IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日揮プラントイノベーション株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-保全管理システム 図1
  • 特許-保全管理システム 図2
  • 特許-保全管理システム 図3
  • 特許-保全管理システム 図4
  • 特許-保全管理システム 図5
  • 特許-保全管理システム 図6
  • 特許-保全管理システム 図7
  • 特許-保全管理システム 図8
  • 特許-保全管理システム 図9
  • 特許-保全管理システム 図10
  • 特許-保全管理システム 図11
  • 特許-保全管理システム 図12
  • 特許-保全管理システム 図13
  • 特許-保全管理システム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】保全管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0631 20230101AFI20240520BHJP
   G06Q 10/087 20230101ALI20240520BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20240520BHJP
【FI】
G06Q10/0631
G06Q10/087
G06Q10/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020111800
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010971
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】502040041
【氏名又は名称】日揮株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】横山 岳志
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-062208(JP,A)
【文献】特開2019-113883(JP,A)
【文献】特開2001-209676(JP,A)
【文献】特開2004-054341(JP,A)
【文献】特開2018-055323(JP,A)
【文献】特開平04-344442(JP,A)
【文献】特開2003-122866(JP,A)
【文献】特開2004-355380(JP,A)
【文献】国際公開第2019/239527(WO,A1)
【文献】特開2007-219573(JP,A)
【文献】特開2006-264988(JP,A)
【文献】特開平06-331507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の状態を検出する検出部により検出された検出値と、前記設備の稼働に必要な設定値との相関性に関して、前記設備を構成する構成部材の特性に応じた重み付けによる機械学習を用いた判定を行い、前記設備を構成する前記構成部材の損耗・劣化度合を前記構成部材ごとに算出し、前記設備の補修時期を予測する予測装置と、
前記構成部材の在庫状態に基づいて前記構成部材を供給する供給スケジュールを生成する物品管理装置と、
前記予測装置の予測結果に基づいて、前記設備の補修に必要な前記構成部材を抽出し、抽出した前記構成部材の在庫状態を前記物品管理装置に問い合わせて前記供給スケジュールを取得し、前記供給スケジュールに基づいて前記構成部材を用いた前記設備の補修に必要な作業工数を算出すると共に、前記作業工数に応じたリソースを算出し、前記設備の補修スケジュールを生成する保全管理装置と、
を備える、保全管理システム。
【請求項2】
前記予測装置は、前記設備における可動部を有する動機械の損耗・劣化度合を算出する、請求項1に記載の保全管理システム。
【請求項3】
前記予測装置は、前記構成部材の前記損耗・劣化度合の算出結果に基づいて、前記構成部材の交換又は補修を判定する、
請求項1または2に記載の保全管理システム。
【請求項4】
前記保全管理装置は、前記作業工数の内容に応じた前記リソースの入札を実施し、前記リソースを確保する、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の保全管理システム。
【請求項5】
前記保全管理装置は、前記構成部材の損耗・劣化度合に応じた補修の作業工数を算出し、前記作業工数に応じた補修業務の入札を実施し、補修作業リソースを確保する、請求項1から4のうちいずれか1項に記載の保全管理システム。
【請求項6】
前記保全管理装置は、前記補修の過去の補修履歴を参照し、前記作業工数を算出する、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の保全管理システム。
【請求項7】
前記保全管理装置は、前記補修時期において前記リソースが不足する場合、前記補修時期を調整して前記リソースの入札を実施し、前記リソースを確保する、
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の保全管理システム。
【請求項8】
前記保全管理装置は、抽出した前記構成部材の在庫が不足する場合、入札を実施し前記構成部材を確保する、
請求項1から7のうちいずれか1項に記載の保全管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油プラントなどの大規模な設備の保全を管理する保全管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
21世紀を迎えた日本において、20世紀の成長を前提としてきた時代とは時代背景が異なり石油精製の状況は、大きな転換点を迎えている。人口の減少や、持続可能な社会の実現に向けた再生可能エネルギーを推進する動向により、国内における石油関連製品の需給のバランスが崩れ、石油の供給過多な状況に変わりつつある。国内における製油所は、需給調整を目的として統廃合が繰り返されており、その数は年々減少している。従って、国内の原油の精製能力は、年々低下しているのが現状である。
【0003】
それに対してアジアなどの経済発展が進行中の地域においては、石油の需要が旺盛であり、製油所の新設・増設が繰り返されている。従って、今後、国内の製油所は、海外の製油所との厳しい競争にさらされることが容易に予測される。しかし、国内の製油所は、過去の経済成長期に整備されたものが多く、老朽化の時期を迎えている。それにもかかわらず、国内の製油所には、競争力強化の観点から安価な原油の調達・精製、精製コストの低減、設備の稼働率の向上などが求められている。
【0004】
このような状況下では、石油業界には生き残りをかけて製油所の現在の運転・安全レベルを維持するばかりでなく、IoT、AIなどのデジタル技術を用いた設備診断を導入し、装置の稼働率を向上させる取り組みが行われている。例えば、特許文献1、特許文献2には、ポンプ等に設けられたセンサの検出値に基づいて、装置の健全性を監視する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-27615号公報
【文献】特開2012-163439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製油所等の大規模な設備の保全においては、個々の装置の補修、交換だけでなく保全に係る作業人員等のリソースを確保し工期を管理する必要がある。特許文献1、特許文献2に記載された技術のように、個々の装置の健全性の監視を行っても、大規模な設備の補修の工期や内容を把握するための全体的な保全に関するスケジュール管理を行うことは困難であった。
【0007】
本発明は、大規模な設備の健全性を監視すると共に、全体的な保全に関するスケジュールを管理することができる保全管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、設備の状態を検出する検出部により検出された検出値と、前記設備の稼働に必要な設定値との相関性に関して、前記設備を構成する構成部材の特性に応じた重み付けによる機械学習を用いた判定を行い、前記設備を構成する前記構成部材の損耗・劣化度合を前記構成部材ごとに算出し、前記設備の補修時期を予測する予測装置と、前記構成部材の在庫状態に基づいて前記構成部材を供給する供給スケジュールを生成する物品管理装置と、前記予測装置の予測結果に基づいて、前記設備の補修に必要な前記構成部材を抽出し、抽出した前記構成部材の在庫状態を前記物品管理装置に問い合わせて前記供給スケジュールを取得し、前記供給スケジュールに基づいて前記構成部材を用いた前記設備の補修に必要な作業工数を算出すると共に、前記作業工数に応じたリソースを算出し、前記設備の補修スケジュールを生成する保全管理装置と、を備える、保全管理システムである。
【0009】
本発明によれば、予測装置が自動的に設備の補修時期を予測するため、従来のように人の経験に基づいて判断されていた設備の補修内容と補修時期を正確に把握することができる。本発明によれば、補修内容と補修時期に応じてリソースを確保し工期を自動的に管理できる。
【0010】
本発明の前記予測装置は、前記設備における可動部を有する動機械の損耗・劣化度合を算出してもよい。
【0011】
本発明によれば、予測装置が可動部を有する動機械の損耗・劣化度合を判定するため、設備の状態をリアルタイムに管理することができる。
【0012】
本発明の前記予測装置は、前記構成部材の前記損耗・劣化度合の算出結果に基づいて、前記構成部材の交換又は補修を判定してもよい。
【0013】
本発明によれば、予測装置が構成部材の損耗・劣化度合を算出するため、設備を分解しなくても構成部材の状態を把握することができる。
【0014】
本発明の前記保全管理装置は、前記作業工数の内容に応じた前記リソースの入札を実施し、前記リソースを確保してもよい。
【0015】
本発明によれば、保全管理装置が算出した作業工数に応じてリソースの入札を実施してリソースを確保することにより、補修における管理作業を大幅に低減し、省力化することができる。
【0016】
本発明の前記保全管理装置は、前記構成部材の損耗・劣化度合に応じた補修の作業工数を算出し、前記作業工数に応じた補修業務の入札を実施し、補修作業リソースを確保してもよい。
【0017】
本発明によれば、保全管理装置が作業工数に応じた補修業務の入札を実施することにより、補修作業における管理業務を大幅に低減することができる。
【0018】
本発明の前記保全管理装置は、前記補修の過去の補修履歴を参照し、前記作業工数を算出してもよい。
【0019】
本発明によれば、過去の補修履歴を参照することで、構成部材に対する重複する補修を防止すると共に、損耗・劣化度合に応じた作業工数を正確に算出できる。
【0020】
本発明の前記保全管理装置は、前記補修時期において前記リソースが不足する場合、前記補修時期を調整して前記リソースの入札を実施し、前記リソースを確保してもよい。
【0021】
本発明によれば、補修時期を調整することにより、リソースの不足を解消し、工業地域内における複数の顧客の補修スケジュールを円滑に運用できる。
【0022】
本発明の前記保全管理装置は、抽出した前記構成部材の在庫が不足する場合、入札を実施し前記構成部材を確保してもよい。
【0023】
本発明によれば、構成部材の在庫管理も自動的に行いつつ、在庫が不足する場合は入札により構成部材の確保を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
大規模な設備の健全性を監視すると共に、全体的な保全に関するスケジュールを管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る保全管理システムの構成を示すブロック図である。
図2】設備と設備に接続された予測装置の構成を示すブロック図である。
図3】予測装置の予測結果を示す概念図である。
図4】予測装置の判定方法を示す概念図である。
図5】保全管理装置の構成を示すブロック図である。
図6】予測装置により予測されたポンプの状態を表示する表示画面の一例を示す図である。
図7】予測装置により予測されたポンプの余寿命の表示画面の一例を示す図である。
図8】ポンプの設計データを表示する表示画面の一例を示す図である。
図9】ポンプのシャフトの設計データを表示する表示画面の一例を示す図である。
図10】ポンプの過去の補修履歴を表示する表示画面の一例を示す図である。
図11】ポンプの補修の作業工数を算出する工程を示す図である。
図12】ポンプの作業工数を表示する表示画面の一例を示す図である。
図13】作業スケジュールを表示する表示画面の一例を示す図である。
図14】複数の顧客の全体的な作業スケジュールの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照にしつつ、本発明に係る保全管理システムの実施形態について説明する。
【0027】
図1に示されるように、保全管理システム1は、複数の顧客Am(mは自然数)が有する設備の健全性を監視し、保全の管理を行うシステムである。顧客の数は例示した限りでなく、これ以上あってもよい。各顧客Amは、例えば、石油コンビナート等が集約された工業地域において稼働している製油所、化学工場、石油化学誘導品工場、その他の関連工場等の石油資源に関連した業者である。各顧客Amは、プラントなどの大規模な設備10Amを備える。
【0028】
複数の設備10Amは、ネットワークWに接続され、管理者20が有する保全管理装置22により管理されている。管理者20は、各設備10Amの近隣に配置されていなくてもよく、ネットワークWを介して遠隔地から各設備10Amを管理してもよい。
【0029】
その他、ネットワークWには、各設備10Amの補修に必要な部品、部材、資材等を含む構成部材を保管する倉庫管理者30、各設備10Amの補修に必要なリソースを管理するリソース管理者40、各設備10Amの補修に必要な構成部材の加工を行う加工業者50、構成部材を供給する物品供給者60が接続されている。倉庫管理者30、リソース管理者40、加工業者50、及び物品供給者60は、それぞれ複数の事業者により構成されていてもよい。倉庫管理者30、リソース管理者40、加工業者50、及び物品供給者60は、各設備10Amと同じ工業地域内の近隣に配置していることが望ましい。倉庫管理者30、リソース管理者40、加工業者50、及び物品供給者60は、工業地域外に配置されていてもよい。
【0030】
各設備10Amには、設備の補修時期を予測する予測装置12Amが設けられている。予測装置12Amは、ネットワークWに接続されている。予測装置12Amは、後述のように、各設備10Amの状態を検出する検出部により検出された検出値と、各設備10Amの稼働に必要な設定値との相関性に関して機械学習を用いた判定を行い、各設備10Amを構成する構成部材の損耗度合を算出し、各設備10Amの補修時期を予測する。予測装置12Amの詳しい処理内容については後述する。予測装置12Amは、ネットワークWを介して予測結果を管理者20に送信する。
【0031】
管理者20は、各設備10Amの状態を管理する保全管理装置22を有する。保全管理装置22は、各予測装置12Amから取得した予測結果に基づいて各設備10Amの補修に関する補修スケジュールを生成する。保全管理装置22は、各予測装置12Amから取得した予測結果に基づいて各設備10Amの保全に必要な構成部材を抽出する。保全管理装置22は、抽出した構成部材の在庫状態を倉庫管理者30に問い合わせる。
【0032】
倉庫管理者30は、予め保全管理装置22へのアクセス権が付与されたIDを有する。倉庫管理者30は、構成部材を保管する倉庫を保有している。この倉庫には、各設備10Amの補修に必要な構成部材が保管されている。倉庫管理者30は、各設備10Amの補修に必要な構成部材を一括に管理している。倉庫は、例えば、工業地域において一箇所に集約されている。倉庫は、工業地域内、又は顧客Amの設備10Amの敷地内、その他の場所に分散していてもよい。倉庫管理者30は、物品管理装置32を有している。構成部材には、ICタグ、二次元コードなどが取り付けられ、物品管理装置32により倉庫内の構成部材の在庫、入出荷がリアルタイムに管理されている。構成部材を個体識別して管理ができるのであればICタグ、二次元コード以外のものが用いられてもよい。
【0033】
物品管理装置32は、保全管理装置22から補修に必要な構成部材の問い合わせがあった場合、構成部材の在庫状態に基づいて、構成部材を供給する供給スケジュールを生成する。物品管理装置32は、供給スケジュールを保全管理装置22に送信する。物品管理装置32は、構成部材の在庫が不足する場合、構成部材の不足分を保全管理装置22に通知する。
【0034】
保全管理装置22は、供給スケジュールを取得し、供給スケジュールに基づいて構成部材を用いた各設備10Amの補修に必要な工程と作業時間との関連を示す作業工数を算出する。保全管理装置22は、算出した作業工数に基づいて、作業工数に応じたリソース及び予定価格を算出する。管理者20は、保全管理装置22を介して、算出された作業工数の内容に応じたリソースの入札を実施し、複数のリソース管理者40の応札を受けてリソース管理者40を選定しリソースを確保する。また、保全管理装置22は、作業工数の内容に応じたリソースの入札を自動的に実施してもよい。
【0035】
リソース管理者40は、予め保全管理装置22へのアクセス権が付与されたIDを有する。リソース管理者40は、リソース管理装置42を有し、保有するリソースの管理を行う。リソースとは、例えば、人材、重機、車両、工具等の補修に必要な人的資源、物的資源である。リソース管理者40は、複数の業者が存在してもよい。リソース管理装置42は、保全管理装置22から提示された調達情報の内容と、保有するリソースの状況とを比較し、リソース提供スケジュール及び見積書を生成し、応札する。応札は自動的に行われてもよい。
【0036】
リソース管理装置42は、保全管理装置22から落札通知と補修スケジュールを受信した場合、補修スケジュールに応じてリソースを提供するためのリソース提供スケジュールを確定する。リソース管理者40は、リソース提供スケジュールに応じてリソースを提供する。
【0037】
保全管理装置22は、各設備10Amの構成部材の損耗度合に応じた補修の作業工数を算出し、作業工数に応じた補修業務の入札を実施し、複数の加工業者50の応札を受けて加工業者50を選定し補修作業リソースを確保する。
【0038】
加工業者50は、加工管理装置52を有し、構成部材の製造、補修を行う。加工業者50は、複数の業者が存在してもよい。加工業者50は、加工管理装置52を介して保全管理装置22から提示された調達情報の内容と、保有する補修作業リソースの状況とを比較し、補修作業提供スケジュール及び見積書を生成し、応札する。応札は自動的に行われてもよい。
【0039】
補修作業リソースは、例えば、製造設備、補修設備、人材、資材等の構成部材の補修に必要な人的資源、物的資源である。加工管理装置52は、保全管理装置22から落札通知を受信した場合、補修作業リソースを提供するための納期の情報を含む補修作業提供スケジュールを確定する。加工業者50は、補修作業提供スケジュールに応じて構成部材の製造、補修を行う。
【0040】
上記のように管理者20は、保全管理装置22を介して物品管理装置32から構成部材が不足する通知を受信した場合、不足した構成部材の入札を実施し、複数の物品供給者60の応札を受けて物品供給者60を選定し不足した構成部材を確保する。入札は、保全管理装置22が自動的に行ってもよい。
【0041】
物品供給者60は、供給管理装置62を有し、構成部材の供給を行う。物品供給者60は、部品の種類に応じて複数の業者が存在する。物品供給者60は、保全管理装置22から提示された調達情報の内容と、保有する構成部材の在庫及び供給リソースの状況とを比較し、供給スケジュール及び見積書を生成し、応札する。応札は自動的に行われてもよい。供給リソースは、構成部材を製造するための製造装置、人材、資材等の構成部材の製造に必要な人的資源、物的資源である。物品供給者60は、保全管理装置22から落札通知と補修スケジュールを受信した場合、補修スケジュールに応じて構成部材を製造、出荷するための供給スケジュールを確定する。物品供給者60は、供給スケジュールに応じて構成部材を製造、出荷する。
【0042】
次に、複数の顧客Amが有する設備10Amにおける予測装置12Amの構成について説明する。
【0043】
図2に示されるように、例えば、設備10Amは、プラントなどを有し、流体が流通する配管11APmと、流体を流通させるための動機械11AQmと、流体の熱交換を行う熱交換器11ARmとを備える。設備10Amの構成は、一例であり、他の構成が含まれていてもよい。
【0044】
配管11APmには、複数のセンサPp(pは自然数)が設けられている。複数のセンサPpは、配管11APmにおける検出値を出力する。配管11APmにおいては、気体、液体等の流体が内部を流通することによる腐食、スケールの詰まり、漏れなどの損耗、劣化が生じる。配管11APmの損耗度合の検出のため複数のセンサPpは、例えば、配管11APm周辺の臭気(ガス濃度)、配管11APm周辺の温度、配管11APm内外の音の大きさ、配管11APmの振動値、配管11APm内の流体の流量を検出する。即ち、複数のセンサPpは、配管11APmの損耗に関連する検出値を出力する。
【0045】
動機械11AQmは、例えば、ポンプ等の回転可動部を備える機械である。動機械11AQmには、複数のセンサQq(qは自然数)が設けられている。動機械11AQmにおいては、例えば、ポンプ等に使用されるシャフトの損耗、変形、腐食等により損耗が生じる他、シャフトを回転自在に軸支するベアリングが損耗すると共に、ベアリングに設けられるオイルシールなどが損耗、劣化する。動機械11AQmの損耗度合の検出のため複数のセンサQqは、動機械11AQmにおける検出値を出力する。
【0046】
複数のセンサQqは、例えば、動機械11AQm周辺の臭気(ガス濃度)、動機械11AQm周辺の温度、動機械11AQm周辺(摺動部)の音の大きさ、動機械11AQm本体の振動値、動機械11AQmの回転数を制御する電流値を検出する。即ち、複数のセンサQqは、動機械11AQmの損耗に関連する検出値を出力する。
【0047】
熱交換器11ARmは、例えば、配管11APmの途中に設けられ、配管11APm内を流通する流体の熱交換を行う。熱交換器11ARmにおいては、気体、液体等の流体が内部を流通することによる腐食、流体に含有されるスケールの詰まり、シールの劣化、漏れなどにより損耗、劣化が生じる。熱交換器11ARm損耗度合の検出のためのため熱交換器11ARmには、複数のセンサRr(rは自然数)が設けられている。
【0048】
複数のセンサRrは、例えば、熱交換器11ARmの検出値を出力する。複数のセンサRrは、例えば、熱交換器11ARm周辺の臭気(ガス濃度)、熱交換器11ARmの上流及び下流における温度、熱交換器11ARm周辺の音の大きさ、熱交換器11ARmの振動値、熱交換器11ARm内の流体の流量を検出する。即ち、複数のセンサRrは、熱交換器11ARmの損耗に関連する検出値を出力する。
【0049】
各センサPp,Qq,Rrは、検出部を構成し予測装置12Amに所定のタイミングにおいて検出値を出力する。所定のタイミングとは、例えば、一定時間毎であり、一定時間の間隔は設備10Amの稼働状況に応じて適宜変更される。各センサPp,Qq,Rrは、有線又は無線により検出値を予測装置12Amに送信する。
【0050】
各センサPp,Qq,Rrの出力値の他に、点検作業者による点検結果を予測装置12Amに送信してもよい。設備10Amにおいて、点検作業者は、端末装置11Tを用いて点検項目に情報を入力する。端末装置11Tから予測装置12Amに点検項目に関する情報が送信される。
【0051】
予測装置12Amは、ネットワークWを介して通信する通信部13Amと、演算処理に必要なデータを記憶する記憶部14Amと、各センサPp,Qq,Rrの検出値に基づいて設備10Amの劣化度合を判定する判定部15Amとを備える。判定部15Amは、例えば、可動部を有する動機械11AQmの他、流体が流通する配管11APm、熱交換器11ARm等の設備10Amの構成要素の損耗度合を算出し健全性を判定する。予測装置12Amは、各センサPp,Qq,Rrの検出値、及び端末装置11Tから取得した情報を記憶部14Amに記憶しデータベース化する。
【0052】
判定部15Amは、例えば、ディープラーニングを用いたAIによる機械学習に基づく判定アルゴリズム処理を実行し、検出値に基づいて設備10Amの上記構成要素を構成する構成部材の損耗度合を算出する。判定部15Amは、例えば、教師データに基づく教師あり学習を実行し、設備10Amの損耗度合を算出する。判定部15Amは、稼働開始時において教師データが少ない場合には、検出値に基づいて教師なし学習を実行し、設備10Amのメンテナンスの開始時期を予測する。判定部15Amは、例えば、設備10Amに与える制御値を制御パラメータと設定すると共に、各センサを含む検出部の検出値を検出パラメータと設定する。
【0053】
制御値は、例えば、動機械11AQmに流通する流体の一次側圧力、前記流体の二次側圧力、動機械11AQm内を流通する流体の一次側流量、動機械11AQm内を流通する流体の二次側流量、動機械11AQm内を流通する流体の一次側温度、動機械11AQm内を流通する流体の二次側温度、流体の比重等の設備10Amを稼働させるために設計上予め設定された設定値である。制御パラメータ及び検出パラメータを合わせたものがメンテナンスパラメータと定義される。
【0054】
判定部15Amは、制御パラメータと検出パラメータとを比較し、これらの相関性の学習結果に基づいて設備10Amの損耗度合を算出する。判定部15Amは、構成部材の特性に応じて各制御パラメータ、各検出パラメータに重み付けを行う。
【0055】
判定部15Amは、例えば、配管11APmの損耗度合を判定する場合、流量、温度、臭気等に関連する制御パラメータ及び検出パラメータに重みを付けて判定する。判定部15Amは、例えば、動機械11AQmのベアリングの損耗度合を判定する場合、音、振動、臭気等に関連する制御パラメータ及び検出パラメータに重みを付けて判定する。判定部15Amは、例えば、動機械11AQmのシャフトの損耗度合を判定する場合、温度、音、振動、電流値等に関連する制御パラメータ及び検出パラメータに重みを付けて判定する。判定部15Amは、例えば、熱交換器11ARmの損耗度合を判定する場合、流量、温度、臭気等に関連する制御パラメータ及び検出パラメータに重みを付けて判定する。
【0056】
判定部15Amは、例えば、制御値の各パラメータと検出値の各パラメータとの相関性において経時的な変化を判定し、設備10Amの構成部材の損耗度合を算出する。判定部15Amは、制御値の各パラメータ及び検出値の各パラメータのうちから1つもしくは複数の組み合わせを入力データとし、設備10Amの構成部材の余寿命を算出する。判定部15Amは、制御値の各制御パラメータと検出値の各検出パラメータとのそれぞれの相関性を算出し、損耗に関連する検出値のパラメータの経時的変化が閾値に近づいた場合、構成部材の損耗が進行し余寿命が近づいていると判定する。判定部15Amは、損耗度合の算出結果に基づいて構成部材の交換又は補修を判定する。
【0057】
図3に示されるように、判定部15Amは、損耗度合の算出結果に基づいて、設備10Amの構成部材の補修時期を予測する。判定部15Amは、予め設定された閾値と構成部材の損耗度合とを比較して、所定期間を補修時期に設定する。判定部15Amは、損耗度合が補修を必要とする初期の注意レベルである第1閾値を超えてから損耗度合が限界となる危険レベルである第2閾値に到達する前の期間を補修期間に設定する。
【0058】
図4に示されるように、判定部15Amは、稼働開始時において教師データが少ない場合には、取得したメンテナンスパラメータの検出値に基づいて教師なし学習を実行し、メンテナンス開始時期を判定する。判定部15Amは、損耗度合が少ない場合であるメンテナンスパラメータの初期の検出値の基準値から経時的に損耗が進んで乖離していく傾向を学習し、メンテナンスパラメータの検出値が第1閾値に到達する時期をメンテナンスの開始時期であると予測する。判定部15Amは、予測結果を保全管理装置22に送信する。
【0059】
図5に示されるように、保全管理装置22は、例えば、ネットワークWと通信する通信部24と、複数の顧客Amの設備10Amを統合的に管理する管理部26と、管理に関する情報を表示する表示部27と、複数の顧客Amの管理に関する情報を記憶する記憶部28とを備える。通信部24は、ネットワークWを介して複数の顧客Amとの通信を行う通信インタフェースである。表示部27は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置である。表示部27は、タブレット型端末、スマートフォン等の移動端末により、別体に表示内容が表示されるものであってもよい。
【0060】
記憶部28は、ハードディスクドライブ(HDD)、フラッシュメモリ等の記憶媒体である。記憶部28には、複数の予測装置12Amから取得した予測結果、複数の顧客Amの設備10Amの補修スケジュール、過去の補修履歴等、設備10Amの補修に関する情報が記憶されている。
【0061】
以下、管理部26において実行される処理についてポンプの補修を例示しつつ説明する。
【0062】
ポンプのシャフトは、軸受け部が回転することにより損耗する。管理部26は、顧客Amの予測装置12Amから取得した予測結果を取得する。管理部26は、予測装置12Amから取得した予測結果に基づいて、補修時期が近い設備10Amのポンプを抽出する。
【0063】
図6に示されるように、表示部27の表示画面M1には、設備10Amにおいて補修が必要なポンプが表示される。表示画面M1には、設備10Amにおける複数の動機械11AQm(ポンプ)の損耗度合に応じた注意レベルが表示される。保全管理装置22の操作者は、表示画面にM1に表示された注意が必要な機器の表示を操作により選択する。
【0064】
図7に示されるように、表示画面M2には、例えば、選択されたポンプの損耗度合に基づく補修時期が表示される。管理部26は、抽出された設備10Amにおいて補修が必要な構成部材について、作業工数を算出する。
【0065】
図8に示されるように、表示画面M3には、ポンプの設計データが表示される。ポンプの設計データはデータベース化され、顧客Amと管理者20により共有されている。
【0066】
図9に示されるように、表示画面M4には、シャフトの製作寸法が表示される。シャフトの製作寸法は、保全管理システム1にIDが付与されている複数の加工業者50によりデータベースが共有化されている。シャフトは、損耗度合に基づいて交換又は補修が選択される。シャフトは、耐用年数に達する場合、損耗度合が基準を超えた場合、補修回数が規定回数を超えた場合、交換される。
【0067】
シャフトは、部材からの切削、摺動部分への部分的な耐摩耗性が高い金属の溶射、溶射された金属の切削により作成される。シャフトは、再利用可能な場合、補修される。損耗したシャフトは、例えば、損耗部分に耐摩耗性が高い金属を溶射して肉盛りし、肉盛りされた金属を切削することにより補修される。管理部26は、シャフトの補修の作業工数の算出において構成部材の過去の補修履歴を参照する。
【0068】
図8に示されるように、表示画面M5には、ポンプの過去のメンテナンスの履歴が表示される。ポンプの過去のメンテナンスの履歴はデータベース化されており、記憶部28に記憶され、顧客Amと管理者20により共有されている。管理部26は、過去の補修履歴に基づいて、シャフトの交換、補修を選択する。
【0069】
図11に示されるように、管理部26は、シャフトの補修に必要な加工の作業工数を算出する。管理部26は、シャフトの交換が必要な場合、シャフトの製作及び溶射に係る作業工数を算出する。管理部26は、シャフトを交換せずに補修で対応する場合、シャフトの溶射に係る作業工数を算出する。管理部26は、算出したシャフトの加工の作業工数に基づいて、予定価格を算出する。
【0070】
管理者20は、管理部26が算出した予定価格に基づいて、保全管理装置22を介して加工業者50に対してシャフトの加工に関する補修作業リソースの入札を行う。また、管理者20は、保全管理装置22を介して管理部26が算出した予定価格に基づいて、バーチャルマーケットを生成し、加工業者50に対してシャフトの加工に関する補修作業リソースの入札を行っても良い。加工業者50は、加工管理装置52を介して保全管理装置22から提示された調達情報の内容に基づいて補修作業スケジュール及び見積書を生成し、応札する。管理者20は、複数の加工業者50から応札があった場合、価格、過去の実績、納期等の内容を参照し、シャフトの加工について最適な加工業者50を選定する。
【0071】
シャフトの補修において、シャフトを軸支しているベアリング、オイルシール等は、消耗部品であるためシャフトの補修と同時に交換される。管理部26は、例えば、抽出されたポンプのシャフトの補修において必要なベアリング、オイルシール等の交換部品を抽出する。管理部26は、補修に必要な構成部材の在庫状況を倉庫管理者30の物品管理装置32に問い合わせる。管理部26は、構成部材の在庫がある場合、保全管理装置22から交換部品の納期に関する供給スケジュールを取得する。管理者20は、構成部材の在庫が無い場合、保全管理装置22を介して交換部品の納入に関する入札を行う。保全管理装置22は、構成部材の在庫が無い場合、交換部品の納入に関する入札を自動的に行ってもよい。
【0072】
複数の物品供給者60は、供給管理装置62を介して調達情報の内容に基づいて交換部品の供給スケジュール及び見積書を生成し、応札する。管理者20は、複数の物品供給者60から応札があった場合、価格、過去の実績、納期等の内容を参照し、交換部品の納入について最適な物品供給者60を選定する。
【0073】
図12に示されるように、表示画面M6には、補修作業の作業工数が表示される。管理部26は、加工業者50及び物品供給者60を選定した後、加工業者50の補修作業スケジュール及び、物品供給者60の交換部品の供給スケジュールに基づいて、ポンプの分解、シャフトの脱着、搬出、搬入、ベアリング交換、組み付け等に係る補修作業の作業工数を算出する。管理部26は、算出した補修作業の作業工数に基づいてポンプの補修スケジュールを生成する。
【0074】
保全管理装置22は、複数のリソース管理者40に対して補修スケジュールの内容に応じたリソースの入札を行う。管理者20は、複数のリソース管理者40から応札があった場合、価格、過去の実績、納期等の内容を参照し、リソースについて最適なリソース管理者40を選定する。管理者20は、リソース管理者40を選定し、ポンプの補修作業に関するリソースを確保する。
【0075】
図13に示されるように、表示画面M7には、補修スケジュールが表示される。管理部26は、リソース管理者40から取得したリソース提供スケジュールに基づいて補修スケジュールを調整し確定する。
【0076】
図14に示されるように、管理部26は、ポンプの補修時期において他の設備10Amの補修スケジュールが重複してリソースが不足する場合、補修時期をずらすように調整してリソースの入札を実施し、リソースを確保する。
【0077】
上述したように、保全管理システム1によれば、工業地域における複数の顧客Amの設備10Amの補修スケジュールを調整することにより、補修の時期が分散され、所定の時期に集中することが防止される。保全管理システム1によれば、リアルタイムで設備10Amの損耗度合を監視することにより、設備10Amに対する補修をピンポイントにて行うことができる。保全管理システム1によれば、設備10Amの過去の補修箇所がデータベース化されているため、構成部材の損耗度合に対する補修内容を適切に設定することができる。保全管理システム1によれば、顧客Amは、自己が保有する設備10Amの損耗度合と補修時期を把握することができ、設備10Amの稼働率を向上させることができる。
【0078】
保全管理システム1によれば、人の経験に頼っていた従来方法に比して予測装置12Amが機械学習に基づく判定処理することにより、設備10Amの損耗度合を算出し設備10Amの補修時期を正確に予測できる。保全管理システム1によれば、保全管理装置22が補修作業の内容に応じて関連業者に入札を自動的に実施して業者を選定するため、補修に関するコストを低減することができる。保全管理システム1によれば、補修に関する交換部品を物品管理装置32が自動的に管理するため、交換部品の供給を迅速化すると共に、管理コストを低減することができる。
【0079】
保全管理システム1によれば、設備10Amの保全において、個々の装置の補修に係る作業人員等のリソースを確保し工期を自動的に管理できる。保全管理システム1によれば、大規模な設備10Amの補修の工期や内容を全体的に把握することができる。
【0080】
上述した予測装置12Am、保全管理装置22、物品管理装置32、リソース管理装置42、加工管理装置52、及び供給管理装置62の構成要素のうち、一部又は全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0081】
プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0082】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。例えば、保全管理システム1の管理対象は、工業地域おけるプラント等の設備だけでなく貯蔵施設、発電所等他の設備に適用してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 保全管理システム、11APm 配管、11AQm 動機械、11ARm 熱交換器、11T 端末装置、12Am 予測装置、13Am 通信部、14Am 記憶部、15Am 判定部、20 管理者、22 保全管理装置、24 通信部、26 管理部、27 表示部、28 記憶部、30 倉庫管理者、32 物品管理装置、40 リソース管理者、42 リソース管理装置、50 加工業者、52 加工管理装置、60 物品供給者、62 供給管理装置、Am 顧客、M1―M7 表示画面、Pp センサ、Qq センサ、Rr センサ、W ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14