(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】操作ユニットおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
G03B 17/02 20210101AFI20240520BHJP
H01H 19/03 20060101ALI20240520BHJP
G05G 1/10 20060101ALI20240520BHJP
G05G 5/03 20080401ALI20240520BHJP
【FI】
G03B17/02
H01H19/03
G05G1/10 B
G05G5/03 B
(21)【出願番号】P 2020069902
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】水谷 将馬
(72)【発明者】
【氏名】三上 夏
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/107592(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0200375(US,A1)
【文献】特開2016-170886(JP,A)
【文献】特開2014-229468(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0085304(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02
H01H 19/03
G05G 1/10
G05G 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材と、
前記操作部材に設けられた歯車部と、
前記歯車部に噛合して回転可能な複数の歯車と、
前記複数の歯車のそれぞれ
の回転軸を中心に回転し、該回転軸に対して垂直方向の磁極を有するように配置された複数の磁石と、を有し、
前記複数の歯車は、ユーザによる前記操作部材の操作に応じて、前記複数の磁石の互いの吸着力が変化するように回転し、
前記歯車部は、前記操作部材の内周に配置された内歯車形状を有することを特徴とする操作ユニット。
【請求項2】
前記複数の歯車は、前記吸着力が第一の吸着力である状態から、前記第一の吸着力よりも弱い第二の吸着力である状態へ変化するように回転することを特徴とする請求項1に記載の操作ユニット。
【請求項3】
前記複数の歯車は、互いに噛合していないことを特徴とする請求項1または2に記載の操作ユニット。
【請求項4】
操作部材と、
前記操作部材に設けられた歯車部と、
前記歯車部に噛合して回転可能な複数の歯車と、
前記複数の歯車のそれぞれ
の回転軸を中心に回転し、該回転軸に対して垂直方向の磁極を有するように配置された複数の磁石と、を有し、
前記複数の歯車は、ユーザによる前記操作部材の操作に応じて、前記複数の磁石の互いの吸着力が変化するように回転し、
前記複数の歯車は、前記複数の磁石のそれぞれの
前記磁極の方向が互いに平行であるように回転することを特徴とする操作ユニット。
【請求項5】
前記操作部材は、固定部に対して回転可能に保持される回転操作部材であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の操作ユニット。
【請求項6】
前記歯車部は、前記操作部材の内周に配置された内歯車形状を有することを特徴とする請求項4に記載の操作ユニット。
【請求項7】
前記複数の歯車のうち、前記操作部材のユーザによる操作箇所に近い第一の位置に配置される歯車の個数は、前記操作箇所から前記第一の位置よりも遠い第二の位置に配置される歯車の個数よりも多いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の操作ユニット。
【請求項8】
前記複数の歯車のそれぞれの
前記回転軸は、前記操作部材の回転軸に関して回転対称な位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の操作ユニット。
【請求項9】
前記操作部材の前記歯車部の歯数は、前記複数の歯車の個数の整数倍であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の操作ユニット。
【請求項10】
前記複数の歯車の個数は3であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の操作ユニット。
【請求項11】
複数の検出部材を更に有し、
前記複数の検出部材は、前記複数の歯車の配置が面対称となる平面上、かつ前記操作部材の回転軸に関して回転対称な位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の操作ユニット。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の操作ユニットを有することを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが回転操作を行う回転操作部材を備えた操作ユニットおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の電子装置は、ダイヤル等の回転操作部材を回転操作することで、撮影条件の設定や機能の選択を行うことが可能である。また、回転操作部材として、ユーザが操作する際にクリック感を付与する操作部材が存在する。クリック感を付与することで、ユーザは、操作量を直感的に把握することができる。従来、クリック感の付与には、弾性部材とカムを用いた構成が一般的に用いられている。しかし、このような構成の操作部材は、弾性部材により付勢された金属球がカムを乗り超えるタイミングで操作音が生じる。静かな環境での撮影や動画撮影中には、操作部材の操作音も静音であることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、回転操作部材と一体的に回転し円周方向に多極着磁されたリング状の多極磁石と、固定磁石との間の吸着力と反発力を用いてクリック感を付与する構成が開示されている。このような構成によれば、クリック感が劣化しづらいだけでなく、より静音にクリック感を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された構成では、多極磁石と固定磁石との対向する極の関係が、吸着から反発を乗り越えて再び吸着になる間にクリック感が発生する。このため、一回のクリック感を発生させるには、回転磁石の二極分の回転が必要になる。すなわち、操作部材を一回転させる間に発生させるクリック数の倍の分極数を有する多極磁石が必要となる。その結果、操作部材が大型化する。
そこで本発明は、良好なクリック感を付与することが可能であって、小型で静音性に優れた操作部材を備えた操作ユニットおよび電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての操作ユニットは、操作部材と、前記操作部材に設けられた歯車部と、前記歯車部に噛合して回転可能な複数の歯車と、前記複数の歯車のそれぞれの回転軸を中心に回転し、該回転軸に対して垂直方向の磁極を有するように配置された複数の磁石とを有し、前記複数の歯車は、ユーザによる前記操作部材の操作に応じて、前記複数の磁石の互いの吸着力が変化するように回転し、前記歯車部は、前記操作部材の内周に配置された内歯車形状を有する。
【0007】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好なクリック感を付与することが可能であって、小型で静音性に優れた操作部材を備えた操作ユニットおよび電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1におけるデジタル一眼レフカメラの外観斜視図である。
【
図2】実施例1におけるダイヤル操作部の斜視図である。
【
図3】実施例1におけるダイヤル操作部の分解図である。
【
図4】実施例1におけるダイヤル操作部の断面図である。
【
図5】実施例1における第一の小歯車の構成図である。
【
図6】実施例1におけるダイヤル操作部の各位相の断面図である。
【
図7】実施例1におけるダイヤル操作部の操作トルクの変化の説明図である。
【
図8】実施例1における検出部の配置の説明図である。
【
図9】実施例1における検出部による検出波形を示す図である。
【
図10】実施例2におけるダイヤル操作部の各位相の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0011】
まず、
図1を参照して、本発明の実施例1における電子装置としてのデジタル一眼レフカメラ(カメラ100)の基本的な構造について説明する。
図1はカメラ100の外観斜視図であり、
図1(a)は正面から見た外観斜視図、
図1(b)は背面から見た外観斜視図をそれぞれ示す。
【0012】
図1(a)に示されるように、カメラ100は、撮像開始のスイッチであるシャッター釦70を有する。カメラ100の前面には、着脱可能な撮影レンズ(不図示)を取り付け可能なレンズマウント部60が設けられている。シャッター釦70の押下によって、撮影レンズを通した光束が撮像素子に導かれ、画像を撮影することができる。
【0013】
図1(b)に示されるように、カメラ100の背面部には、電源の起動および停止を行うための電源スイッチ10が設けられている。カメラ100は、着脱可能なバッテリーユニット(不図示)を備えている。電源スイッチ10をONすることで、バッテリーユニットから給電され、カメラ100は動作を開始する。カメラ100の背面上部には、ファインダ80が設けられており、撮像される領域が映し出される。背面中央に備えられた表示装置20は、TFT液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどであり、撮影画像や各種設定項目の確認を行うことができる。
【0014】
カメラ100は、各種釦に加え、サブダイヤル30、モードダイヤル40、およびメインダイヤル50などのダイヤル操作部(操作ユニット)を備えている。ダイヤル操作部は、時計回りおよび反時計回りに突き当たることなく回転可能な回転操作部であり、ダイヤルを回すことで、撮影モード、シャッター速度、およびレンズの絞り値などの各種設定値を変更することができる。
【0015】
次に、
図2乃至
図4を参照して、本実施例におけるダイヤル操作部の構成について説明する。
図2は、ダイヤル操作部の斜視図である。
図3は、ダイヤル操作部の分解図である。
図4はダイヤル操作部の構成図であり、
図4(a)はダイヤル操作部の側面図、
図4(b)は
図4(a)のA-A断面図をそれぞれ示す。なお本実施例において、ダイヤル操作部としてメインダイヤル50の構成を一例として説明するが、本実施例は他のダイヤル操作部にも適用可能である。
【0016】
まず、
図2乃至
図3を参照して、ダイヤル操作部の全体構成について説明する。ダイヤル操作部材(回転操作部材)501は、ユーザが操作するダイヤル部であり、回転軸50aを中心に回転する。ダイヤル操作部材501には、指で操作しやすいようにその外周に凹凸部(凹凸形状)501aが設けられている。また、ダイヤル操作部材501の内周には、内歯車形状を有する内歯車(歯車部)501bが設けられている。ダイヤル操作部材501は、固定部材としてのダイヤルベース部材502およびダイヤルカバー503により回転可能に保持される。ダイヤルベース部材502およびダイヤルカバー503は、ダイヤル操作部材501の他に、第一の小歯車504、第二の小歯車505、および第三の小歯車506の複数の歯車を回転可能に保持する。なお本実施例において、ダイヤル操作部は3つの歯車(小歯車)を有するが、これに限定されるものではなく、少なくとも2つの小歯車を有していればよい。小歯車の数は、ダイヤル操作部のサイズやクリック数に応じて適宜変更可能である。また本実施例において、は第一の小歯車504、第二の小歯車505、および第三の小歯車506は全て、同一の歯数かつ同一の形状を有するが、互いに異なる歯数や形状を用いてもよい。
【0017】
図4(b)に示されるように、第一の小歯車504、第二の小歯車505、および第三の小歯車506はそれぞれ、ダイヤル操作部材501の内歯車501bに噛合するように配置され、ダイヤル操作部材501に同期して回転する。また、第一の小歯車504、第二の小歯車505、および第三の小歯車506は、互いに噛合していない。内歯車501bの歯数は、小歯車の数の整数倍となっている。例えば本実施例において、3個の小歯車を使用しているため、内歯車501bの歯数は3の倍数である30である。これにより、第一の小歯車504、第二の小歯車505、および第三の小歯車506を同一の形状で構成した場合でも、内歯車501bに噛合させた際に同一の位相に配設でき着磁方向をそろえることができるため、安定した吸着力を生じさせることが可能である。加えて、第一の小歯車504、第二の小歯車505、および第三の小歯車506を同一の形状で作成可能であるため、マスメリットによるコストダウンが期待できる。
【0018】
ユーザがダイヤル操作部材501を操作する際、
図4(b)中のX方向およびY方向のように、ユーザの指999でダイヤル操作部材501の凹凸部501aをY方向に押さえてからX方向(回転方向)にスライドさせることで、ダイヤル操作部を回転操作する。このとき、スライド動作は回転によって受け流されるが、Y方向への負荷はZ1方向、Z2方向のように内歯車501bを介して第一の小歯車504と第二の小歯車505の歯面に加わる。
【0019】
本実施例において、複数の小歯車のうち、ダイヤル操作部材501のユーザによる操作箇所に近い第一の位置に配置される小歯車の個数は、ユーザによる操作箇所から第一の位置よりも遠い第二の位置に配置される小歯車の個数よりも多い。より具体的には、3つの小歯車のうち2つの小歯車(第一の小歯車504および第二の小歯車505)が第一の位置に配置され、1つの小歯車(第三の小歯車506)が第二の位置に配置されている。このように複数の小歯車のうち過半数の小歯車(第一の小歯車504および第二の小歯車505)を指999の押下側に配置することで、負荷を効果的に分散することができ、操作中の歯車の耐力を向上させることができる。
【0020】
次に、
図5を参照して、第一の小歯車504の構成について説明する。
図5は第一の小歯車504の構成図であり、
図5(a)は第一の小歯車504の斜視図、
図5(b)は
図5(a)のC面で第一の小歯車504をカットした断面図である。なお、第二の小歯車505および第三の小歯車506は、第一の小歯車504と同様の構成を有するため、それらの説明を省略する。
【0021】
図5(a)に示されるように、第一の小歯車504には、歯車部504bおよび磁石504cが設けられており、回転軸504aを中心に回転する。磁石504cは、
図5(b)に示されるように、回転軸504aに対して垂直方向の磁極を有する。磁石504cは、第一の小歯車504に挿入された後、接着穴504dに接着剤を流し込むことで、第一の小歯車504に接着される。なお、磁石504cの固定方法は接着に限定されるものではなく、例えば第一の小歯車504と磁石504cとを一体部品として成形してもよい。歯車部504bの歯数については、他の小歯車に干渉しない範囲で自由に設定することができる。
【0022】
次に、
図6を参照して、本実施形態におけるダイヤル操作部(メインダイヤル50)の動作について説明する。
図6は、ダイヤル操作部(メインダイヤル50)の各位相の断面図であり、
図4(a)中のB-B断面図に相当する。
図6では、メインダイヤル50の状態(回転位置)を6つの位相(Phase A~Phase F)に分け、それぞれの位相における第一の小歯車504~第三の小歯車506の磁極の状態を示す。Phase A~Phase Fを経て、再びPhase Aまで回転することで、第一の小歯車504、第二の小歯車505、および第三の小歯車506はそれぞれ1回転する。
【0023】
初期状態の位相をPhase Aとする。Phase Aでは、第一の小歯車504に設けられた磁石504cのS極と第二の小歯車505に設けられた磁石505cのN極とが吸着し合っている。これにより、第一の小歯車504および第二の小歯車505は自由回転せず、現位相に留まろうとする力が生じる。それぞれの小歯車は、ダイヤル操作部材501に設けられた内歯車501bに噛合しているため、ダイヤル操作部材501にも現状の位相に留まる力が働き、ダイヤル操作部材501の位相が保持される。Phase Aにおいて、第三の小歯車506の磁石506cは、磁石504cと磁石505cとは近接しておらず、有意な力は働いていない。
【0024】
Phase Aにおいて、磁石504cと磁石505cとの間で生じる吸着力以上の力でダイヤル操作部材501を操作することで、メインダイヤル50は回転する。例えば、CW方向(時計回り方向)に回転操作すると、歯車の噛み合いにより、第一の小歯車504、第二の小歯車505、および第三の小歯車506も同様の方向(CW方向)に回転し、Phase AからPhase Bへ移行する。Phase Bでは、磁石504cのS極と磁石506cのN極とが吸着することで、Phase Aと同様に現位相に留まろうとする保持力が生じる。
【0025】
同様に、ダイヤル操作部材501の回転操作を続けると、Phase C、Phase D、・・・と順に位相が変化する。Phase Cでは、磁石505cのS極と磁石506cのN極とが吸着する。Phase Dでは、磁石504cのN極と磁石505cのS極とが吸着する。Phase Eでは、磁石504cのN極と磁石506cのS極とが吸着する。Phase Fでは、磁石505cのN極と磁石506cのS極とが吸着する。
【0026】
図6に示されるように、本実施例において、第一の小歯車504、第二の小歯車505、および第三の小歯車506は、磁石504c、505c、506cのそれぞれの磁極の方向が互いに平行である(全ての位相において平行である)ように回転する。
【0027】
次に、
図7を参照して、操作中のダイヤル操作部材501の回転トルク(操作トルク)と角度との関係について説明する。
図7は、ダイヤル操作部の操作トルクの変化の説明図である。
図7において、横軸は角度、縦軸はトルク(回転トルク、操作トルク)をそれぞれ示す。
【0028】
各位相において、いずれかの磁石同士が吸着し、その位相に留まろうとする保持力を生じるため、回転操作中には離散的な抵抗感が生じる。また、例えばPhase AからPhase Bに移行する際、磁石504cと磁石505cの吸着力が弱まり、磁石504cと磁石506cの吸着力が生じ始めると、Phase Aに留まろうとする抵抗感は消失し、Phase Bに引き込もうとする力が生じる。
図7のトルクでマイナスの値が生じている箇所が引き込み力を表す。抵抗と引き込みとが交互に生じることで、操作力が変化し、良質なクリック感が生じる。
【0029】
図7のRange Aは、小歯車1回転あたりの角度域を表し、Phase A~Phase Fまで位相が回転するため、6回クリック感が生じる。また内歯車501bが1回転する際の第一の小歯車504、第二の小歯車505、および第三の小歯車506のそれぞれの回転数を減速比Nとすると、ダイヤル操作部のクリック数は、以下の式で表される。
【0030】
ダイヤル操作部のクリック数=(小歯車1回転毎のクリック数)×(減速比N)
本実施例において、内歯車501bの歯数は30、第一の小歯車504、第二の小歯車505、および第三の小歯車506のそれぞれの歯数は12である。このため、減速比Nは、以下のように算出される。
【0031】
減速比N=30/12=2.5
また本実施例において、メインダイヤル50の1回転あたりのクリック数は、6×2.5=15となる。前述のように、操作性を向上させるためにクリック数を多くするには、小歯車1回転あたりのクリック数を多くし、かつ減速比を小さく設定することが重要である。本実施例において、複数の小歯車(第一の小歯車504、第二の小歯車505、第三の小歯車506)のそれぞれの回転軸504a、505a、506aは、ダイヤル操作部材501の回転軸50aに関して回転対称に配置されている。このような配置により、複数の小歯車の互いの距離を等しくすることができるため、小歯車の個数以上である6クリックを生じさせることができる。なお、複数の小歯車が他の個数である場合については、実施例2で後述する。
【0032】
次に、
図8を参照して、ユーザがダイヤル操作部材501を操作した際の操作方向および操作量を検出する検出部に関して説明する。
図8は、ダイヤル操作部(メインダイヤル50)における検出部の配置の説明図であり、
図4(a)中のB-B断面図に相当する。
図8は、
図6のPhase Fの状態から小歯車が時計回りに30度回転した状態(Phase Aの状態から小歯車が半時計周りに30度回転した状態)を示している。破線P1、P2、P3は、メインダイヤル50の回転軸50aを通る平面(を投影した直線)を示し、第一の小歯車504、第二の小歯車505、および第三の小歯車506は、平面P1、P2、P3に対し面対称となるようにそれぞれ配置されている。
【0033】
本実施例において、ダイヤル操作部材501の操作方向および操作量を検出する検出部として、第一の検出部材507および第二の検出部材508を有する。第一の検出部材507および第二の検出部材508は、ホール素子である。第一の検出部材507は平面P1上に配置され、P1方向の磁束密度を検出することができる。第二の検出部材508は、平面P2上に配置され、P2方向の磁束密度を検出することができる。
【0034】
次に、
図9を参照して、第一の検出部材507および第二の検出部材508により検出される出力波形について説明する。
図9は、ダイヤル操作部材501が時計回り方向(CW方向)に回転操作された際に、第一の検出部材507および第二の検出部材508による検出波形である。
図9において、横軸は小歯車(ダイヤル操作部材501)の回転角度を示し、Range Bが小歯車1回転分の範囲に相当する。縦軸は、第一の検出部材507および第二の検出部材508の出力値(例えば、磁束密度に応じた電圧値)を示す。
図9中の実線で示される波形511は第一の検出部材507の出力波形、破線で示される波形512は第二の検出部材508の出力波形をそれぞれ示す。
図6に示されるPhase A~Phase Fの6つの状態における第一の検出部材507の出力値は、
図9中の点511a~511fにそれぞれ対応する。
図8に示される状態における第一の検出部材507の出力値は、
図9の点511gに対応する。第二の検出部材508は、ダイヤル操作部材501の回転軸50aを中心軸として、第一の検出部材507に対して120度回転させた位置に配置されている。このため波形512は、波形511と同じ形状で、小歯車の回転角度にして120度分位相のずれた波形となる。
【0035】
図8に示されるように2つの検出部材(第一の検出部材507および第二の検出部材508)を配置することで、
図9に示されるような位相のずれた2つの同じ形状の波形を得ることができる。そして、2つの波形の位相のずれに基づいて、小歯車の回転方向、すなわちメインダイヤル50(ダイヤル操作部材501)の回転方向を検出することができる。また、波形511、512(アナログ出力)に基づいて、小歯車(ダイヤル操作部材501)の回転量を検出することができる。
【0036】
検出部材は、3つの小歯車の全ての磁石により形成される磁界の影響を受けるため、
図8中の平面P1、P2、P3以外の位置に配置すると、検出部材の出力波形が不均一になり、ダイヤル操作部材501の回転方向によって検出タイミングがずれる可能性がある。このため本実施例において、第一の検出部材507および第二の検出部材508は、対称面である平面P1、P2、P3上で、回転軸50aに対し回転対称な位置に配置することが好ましい。本実施例では、メインダイヤル50の構成上、スペース的に配置しやすいように、
図8に示される第一の検出部材507および第二の検出部材508の位置に配置している。ただし本実施例は、これに限定されるものではなく、平面P1、P2、P3上(複数の歯車の配置が面対称となる平面上)で、ダイヤル操作部材501の回転軸50aに関して回転対称な位置であれば、他の場所に配置してもよい。例えば、
図8の点510a、510b、510cに配置しても対称性の良い波形を検出することができる。
【0037】
ホール素子を用いた非接触な回転検出を行うことにより、接触を伴う検出構成(例えば金属パターンと金属接片ブラシを使った回転検出)に比べ、メインダイヤル50を操作した際の操作音をより静音化することができる。これにより、動画撮影中にメインダイヤル50を操作して各種設定値の変更を行ったとしても、操作音が動画に入ってしまうことがない。また、コンサートホール等の静かな空間での撮影においても、ユーザは操作音を気にすることなく操作することができる。また、非接触であるため、耐久性の向上も見込まれる。
【0038】
非接触な回転検出方法として、ロータリーエンコーダなど他の手段が挙げられるが、クリック感を発生させるための小歯車の磁石を利用して回転検出を行うことにより、新たに別に検出機構を設けるよりコストを抑えることができる。
【実施例2】
【0039】
次に、本発明の実施例2における操作ユニットとしてのダイヤル操作部(メインダイヤル250)について説明する。なお、メインダイヤル250以外のカメラの構成は、実施例1のカメラ100と同じである。また本実施例は、メインダイヤル250以外のダイヤル操作部にも適用可能である。
【0040】
図10を参照して、本実施形態におけるダイヤル操作部(メインダイヤル250)の動作について説明する。
図10は、ダイヤル操作部(メインダイヤル250)の各位相の断面図(回転軸に垂直な平面における断面図)である。
【0041】
図10に示されるように、メインダイヤル250は、第一の小歯車2504、第二の小歯車2505、第三の小歯車2506、および第四の小歯車2507の4つの小歯車を備える。
図10では、メインダイヤル250を回転させた状態を4つの位相(Phase Q~Phase T)に分け、それぞれの位相における小歯車の磁石の向き(磁極の方向)を示している。Phase Q~Phase Tを経て、再びPhase Qまで回転することで、4つの小歯車はそれぞれ1回転する。
【0042】
Phase Qでは、第一の小歯車2504に設けられた磁石のN極と第四の小歯車2507に設けられた磁石のS極とが吸着し合っている。同時に、第二の小歯車2505に設けられた磁石のN極と第三の小歯車2506とが吸着し合っている。これにより、第一の小歯車2504~第四の小歯車2507の4つの小歯車は自由回転せず、現在の位相に留まろうとする力が生じる。それぞれの小歯車はダイヤル操作部材(回転操作部材)2501に設けられた内歯車形状に噛合しているため、ダイヤル操作部材2501にも現状の位相に留まる力が働き、ダイヤル操作部材2501の位相が保持される。
【0043】
Phase Qにおいて、第一の小歯車2504と第四の小歯車2507の間に作用する吸着力と、第二の小歯車2505と第三の小歯車2506の間に作用する吸着力との合力以上の力でメインダイヤル250を操作するとメインダイヤル250は回転する。例えば、時計回り方向(CW方向)に回転操作すると、歯車の噛み合いにより4つの小歯車も同様の方向(CW方向)に回転し、Phase QからPhase Rへ移行する。Phase Rでは、第一の小歯車2504の磁石のS極と第二の小歯車2505の磁石のN極とが吸着し合っている。同時に、第三の小歯車2506の磁石のN極と第四の小歯車2507の磁石のS極とが吸着し合っている。これにより、Phase Qと同様に、ダイヤル操作部材2501に対し、現在の位相に留まろうとする保持力が生じる。
【0044】
同様に、回転操作を続けると、Phase S、Phase Tと順に位相が変化する。各位相では、向かい合う2組の小歯車の磁石の間に吸着力が作用する。小歯車1回転につきPhase Q~Phase Tまで位相が回転するため、小歯車が1回転すると4クリック生じる。第1の実施例のように小歯車を3つ設ける場合に比べ、小歯車が1回転する間に発生するクリック数は少なくなるが、2組の磁石で吸着力が作用する分、1クリック毎のクリック感を強化することができる。
【0045】
小歯車の数が5個以上の場合においても同様に、ダイヤル操作部材の回転軸に対して回転対称に小歯車を配置することで、クリック感を発生させることができる。ただし、小歯車が4個以上の場合に発生するクリック数は、小歯車の個数と同じである。小歯車の個数が4個以上でかつ偶数の場合、吸着力が作用し合う1組の小歯車に加え、ダイヤルの回転軸に対して2回対称(回転軸に垂直な断面で見ると点対称)な位置の2つの小歯車の間にも吸着力が作用するため、計2組の小歯車で吸着力が発生する。このため、小歯車の個数が4個以上かつ奇数の場合に比べ、1クリック毎のクリック力を強化することができる。
【実施例3】
【0046】
次に、
図11を参照して、本発明の実施例3について説明する。本実施例は、コンピュータ操作に使用するマウスのホイールに関する。
図11は、本実施例におけるマウス300の斜視図である。
【0047】
図11に示されるように、マウス300にはホイール(操作ユニット)350が設けられ、その一部が本体301から露出しており、ユーザが操作できるように構成されている。なお、ホイール350の構成は、実施例1にて説明したメインダイヤル50の構成と同様である。ユーザは、人差し指によってホイール350を操作することで、コンピュータのアプリケーションにおいて、パラメータ調整やスクロース操作、表示倍率の拡大・縮小などを行う。
【0048】
パラメータの調整など操作量に正確性が要求される操作では、ユーザに対するフィードバックとしてクリック感が重要となる。また、携帯用の小型なマウスの場合、ホイール350自体も小型であることが求められる。また、コンピュータ操作においてホイール350は頻繁に操作する操作ユニット(回転操作ユニット)の一つであるため、ホイール350を1回転させた際のクリック数は多い方が、必要な回転量が少なくなりユーザへの操作負荷が軽減される。
【0049】
長い文書のスクロールなどある程度の回転量が必要となる操作の場合、ホイール350を操作した際に発生する操作音は静かであることが求められる。また、耐久性も必要となる。このため本実施例のホイール350は、良好なクリック感を付与でき、小型で静音性に優れた操作部材であるため、前述の要求機能を満たすことができる。
【0050】
以上のように、各実施例において、操作ユニットは、操作部材(ダイヤル操作部材)と、操作部材に設けられた歯車部(内歯車)と、歯車部に噛合して回転可能な複数の歯車(小歯車)と、複数の歯車のそれぞれに対応して配置された複数の磁石とを有する。複数の歯車は、ユーザによる操作部材の操作に応じて、複数の磁石の互いの吸着力が変化するように回転する。好ましくは、複数の歯車は、吸着力が第一の吸着力である状態から、第一の吸着力よりも弱い第二の吸着力である状態へ変化するように回転する。
【0051】
各実施例によれば、良好なクリック感を付与することが可能であって、小型で静音性に優れた操作部材を備えた操作ユニットおよび電子機器を提供することができる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
50 メインダイヤル(操作ユニット)
501 ダイヤル操作部材(操作部材)
501b 歯車部
504 第一の小歯車(歯車)
504a 磁石
505 第二の小歯車(歯車)
505a 磁石
506 第三の小歯車(歯車)
506a 磁石