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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/83 20060101AFI20240520BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
B29C45/83
B29C45/17
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020065106
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160272
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】両角 智人
(72)【発明者】
【氏名】宮武 勤
(72)【発明者】
【氏名】平田 徹
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲キン▼
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-109149(JP,A)
【文献】特開平04-325222(JP,A)
【文献】特開2019-177619(JP,A)
【文献】特開2003-211512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動面を有し、前記摺動面を潤滑する潤滑剤が供給される供給接続口及び前記摺動面から回収された潤滑剤が排出される回収接続口を有する潤滑部と、
吸込口及び吐出口を有し、潤滑剤を吐出するポンプと、
前記ポンプの前記吐出口から前記潤滑部の前記供給接続口に接続され、前記潤滑部に潤滑剤を供給する供給ラインと、
前記潤滑部の前記回収接続口から前記ポンプの前記吸込口に接続され、前記潤滑部から潤滑剤を回収する回収ラインと、有し、
前記回収ラインは、
流入口である第1接続ポート、一方の流出口である第2接続ポート、他方の流出口である第3接続ポートを有し、潤滑剤及び空気を分離する分岐部と、
前記潤滑部の前記回収接続口から前記分岐部の前記第1接続ポートに接続する第1の流路と、
前記分岐部の前記第2接続ポートから前記ポンプの前記吸込口に接続し、前記分岐部で分離した潤滑剤が通流する第2の流路と、有し、
前記分岐部の前記第3接続ポートは、前記分岐部で分離した空気が通流する第3の流路と接続され、
前記第1の流路、前記分岐部、前記第2の流路を含め、前記潤滑部の前記回収接続口から前記ポンプの前記吸込口までの区間は、大気圧よりも低圧であり、
前記供給ラインを含め、前記ポンプの前記吐出口から前記潤滑部の前記供給接続口までの区間は、大気圧よりも高圧である、
射出成形機。
【請求項2】
前記潤滑部は、外空間から空気が流入する空気流入部を有し、
前記第1の流路は、潤滑剤及び空気が通流する、
請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記第3接続ポートは、前記第3の流路を介して、前記第3の流路から吸い込んだ空気を吐出する吐出部と接続される、
請求項1または請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記分岐部は、
潤滑剤を貯留する貯留部を有する、
請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記回収ラインに潤滑剤を補充する潤滑剤補充部を更に有する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記潤滑剤補充部は、
潤滑剤の過不足を検出する過不足検出器を有し、
前記過不足検出器に基づいて、潤滑剤を補充する、
請求項5に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の駆動部は、潤滑部として潤滑される。
【0003】
特許文献1には、潤滑部から真空発生器で空気とともに潤滑剤を吸い込み、潤滑剤容器に供給する射出成形機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第2607048号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された射出成形機では、真空発生器からタンクに潤滑剤とともに空気を吹き出すため、タンクからミスト状となった潤滑剤が漏れ出て周囲を汚すおそれがあった。また、真空発生器から吹き出された潤滑剤に泡立ちが発生して、潤滑剤を再度使用する際に、潤滑剤の温度上昇やキャビテーションの発生などの潤滑性能が低下するおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、好適に潤滑部を潤滑する射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様の射出成形機は、前記摺動面を潤滑する潤滑剤が供給される供給接続口及び前記摺動面から回収された潤滑剤が排出される回収接続口を有する潤滑部と、吸込口及び吐出口を有し、潤滑剤を吐出するポンプと、前記ポンプの前記吐出口から前記潤滑部の前記供給接続口に接続され、前記潤滑部に潤滑剤を供給する供給ラインと、前記潤滑部の前記回収接続口から前記ポンプの前記吸込口に接続され、前記潤滑部から潤滑剤を回収する回収ラインと、有し、前記回収ラインは、流入口である第1接続ポート、一方の流出口である第2接続ポート、他方の流出口である第3接続ポートを有し、潤滑剤及び空気を分離する分岐部と、前記潤滑部の前記回収接続口から前記分岐部の前記第1接続ポートに接続する第1の流路と、前記分岐部の前記第2接続ポートから前記ポンプの前記吸込口に接続し、前記分岐部で分離した潤滑剤が通流する第2の流路と、有し、前記分岐部の前記第3接続ポートは、前記分岐部で分離した空気が通流する第3の流路と接続され、前記第1の流路、前記分岐部、前記第2の流路を含め、前記潤滑部の前記回収接続口から前記ポンプの前記吸込口までの区間は、大気圧よりも低圧であり、前記供給ラインを含め、前記ポンプの前記吐出口から前記潤滑部の前記供給接続口までの区間は、大気圧よりも高圧である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、好適に潤滑部を潤滑する射出成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2】一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図3】潤滑部のA-A断面図である。
図4】潤滑部における連結ピンとブッシュの潤滑構造を説明する断面模式図である。
図5】潤滑剤供給機構の一例を示す構成図である。
図6】分岐部の一例を示す断面模式図である。
図7】潤滑剤供給機構の他の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0012】
図1図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0013】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0014】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。
【0015】
型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取り付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取り付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0016】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0017】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開が行われる。
【0018】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0019】
尚、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0020】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0021】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0022】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0023】
尚、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0024】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0025】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0026】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0027】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0028】
尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0029】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0030】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0031】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0032】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0033】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0034】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0035】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0036】
尚、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0037】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0038】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0039】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0040】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0041】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0042】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。尚、複数の型厚調整機構が組合わせて用いられてもよい。
【0043】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0044】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0045】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0046】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0047】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取り付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0048】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820の内部に進退自在に配置される可動部材830と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、可動部材830と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0049】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0050】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材830を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、可動部材830を元の待機位置まで後退させる。
【0051】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0052】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0053】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される力を検出する圧力検出器360と、を有する。
【0054】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0055】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0056】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0057】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0058】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0059】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0060】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0061】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0062】
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0063】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0064】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0065】
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される力を検出する。検出した力は、制御装置700で圧力に換算される。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する力を検出する。
【0066】
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0067】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0068】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0069】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0070】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0071】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0072】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0073】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、圧力検出器360によって検出される。圧力検出器360の検出値が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、圧力検出器360の検出値が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、圧力検出器360の検出値が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0074】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0075】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0076】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0077】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0078】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0079】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0080】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0081】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0082】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0083】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0084】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0085】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0086】
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0087】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図1図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0088】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0089】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の終了は型開工程の開始と一致する。
【0090】
尚、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0091】
尚、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0092】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0093】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0094】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や表示画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネルは、制御装置700による制御下で、表示画面を表示する。タッチパネルの表示画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネルの表示画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の入力操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネルは、ユーザによる表示画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、表示画面に表示される情報を確認しながら、表示画面に設けられた入力操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが表示画面に設けられた入力操作部を操作することにより、入力操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネルに表示される表示画面の切り替え等であってもよい。
【0095】
尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネルとして一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0096】
射出成形機10は、複数の潤滑部を有している。ここでは、潤滑部の一例として、トグル機構150の潤滑部(連結部)40における潤滑構造について図3及び図4を用いて説明する。図3は、潤滑部40のA-A断面図である。図4は、潤滑部40における連結ピン50とブッシュ55の潤滑構造を説明する断面模式図である。なお、図4においては、図3における2つのブッシュ55のうちの一方のブッシュ55と連結ピン50のみを図示しており、第1リンク152を省略して図示している。また、図4は、連結ピン50の軸方向を紙面の左右方向としている。なお、連結ピン50の軸方向は、Y方向(図1参照)である。
【0097】
連結ピン50には、端面に供給接続口61が設けられており、供給接続口61から連結ピン50の軸方向に伸びる供給路62が設けられている。即ち、供給路62の一端は供給接続口61が設けられている。供給路62の他端側に連結ピン50の径方向に延びる複数の供給路63が設けられており、供給路63の他端側は連結ピン50の円周面に設けられた供給路開口部64で開口している。供給路開口部64は、連結ピン50の周方向に複数設けられている。
【0098】
なお、図3及び図4では、紙面の上方向及び下方向に延びる2つの供給路63が設けられている場合を例に示しているが、これに限られるものではない。供給路63は、例えば、供給路62から連結ピン50の円周面に向けて放射状に伸びるように設けられていてもよい。また、供給路開口部64は、連結ピン50の軸方向について、ブッシュ55の略中央に位置するように設けられている。
【0099】
また、供給路63の管径は、供給路63が垂直に起立した場合でも毛細管現象により供給路63の内部に潤滑剤を保持可能な管径であることが好ましい。即ち、供給路63の材質や表面特性、潤滑剤の特性、連結ピン50の外周面までの高さ等に基づいて、毛細管現象にて潤滑剤を供給路63の内部に保持可能な供給路63の管径(断面積)とすることが好ましい。このような構成とすることにより、供給ポンプ71(後述する図5参照)を停止した状態においても供給路63からの潤滑剤の流出を抑制することができる。また、供給ポンプ71を停止した状態において、上側の軸受隙間65に供給された潤滑剤が供給路63を介して下側の軸受隙間65に流れ出すことによる潤滑剤不足を抑制することができる。
【0100】
また、複数の供給路63のうちの少なくとも1本は、射出成形機10が型締力をかけた状態において、供給路開口部64が真上を向いていることが好ましい。このような構成とすることにより、連結ピン50に最も負荷のかかる型締時において、供給路開口部64から供給された潤滑剤が重力により連結ピン50の周方向の両方に流すことができるので好適に摺動面を潤滑することができる。
【0101】
また、複数の供給路63のうちの少なくとも1本は、トグル機構150のリンクが伸びきった状態において、供給路開口部64が真上を向いていることが好ましい。このような構成とすることにより、トグル機構150のリンクが伸びきった状態においても、供給路開口部64から供給された潤滑剤が重力により連結ピン50の周方向の両方に流すことができるので好適に摺動面を潤滑することができる。
【0102】
可動プラテン120の軸受121に圧入されるブッシュ55の内周面には、リング状の溝である収集溝66が形成されている。収集溝66は、連結ピン50の軸方向について、供給路開口部64を挟むように両外側に配置されている。
【0103】
2つの収集溝66の間において、ブッシュ55の内周面と連結ピン50の円周面との間には、潤滑剤が供給される軸受隙間65が形成される。また、収集溝66よりも軸方向の外側において、ブッシュ55の内周面と連結ピン50の円周面との間には、外側軸受隙間65Sが形成される。
【0104】
また、ブッシュ55の外周面には、2つの収集溝66をつなぐ凹部溝67aが設けられている。ブッシュ55が軸受121に圧入されることにより、この凹部溝67aと軸受121の軸受穴の内周面との間に、回収路67が形成される。
【0105】
ブッシュ55が圧入される軸受121には、軸受穴の内周面から外周面へと連通する回収路68が設けられている。回収路68の内周面側は回収路67に連通する。回収路68の外周面側は回収接続口69となる。なお、ブッシュ55を軸受121に圧入する際、回収路68の内周面側開口部がブッシュ55の凹部溝67aに面するように圧入することにより、回収路67と回収路68とを連通させることができる。
【0106】
次に、潤滑剤の流れについて説明する。供給接続口61から供給された潤滑剤は、矢印A1に示すように、供給路62を流れ、複数の供給路63に分岐して流れ、連結ピン50の円周面に形成された複数の供給路開口部64へと供給される。そして、供給路開口部64から供給された潤滑剤は、供給路開口部64からブッシュ55の内周面と連結ピン50の外周面との隙間である軸受隙間65を通り、収集溝66へと流れることで、ブッシュ55と連結ピン50の摺動面を潤滑する。
【0107】
真空発生器75(後述する図5参照)の動作により、収集溝66の内部は外空間よりも負圧となっている。このため、外側軸受隙間65Sには外空間から収集溝66へ向けての空気の流れが発生し、外側軸受隙間65Sにシール部材等を用いなくても、潤滑剤が外側軸受隙間65Sを介して外空間に流出することを防止することができる。
【0108】
そして、外空間から外側軸受隙間65Sを介して収集溝66に流入する空気は、矢印B1に示すように、回収路67、回収路68を通り、回収接続口69から潤滑剤とともに排出される。
【0109】
次に、射出成形機10の各潤滑部へ潤滑剤を供給する潤滑剤供給機構70について、図5を用いて説明する。図5は、潤滑剤供給機構70の一例を示す構成図である。
【0110】
ここでは、射出成形機10の潤滑部40(例えば、図3,4に示すトグル機構150の連結部)、潤滑部41~43を示す。なお、潤滑部40~43としては、例えば、ボールねじ、調整ナット、クロスヘッドのガイドバーの潤滑部などがある。
【0111】
潤滑部40~43に潤滑剤を供給する潤滑剤供給機構70は、供給ポンプ71と、定量バルブ72と、マニホルド73と、分岐部74と、真空発生器75と、を備えている。
【0112】
供給ポンプ71は、吸込口に流路85の他端が接続され、吐出口に流路81の一端が接続され、流路85から吸い込んだ潤滑剤を流路81に吐出する。流路81の他端は、定量バルブ72に接続される。
【0113】
定量バルブ72は、流路81の他端及び流路82a~82dの一端が接続される。潤滑剤は、流路81から定量バルブ72に流入し、各流路82a~82dへと流出する。定量バルブ72は、各流路82a~82dへ流れる潤滑剤の流量を調整する。各流路82a~82dの他端は、各潤滑部40~43の供給接続口と接続される。各潤滑部40~43の回収接続口には、流路83a~83dの一端がそれぞれ接続される。なお、潤滑剤供給機構70は、各潤滑部40~43へ供給する潤滑剤の流量を調整する潤滑剤流量調整部材として、定量バルブ72を備えるものとして説明するが、これに限られるものではない。潤滑剤流量調整部材は、抵抗式バルブやニードル式の流量調整バルブ等であってもよい。
【0114】
マニホルド73は、流路83a~83dの他端及び流路84の一端が接続される。
各潤滑部40~43の回収接続口から排出された潤滑剤及び空気は、流路83a~83dからマニホルド73に流入して合流し、流路84へと流出する。
【0115】
分岐部74は、流路84の他端、流路85の一端、流路86の一端が接続される。即ち、分岐部74は、流路84を介して潤滑部40~43と接続され、流路85を介して供給ポンプ71の吸込口と接続され、流路86を介して真空発生器75の吸込口と接続される。潤滑剤及び空気は、流路84から分岐部74に流入する。分岐部74に流入した潤滑剤は、流路85へと流出する。また、分岐部74に流入した空気は、流路86へと流出する。
【0116】
ここで、分岐部74の一例についてさらに説明する。図6は、分岐部74の一例を示す断面模式図である。分岐部74は、接続ポート74a,74b,74cを有する。なお、接続ポート74aには流路84の他端が接続され、接続ポート74bには流路85の一端が接続され、接続ポート74cには流路86の一端が接続される。
【0117】
例えば、接続ポート74bは、接続ポート74cよりも低い位置に設けられている。これにより、接続ポート74aから流入した潤滑剤及び空気は、分岐部74内で分離して、潤滑剤は接続ポート74bから排出され、空気は接続ポート74cから排出される。
【0118】
また、接続ポート74aから流入した潤滑剤及び空気を気液分離する分離部74dが設けられていてもよい。
【0119】
また、接続ポート74bの側には、分離した潤滑剤を貯留可能な空間(貯留部)74eを有していてもよい。
【0120】
図5に戻り、真空発生器75は、吸込口に流路86の他端が接続され、吐出口に流路87の一端が接続され、流路86から吸い込んだ空気を流路87に吐出する。
【0121】
このような構成により、潤滑剤供給機構70は、供給ライン(供給ポンプ71の吐出口、流路81、定量バルブ72、流路82a~82d、潤滑部40~43の供給接続口)を介して潤滑部40~43に潤滑剤を供給することができる。また、潤滑剤供給機構70は、回収ライン(潤滑部40~43の回収接続口、流路83a~83d、マニホルド73、分岐部74、流路85、供給ポンプ71の吸込み口)を介して潤滑部40~43から潤滑剤を回収することができる。このように、潤滑剤供給機構70は、潤滑剤の回路をクローズ回路とすることができる。
【0122】
また、潤滑部40~43で吸い込まれた空気は、潤滑部40~43の回収接続口、流路83a~83d、マニホルド73、分岐部74、流路86、真空発生器75、流路87を流れて射出成形機10の機外に排出される。
【0123】
潤滑剤供給機構70は、供給ライン及び回収ラインで形成される潤滑剤の回路をクローズ回路として形成することができる。換言すれば、潤滑剤供給機構70の供給ライン及び回収ラインは大気圧よりも高圧または低圧となっている。具体的には、流路81、定量バルブ72、流路82a~82dでは大気圧よりも高圧となっている。また、流路83a~83d、マニホルド73、流路84、分岐部74、流路85では大気圧よりも低圧となっている。また、流路86では大気圧よりも低圧となっている。また、流路87では大気圧よりも高圧となっている。
【0124】
このような構成により、潤滑剤供給機構70は、オイルミストが射出成形機10の機外に排出されることを抑制することができる。これにより、クリーンな射出成形機10とすることができる。例えば、射出成形機10の成形品がオイルミストに接することを防止することができる。
【0125】
また、潤滑剤供給機構70では、潤滑剤と空気を高圧で吹き出さないように構成されている。これにより、潤滑剤の泡立ちの発生を防止することができ、循環して再利用される潤滑剤の潤滑性能が低下することを防止することができる。
【0126】
換言すれば、潤滑剤供給機構70は、真空発生器75よりも上流に設けた分岐部74で潤滑剤と空気を分離させる。さらに換言すれば、潤滑剤供給機構70は、大気圧よりも低圧で潤滑剤と空気を分離させる。
【0127】
なお、潤滑剤供給機構70の構成は、図5に示すものに限られない。図7は、潤滑剤供給機構70Aの他の一例を示す構成図である。
【0128】
潤滑剤供給機構70Aは、供給ポンプ71よりも上流側に、潤滑剤を補充する潤滑剤補充部を有している。潤滑剤補充部は、例えば、潤滑剤タンク76と、流路88と、バルブ77と、を有する。潤滑剤タンク76には、潤滑剤が貯留されている。流路88は、一端が潤滑剤タンク76と接続され、他端が流路85と合流するように接続されている。バルブ77は、流路88に設けられている。バルブ77により、潤滑剤タンク76から流路85(供給ポンプ71の上流側)に補充する潤滑剤の量を調整することができる。
【0129】
このように、潤滑剤供給機構70Aでは、射出成形機10の長期間の運用により、消耗していく潤滑剤を補充することができる。
【0130】
また、潤滑剤補充部は、潤滑剤の過不足を検出して潤滑剤を補充する構成であってもよい。潤滑剤補充部は、過不足検出器78と、制御部79と、を有していてもよい。
【0131】
過不足検出器78は、潤滑剤供給機構70Aの潤滑剤の過不足を検出する。例えば、過不足検出器78は、流路85に設けられる流量センサとしてもよい。なお、過不足検出器78としては、これに限られるものではなく、供給ポンプ71から吐出される潤滑剤の圧力を検出する圧力センサ、供給ポンプ71の消費電力を検出するセンサ(電流センサ、電圧センサ)、潤滑部40~43の温度を検出する温度センサ、分岐部74の空間74eに貯留される潤滑剤のレベルメータ等を用いる構成であってもよい。
【0132】
制御部79は、過不足検出器78の検出結果に基づいて、バルブ77を制御する。
【0133】
このように、潤滑剤供給機構70Aでは、自動で潤滑剤を補充することができるように構成されていてもよい。
【0134】
以上、射出成形機10の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0135】
潤滑剤供給機構70,70Aにおいて、供給ポンプ71及び真空発生器75は、射出成形の際に常時駆動していてもよく、所定のショット数ごとに間欠駆動してもよい。また、供給ポンプ71及び真空発生器75は、同時に駆動してもよく、個別に駆動してもよい。また、供給ポンプ71が駆動する周期(ショット数)と真空発生器75が駆動する周期(ショット数)は、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、供給ポンプ71は1000ショットに1回の割合で潤滑部40~43に潤滑剤を供給し、真空発生器75は200ショットに1回の割合で潤滑部40~43から潤滑剤を回収してもよい。
【符号の説明】
【0136】
10 射出成形機
40~43 潤滑部
61 供給接続口
69 回収接続口
70,70A 潤滑剤供給機構
71 供給ポンプ
72 定量バルブ
73 マニホルド
74 分岐部
74a~74c 接続ポート
74d 分離部
74e 空間
75 真空発生器
76 潤滑剤タンク
77 バルブ
78 過不足検出器
79 制御部
81~88 流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7