(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】診断システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/42 20060101AFI20240520BHJP
B60L 58/16 20190101ALI20240520BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240520BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240520BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240520BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H01M10/42 P
B60L58/16
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Q
H02J7/10 C
H02J7/10 H
(21)【出願番号】P 2020101549
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】児玉 良治
(72)【発明者】
【氏名】矢口 優
(72)【発明者】
【氏名】鴨宮 宗近
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-247003(JP,A)
【文献】特開2012-181976(JP,A)
【文献】特開2016-085166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
G01R31/36-31/396
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度、劣化状態、及びCレートの組み合わせ毎の二次電池の充放電曲線の微分曲線を記憶する記憶部と、
二次電池の充放電制御に係る充放電条件として、温度、劣化状態、及びCレートの情報を取得する取得部と、
前記記憶部に記憶された各微分曲線の中から、前記取得部によって取得された充放電条件に合致する前記微分曲線を特定する特定部と、
前記特定部によって特定された前記微分曲線に基づき、二次電池の劣化状態を診断する上で重要な充放電領域について比較的低Cレートで充放電を行う低Cレート充放電領域に決定すると共に、その他の領域を前記低Cレート充放電領域よりも高Cレートで充放電を行う高Cレート充放電領域に決定する充放電速度決定部と、
前記充放電速度決定部によって決定されたCレートに応じて二次電池の充放電制御を行う充放電制御部と、を備える二次電池の診断システム。
【請求項2】
前記充放電速度決定部は、前記特定部によって特定された前記微分曲線におけるピーク箇所を特定し、該ピーク箇所を前記低Cレート充放電領域に決定する、請求項1記載の診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の劣化状態を診断する手法として、二次電池の充放電曲線の微分特性を求め、該微分特性におけるピーク箇所の情報から、二次電池の劣化状態を表すSOH(State Of Health)を判定する手法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、SOHを高精度に判定するためには、充放電曲線の微分特性のピークが適切な形状で取得される必要がある。ピークを適切な形状で取得するためには、比較的低Cレート(すなわち低電流)で充放電が行われる必要がある。これは、比較的高Cレート(すなわち高電流)で充放電を行った場合には二次電池の化学構造変化が急激に進行してしまい充放電曲線のデータサンプリング感度が不足しピークを適切な形状で取得することができないためである。一方で、低Cレートで充放電を行った場合には、充放電に要する時間が長くなり、二次電池のエネルギーにより駆動する製品のデッドタイムが長くなってしまう。このように、従来、二次電池の劣化状態の診断を高精度に行いながら充放電時間を短縮することが困難であった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、二次電池の劣化状態の診断を高精度に行うと共に劣化状態の診断のための充放電時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る二次電池の診断システムは、温度、劣化状態、及びCレートの組み合わせ毎の二次電池の充放電曲線の微分曲線を記憶する記憶部と、二次電池の充放電制御に係る充放電条件として、温度、劣化状態、及びCレートの情報を取得する取得部と、記憶部に記憶された各微分曲線の中から、取得部によって取得された充放電条件に合致する微分曲線を特定する特定部と、特定部によって特定された微分曲線に基づき、二次電池の劣化状態を診断する上で重要な充放電領域について比較的低Cレートで充放電を行う低Cレート充放電領域に決定すると共に、その他の領域を低Cレート充放電領域よりも高Cレートで充放電を行う高Cレート充放電領域に決定する充放電速度決定部と、充放電速度決定部によって決定されたCレートに応じて二次電池の充放電制御を行う充放電制御部と、を備える。
【0007】
本発明に係る診断システムでは、予め記憶された台上データである充放電曲線の微分曲線の中から、充放電制御に係る充放電条件(温度、劣化状態、及びCレート)に合致した微分曲線が特定される。そして、本発明に係る診断システムでは、特定した微分曲線に基づき、劣化状態の診断において重要な領域について低Cレート充放電領域と決定されると共に、その他の領域について高Cレート充放電領域と決定され、決定されたCレートに応じて二次電池の充放電制御が行われる。このような構成によれば、予め準備されている台上データに基づいて、劣化状態の診断において重要な領域については低Cレートで充放電を行って正確に充放電曲線を得ると共に、その他の領域については高Cレートで充放電を行って迅速に充放電曲線を得ることができる。このように、本発明に係る診断システムによれば、二次電池の劣化状態の診断を高精度に行うと共に劣化状態の診断のための充放電時間を短縮することができる。
【0008】
充放電速度決定部は、特定部によって特定された微分曲線におけるピーク箇所を特定し、該ピーク箇所を低Cレート充放電領域に決定してもよい。微分曲線におけるピーク箇所の情報(位置及び形状等)は、二次電池の劣化状態を診断する上で重要な情報である。このため、微分曲線におけるピーク箇所が低Cレート充放電領域に決定されることにより、二次電池の劣化状態の診断をより高精度に行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二次電池の劣化状態の診断を高精度に行うと共に劣化状態の診断のための充放電時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】二次電池の診断システムの機能ブロック図である。
【
図3】リチウムイオン電池の充放電曲線の一例を示す図である。
【
図4】リチウムイオン電池の充放電曲線の微分特性の一例を示す図である。
【
図5】Cレートの違いによるピーク形状の違いを説明する図である。
【
図6】リチウムイオン電池の診断処理(診断方法)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととし、同一又は相当の部分に対する重複した説明は省略する。
【0012】
図1は、二次電池の診断システム10の機能ブロック図である。本実施形態における二次電池とは、例えば車載用のリチウムイオン電池であるが、その他の二次電池であってもよい。本実施形態における二次電池は、例えば車両の駆動用バッテリとして機能する。本実施形態では、二次電池が車両の駆動用バッテリとして機能するリチウムイオン電池であるとして説明する。より詳細には、二次電池は、グラファイト系負極を用いたリチウムイオン電池である。
【0013】
最初に、
図2~
図5も参照しながら、本実施形態に係るリチウムイオン電池の診断システム10の概要について説明する。診断システム10は、例えば、駆動用バッテリとして機能するリチウムイオン電池の状態推定・監視を行うBMS(Battery Management System)の機能である。診断システム10は、リチウムイオン電池の内部状態を非破壊で推定するシステムであり、具体的にはリチウムイオン電池の残存容量を表すSOC(State Of Charge)の値を推定する。診断システム10は、リチウムイオン電池の電流、電圧、及び表面温度に基づいて、周知の技術によりSOCの値を推定する。ここで、SOCの値を高精度に推定するためには、リチウムイオン電池の劣化状態(SOH)が考慮されること(すなわち、SOCの値がSOHの値に基づき補正されること)が好ましい。診断システム10は、SOHの値を推定し、該SOHの値によりSOCの値を補正することにより、SOCの値を高精度に推定している。
【0014】
診断システム10は、充放電時において測定されるリチウムイオン電池の電流及び電圧に基づいて、リチウムイオン電池の充放電曲線(
図3参照)を求め、更に、該充放電曲線の微分特性(微分曲線,
図4参照)を求め、該微分曲線に基づいてリチウムイオン電池の劣化状態(SOH)を推定している。
【0015】
図3は、リチウムイオン電池の充放電曲線の一例を示す図である。
図3に示されるように、充放電曲線は、横軸が容量(mAh)、縦軸が電圧(V)とされて、充電時及び放電時におけるリチウムイオン電池の電流及び電圧に基づき導出される。
図4は、リチウムイオン電池の充放電曲線の微分特性(微分曲線)の一例を示す図である。
図4に示されるように、微分曲線は、横軸が容量(SOC(%))、縦軸がdV/dQ(Vは電圧、Qは容量)とされて、充放電曲線に基づき導出される。
【0016】
図4に示されるように、微分曲線においては、充電及び放電共に、ピーク(曲線において局所的に凸形状となった部分)が生じている。すなわち、
図4の例では、充電曲線において2つのピークP1,P2、放電曲線において2つのピークP3,P4が生じている。このようなピークの情報(ピークの形状及び位置)は、リチウムイオン電池の劣化状態を推定する上で重要な情報となる。
【0017】
診断システム10は、具体的には、リチウムイオン電池の温度(詳細には内部温度)、劣化状態、及びCレートの組み合わせ毎に充放電曲線の微分曲線を記録した台上データ(
図2参照)を予め記憶しており、導出した微分曲線と台上データの微分曲線とを照合することにより、リチウムイオン電池の劣化状態を導出する。すなわち、診断システム10は、台上データの中から、充放電制御に係る充放電条件であるリチウムイオン電池の温度及びCレートの情報が一致すると共に微分曲線が類似するデータを特定し、該データの劣化状態を、診断対象のリチウムイオン電池の劣化状態とみなす。なお、Cレートとは、電池に対して充放電する時の電流の大きさであり、電流に基づき導出されるものである。Cレートは、充放電のスピードを示すものである。
【0018】
ここで、診断システム10は、導出した微分曲線と台上データの微分曲線とを照合するに際して、微分曲線のピークの形状及び位置を比較している。このため、劣化状態(SOH)を高精度に導出するためには、微分曲線のピークが適切な形状で取得される必要がある。この点、比較的高Cレート(すなわち高電流)で充放電を行った場合には二次電池の化学構造変化が急激に進行してしまい充放電曲線のデータサンプリング感度が不足しピークを適切な形状で取得することができないおそれがあるため、ピークの形状及び位置を適切に取得する観点からは、比較的低Cレート(すなわち低電流)で充放電を行うことが好ましい。このことは、
図5からも明らかである。
図5は、Cレートの違いによる放電曲線の微分曲線のピーク形状の違いを説明する図である。
図5に示されるように、比較的低Cレートで充放電を行った場合には、2つのピークP3,P4が適切に取得されているのに対して、比較的高レートで充放電を行った場合には、ピークの形状が取得されていない。一方で、低Cレートで充放電を行った場合には、充放電に要する時間が長くなり、駆動用バッテリのデッドタイムが長くなってしまう問題がある。
【0019】
診断システム10は、上述した問題を解決すべく充放電制御を行うに際して、充放電制御に係る充放電条件として、リチウムイオン電池の温度及びCレートの情報に加えて、例えば車両の走行履歴から推定されるリチウムイオン電池の劣化状態を取得する。温度、劣化状態、及びCレートの情報が取得されることによって、診断システム10は、台上データの中から1つの微分曲線(充放電条件から想定される微分曲線)を特定することができる。そして、診断システム10は、特定した微分曲線に基づき、リチウムイオン電池の劣化状態を診断する上で重要な充放電領域(例えばピーク箇所)について低Cレートで充放電を行う低Cレート充放電領域に決定すると共に、その他の領域について高Cレートで充放電を行う高Cレート充放電領域に決定し、決定したCレートに応じて二次電池の充放電制御を行う。このことにより、台上データに基づいてピークが生じると想定される領域については低Cレートで充放電が行われ微分曲線のピークの形状及び位置が適切に取得される(すなわち、リチウムイオン電池の劣化状態を高精度に推定することができる)と共に、二次電池の劣化状態の推定に利用されない、ピーク以外の領域については高Cレートで充放電が行われ、充放電時間を短縮することができる。
【0020】
以下では、
図1を参照し、リチウムイオン電池の診断システム10の機能の詳細について説明する。
図1に示されるように、診断システム10は、記憶部11と、取得部12と、特定部13と、充放電速度決定部14と、充放電制御部15と、電池状態推定部16と、を備えている。
【0021】
記憶部11は、リチウムイオン電池の温度、劣化状態、及びCレートの組み合わせ毎のリチウムイオン電池の充放電曲線の微分曲線が記録された台上データ(
図2参照)を記憶するデータベースである。このような台上データは、例えば電池の種類毎の予め準備されている。
【0022】
取得部12は、微分曲線の各領域におけるCレート(充放電速度)を決定するための処理として、リチウムイオン電池の充放電制御に係る充放電条件である、温度、劣化状態、及びCレートの情報を取得する。温度は、リチウムイオン電池の内部温度であり、例えばリチウムイオン電池の表面温度及び電池モジュール2の電流センサ21により検出される電流等に応じて導出される。劣化状態は、例えば車両の走行履歴から推定されるリチウムイオン電池の劣化状態である。Cレートは、予め定められた値であってもよいし、電流センサ21により検出される電流に応じて導出されてもよい。
【0023】
また、取得部12は、充放電時の処理として、充電時又は放電時において検出される電流及び電圧の値を取得する。取得部12は、複数のリチウムイオン電池22から構成されある電池モジュール2の電流センサ21から、リチウムイオン電池22に流れる電流値を取得する。また、取得部12は、電池モジュール2を構成するリチウムイオン電池22の端子間の電圧を測定する電圧センサから、リチウムイオン電池22に印可される電圧値を取得する。
【0024】
特定部13は、記憶部11に記憶された台上データの各微分曲線の中から、取得部12によって取得された充放電条件に合致する微分曲線を特定する。すなわち、特定部13は、取得部12によって取得された充放電条件と、温度、劣化状態、及びCレートの全てが一致する(或いは、最も近似する)台上データの微分曲線を特定する。
【0025】
充放電速度決定部14は、特定部13によって特定された微分曲線に基づき、リチウムイオン電池の劣化状態を診断する上で重要な充放電領域について比較的低Cレートで充放電を行う低Cレート充放電領域に決定すると共に、その他の領域を低Cレート充放電領域よりも高Cレートで充放電を行う高Cレート充放電領域に決定する。具体的には、充放電速度決定部14は、特定部13によって特定された微分曲線におけるピーク箇所を特定し、該ピーク箇所を低Cレート充放電領域に決定する。充放電速度決定部14は、取得部12によって取得されたCレートを基準Cレートとして、上述した低Cレート及び高Cレートを具体的に決定する。低Cレートとは、少なくとも微分曲線においてピークの形状及び位置を適切に取得することができるCレートである。
【0026】
充放電制御部15は、充放電速度決定部14によって決定されたCレートに応じてリチウムイオン電池の充放電制御を行う。すなわち、充放電制御部15は、充放電速度決定部14によって低Cレート充放電領域とされた領域、具体的にはピーク箇所が出現する領域については低Cレートで充放電が行われるように充放電動作を制御すると共に、充放電速度決定部14によって高Cレート充放電領域とされた領域、具体的にはピーク箇所が出現しない領域については高Cレートで充放電が行われるように充放電動作を制御する。
【0027】
電池状態推定部16は、充放電時に取得部12によって取得された電流値及び電圧値に基づいて、充放電曲線及び該充放電曲線の微分曲線を導出し、温度及びCレートの情報並びに導出した微分曲線と情報(ピークの情報)が一致する台上データ(台上データに含まれたデータ)を特定する。そして、電池状態推定部16は、特定した台上データの劣化状態を、診断対象のリチウムイオン電池の劣化状態と推定する。電池状態推定部16は、更に、劣化状態(SOHの値)によりSOCの値を補正することにより、SOCの値を高精度に推定する。
【0028】
次に、本実施形態に係るリチウムイオン電池の診断処理(診断方法)について、
図6を参照して説明する。
図6は、リチウムイオン電池の診断処理(診断方法)を示すフローチャートであり、より詳細には、リチウムイオン電池の充電制御による劣化状態の推定処理を示すフローチャートである。
【0029】
図6に示されるように、診断システム10では、最初に充電条件が取得される(ステップS1)。充電条件とは、リチウムイオン電池の温度、劣化状態、及びCレートの情報である。つづいて、診断システム10は、記憶する台上データの各微分曲線の中から、取得した充電条件に合致する微分曲線を特定する(ステップS2)。
【0030】
つづいて、診断システム10は、特定した微分曲線に基づき、微分曲線の各領域における充電速度(Cレート)を決定する(ステップS3)。具体的には、診断システム10は、特定した微分曲線に基づき、ピーク箇所について比較的低Cレートで充電を行う低Cレート充電領域に決定すると共に、その他の領域を低Cレート充電領域よりも高Cレートで充電を行う高Cレート充電領域に決定する。
【0031】
つづいて、診断システム10は、決定したCレートに応じてリチウムイオン電池の充電制御を行う(ステップS4)。すなわち、診断システム10は、ピーク箇所が出現する領域については低Cレートで充電が行われるように充電動作を制御すると共に、ピーク箇所が出現しない領域については高Cレートで充電が行われるように充電動作を制御する。
【0032】
つづいて、診断システム10は、充電時に取得された電流値及び電圧値に基づいて、充電曲線及び該充電曲線の微分曲線を導出し、ピークの情報を取得する(ステップS5)。そして、診断システム10は、台上データを参照することにより、ピークの情報等に基づき、診断対象のリチウムイオン電池の劣化状態を推定する(ステップS6)。
【0033】
最後に、本実施形態に係るリチウムイオン電池の診断システムの作用効果について説明する。
【0034】
本実施形態に係るリチウムイオン電池の診断システム10は、温度、劣化状態、及びCレートの組み合わせ毎のリチウムイオン電池の充放電曲線の微分曲線を記憶する記憶部11と、リチウムイオン電池の充放電制御に係る充放電条件として、温度、劣化状態、及びCレートの情報を取得する取得部12と、記憶部11に記憶された各微分曲線の中から、取得部12によって取得された充放電条件に合致する微分曲線を特定する特定部13と、特定部13によって特定された微分曲線に基づき、リチウムイオン電池の劣化状態を診断する上で重要な充放電領域について比較的低Cレートで充放電を行う低Cレート充放電領域に決定すると共に、その他の領域を低Cレート充放電領域よりも高Cレートで充放電を行う高Cレート充放電領域に決定する充放電速度決定部14と、充放電速度決定部14によって決定されたCレートに応じてリチウムイオン電池の充放電制御を行う充放電制御部15と、を備える。
【0035】
本発明に係る診断システム10では、予め記憶された台上データである充放電曲線の微分曲線の中から、充放電制御に係る充放電条件(温度、劣化状態、及びCレート)に合致した微分曲線が特定される。そして、本実施形態に係る診断システム10では、特定した微分曲線に基づき、劣化状態の診断において重要な領域について低Cレート充放電領域と決定されると共に、その他の領域について高Cレート充放電領域と決定され、決定されたCレートに応じてリチウムイオン電池の充放電制御が行われる。このような構成によれば、予め準備されている台上データに基づいて、劣化状態の診断において重要な領域については低Cレートで充放電を行って正確に充放電曲線を得ると共に、その他の領域については高Cレートで充放電を行って迅速に充放電曲線を得ることができる。このように、本実施形態に係る診断システム10によれば、リチウムイオン電池の劣化状態の診断を高精度に行うと共に劣化状態の診断のための充放電時間を短縮することができる。
【0036】
充放電速度決定部14は、特定部13によって特定された微分曲線におけるピーク箇所を特定し、該ピーク箇所を低Cレート充放電領域に決定してもよい。微分曲線におけるピーク箇所の情報(位置及び形状等)は、リチウムイオン電池の劣化状態を診断する上で重要な情報である。このため、微分曲線におけるピーク箇所が低Cレート充放電領域に決定されることにより、リチウムイオン電池の劣化状態の診断をより高精度に行うことができる。
【符号の説明】
【0037】
10…診断システム、11…記憶部、12…取得部、13…特定部、14…充放電速度決定部、15…充放電制御部。