(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】アスベスト除去方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
E04G23/02 Z
(21)【出願番号】P 2020057705
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】516049272
【氏名又は名称】株式会社マルホウ
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】日比 裕己
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-051842(JP,A)
【文献】登録実用新案第3197063(JP,U)
【文献】特開平08-284438(JP,A)
【文献】特開2016-172984(JP,A)
【文献】特開2012-197631(JP,A)
【文献】特開平09-125707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0279386(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙突の内面に吹付けられたアスベストを除去するアスベスト除去方法であって、
前記煙突の下部には、前記煙突の内部および外部に連通する開口部が形成されており、
前記アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤と、
前記煙突の内面に吹付けられたアスベストに対して高圧水を噴射して前記アスベストを除去する除去装置と、
前記煙突の内面から除去された前記アスベストを吸引して回収する吸引回収装置と、
前記吸引回収装置に接続された吸引ホースを挿通可能な挿通孔が形成されており、かつ、前記開口部を閉塞可能な閉塞部材と、を用意し、
前記飛散抑制剤を泡状にして前記煙突の内部に充填する充填工程と、
前記充填工程の後に、前記高圧水を噴射する除去装置を高圧水を噴射させながら前記煙突の内部にて移動させることにより、前記アスベストを除去するとともに、除去されて前記煙突の下部に蓄積されたアスベストを、前記開口部を閉塞した前記閉塞部材の前記挿通孔に挿通された前記吸引ホースを用い、前記吸引回収装置によって吸引して回収する除去工程と、を有
し、
加えて、
前記閉塞部材は、
前記煙突の内部と外部とに連通する通気口と、
前記通気口に設けられており、前記除去工程により除去されたアスベストの粒子を濾過するフィルタと、を備えていることを特徴とするアスベスト除去方法。
【請求項2】
前記除去工程は、
前記煙突の先端に蓋をして行うことを特徴とする請求項1に記載のアスベスト除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突の内面に吹付けられたアスベストを除去するアスベスト除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
煙突の内面には、最も発塵性の高いレベル1のアスベスト含有吹付け材が吹き付けられている。レベル1のアスベスト含有吹付け材は、その他のアスベストと比べて特に繊維の露出が多く、また硬度や比重が小さく単一では脆いという特徴がある。このため、粉塵が比較的飛散しやすく、少しの外圧で破損するという特性を有する。
つまり、レベル1のアスベストを除去する作業を行う場合は、作業場所の隔離、高濃度の粉塵量に応じた防塵マスクおよび保護衣の使用など、厳重な暴露対策が必要となる。
【0003】
そこで、従来、煙突の内面に吹付けられたレベル1のアスベストを除去する方法として、例えば、
図8に記載の方法が知られている。
図8に示すように、建造物900に設けられた煙突300の側方には、煙突300に沿って足場400が組まれている。また、建造物900の屋上には足場401が組まれており、足場400,401の上部には、隔離区域500が設けられている。隔離区域500の内面の全体は、養生シートによって覆われている。地上には、高圧水供給装置200が配備されており、その高圧水供給装置200に接続された高圧ホース101は、隔離区域500に設けられた滑車102,102を介して煙突300の内部に昇降可能に延びている。高圧ホース101の先端には、アスベスト除去装置100が接続されており、アスベスト除去装置100は、高圧ホース101を介して煙突300の内部を昇降可能になっている。
【0004】
煙突300の下部の側方には、隔離区域700が形成されている。隔離区域700の内面の全体は、養生シートによって覆われている。隔離区域700は、煙突300の下部に形成された開口部301と連通している。隔離区域700には、開口部301から排出されたアスベストを吸引する吸引装置600が配置されている。隔離区域700の隣には、セキュリティゾーン800が配置されており、セキュリティゾーン800には、エアーシャワー装置801が配置されている。
【0005】
アスベスト除去装置100は、高圧水供給装置200から供給される高圧水を煙突300の内面に噴射しながら水平方向に回転し、煙突300の内面に吹付けられたアスベストを除去する。作業者は、隔離区域500に入り、高圧ホース101を操作してアスベスト除去装置100を昇降させる。また、作業者は、防塵マスクおよび保護衣を着用して隔離区域700に入り、煙突300の下に落下したアスベストを開口部301から隔離区域700内に掻き出し、その掻き出したアスベストを吸引装置600によって吸引する。アスベストの吸引作業を行った作業者は、セキュリティゾーン800に入り、エアーシャワー装置801によってエアーを全身に吹き付け、全身に付着したアスベストを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述した従来のアスベスト除去方法は、作業者は、密室状態となった隔離区域700において長時間の作業を行うことで、除去されたアスベストを吸引するおそれがある。
また、気温が高いときに防塵マスクおよび保護衣を着用して密室状態で行う作業は、アスベストで汚染された空間での作業になり、また、汗だくになるため、過酷を極める。
つまり、従来のアスベスト除去方法は、作業者の健康を害するおそれが高かった。
また、従来のアスベスト除去方法は、除去したアスベストの粒子が煙突300の先端から外部に飛散しないようにするために、煙突300の先端に隔離区域500を設け、その隔離区域500の内面全体を養生シートによって覆わなければならない。
また、前述したアスベスト除去方法は、セキュリティゾーン800およびエアーシャワー装置801を設置しなければならない。
つまり、前述したアスベスト除去方法は、作業コストが高いという問題がある。
また、前述したアスベスト除去方法は、密室状態となった隔離区域700にて長時間の作業を行うことが困難であるため、定期的に作業を中断するか作業員を交替させなければならないため、作業効率が悪いという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した諸問題を解決するために鋭意研究の結果創出されたものであり、作業者の健康が害されるおそれのないアスベスト除去方法を提供することを目的とする。また、本発明は、作業コストを低減することができ、かつ、作業効率を良くすることができるアスベスト除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(第1の発明)
前述した目的を達成するため、本願の第1の発明に係るアスベスト除去方法は、
煙突(10)の内面に吹付けられたアスベストを除去するアスベスト除去方法であって、
煙突(10)の下部には、煙突(10)の内部および外部に連通する開口部(12)が形成されており、
アスベストの飛散を抑制するための飛散抑制剤と、
煙突(10)の内面に吹付けられたアスベストに対して高圧水を噴射してアスベストを除去する除去装置(25)と、
煙突(10)の内面から除去されたアスベストを吸引して回収する吸引回収装置(51,81)と、
吸引回収装置(51,81)に接続された吸引ホース(52)を挿通可能な挿通孔(72)が形成されており、かつ、開口部(12)を閉塞可能な閉塞部材(70)と、を用意し、
飛散抑制剤を泡状にして煙突(10)の内部に充填する充填工程(工程2)と、
充填工程(工程2)の後に、高圧水を噴射する除去装置(25)を高圧水を噴射させながら煙突(10)の内部にて移動させることにより、アスベストを除去するとともに、除去されて煙突(10)の下部に蓄積されたアスベスト(As)を、開口部(12)を閉塞した閉塞部材(70)の挿通孔(72)に挿通された吸引ホース(52)を用い、吸引回収装置(51,81)によって吸引して回収する除去工程(工程5)と、を有し、
加えて
閉塞部材(70)は、
煙突(10)の内部と外部とに連通する通気口(77)と、
通気口(77)に設けられており、除去工程(工程5)により除去されたアスベストの粒子を濾過するフィルタ(78)と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
(第2の発明)
本願の第2の発明は、前述した第1のアスベスト除去方法において、
除去工程(工程5)は、
煙突(10)の先端に蓋(26)をして行うことを特徴とする。
【0014】
なお、上記各括弧内の符号および語句は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0015】
(第1の発明の効果)
本願の第1の発明によれば、飛散抑制剤を泡状にして煙突の内部に充填する充填工程を有するため、飛散抑制剤がアスベストに浸透するので、除去されたアスベストの飛散を抑制することもできる。
しかも、飛散抑制剤が浸透していないアスベストが除去され、飛散可能なアスベスト粒子が発生した場合であっても、煙突の内部には泡状の飛散抑制剤が充填されているため、その充填された泡状の飛散抑制剤が、アスベスト粒子に付着するので、アスベスト粒子が煙突の先端から煙突の外部へ飛散しないようにすることができる。
また、除去されたアスベストを回収する際に、アスベスト粒子が飛散しないようにすることができる。
従って、除去されたアスベストを回収する作業者が、アスベスト粒子を吸引して健康を害するおそれがない。
さらに、従来のように、煙突の先端に隔離区域を設け、その隔離区域の内面全体を養生シートで覆う必要がないため、その分、作業コストを低減することができる。
【0016】
しかも、煙突の下部に形成された開口部を閉塞部材によって閉塞し、その閉塞部材に挿通した吸引ホースによりアスベストを吸引することができる。
従って、除去されたアスベストを回収する作業者が、アスベスト粒子を吸引して健康を害するおそれがない。
また、従来のように、煙突の下部に形成された開口部と連通した隔離区域と、その隔離区域の隣に設けるセキュリティゾーンと、そのセキュリティゾーンに設けるエアーシャワー装置とが不要であるため、その分、作業コストを低減することができる。
しかも、隔離区域での作業を定期的に中断したり、作業員を交替させたりする必要がないため、作業効率を良くすることもできる。
【0018】
さらに、閉塞部材は、煙突の内部と外部とに連通する通気口を備えているため、煙突の内部を負圧にすることができる。
従って、吸引装置のアスベストの吸引効率を良くすることができるため、作業効率を良くすることができる。
しかも、除去工程により除去されたアスベストの粒子を濾過するフィルタが通気口に設けられているため、アスベストが通気口から煙突の外部に漏れないようにすることができるので、安全性を確保することができる。
【0019】
(第2の発明の効果)
本願の第2の発明によれば、煙突の先端に蓋をしてアスベストを除去することができるため、除去されたアスベストの粒子が煙突の先端から飛散しないように万全を期すことができる。
さらに、煙突の内部の負圧を大きくすることができるため、吸引装置のアスベストの吸引効率を良い一層良くすることができるため、作業効率をより一層良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るアスベスト除去方法を実行するためのアスベスト回収システムの説明図である。
【
図2】
図1に示すアスベスト回収システムに備えられた吸引装置の説明図である。
【
図3】
図1に示すアスベスト回収システムに備えられた閉塞部材の説明図であり、(A)は閉塞部材の正面図、(B)は閉塞部材の平面図である。
【
図4】
図3に示す閉塞部材の使用方法を示す平面説明図である。
【
図5】
図3に示す閉塞部材の使用方法を示す側面説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るアスベスト除去方法の工程図である。
【
図7】
図2に示す吸引装置に備えられた制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】従来のアスベスト除去方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[アスベスト回収システムの構成]
本実施形態のアスベスト除去方法を実行するためのアスベスト回収システムの構成について
図1を参照しつつ説明する。
図1は、アスベスト回収システム1の説明図である。
【0022】
建造物90には煙突10が設けられている。煙突10は、先端が開口された筒状の壁11を有する。壁11の内面には、レベル1のアスベストが吹付けられている。煙突10の側方には足場91が組まれており、建造物90の屋上には足場92が組まれている。足場92の上には、作業部屋40が設けられている。作業部屋40には滑車23,24が設けられている。煙突10の近傍には、作業車20と、作業車50と、作業車80とが配置されている。作業車20には、高圧水供給装置21と、飛散抑制剤供給装置30とが搭載されている。飛散抑制剤供給装置30に接続されたホース31の先端には、液状の飛散抑制剤を泡状に変換する変換器32が接続されている。変換器32は、煙突10の先端を閉塞した蓋26に隙間無く挿通されている。飛散抑制剤供給装置30から供給される液状の飛散抑制剤は、変換器32によって泡状に変換され、その泡状に変換された飛散抑制剤の泡33は、煙突10の内部に供給され、所定時間を掛けて煙突10の内部に充填される。
飛散抑制剤の種類は、アスベストの粒子の飛散を効果的に抑制できるものであれば限定されるものではなく、例えば、ポリビニルアルコール、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂を主成分とする水溶性樹脂などを使用することができる。
【0023】
高圧水供給装置21に接続された高圧ホース22は、滑車23,24を介して煙突10の内部に延びており、その高圧ホース22の先端には、アスベストを除去する除去装置25が接続されている。除去装置25は、高圧水供給装置21から供給される高圧水を煙突10の壁11の内面に噴射し、その内面に吹付けられたアスベストを水の圧力によって剥離して除去する。除去装置25としては、公知の装置(例えば、特開2008-149264号公報に記載の筒状構造物内壁洗浄装置)を用いることができる。除去装置25は、基部と、この基部から煙突10の壁11に向けて放射状に延びた噴射ノズルと、上記基部を水平方向に回転させるエアモータとを備えている。各噴射ノズルは、高圧水供給装置21から高圧ホース22を介して供給される高圧水を煙突10の壁11の内面に噴射し、壁11の内面に吹付けられたアスベストを水圧によって除去する。除去装置25の能力は、例えば、245MPaの高圧水を噴射し、最高吐出流量が50リットル/分である。また、作業車20には、除去装置25に設けられたエアモータに圧縮空気を供給する圧縮空気供給装置(図示省略)が搭載されている。
【0024】
煙突10の下部の壁11には、煙突10の内部および外部に連通する開口部12が形成されており、その開口部12には、開口部12を閉塞する閉塞部材70が取付けられている。閉塞部材70には、煙突10の下部に蓄積され、水および飛散抑制剤と混合されたアスベストAsを吸引する吸引ホース52が挿通されている。吸引ホース52は、作業車50に搭載されたアスベスト回収装置51と接続されている。アスベスト回収装置51は、吸引ホース53を介して、作業車80に搭載された吸引装置81と接続されている。吸引装置81は、吸引された水および飛散抑制剤に混合されたアスベストからアスベストおよび飛散抑制剤を除去する機能を備えている。吸引装置81には、アスベストと共に吸引した気体を大気へ排気するための排気パイプ82が備えられている。
【0025】
本実施形態では、排気パイプ82にはヘパフィルタ(図示せず)が取付けられている。ヘパフィルタは、JISZ8122に規定されており、定格風量で粒径が0.3 μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ、初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタである。つまり、フィルタ78としてヘパフィルタを用いることにより、0.3 μm以下のアスベスト粒子を99.97%以上濾過することができるため、通気口77から大気中に排出されたアスベスト粒子を作業者が吸い込んで健康を害するおそれがなくなる。
【0026】
上述したように、本実施形態のアスベスト回収システム1は、煙突10の内面に高圧水を噴射してアスベストを除去する除去装置25と、この除去装置25へ高圧水を供給する高圧水供給装置21と、アスベストの飛散を抑制する飛散抑制剤を供給する飛散抑制剤供給装置30と、この飛散抑制剤供給装置30から供給される飛散抑制剤を泡状の飛散抑制剤に変換して煙突10の内部に供給する変換器32と、煙突10の下部に形成された開口部12を閉塞する閉塞部材70と、閉塞部材70に挿通された吸引ホース52と、この吸引ホース52が接続さえたアスベスト回収装置51と、このアスベスト回収装置51に接続された吸引装置81とを備えている。アスベスト回収装置51および吸引装置81は、本発明の吸引回収装置の一例である。
【0027】
(閉塞部材)
ここで、閉塞部材70の構造について
図3を参照しつつ説明する。
閉塞部材70は、煙突10の下部の壁11に形成された開口部12に合致した形状に形成されている。本実施形態では、開口部12は矩形に形成されており、閉塞部材70は、開口部12に合致した矩形で板状に形成されている。閉塞部材70は、開口部12に合致した矩形で板状の本体71を備えている。本体71には、吸引ホース52を挿通するために貫通形成された挿通孔72と、第1の貫通孔73と、第2の貫通孔74と、通気口77と、この通気口77に取付けられたフィルタ78とを備えている。本実施形態では、フィルタ78は、前述したヘパフィルタである。また、本体71は、アクリルなどの合成樹脂により透明に形成されている。
【0028】
第1の貫通孔73からは、作業者Pの左腕に装着する第1のグローブ75が突出しており、第2の貫通孔74からは、作業者Pの右腕に装着する第2のグローブ76が突出している。第1のグローブ75および第2のグローブ76は、それぞれ少なくとも肘よりも肩に近い部分から指先までを密閉する構造になっている。また、第1のグローブ75の周囲は、第1の貫通孔73の周囲と密着しており、第1のグローブ75と第1の貫通孔73との間には隙間が形成されていない。また、第2のグローブ76の周囲は、第2の貫通孔74の周囲と密着しており、第2のグローブ76と第2の貫通孔74との間には隙間が形成されていない。
【0029】
つまり、本体71と、第1のグローブ75と、第2のグローブ76とは、いわゆるグローブボックスの構造を利用して構築することができる。グローブボックスとは、外気と遮断された状況下で作業が可能となるように、内部に手だけが入れられるよう設計された密閉容器である。また、挿通孔72の周縁からは、挿通孔72の径よりも小径のスカート部72aが形成されている。本実施形態では、スカート部72aはゴム製であり、挿通孔72に挿通された吸引ホース52の外周面に密着し、吸引ホース52と挿通孔72との間に隙間が形成されないようにする。
つまり、閉塞部材70は、アスベストの吸引作業を行うときに、アスベストが開口部12を通じて煙突10の外部に漏れない構造になっている。
また、本体71は、透明であるため、アスベストの吸引作業中に、吸引ホース52の位置を閉塞部材70の外から視認することができる。
【0030】
(アスベスト回収装置)
ここで、アスベスト回収装置51の構成について
図2を参照しつつ説明する。
アスベスト回収装置51は、吸引ホース52によって吸引されたアスベストを回収する装置である。アスベスト回収装置51は、ホッパ54と、第1センサ55と、弁装置56と、密封装置57と、凝固剤供給装置58と、フィルタ59と、回収袋61と、第2センサ62と、制御部64とを備えている。
【0031】
ホッパ54は、吸引ホース52と、吸引装置81(
図1)と接続された吸引ホース53との間に設けられている。吸引ホース53は、ホッパ54の上部に取付けられている。こうすることにより、吸引ホース52から排出されたアスベスト、水および飛散抑制剤の混合物が、吸引された勢いで直接吸引ホース53に入らないようにすることができる。ホッパ54と吸引ホース53との接続箇所には、ホッパ54の内部に吸引されたアスベストを濾過するフィルタ59が設けられている。フィルタ59の目を細かくすると吸引力が低下し、目を粗くすると濾過されないアスベストの粒子が大きくなるため、フィルタ59の種類は、吸引力および濾過能力を考慮して決定する。例えば、フィルタ59としてデミスターなどの金網を用いることができる。
第1センサ55は、ホッパ54に蓄積されたアスベストが所定量に達したことを検知するセンサである。例えば、第1センサ55は、近接センサである。また、近接センサに代えてリミットスイッチを用いることもできる。通常、ホッパ54の底部は開口しており、ホッパ54に蓄積されたアスベストは、ホッパ54の下部に配置された回収袋61に落下する。
【0032】
回収袋61は、回収袋61の重量が所定量に達したことを検知する第2センサ62の上に載置されている。例えば、回収袋61は、アスベストの粒子が漏れることのない材料、例えば、ポリエチレンにより形成されている。回収袋61の肉厚が薄い場合は、回収袋61を二重にすることにより、破損を防止し、アスベストが漏れないようにする。また、本実施形態では、回収袋61の容量は、基本的に作業者が手で持ち上げて回収するため、回収されたアスベストを持ち上げることができる容量、例えば、20~40リットルである。また、回収袋61としてさらに大きい容量(例えば、1立方メートル)のものを用いる場合は、ポリエチレンなどにより形成された回収袋61を、通称、フレコン(株式会社ナシヨナルマリンプラスチツクの登録商標で、フレキシブルコンテナバッグの略称)と呼ばれるものに入れ、クレーンなどを使って運搬するようにしても良い。
ホッパ54の底部には、ホッパ54の底部を開閉する弁装置56が設けられている。弁装置56は、通常は開作動しており、回収袋61の重量が所定量に達したことを第2センサ62が検知したときに閉作動し、ホッパ54の底部を閉塞する。例えば、弁装置56は、シャッター式またはバタフライ式の弁と、この弁を開閉駆動するソレノイドやモータなどのアクチュエータとを備えている。また、第2センサ62は、例えば、重量センサである。
【0033】
弁装置56の下方には、回収袋61の上部の開口部を密封する密封装置57が設けられている。本実施形態では、密封装置57は、ヒート式または超音波式の溶着装置であり、回収袋61の開口部を密封し、アスベストが漏れないようにする。密封装置57は、弁装置56が閉作動してから作動し、回収袋61の開口部を密封する。また、密封装置57は、回収袋61を着脱可能に構成されている。密封装置57は、回収袋61の開口部を構成する長手面が相対向するように、回収袋61をセットし、相対向する長手面を相互に溶着する構造でも良い。また、密封装置57は、回収袋61の開口部を円形になるようにセットし、その開口部を絞り込んでから結束部材によって結束する構造でも良い。また、開口部の絞り込んだ部分を溶着する構造でも良い。
【0034】
凝固剤供給装置58は、ホース60によって密封装置57と接続されている。ホース60の先端には、水に混合したアスベストを凝固させる凝固剤を噴射する噴射ノズル65が取付けられている。噴射ノズル65の噴射孔は、密封装置57を構成する所定の部材から回収袋61の内部に向いている。凝固剤供給装置58は、凝固剤を噴射ノズル65から回収袋61の内部に噴射し、回収袋61に蓄積され、水に混合したアスベストを凝固させる。凝固剤の種類および濃度は、回収袋61の開口部からアスベストが大気中に飛散しないように調整する。第2センサ62および凝固剤供給装置58は、基台63の上に配置されている。凝固剤としては、例えば、高分子ポリマーを用いることができる。
【0035】
制御部64は、弁装置56と、密封装置57と、凝固剤供給装置58と、吸引装置81とに接続されており、接続された各装置を制御する。制御部64は、各装置を制御するための制御プログラムやテーブルなどが格納されたROMと、このROMから読出された制御プログラムを展開して格納するRAMと、このRAMに展開された制御プログラムを実行するCPUとを備えている。また、RAMは、CPUの処理結果などを一時的に格納する。
【0036】
[アスベスト除去方法]
次に、アスベスト除去方法について
図6を参照しつつ説明する。
(工程1)
最初に、アスベストを除去するための準備を行う。具体的には、
図1に示すように、煙突10の側方に足場91を組み、煙突10が設置された建造物90の屋上に煙突10の先端の周囲を囲むように足場92を組む。また、足場92の上に作業部屋40を設置し、作業部屋40に滑車23,24を取付ける。また、煙突10の近傍に作業車20,50,80を配置する。また、煙突10の先端に蓋26を被せて煙突10の先端を閉塞し、その蓋26に変換器32を隙間無く挿通する。また、煙突10の下部の壁11に形成された開口部12を閉塞部材70によって隙間無く閉塞する。
【0037】
(工程2)
次に、高圧ホース22を滑車23,24に架け渡し、その高圧ホース22を除去装置25に接続する。次に、除去装置25を煙突10の底部まで下降させる。
【0038】
(工程3)
次に、飛散抑制剤供給装置30から飛散抑制剤を変換器32へ供給し、変換器32によって飛散抑制剤を泡状に変換し、その泡状の飛散抑制剤を煙突10の内部に充填する。泡状の飛散抑制剤が煙突10の内部に充填されるまでに要する時間は、煙突10の容積、変換器32が吐出する飛散抑制剤の単位時間当りの量などに応じて予め実験により求めておくことができる。工程3は、本発明の充填工程の一例である。
【0039】
(工程4)
次に、泡状の飛散抑制剤が煙突10の壁11の内面に吹付けられたアスベストに浸透するまで所定時間待機する。この所定時間は、吹付けられているアスベストの種類または厚さに応じて、予め実験により求めておくことができる。
【0040】
(工程5)
次に、高圧水供給装置21を作動させ、高圧水を高圧ホース22を介して除去装置25へ供給する。また、圧縮空気供給装置を作動させ、圧縮空気を除去装置25のエアモータへ供給する。これにより、除去装置25の各噴射ノズルは、水平方向に回転しながら高圧水を煙突10の壁11の内面に噴射し、アスベストを除去する。
【0041】
また、吸引装置81およびアスベスト回収装置51を作動させ、除去されて煙突10の底部に蓄積され、水および飛散抑制剤と混合したアスベストAsを吸引し、アスベスト回収装置51に回収する。アスベストAsの吸引作業を行う作業者Pは、前述したように、左腕を第1のグローブ75(
図3)に挿通し、右腕を第2のグローブ76に挿通する。そして、
図4および
図5に示すように、作業者Pが両手で吸引ホース52を操作し、煙突10の底部に蓄積したアスベストAsを吸引ホース52によって吸引する。
【0042】
また、アスベストを除去しながら、除去装置25を所定の上昇速度にて煙突10の上方へ上昇させる。除去装置25の上昇は、作業部屋40に入っている作業者、または、作業車20の近傍にいる作業者が、高圧ホース22を引き上げることにより行う。また、除去装置25を引き上げるためのワイヤを除去装置25に取付け、そのワイヤを巻き取る巻取り装置を作業部屋40または地上に配置し、その巻取り装置を作動させて除去装置25を上昇させることもできる。除去装置25の上昇速度は、除去装置25の除去能力、アスベストの種類、アスベストの厚さなどに応じて、予め実験により求めておくことができる。工程5は、本発明の除去工程の一例である。
【0043】
(工程6)
次に、煙突10の内部を撮影し、アスベストの除去状態を確認する。例えば、除去装置25を吊り下げていたワイヤにカメラおよび照明器具を取付け、そのカメラおよび照明器具を煙突10の内部で昇降させ、煙突10の内面を撮影し、その撮影画像を、作業現場に設けたモニタに映し、その映った画像を見て、アスベストの除去状態を確認する。その結果、アスベストが残存していることが分かった場合は、再度、工程2~工程6を実行する。この場合、残存しているアスベストに飛散抑制剤が浸透している場合は、工程3,4を省略し、工程2,5,6のみを実行しても良い。
【0044】
(工程7)
次に、飛散抑制剤を煙突10の内面にコーティングする。例えば、除去装置25の各噴射ノズルから飛散抑制剤を煙突10の内面に噴射する。また、飛散抑制剤を噴射する噴射ノズルを除去装置25に取付け、その噴射ノズルから飛散抑制剤を煙突10の内面に噴射することもできる。この場合、飛散抑制剤の噴射速度は、高圧水を噴射してアスベストを除去するときのような噴射速度である必要はなく、噴射した飛散抑制剤が煙突10の内面に届く噴射速度であれば良い。また、除去装置25に代えて、飛散抑制剤を噴射する専用装置を煙突10の内部に吊り下げ、飛散抑制剤を噴射しながら、その専用装置を昇降させる方法でも良い。
【0045】
[制御部の処理内容]
次に、上述した工程5において制御部64(
図2)が実行する処理内容について
図7を参照しつつ説明する。以下の説明では、制御部64が実行する処理ステップをSと略す。
【0046】
制御部64は、吸引装置81(
図1)に対して作動命令を出力し、アスベストの吸引を開始させる(S1)。このS1の処理は、制御部64に接続された吸引スイッチ(図示せず)がオンしたときに開始する。この吸引スイッチは、吸引ホース52を操作する作業者の近傍に配置することもできる。続いて、制御部64は、第1センサ55(
図2)がオンしたか否かを判定し(S2)、オンしていないと判定した場合は(S2:No)、弁装置56(
図2)を閉作動させ、ホッパ54の底部を閉口する(S3)。つまり、制御部64は、ホッパ54に蓄積されたアスベストが、第1センサ55がオンする所定量に達するまでは弁装置56を閉作動させた状態を保持し、ホッパ54にアスベストが所定量蓄積されるように制御する。
【0047】
また、制御部64は、第1センサ55がオンしたと判定した場合は(S2:Yes)、弁装置56を開作動させ、ホッパ54の底部を開口する(S4)。つまり、制御部64は、ホッパ54に蓄積されたアスベストが、第1センサ55がオンする所定量に達したときは弁装置56を開作動させ、ホッパ54に蓄積されたアスベストを回収袋61に落下させる。続いて、制御部64は、アスベスト回収装置51に設けられた凝固剤供給装置58を作動させ、凝固剤を噴射ノズル65から回収袋61の内部に噴射させる(S5)。続いて、制御部64は、第2センサ62(
図2)がオンしたか否かを判定し(S6)、オンしたと判定した場合は(S6:Yes)、弁装置56を閉作動させる(S7)。つまり、制御部64は、回収袋61に回収されたアスベストが所定の重量に達したと判定した場合は、ホッパ54の底部を閉口し、ホッパ54に蓄積されたアスベストが回収袋61に落下しないように制御する。
【0048】
また、制御部64は、第2センサ62がオンしていないと判定した場合は(S6:No)、S1~S5を実行する。つまり、制御部64は、回収袋61に回収されたアスベストが所定の重量に達したと判定するまで、アスベストの吸引および凝固剤の噴射を継続する。
そして、制御部64は、吸引装置81および凝固剤供給装置58を停止させ(S8)、アスベストの吸引および凝固剤の噴射を停止させる。続いて、制御部64は、密封装置57(
図2)を作動させ(S9)、回収袋61の開口部を密封する。続いて、制御部64は、回収袋61がアスベストで満杯になったことを報知する(S10)。例えば、制御部64には、回収袋61がアスベストで満杯になったことを報知する報知ランプおよび報知スピーカが接続されており、その報知ランプを点灯させ、かつ、報知スピーカから所定の音を出力することにより、回収袋61がアスベストで満杯になったことを周囲の作業者に報知する。報知ランプおよび報知スピーカは、吸引ホース52を操作する作業者の近傍に配置することもできる。
【0049】
作業者は、密封装置57から回収袋61を取外し、その回収袋61を所定の場所まで運ぶ。このとき、回収袋61の開口部は、密封装置57によって密封されているため、回収袋61からアスベストが外部に漏れるおそれがないので、回収袋61を運搬する作業者および周囲の人の健康が害されるおそれがない。
そして、アスベストの回収作業を継続する場合は、作業者は、新たな回収袋61を密封装置57にセットし、制御部64に接続された吸引スイッチ(図示せず)をオンし、制御部64に前述したS1~S10を実行させる。
【0050】
[実施形態の効果]
(1)上述した実施形態のアスベスト除去方法によれば、飛散抑制剤を泡状にして煙突の内部に充填する工程3(充填工程)を有するため、飛散抑制剤がアスベストに浸透するので、除去されたアスベストの飛散を抑制することもできる。
しかも、飛散抑制剤が浸透していないアスベストが除去され、飛散可能なアスベスト粒子が発生した場合であっても、煙突10の内部には泡状の飛散抑制剤が充填されているため、その充填された泡状の飛散抑制剤が、アスベスト粒子に付着するので、アスベスト粒子が煙突10の先端から煙突10の外部へ飛散しないようにすることができる。
また、煙突10の先端に配置した作業部屋40で作業を行う者が、アスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
従って、除去されたアスベストを回収する作業者が、アスベスト粒子を吸引して健康を害するおそれがない。
さらに、従来のように、煙突300の先端に隔離区域500を設け、その隔離区域500の内面全体を養生シートで覆う必要がないため、その分、作業コストを低減することができる。
【0051】
(2)しかも、前述した実施形態のアスベスト除去方法によれば、煙突10の下部に形成された開口部12を閉塞部材70によって閉塞し、その閉塞部材70に挿通した吸引ホース52によりアスベストAsを吸引することができる。
従って、除去されたアスベストを回収する作業者が、アスベスト粒子を吸引して健康を害するおそれがない。
また、従来のように、煙突10の下部に形成された開口部12と連通した隔離区域700と、その隔離区域700の隣に設けるセキュリティゾーン800と、そのセキュリティゾーン800に設けるエアーシャワー装置801とが不要であるため、その分、作業コストを低減することができる。
さらに、隔離区域での作業を定期的に中断したり、作業員を交替させたりする必要がないため、作業効率を良くすることもできる。
【0052】
(3)さらに、前述した実施形態のアスベスト除去方法によれば、両腕にグローブ(75,76)を装着した状態で、閉塞部材70に挿通された吸引ホース52を操作し、煙突10の下部に蓄積されたアスベストAsを吸引することができる。
しかも、吸引ホース52を操作する作業者は、両腕にグローブ(75,76)を装着しているため、アスベストが作業者の肌に触れるおそれがないので、作業者の安全性を確保することもできる。
従って、除去されたアスベストを回収する作業者が、アスベスト粒子を吸引したり、アスベストが肌に付着したりすることにより、健康を害するおそれがない。
また、吸引ホース52を操作しないで固定して作業を行う場合と比較すると、アスベストAsを効率的に吸引することができるため、作業効率を良くすることができる。
【0053】
(4)さらに、前述した実施形態のアスベスト除去方法によれば、閉塞部材70は、煙突10の内部と外部とに連通する通気口77を備えているため、煙突10の内部を負圧にすることができる。
従って、吸引装置81の吸引効率を良くすることができるため、作業効率を良くすることができる。
しかも、工程5(除去工程)により除去されたアスベストAsの粒子を濾過するフィルタ78が通気口77に設けられているため、アスベストAsが通気口77から煙突10の外部に漏れないようにすることができるので、安全性を確保することができる。
【0054】
(5)さらに、前述した実施形態のアスベスト除去方法によれば、煙突10の先端に蓋26をしてアスベストを除去することができるため、除去されたアスベストAsの粒子が煙突10の先端から飛散しないように万全を期すことができる。
さらに、煙突10の内部の負圧を大きくすることができるため、吸引装置81の吸引効率を良い一層良くすることができるため、作業効率をより一層良くすることができる。
【0055】
(6)さらに、前述した実施形態のアスベスト除去方法によれば、煙突10の先端を閉塞し、かつ、開口部12を閉塞した状態で、除去されたアスベストAsを吸引して回収することができる。つまり、除去されたアスベストAsを煙突10から全く漏れない状態で回収することができる。
しかも、アスベストの除去、吸引および回収の工程においてアスベストAsが作業者に全く触れるおそれがない。
従って、前述した実施形態のアスベスト除去方法によれば、レベル3の作業レベルにて作業を行うことができ、レベル1やレベル2のような対策を施す必要がないため、その分、作業者が健康を害するおそれがない。
また、作業現場を養生して隔離する作業を行う必要がないし、レベル1やレベル2に対応するマスクを作業者が着用する必要がないので、作業コストを低減することができる。 さらに、作業現場を養生して隔離し、作業環境を構築する必要がないため、その分、作業時間を短縮することもできる。
【0056】
(7)さらに、前述した実施形態のアスベスト除去方法によれば、煙突10のアスベストを除去する工程を行った後に、飛散抑制剤を煙突10の内面にコーティングする工程7を有するため、煙突10を解体したときに、煙突10の内面に残留していたアスベストが飛散し難いようにすることができる。
従って、煙突10を解体する作業者がアスベストを吸引して健康を害しないようにすることができる。
【0057】
〈他の実施形態〉
(1)煙突10の内面に吹付けられたアスベストの種類、アスベストの厚さ、泡状の飛散抑制剤がアスベストに浸透する時間、煙突10の容積などの外部要因と、泡状の飛散抑制剤を煙突10に充填するために必要な飛散抑制剤の容量との関係を実験により求め、上記外部要因が分かれば、飛散抑制剤の必要な容量が分かるようにしておくこともできる。
例えば、上記外部要因と飛散抑制剤の容量との対応関係をテーブルにして制御部64のRAMに記憶しておき、制御部64に接続された入力部(例えば、数値入力キーなど)から上記外部要因の各値を入力すると、制御部64がRAMの上記テーブルを参照し、入力された外部要因に対応する飛散抑制剤の容量を、制御部64に接続された表示部(例えば、液晶表示装置など)に表示するように構成することもできる。
また、飛散抑制剤供給装置30が供給する飛散抑制剤の容量が、上記の必要な容量に達したときに、飛散抑制剤供給装置30が自動的に飛散抑制剤の供給を停止するように構成することもできる。
【0058】
(2)吸引ホース52によってアスベストAsを吸引する前に、吸引ホース52によって飛散抑制剤を吸引し、飛散抑制剤を吸引ホース52の内面にコーティングしておくコーティング工程を加えることもできる。このコーティング工程を加えれば、アスベストAsの吸引を行った後に吸引ホース52を外した際に、吸引ホース52の内部に残っていたアスベストAsが吸引ホース52の先端から外部に漏れにくいようにすることができるため、作業現場にいる者がアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。また、吸引ホース53の内面に飛散抑制剤をコーティングしておくこともできる。
【0059】
(3)除去装置25に変換器32を取付け、変換器32から泡状の飛散抑制剤を噴射しながら除去装置25を煙突10の内部で昇降させ、泡状の飛散抑制剤を煙突10の内部に充填させることもできる。また、除去装置25に設けられた各噴射ノズルから飛散抑制剤を煙突10の内面に噴射し、その噴射した飛散抑制剤をアスベストに浸透させることもできる。この場合、いくつかの噴射ノズルを変換器32と同じ仕様にし、その噴射ノズルから泡状の飛散抑制剤を噴射するように構成することもできる。
【0060】
(4)除去装置25にカメラおよび照明器具を取付け、アスベストの除去状態を確認しながらアスベストを除去することもできる。また、カメラのレンズに付着した汚れを払拭する装置を取付け、その装置により、定期的または汚れを確認したときにレンズを払拭し、撮影に障害が出ないようにすることもできる。また、上記照明器具の光を出射する面に付着した汚れを払拭する装置を取付けることもできる。
【0061】
(5)アスベスト回収装置51の内部の気体を外部へ吸引する吸引装置を設け、アスベスト回収装置51の内部に浮遊しているアスベスト粒子を吸引することもできる。この場合、その吸引装置の排気パイプに前述したヘパフィルタを設けることにより、吸引したアスベスト粒子が大気中に漏れないようにすることもできる。
また、密封装置57の周囲、または、弁装置56および密封装置57の周囲を覆う部材を設け、その部材に吸引装置を接続することもできる。この構成によれば、密封装置57から回収袋61を着脱する際に、密封装置57また弁装置56からアスベストが漏れた場合であっても、その漏れたアスベストを吸引することができるため、回収袋61を着脱する者が、アスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
【0062】
(6)回収袋61に回収されたアスベストの重量が所定の重量になったときに、吸引装置81の動作を一時的に停止させ、凝固剤供給装置58を動作させ、回収袋61に凝固剤を噴射し、凝固剤の噴射が終了してから、吸引装置81の動作を再開させる方法を用いることもできる。また、凝固剤を噴射する噴射ノズル65を弁装置56を構成する所定の部材に設け、噴射ノズル65の噴射孔が回収袋61の内部に向いているように構成することもできる。
【符号の説明】
【0063】
1 アスベスト回収システム
10 煙突
12 開口部
21 高圧水供給装置
25 除去装置
26 蓋
30 飛散抑制剤供給装置
32 変換器
51 アスベスト回収装置
52 吸引ホース
53 吸引ホース
54 ホッパ
55 第1センサ
56 弁装置
57 密封装置
58 凝固剤供給装置
59 フィルタ
61 回収袋
62 第2センサ
64 制御部
65 噴射ノズル
70 閉塞部材
72 挿通孔
73 第1の貫通孔
74 第2の貫通孔
75 第1のグローブ
76 第2のグローブ
81 吸引装置
As アスベスト
P 作業者