(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】周波数安定化システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/24 20060101AFI20240520BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H02J3/24
H02J3/00 170
(21)【出願番号】P 2020066701
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 操
(72)【発明者】
【氏名】矢口 航太
(72)【発明者】
【氏名】石原 祐二
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-216510(JP,A)
【文献】特開2006-238526(JP,A)
【文献】特開平07-146921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/24
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に含まれる構成要素に関する情報を予め設定しておく設定部と、
送電線の有効電力を含む電力系統において計測された系統情報を収集する系統情報収集部と、
前記設定部により設定された情報と前記系統情報収集部により収集された系統情報とに基づき、事故と電源脱落の少なくとも一方を含む異常事態を検知後に、前記電力系統を複数の部分系統に分割するための系統分断点を決定する分断点生成部と、
前記分断点生成部の処理結果に従い電力系統内の遮断器を遮断状態にする分断実行部と、
を備える周波数安定化システム。
【請求項2】
前記系統情報は、前記送電線の伝送効率と、前記電力系統に含まれる発電機の発電量と、前記電力系統に含まれる負荷母線の負荷量とに関する情報を含み、
前記分断点生成部は、前記送電線の伝送効率と需給バランスとに基づいて、前記系統分断点を決定する、
請求項1に記載の周波数安定化システム。
【請求項3】
前記分断点生成部は、
前記部分系統の構成要素である一以上の発電機を含む発電機グループと、前記発電機グループとの間のインピーダンスが最小である負荷母線とにより構成される第1部分系統を決定し、決定した第1部分系統に分割するための系統分断点を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の周波数安定化システム。
【請求項4】
前記分断点生成部は、
前記第1部分系統に含まれるすべての発電機の発電量の総量と、前記第1部分系統に割り当てられたすべての負荷母線の負荷量の総量とを集計し、集計した発電量の総量と負荷量の総量とが近い値となるように、前記第1部分系統に属する負荷母線の割り付けを修正して第2部分系統を決定し、決定した第2部分系統に分割するための系統分断点を決定することを特徴とする請求項3に記載の周波数安定化システム。
【請求項5】
想定される異常事態の条件を予め設定しておく想定条件設定部と、
電力系統に含まれる構成要素に関する情報を予め設定しておく設定部と、
電力系統において計測された系統情報であって、送電線の有効電力を示す情報を含む系統情報を収集する系統情報収集部と、
前記設定部により設定された情報と前記系統情報収集部により収集された系統情報とに基づいて、一定の時間間隔で、前記想定条件設定部により設定された条件の異常事態が発生した場合における部分系統の構成案を策定し、策定した部分系統に分割するための系統分断点を決定する事前分断点策定部と、
事故と電源脱落の少なくとも一方を含む異常事態を検知した場合、検知した異常事態と合致する部分系統を、前記事前分断点策定部により策定された複数の部分系統の中から探し出す分断点決定部と、
前記分断点決定部が探し出した部分系統に分割するための系統分断点に従い電力系統内の遮断器を遮断状態にする分断実行部と、
を備える周波数安定化システム。
【請求項6】
想定される異常事態の条件を予め設定しておく想定条件設定部と、
電力系統に含まれる構成要素に関する情報を予め設定しておく設定部と、
電力系統において計測された系統情報であって、送電線の有効電力を示す情報を含む系統情報を収集する系統情報収集部と、
前記設定部により設定された情報と前記系統情報収集部により収集された系統情報とに基づいて、一定の時間間隔で、前記想定条件設定部により設定された条件の異常事態が発生した場合における部分系統の構成案を策定し、策定した部分系統に分割するための系統分断点を決定する事前分断点策定部と、
事故と電源脱落の少なくとも一方を含む異常事態を検知した場合、検知した異常事態と合致する部分系統を、前記事前分断点策定部により策定された複数の部分系統の中から探し出し、前記系統情報収集部により収集された前記異常事態が検知された後の系統情報に基づいて、前記探し出した部分系統に分割するための系統分断点を補正する分断点補正部と、
前記分断点補正部によって補正された系統分断点で分割された場合の部分系統ごとに総発電量と総負荷量とを収集し、収集したすべての部分系統の総発電量と総負荷量の差が小さくなるように発電機グループと負荷母線との組合せを補正の上、系統分断点を策定する部分系統補正部と、
前記部分系統補正部の演算結果である系統分断点に従い電力系統内の遮断器を遮断状態にする分断実行部と、
を備える周波数安定化システム。
【請求項7】
前記事前分断点策定部は、
前記部分系統の構成要素である一以上の発電機を含む発電機グループと、前記発電機グループとの間のインピーダンスが最小である負荷母線とにより構成される部分系統を決定し、決定した部分系統に分割するための系統分断点を決定することを特徴とする請求項5または6に記載の周波数安定化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、周波数安定化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統で大規模な電源脱落や系統分断が発生した際に、発電量と電力需要の均衡を図り、周波数を基本値付近(例えば、50Hzあるいは60Hz)に調整する周波数安定化システムには、不足周波数リレー(UFR)や過周波数リレー(OFR)、周波数変化率リレーで構成される分散制御方式がある。
【0003】
例えば、周波数安定化システムは、電力系統の周波数が予め設定された閾値を上回った(あるいは、下回った)経過時間が一定期間を超えると、発電機等の電源、または、電力需要(負荷)を遮断するものであり、周波数の閾値や設定時間を事前に調整しておくことで、周波数の状況によって複数の遮断対象が段階的に遮断される。
【0004】
しかしながら、このような周波数安定化システムでは、電源脱落などの系統事故をある程度想定し、想定条件において周波数の調整に必要な遮断対象を選定しているため、一部の発電機や負荷を遮断することで、電力系統全体の周波数を維持、安定化することが期待できる反面、想定を超える電源脱落や系統分断が発生した場合には遮断対象の不足などで周波数を維持できず、停電範囲が拡大する可能性があるという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】「電力系統安定化システム工学」電気学会 2014年2月5日 198頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、想定を超える電源脱落や系統分断が発生した場合にも停電範囲の拡大を抑制することができる周波数安定化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の周波数安定化システムは、設定部と、系統情報収集部と、分断点生成部と、分断実行部とを持つ。設定部は、電力系統に含まれる構成要素に関する情報を予め設定しておく。系統情報収集部は、送電線の有効電力を含む電力系統において計測された系統情報を収集する。分断点生成部は、前記設定部により設定された情報と前記系統情報収集部により収集された系統情報とに基づき、事故と電源脱落の少なくとも一方を含む異常事態を検知後に、前記電力系統を複数の部分系統に分割するための系統分断点を決定する。分断実行部は、前記分断点生成部の処理結果に従い電力系統内の遮断器を遮断状態にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の電力系統システム100Aの構成の一例を示す図。
【
図2】第1実施形態の分断点生成部32における処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図3】第1実施形態において生成される部分系統に所属する発電機と負荷母線との組み合わせの一例を示す図。
【
図4】電力系統の母線と送電線の一例を概念的に示した図。
【
図5】各母線の接続状態を行列で表した一例を示す図。
【
図6】第2実施形態の電力系統システム100Bの構成の一例を示す図。
【
図7】事前分断点策定部42における処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図8】第3実施形態の電力系統システム100Cの構成の一例を示す図。
【
図9】分断点補正部51における処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図10】分断点補正部51の処理によって系統分断点が補正される具体例を示した図。
【
図11】部分系統補正部52の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の周波数安定化システムを、図面を参照して説明する。以下の説明において、複数の同じ構成要素について、符号の末尾に「1」、「2」等の数値を、「-」(ハイフン)を介して付すことにより区別する。複数の同じ構成を互いに区別しない場合には、符号の末尾に「1」、「2」等の数値を「-」(ハイフン)を介して付すことを省略する。
【0010】
(第1実施形態)
[構成]
本実施形態は、周波数安定化の観点の下、大規模な電源脱落や系統分断等の事故が起きた後で、事後的に、発電機等の電源、または、電力需要(負荷)などの遮断対象を決定する。
図1は、第1実施形態の電力系統システム100Aの構成の一例を示す図である。電力系統システム100Aは、電力系統200Aと、この電力系統を制御対象とする周波数安定化システム300Aとを含む。電力系統200Aには、例えば、部分系統1(1-1、1-2、1-3、1-4…)と、部分系統1を相互に接続する送電線2(2-1、2-2、2-3、2-4…)および遮断器3(3-1、3-2、3-3、3-4…)とが含まれる。
【0011】
部分系統1は、例えば一つの電力系統の全体を、仮想的に複数個に分けたそれぞれの電力系統である。ここの例では部分系統1が4つある例について説明するが、これに限られない。なお全体系統は、例えば、同一の電力会社が管理するすべての電力系統であってもよく、同一の管理会社が管理するすべての電力系統であってもよい。
【0012】
部分系統1は、例えば、一以上の需要家、一以上の発電機、一以上の変電器、これらの構成要素を電力的に接続する母線、一以上の計測端末、および一以上の制御端末などを含む。なお、計測端末および制御端末は、一体的に構成される同一の装置であってもよい。また、計測端末および制御端末は、電力系統200Aに分散配置されており、部分系統1に含まれない構成でもよい。
【0013】
発電機は、太陽光、風力等の再生可能エネルギーによる電源、または火力機、原子力機、水力機等の同期機等化石燃料等の枯渇性エネルギーによって電力を発電する機器などを含む。変電器は、発電機により発電される電力の電圧を所定電圧に変圧する。
【0014】
計測端末は、例えば、発電機から母線を介して需要家に供給される電力に関する情報(以下、系統情報と称する)を計測する。例えば、計測端末は、母線に接続する送電線2により供給される電力等に関する電力情報や、送電線2等の接続状態を計測する。
【0015】
電力情報は、部分系統1の各構成要素(母線、変電器、発電機、情報端末、及び制御端末)、送電線2および遮断器3における電力の需給状態に関する情報である。また、電力情報には、送電線2や変電器の有効電力と無効電力、母線に印加される母線電圧などが含まれてもよい。接続情報には、送電線2と変電器との接続状態などに関する情報を含む。
【0016】
なお、系統情報は、例えば、電力系統200Aにおける各母線の電圧や位相角、送電線2の有効電力潮流や無効電力潮流、発電機の起動・停止情報、などの情報を含まれてもよい。
【0017】
制御端末は、周波数安定化システム300Aからの制御信号に応じて、遮断器3を制御し、部分系統1間において、発電機からの電力の供給の遮断を制御する。例えば、部分系統1-1に含まれる制御端末は、周波数安定化システム300Aからの制御信号に応じて、遮断器3-1、3-4を制御し、送電線2-1、2-4を介した電力の供給の遮断を制御する。
【0018】
送電線2は、遮断器3を介して、部分系統1同士を接続する。
【0019】
遮断器3は、部分系統1に含まれる発電機により発電される電力の需要家への供給を遮断することにより、部分系統1同士を遮断する。例えば、遮断器3-1は、部分系統1-1と部分系統1-2とを遮断する。
【0020】
周波数安定化システム300Aは、例えば、電力系統に含まれる部分系統1内の計測端末や遮断器3と、伝送系11を介して接続されており、各種情報の送受信を行う。伝送系11は、例えば、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット、専用回線、無線基地局、プロバイダなどのうちの一部または全部を含む。
【0021】
周波数安定化システム300Aは、例えば、系統情報収集部21と、設定部31と、分断点生成部32と、分断実行部33と、記憶部90とを含む。これら系統情報収集部21、設定部31、分断点生成部32、および分断実行部33の構成は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが、記憶部90に記憶されたプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。また、これらの構成要素の機能のうち一部または全部は、LSI、ASIC、FPGA等のハードウェア(回路部:circuitryを含む)によって実現されていてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されていてもよい。
【0022】
系統情報収集部21は、伝送系11を介して計測端末などから、様々な系統情報を収取する。例えば、系統情報収集部21は、予め設定された周期(例えば、1分)毎に、計測端末から系統情報を取得する。系統情報には、例えば、送電線2の有効電力、発電機の有効電力、送電線2および変圧器の通過電力、変電器の電圧、遮断器3の開閉状態などを示す情報が含まれる。
【0023】
系統情報収集部21は、取得した系統情報を、分断点生成部32に出力する。また、系統情報収集部21は、事故等が発生したことを示す異常検知情報を、例えば計測端末から取得し、分断点生成部32に出力する。
【0024】
設定部31は、系統分断点を決定するために必要な情報を予め設定しておく。設定部31は、設定した情報を記憶部90に格納する。例えば、設定部31は、構成に関する情報を設定する。構成に関する情報は、電力系統200Aに含まれる各構成要素に関する情報であり、例えば、電力系統200Aが有する送電線2のインピーダンスやインダクタンス、母線と送電線2の相互接続情報、電力系統200Aの各構成要素の規模や台数、配置等を示す情報を含む。
【0025】
また、設定部31は、各部分系統1に含まれる発電機の組み合わせ(以下、発電機グループと記す)を設定する。例えば、設定部31は、同じ県内の一以上の発電機を同一の発電機グループに設定してもよく、ある地域に存在する一以上の発電機を同一の発電機グループに設定してもよい。
【0026】
分断点生成部32は、系統情報収集部21により収集された系統情報と、設定部31により設定された情報を用いて、電力系統の分断点(以下、系統分断点と記す)を決定する。例えば、分断点生成部32は、系統情報収集部21が収集した系統情報(発電機有効電力、送電線および変圧器の通過電力、変電器の電圧、遮断器の開閉状態などを含む)と、設定部31により予め設定されている発電機グループに含まれる発電機名を示す情報などを用い、系統情報収集部21からの事故等が発生したことを示す異常検知情報を合図として、電力系統全体を複数の部分系統に分ける分断点を決定する。
【0027】
例えば、分断点生成部32は、発電機グループに対して、電気的な距離が近い負荷母線を割り付ける処理を実行した後、事故が発生した後の最新の発電量および負荷量に基づいて、需給バランスを図る観点の下、発電機グループに割り付けられている負荷母線を修正する。そして、分断点生成部32は、修正された割り付けに基づいて、電力系統の分断点を決定する。こうすることにより、発電機の総出力と負荷の総量とのバランス(需給バランス)をとることができる。詳細については、フローチャートを用いて後述する。
【0028】
分断実行部33は、分断点生成部32で決定した系統分断点に相当する遮断器3に遮断指令を送信して遮断器3を遮断状態にすることで、電力系統200Aを複数の部分系統1に分断する。なお、複数の部分系統1に分断された後の周波数調整や電圧調整は、従来技術である不足周波数(UF)リレーよる負荷制御や過周波数(OF)リレーによる電源制御、電圧無効電力制御(VQC)による変圧器タップ制御と調相設備の並解列などにより、安定な系統状態を維持する。
【0029】
[フローチャート]
図2は、第1実施形態の分断点生成部32における処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、分断点生成部32は、事故が発生した後、検知された事故発生に関する情報(異常検知情報)を受信すると、系統情報収集部21が収集した最新の各種系統情報を用いて、系統データを生成する(ステップS101)。
【0030】
次に、分断点生成部32は、生成した系統データに基づいて、設定部31によって予め設定されている発電機グループそれぞれに各負荷母線を割り付けた場合の結合指標を、発電機グループごとに算出する(ステップS102)。結合指標は、例えば、各発電機グループと各負荷母線との間のインピーダンス(以下、発電機グループごとインピーダンス)である。インピーダンスは、送電効率を示す情報であって、発電機グループと各負荷母線との電気的な距離が長くなる程、大きくなる。
【0031】
なお、ステップS102の処理において、発電機グループに複数の発電機が属する場合、分断点生成部32は、属する各発電機の端子それぞれに各負荷母線を割り付けた場合のインピーダンス(以下、発電機端子ごとインピーダンス)を発電機の端子ごとに算出する。分断点生成部32は、算出した複数の発電機端子ごとインピーダンスの中で最小のものを、発電機グループの結合指数に採用してもよいし、算出した複数の発電機端子ごとインピーダンスの平均値を、発電機グループの結合指数に採用してもよい。なお、負荷母線とは、生成した系統データにおいて、電力消費が設定されている母線のことである。
【0032】
次に、分断点生成部32は、例えば、各負荷母線にとって、算出した発電機グループごとインピーダンスが最小となる発電機グループを探し、該当する負荷母線と探索した発電機グループを同一の組とする(ステップS103)。例えば、分断点生成部32は、算出した複数の“発電機グループごとインピーダンス”のうち最小となる発電機グループに、負荷母線を対応付けることにより、発電機グループに対する負荷母線の割り付けを行う。結果として、
図3に示すような組み合わせが生成される。
【0033】
図3は、第1実施形態において生成される部分系統に所属する発電機と負荷母線との組み合わせの一例を示す図である。
図3において、発電機グループ番号に対応付けられた発電機名と負荷母線名との組み合わせが、それぞれ部分系統1に含まれる構成要素を示す。分断点生成部32は、
図3に示すように、一つ以上の発電機と一つ以上の負荷母線が含まれる複数のグループ、即ち、複数の部分系統に分割する案が生成される。結果の例は3つのグループ(部分系統)であるが、2つ以上のいくつであってもよい。
【0034】
次に、分断点生成部32は、総発電量と総負荷量とを部分系統ごとに集計する(ステップS104)。なお、総発電量とは、部分系統に含まれるすべての発電機(発電機グループに属するすべての発電機)の発電量の総量であり、総負荷量とは、部分系統に割り当てられたすべての負荷母線(発電機グループに割り当てられたすべての負荷母線)の負荷量の総量である。なお、集計に使用する各発電機の発電量や各負荷母線の負荷量は、系統情報収集部21で収集された異常発生(事故)後の最新値である。
【0035】
次に、分断点生成部32は、各部分系統の総発電量と総負荷量が近い値となるように、部分系統に属する負荷母線の割り付けを修正する(ステップS105)。このとき、分断点生成部32は、重要負荷の総量が多い部分系統から順に、負荷母線の割り付けを修正する。
【0036】
なお、修正の順番が遅い部分系統(重要負荷の総量が少ない部分系統)ほど、総発電量と総負荷量の均衡が取れにくくなる。このため、分断点生成部32は、順番が遅い部分系統に属する重要負荷を、需要負荷でない負荷母線に比べて、優先的に他の部分系統の候補に割り付けを変更する。割り付けを変更するとき、分断点生成部32は、複数の発電機グループのうち、発電機グループと負荷母線とのインピーダンスが小さい発電機グループを選ぶ。
【0037】
なお、ステップS103における負荷母線の割り付けにおいて、最もインピーダンスが小さい発電機グループに割り付けられている。このため、分断点生成部32は、割り付けを変更する場合は、まずインピーダンスが2番目に小さい発電機グループを対象とし、さらに割り付けの変更が必要な場合は3番目に小さい発電機グループを対象とする。
【0038】
最後に、分断点生成部32は、ステップS105で決定した部分系統を実現するために遮断が必要な遮断器(即ち系統分断点)を探索する(ステップS106)。この処理については、
図4,5を参照して詳細に説明する。
【0039】
以上のような分断点生成部32の処理により、発電量と負荷量が近く、且つ、発電機と負荷母線間のインピーダンスが小さくなるような負荷母線の割り付けが可能となり、電気的距離が近い発電機と負荷母線が組み合わされた部分系統に分断するための遮断箇所を決定することができる。
【0040】
本実施例によれば、両者間のインピーダンスが小さい発電機グループと負荷母線で部分系統が構成され、有効電力損失や無効電力損失が長距離送電の場合に比べて低減される上、総発電量と総負荷量の差が小さい部分系統となるため、周波数調整、即ち、発電量と負荷量の均衡が取りやすく、無効電力損失を補償するための機器も少なくて済む。よって、部分系統の安定な状態が維持しやすく、停電する範囲を小さくすることができる。
【0041】
また、事故が起きた場合、系統遮断点を遮断することにより各部分系統が独立するため、部分系統ごとの制御を実行することができる。また、事故が起きた場合でも負荷母線の割り付けを変更することにより、発電機グループに属する発電機は変わらないため、発電機グループごとの管理を変更せずにすむ。
【0042】
次に、
図4~5を参照して、分断点生成部32が系統分断点を探索する方法の一例について説明する。分断点生成部32は、どこの遮断器2を切断することにより、ステップS105により決定された発電機グループと負荷母線との組み合わせで部分系統を分離できるのかをトポロジーを見て決定する。
【0043】
図4は、電力系統の母線と送電線の一例を概念的に示した図である。
図4において、数字の入った丸は電力系統の母線を、直線は送電線を表す。例えば、
図4に示す点線で、電力系統を上下に分割する例について説明する。つまり、母線1-3を含む部分系統と、母線4-6を含む部分系統とに分断する系統分断点を決定する例である。
図5は、このときの各母線の接続状態を行列で表した一例を示す図である。
【0044】
図5における対角要素の1から6の数字は母線番号に対応している。非対角要素の-1は、対角要素が表す母線を接続する送電線が存在することを表し、非対角要素の0は、接続する送電線がないことを表す。そして、点線の四角は部分系統の範囲を表しており、この範囲から漏れている非対角要素のうち、-1となっている送電線が遮断点となる。即ち、母線1と母線4、母線2と母線6、母線3と母線6を接続する送電線が分断点である。
【0045】
(第2実施形態)
[構成]
本実施形態は、周波数安定化の観点の下、大規模な電源脱落や系統分断等の事故が起きる前に、事前に、発電機等の電源、または、電力需要(負荷)などの遮断対象を決定しておくシステムである。
図6は、第2実施形態の電力系統システム100Bの構成の一例を示す図である。なお、第1実施形態の電力系統システム100Aに含まれる構成と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0046】
電力系統システム100Bは、周波数安定化システム300Aに代えて、周波数安定化システム300Bを備える。周波数安定化システム300Bは、想定条件設定部41と事前分断点策定部42とが新たに設置されている点、分断点生成部32の代わりに分断点決定部43が設置されている点で、周波数安定化システム300Aと異なる。
【0047】
想定条件設定部41は、例えば、事故と電源脱落の少なくとも一方を含む異常(以下、事故等)の想定される異常事態の条件(以下、想定条件)を、予め設定しておく。この想定条件には、事故等の種類、事故等の場所の組み合わせなどが含まれ、例えば、事故等が起こり得る送電線2や発電機の番号や位置を示す情報などが含まれる。例えば、想定条件設定部41は、想定される事故等のケース(以下、想定事故ケース)を、数十個設定する。
【0048】
事前分断点策定部42は、設定部31により設定された情報と、想定条件設定部41により設定された想定条件とに基づいて、想定条件の事故等が発生した場合における部分系統の構成案(以下、事前策定された部分系統)を策定する。例えば、想定条件の事故等が発生した場合、発電機と負荷母線との接続経路が変化し、これに伴い発電機グループごとインピーダンスも変化することが考えられる。事前分断点策定部42は、想定条件の事故等が発生した場合の発電機グループごとインピーダンスを算出し、算出した発電機グループごとインピーダンスが各負荷母線にとって最小となる発電機グループを探し、該当する負荷母線と探索した発電機グループを同一の組とする。例えば、事前分断点策定部42は、想定事故ケースごとに、上述した
図3に示したような、部分系統に属する発電機と負荷母線との組み合わせを決定する。
【0049】
また、事前分断点策定部42は、上述の“事前策定された部分系統”に分割するための系統分断点(以下、事前策定された系統分断点)を決定してもよい。例えば、事前分断点策定部42は、分断点生成部32と同様にして系統分断点を決定する。具体的には、事前分断点策定部42は、系統情報収集部21により収集された直近の系統情報と、設定部31により設定された情報等を用いて、系統分断点を決定する。第1実施形態と異なる点は、分断点生成部32では事故等が発生したことを示す異常検知情報を合図として、電力系統全体を複数の部分系統に分ける分断点を決定しているのに対して、事前分断点策定部42では、事故等が発生していない状態において事故等が発生したと仮定して事前策定された部分系統の構成案を用いて、事故等が発生したときの系統分断点を、各想定事故ケースについて決定する点で異なる。
【0050】
分断点決定部43は、予め用意されている想定事故ケースのうち、リアルタイムに取得された収取情報によると、今起きている事故等は、どの想定事故ケースに最も近いのかを見つけて、見つけた最も近い想定事故ケースが発生したと仮定して事前策定された部分系統に分割するための系統分断点を見つける。具体的には、事故発生などの異常検知情報を受信すると、分断点決定部43が、事前分断点策定部42で策定した部分系統の構成案の中から、実際に発生した事故・電源脱落などの異常状態と一致するか、近いものを検索し、その部分系統の構成案に対応する遮断箇所を抽出する。
【0051】
例えば、分断点決定部43は、事故等の異常を検知した場合、事前分断点策定部42により事前策定された部分系統の中から、検知した異常事態と合致する部分系統(以下、事後合致する部分系統)を探し出す。合致とは、完全なる同一であってもよく、同一ではなくても類似しているものであってもよい。ここで、分断点決定部43は、事故等の異常が発生した場合、事故の内容を示す情報に基づいて、事前に想定されていた条件の事故等のうち実際に発生した事故等に合致する想定条件を探し出すことにより、事後合致する部分系統を策定する。これに限らず、発生した事故等の内容が不明である場合、分断点決定部43は、系統情報収集部21により収集された事故等が発生した後の収集情報に基づいて、想定条件のうちどの事故等が起きたのかを判断し、判断された想定条件に基づいて事前策定された部分系統を、事後合致する部分系統として探し出してもよい。
【0052】
分断実行部33は、分断点決定部43により決定された系統分断点に相当する遮断器3に遮断指令を送信して遮断器3を遮断状態にすることで、電力系統200Bを複数の部分系統1に分断する。
【0053】
[フローチャート]
図7は、実施形態の事前分断点策定部42における処理手順の一例を示すフローチャートである。事前分断点策定部42は予め設定された一定周期で、以下の処理が実施される。
【0054】
まず、事前分断点策定部42は、系統情報収集部21が収集した最新の系統情報を用いて、系統データを生成する(ステップS201)。系統データには、例えば、発電機と負荷母線とのインピーダンス、発電機の発電量、負荷母線の負荷量などが含まれる。
【0055】
次に、事前分断点策定部42は、生成した系統データを、想定条件設定部41により予め設定されている想定条件(想定事故ケース)のうちの1つを反映した形に系統データを変更する(ステップS202)。例えば、事前分断点策定部42は、事故等が発生していない状況における最新の系統情報に基づく系統データの一部あるいは全部を、想定事故ケースの事故等が発生した場合において推定される系統データに変更する。
【0056】
次に、事前分断点策定部42は、ステップS202において変更した系統データに基づいて、設定部31で予め設定しておいた発電機グループそれぞれに各負荷母線を割り付けた場合の結合指標を、発電機グループごとに算出する(ステップS203)。この処理内容は、上述した第1実施形態で説明したステップS102と同様である。
【0057】
事前分断点策定部42は、例えば、各負荷母線にとって、算出した発電機グループごとインピーダンスが最小となる発電機グループを探し、該当する負荷母線と探索した発電機グループを同一の組とする(ステップS204)。次に、事前分断点策定部42は、総発電量と総負荷量とを部分系統ごとに集計する(ステップS205)。そして、事前分断点策定部42は、各部分系統の総発電量と総負荷量が近い値となるように、部分系統に属する負荷母線の割り付けを修正する(ステップS206)。最後に、事前分断点策定部42は、ステップS206で決定した部分系統を実現するために遮断が必要な遮断器(即ち系統分断点)を探索する(ステップS207)。
【0058】
なお、ステップS204はステップS103と、ステップS205はステップS104と、ステップS206はステップS105と、ステップS207はステップS106と同様の内容である。
【0059】
事前分断点策定部42は、S202からS207までの処理を1つの想定条件(想定事故ケース)について実施したら、全想定条件の処理が完了したか確認する(ステップS208)。全想定条件の処理が完了していない場合、ステップS202に戻って、全想定条件が完了するまでステップS202からステップS207の処理を繰り返す。
【0060】
以上のような事前分断点策定部42の処理により、発電量と負荷量が近く、且つ、発電機と負荷母線間のインピーダンスが小さくなるような負荷母線の割り付けが可能となり、電気的距離が近い発電機と負荷母線が組み合わされた部分系統に分断するための遮断箇所を決定することができ、且つ、想定事故ケースごとに事前に部分系統の構成案を策定し、部分系統に分断するための遮断箇所の案も事前に策定することができる。
【0061】
本実施形態によれば、両者間のインピーダンスが小さい発電機グループと負荷母線で部分系統が構成され、有効電力損失や無効電力損失が長距離送電の場合に比べて低減される上、総発電量と総負荷量の差が小さい部分系統となるため、周波数調整、即ち、発電と負荷の均衡が取りやすく、無効電力損失を補償するための機器も少なくて済む。よって、部分系統の安定な状態が維持しやすく、停電する範囲を小さくすることができる。
【0062】
また、部分系統の構成案とその遮断箇所を事前に演算しておくことで、部分系統に分断するまでに要する時間が短くなり、追加で第二、第三の別の事故や電源脱落などが生じる可能性が低くなるので、分断後の部分系統における調整の難易度が低減できる。
【0063】
(第3実施形態)
[構成]
本実施形態は、大規模な電源脱落や系統分断等の事故等が起きる前に、事前に、想定事故ケースに基づいて遮断対象を決定しておく点で第2実施形態と共通するが、事前に策定された部分系統の構成案や系統分断点のずれを補正する点で異なる。例えば、事故等が起きた後の実際の事故等と想定事故ケースとが異なる場合や、実際の事故等と想定事故ケースとが合致しなくて一番近い想定事故ケースを選んだ場合には、特に有効である。
【0064】
図8は、第3実施形態の電力系統システム100Cの構成の一例を示す図である。なお、第1実施形態の電力系統システム100Aに含まれる構成と同一の構成には同一の符号を付し、第2実施形態の電力系統システム100Bに含まれる構成と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0065】
電力系統システム100Cは、周波数安定化システム300A等に代えて、周波数安定化システム300Cを備える。周波数安定化システム300Cは、分断点決定部43の代わりに分断点補正部51と部分系統補正部52とが設置されている点で、周波数安定化システム300Bと異なる。
【0066】
分断点補正部51には、事前分断点策定部42の処理結果が入力される。分断点補正部51は、事故等が発生したことを示す異常検知情報を系統情報収集部21から受信すると、系統情報収集部21の最新の系統情報を用いて、事前分断点策定部42の直近の処理結果である部分系統(事前策定された部分系統)の構成案とその遮断箇所(事前策定された系統分断点)を補正する。例えば、分断点補正部51は、事故等の異常を検知した場合、検知した異常事態と合致する部分系統を、事前分断点策定部42により策定された複数の部分系統の中から探し出し、系統情報収集部21により収集された事故等の異常が検知された後の系統情報に基づいて、探し出した部分系統に分割するための系統分断点に変更する。
【0067】
部分系統補正部52は、分断点補正部51の処理結果が入力される。部分系統補正部52は、分断点補正部51によって補正された系統分断点で分割された場合の部分系統ごとに総発電量と総負荷量とを収集し、収集したすべての部分系統の総発電量と総負荷量の差が小さくなるように発電機グループと負荷母線との組合せを補正することにより、補正された発電機グループと負荷母線との組み合わせで構成される部分系統に分割するような系統分断点を決定する。部分系統補正部52の処理結果が分断実行部33に入力されるように構成されている点である。
【0068】
こうすることで、事前想定された部分系統では、それぞれの需給バランスが悪くなかったが、事故等により分断されたことにより、発電機が無い部分系統が出現することになりうる。部分系統補正部52が、各部分系統が独立しているかどうかを判断することにより、このような事態を回避することができる。
【0069】
[フローチャート]
図9は、実施形態の分断点補正部51における処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この分断点補正部51による処理の前に、第2実施形態で説明したように事前分断点策定部42のよる処理が実行されている。
【0070】
まず、分断点補正部51は、事前分断点策定部42により事前策定された部分系統の構成案と事前策定された系統分断点の中から、実際に起きた事故等の状況に最も近いものを選出する(ステップS301)。分断点補正部51は、ステップS301で選出した部分系統の構成案で想定されていた事故等が、実際に発生した内容と差異がないか確認する(ステップS302)。差異がない場合、ステップS303以降の処理を実行せずに終了し、差異がある場合はS303以降の処理を実行する。
【0071】
次いで、分断点補正部51は、ステップS301で選出した部分系統の構成案に、実際に起きた事故等の情報を合成した形で部分系統の構成案を更新し、事前想定された部分系統の構成案で存在しなかった想定外の部分系統を把握する(ステップS303)。例えば、分断点補正部51は、更新された部分系統と事前策定された部分系統とを比較し、事前策定された部分系統には存在せずに、更新された部分系統に存在する部分系統を、想定外の部分系統として検出する。
【0072】
こうすることにより、実際に起きた事故等で分断されたことによりできた部分系統が、事前分断点策定部42により事前策定されていない場合や、実際に起きた事故等で分断された分断点が事前分断点策定部42により事前策定されていない場合、分断点補正部51は、実際の事故等により想定外の部分系統が存在していることを把握する。
【0073】
そして、分断点補正部51は、更新された部分系統の中に想定外の部分系統が存在するか否かを判定する(ステップS304)。想定外の部分系統が存在していない場合、ステップS305以降の処理を実行せずに終了し、想定外の部分系統が存在する場合、ステップS305以降の処理を実行する。
【0074】
次いで、分断点補正部51は、事前策定された部分系統のうちの一つを選択し、選択した部分系統の系統分断点を順次解除した場合に、想定外の部分系統が、選択した部分系統通りの部分系統と結合したか精査する(ステップS305)。分断点補正部51は、ステップS305の結果に基づいて、想定外の部分系統が、選択した部分系統と結合していたか否かを判定する(ステップS306)。想定外の部分系統が、選択した部分系統と結合していた場合、分断点補正部51は、当該系統分断点を解除し(ステップS307)、ステップS308に進む。一方、想定外の部分系統が、選択した部分系統と結合していない場合、分断点補正部51は、当該系統分断点を解除せず、ステップS308に進む。詳細については、
図10を参照して後述する。
【0075】
次いで、分断点補正部51は、事前分断点策定部42により事前策定された部分系統のすべてについて、ステップS305とステップS306で精査しているか確認する(ステップS308)。精査対象が残っていれば、ステップS305に戻り、精査対象が残っていなければ処理を終了する。
【0076】
図10は、分断点補正部51の処理によって系統分断点が補正される具体例を示した図である。
図10の上段では、分断点補正部51の処理前についての説明図を図示し、
図10の下段では、分断点補正部51の処理後についての説明図を図示する。
【0077】
例えば、分断点補正部51により事前想定された構成案では、部分系統A、部分系統B、部分系統C(部分系統C1と部分系統C2の合成)の3つに分離することが決められていたとする。しかし、想定外の事故分断点Cの発生により部分系統Cが、部分系統C1と部分系統C2とに分かれ、1つ多い4つの部分系統になったとする。この状況を、
図10の上段で表している。なお、系統分断点Aと系統分断点Bは、事前分断点策定部42により事前想定された構成案の通りの系統分断点のままである。
【0078】
分断点補正部51の処理では、部分系統C1が想定外に生じた部分系統であることを認識した上で、案通りの系統分断点A、系統分断点Bの順で分断を解除した場合を精査する。精査の結果、系統分断点Aを解除しても想定外の部分系統C1は残ったままなので、分断点補正部51は、系統分断点Aは解除しない。一方、系統分断点Bを解除したら部分系統C1は部分系統Bと結合するので、分断点補正部51は、系統分断点Bを解除することに決定する。この結果、部分系統A、新たな部分系統B´(部分系統Bと部分系統C1の合成)、部分系統C2の3つに再構成される。
【0079】
以上のように、想定条件設定部41で想定していた事故等の想定条件と、実際に発生した事故等の内容が異なっていた場合でも、想定外の部分系統のいくつかは、事前分断点策定部42により事前策定された部分系統の構成案に含まれるいずれかの部分系統に統合される。
【0080】
図11は、部分系統補正部52の処理手順を示すフローチャートである。まず、部分系統補正部52は、分断点補正部51で系統分断点が変更された部分系統を抽出する(ステップS401)。次に、部分系統補正部52、抽出された部分系統の総発電量と総負荷量を集計する(ステップS402)。部分系統補正部52は、総発電量と総負荷量の大小関係を判定する(ステップS403)。
【0081】
ステップS403の判定において総発電量<総負荷量であれば、部分系統補正部52は、総負荷量と総発電量の差(総負荷量-総発電量)に近い負荷母線近傍の送電線2または変圧器を探索して遮断対象に選定する(ステップS404)。
【0082】
ステップS403の判定において総発電量<総負荷量でなければ、部分系統補正部52は、総発電量と総負荷量の差(総発電量-総負荷量)に近い有効電力出力の発電機を探索して遮断対象に選定する(ステップS405)。分断点補正部51で分断点が変更された部分系統のすべてを対象として、部分系統補正部52は、ステップS402~ステップS405の処理を完了したら終了する。
【0083】
以上の処理によって、分断点補正部51で分断点が変更された部分系統の総発電量と総負荷量が近い値になるように遮断箇所が再選定される。
【0084】
本実施形態によれば、両者間のインピーダンスが小さい発電機グループと負荷母線で部分系統が構成され、有効電力損失や無効電力損失が長距離送電の場合に比べて低減される上、総発電量と総負荷量の差が小さい部分系統となるため、周波数調整、即ち、発電と負荷の均衡が取りやすく、無効電力損失を補償するための機器も少なくて済む。よって、部分系統の安定な状態が維持しやすく、停電する範囲を小さくすることができる。
【0085】
また、部分系統の構成案とその遮断箇所を事前に演算しておくことで、部分系統に分断するまでに要する時間が短くなり、追加で第二、第三の別の事故や電源脱落などが生じる可能性が低くなるので、分断後の部分系統における調整の難易度が低減できる。
【0086】
さらに、事前に演算した事故・電源脱落の想定条件と、実際に発生した事故・電源脱落が異なっていた場合にも、部分系統内の総発電量と総負荷量が近い状態に系統分断点を補正するので、部分系統の不安定な状態を回避することができる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
1…部分系統、2…送電線、3…遮断器、100A…電力系統システム、200A…電力系統、300A…周波数安定化システム、21…系統情報収集部、31…設定部、32…分断点生成部、33…分断実行部、90…記憶部