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特許7490436駆動システム、リソグラフィ装置および物品の製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】駆動システム、リソグラフィ装置および物品の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/064 20160101AFI20240520BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240520BHJP
   H02K 41/02 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H02P25/064
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H02K41/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020074809
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2021175212
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】北 直樹
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-333884(JP,A)
【文献】特開2006-211873(JP,A)
【文献】特開2010-136550(JP,A)
【文献】特開2001-218497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/064
G03F 7/20
H02K 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と可動子とを含むモータと、
記固定子と前記可動子の相対位置を検出する位置検出部と、
前記相対位置に応じた基準となる磁束密度情報を取得する取得部と、
前記相対位置に応じた実際の磁束密度情報を測定する測定手段と、
前記モータの駆動を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記基準となる磁束密度情報の大きさが所定の設定値と一致する時の相対位置である1相対位置と、前記測定手段によって測定された磁束密度情報の大きさが前記所定の設定値と一致する時の相対位置である2相対位置との差を、前記測定された磁束密度情報が一周期変化する期間において複数回取得し、
複数設定された前記所定の設定値それぞれについて取得した複数の前記差に基づいて、前記モータの駆動を制御する、
とを特徴とする駆動システム。
【請求項2】
前記固定子は複数のコイルを含み前記可動子は複数の永久磁石を含むことを特徴とする請求項1記載の駆動システム。
【請求項3】
前記固定子は複数の永久磁石を含み前記可動子は複数のコイルを含むことを特徴とする請求項1記載の駆動システム。
【請求項4】
前記基準となる磁束密度情報は、可動子または固定子の磁石ピッチと相対位置から求められる値であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載の駆動システム。
【請求項5】
前記測定された磁束密度情報は、可動子を動かしたときに得られる逆起電圧に基づいて決定されることを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の駆動システム。
【請求項6】
前記可動子を動かすための他のモータを更に有し、前記制御手段は、前記モータと前記他のモータを同時に駆動することによって所定の対象を同じ方向に移動させることを特徴とする請求項5に記載の駆動システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記モータを駆動することによって前記他のモータの可動子を動かしたときに得られる逆起電圧に基づき前記他のモータの磁束密度情報を測定することを特徴とする請求項6に記載の駆動システム。
【請求項8】
前記磁束密度情報は磁束に対応した電圧値であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の駆動システム。
【請求項9】
前記所定の設定値は0を含む前記基準となる磁束密度情報及び前記測定された磁束密度情報の振幅内の所定の設定値であることを特徴とする請求項1~8いずれか1項に記載の駆動システム。
【請求項10】
前記制御手段は、前記基準となる磁束密度情報と前記測定された磁束密度情報の振幅を揃えた状態で前記差を取得することを特徴とする請求項1~9いずれか1項に記載の駆動システム。
【請求項11】
前記制御手段は複数回のそれぞれの差に基づいて、前記モータの駆動電流を制御することを特徴とする請求項1~10いずれか1項に記載の駆動システム。
【請求項12】
前記制御手段は複数回のそれぞれの差に基づいて、前記モータのコイルの切り替えタイミングを制御することを特徴とする請求項1~9いずれか1項に記載の駆動システム。
【請求項13】
原版のパターンを基板に形成するリソグラフィ装置であって、前記基板を保持するステージと、前記ステージを駆動する請求項1~1のいずれか1項に記載の駆動システムと、を備えることを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項14】
原版のパターンを基板に形成するリソグラフィ装置であって、前記原版を保持するステージと、前記原版を保持するステージを駆動する請求項1~1のいずれか1項に記載の駆動システムと、を備えることを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項15】
請求項1または1に記載のリソグラフィ装置を用いて基板にパターンを形成する工程と、前記基板に形成されたパターンに基づき、前記基板から物品を製造する工程と、を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動システム、リソグラフィ装置および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを正確に駆動するためには、可動子または固定子が発生させる磁束密度の空間分布に合わせた電流指令値を与えなければならない。しかし、電流指令値が参照する位置検出部の値を元に計算された磁束密度と可動子または固定子が実際に発生させる磁束密度には誤差が生じる。
【0003】
この誤差を低減させるため特許文献1、2には、計算上の磁束密度がゼロとなる位置と測定した磁束密度がゼロとなる位置との差を求めて位置検出部の値または電流指令値を補正するシステムが開示されている。特許文献1,2では磁束密度の代わりに磁束密度に比例するモータの逆起電圧を測定して、磁束密度がゼロになる位置を算出することで位置検出部の値または電流指令値を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3765287号公報
【文献】特開2008-178237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
即ち、特許文献1、2では駆動域全体または磁束が一周期変化する中で計算上の磁束密度がゼロとなる位置と測定した磁束密度がゼロとなる位置との差を求めて位置検出部の値または電流指令値を補正している。しかしながら、従来方法では駆動域全体または磁束が一周期変化する中で1つの差しか出していないため、精度が低く、複数の磁石の取り付け誤差によって発生する磁束密度の一周期内のずれまでは補正することが出来ない。従って例えばリソグラフィ装置などに適用するには不十分であった。
本発明は、精度の高い位置制御が可能な駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その目的を達成するために、本発明の一側面の駆動システムは、
固定子と可動子とを含むモータと、
記固定子と前記可動子の相対位置を検出する位置検出部と、
前記相対位置に応じた基準となる磁束密度情報を取得する取得部と、
前記相対位置に応じた実際の磁束密度情報を測定する測定手段と、
前記モータの駆動を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記基準となる磁束密度情報の大きさが所定の設定値と一致する時の相対位置である1相対位置と、前記測定手段によって測定された磁束密度情報の大きさが前記所定の設定値と一致する時の相対位置である2相対位置との差を、前記測定された磁束密度情報が一周期変化する期間において複数回取得し、
複数設定された前記所定の設定値それぞれについて取得した複数の前記差に基づいて、前記モータの駆動を制御する、
とを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、精度の高い位置制御が可能な駆動システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例における、リニアモータを使用した位置決めステージの概略構成を示す上面図である。
図2】実施例における、リニアモータの構成図である。
図3】実施例における、磁石やコイル、位置検出器の原点の配置がすべて設計値通りになっているときの配置と磁束密度の関係図である。
図4】実施例における、コイル121a~121cから可動子が受ける力を示した図である。
図5】実施例における、磁石やコイル、位置検出器の原点の配置がずれているときの配置と磁束密度の関係図である。
図6】本実施例における駆動システムの制御ブロック線図である。
図7】実施例における、設定値が1つの時の補正方法を示すフローチャートである。
図8】実施例における、実際の磁束密度と理想的な磁束密度のずれと1つの設定値を表す図である。
図9】実施例における、設定値が複数の時の補正方法を示すフローチャートである。
図10】実施例における、実際の磁束密度と理想的な磁束密度のずれと複数の設定値を表す図である。
図11】実施例における、走査露光装置の例を示した図である。
図12】実施例における、露光装置のシーケンス示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい駆動システムの実施形態を実施例及び添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略ないし簡略化する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例における、リニアモータを使用した位置決めステージの概略構成を示す上面図である。本実施例では例えばリソグラフィ装置の基板を搭載したステージを例として説明する。なお、本実施例では、複数のコイルを有する固定子と複数の永久磁石を要する可動子とを含むリニアモータを使用するが、複数のコイルを有する可動子と複数の永久磁石を要する固定子とを含むリニアモータでもよい。あるいは、リニアモータでなくても通常の回転タイプのモータであっても良い。
【0011】
図1においてステージ11には駆動方向(Y軸方向)の左右両側に一対の可動子31が設けられている。これらの一対の可動子31は対応する一対の固定子32と協働してリニアモータ13Aおよびリニアモータ13Bを構成している。リニアモータの構成に関しては後述する。
【0012】
ステージ11には反射鏡12が設けられており、不図示のレーザ干渉計(計測部)からの計測光を反射することにより、ステージ11のY軸方向への変位量または位置であるP1[m]が計測される。また、リニアモータ13Aおよびリニアモータ13Bには不図示のエンコーダが備えられており、これによりリニアモータ13Aおよびリニアモータ13Bの固定子32のY軸方向への変位量または位置P2[m]が計測される。
【0013】
このときステージ11と固定子32の相対位置(以下コミュテーション位置)であるC[m]は式(1)で表される。
C=P1-P2・・・(1)
【0014】
図2は実施例における、リニアモータの構成図であり、リニアモータ13A及びリニアモータ13Bの具体的な構成例を示している。
図1の可動子31は、複数の永久磁石からなる磁石群として構成される磁石列111Aと磁石列111Bを有する。また、この磁石列111Aと磁石列111Bを保持しステージ面に取り付けるためのヨーク115とハウジング116を有する。
【0015】
磁石列111Aと磁石列111Bは磁極の向きがZ方向である主極磁石114と、Y方向である補極磁石119からなる。
主極磁石114の磁極方向は1つおきに補極磁石119を介して反対向きになっており、Y方向に等間隔で配置されている。
補極磁石119は主極磁石114のコイル121に面した部位の極性が補極磁石119と反発する向きに設けられている。
【0016】
図1の固定子32は、ジャケット122の中にY方向に等間隔にコイル121を有し、上下から可動子31に挟まれるように配置されている。ここで、主極磁石11のピッチMPとコイル121のピッチCPには下記式(2)で表わされる関係がある。
CP=1.5*MP・・・(2)
【0017】
図3は実施例における、磁石114,119やコイル121、位置検出器の原点の配置がすべて設計値通りになっているときの配置と磁束密度の関係図である。設計値通りであれば、理想的な磁束密度と実際の磁束密度は一致する。ここでの理想的な磁束密度とは、レーザ干渉計やエンコーダなどのセンサから求められたコミュテーション位置Cと主極磁石114の設計値上のピッチMPで決まる磁束密度である。即ち、基準となる磁束密度情報は、可動子または固定子の磁石ピッチと相対位置から求められる値である。
また、実際の磁束密度とは可動子31の有する磁石が固定子32のコイル121に発生させる磁束密度である。
【0018】
図4は、実施例における、コイル121a~121cから可動子が受ける力を示した図である。即ち、図2に示すコイル121a、121b、121cに同じ向きに一定電流を流し、可動子31をY軸方向に移動させた時に各コイルから可動子31が受ける力を示している。コイル121aでは-2.5MP~0.5MPの間において正弦波の力となり、その前後の-2.5MP以下と0.5MP以上の位置ではコイルの一部しか可動子13の磁石に対面しないため力が小さくなる。コイル121bでは-1MP~2MPにおいて正弦波の力となり、位相はコイル121aと90度ずれている。
【0019】
コイル121cでは0.5MP~3.5MPにおいて正弦波の力となり、位相は121aと180度ずれている。ここで、コイル121aと121cにおいて、0.5MPまではコイル121aに電流を流し、0.5MP以上においてコイル121cに前記と逆向きの電流を流すと、連続的に正弦波状の力を発生することができる。このとき1つの電流ドライバを用い、121aと121cでコイルの向きを逆向きに接続し、コイルと磁石の位置関係に応じて選択スイッチを用いてどちらかのコイルのみに電流を流すようにすれば、電流ドライバを個々のコイルに用意しないで済む。
【0020】
同様に3MPの間隔で1つおきにコイルを交互の向きに電流を流すことにより、連続的に正弦波の力を発生することができる。全く同様にして121bを代表とするコイルとその1つおきのコイルに交互の向きに電流を流すことにより、連続的に正弦波の力を発生することができる。ここで、121aに代表されるコイル群をA相、121bに代表されるコイル群をB相と呼ぶことにする。
【0021】
可動子31に発生する推力Fは、A相から受ける推力とB相からける推力の合計となり式(3)のように表される。
F=L*Ba(C)’*Ia(C)+L*Bb(C)’*Ib(C)・・・(3)
Lはコイルの導体の長さですべてのコイルで同一である。
【0022】
Ba(C)’は可動子31の有する磁石が固定子32のA相のコイルに発生させる実際の磁束密度で、Ia(C)は固定子32のA相のコイルに流れる電流である。また、Bb(C)’は可動子31の有する磁石が固定子32のB相のコイルに発生させる実際の磁束密度で、Ib(C)は固定子32のB相のコイルに流れる電流である。このとき理想の磁束密度Ba(C)及びBb(C)が以下の式(4),(5)で表されるとする。
【0023】
Ba(C)=B*sin(2×π×C/MP)・・・(4)
Bb(C)=B*cos(2×π×C/MP)・・・(5)
Bは磁束密度の振幅であり、Cはコミュテーション位置である。磁石114,119やコイル121、位置検出器の原点の配置がすべて設計値通りになっているとすると、実際の磁束密度Ba(C)’及びBb(C)’と理想の磁束密度Ba(C)及びBb(C)は一致するので、等価となる。
【0024】
可動子31に発生する推力Fを一定にするためには、コイル121のA相及びB相に流す電流Ia(C)、Ib(C)を理想的な磁束密度に合わせて式(6),(7)の様にすればよい。
Ia(C)=I*sin(2×π×C/MP)・・・(6)
Ib(C)=I*cos(2×π×C/MP)・・・(7)
【0025】
式(4),(5),(6),(7)を式(3)に代入すると
F=L*B*I* sin(2×π×C/MP)^2+ L*B*I* cos(2×π×C/MP)^2
=L*B*I・・・(8)
となり、磁石114,119やコイル121、位置検出器の原点の配置がすべて設計値通りになっていれば、Bは磁束密度の振幅、Iは電流の振幅で一定なので推力Fは一定となる。
【0026】
図5は実施例における、磁石やコイル、位置検出器の原点の配置がずれているときの配置と磁束密度の関係図である。図5の(A)は磁石114,119やコイル121は設計値通りに配置され、位置検出器の原点のみずれてしまったときの図である。このとき理想的な磁束密度と実際の磁束密度にずれが生じてしまう。これは、コミュテーション位置C及び主極磁石114のピッチMPによって算出されている理想的な磁束密度が、原点のずれた位置検出器が出力したコミュテーション位置を元に算出されているためである。
【0027】
図5の(B)は位置検出器の原点は設計値通りの場所にあり、磁石114,119やコイル121が製造誤差や取り付け誤差などにより配置がずれているときの図である。磁石114,119やコイル121の配置に依存して実際の磁束密度が理想的な磁束密度とずれてしまっている。これは理想的な磁束密度では一定であるはずのピッチMPが場所により異なっていることが原因である。現実のリニアモータでは図5の(A)、(B)の要因が組み合わさって、理想的な磁束密度と実際の磁束密度に複雑なずれが生じてしまう。
【0028】
そのため、リニアモータ13に理想的な磁束密度に対して推力Fが一定となるような電流Ia(C)及びIb(C)を流しても、式(8)が成り立たないため、リニアモータ13に生じる推力は一定にならない。この推力を一定にするために本実施例では、可動子31の磁石によって発生する実際の磁束密度に合わせて電流Ia(C)及びIb(C)を補正している。
【0029】
図6は本実施例における駆動システムの制御ブロック図である。電流ドライバ42、切替えスイッチ43、逆起電圧取り込み口48、コミュテーション位置算出器51、理想的な磁束密度算出器52、実際の磁束密度算出器53、ずれ量算出器54はリニアモータ13A、リニアモータ13Bで個別に構成する。コミュテーション位置算出器51、理想的な磁束密度算出器52、実際の磁束密度算出器53、ずれ量算出器54は処理部44を構成する。
【0030】
破線枠で示したEEPROM45、制御部41、ステージ11は、リニアモータ13A、リニアモータ13Bに共通する構成である。なお、制御部41にはコンピュータとしてのCPUが内蔵されており、不図示のメモリに記憶されたコンピュータプログラムに基づき装置全体の各種動作を実行させる制御手段として機能する。
コミュテーション位置算出器51はレーザ干渉計で取得したステージ11の位置P1とエンコーダで得た固定子32の位置P2を用いて式(1)よりコミュテーション位置Cを算出する。
【0031】
ここで、コミュテーション位置算出器51はモータの固定子と可動子の相対位置(コミュテーション位置)を検出する位置検出部として機能している。
理想的な磁束密度算出器52では、式(4),(5)から理想的な(基準となる)磁束密度を算出する。ここで理想的な磁束密度算出器52は、前記相対位置に応じた基準となる磁束密度情報(磁束に対応した電圧値)を取得する取得部として機能している。
また、実際の磁束密度算出器53では逆起電圧取り込み口48から取り込んだ逆起電圧を元に実際の磁束密度を求める。即ち、実際の磁束密度算出器53は、前記相対位置に応じた実際の磁束密度情報(電圧値)を測定する測定手段として機能している。
【0032】
ずれ量算出器54では理想的な磁束密度と実際の磁束密度を比較して、磁束密度の大きさが設定値Hとなる時のコミュテーション位置の差(ずれ量)を算出する。ずれ量算出器54で算出されたΔCをEEPROM45などの記憶媒体にコミュテーション位置と紐づけて保存する。
【0033】
制御部41はEEPROM45に保存されたずれ量をもとに電流指令値を補正し電流ドライバ42に指令を送る。
電流ドライバ42はリニアモータ13に指令値通りの電流を流しモータを駆動する。それによりステージ11は駆動を行う。
【0034】
以下に制御部41(制御手段)による電流指令値の補正方法について詳細に述べる。制御部41は不図示のメモリに記憶されたプログラムに基づき図7に示す処理を実行する。
図7は、実施例における、設定値が1つの時の補正方法を示すフローチャートであり、図7のフローチャートに沿って、電流指令値の補正方法について詳細に説明する。S101ではリニアモータ13Bを一定速度vで駆動する。
【0035】
S102では、リニアモータ13Bを一定速度vで駆動した際のリニアモータ13AのA相及びB相のコイル121に発生する逆起電圧Va(C)及びVb(C)を、リニアモータ13Aの切り替えスイッチ43を逆起電圧取り込み口48に接続して測定する。即ち、前記測定された磁束密度情報は、可動子を動かしたときに得られる逆起電圧に基づいて決定される。
【0036】
次にS103で実際の磁束密度算出器53が測定した逆起電圧を元に実際の磁束密度Ba(C)’及びBb(C)’を算出する。
ここで実際の磁束密度の算出方法を説明する。可動子31を動かしたときの逆起電圧Va(C)及びVb(C)は以下の式で表される。
Va(C)=v*Ba(C)’*L・・・(9)
Vb(C)=v*Bb(C)’*L・・・(10)
【0037】
このとき可動子31を一定速度vで動かせば、Lは導体の長さですべてのコイルで同一のため、逆起電圧Va(C)及びVb(C)は実際の磁束密度Ba(C)’及びBb(C)’に比例する。よって、先ほど取得した逆起電圧Va(C)及びVb(C)は、リニアモータ13Aの実際の磁束密度Ba(C)’及びBb(C)’とみなすことが出来る。
【0038】
S104では理想的な磁束密度算出器52が、コミュテーション位置算出器51が算出したコミュテーション位置と主極磁石114のピッチMPを用いて理想的な磁束密度を算出する。
【0039】
S105では実際の磁束密度と理想的な磁束密度を正規化する。即ち、振幅を揃えた状態で相対位置の差を取得するようにしている。実際の磁束密度Ba(C)’及びBb(C)’は逆起電圧Va(C)及びVb(C)と等価なので、Ba(C)’及びBb(C)’を逆起電圧の振幅Vで除すことで正規化した実際の磁束密度Ba_nor(C)’及びBb_nor(C)’を求めることが出来る。同様にして、S104で求めた理想的な磁束密度Ba(C)及びBb(C)も振幅Bで除すことで、正規化した理想的な磁束密度Ba_nor(C)及びBb_nor(C)を求めることが出来る。
【0040】
この正規化は理想的な磁束密度Ba(C)及びBb(C)と実際の磁束密度Ba(C)’及びBb(C)’のずれ量を算出する際に振幅を合わせるために行っており、これにより図8の-1~1の任意の設定値でずれ量を算出することが出来る。
図8は実施例における、実際の磁束密度と理想的な磁束密度のずれと1つの設定値を表す図である。
【0041】
S106では先ほど求めた正規化した実際の磁束密度Ba_nor(C)’と正規化した理想的な磁束密度Ba_nor(C)で、ずれ量の算出を行う。
図8に示すように、任意の所定の設定値Hを-1~1の範囲で設定し、実際の磁束密度Ba_nor(C)’及び理想的な磁束密度Ba_nor(C)と設定値Hの交点から第1のコミュテーション位置、第2のコミュテーション位置を求める。ここで、設定値Hは基準となる磁束密度情報及び測定された磁束密度情報の振幅内の所定の設定値である。
【0042】
第1のコミュテーション位置、第2のコミュテーション位置は磁束が一周期変化する中で複数求めることが出来る。
HとBa_nor(C)の交点である第1のコミュテーション位置(第1の相対位置)をC1,C2,C3,…とし、HとBa_nor(C)’の交点である第2のコミュテーション位置(第2の相対位置)をC1’,C2’,C3‘,…とする。即ち、制御手段は、基準となる磁束密度情報(電圧)の大きさが所定の設定値と一致する時の相対位置を第1の相対位置とし、測定手段によって測定された磁束密度情報の大きさが前記所定の設定値と一致する時の前記相対位置を第2の相対位置としている。
【0043】
C1,C1’の様にコミュテーション位置が最も近いもの同士を1つの対とする。
ΔC1=C1-C1’・・・(11)
上式(11)のようにそれぞれの対でずれ量ΔCを算出する。
S107では図8で示すように、第2のコミュテーション位置C1’と次の第2のコミュテーション位置C2’との間の区間をINT1とし、算出されたずれ量ΔC1とINT1を紐づけしてEEPROM45などの記憶媒体に保存する。
【0044】
同様に第2のコミュテーション位置C2’と次の第2のコミュテーション位置C3’との間の区間をINT2とし、算出されたずれ量ΔC2とINT2を紐づけして保存する。これらの動作をすべてのずれ量で行う。即ち、前記第1の相対位置と前記第2の相対位置の差(ずれ量ΔC)を、前記測定された磁束密度情報が一周期変化する期間において複数回取得し保存している。
【0045】
S108ではリニアモータ13Bでずれ量を算出したことを確認する。行っていない場合はS109で今度はリニアモータ13Aを一定速度vで駆動する。その後はS102~S108を行い終了する。これによってリニアモータ13Aのずれ量データとリニアモータ13Bのずれ量を両方取得する。
【0046】
このように、本実施例ではモータ13Aと、他のモータ13Bとを有し、制御手段は、他のモータ13Bを駆動することによって、モータ13Aの逆起電圧を測定するようにしている。また、モータ13Aを駆動することによって、他のモータ13Bの逆起電圧を測定するようにしている点に特徴を有する。更に両方のモータを同時に駆動することによってステージ(対象物)を同じ方向に移動させることができるように構成されている点にも特徴を有する。
【0047】
次に、これらのずれ量を用いて電流指令値を補正する方法を説明する。INT1の区間のコミュテーション位置では以下の式(12),(13)のΔCにΔC1を代入して電流指令値を補正する。同様にINT2の区間のコミュテーション位置では式(12),(13)のΔCにΔC2を代入して電流指令値を補正する。即ち、制御手段は、前記複数回のそれぞれの差に基づいて、前記モータの駆動電流を制御している。
【0048】
Ia(C)=I*sin(2×π×(C-ΔC)/MP)・・・(12)
Ib(C)=I*cos(2×π×(C-ΔC)/MP)・・・(13)
このように各コミュテーション位置で、コミュテーション位置が含まれる区間と紐づけられたずれ量を加算して電流指令値をきめ細かに補正することによって、1周期内のずれ量の変動をきめ細かに補正することができる。
【0049】
即ち、図5(B)に示す理想的な磁束密度カーブと実際の磁束密度カーブを精度良く一致させることができる。なお、最初のずれ量を算出するまでの区間は最初のずれ量であるΔC1を用いて補正を行う。
【0050】
電流ドライバ42はリニアモータ13に補正した指令値の電流を流しモータを駆動する。それによりステージ11は高精度な駆動を行う。
なお、上記の説明では固定子にコイル、可動子に永久磁石を用いるリニアモータを用いたがこれは逆の構成でもよい。
【実施例2】
【0051】
図9は実施例における、設定値が複数の時の補正方法を示すフローチャートであり、図9を用いて、より細かい補正を行う場合の処理について説明する。
S201からS205までは、S101からS105の処理と同様なので説明を省略する。
S206では、実施例1では1つであった設定値Hの数を、図10の様に複数設定する。図10は実施例における、実際の磁束密度と理想的な磁束密度のずれと複数の設定値を表す図である。
【0052】
本実施例では、その設定値Hを上からH1,H2とする。S207ではS106と同様にしてS206で設定した設定値を用いてずれ量の算出を行う。
S208ではS206設定した設定値の全てでS207を行ったかを判定し、行ってない場合は次の設定値HでS207を繰り返す。1つの設定値で算出できるずれ量の数をN_sh、設定値の数をN_stとすると全部でN_sh*N_st個のずれ量を求めることが出来る。
【0053】
S209では算出されたΔCを第2のコミュテーション位置Cの小さい順に並び変える。そしてS210では図10で示すように、第2のコミュテーション位置C1’とS209で並び替えた順番で次の第2のコミュテーション位置であるC2’との間の区間をINT1とする。そして、算出されたずれ量ΔC1とINT1を紐づけしてEEPROM45などの記憶媒体に保存する。
【0054】
同様に第2のコミュテーション位置C2’とS209で並び替えた順番で次の第2のコミュテーション位置となるC5’との間の区間をINT2とし、算出されたずれ量ΔC2とINT2を紐づけして保存する。
これらの動作をすべてのずれ量で行う。S211ではリニアモータ13Bでずれ量を算出したことを確認する。行っていない場合はS212でリニアモータ13Aを一定速度vで駆動する。その後はS202~S211を行い終了する。これによってリニアモータ13Aのずれ量データとリニアモータ13Bのずれ量を両方取得する。
【0055】
補正は実施例1と同様に各コミュテーション位置で、コミュテーション位置が属する区間と紐づけられたずれ量を用いて補正を行う。これにより、より細かい区間に区切って補正を行えるためより正確な補正が逐次可能となる。
なおこの説明でも固定子にコイル、可動子に永久磁石を用いるリニアモータを用いたがこれは逆の構成でもよい。
【0056】
また、本実施例で求めたずれ量は電流指令値(駆動電流)を補正する以外に、コイルの切り替えのタイミングを補正することにも用いることが出来る。先述したように、リニアモータは電流を流すコイルを制御して駆動を行っている。コイルを切り替える際は相全体で見た電流がなめらかになるよう切り替えることが理想ではある。
【0057】
切り替えタイミングはコイルの設計値を元に決定しているが、図5(B)で示すように磁石114,119やコイル121は製造誤差や取り付け誤差などでずれている。設計値を元にした切り替えタイミングであるT1のコミュテーション位置で切り替えてしまうと補正した電流指令値がなめらかにならない。そこで本実施例で求めたずれ量を用いて切り替えタイミングT1を補正してT2にすることで電流をなめらかに切り替えることが出来る。
【0058】
次に、磁束密度の一周期内のずれを考慮した補正を行う駆動システムを走査露光装置600に適用した例について説明する。
図11は実施例における、走査露光装置の例を示した図であり、走査露光装置600は、スリットによって整形されたスリット光により基板14を走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置である。走査露光装置600は、照明光学系23、原版ステージ26、投影光学系27、基板ステージ15、原版ステージ位置計測部17、基板ステージ位置計測部18、基板マーク計測部21、基板搬送部22、制御部24を含む。
【0059】
なお基板ステージ15は基板を保持し移動させるためのステージであり、実施例の駆動システムによって駆動される。
制御部24は、照明光学系23、原版ステージ26、投影光学系27、基板ステージ15、原版ステージ位置計測部17、基板ステージ位置計測部18、基板マーク計測部21、基板搬送部22、を制御する。
【0060】
制御部24は、原版に形成されたパターンを基板14に転写する処理(基板14を走査露光する処理)を制御する。
制御部24は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate ArraYの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)によって構成される。
【0061】
或いは、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成しても良い。また、制御部24はアクチュエータを制御するドライバも含む。
【0062】
照明光学系23は、原版25を照明する。照明光学系23は、マスクキングブレードなどの遮光部材により、光源(不図示)から射出された光を、例えばX方向に長い帯状または円弧状の形状を有するスリット光に整形し、そのスリット光で原版25の一部を照明する。原版25および基板14は、原版ステージ26および基板ステージ15によってそれぞれ保持されており、投影光学系27を介して光学的にほぼ共役な位置(投影光学系27の物体面および像面)にそれぞれ配置される。
【0063】
投影光学系27は、所定の投影倍率(例えば1/2倍や1/4倍)を有し、原版25のパターンをスリット光により基板14上に投影する。原版25のパターンが投影された基板14上の領域(スリット光が照射される領域)は、照射領域と呼ばれる。原版ステージ26および基板ステージ15は、投影光学系27の光軸方向(Z方向)に直交する方向(Y方向)に移動可能に構成されている。原版ステージ26および基板ステージ15は、互いに同期しながら、投影光学系27の投影倍率に応じた速度比で相対的に走査される。
【0064】
これにより、照射領域に対して基板14がY方向に走査され、原版25に形成されたパターンが基板14上のショット領域に転写される。そして、このような走査露光を、基板ステージ15を移動させながら、基板14の複数のショット領域の各々について順次に行うことにより、1枚の基板14における露光処理が完了する。
【0065】
原版ステージ位置計測部17は、例えばレーザ干渉計を含み、原版ステージ26の位置を計測する。レーザ干渉計は、例えば、レーザ光を原版ステージ26に設けられた反射板(不図示)に向けて照射し、反射板で反射されたレーザ光と基準面で反射されたレーザ光との干渉によって原版ステージ26の変位(基準位置からの変位)を検出する。
【0066】
原版ステージ位置計測部17は、当該変位に基づいて原版ステージ26の現在位置を取得することができる。ここで、原版ステージ位置計測部17は、レーザ光を用いたレーザ干渉計によって原版ステージ26の位置を計測しているが、それに限られるものではなく、例えば、エンコーダによって原版ステージ26の位置を計測してもよい。
【0067】
基板ステージ位置計測部18は、例えばレーザ干渉計を含み、基板ステージ15の位置を計測する。レーザ干渉計は、例えば、レーザ光を基板ステージ15に設けられた反射板(不図示)に向けて照射し、反射板で反射されたレーザ光と基準面で反射されたレーザ光との干渉によって基板ステージ15の変位(基準位置からの変位)を検出する。基板ステージ位置計測部18は、当該変位に基づいて基板ステージ15の現在位置を取得することができる。
【0068】
ここで、基板ステージ位置計測部1は、レーザ光を用いたレーザ干渉計によって基板ステージ15の位置を計測しているが、それに限られるものではなく、例えば、エンコーダによって基板ステージ15の位置を計測してもよい。
基板マーク計測部21は、例えば撮像素子を含み、基板上に設けられたマークの位置を検出することが出来る。
【0069】
ここで、本実施例の基板マーク計測部21は、撮像素子によってマークが検出されるが、それに限られるものではなく、例えば透過型センサによってマークが検出されてもよい。
基板搬送部22は、基板を基板ステージ15に供給および回収する。
露光装置の原板のパターンを基板に焼き付ける際のシーケンスについて図12のフローチャートを用いて説明する。図12は実施例における、露光装置のシーケンス示したフローチャートである。
【0070】
ステップS700で露光シーケンスを開始し、ステップS701で基板搬送部22が基板(ウエハ)14を基板ステージ15の上に供給(ロード)する。次に、ステップS702で、露光レシピに定義された基板14上のマークが基板マーク計測部21の計測視野内に入るように、基板ステージ15を駆動し、基板のアライメントを実施する。
その後、ステップS703で原版ステージ26と基板ステージ15を同期させて走査駆動を行い、原版のパターンを、投影光学系27を通して基板14上に逐次露光する。
【0071】
このとき、露光レシピに定義された露光順序や露光画角に従う。最後に、ステップS704で基板搬送部22が基板14を基板ステージから回収(アンロード)する。以上で基板にパターンを露光する工程は完了する。
【0072】
次に実施例1の構成を、実施例2の基板ステージ15の制御に適用する場合について説明する。図6における制御部41は制御部24、電流ドライバ42は制御部24、処理部44は制御部24、EEPROM45は制御部24、リニアモータ13は基板ステージ15、ステージ11は基板ステージ15に該当する。
【0073】
磁束密度の一周期内のずれを考慮した駆動システムを基板ステージ15に適用することで、ステージの推力を一定に近づけることが出来るので、露光装置の精度を向上することができる。
【0074】
なお、走査露光装置の基板ステージ15に適用する場合、実施例1のように設定値を1つ設定する適用方法と実施例2のように設定値を複数設定する適用方法のどちらを適用してもよい。
また、図7図9に示すずれ量の保存フローは、図12に示す露光動作を行う前に実施しておく。そして事前に保存したずれ量を用いて、実施例1または実施例2に示したような電流指令値の補正方法を適用しつつ基板ステージ15を駆動する。
【0075】
このように、基板ステージ15の制御を行うに際して、ずれ量を複数保存してそれらを用いて電流指令値を補正する駆動システムを適用することで、S703の露光シーケンスにおいて高い精度で露光を行えるという効果が得られる。
【0076】
なお、実施例1または実施例2の制御を、原版ステージ26の位置制御に適用する場合、図6における制御部41、電流ドライバ42、処理部44、EEPROM45等は制御部24に含まれる。また、リニアモータ13は原版ステージ26駆動用のモータ、ステージ11は原版ステージ26に相当することになる。
【0077】
基板ステージ15に適用した場合と同様に、原版を保持する原版ステージ26にも本実施例を適用することができ、原版ステージ26に適用した場合のいても、ずれ量の保存や電流指令値の補正を精度良く行うことができる。
即ち、原版ステージ26も基板ステージ15と同様に、ずれ量を複数保存してそれらを用いて電流指令値を補正することで、S703の露光シーケンスにおいて、高い精度で露光を行えるという効果が得られる。
【0078】
次に、前述の露光装置を利用した物品(半導体IC素子、液晶表示素子、MEMS等)の製造方法を説明する。
物品は、例えば前述の露光装置を使用して、感光剤が塗布された基板(ウェハ、ガラス基板等)を露光する工程と、その基板(感光剤)を現像する工程と、現像された基板を後処理の工程で処理することにより製造される。
【0079】
あるいはインプリント装置において、原版としての型を使用して、インプリント材が塗布された基板を押印する工程と離型する工程を経て、後処理の工程(押印された基板から物品を製造する工程)を実行することにより製造される。
なお後処理の工程としては、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等が含まれる。
このように本発明を用いた物品製造方法によれば、高精度な位置制御ができるので、従来よりも高品位の物品を製造することができる。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
例えば、実施例ではステージ制御装置および露光装置を用いて説明したが、他のリソグラフィ装置に適用しても良い。
【0081】
例えばリソグラフィ装置としては凹凸パターンがない平面部を有するモールド(平面テンプレート)を用いて基板の組成物を平坦化するように成形する平坦化装置であってもよい。
また、リソグラフィ装置の他の例として、荷電粒子光学系を介して荷電粒子線(電子線やイオンビームなど)で基板に描画を行って、基板にパターン形成を行う描画装置などの装置であってもよい。
【0082】
なお、本実施例における制御の一部または全部を上述した実施例の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワーク又は各種記憶媒体を介して駆動システムに供給するようにしてもよい。そしてその駆動システムにおけるコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【符号の説明】
【0083】
31 可動子
32 固定子
13 リニアモータ(モータ)
41 制御部
44 処理部
51 コミュテーション位置算出器(位置検出部)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12