(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】締結工具
(51)【国際特許分類】
B21J 15/16 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
B21J15/16 G
B21J15/16 P
(21)【出願番号】P 2020107805
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藪名香 俊人
(72)【発明者】
【氏名】生田 洋規
(72)【発明者】
【氏名】矢加部 晃一
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 貴勇
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204247901(CN,U)
【文献】特開2019-047605(JP,A)
【文献】特開2017-148936(JP,A)
【文献】特開2008-302457(JP,A)
【文献】特開2013-129012(JP,A)
【文献】特開2014-024126(JP,A)
【文献】特開平11-290983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンと筒状部とを備えたファスナを介して作業材を締結するように構成された締結工具であって、
ステータおよびロータを含むモータ本体と、前記ロータから延設され、前記ロータと一体的に回転可能なモータシャフトとを備えたモータと、
前記モータの動力によって、前記締結工具の前後方向を規定する駆動軸に沿って、前記ピンを前記筒状部に対して後方へ引っ張ることで、前記ファスナを介して前記作業材を締結するように構成された締結機構と、
前記モータおよび前記締結機構を収容する工具本体と、
前記駆動軸に交差する方向に延在する長尺状のメインハンドルであって、前記工具本体と共に環状部を形成するように、前記工具本体に連結されたメインハンドルとを備え、
前記モータシャフトの回転軸は、前記駆動軸と平行に延在しており、
前記メインハンドルは、前記駆動軸が通過しない位置に配置され、
前記メインハンドルの一部は、前記モータ本体の後方領域内に配置されていることを特徴とする締結工具。
【請求項2】
請求項1に記載の締結工具であって、
使用者による外部操作が可能な前記モータの起動用の第1操作部材を備え、
前記第1操作部材は、前記メインハンドルに設けられ、前記モータシャフトの前記回転軸上に配置されていることを特徴とする締結工具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の締結工具であって、
前記工具本体は、
前記モータおよび前記締結機構を収容する第1部分と、
バッテリを取り外し可能に保持するように構成された第2部分とを含み、
前記第1部分、前記第2部分、および前記メインハンドルは、前記環状部の少なくとも一部を形成することを特徴とする締結工具。
【請求項4】
請求項3に記載の締結工具であって、
前記メインハンドルの両端部は、夫々、前記工具本体の前記第1部分と前記第2部分とに連結されており、
前記工具本体は、前記メインハンドルの前側に、前記メインハンドルから離間して前記駆動軸と交差する方向に延在し、前記第1部分と前記第2部分とを接続する第3部分を含み、
前記第1部分、前記第2部分、前記第3部分、および前記メインハンドルは、前記環状部を形成することを特徴とする締結工具。
【請求項5】
請求項4に記載の締結工具であって、
使用者による外部操作が可能な情報入力用の第2操作部材を更に備え、
前記第2操作部材は、前記第3部分に、前記メインハンドルと対向するように設けられていることを特徴とする締結工具。
【請求項6】
請求項4または5に記載の締結工具であって、
前記締結工具の動作を制御するように構成されたコントローラを更に備え、
前記コントローラは、前記第3部分に収容されていることを特徴とする締結工具。
【請求項7】
請求項6に記載の締結工具であって、
前記コントローラは、長さ、幅および厚さを有し、前記長さ、前記幅および前記厚さのうち、前記長さが最大であって、長さ方向が前
記駆動軸に対して傾斜するように配置されていることを特徴とする締結工具。
【請求項8】
請求項4~7の何れか1つに記載の締結工具であって、
前記第3部分は、
前記第1部分のうち前記モータを挟んで前記締結機構とは逆側に接続され、
前記第1部分との接続位置から前記駆動軸に交差する方向に延在していることを特徴とする締結工具。
【請求項9】
請求項3~
8の何れか1つに記載の締結工具であって、
前記バッテリの第2係合部に物理的に係合可能な第1係合部と、前記バッテリの第2端子に電気的に接続可能な第1端子とを備えたバッテリホルダを更に備え、
前記バッテリホルダは、弾性部材を介して前記第2部分に保持されていることを特徴とする締結工具。
【請求項10】
請求項1~
9の何れか1つに記載の締結工具であって、
前記工具本体は
、使用者によって把持される補助ハンドルを装着可能な装着部を有することを特徴とする締結工具。
【請求項11】
請求項1~
10の何れか1つに記載の締結工具であって、
前記締結工具とは別個に設けられた吊り下げ部材に係合可能に構成され、前記工具本体に取り付けられた係合部材を更に備え、
前記工具本体は、前記係合部材の取り付け位置を変更可能に構成されていることを特徴とする締結工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファスナによって作業材を締結するように構成された締結工具に関する。
【背景技術】
【0002】
棒状のピンと、ピンが挿通された筒状部とを備えたファスナによって作業材を締結するように構成された電動式の締結工具が知られている。例えば、特許文献1に開示されている締結工具は、モータの動力によって駆動されるボールネジ機構を備えている。ボールネジ機構は、ピンを筒状部に対して軸方向に引っ張ることで、ファスナを変形させ、作業材を締結するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の締結工具では、モータは、アウタハウジング内で、ボールネジ機構から下方に離間して、ハンドルよりも下側に配置されており、モータシャフトの回転軸は、ボールネジ機構によるピンの移動時の軸線に交差する方向に延在する。このため、モータとボールネジ機構との間には、動力伝達のための中間シャフトが設けられている。このような構成に起因して、上述の締結工具には、操作性や動力伝達の面で、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、ファスナによって作業材を締結する締結工具における操作性の向上および動力伝達の効率化に資する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、ピンと筒状部とを備えたファスナを介して作業材を締結するように構成された締結工具が提供される。締結工具は、モータと、締結機構と、工具本体と、メインハンドルとを備えている。
【0007】
モータは、モータ本体と、モータシャフトとを備えている。モータ本体は、ステータおよびロータを含む。モータシャフトは、ロータから延設され、ロータと一体的に回転するように構成されている。締結機構は、モータの動力によって、締結工具の前後方向を規定する駆動軸に沿って、ピンを筒状部に対して後方へ引っ張ることで、ファスナを介して作業材を締結するように構成されている。工具本体は、モータおよび締結機構を収容する。メインハンドルは、長尺状であって、駆動軸に交差する方向に延在する。メインハンドルは、工具本体と共に環状部を形成するように、工具本体に連結されている。モータシャフトの回転軸は、駆動軸と平行に延在する。メインハンドルの一部は、モータ本体の後方領域内に配置されている。つまり、モータ本体を後ろからみたときに、メインハンドルの一部が、モータ本体が占める領域(モータ本体の外周よりも内側の領域)とオーバーラップする。なお、「モータ本体の後方領域」は、モータ本体を後方に投影した領域ということもできる。
【0008】
本態様の締結工具では、モータと締結機構とは、モータシャフトの回転軸と、締結機構の駆動軸とが平行となるように配置されている。よって、モータシャフトの回転軸と駆動軸とが互いに交差する方向に延在する場合に比べ、モータと締結機構とを近くに配置しやすく、効率的な動力伝達が可能となる。更に、メインハンドルの一部がモータの後方領域に配置されているため、使用者が駆動軸に比較的近い位置でメインハンドルを把持することができ、操作性を向上することができる。
【0009】
本発明の一態様において、締結工具は、使用者による外部操作が可能なモータの起動用の第1操作部材を更に備えてもよい。そして、第1操作部材は、メインハンドルに設けられ、モータシャフトの回転軸上に配置されていてもよい。このような第1操作部材の配置によって、使用者の手を、メインハンドルのうち、モータ本体の後方領域に配置された部分に確実に誘導することで、操作性の向上に寄与することができる。
【0010】
本発明の一態様において、工具本体は、モータおよび締結機構を収容する第1部分と、バッテリを取り外し可能に保持するように構成された第2部分とを含んでもよい。そして、第1部分、第2部分、およびメインハンドルは、環状部の少なくとも一部を形成してもよい。更に、本態様において、メインハンドルの両端部は、夫々、工具本体の第1部分と第2部分とに連結されていてもよい。工具本体は、メインハンドルの前側に、メインハンドルから離間して駆動軸と交差する方向に延在し、第1部分と第2部分とを接続する第3部分を含んでもよい。そして、第1部分、第2部分、第3部分、およびメインハンドルは、環状部を形成してもよい。本態様によれば、バッテリを着脱可能な工具本体とメインハンドルの合理的な配置が実現される。
【0011】
本発明の一態様において、締結工具は、使用者による外部操作が可能な情報入力用の第2操作部材を更に備えてもよい。そして、第2操作部材は、第3部分に、メインハンドルと対向するように設けられていてもよい。本態様によれば、使用者が、メインハンドルを把持した状態で、後側から操作しやすい位置に第2操作部材を配置することができる。
【0012】
本発明の一態様において、締結工具は、締結工具の動作を制御するように構成されたコントローラを更に備えてもよい。そして、コントローラは、第3部分に収容されていてもよい。本態様によれば、モータおよび締結機構の収容部である第1部分と、バッテリの保持部である第2部分とを接続する第3部分の内部を有効活用してコントローラを配置し、モータやバッテリとの配線を容易化することができる。更に、本態様において、コントローラは、長さ、幅および厚さを有し、長さ、幅および厚さのうち、長さが最大であって、長さ方向が駆動軸に対して傾斜するように配置されていてもよい。本態様によれば、第3部分の大型化を抑制しつつ、コントローラを合理的に配置することができる。
【0013】
本発明の一態様において、締結工具は、バッテリの第2係合部に物理的に係合可能な第1係合部と、バッテリの第2端子に電気的に接続可能な第1端子とを備えたバッテリホルダを更に備えてもよい。そして、バッテリホルダは、弾性部材を介して第2部分に保持されていてもよい。本態様によれば、バッテリが衝撃を受けた場合に、バッテリホルダが工具本体に対して移動することで、バッテリの損傷の可能性を低減することができる。
【0014】
本発明の一態様において、工具本体は、使用者によって把持される補助ハンドルを装着可能な装着部を有してもよい。本態様によれば、使用者は、必要に応じて補助ハンドルを装着部に装着し、両手でメインハンドルと補助ハンドルとを把持することで、締結工具をより安定して保持することができる。
【0015】
本発明の一態様において、締結工具は、締結工具とは別個に設けられた吊り下げ部材に係合可能に構成され、工具本体に取り付けられた係合部材を更に備えてもよい。そして、工具本体は、係合部材の取り付け位置を変更可能に構成されていてもよい。本態様によれば、使用者は、例えば、吊り下げ部材を係合部材に係合させ、締結工具を上から吊り下げることで、同じ姿勢で継続的に締結工具を保持する負担を軽減することができる。また、使用者は、締結工具の実際の使用姿勢に応じて、係合部材の取付け位置を適切に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】補助ハンドルが装着された締結工具の斜視図である。
【
図5】取付け位置が変更されたフックの説明図である。
【
図8】アウタハウジングが外された状態の締結工具の斜視図である。
【
図11】バッテリホルダおよび弾性部材が分解された状態の締結工具の斜視図である。
【
図12】
図1のXII-XII線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、実施形態に係る締結工具1について説明する。締結工具1は、ファスナを使用して作業材を締結可能な電動式の締結工具である。
【0018】
なお、締結工具1は、複数種類のファスナを選択的に使用可能であるが、以下の説明では、
図1に示すファスナ8を例示する。ファスナ8は、複数部材加締め式のファスナ(multi-piece swage type fastener)と称される公知のファスナの一例である。ファスナ8は、ピン81と、カラー85とで構成されている。
【0019】
ピン81は、軸部811と、軸部811の一端部に一体的に形成されたヘッド815とを含む。カラー85は、軸部811を挿通可能な円筒状の部材である。カラー85の一端部には、フランジ851が設けられている。ピン81とカラー85とは、元々は互いに別体として形成されている。締結工具1によってピン81がカラー85に対して軸方向に引っ張られることでカラー85が変形し、ピン81のヘッド815と、ピン81の軸部811に加締められたカラー85とで作業材Wが締結される。
【0020】
なお、複数部材加締め式のファスナには、ピンの軸部の一部(ピンテールまたはマンドレルともいう)が破断して引きちぎられるタイプ(以下、単に、破断タイプともいう)、および、ピンの軸部が破断せずにそのまま維持されるタイプ(以下、単に非破断タイプともいう)がある。ファスナ8は、非破断タイプである。
【0021】
以下、締結工具1の概略構成について説明する。
【0022】
図1および
図2に示すように、締結工具1の外郭は、主に、工具本体10と、ハンドル17と、ノーズ16とによって形成されている。工具本体10は、モータ21、駆動機構3等を収容する。工具本体10には、バッテリ93を装着可能であって、締結工具1は、バッテリ93から供給される電力で動作する。ハンドル17は、使用者によって把持される長尺の筒状体である。ハンドル17の両端は、工具本体10に連結されており、工具本体10およびハンドル17は、全体として略D字状の環状部(リング)を形成する。ノーズ16は、所定の駆動軸A1に沿って延在するように、工具本体10に連結されている。ハンドル17は、駆動軸A1の延在方向において、ノーズ16とは反対側に配置されており、駆動軸A1に交差する方向(詳細には、概ね直交する方向に延在する。ハンドル17は、使用者によって引き操作(押圧操作)されるトリガ171を備えている。
【0023】
使用者が、ファスナ8をノーズ16の先端部に係合させ、トリガ171を引き操作すると、モータ21が駆動される。モータ21の動力によって、駆動機構3が、ピン81をカラー85に対して後方に強く引っ張り、ファスナ8を変形させることで、作業材Wを締結する。
【0024】
以下では、締結工具1の方向に関して、説明の便宜上、駆動軸A1の延在方向を締結工具1の前後方向と規定する。前後方向において、ノーズ16が配置されている側を前側、反対側(ハンドル17が配置されている側)を後側と定義する。また、駆動軸A1に直交し、ハンドル17の長軸方向に対応する方向を上下方向と規定する。上下方向において、ハンドル17の駆動軸A1に近い端部側を上側、反対側(駆動軸A1から遠い端部側)を下側と定義する。また、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と定義する。
【0025】
以下、締結工具1の詳細構成について説明する。
【0026】
まず、工具本体10およびハンドル17の構成について説明する。
【0027】
図1および
図2に示すように、工具本体10は、前部ハウジング11と、中央ハウジング12と、後部ハウジング13と、アウタハウジング14とが連結されることで形成されている。
【0028】
前部ハウジング11は、円筒状の前側部分と、後方に開口する矩形箱状の後側部分とを含む中空体である。中央ハウジング12は、前部ハウジング11の後側部分に対応する概ね矩形状の支持体であって、前部ハウジング11の後側に配置されている。後部ハウジング13は、前後方向に延在する筒状体であって、前端部から径方向外側に突出する矩形状のフランジ部133を有する。後部ハウジング13は、中央ハウジング12の上側部分の後側に配置されている。前部ハウジング11と、中央ハウジング12と、後部ハウジング13とは、前後方向に連結されて一体化されており、主に、後述するナット41を回転可能に支持する支持部として機能する。前部ハウジング11、中央ハウジング12、および後部ハウジング13は、金属製(より詳細には、アルミニウム合金製)である。なお、前部ハウジング11と、中央ハウジング12と、後部ハウジング13との連結構造の詳細については、後述する。
【0029】
一方、アウタハウジング14は、左右方向に分割された2つの半割体が連結されることで形成されている。より詳細には、2つの半割体は、前部ハウジング11および中央ハウジング12の上側部分が外部に露出し、前部ハウジング11および中央ハウジング12の下側部分と、後部ハウジング13とを挟み込んだ状態で、複数のネジ(図示略)によって連結されている。これにより、アウタハウジング14は、前部ハウジング11と、中央ハウジング12と、後部ハウジング13と一体化されている。このように、本実施形態では、前部ハウジング11と、中央ハウジング12と、後部ハウジング13と、アウタハウジング14とによって、一体的な収容体としての工具本体10が構成されている。なお、アウタハウジング14は、合成樹脂製である。
【0030】
また、工具本体10は、収容部101と、延在部103と、バッテリ保持部106とを含む。
【0031】
収容部101は、工具本体10のうち、モータ21および駆動機構3を収容する部分である。収容部101の上側部分は、駆動軸A1に沿って延在している。収容部101の上側部分は、下側部分よりも前後方向に長く、収容部101の上側部分の後端部は、下側部分の後端よりも後方に突出している。収容部101は、上述の前部ハウジング11と、中央ハウジング12と、後部ハウジング13と、アウタハウジング14の一部とによって構成されている。
【0032】
収容部101の上側部分の前端部(アウタハウジング14から外部に露出する前部ハウジング11の円筒状部分)は、後述する連結スリーブ63が螺合される部分であって、雌ネジ部として構成されている。また、この部分は、補助ハンドル91(
図2参照)を装着可能な装着部111として構成されている。
【0033】
補助ハンドル91は、使用者が必要に応じて作業工具に装着し、メインハンドルであるハンドル17に加えて補助的に使用可能な周知のハンドルである。簡単に説明すると、
図2および
図3に示すように、補助ハンドル91は、把持部911と、当接部913と、ベルト915とを含む。把持部911は、使用者によって把持される長尺状の部分である。当接部913の突出端部は半円状の断面を有する。ベルト915は、環状に形成されており、ボルト916を介して把持部911に連結されている。使用者は、当接部913の突出端部とベルト915とによって形成される環状の空間に装着部111を挿入し、把持部911を当接部913に対して長軸周りに回転させることで、ベルト915を締め付け、補助ハンドル91を作業工具に装着することができる。よって、装着部111の径は、装着部111の外周が当接部913の突出端部に沿うように設定されている。また、装着部111の前後方向の長さは、ベルト915の幅に対応するように設定されている。
【0034】
また、収容部101の上壁141(アウタハウジング14の上壁)には、締結工具1を吊り下げて使用可能とするために、フック145が取り付けられている。フック145は、U字状に湾曲する板状部材であって、ネジ147で上壁141に取り付けられている。本実施形態では、収容部101は、フック145の取付け位置を変更可能に構成されている。
【0035】
具体的には、
図4に示すように、上壁141の下側には、金属製のプレート143が固定されている。プレート143は、左右方向の中心線に沿って、等間隔で設けられた5つのネジ穴144を有する。上壁141には、ネジ穴144と整合する位置に、5つの貫通孔が設けられている。一方、フック145の両端部には、夫々、貫通孔146が設けられている。フック145の貫通孔146の間隔は、隣接する3つのネジ穴144のうち、両端の2つのネジ穴144の間隔と等しい。よって、フック145の取付け可能位置は、3つある。使用者は、ネジ147を外してフック145を取り外し、例えば、
図5に示すように、フック145の貫通孔146を別のネジ穴144と一致する位置にあわせてネジ147を締めることで、フック145の取付け位置を容易に変更することができる。
【0036】
図1および
図2に示すように、延在部103は、工具本体10のうち、収容部101の下端部から突出し、駆動軸A1に交差する方向に延びる中空部分である。より詳細には、延在部103は、全体としては、収容部101の下後端部(モータ21の収容領域)の真下から、後ろ下方向に斜めに延びている。延在部103は、アウタハウジング14の一部によって構成されており、左右一対の側壁と、前壁104と、後壁105とを含む。
【0037】
バッテリ保持部106は、工具本体10のうち、延在部103の下端部から後方に延びる部分である。バッテリ保持部106は、アウタハウジング14の一部によって構成されている。バッテリ保持部106は、バッテリ93を取り外し可能に保持するように構成されている。本実施形態では、バッテリ保持部106には、バッテリホルダ15が弾性連結されており、バッテリ93は、バッテリホルダ15を介してバッテリ保持部106に保持される。バッテリホルダ15については、後で詳述する。
【0038】
ハンドル17は、上述のように、長尺の筒状体である。
図1、
図2および
図6に示すように、ハンドル17の上端は、収容部101のうち上側部分の後端部(つまり、収容部101の下側部分の後端よりも後方に突出する部分)に連結されている。ハンドル17の下端は、バッテリ保持部106の後端部に連結されている。このため、ハンドル17は、収容部101の下側部分および延在部103から後方に離間して、上下方向に延在する。なお、本実施形態では、ハンドル17は、合成樹脂製であって、左右の半割体がネジで互いに連結されることで形成される。ハンドル17の左右の半割体は、夫々、アウタハウジング14の左右の半割体と一体的に形成されている。
【0039】
上述の構成により、前後方向に延在する収容部101と、収容部101の下端部から斜め後ろ下方に延びる延在部103と、延在部103の下端部から後方に延びるバッテリ保持部106と、収容部101の上後端部とバッテリ保持部106の後端部とに両端が連結されたハンドル17とが、環状部(リング)を形成している。
【0040】
以下、工具本体10(収容部101、バッテリ保持部106、延在部103)の内部構造について、順に説明する。
【0041】
まず、収容部101の内部構造について説明する。
【0042】
図7に示すように、収容部101には、モータ21および駆動機構3が収容されている。
モータ21は、収容部101の下側部分の後端部に収容されている。本実施形態では、モータ21には、ブラシレスDCモータが採用されている。モータ21は、ステータおよびロータを含むモータ本体211と、ロータから延設され、ロータと一体的に回転するモータシャフト213とを含む。モータシャフト213の回転軸A2は、駆動軸A1の下側で駆動軸A1と平行に(つまり、前後方向に)延在する。
【0043】
駆動機構3は、モータ21の動力によって、ファスナ8のピン81をカラー85に対して前後方向に移動させるように構成された機構である。より詳細には、駆動機構3は、ピン81を把持するように構成されたピン把持部65を、工具本体10に連結されたアンビル62に対して駆動軸A1に沿って移動させるように構成されている。本実施形態の駆動機構3は、遊星減速機31と、第1中間シャフト32に設けられた駆動ギヤ321と、第2中間シャフト33に設けられたアイドルギヤ331と、ボールネジ機構4とを含む。
【0044】
遊星減速機31は、収容部101の下側部分内で、モータ21の前側に、モータ21と同軸状に配置されている。遊星減速機31は、遊星歯車機構を用いた減速機であって、モータシャフト213から入力されるトルクを増大させ、第1中間シャフト32に出力するように構成されている。本実施形態では、遊星減速機31は、3組の遊星歯車機構を含む3段式の遊星減速機として構成されている。なお、遊星歯車機構の構成自体は周知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0045】
第1中間シャフト32は、工具本体10内で、回転軸A2に沿って遊星減速機31から前方に延びる。第1中間シャフト32は、前部ハウジング11と中央ハウジング12に夫々保持された2つのベアリングによって、回転可能に支持されている。第1中間シャフト32は、遊星減速機31の3段目の遊星歯車機構のキャリヤに連結されており、キャリヤと一体的に回転軸A2周りに回転する。駆動ギヤ321は、第1中間シャフト32の外周部に一体的に設けられている。
【0046】
第2中間シャフト33は、第1中間シャフト32の上側で、第1中間シャフト32と平行に延在する。第2中間シャフト33の前端部および後端部は、夫々、前部ハウジング11と中央ハウジング12に形成された支持孔に嵌合され、支持されている。アイドルギヤ331は、第2中間シャフト33にベアリングを介して支持されており、第2中間シャフト33に対して回転可能である。アイドルギヤ331は、駆動ギヤ321および後述するナット41の被動ギヤ411に噛合しているが、両者の回転数の比(ギヤ比)には影響を与えない。
【0047】
ボールネジ機構4は、ナット41とネジシャフト45とを主体として構成されている。本実施形態では、ボールネジ機構4は、ナット41の回転運動をネジシャフト45の直線運動に変換して、後述のピン把持部65を直線状に移動するように構成されている。
【0048】
ナット41は、長尺の円筒状部材であって、前後方向の移動が規制され、且つ、駆動軸A1周りに回転可能な状態で、工具本体10に支持されている。より詳細には、ナット41の前端部および後端部は、夫々、前部ハウジング11に保持されたベアリング421と、後部ハウジング13に保持されたベアリング422によって回転可能に支持されている。ベアリング421および422は、何れもラジアルベアリングである。
【0049】
また、ナット41には、被動ギヤ411が設けられている。被動ギヤ411は、ナット41の外周面から径方向外側に突出するフランジ状の部分であって、外周にギヤ歯412を有する。被動ギヤ411は、ナット41と一体的に形成されている。被動ギヤ411は、ベアリング421および422の間に配置されている。より詳細には、被動ギヤ411は、ナット41の軸方向(前後方向)の中心位置よりも前側に配置されている。このため、ナット41のうち、被動ギヤ411よりも後側の部分が比較的長く、前側のベアリング421と被動ギヤ411との間よりも、後側のベアリング422と被動ギヤ411との間には、前後方向により大きなスペースが存在する。
【0050】
ネジシャフト45は、駆動軸A1周りの回転が規制され、且つ、駆動軸A1に沿って前後方向に移動可能な状態でナット41に係合している。より詳細には、ネジシャフト45は、長尺体として構成され、駆動軸A1に沿って延在するように、ナット41に挿通されている。詳細な図示は省略するが、ナット41の内周面とネジシャフト45の外周面に夫々形成された溝によって、螺旋状の軌道が規定されている。軌道内には、多数のボールが転動可能に配置されている。ネジシャフト45は、これらのボールを介してナット41に係合している。
【0051】
図8に示すように、ネジシャフト45の後端部には、ネジシャフト45から左方および右方に延びる一対のアームが設けられている。各アームの先端部には、ベアリング455が取り付けられている。一方、工具本体10(詳細には、後部ハウジング13)には、左右一対のガイド部材131が固定されている。ベアリング455は、ガイド部材131のガイド溝内に配置されている。このような構成により、ナット41が駆動軸A1周りに回転されると、ネジシャフト45は、ナット41および工具本体10に対して前後方向に直線状に移動する。
【0052】
また、
図7に示すように、ネジシャフト45の後端部には、延設シャフト451が同軸状に連結固定され、ネジシャフト45に一体化されている。以下、一体化されたネジシャフト45と延設シャフト451を総称して、駆動シャフト450ともいう。
【0053】
詳細な説明は省略するが、本実施形態の締結工具1は、後述するアンビル62およびピン把持部65(
図1参照)を交換することで、上述の非破断タイプのファスナ8のみならず、破断タイプのファスナを用いた作業材の締結も可能である。そこで、
図1に示すように、駆動シャフト450は、破断タイプのファスナから分離されたピンテールを回収するための通路として、駆動軸A1に沿って駆動シャフト450を貫通する貫通孔を有する。収容部101の上側部分の後壁には、断面円形の開口部148が形成されている。非破断タイプのファスナ8が使用される場合には、収容部101の上側部分の後壁には、開口部148を覆うキャップ149が取り外し可能に装着される。一方、詳細な説明および図示は省略するが、破断タイプのファスナが使用される場合には、キャップ149に代えて、ピンテールを収容可能な容器が装着される。
【0054】
締結工程において、ネジシャフト45がナット41に対して前後方向に移動するときには、ナット41には駆動軸A1の延在方向(前後方向)に、反力として、強い軸力(スラスト荷重ともいう)が作用する。このため、
図7に示すように、前後方向において、ナット41の前側には、ナット41に作用する前方への反力を受けるための前側受け部51が設けられている。また、上述の後側のベアリング422と被動ギヤ411との間のスペースには、ナット41に作用する後方への反力を受けるための後側受け部53が設けられている。
【0055】
前側受け部51は、前後方向において、工具本体10に連結された連結スリーブ63の後端面と、ナット41の前端面との間に配置されたスラストベアリング511によって構成されている。より詳細には、スラストベアリング511は、2つの軌道輪と、軌道輪の間に配置された複数の転動体とを含み、2つの軌道輪の夫々が、連結スリーブ63の後端面と、ナット41の前端面とに当接するように配置されている。このような配置により、スラストベアリング511は、締結工程において、ナット41の円滑な回転を許容しつつ、ネジシャフト45の後方への移動に伴って発生するナット41からの前方への反力を受け、連結スリーブ63に伝える。
【0056】
一方、
図9に示すように、後側受け部53は、前後方向において、被動ギヤ411の後端面の後側に配置されている。本実施形態では、後側受け部53は、受け部材54と、被動ギヤ411と受け部材54との間に配置されたスラストベアリング55と、スラストベアリング55と受け部材54の間に介在する弾性部材56とを含む。
【0057】
受け部材54は、締結工程において、ネジシャフト45の前方への移動に伴って発生するナット41からの後方への反力を、被動ギヤ411の後端面を介して受けるための部材であって、被動ギヤ411の後端面の後側に配置されている。なお、受け部材54の後端は、ナット41の後端よりも前側(より詳細には、ベアリング422よりも前側)に位置する。受け部材54は、金属製である。本実施形態では、十分な強度を確保するため、受け部材54は、鉄(または鉄を主成分とする合金)で形成されている。
【0058】
図8~
図10に示すように、受け部材54は、工具本体10のうち、前部ハウジング11に複数のネジ19で固定されている。より詳細には、受け部材54は、円筒状の本体541と、本体541から径方向外側へ突出する矩形板状の連結部543とを含む。
【0059】
上述のように、前部ハウジング11、中央ハウジング12、後部ハウジング13は、前後方向に互いに連結されている。受け部材54は、連結部543が、中央ハウジング12の後壁121と、後部ハウジング13のフランジ部133とによって前後から挟まれ、本体541の前端部および後端部が、中央ハウジング12および後部ハウジング13内に夫々突出するように配置されている。そして、後部ハウジング13のフランジ部133の後側から、後部ハウジング13のフランジ部133、受け部材54の連結部543、および中央ハウジング12の後壁121に夫々形成された貫通孔に、ネジ19が挿通され、前部ハウジング11に形成されたネジ穴に締め付けられている。つまり、受け部材54は、中央ハウジング12および後部ハウジング13と共に、前部ハウジング11に対して後側からネジ19で固定されている。かかる構成により、受け部材54の工具本体10への組付け、および、前部ハウジング11、中央ハウジング12、後部ハウジング13の組付けを効率的に行うことができる。
【0060】
図9に示すように、本実施形態では、受け部材54は、ナット41の円滑な回転を確保するため、スラストベアリング55を介してナット41からの反力(軸力)を受けるように配置されている。このため、スラストベアリング55は、前後方向において、被動ギヤ411と受け部材54との間に配置されている。なお、本実施形態では、前側受け部51のスラストベアリング511(
図7参照)では、転動体として、円筒コロが採用されている。一方、後側受け部53のスラストベアリング55では、転動体として、針状コロが採用されている。これは、締結工程において、ネジシャフト45が後方に移動しつつピン81を強く引っ張るときに比べ、ネジシャフト45が前方へ戻るときにナット41に作用する後方への反力は小さいため、後側受け部53では、軸方向の省スペースを考慮したものである。
【0061】
弾性部材56は、ゴム製の環状部材(いわゆるOリング)であって、前後方向において、スラストベアリング55と、受け部材54の連結部543との間に介在配置されている。より詳細には、弾性部材56は、スラストベアリング55と、連結部543の前側に固定された後壁121との間に、僅かに圧縮された状態で配置されている。ナット41に後方への反力が作用していないときには、スラストベアリング55は、弾性部材56の付勢力により、前側の軌道輪が被動ギヤ411の後端面(より詳細には、被動ギヤ411のうち、ギヤ歯412よりも径方向内側(駆動軸A1側)の根元部分の後端面)に当接する位置で保持されている。このとき、スラストベアリング55(詳細には、後側の軌道輪)と、受け部材54(詳細には、本体541)とは、前後方向に僅かに離間している。つまり、ナット41に後方への反力が作用していないときには、スラストベアリング55と受け部材54との間には、僅かな隙間がある。
【0062】
詳細は後述するが、ナット41に後方への反力が作用すると、弾性部材56は、ナット41およびスラストベアリング55が、スラストベアリング55(詳細には、後側の軌道輪の後端面)が受け部材54(詳細には、本体541の前端面)に当接する位置まで後方へ移動することを許容する(
図16参照)。
【0063】
このように、本実施形態では、受け部材54は、被動ギヤ411の後側で、被動ギヤ411を介してナット41に作用する後方への反力を受ける。特に、本実施形態では、受け部材54の後端は、ナット41の後端よりも前側に配置されている。よって、ナット41の後端面の後側で反力を受ける構成に比べ、締結工具1の前後方向の長尺化を防止することができる。
【0064】
なお、受け部材54とスラストベアリング55とを接触状態で組み付けようとすると、受け部材54とスラストベアリング55には高い寸法精度が要求される。また、本実施形態では、受け部材54は、中央ハウジング12を挟んで前部ハウジング11に連結されるため、組付け時の誤差も生じうる。これに対し、本実施形態では、受け部材54とスラストベアリング55とは、ナット41に後方への反力が作用していないときには、前後方向に互いから離間し、ナット41に反力が作用すると互いに接触するように、弾性部材56を介して配置されている。よって、受け部材54とスラストベアリング55にはそれほど高い寸法精度が要求されない。このため、製造および組み付けが容易となる。
【0065】
以下、バッテリ保持部106の内部構造について説明する。
【0066】
上述のように、バッテリ保持部106には、バッテリホルダ15が弾性連結されている。
図8、
図11および
図12に示すように、バッテリホルダ15は、バッテリ保持部106(アウタハウジング14)とは別体であって、弾性部材150を介してバッテリ保持部106に保持されている。
【0067】
より詳細には、バッテリ保持部106は、左右一対の側壁と、上壁と、底壁107と、底壁107の中央部から下方に突出する直方体状の突出部108とを含む。突出部108の下端部は、外側に向けて突出する矩形状のフランジ部109を有する。弾性部材150は、矩形ループ状に形成されており、突出部108の外周に装着され、底壁107とフランジ部109との間で保持されている。弾性部材150の外周部には、全周に亘る溝が形成されている。バッテリホルダ15は、矩形の枠状の上壁151と、上壁151から下方に突出する周壁153とを有する。バッテリホルダ15は、上壁151の内側の周縁部が弾性部材150の溝に嵌め込まれた状態で、弾性部材150を介して突出部108に保持されている。このような弾性連結構造により、バッテリホルダ15は、バッテリ保持部106に対して、前後方向、左右方向、上下方向を含む全ての方向に移動可能である。
【0068】
バッテリホルダ15は、バッテリ93を取り外し可能に保持するための構成を有する。バッテリ93は、周知の構成を有する充電式のバッテリ(バッテリパックともいう)であって、側面に設けられた一対の係合溝931と、上端部に設けられた端子部933とを備えている。これに対応して、バッテリホルダ15は、一対の係合溝931に係合可能な一対のレール155と、端子部933に電気的に接続可能な端子部を有する端子台157とを備えている。
【0069】
一対のレール155は、バッテリホルダ15の周壁153のうち、左右の側壁の下端部の内側で前後方向に延在し、一対の係合溝931にスライド係合可能である。端子台157は、バッテリホルダ15の下端部中央部に保持されている。係合溝931とレール155とが係合した状態で、バッテリ93がバッテリホルダ15に対して後側から前方へスライドされ、所定位置に配置されると、バッテリ93の端子部933と端子台157の端子部とが電気的に接続される。また、バッテリ93の上端部には、上下方向に移動可能なフック935が設けられている。バッテリ93が所定位置に配置されると、バッテリホルダ15の係止凹部(図示略)にフック935が係合し、バッテリ93がバッテリホルダ15から外れるのを防止する。
【0070】
なお、本実施形態では、弾性部材150およびバッテリホルダ15は何れも、左右に分割された半割体で構成されている。工具本体10に対するバッテリホルダ15の組付け時には、まず、弾性部材150の左右の半割体が、突出部108の左右から、底壁107とフランジ部109との間に嵌め込まれる。更に、バッテリホルダ15の左右の半割体が、端子台157を挟み込み、且つ、上壁151が左右から弾性部材150の溝に嵌合する状態で、ネジで互いに連結される。バッテリホルダ15は、このようにして、工具本体10(バッテリ保持部106)に弾性連結されている。
【0071】
バッテリホルダ15にバッテリ93が装着された状態で、例えば、落下により、バッテリ93が衝撃を受けた場合、バッテリホルダ15は、弾性部材150を弾性変形させつつ、バッテリ93と共に工具本体10に対して移動する。これにより、バッテリ93に対する衝撃が緩和され、バッテリの損傷の可能性が低減される。
【0072】
以下、延在部103の内部構造について説明する。
【0073】
図1に示すように、延在部103には、締結工具1の動作を制御するためのコントローラ20が収容されている。延在部103の内部空間は、モータ21および駆動機構3を収容する収容部101の内部空間、および、バッテリ93が装着されるバッテリ保持部106の内部空間と連通している。よって、コントローラ20と、モータ21およびバッテリホルダ15の端子部等との配線を容易化することができる。なお、詳細な図示は省略するが、コントローラ20は、ケースと、ケースに収容された回路基板と、回路基板に搭載された制御回路とを含む。なお、本実施形態では、制御回路は、CPU、ROM、RAM、タイマ等を含むマイクロコンピュータとして構成されており、モータ21の駆動を含む締結工具1の動作を制御する。
【0074】
コントローラ20は、全体としては、長さ、幅および厚さを有する略直方体形状に形成されている。コントローラ20は、延在部103内で前壁104に隣接して配置されている。なお、コントローラ20の長さ、幅、厚さのうち、長さが最大で厚さが最小である。コントローラ20は、その長さ方向が、駆動軸A1に対して傾斜するように配置されている。本実施形態では、コントローラ20は、その長さ方向が、延在部103の延在方向と一致するように配置されている。また、コントローラ20の幅方向および厚さ方向は、夫々、延在部103の左右方向、および、前壁104と後壁105の対向方向と一致している。延在部103は、駆動軸A1に対して斜めに延在するため、延在方向において最も長さを確保しやすい。よって、コントローラ20の向きをこのように設定することで、延在部103の左右方向の幅や前後方向の厚さを抑制しつつ、コントローラ20を延在部103内に合理的に配置することができる。
【0075】
また、
図11および
図12に示すように、延在部103には、操作・表示部23が設けられている。操作・表示部23は、使用者による外部操作に応じて各種情報を入力可能な操作部231と、各種情報を表示可能な表示部233とを含む。操作・表示部23は、延在部103の後壁105(つまり、ハンドル17に対向する面)に、後側から操作および視認ができるように配置されている。
【0076】
本実施形態では、操作部231は、複数の押しボタン式スイッチを含む。例えば、使用者は、操作部231を操作することで、モータ21の制御条件(例えば、使用されるファスナの種類に応じたモータ21の駆動電流の目標値)を入力することができる。操作部231は、図示しない電線によってコントローラ20に接続されており、入力された情報に対応する信号をコントローラ20に出力する。また、表示部233は、複数の7セグメントLEDを含む。表示部233は、図示しない電線によってコントローラ20に接続されており、コントローラ20からの制御信号に応じて、各種情報(例えば、設定されたモータ21の制御条件に関する情報)を表示する。
【0077】
以下、ハンドル17の詳細な配置、およびハンドル17の内部構造について説明する。
【0078】
図1に示すように、ハンドル17の上端部の前面側には、トリガ171が設けられている。なお、上述のように、ハンドル17の上端は、収容部101の上側部分の後端部に連結されている。このため、ハンドル17の上端部は、収容部101の下側部分、つまり、モータ21(モータ本体211)の後方領域に配置されている。なお、モータ本体211の後方領域は、モータ本体211を後方に投影した領域といいかえてもよい。よって、
図6に示すように、ハンドル17の上端部は、後側からみたときに、モータ本体211の外周よりも内側の領域(ステータの外周よりも内側の領域)とオーバーラップする。更に、
図1に示すように、トリガ171は、モータシャフト213の回転軸A2上に配置されている。ハンドル17の中央部および下端部は、延在部103の後方領域に配置されている。
【0079】
なお、ハンドル17は、使用者が握りやすいように比較的細い。また、ハンドル17と工具本体10(収容部101の下側部分と延在部103)との間の距離は、使用者がハンドル17を把持したときに、使用者の手と工具本体10との間にある程度の間隔ができるように設定されている。一方、
図6に示すように、延在部103の左右方向の幅は、ハンドル17の幅よりも広い。また、操作・表示部23は、ハンドル17の下端部に対向するように、延在部103の後壁105に、後側からの操作が可能な向きで配置されている。このため、使用者は、ハンドル17を把持した状態でも、操作部231を視認しやすく、容易に操作を行うことができる。
【0080】
図1に示すように、ハンドル17の内部には、トリガ171の後側に隣接してスイッチ172が収容されている。スイッチ172は、常時にはオフ状態で維持され、トリガ171の引き操作に応じてオン状態とされる。スイッチ172は、図示しない電線によって、コントローラ20(制御回路)に電気的に接続されている。スイッチ172は、オン状態とされると、オン信号をコントローラ20に出力する。
【0081】
以下、ノーズ16の詳細構成について説明する。
図1および
図10に示すように、ノーズ16は、アンビル62と、連結スリーブ63と、ピン把持部65と、連結部材66とを主体として構成されている。
【0082】
アンビル62は、ファスナ8のカラー85に係合可能に構成された長尺の円筒体である。アンビル62は、軸方向に延在するボア621を有する。なお、ボア621の径は、アンビル62の前側部分では概ね均一であるが、前端部のみ、前端に向けて径が大きくなる。つまり、アンビル62の前端部の内周面は、テーパ面として構成されている。一方、アンビル62の後側部分では、ボア621の径は、後方へ向かうにつれて所定位置まで漸増し、所定位置より後ろ側では均一となる。なお、本実施形態では、アンビル62の前側部分と後側部分は互いに連結された別個の部材が連結されることで形成されているが、アンビル62全体が単一の部材で形成されていてもよい。
【0083】
アンビル62は、連結スリーブ63を介して工具本体10に連結され、駆動軸A1に沿って延在する。連結スリーブ63は、長尺の円筒体である。連結スリーブ63の後端部は、工具本体10の装着部111(アウタハウジング14から外部に露出する前部ハウジング11の円筒状部分)の内周部に螺合されている。連結スリーブ63の前端部は、アンビル62の後端部の内周部に螺合されている。
【0084】
ピン把持部65は、ファスナ8のピン81を把持可能に構成され、アンビル62に対し、駆動軸A1に沿って前後方向に相対移動可能に保持されている。ピン把持部65は、基部651と、複数の把持爪653とを備えている。なお、基部651と複数の把持爪653とは、一体的に形成されている。
【0085】
基部651は、アンビル62の後側部分内を摺動可能な筒状部である。基部651は、連結部材66を介してネジシャフト45に連結されている。連結部材66は、連結スリーブ63内を摺動可能な筒状部材である。連結スリーブ63の後端部は、ネジシャフト45の前端部に螺合されている。連結部材66の前端部は、ピン把持部65の基部651の内周部に螺合されている。
【0086】
複数の把持爪653は、基部651の前端から前方へ延び、アンビル62の前側部分内に配置されている。複数の把持爪653は、駆動軸A1を中心とする仮想円周状に等間隔で配置されている。ピン把持部65が
図1に示す初期位置に配置されている場合、把持爪653の前端部654は、ボア621の前端から前方に突出している。前端部654の径方向の厚さは、他の部分よりも若干大きく設定されている。前端部654の後端は、後方に向かって外径が小さくなるテーパ部として構成されている。このような構成により、把持爪653によるピン81の把持力は、ピン把持部65が初期位置から後方へ移動し、前端部654がアンビル62のボア621内に進入して、把持爪653が径方向内側に向けて押圧されるのに伴って増大する。なお、前端部654に形成されたテーパ部と、アンビル62の前端部に形成されたテーパ面とにより、前端部654は、円滑にボア621内に進入することができる。
【0087】
なお、上述のように、締結工具1は、アンビル62およびピン把持部65を交換することで、破断タイプのファスナを用いた作業材の締結も可能である。詳細な説明および図示は省略するが、破断タイプのファスナ用のアンビルおよびピン把持部は、形状は異なるものの、上述のアンビル62およびピン把持部65と実質的に同じ機能を有するものである。
【0088】
以上に説明したように、本実施形態の締結工具1では、工具本体10内には、モータ21およびボールネジ機構4が、モータシャフトの回転軸A2と駆動軸A1とが平行となるように配置されている。更に、ハンドル17の一部(上端部)は、モータ本体211の後方領域内に配置されている。
【0089】
よって、回転軸A2と駆動軸とA1が互いに交差する方向に延在するようにモータ21が配置される場合に比べ、モータ21とボールネジ機構4とを近くに配置しやすい。また、モータ21からボールネジ機構4へ動力を伝達するための第1中間シャフト32や第2中間シャフト33も、回転軸A2および駆動軸A1と平行に配置することができる。このような構成により、モータ21からボールネジ機構4へ、エネルギーロスを抑えた効率的な動力伝達が可能となる。また、駆動機構3全体をコンパクトにすることができる。
【0090】
更に、ハンドル17の一部がモータ本体211の後方領域に配置されているため、使用者は、駆動軸A1に比較的近い位置(重量物に比較的近い位置でもある)でハンドル17を把持することができ、操作性を向上することができる。特に、本実施形態では、トリガ171が、モータシャフト213の回転軸A2上に配置されているため、使用者の手を、ハンドル17のうち、モータ本体211の後方領域に配置された部分(上端部)に確実に誘導することで、操作性の向上に寄与することができる。また、工具本体10とハンドル17とが、環状部を形成するように連結されているため、ハンドル17が片持ち状に連結される場合に比べ、ハンドル17の強度を高め、破損の可能性を低減することができる。
【0091】
以下、ファスナ8を用いた作業材Wの締結工程について説明する。
【0092】
まず、使用者は、操作部231を介して、適宜、モータ21の制御条件(例えば、駆動電流の目標値)を入力する。また、使用者は、ファスナ8を、作業材Wに仮留めする。なお、仮留めとは、
図1に例示するように、ファスナ8のヘッド815が作業材Wの一面に当接するように、作業材Wに形成された貫通孔にピン81の軸部811を挿通し、作業材Wの反対面側から、カラー85を軸部811に遊嵌状に係合させることである。
【0093】
図1に示すように、トリガ171が引き操作されない初期状態では、ネジシャフト45およびピン把持部65は、初期位置(最前方位置)に配置されている。使用者は、ピン81の軸部811の先端部を、複数の把持爪653の前端部654(ボア621から前方に突出する部分)の中心の間隙に嵌め込む。このとき、把持爪653の把持力は、軸部811を緩く把持できる程度である。使用者がトリガ171を引き操作し、スイッチ172がオン状態となると、コントローラ20(制御回路)は、設定された制御条件に従って、モータ21の正転駆動を開始する。遊星減速機31、駆動ギヤ321、被動ギヤ411を経て増大されたトルクがナット41に伝達される。
【0094】
図13に示すように、ナット41の回転に伴い、ネジシャフト45が後方へ移動され、ネジシャフト45に連結されたピン把持部65も後方へ移動される。把持爪653の前端部654がボア621に進入するのに伴い、ピン81の軸部811は、把持爪653によって強固に把持されて、駆動軸A1に沿って後方へ引っ張られる。これにより、
図14に示すように、カラー85もボア621内に進入し、フランジ851がアンビル62の前端面に当接する。カラー85は、アンビル62によって、前方および径方向内側へと強く押圧されて変形し、ピン81のヘッド815との間で作業材Wを強固に挟持した状態で、軸部811に加締められる。なお、カラー85を軸部811に加締めるには、強い負荷が必要である。この負荷は、ピン把持部65、連結部材66、ネジシャフト45を経由して、前方への反力として、ナット41に作用する。
【0095】
これに対し、本実施形態では、前側受け部51(スラストベアリング511)が、ナット41の回転を許容しつつ、ナット41からの前方への反力を受け、連結スリーブ63に伝える。一方、アンビル62は、カラー85を介して作業材Wに押し付けられ、後方への力を受けている。よって、アンビル62および連結スリーブ63は、一体として、軸方向(前後方向)の両端から圧縮方向の力を受けることになる。
【0096】
カラー85がピン81の軸部811に加締められると、作業材Wの締結が終了する。コントローラ20(制御回路)は、加締めが完了するタイミングでモータ21の正転駆動を停止し、ネジシャフト45の後方への移動を停止させる。なお、加締めの完了判断(つまり、ネジシャフト45の後方への移動の停止制御)は、いかなる公知の方法で行われてもよい。コントローラ20は、例えば、モータ21の駆動状態(例えば、モータ21の駆動電流、モータ21の回転数)に基づいて、加締めの完了を判断することができる。コントローラ20は、モータ21の正転駆動を停止した後、モータ21を逆転駆動し、ネジシャフト45を前方へ移動させることで、ネジシャフト45およびピン把持部65を初期位置に戻す。
【0097】
上述のように、ピン81に対するカラー85の加締め時に強い負荷がかけられるため、加締めの完了時には、カラー85は、アンビル62のボア621の前端部に強固に圧着されている。このため、
図15に示すように、軸部811を把持した状態のピン把持部65を前方へ移動させ、カラー85をアンビル62から離脱させるためには、相応に強い負荷が必要とされる。この負荷は、ピン把持部65、連結部材66、ネジシャフト45を経由して、後方への反力として、ナット41に作用する。
【0098】
本実施形態では、被動ギヤ411の後側に配置された後側受け部53が、被動ギヤ411を介して、ナット41に作用する後方への反力を受ける。より詳細には、
図16に示すように、後方への反力により、被動ギヤ411の根元部分の後端面は、スラストベアリング55を押圧する。スラストベアリング55は、弾性部材56を圧縮しつつ、若干後方へ移動し、受け部材54(本体541の前端面)に当接する。受け部材54は、被動ギヤ411の後端面およびスラストベアリング55を介して伝えられた反力を受ける。この間、スラストベアリング55は、ナット41の円滑な回転を許容する。
【0099】
上述のように、受け部材54は、前部ハウジング11に直接締結されるネジ19によって、中央ハウジング12および後部ハウジング13と共に、前部ハウジング11に連結されている。よって、受け部材54が前部ハウジング11ではなく、中央ハウジング12または後部ハウジング13に連結されている場合に比べて、受け部材54が反力を受けても、前部ハウジング11、中央ハウジング12、および後部ハウジング13の連結が緩む可能性を低減することができる。
【0100】
ネジシャフト45およびピン把持部65が初期位置へ戻る過程で、把持爪653の前端部654がボア621から前方へ進出するのに伴い、把持爪653は、径方向外側に移動する。
図17に示すように、ピン把持部65が初期位置に戻ると、カラー85がピン81に加締められた状態のファスナ8は、把持爪653から離脱可能となる。
【0101】
コントローラ20は、ネジシャフト45が初期位置に戻ると、モータ21の逆転駆動を停止する。なお、初期位置に戻ったか否かの判断(つまり、ネジシャフト45の前方への移動の停止制御)は、いかなる公知の方法で行われてもよい。詳細な説明は省略するが、コントローラ20は、例えば、ネジシャフト45の位置を検出可能な位置センサ27の検出結果に基づいて、ネジシャフト45が初期位置に戻ったか否かを判断し、モータ21の逆転駆動を停止することができる。位置センサ27としては、例えば、ネジシャフト45に取り付けられた磁石271を検出可能なホールセンサが採用されうる。
【0102】
なお、詳細な図示は省略するが、使用者は、例えば、作業場に一端が固定され、他端に取付具を有するワイヤを用いて、締結工具1を吊り下げることで、同じ姿勢で継続的に締結工具1を保持する負担を軽減することができる。一方、作業材の配置によって、締結工具1の使用姿勢は変化する。よって、使用者は、実際の使用姿勢に応じて、上述のようにフック145の取付け位置を適切に変更することができる。
【0103】
また、使用者は、必要に応じて、上述のように、装着部111に補助ハンドル91(
図2参照)を取り付けることで、一方の手でハンドル17を、もう一方の手で補助ハンドル91を把持して、締結工具1をしっかりと保持しつつ締結作業を行うことができる。ハンドル17および補助ハンドル91は、夫々、モータ21および駆動機構3という重量物の後側および前側に配置されているため、使用者は、安定して締結工具1を操作することができる。
【0104】
上記実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本発明の各構成要素を限定するものではない。締結工具1は、「締結工具」の一例である。ファスナ8、ピン81、カラー85は、夫々、「ファスナ」、「ピン」、「筒状部」の一例である。モータ21、モータ本体211、モータシャフト213、回転軸A2は、夫々、「モータ」、「モータ本体」「モータシャフト」、「モータシャフトの回転軸」の一例である。ボールネジ機構4は、「締結機構」の一例である。駆動軸A1は、「駆動軸」の一例である。工具本体10は、「工具本体」の一例である。ハンドル17は、「メインハンドル」の一例である。
【0105】
トリガ171は、「第1操作部材」の一例である。収容部101、バッテリ保持部106は、夫々、「第1部分」、「第2部分」の一例である。バッテリ93は、「バッテリ」の一例である。延在部103は、「第3部分」の一例である。操作部231は、「第2操作部材」の一例である。コントローラ20は、「コントローラ」の一例である。バッテリホルダ15、レール155、端子台157(端子部)は、夫々、「バッテリホルダ」、「第1係合部」、「第1端子」の一例である。バッテリ93の係合溝931、端子部933は、夫々、「第2係合部」、「第2端子」の一例である。弾性部材150は、「弾性部材」の一例である。装着部111、補助ハンドル91は、夫々、「装着部」、「補助ハンドル」の一例である。フック145は、「係合部材」の一例である。
【0106】
なお、上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る締結工具は、例示された締結工具1の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示す締結工具1、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
【0107】
例えば、締結工具1は、上述のように、アンビル62およびピン把持部65の交換によって、非破断タイプおよび破断タイプの複数部材加締め式ファスナの何れにも対応可能である。更に、締結工具1は、アンビル62およびピン把持部65の交換によって、ブラインドリベット(またはリベット)と称されるタイプの公知のファスナにも対応可能であってもよい。なお、ブラインドリベットは、一体的に形成されたピンと筒状部(スリーブまたはリベット本体とも称される)とで構成される。ブラインドリベットも、破断タイプの複数部材加締め式ファスナと同様、締結工程において、ピンテールが引きちぎられる。また、締結工具1は、例えば、非破断タイプの複数部材加締め式ファスナ、破断タイプの複数部材加締め式ファスナ、およびブラインドリベットのうち、何れか1つのタイプにのみ対応する専用機であってもよい。
【0108】
工具本体10の形状、構成要素およびその連結態様は、適宜変更されてよい。例えば、延在部103は、駆動軸A1に対して斜めではなく、直交する方向に延在していてもよい。また、例えば、中央ハウジング12および後部ハウジング13は、単一のハウジングに変更されてもよい。例えば、アウタハウジング14は、全体が左右の半割体によって形成されるのではなく、別個に形成された複数の収容体(例えば、箱状体と筒状体)が、固定部材(例えば、ネジ)によって互いに連結されていてもよい。ハンドル17についても、同様に、工具本体10とは別個に形成され、工具本体10に固定部材(例えば、ネジ)によって連結されていてもよい。
【0109】
工具本体10に取り付けられたフック145の形状や大きさ、取付け用のプレート143の構成や配置位置は、適宜変更されてよい。例えば、フック145は、工具本体10の上壁141ではなく、側壁に取り付けられてもよい。フック145は、工具本体10に別個のネジ147で取り付けられるのではなく、フック145自体が、工具本体10に螺合可能であってもよい。また、フック145の取付け可能位置(例えば、ネジ穴144の数)も、適宜変更されうる。なお、フック145は省略されてもよい。
【0110】
工具本体10の内部機構の構成や配置は、例えば以下のように、適宜変更されてよい。
【0111】
例えば、モータ21は、回転軸A2が駆動軸A1と平行に延在するように配置される限り、ブラシ付のモータ、交流モータ、あるいは、ステータの径方向外側にロータが配置されるアウタロータ型のモータに変更されてもよい。
【0112】
駆動機構3において、ボールネジ機構4に代えて、ナットと、ナットに直接係合されたネジシャフトとを備えた送りネジ機構が採用されてもよい。ナット41を支持するベアリング421および422の種類および配置、前側受け部51および後側受け部53の構成要素および配置は、上記実施形態の例示に限られない。なお、破断タイプの複数部材加締め式ファスナ、またはブラインドリベットの専用機では、ネジシャフト45の前方への移動時には、ナット41に作用する後方への反力は小さい。よって、後側受け部53は、省略されてもよい。
【0113】
モータ21からボールネジ機構4へ動力を伝達するための機構は、上記実施形態の例示に限られない。例えば、遊星減速機31に含まれる遊星歯車機構の数は、3以外の数であってもよい。遊星減速機31に代えて、モータ21とボールネジ機構4の間に、遊星歯車機構以外のギヤ列を含むギヤ減速機が配置されてもよい。第1中間シャフト32の駆動ギヤ321と、ナット41の被動ギヤ411の間に配置されたアイドルギヤ331は省略され、駆動ギヤ321と被動ギヤ411とが直接噛合していてもよい。
【0114】
バッテリホルダ15は、バッテリ保持部106ではなく、延在部103の前壁104側に設けられてもよい。また、バッテリホルダ15は省略され、工具本体10(例えば、バッテリ保持部106)が、レール155および端子台157等のバッテリ93の装着部を備えていてもよい。つまり、バッテリ93は、バッテリホルダ15を介さずに、工具本体10に直接装着可能であってもよい。また、締結工具1は、バッテリ93ではなく、外部の交流電源から供給される電力で動作するように構成されてもよい。
【0115】
コントローラ20は、延在部103に代えて、収容部101またはバッテリ保持部106内に配置されてもよい。また、上述のように、延在部103が駆動軸A1に直交する方向に延在する場合にも、コントローラ20は、長さ方向が駆動軸A1に対して傾斜するように、延在部103内に配置されてもよい。この場合も、延在部103の大型化を抑制しつつ、コントローラ20を延在部103内に合理的に配置することができる。操作・表示部23も、同様に、延在部103の後壁105ではなく、例えば、バッテリ保持部106の上壁に設けられてもよい。また、操作部231は、押しボタン式スイッチではなく、スライド式のスイッチ、回動式のダイヤル、あるいは、表示部233と一体化されたタッチスクリーンであってもよい。なお、操作・表示部23は省略されてもよい。
【0116】
ノーズ16の構成や連結態様は、適宜、変更されてよい。例えば、アンビル62の形状や、連結スリーブ63を介した工具本体10への連結態様は変更されてもよい。例えば、アンビル62は、連結スリーブ63を介さずに、直接、工具本体10(装着部111)に螺合可能であってもよい。同様に、ピン把持部65の形状や、連結部材66を介したネジシャフト45への連結態様は変更されてもよい。例えば、ピン把持部65は、連結部材66を介さずに、直接、ネジシャフト45に連結されていてもよい。ピン把持部65は、アンビル62に対する前後方向の相対移動に連動して、複数の把持爪653の把持力が変化するように構成されていればよく、例えば、把持爪653の形状、数等は、適宜、変更されてよい。
【0117】
更に、本発明および上記実施形態の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様のうち少なくとも1つが、上述の実施形態とその変形例、および各請求項に記載された発明の1つまたは複数と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
態様1において、
前記メインハンドルの前記一端は、前記駆動軸および前記回転軸に直交する方向において、前記駆動軸と前記回転軸の間に位置する。
[態様2]
前記締結機構は、ボールネジ機構または送りネジ機構であって、
前記駆動軸周りに回転可能に前記工具本体に支持され、前記モータの前記動力によって、前記駆動軸周りに回転駆動されるように構成された円筒状のナットと、
前記ナットの回転駆動によって、前記駆動軸に沿って移動されるように構成されたシャフトとを含み、
前記第1部分は、
前記ボールネジ機構または前記送りネジ機構を収容する第4部分と、
前記モータを収容する第5部分とを含み、
前記第4部分の後端部は、前記第5部分よりも後方に突出しており、
前記メインハンドルの一端は、前記第4部分の後端部に連結されている。
ボールネジ機構4、ナット41、ネジシャフト45は、夫々、本態様の「ボールネジ機構」、「ナット」、「シャフト」の一例である。収容部101の上側部分および下側部分は、夫々、本態様の「第4部分」および「第5部分」の一例である。
[態様3]
前記モータの動力を前記締結機構に伝達するための中間シャフトを更に備え、
前記中間シャフトの回転軸は、前記駆動軸と平行に延在する。
第1中間シャフト32および第2中間シャフト33の各々は、本態様の「中間シャフト」の一例である。
[態様4]
前記第3部分は、前記第1部分から前記第2部分に向かって、前記駆動軸に対して斜め後方に延在する。
[態様5]
前記第2部分は、前記駆動軸と概ね平行に延在する。
[態様6]
前記装着部は、前記第1部分の前端部に設けられている。
[態様7]
前記係合部材は、フックであって、ネジで工具本体に取り付けられており、
前記工具本体は、前記ネジを締結可能なネジ穴を複数有する。
フック145およびネジ穴144は、夫々、本態様の「フック」および「ネジ穴」の一例である。
【符号の説明】
【0118】
1:締結工具、10:工具本体、101:収容部、103:延在部、104:前壁、105:後壁、106:バッテリ保持部、107:底壁、108:突出部、109:フランジ部、11:前部ハウジング、111:装着部、12:中央ハウジング、121:後壁、13:後部ハウジング、131:ガイド部材、133:フランジ部、14:アウタハウジング、141:上壁、143:プレート、144:ネジ穴、145:フック、146:貫通孔、147:ネジ、148:開口部、149:キャップ、15:バッテリホルダ、150:弾性部材、151:上壁、153:周壁、155:レール、157:端子台、16:ノーズ、17:ハンドル、171:トリガ、172:スイッチ、19:ネジ、20:コントローラ、21:モータ、211:モータ本体、213:モータシャフト、23:操作・表示部、231:操作部、233:表示部、27:位置センサ、271:磁石、3:駆動機構、31:遊星減速機、32:第1中間シャフト、321:駆動ギヤ、33:第2中間シャフト、331:アイドルギヤ、4:ボールネジ機構、41:ナット、411:被動ギヤ、412:ギヤ歯、421:ベアリング、422:ベアリング、45:ネジシャフト、450:駆動シャフト、451:延設シャフト、455:ベアリング、51:前側受け部、511:スラストベアリング、53:後側受け部、54:受け部材、541:本体、543:連結部、55:スラストベアリング、56:弾性部材、62:アンビル、621:ボア、63:連結スリーブ、65:ピン把持部、651:基部、653:把持爪、654:前端部、66:連結部材、8:ファスナ、81:ピン、811:軸部、815:ヘッド、85:カラー、851:フランジ、91:補助ハンドル、911:把持部、913:当接部、915:ベルト、916:ボルト、93:バッテリ、931:係合溝、933:端子部、935:フック、A1:駆動軸、A2:回転軸、W:作業材