値に近付くように)、第1、第2、第3のブラシ電源134、135、136の出力を調整する制御である。高圧電源の出力を定電流制御する方法としては、次のような方法が用いられる。つまり、高圧電源の電圧出力部と電圧印加対象との間に電流検知部(電流検知回路)を設け、この電流検知部により高圧電源から発生する電流を検知する。そして、この電流検知部の検知結果に基づいて、高圧電源が発生する電流が略一定となるように(目標値に近付くように)、高圧電源の出力を調整する。本実施例では、第1、第2、第3のブラシ電源(高圧電源回路)134、135、136は、それぞれ例えば同一の高圧基板上に、電圧出力部(図示せず)と、電流検知部(電流検知回路)134a、135a、136aと、出力制御部(出力制御回路)134b、135b、136bと、を有する(図3)。そして、電流検知部134a、135a、136aの検知結果に基づいて、出力制御部134b、135b、136bが制御することで、第1、第2、第3のブラシ電源134、135、136に流れる電流がコントローラ50(図3)により指示された目標電流値で略一定となるように定電流制御される。なお、出力制御部134b、135b、136bは、その機能の一部又は全部を有する単数又は複数の制御装置で構成されていてよい。
【0045】
上述のように第2、第3のブラシ123、124に電流が供給されることで、第2、第3のブラシ123、124と中間転写ベルト7との間に中間転写ベルト7上のトナーを回収するのに適した電界(クリーニング電界)が形成される。これにより、中間転写ベルト7上の2次転写残トナーは、第2、第3のブラシ123、124に静電的に吸着され、中間転写ベルト7上から除去される。第2のブラシ123には、中間転写ベルト7上の2次転写残トナーのうち主に正極性に帯電した逆極性トナーが付着する。また、第3のブラシ124には、中間転写ベルト7上の2次転写残トナーのうち主に負極性に帯電した正規極性トナーが付着する。また、このトナーは、第2、第3の回収ローラ126、127と第2、第3のブラシ123、124との間に形成された電界により、第2、第3のブラシ123、124から第2、第3の回収ローラ126、127に転移する。さらに、第2、第3の回収ローラ126、127に転移したトナーは、第2、第3のブレード129、130によって第2、第3の回収ローラ126、127上から掻き落とされる。
【0046】
なお、画像形成動作中の2次転写残トナーのクリーニング時には、第1のブラシ122に一旦回収された負極性に帯電した正規極性トナーの多くは、第1のブラシ122における放電により極性が反転させられて中間転写ベルト7上に再付着する。ただし、中間転写ベルト7上の2次転写残トナーの少なくとも一部が、第1のブラシ122、第1の回収ローラ125、第1のブレード128を介して回収されてよい。
【0047】
3.制御態様
図3は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。制御手段としてのコントローラ(制御回路)50は、演算処理を行う中心的素子である演算制御手段としてのCPU51、記憶手段としてのRAM52、ROM53などのメモリ(記憶媒体)、信号の入出力回路(図示せず)などを有して構成される。書き換え可能なメモリであるRAM52には、コントローラ50に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納され、ROM53には制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。CPU51とRAM52、ROM53などのメモリとは互いにデータの転送や読込みが可能となっている。
【0048】
コントローラ50には、画像形成装置100の操作部及び画像読み取り部や、パーソナルコンピュータなどの外部装置が接続されている。コントローラ50は、画像形成装置100の操作部からの指示及び画像読み取り部からの画像データ、あるいは外部装置からの画像形成信号(画像データ、制御指令)に基づき、画像形成装置100の各部を統括的に制御して、画像形成動作を実行させる。図3には、画像形成装置100の各部を代表して1次転写電源E1、2次転写電源E2、第1、第2、第3のブラシ電源134、135、136、接離機構90が示されている。なお、図3には、実施例2で説明する濃度センサ17も示されている。
【0049】
ここで、画像形成装置100は、1つの開始指示により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作であるプリントジョブ(ジョブ、印刷ジョブ)を実行する。プリントジョブは、一般に、画像形成工程、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写を行う期間であり、画像形成時とはこの期間のことをいう。より詳細には、画像形成時のタイミングは、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う位置で異なり、感光ドラム1上や中間転写ベルト7上の画像領域が上記各位置を通過している期間に相当する。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。より詳細には、非画像形成時のタイミングは、感光ドラム1上や中間転写ベルト7上の非画像領域が、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う各位置を通過している期間に相当する。なお、感光ドラム1上や中間転写ベルト7上の画像領域とは、記録材Pに転写されて画像形成装置100から出力される画像が形成され得る領域であり、非画像領域は画像領域以外の領域である。
【0050】
4.ディスチャージ電流の制御
<ディスチャージ電流の設定>
図4(a)は、中間転写ベルト7に電圧を印加した場合の電圧印加時間(電流供給時間)と中間転写ベルト7の電気抵抗との関係の一例を示すグラフ図である。図4(b)は、図4(a)に示す結果を得た測定装置200の模式図である。図4(b)に示すように、第1ローラ201に中間転写ベルト7を巻き付け、第2ローラ202を当接させる。そして、一定速度で第1ローラ201及び第2ローラ202の両方を回転させながら、第1ローラ201を接地し、第2ローラ202に一定の電流が流れるように高圧電源203から第2ローラ202に定電流制御で正極性の電圧を印加する。これにより、中間転写ベルト7に外周面側から内周面側に向かう方向(内方向)の電流が流れる。図4(a)に示すように、イオン導電性の弾性層を有する中間転写ベルト7は、電圧印加時間に比例して電気抵抗が上昇する。そして、一定の電圧印加時間が経過した後に、第2ローラ202に絶対値が上記と同一の一定の電流が流れるようにして、高圧電源203から第2ローラ202に定電流制御で印加する電圧の極性を上記とは逆極性である負極性に変更する。これにより、中間転写ベルト7の内周面側から外周面側に向かう方向(外方向)の電流が流れるようになる。このように電流の方向を変更すると、変更前の電圧印加時間と略同一の電圧印加時間が経過した後に、中間転写ベルト7の電気抵抗はほぼ元の電気抵抗に戻る。
【0051】
表1は、本実施例において画像形成動作中に各部で中間転写ベルト7に供給される電流の関係の一例を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
中間転写ベルト7には、1次転写部T1(T1Y、T1M、T1C、T1K)、2次転写部T2、第2、第3の接触部CL2、CL3で電流が供給される(第1の接触部CL1については後述する)。表1では、中間転写ベルト7の内周面側から外周面側に向かう方向(外方向)の電流の値を正(プラス)の値、中間転写ベルト7の外周面側から内周面側に向かう方向(内方向)の電流の値を負(マイナス)の値で表している。表1に示す例では、画像形成動作中に1次転写部T1、2次転写部T2、第2、第3の接触部CL2、CL3で供給される電流の総和を求めると、外方向の電流の方が内方向の電流よりも絶対値で90μA多いことが分かる。そのため、中間転写ベルト7内のイオンに偏りが発生し、中間転写ベルト7の電気抵抗が上昇する。
【0054】
ここで、画像形成動作中に1次転写部T1、2次転写部T2、第1、第2、第3の接触部CL1、CL2、CL3で供給される電流の値の総和を、画像形成動作中に中間転写ベルト7に通電される「電流収支」とする。このとき、本実施例では、この電流収支を略0にするように、画像形成動作中に第1の接触部CL1に一例として90μAの内方向の電流を供給する。このディスチャージ電流は、中間転写ベルト7の外周面側から内周面側に向かう方向(内方向)に流れる電流を負の値で表す場合-90μAである。
【0055】
本実施例では、画像形成動作中に第1のブラシ122上述のようなディスチャージ電流を供給することで、中間転写ベルト7内のイオンの偏りを均すことができる。これにより、中間転写ベルト7の電気抵抗の上昇を抑制して、中間転写ベルト7の長寿命化を図ることができる。
【0056】
コントローラ50は、予め設定されてROM53に記憶されているデータテーブルなどを参照することによって、例えばプリントジョブごとにディスチャージ電流の値を設定することができる。ディスチャージ電流の設定は、画像形成に使用される記録材Pの種類や環境(画像形成装置100の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方)に応じて異なっていてよい。
【0057】
<2次転写残トナーのクリーニング性>
次に、画像形成動作中の2次転写残トナーのクリーニング性について説明する。
【0058】
図5は、本実施例の構成における2次転写残トナーのクリーニング性を説明するためのグラフ図である。横軸は第3のブラシ124に供給する電流(第3のブラシ電源136側から見た電流値で表している。)、縦軸は第3のブラシ124を通過した後の中間転写ベルト7上の2次転写残トナーの量(クリーニング残トナー量)である。図5において、縦軸の値が0になる電流の領域が良好なクリーニング性が得られる(後続の画像形成動作において記録材P上にクリーニング不良を発生させない)電流の領域となる。なお、第2のブラシ123に供給する電流は、事前の検討で得た2次転写残トナーを回収するための最適値(最適クリーニング電流)である、第2のブラシ電源135側から見て-20μAに固定している。また、図5に示すクリーニング性は、第1のブラシ122が設けられていない構成で調べたものである。図5に示すように、本実施例の構成では、第3のブラシ124に供給する電流を第3のブラシ電源136側から見て-10~-40μA付近とすることで良好なクリーニング性を得ることができる。つまり、本実施例の構成では、画像形成動作中に第3のブラシ124に供給する最適クリーニング電流は、第3のブラシ電源136側から見て-10~-40μA、典型的には第3のブラシ電源136側から見て-20μAである。一方、第3のブラシ124に供給する電流が第3のブラシ電源136側から見て-40μAを超える(すなわち、絶対値が40μAよりも大きくなる)と、次のようになる。つまり、一旦中間転写ベルト7から第3のブラシ124に付着したトナーが、第3のブラシ124から中間転写ベルト7上に再付着する現象が発生する。つまり、クリーニング電界が強い場合には、第3のブラシ124に回収された正規極性トナーの帯電極性が、第3のブラシ124内での放電により逆極性に反転し始めるため、上述のような再付着現象が発生する。
【0059】
なお、最適クリーニング電流の値は、より詳細には、1つのブラシを単独で用いた場合の次のような値で代表することができる。つまり、中間転写ベルト7上の最大トナー載り量のトナー像の未転写トナーがそのブラシによるクリーニング部を通過した後に中間転写ベルト7上に残るトナーの量を最小とすることが可能なクリーニング電流の値である。中間転写ベルト7上の最大トナー載り量は、画像形成装置100において中間転写ベルト7上に形成することが可能なトナー像のうち単位面積当たりのトナーの質量である載り量(mg/cm)が最大であるトナー像の該載り量である。
【0060】
上述のようなブラシから中間転写ベルト7上へのトナーの再付着現象は、第1のブラシ122においても同様に発生する。そのため、前述のように画像形成動作中に第1のブラシ122に供給する電流(ディスチャージ電流)を第1のブラシ電源134側から見て-90μAに設定すると、次のようになる。つまり、2次転写残トナーは一旦第1のブラシ122に取り込まれるが、第1のブラシ122の1周回転後などに中間転写ベルト7上に再付着する。第1のブラシ122にディスチャージ電流を供給することで第1のブラシ122から中間転写ベルト7上に再付着した正極性に帯電している逆極性トナーは、第2のブラシ123によって回収することが可能である。また、第1のブラシ122によって回収されなかった負極性に帯電している2次転写残トナー(正規極性トナー)は、第3のブラシ124によって回収することが可能である。
【0061】
5.電源の配置
図14は、従来の構成の静電クリーニング装置の近傍の模式的な断面図である。なお、図14において本実施例のものに対応する機能あるいは構成を有する要素には同一符号を付している。従来の構成では、第1、第2、第3のブラシ122、123、124側に第1、第2、第3のブラシ電源134、135、136が配置されている。つまり、第1、第2、第3のブラシ電源134、135、136から第1、第2、第3の回収ローラ125、126、127を介して第1、第2、第3のブラシ122、123、124に、それぞれ正極性、負極性、正極性の直流電圧が定電流制御で印加される。第1、第2、第3の対向ローラ131、132、133は電気的に接地されている。第1、第2、第3のブラシ122、123、124は電気的にフロートとされている。第1、第2、第3のブラシ電源134、135、136の出力は、第1、第2、第3のブラシ電源134、135、136側、典型的にはこれらの電源に内蔵された電流検知部の検知結果に基づいて定電流制御される。ここでは、図14に示す従来の構成における第1、第2、第3のブラシ122、123、124に対する給電方法のように、ブラシ側に高圧電源を配置する給電方法を「外給電」と呼ぶ。
【0062】
これに対して、図2に示す本実施例の構成では、第1のブラシ122に関しては、第1の対向ローラ131側に第1のブラシ電源134が配置されている。つまり、第1のブラシ電源134から、第1の対向ローラ131に負極性の直流電圧が定電流制御で印加され、第1のブラシ122は電気的にフロートとされ、第1のブラシ122に当接した第1の回収ローラ125がアースとされ(電気的に接地され)ている。そして、第1の対向ローラ131と、第1のブラシ122と、第1の回収ローラ125と、に電位差が設けられて、第1の対向ローラ131と第1の回収ローラ125との間に通電される。これにより、画像形成動作中には、第1のブラシ122と第1の対向ローラ131との間に、一例として第1のブラシ電源134側から見て-90μAの電流が供給される。ここでは、図2に示す本実施例の構成における第1のブラシ122に対する給電方法のように、対向ローラ側に高圧電源を配置する給電方法を「内給電」と呼ぶ。
【0063】
また、本実施例の構成では、第2のブラシ123に関しては、第2のブラシ123側に第2のブラシ電源135が配置されている。つまり、第2のブラシ電源135から、電気的にフロートとされた第2のブラシ123に当接した第2の回収ローラ126に負極性の直流電圧が定電流制御で印加され、第2の対向ローラ132がアースとされている。そして、第2の対向ローラ132と、第2のブラシ123と、第2の回収ローラ126と、に電位差が設けられて、第2の対向ローラ132と第2の回収ローラ126との間に通電される。これにより、画像形成動作中には、第2のブラシ123と第2の対向ローラ132との間に、一例として第2のブラシ電源135側から見て-20μAの電流が供給される。つまり、本実施例の構成では、第2のブラシ123に対する給電方法は「外給電」とされている。
【0064】
また、本実施例の構成では、第3のブラシ124に関しては、第3の対向ローラ133側に第3のブラシ電源136が配置されている。つまり、第3のブラシ電源136から、第3の対向ローラ133に負極性の直流電圧が定電流制御で印加され、第3のブラシ124は電気的にフロートとされ、第3のブラシ124に当接した第3の回収ローラ127がアースとされている。そして、第3の対向ローラ133と、第3のブラシ124と、第3の回収ローラ127と、に電位差が設けられて、第3の対向ローラ133と第3の回収ローラ127との間に通電される。これにより、画像形成動作中には、第3のブラシ124と第3の対向ローラ133との間に、一例として第3のブラシ電源136側から見て-20μAの電流が供給される。つまり、本実施例の構成では、第3のブラシ124に対する給電方法は「内給電」とされている。
【0065】
そして、本実施例の構成では、第1、第2、第3のブラシ電源134、135、136の出力は、第1、第2、第3のブラシ電源134、135、136側、より詳細にはこれらの電源に内蔵された電流検知部の検知結果に基づいて定電流制御される。
【0066】
ところで、第1のブラシ電源134により第1のブラシ122に供給された電流は、中間転写ベルト7を介して第1のブラシ122と第1の対向ローラ131との間を流れる。しかし、例えば第1のブラシ122と第2のブラシ123との間のブラシ間距離が近い場合などには、電流の一部は、中間転写ベルト7の表面を介して、第2のブラシ123又は第2の対向ローラ132へ流れ込む。
【0067】
図6は、第1のブラシ122と第2のブラシ123とに対する給電方法を「外給電」と「内給電」とでそれぞれ変更した場合の第1、第2のブラシ122、123の近傍の模式的な断面図である。図6(a)は、第1のブラシ122を「内給電」、第2のブラシ123を「外給電」とした、本実施例の給電方法の場合を示している。図6(b)は、従来例(図14)として、第1のブラシ122、第2のブラシ123のいずれも「外給電」とした場合を示している。また、図6(c)は、比較例1として、第1のブラシ122を「外給電」、第2のブラシ123を「内給電」とした場合を示している。また、図6(d)は、比較例2として、第1のブラシ122、第2のブラシ123のいずれも「内給電」とした場合を示している。各電源から供給する電流の極性は、第1、第2、第3の接触部CL1、CL2、CL3に流れる電流の向きが本実施例と同様となるように、各電源の配置に合わせて変更している。また、表2に、上記本実施例、従来例、比較例1、比較例2のそれぞれにおいて第1のブラシ122から第2のブラシ123又は第2の対向ローラ132に流れ込む電流を示す(電流は絶対値で示している。)。
【0068】
【表2】
【0069】
本実施例で使用した中間転写ベルト7は、体積抵抗率が1×1010Ω・cm、表面抵抗率が1×10Ω/□、厚みが400μmである。また、本実施例では、第1のブラシ122と第2のブラシ123との間のブラシ間距離は35mmである。また、本実施例では、第1のブラシ122と中間転写ベルト7との当接ニップの中間転写ベルト7の回転方向の幅は2mm、第1のブラシ122の長手方向(回転軸線方向)の幅は34cmである。なお、給電方法が異なることを除いて、上記体積抵抗率、表面抵抗率、厚み、ブラシ間距離、当接ニップの幅、及びブラシの長手方向の幅などの画像形成装置の構成は本実施例、従来例、比較例1、比較例2で実質的に同じである。また、本実施例では、第2のブラシ123と第3のブラシ124との間のブラシ間距離も35mmである(従来例、比較例1、比較例2も同様)。
【0070】
本実施例、従来例、比較例1、及び比較例2のいずれにおいても、第1のブラシ122と第1の対向ローラ131との間で電流が流れる中間転写ベルト7の厚み方向の電気抵抗値は、5.9×10Ω程度となる。一方、中間転写ベルト7を介した第1のブラシ122と第2のブラシ123との間の電気抵抗値は、1.0×10Ω程度となる。第1のブラシ122と、第2のブラシ123及び第2の対向ローラ132と、の間の電流経路は、上記2つの電気抵抗を介した並行回路とみなせる。
【0071】
従来例及び比較例1のように、第1のブラシ122に「外給電」で第1のブラシ電源134側から見て+90μAの電流(第1のブラシ電源134の電流検知部で測定)を供給すると、次のようになる。つまり、第1のブラシ122と第1の対向ローラ131との間には第1のブラシ電源134側から見て+57μAの電流が流れ、中間転写ベルト7を介して第2のブラシ123に第1のブラシ電源134側から見て+33μAの電流が流れ込む。一方、本実施例及び比較例2のように、第1のブラシ122に「内給電」で第1のブラシ電源134側から見て-90μAの電流(第1のブラシ電源134の電流検知部で測定)を供給すると、次のようになる。つまり、第1のブラシ122と第1の対向ローラ131との間には第1のブラシ電源134側から見て-57μAの電流が流れ、中間転写ベルト7を介して第2の対向ローラ132に第1のブラシ電源134側から見て-33μAの電流が流れ込む。
【0072】
このように、本実施例及び比較例2では、第1のブラシ122に対する給電方法を「内給電」とすることで、中間転写ベルト7を介して第2の対向ローラ132へ電流が流れ込むため第2のブラシ123には電流は流れ込まない。
【0073】
そして、本実施例では、第2の対向ローラ132側がアースであるため、第2のブラシ123側に配置された第2のブラシ電源135から該第2のブラシ電源135の電流検知部の検知結果に基づいて給電を行うことで、第2のブラシ123と第2の対向ローラ132との間に問題なく所望の電流(第2のブラシ電源135側から見て-20μA)を流すことが可能である。
【0074】
しかし、比較例2では、第2の対向ローラ132側に第2のブラシ電源135が配置されているため、第2のブラシ電源135側に-33μAの電流が流れ込んでしまう。第2のブラシ電源135から該第2のブラシ電源135の電流検知部の検知結果に基づいて給電を行う場合、該電流検知部がこの流れ込んだ-33μAの電流を検知してしまう。そのため、第2のブラシ電源135から供給する電流を適切に制御することが難しくなる。あるいは、第2の対向ローラ132と第2のブラシ123との間に所望の電流(第2のブラシ電源135側から見て+20μA)を流すためには、第2のブラシ電源135として、上記流れ込む-33μAの電流分を加味した正極性の高圧の出力が可能な電源が必要になり、装置のコストアップや大型化につながる。
【0075】
一方、従来例及び比較例1では、第1のブラシ122に対する給電方法を「外給電」としているため、中間転写ベルト7を介して第2のブラシ123へ電流が流れ込んでしまう。
【0076】
そして、従来例では、第2のブラシ123側に第2のブラシ電源135が配置されているため、第2のブラシ電源135側に+33μAの電流が流れ込んでしまう。第2のブラシ電源135から該第2のブラシ電源135の電流検知部の検知結果に基づいて給電を行う場合、該電流検知部がこの流れ込んだ+33μAの電流を検知してしまう。そのため、第2のブラシ電源135から供給する電流を適切に制御することが難しくなる。あるいは、第2の対向ローラ132と第2のブラシ123との間に所望の電流(第2のブラシ電源135側から見て-20μA)を流すためには、第2のブラシ電源135として、上記流れ込む+33μAの電流分を加味した負極性の高圧の出力が可能な電源が必要になり、装置のコストアップや大型化につながる。
【0077】
また、比較例1では、第2のブラシ123側がアースであるため、第2のブラシ123側に配置された第2のブラシ電源135からの該第2のブラシ電源135の電流検知部の検知結果に基づいて制御される電流と、上記流れ込む電流とが、第2のブラシ123に流れる。その結果、第2のブラシ123に過大な電流が流れ込み、2次転写残トナーのクリーニング不良が発生してしまう。
【0078】
このように、本実施例では、画像形成動作中の2次転写残トナーのクリーニング時に、第1のブラシ122には、「内給電」で定電流制御された負極性の電流を供給する。また、本実施例では、画像形成動作中の2次転写残トナーのクリーニング時に、第2のブラシ123には、「外給電」で定電流制御された負極性の電流を供給する。そして、その際の第1のブラシ122に供給する電流の絶対値は、第2のブラシ123に供給する電流の絶対値よりも大きい。なお、本実施例では、画像形成動作中の2次転写残トナーのクリーニング時に第2のブラシ123に供給する電流の絶対値と第3のブラシ123に供給する電流の絶対値は同じである。そのため、第2のブラシ123から第3のブラシ124に流れ込む電流は、発生しないか十分に小さい。つまり、第2のブラシ123から中間転写ベルト7を介して第3のブラシ124に流れ込む電流の絶対値は、第3のブラシ電源136により第3のブラシ124に供給する電流の絶対値よりも十分に小さい。したがって、第3のブラシ124に対する給電方法は、「外給電」、「内給電」のいずれでもよい。
【0079】
なお、本実施例では、例えば連続画像形成のプリントジョブの実行中に、中間転写ベルト7上の最初の画像領域の先端が第1の接触部CL1に到達する時以前から、最後の画像領域の後端が第3の接触部CL3を通過し終える時以降まで、第1、第2、第3のブラシ122、123、124には、本実施例で説明した上述の設定の電流が供給され続ける。また、例えば1つの画像を形成するプリントジョブの実行中であれば、中間転写ベルト7上の1つの画像領域の先端が第1の接触部CL1に到達する時以前から、該1つの画像領域の後端が第3の接触部CL3を通過し終える時以降まで、第1、第2、第3のブラシ122、123、124には、本実施例で説明した上述の設定の電流が供給され続ける。本実施例では、画像形成動作中の2次転写残トナーのクリーニング時とは、より詳細には、この第1、第2、第3のブラシ122、123、124に上述の設定の電流が供給されている期間のことをいう。ただし、本発明はこのような電流の供給態様に限定されるものではない。複数の導電部材を有する構成において、所定の導電部材に流れる電流の絶対値が隣接する他の導電部材に流れる電流の絶対値よりも大きくなる期間があれば、本発明を適用して本実施例と同様の効果が得られる。この期間は、例えば、本実施例のように、中間転写ベルト7上の画像領域が、該複数の導電部材と中間転写ベルト7との接触部の最上流位置から最下流位置まで通過するまでの期間などである。また、所定の導電部材に流れる電流の絶対値が隣接する他の導電部材に流れる電流の絶対値よりも大きいとは、例えば図6(a)に示すような従来の構成の場合に、前述のような電流の流れ込みによる問題が生じ得る程度に大きいことが含まれる。これに限定されるものではないが、典型的には、所定の導電部材に流れる電流の絶対値が、隣接する他の導電部材に流れる電流の絶対値の3倍以上の場合に、本発明はとくに顕著に作用し得る。なお、これに限定されるものではないが、典型的には、所定の導電部材に流れる電流の絶対値は、隣接する他の導電部材に流れる電流の絶対値の10倍以下程度であることが多い。ここで、導電部材に流れる電流が定電流制御される場合、その定電流制御の目標値を上記電流の大小の比較に用いることができる。印加バイアスの定電圧制御により導電部材に流れる電流が制御される場合、該バイアスの印加により流れる電流の平均値や該定電圧制御の目標電圧値を設定するために用いられる目標電流値を、上記電流の大小の比較に用いることができる。
【0080】
また、ディスチャージ電流の設定値は上記本実施例の設定値に限定されるものではない。この電流は、画像形成動作中の中間転写ベルト7内のイオンの偏りを均す方向(本実施例では内方向)の電流である。そして、典型的には、画像形成動作中に中間転写ベルト7に通電される電流収支を0とする値に対し±50%の範囲、好ましくは±30%の範囲、より好ましくは電流収支を略0とする値の電流である。なお、電流収支を略0とする値の電流とは、電流収支を0とする値に対し±5%の範囲の値の電流であることを指す。本発明者の検討によれば、このような設定値とすることで、中間転写ベルト7の電気抵抗の上昇を十分に抑制して、中間転写ベルト7を十分に長寿命化する効果が得られる。この電流が、電流収支を0とする値に対し-50%未満の値の電流であると、中間転写ベルト7の電気抵抗の上昇を抑制する効果が不十分となり、中間転写ベルト7を十分に長寿命化できなくなる。一方、この電流が、電流収支を0とする値に対し+50%より大きい値の電流であると、上述とは逆方向へのイオンの偏りが生じる可能性がある。ここで、1次転写電流、2次転写電流、クリーニング電流、ディスチャージ電流のうち定電流制御されるものについては、その定電流制御の目標電流値を上述の電流収支を求めるために用いることができる。また、これらのうち印加バイアスが定電圧制御されるものについては、該バイアスの印加により流れる電流の平均値や該定電圧制御の目標電圧値を設定するために用いられる目標電流値を、上述の電流収支を求めるために用いることができる。
【0081】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、中間転写体7の回転方向に関して2次転写部N2よりも下流かつ1次転写部N1よりも上流において中間転写体7の外周面側に配置された第1の導電部材122と、中間転写体7の内周面側に配置され、中間転写体7を介して第1の導電部材122が当接する第1の対向部材131と、中間転写体7の回転方向に関して2次転写部N2よりも下流かつ1次転写部N1よりも上流において第1の導電部材122に隣接して中間転写体7の外周面側に配置された第2の導電部材123と、中間転写体7の内周面側に配置され、中間転写体7を介して第2の導電部材123が当接する第2の対向部材132と、を有する。この画像形成装置100は、第1、第2の導電部材122、123と第1、第2の対向部材131、132との間にそれぞれ電流が流れている状態で中間転写体7が回転する動作であって、第1の導電部材122と第1の対向部材131との間に流れる電流の絶対値の方が第2の導電部材123と第2の対向部材132との間に流れる電流の絶対値よりも大きい期間を有する動作を実行可能である。そして、本実施例では、この画像形成装置100は、中間転写体7を介さずに第1の対向部材131に電圧を印加して第1の導電部材122と第1の対向部材131との間に電流を供給(「内給電」)する第1の電源134と、第1の電源134と第1の対向部材131との間に発生する電流又は電圧(本実施例では電流)の検知結果に基づいて第1の電源134の出力を制御する第1の制御部134bと、中間転写体7を介さずに第2の導電部材123に電圧を印加して第2の導電部材123と第2の対向部材132との間に電流を供給(「外給電」)する第2の電源135と、第2の電源135と第2の導電部材123との間に発生する電流又は電圧(本実施例では電流)の検知結果に基づいて第2の電源135の出力を制御する第2の制御部135bと、を有する構成とされる。
【0082】
本実施例では、上記期間に、第1の導電部材122と第1の対向部材131との間には、中間転写体上の正規の帯電極性に帯電したトナーを第1の導電部材122に引き付ける方向の電流が流れ、第2の導電部材123と第2の対向部材132との間には、中間転写体上の正規の帯電極性とは逆極性に帯電したトナーを第2の導電部材123に引き付ける方向の電流が流れる。本実施例では、上記期間は、記録材Pに2次転写されるトナー像が形成された中間転写体上の画像領域が、2次転写部N2を通過した直後に、第1、第2の導電部材122、123のうち中間転写体7の回転方向に関して上流に配置された方と中間転写体7との接触部に到達してから第1、第2の導電部材122、123のうち中間転写体7の回転方向に関して下流に配置された方と中間転写体7との接触部を通過し終えるまでの期間を含む。また、本実施例では、中間転写体7の回転方向に関して、第1の導電部材122は第2の導電部材123よりも上流に配置されている。
【0083】
また、本実施例では、画像形成装置100は、中間転写体7の回転方向に関して2次転写部N2よりも下流かつ1次転写部N1よりも上流において中間転写体7の外周面側に配置された第1、第2、第3の導電部材122、123、124であって、中間転写体7の回転方向に関して第1の導電部材122は第2の導電部材123よりも上流に第2の導電部材123に隣接して配置されており、第2の導電部材123は第3の導電部材124よりも上流に第3の導電部材124に隣接して配置されている第1、第2、第3の導電部材122、123、124を有する。この画像形成装置100は、第1、第2、第3の導電部材122、123、124と第1、第2、第3の対向部材131、132、134との間にそれぞれ電流が流れている状態で中間転写体7が回転する動作であって、第1、第2、第3の導電部材122、123、124と第1、第2、第3の対向部材131、132、133との間にそれぞれ流れる電流の絶対値のうち第1の導電部材122と第1の対向部材131との間に流れる電流の絶対値が最大である期間を有する動作を実行可能である。そして、本実施例では、この場合に、前記第1の導電部材122と第1の対向部材131との間には「内給電」で電流を供給し、第2の導電部材123と第2の対向部材132との間には「外給電」で電流を供給し、第3の導電部材124と第3の対向部材133との間には「内給電」又は「外給電」(本実施例では「外給電」)で電流を供給する。特に、本実施例では、上記期間は、記録材Pに2次転写されるトナー像が形成された中間転写体上の画像領域が、2次転写部N2を通過した直後に、最上流の第1の導電部材122と中間転写体7との接触部に到達してから最下流の第3の導電部材124と中間転写体7との接触部を通過し終えるまでの期間を含む。
【0084】
以上のように、本実施例によれば、画像形成動作中に所定の導電部材に流れる電流の絶対値を隣接する他の導電部材に流れる電流の絶対値よりも大きくする場合でも、該隣接する他の導電部材に流れる電流を適切に制御することが可能となる。そして、本実施例によれば、導電部材間の距離や中間転写体の繰り返し使用による電気抵抗の変動などの制約が低減した自由度の高い設計を容易にすることができる。
【0085】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0086】
実施例1では、複数の導電部材を有する構成において、所定の導電部材に流れる電流の絶対値を隣接する他の導電部材に流れる電流の絶対値よりも大きくする場合として、所定の導電部材をディスチャージ部材として用いる場合を説明した。本実施例では、複数の導電部材を有する構成において、所定の導電部材に流れる電流の絶対値を隣接する他の導電部材に流れる電流の絶対値よりも大きくする場合として、試験用トナー像をクリーニングする場合について説明する。本実施例では、中間転写ベルト7上の非画像領域に、濃度制御用の試験用トナー像が形成される。なお、試験用トナー像は、制御画像、画像パターン、トナーパターン、テストパターン、あるいはパッチなどとも呼ばれるものである。
【0087】
1.濃度制御
画像形成装置100では、環境や経時変化などで画像濃度が変動することがある。そこで、本実施例の画像形成装置100は、例えば連続画像形成動作中に、所定の枚数(N枚目)の画像形成が終了した後の紙間工程、又は後回転工程で、最大濃度(ベタ画像)に対する濃度補正制御(濃度制御、制御モード)を実行することが可能である。
【0088】
図3図7図9を用いて、本実施例における濃度制御について説明する。図7は濃度制御用のパターン画像の配置を示す模式図、図8は濃度制御の手順の概略を示すフローチャート図、図9は濃度制御時の信号値と電位との関係を示すグラフ図である。
【0089】
濃度制御が開始されると(S100)、2次転写ローラ8が中間転写ベルト7から離間状態とされる。次に、前回の制御でROM53に格納された目標濃度に対応する現像コントラストV0を挟んだ2つの現像コントラストV1、V2の設定で(図9)、それぞれ濃度N1、N2のパターン画像(試験用トナー像)77(図7)が形成される(S101)。パターン画像77は、各濃度N1、N2ごとに、感光ドラム1上に25mm×25mmの正方形で形成され、中間転写ベルト7上に1次転写される。パターン画像77の形成位置は、中間転写ベルト7の幅方向における最大画像形成幅内にある。
【0090】
画像形成装置100には、中間転写ベルト7上のトナー像の濃度を検知する濃度検知手段としての濃度センサ17が設けられている(図1)。濃度センサ17は、中間転写ベルト7の回転方向において最下流の1次転写部T1Kよりも下流かつ2次転写部T2よりも上流で中間転写ベルト7上のトナー像の濃度を検知可能なように配置されている。濃度センサ17内には、発光素子(図示せず)及び受光素子(図示せず)が配置されている。濃度センサ17は、パターン画像N1、N2に光を照射し、その反射光を検知して、それぞれのパターン画像の光学濃度に対応した出力値Q1、Q2をCPU51に入力する。CPU51は、入力された出力値Q1、Q2をRAM52に一時的に記憶させる(S102)。
【0091】
本実施例では、X-rite反射濃度計を用いて測定した画像濃度が0となる場合にQ=0、また画像濃度が1.5となる場合にQ=255となるように組まれたデータが予めROM53に格納されている。パターン画像77を濃度センサ17で検出した検出信号値Q1、Q2から、目標濃度になるときの目標濃度信号値Qtに対応する現像コントラストVtが、CPU51によって線形補完により算出される(S103)。例えば、目標最大濃度を1.2とし、これに対応する現在の現像コントラストが200Vであったとする。本実施例の画像形成装置100が、現像コントラストが20V変化するとベタ部近傍の濃度が0.1程度変化する装置である場合、現在のコントラスト±20Vでパターン画像を出力する。すなわち、濃度約1.0(N1)となる現像コントラスト160V(V1)と濃度約1.4(N2)となる現像コントラスト240V(V2)でパターン画像77を形成して、濃度センサ17で検出する。ここで、検出信号がQ1=175、Q2=245であったものとする。この場合、検出したこの2つの信号値から線形補完して、新しい現像コントラストVt=193Vを決定し、ROM53に記憶されている現在の現像コントラストV0を新しい現像コントラストVtに変更(更新)する(S104)。その後、パターン画像77は、未転写トナーの状態で第1、第2、第3の接触部CL1、CL2、CL3へと搬送される。そして、パターン画像77がベルトクリーニング装置12によって回収された後に、濃度調整が終了され、次の画像形成に戻る(S105)。
【0092】
2.試験用トナー像のクリーニング性
次に、中間転写ベルト上の試験用トナー像のクリーニング性について説明する。
【0093】
本実施例の画像形成装置100は、中間転写ベルト7上で試験用トナー像を検知して濃度制御を行う。試験用トナー像が2次転写部T2を通過する際には、2次転写ローラ8は中間転写ベルト7から離間した状態とされる。そのため、試験用トナー像は、実質的にすべてベルトクリーニング装置12によるクリーニング部(第1、第2、第3の接触部CL1、CL2、CL3)に到達する。試験用トナー像は、画像形成領域に形成される通常の画像の2次転写残トナーよりも、中間転写ベルト7上のトナー載り量が多い。本実施例では、2次転写残トナーのトナー載り量は0.05mg/cm程度である。これに対して、試験用トナー像(未転写トナー)の中間転写ベルト7上のトナー載り量は、画像形成装置100における最大載り量である0.45mg/cm程度になることがある。
【0094】
図10は、本実施例の構成における第1のブラシ122による試験用トナー像のクリーニング性を説明するためのグラフ図である。横軸は第1のブラシ122に供給する電流(第1のブラシ電源134側から見た電流値で表している。)、縦軸は第1のブラシ122を通過した後の中間転写ベルト7上に残存する試験用トナー像のトナーの量である。図10において、縦軸の値が0になる電流の領域が良好なクリーニング性が得られる(後続の画像形成動作において記録材P上にクリーニング不良を発生させない)電流の領域となる。
【0095】
なお、第2のブラシ123に供給する電流は、正規極性トナーの量が多い試験用トナー像をクリーニングするためには、なるべく小さい方が望ましい。この電流が大きくなりすぎると、試験用トナー像のトナーを除電する方向に働く傾向がある。本実施例の構成では、試験用トナー像のクリーニング時に第2のブラシ123に供給する電流は、事前の検討でこの除電の影響の少ないことがわかっている第2のブラシ電源135側から見て-10μAに固定している。本実施例の構成では、試験用トナー像のクリーニング時に第2のブラシ123に供給する電流が第2のブラシ電源135側から見て-25μAを超える(すなわち、絶対値が25μAよりも大きくなる)と、次のようになった。つまり、第1のブラシ122、第2のブラシ124に供給する電流に関係なく、試験用トナー像のクリーニング不良が発生した。
【0096】
図10に示すように、第1のブラシ122だけでは、中間転写ベルト7上の試験用トナー像を1回でクリーニングすることができない。そのため、本実施例では、第1のブラシ122と第3のブラシ124とを用いて、試験用トナー像の正規極性トナーをクリーニングしている。
【0097】
図11は、本実施例の構成における、第3のブラシ124に供給する電流を変更した場合の第3のブラシ124による試験用トナー像のクリーニング性を説明するためのグラフ図である。横軸は第3のブラシ124に供給する電流(第3のブラシ電源136側から見た電流値で表している。)、縦軸は第3のブラシ124を通過した後の中間転写ベルト7上に残存する試験用トナー像のトナーの量である。また、実線は、第1のブラシ122に供給する電流が第1のブラシ電源134側から見て-70μAの場合を示している。また、点線は、第1のブラシ122に供給する電流が第1のブラシ電源134側から見て-90μAの場合を示している。また、一点鎖線は、第1のブラシ122に供給する電流が第1のブラシ電源134側から見て-50μAの場合を示している。
【0098】
図11に示すように、第1のブラシ122に供給する電流を第1のブラシ電源134側から見て-70μAとすることで、最も良好なクリーニング性を示す。図10に示すように、第1のブラシ122に供給する電流が第1のブラシ電源134側から見て-70μAに近付くにつれて徐々にクリーニング性は良化する。第1のブラシ122に供給する電流が第1のブラシ電源134側から見て-70μAを超える(すなわち、絶対値が70μAより大きくなる)と、一旦第1のブラシ122に回収したトナーが中間転写ベルト7上に再付着する現象が徐々に発生しやすくなる。クリーニング電界が強い領域では、第1のブラシ122に回収されたトナーが第1のブラシ122内の放電により逆極性に帯電し始めるために、このような再付着現象が発生する。
【0099】
また、図11に示すように、第1のブラシ122と同様に、第3のブラシ124においても、供給する電流が所定の電流に近付くにつれて徐々にクリーニング性が良化する。そして、所定の電流を超える(すなわち、絶対値が所定の電流値より大きくなる)と再付着現象が発生しやすくなる。その傾向は、第1のブラシ122に供給する電流によって若干異なる。第1のブラシ122に供給する電流を第1のブラシ電源134側から見て-90μAにすると、第3のブラシ124に供給する電流の絶対値が小さくてもクリーニングできる。しかし、第1のブラシ122に供給する電流の絶対値が大きすぎると、電荷量がゼロ近傍のトナーの量が多くなる傾向がある。そのため、第3のブラシ124からの再付着の発生も、第3のブラシ124に供給する電流の絶対値が比較的小さい領域から発生しやすくなってしまう。一方、第1のブラシ122に供給する電流を第1のブラシ電源134側から見て-50μAにすると、第3のブラシ124に供給する電流の絶対値を大きくする必要がある。また、クリーニングが完了する前に再付着が発生してしまい、良好なクリーニングが難しくなる。本実施例の構成では、第1のブラシ122に供給する電流を第1のブラシ電源134側から見て-70μAにした場合に、最も良好なクリーニング性を示し、第3のブラシ124に供給する電流の範囲を広く設定できることがわかかった。
【0100】
そこで、本実施例では、試験用トナー像のクリーニング時には、第1のブラシ122に供給する電流を第1のブラシ電源134側から見て-70μA、第3のブラシ124に供給する電流を第3のブラシ電源136側から見て-25μAとした。なお、本実施例では、上述のように、試験用トナー像のクリーニング時には、第2のブラシ123に供給する電流は、第2のブラシ電源135側から見て-10μAとした。
【0101】
このように、第1のブラシ122に供給する電流の絶対値を第3のブラシ124に供給する電流の絶対値よりも大きい値で最適化する。これにより、第3のブラシ124で強抜け(電界が強すぎてトナーが逆極性に帯電して中間転写ベルト7に再付着すること)を発生させない第3のブラシ124に供給する電流の範囲を大きく確保することができる。その結果、試験トナー像のクリーニング不良の発生を抑制することが可能になる。
【0102】
なお、本実施例においても、非画像領域に形成される試験用トナー像が第1、第2、第3の接触部CL1、CL2、CL3を通過している期間を含む所定の期間以外の期間、典型的には、画像形成動作中の2次転写残トナーのクリーニング時には、第1、第2、第3のブラシ122、123、124に供給する電流の設定は実施例1と同じとしてよい。
【0103】
3.電源の配置
本実施例における試験用トナー像のクリーニング時にも、実施例1の画像形成動作中の2次転写残トナーのクリーニング時と同様に、第1、第2のブラシ電源134、135の配置によって、電流の流れ込みによる問題が生じ得る。つまり、第1のブラシ電源134により第1のブラシ122に供給された電流は、中間転写ベルト7を介して第1のブラシ122と第1の対向ローラ131との間を流れる。しかし、例えば第1のブラシ122と第2のブラシ123との間のブラシ間距離が近い場合などには、電流の一部は、中間転写ベルト7の表面を介して、第2のブラシ123又は第2の対向ローラ132へ流れ込む。
【0104】
実施例1で説明したのと同様に、本実施例(図6(a))、従来例(図6(b))、比較例1(図6(c))、比較例2(図6(d))のそれぞれの給電方法で、上述の試験用トナー像のクリーニング時の設定で第1、第2のブラシ122、123に電流を供給した。表3は、この場合の、第1のブラシ122から第2のブラシ123又は第2の対向ローラ132に流れ込む電流を示す(電流は絶対値で示している。)。
【0105】
【表3】
【0106】
本実施例で使用した中間転写ベルト7は、体積抵抗率が1×1010Ω・cm、表面抵抗率が1×10Ω/□、厚みが400μmである。また、本実施例では、第1のブラシ122と第2のブラシ123との間のブラシ間距離は35mmである。また、本実施例では、第1のブラシ122と中間転写ベルト7との当接ニップの中間転写ベルト7の回転方向の幅は2mm、第1のブラシ122の長手方向(回転軸線方向)の幅は34cmである。なお、給電方法が異なることを除いて、上記体積抵抗率、表面抵抗率、厚み、ブラシ間距離、当接ニップの幅、及びブラシの長手方向の幅などの画像形成装置の構成は本実施例、従来例、比較例1、比較例2で実質的に同じである。また、本実施例では、第2のブラシ123と第3のブラシ124との間のブラシ間距離も35mmである(従来例、比較例1、比較例2も同様)。
【0107】
本実施例、従来例、比較例1、及び比較例2のいずれにおいても、第1のブラシ122と第1の対向ローラ131との間で電流が流れる中間転写ベルト7の厚み方向の電気抵抗値は、5.9×10Ω程度となる。一方、中間転写ベルト7を介した第1のブラシ122と第2のブラシ123との間の電気抵抗値は、1.0×10Ω程度となる。第1のブラシ122と、第2のブラシ123及び第2の対向ローラ132と、の間の電流経路は、上記2つの電気抵抗を介した並行回路とみなせる。
【0108】
従来例及び比較例1のように、第1のブラシ122に「外給電」で第1のブラシ電源134側から見て+70μAの電流(第1のブラシ電源134の電流検知部で測定)を供給すると、次のようになる。つまり、第1のブラシ122と第1の対向ローラ131との間には第1のブラシ電源134側から見て+44μAの電流が流れ、中間転写ベルト7を介して第2のブラシ123に第1のブラシ電源134側から見て+26μAの電流が流れ込む。一方、本実施例及び比較例2のように、第1のブラシ122に「内給電」で第1のブラシ電源134側から見て-70μAの電流(第1のブラシ電源134の電流検知部で測定)を供給すると、次のようになる。つまり、第1のブラシ122と第1の対向ローラ131との間には第1のブラシ電源134側から見て-44μAの電流が流れ、中間転写ベルト7を介して第2の対向ローラ132に第1のブラシ電源134側から見て-26μAの電流が流れ込む。
【0109】
このように、本実施例及び比較例2では、第1のブラシ122に対する給電方法を「内給電」とすることで、中間転写ベルト7を介して第2の対向ローラ132へ電流が流れ込むため第2のブラシ123には電流は流れ込まない。
【0110】
そして、本実施例では、第2の対向ローラ132側がアースであるため、第2のブラシ123側に配置された第2のブラシ電源135から該第2のブラシ電源135の電流検知部の検知結果に基づいて給電を行うことで、第2のブラシ123と第2の対向ローラ132との間に問題なく所望の電流(第2のブラシ電源135側から見て-10μA)を流すことが可能である。
【0111】
しかし、比較例2では、第2の対向ローラ132側に第2のブラシ電源135が配置されているため、第2のブラシ電源135側に-26μAの電流が流れ込んでしまう。第2のブラシ電源135から該第2のブラシ電源135の電流検知部の検知結果に基づいて給電を行う場合、該電流検知部がこの流れ込んだ-26μAの電流を検知してしまう。そのため、第2のブラシ電源135から供給する電流を適切に制御することが難しくなる。あるいは、第2の対向ローラ132と第2のブラシ123との間に所望の電流(第2のブラシ電源135側から見て+10μA)を流すためには、第2のブラシ電源135として、上記流れ込む-26μAの電流分を加味した正極性の高圧の出力が可能な電源が必要になり、装置のコストアップや大型化につながる。
【0112】
一方、従来例及び比較例1では、第1のブラシ122に対する給電方法を「外給電」としているため、中間転写ベルト7を介して第2のブラシ123へ電流が流れ込んでしまう。
【0113】
そして、従来例では、第2のブラシ123側に第2のブラシ電源135が配置されているため、第2のブラシ電源135側に+26μAの電流が流れ込んでしまう。第2のブラシ電源135から該第2のブラシ電源135の電流検知部の検知結果に基づいて給電を行う場合、該電流検知部がこの流れ込んだ+26μAの電流を検知してしまう。そのため、第2のブラシ電源135から供給する電流を適切に制御することが難しくなる。あるいは、第2の対向ローラ132と第2のブラシ123との間に所望の電流(第2のブラシ電源135側から見て-10μA)を流すためには、第2のブラシ電源135として、上記流れ込む+26μAの電流分を加味した負極性の高圧の出力が可能な電源が必要になり、装置のコストアップや大型化につながる。
【0114】
また、比較例1では、第2のブラシ123側がアースであるため、第2のブラシ123側に配置された第2のブラシ電源135からの該第2のブラシ電源135の電流検知部の検知結果に基づいて制御される電流と、上記流れ込む電流とが、第2のブラシ123に流れる。その結果、第2のブラシ123に絶対値が25μA以上の過大な電流が流れ込み、試験用トナー像のクリーニング不良が発生してしまう。
【0115】
このように、本実施例では、試験用トナー像のクリーニング時に、第1のブラシ122には、「内給電」で定電流制御された負極性の電流を供給する。また、本実施例では、試験用トナー像のクリーニング時に、第2のブラシ123には、「外給電」で定電流制御された負極性の電流を供給する。そして、その際の第1のブラシ122に供給する電流の絶対値は、第2のブラシ123に供給する電流の絶対値よりも大きい。なお、本実施例では、試験用トナー像のクリーニング時に第2のブラシ123に供給する電流の絶対値は10μAであり、第3のブラシ124に供給する電流の絶対値は25μAである。そのため、第2のブラシ123から第3のブラシ124に流れ込む電流は-4μA程度である。この電流は、第3のブラシ電源136から第3のブラシ124に供給する第3のブラシ電源136側から見で-25μAの電流よりも十分小さく影響が少ない。つまり、第2のブラシ123から中間転写ベルト7を介して第3のブラシ124に流れ込む電流の絶対値は、第3のブラシ電源136により第3のブラシ124に供給する電流の絶対値よりも十分に小さい。したがって、第3のブラシ124に対する給電方法は、「外給電」、「内給電」のいずれでもよい。
【0116】
なお、本実施例では、試験用トナー像が形成される1回の制御モードの実行中に中間転写ベルト7の表面の移動方向に沿って複数の試験用トナー像が形成される場合、中間転写ベルト7上の最初の試験用トナー像が形成される領域の先端が第1の接触部CL1に到達する時以前から、最後の試験用トナー像が形成される領域の後端が第3の接触部CL3を通過し終える時以降まで、第1、第2、第3のブラシ122、123、124には、本実施例で説明した上述の設定の電流が供給され続ける。また、試験用トナー像が形成される1回の制御モードの実行中に中間転写ベルト7の表面の移動方向に沿って1つの試験用トナー像が形成される場合であれば、中間転写ベルト7上の該試験用トナー像が形成される領域の先端が第1の接触部CL1に到達する時以前から、該試験用トナー像が形成される領域の後端が第3の接触部CL3を通過し終える時以降まで、第1、第2、第3のブラシ122、123、124には、本実施例で説明した上述の設定の電流が供給され続ける。本実施例では、試験用トナー像のクリーニング時とは、より詳細には、この第1、第2、第3のブラシ122、123、124に上述の設定の電流が供給されている期間のことをいう。ただし、本発明はこのような電流の供給態様に限定されるものではない。前述のように、複数の導電部材を有する構成において、所定の導電部材に流れる電流の絶対値が隣接する他の導電部材に流れる電流の絶対値よりも大きくなる期間があれば、本発明を適用して本実施例と同様の効果が得られる。この期間は、例えば、本実施例のように、中間転写ベルト7上の試験用トナー像が形成される領域が、該複数の導電部材と中間転写ベルト7との接触部の最上流位置から最下流位置まで通過するまでの期間などである。
【0117】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、第1、第2の導電部材122、123と第1、第2の対向部材131、132との間にそれぞれ電流が流れている状態で中間転写体7が回転する動作であって、第1の導電部材122と第1の対向部材131との間に流れる電流の絶対値の方が第2の導電部材123と第2の対向部材132との間に流れる電流の絶対値よりも大きい期間を有する動作を実行可能である。本実施例では、上記期間は、中間転写体上の試験用トナー像が形成された領域が、2次転写部N2を通過した直後に、第1、第2の導電部材122、123のうち中間転写体7の回転方向に関して上流に配置された方と中間転写体7との接触部に到達してから第1、第2の導電部材122、123のうち中間転写体7の回転方向に関して下流に配置された方と中間転写体7との接触部を通過し終えるまでの期間を含む。特に、本実施例では、上記期間は、中間転写体上の試験用トナー像が形成された領域が、2次転写部N2を通過した直後に、最上流の第1の導電部材122と中間転写体7との接触部に到達してから最下流の第3の導電部材124と中間転写体7との接触部を通過し終えるまでの期間を含む。
【0118】
以上のように、本実施例によれば、制御モードの実行中に所定の導電部材に流れる電流の絶対値を隣接する他の導電部材に流れる電流の絶対値よりも大きくする場合でも、該隣接する他の導電部材に流れる電流を適切に制御することが可能となる。そして、本実施例によれば、導電部材間の距離や中間転写体の繰り返し使用による電気抵抗の変動などの制御が低減した自由度の高い設計を容易にすることができる。
【0119】
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0120】
図12は、本実施例におけるベルトクリーニング装置12の近傍の模式的な断面図である。本実施例では、第2のブラシ123及び第3のブラシ124の対向部材としては、共通の対向ローラとしての駆動ローラ22が用いられる。第2のブラシ123には第2の回収ローラ126を介して第2のブラシ電源135から負極性の直流電圧が定電流制御で印加される。また、第3のブラシ124には第3の回収ローラ127を介して第3のブラシ電源136から正極性の直流電圧が定電流制御で印加されている。また、駆動ローラ71は、電気的に接地される。なお、第1のブラシ122に対する給電方法は実施例1と同じである。
【0121】
以上、本実施例のような構成においても、第1のブラシ122を「内給電」とし、第2のブラシ123を「外給電」とすることで、実施例1、2と同様の効果を得ることができる。
【0122】
[実施例4]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0123】
上述の実施例では、複数の導電部材を有する構成において、所定の導電部材に流れる電流の絶対値を隣接する他の導電部材に流れる電流の絶対値よりも大きくする場合として、最上流の導電部材を該所定の導電部材とする場合を説明した。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0124】
図13(a)は、中間転写ベルト7の回転方向に沿って3つのブラシが配置される構成において、最下流に配置されるブラシをディスチャージ部材として用いる場合の例を示している。つまり、上述の実施例における第1のブラシ122に対応するブラシが最下流に配置されており、「内給電」で電流が供給される。この場合、隣接する第3のブラシ124を「外給電」とする。第2のブラシ123については「内給電」、「外給電」のいずれで電流が供給されてもよいが、図示の例では「外給電」で電流が供給される。
【0125】
また、図13(b)は、中間転写ベルト7の回転方向に沿って3つのブラシが配置される構成において、中央に配置されるブラシをディスチャージ部材として用いる場合の例を示している。つまり、上述の実施例における第1のブラシ122に対応するブラシが中央に配置されており、「内給電」で電流が供給される。この場合、隣接する第2のブラシ123、第3のブラシ124のうちの少なくとも一方(図示の例では両方)を「外給電」とする。
【0126】
なお、図13(a)、(b)における、第2のブラシ123(及びこれに対応する第2の対向ローラ132などの他の要素)と、第3のブラシ124(及びこれに対応する第3の対向ローラ133などの他の要素)と、の配置を逆とすることもできる。
【0127】
以上、本実施例のような構成においても、第1のブラシ122を「内給電」とし、隣接するブラシ(第2、第3のブラシ123、124の少なくとも一方)を「外給電」とすることで、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0128】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0129】
上述の実施例では、複数の導電部材を有する構成において、該複数の導電部材に電流を供給する電源の出力はすべて定電流制御されたが、少なくとも1つの電源の出力が定電圧制御されてもよい。定電流制御は、電源が出力する電圧が略一定となるように(目標値に近付くように)、電源の出力を調整する制御である。この場合、その定電圧制御を行う電源は、例えば同一の高圧基板上に、電圧出力部と、電圧検知部(電圧検知回路)と、出力制御部(出力制御回路)と、を有して構成することができる。そして、電圧検知部の検知結果に基づいて、出力制御部が制御することで、その電源が出力する電圧がコントローラにより指示された目標電圧値で略一定となるように定電圧制御される。この場合も、複数の導電部材を有する構成において、所定の導電部材に流れる電流の絶対値が隣接する他の導電部材に流れる電流の絶対値よりも大きくなる期間があれば、本発明を適用して本実施例と同様の効果が得られる。
【0130】
また、上述の実施例では、導電部材は回転可能な導電性ファーブラであったが、本発明はこれに限定されるものではない。導電部材は、中間転写体を介して対向部材との間で電流を流すことができる部材であればよく、例えば、回転せずに中間転写体を摺擦するブラシ状の部材、金属あるいは導電性の樹脂やゴムで形成された回転可能なローラなどであってもよい。また、上述の実施例では、対向部材は回転可能な金属ローラであったが、本発明はこれに限定されるものではない。対向部材は、中間転写体を介して導電部材との間で電流を流すことができる部材であればよく、例えば、回転可能又は回転しないブラシ状の部材、導電性の樹脂やゴムで形成された回転可能なローラなどであってもよい。
【0131】
また、導電部材は、4つ以上設けられてもよい。この場合も、複数の導電部材のうち所定の期間に流れる電流の絶対値が最大となる電流検知部材に対する給電方法を「内給電」とし、隣接する他の導電部材に対する給電方法を「外給電」とすることにより、上述の実施例と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0132】
1 感光ドラム
5 1次転写ローラ
7 中間転写ベルト
8 2次転写ローラ
12 ベルトクリーニング装置
122 第1のブラシ(導電部材)
123 第2のブラシ(導電部材)
124 第3のブラシ(導電部材)
131 第1の対向ローラ(対向部材)
132 第2の対向ローラ(対向部材)
133 第3の対向ローラ(対向部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14