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特許7490476インプリント方法、インプリント装置、および物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】インプリント方法、インプリント装置、および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240520BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020118477
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2021036578
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2019150694
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】青木 明夫
(72)【発明者】
【氏名】服部 正
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-243805(JP,A)
【文献】特開2013-004744(JP,A)
【文献】特開2011-165855(JP,A)
【文献】特開2010-069762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/30
H01L 21/46
B29C 53/00-53/84
B29C 57/00-59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールドを用いて基板上インプリント材パターンを形成するインプリント方法であって、
前記基板の表面にある異物を押圧する異物押圧工程と、
前記異物押圧工程の後に、前記異物を観察する観察工程と、
前記観察工程の観察結果に基づいて前記基板に供給する前記インプリント材の量又は分布のうち少なくとも一方を調整する調整工程と、
前記調整工程の調整結果に基づいて、前記基板に前記インプリント材を供給する供給工程と、
前記供給工程で供給された前記インプリント材と前記モールドを接触させることによって、前記インプリント材に前記パターンを形成するパターン形成工程と、を含み、
前記異物押圧工程では、前記パターン形成工程の後の前記インプリント材の膜厚よりも前記異物の前記基板の表面からの高さが低くなるように前記異物を押圧することを特徴とするインプリント方法。
【請求項2】
前記異物押圧工程と前記パターン形成工程との間に、押圧された後の異物の状態に応じて、前記異物押圧工程を再度行うことを特徴とする請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項3】
前記異物押圧工程は、前記供給工程の前に行われ、
前記供給工程では、前記異物押圧工程で押圧された前記異物の上にインプリント材が供給されることを特徴とする請求項1または2に記載のインプリント方法。
【請求項4】
前記基板の表面に存在する異物を検出する異物検出工程をさらに有し、
前記異物検出工程で異物が検出された場合に、前記異物押圧工程を行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項5】
前記異物検出工程において、前記基板上の前記異物に関する情報を取得し、取得した前記異物の位置または大きさの少なくとも一方の情報を記憶する工程を有することを特徴とする請求項に記載のインプリント方法。
【請求項6】
前記異物押圧工程において、
前記異物と前記押圧部とを対向させるために、相対的に移動する工程を備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項7】
前記モールドは、1つのショットで複数のチップ領域に前記パターンを形成することができるものであり、前記押圧面の大きさは、前記1つのチップ領域以下の大きさであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項8】
前記押圧面は、前記異物を押圧するための平坦面または凹凸面を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項9】
前記異物押圧工程の前に、前記インプリント材またはコーティング材を前記異物に供給する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項10】
前記コーティング材は、光硬化性を有しており、前記コーティング材を前記異物に供給した後に前記コーティング材に光を照射するコーティング材硬化工程を含むことを特徴とする請求項に記載のインプリント方法。
【請求項11】
モールドを用いて基板上インプリント材パターンを形成するインプリント装置であって、
前記基板に前記インプリント材を供給する供給部と、
前記モールド前記インプリント材とを接触させるための駆動部と、
記基板の表面の異物を押圧する押圧部と、
前記押圧部の押圧後に、前記異物を観察する観察部と、
を有し、
前記押圧部は、前記パターンが形成された後の前記インプリント材の膜厚よりも前記異物の前記基板の表面からの高さが低くなるように前記異物を押圧し、
前記供給部によって供給される前記インプリント材は、前記観察部の観察結果に基づいて前記インプリント材の量又は分布のうち少なくとも一方が調整されていることを特徴とするインプリント装置。
【請求項12】
前記押圧部は、前記インプリント材がショット領域に供給される前に行われ、
前記押圧部で押圧された前記異物の上にインプリント材を供給することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項13】
前記基板上の表面に存在する異物を検出する異物の情報を記憶する記憶部をさらに有し、
前記押圧部は、前記記憶部の情報に応じて、前記異物を押圧することを特徴とする請求項11又は12に記載のインプリント装置。
【請求項14】
前記基板上の表面に存在する異物を検出する異物検出部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項15】
前記押圧面と前記異物を対向させる駆動部を備えたことを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項16】
前記モールドは、1つのショットで複数のチップ領域に前記パターンを形成することができるものであり、前記押圧面の大きさは、前記1つのチップ領域以下の大きさであることを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項17】
モールドを用いて基板上インプリント材パターンを形成するインプリント工程と、
記パターン形成工程の後に、前記基板を加工する加工工程と、
を含み、
前記インプリント工程は、
前記基板の表面にある異物を押圧する異物押圧工程と、
前記異物押圧工程の後に、前記異物を観察する観察工程と、
前記観察工程の観察結果に基づいて前記基板に供給する前記インプリント材の量又は分布のうち少なくとも一方を調整する調整工程と、
前記調整工程の調整結果に基づいて、前記基板に前記インプリント材を供給する供給工程と、
前記供給工程で供給された前記インプリント材と前記モールドを接触させることによって、前記インプリント材に前記パターンを形成するパターン形成工程と、を含み、
前記異物押圧工程では、前記パターン形成工程の後の前記インプリント材の膜厚よりも前記異物の前記基板の表面からの高さが低くなるように前記異物を押圧することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項18】
モールドを用いて基板上のインプリント材にパターンを形成するインプリント方法であって、
前記基板上に前記インプリント材を供給する供給工程と、
前記基板の表面にあり、前記供給工程で供給された前記インプリント材に覆われた異物を押圧する異物押圧工程と、
前記異物押圧工程の後に、前記インプリント材と前記モールドを接触させて、前記インプリント材に前記パターンを形成するパターン形成工程と、を含み、
前記異物押圧工程では、前記パターン形成工程の後の前記インプリント材の膜厚よりも前記異物の前記基板の表面からの高さが低くなるように前記異物を押圧することを特徴とするインプリント方法。
【請求項19】
モールドを用いて基板上のインプリント材にパターンを形成するインプリント装置であって、
前記基板に前記インプリント材を供給する供給部と、
前記モールドと前記インプリント材とを接触させるための駆動部と、
前記供給部によって供給された前記インプリント材に覆われている、前記基板の表面にある異物を押圧する押圧部と、
を有し、
前記押圧部は、前記パターンが形成された後の前記インプリント材の膜厚よりも前記異物の前記基板の表面からの高さが低くなるように前記異物を押圧することを特徴とするインプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置等に用いるインプリント方法および物品の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント装置を用いたインプリント方法の一例を以下に示す。基板(被処理基板)に形成された下地膜と、テンプレート(モールド)に形成された凹凸状のパターンとの間を満たしたインプリント材に、2つのテンプレートの凹凸状のパターンを転写して下地膜上にパターンを形成する方法がある(特許文献1)。
これは事前に行った被処理基板の表面に対する異物検査の結果に基づいた転写領域内の異物の有無に応じて、2つのテンプレートを選択的に使用して押印を行うものである。それによって、2つのテンプレートのうち一方の凹凸パターンを異物による破損から護っている。
【0003】
このインプリント方法によると、異物が存在しないショット領域には第1のテンプレートを用いて押印を行い、異物が存在するショット領域には第2のテンプレートを用いて押印を行う。したがって、第1のテンプレートの凹凸パターンは異物による破損を免れて、継続的に良質な押印に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4660581号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のインプリント方法において、第2のテンプレートが第1のテンプレートと異なる材質やダミー形状を有している場合、それを用いて押印を行えば第1のテンプレートによって形成される本来のパターンを形成することはできない。あるいは第2のテンプレートが第1のテンプレートと全く同等なパターンを有していれば、第2のテンプレートの凹凸パターンは押印のたびに異物の影響を受けて破損箇所が増加して、それを用いて形成されたパターンの欠陥箇所は増大する。
【0006】
そこで、本発明は異物によるモールド(型またはテンプレート)の凹凸パターンの破損をより確実に防ぎつつ本来のインプリントができるインプリント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント方法は、
モールドを用いて基板上インプリント材パターンを形成するインプリント方法であって、
前記基板の表面にある異物を押圧する異物押圧工程と、
前記異物押圧工程の後に、前記異物を観察する観察工程と、
前記観察工程の観察結果に基づいて前記基板に供給する前記インプリント材の量又は分布のうち少なくとも一方を調整する調整工程と、
前記調整工程の調整結果に基づいて、前記基板に前記インプリント材を供給する供給工程と、
前記供給工程で供給された前記インプリント材と前記モールドを接触させることによって、前記インプリント材に前記パターンを形成するパターン形成工程と、を含み、
前記異物押圧工程では、前記パターン形成工程の後の前記インプリント材の膜厚よりも前記異物の前記基板の表面からの高さが低くなるように前記異物を押圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、異物によるモールド(型またはテンプレート)の凹凸パターンの破損を防ぎつつ基板上にインプリント材のパターンを形成することができるインプリント方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施例のインプリント方法の処理を示したフローチャートである。
図2】第1実施例の異物押圧工程の処理を示したフローチャートである。
図3】第1実施例のインプリント方法を示した図である。
図4】第1実施例の基板の例を示した図である。
図5】第2実施例のインプリント方法を示した図である。
図6】第3実施例のインプリント方法を示した図である。
図7】第4実施例のインプリント方法を示した図である。
図8】第5実施例のインプリント方法の処理を示したフローチャートである。
図9】第5実施例の異物押圧工程の処理を示したフローチャートである。
図10】物品の製造方法の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面及び実施例に基づいて詳細に説明する。
【0011】
〔第1実施例〕
図1は第1実施例に係るインプリント装置のインプリント方法における基板(被処理基板、ウェハ)10の1つ以上の転写領域(ショット領域)に対する処理を示したフローチャートである。また、図5には、インプリント装置の構成例が記載されている。図1のフローチャートに示す処理は、図5に示すようなホストコンピュータ18が後述のようにコンピュータプログラムに基づき制御部として各部を統括して制御することで実現される。以下、図5等の符番を参照して説明する。
【0012】
本実施例のインプリント方法は図1に示す通り、まず異物検出工程(S101)において、基板10の表面の全転写領域を含む範囲に対して異物1の検出処理を行う。異物1は基板10の表面に存在する異物である。具体的には、それ以前のインプリント処理で出たインプリント材の硬化物や他の工程あるいは装置を発生源とする金属パーティクル等の異物が想定される。
【0013】
そして検出された異物1に関する情報として、異物1の基板10上における位置、大きさ、高さ、形状、材質の情報の内、少なくとも位置または大きさの情報を記憶(記録)する。記憶はインプリント装置内の記憶部(メモリ)19またはホストコンピュータ(または内部コンピュータ)18に記憶する。なお、記憶部19は記憶手段として機能する。また、検出された異物1に関する情報を記憶後、取得した情報をホストコンピュータ18等に通知する。
【0014】
通知における手段として例えば、コンピュータまたは装置の操作画面上に異物情報を表示させ、ユーザが画面を通して確認できるようにしても良い。異物1の検出には異物検出部16を用いる。異物検出部16に使用するものとして、レーザ光の光束22を照射して異物1を検出する異物検出用光源20を用いても良いし、高解像度カメラやセンサ等であっても良い。なお異物検出部16は異物検出手段としても機能する。
【0015】
次に、転写準備工程(S102)において、基板10の位置決め処理を含む転写の準備を行う。次に転写領域選択工程(S103)において、次にモールド14(型、テンプレート)のパターン形成部の凹凸パターンを接触(押印)させる転写領域(所定のショット領域)をインプリント装置内の記憶部19またはホストコンピュータ18から選択する。
【0016】
続いて、ステップS104においては、異物検出工程(S101)で記録された異物1に関する情報に基づいて、前述の転写領域の表面に1つ以上の異物1が検出されていた場合には、「在る」と判断して異物押圧工程(S105)に進む。異物1が1つも検出されていなかった場合あるいは異物1が所定サイズよりも小さく、インプリント処理時にモールド14を破損させない程度のサイズの場合には、「無い」と判断してインプリント材供給工程(S106)に進む。
【0017】
異物押圧工程(S105)では、基板10の表面に対向する押圧面を先端に備えた図3に示す押圧部2を用いて、前述の転写領域にて検出された異物1を押圧する。なお、図3は第1実施例における押圧部2の動作を示した図である。押圧部2には駆動部3と、駆動部3と一体で移動して異物1を押圧する押圧面を備える先端部4が設けられている。そして異物1の押圧後にインプリント材供給工程(S106)に進む。インプリント材供給工程(S106)では、前述の転写領域、すなわち異物が存在した場合には押圧された異物を覆うように基板上にインプリント材15(レジスト材)を第1ノズル12(供給部)より供給する。その後、パターン形成工程(S107)に進む。
【0018】
なおインプリント材15を供給する供給部は、インプリント材15の供給手段として機能する。パターン形成工程(S107)では、前述の転写領域に供給されているインプリント材15に対して、モールド14のパターン形成部の凹凸パターンを基板10上のインプリント材15に接触させる。そして、その状態でインプリント材15に紫外線等を照射して光硬化させてパターンを形成する。なお、パターン形成部はパターン形成手段としても機能する。
【0019】
次に、ステップS108において、まだパターン形成が行われていない転写領域が「在る」か「無い」か、を判断して、「無い」となった場合には、基板10に対する処理を終了する。ステップS108の判断の結果が「在る」となった場合には、転写領域選択工程(S103)に戻って、次の転写領域(ショット領域)に移動し、同様の処理を繰り返す。
【0020】
以上のように、異物検出工程(S101)によって検出された基板10の所定のショット領域の表面に存在する異物1を、パターン形成工程(S107)の前に基板10の表面に対向させた押圧部2の押圧面によって押圧する異物押圧工程(S105)を有する。従って、本実施例のインプリント方法を実施することにより、検出された基板10の表面上に存在する異物1を押圧することでモールド14を破損させるリスクを低減させることが可能となる。
【0021】
また、異物検出工程(S101)において、基板10の表面の全転写領域を含む範囲に対して異物検出処理を行った後に、転写準備工程(S102)に進むようにしても良い。そして転写の準備を行った後、転写領域選択工程(S103)に進む。次に転写領域をインプリント装置内の記憶部19またはホストコンピュータ18から選択する。その後、ステップS104を省略し、異物押圧工程(S105)において、異物検出工程(S101)にて検出された異物1を有するすべての転写領域に対し押圧を順次実施する。
【0022】
その後、インプリント材供給工程(S106)に進み、同様の処理を繰り返すようにしても良い。なお、異物検出工程(S101)において異物1が検出されなかった場合、異物押圧工程(S105)を省略する。これにより、異物1が「在る」か「無い」か、をショット領域毎に判断する工程を省略できるため工程の短縮ができ、スループットの向上が図れる。また、検出された基板10の表面上に存在する異物1について押圧を実施するため、その後でそのショット領域にインプリント処理をしてもモールド14を破損させるリスクを低減させることができる。
【0023】
また、異物検出工程を、図4に示すように、1ショット領域6毎に異物1の検出を行っても良い。その場合、転写準備工程(S102)と転写領域選択工程(S103)を行った後に異物検出工程(S101)行う。転写の準備を行った後、転写領域を選択し、その後、転写領域内の1ショット領域6毎に対して異物1が「在る」か「無い」か、を判断する(S104)。異物1が「在る」場合には、異物押圧工程(S105)に進み、検出された異物1を押圧し、インプリント材供給工程(S106)に進む。
【0024】
異物1が「無い」場合には、インプリント材供給工程(S106)に進む。次にパターン形成工程(S107)において、インプリント材供給工程(S106)でモールド14のパターン形成部の凹凸パターンを転写領域に供給されているインプリント材15に接触させてパターンを形成する。
【0025】
そして、ステップS108において、まだパターン形成が行われていない転写領域が「在る」か「無い」か、を判断して、「無い」となった場合には、基板10に対する処理を終了する。ステップS108の判断の結果が「在る」となった場合には、転写領域選択工程(S103)に戻って、異物検出工程(S102)に進み、同様の処理を繰り返す。
【0026】
これにより、転写領域を選択する度に異物1の検出を行う為、例えばパターン形成後で次の転写領域選択前に付着したような異物1についてもインプリント直前に検出し押圧することが可能となる。従って、モールド14を破損させるリスクを軽減することができる。なお、インプリント材供給工程(S106)の後に異物押圧工程(S105)に進むようにしてもよい。その場合、インプリント材15に覆われている異物1に対して押圧をする。これにより異物1の形状等に関わらず正確に異物1を押圧することができる。
【0027】
図2は、図1のフローチャートにおいてサブプロセスとして表現されている異物押圧工程(S105)の処理内容を示すフローチャートである。本実施例の異物押圧工程(S105)の処理内容について図2を用いて説明する。
【0028】
まず異物情報抽出工程(S151)では、異物検出工程(S101)において記録された異物1に関する情報を抽出する。この異物情報の抽出は、これからモールド14のパターン形成部の凹凸パターンを接触させる転写領域に存在することが検出されていて、「押圧完了」の記録が無い異物1に関する情報について抽出をするものである。次に異物移動工程(S152)では、抽出された異物1に関する情報に含まれる基板10上の位置に基づいて、異物1を押圧部2の下に移動する工程を行う。つまり異物1と押圧部2とを対向させるために、異物1を相対的に移動する工程を行う。
【0029】
異物1を押圧部2の下に移動させる手段として、異物1に対し基板10または基板ステージ11を駆動させることにより押圧部下の押圧可能位置に移動させる。また、押圧部2を異物上の押圧可能位置に相対的に移動させる工程を行っても良い。即ち、押圧部2を異物上の押圧可能位置に移動させる手段として、異物1に対し駆動部3を有する押圧部2を相対的に駆動させることにより押圧可能位置に移動させてもよい。本実施例では押圧部2を異物1の上に移動するものも異物移動工程に含まれる。
【0030】
続いて、押圧工程(S153)では、抽出した異物1の大きさ等の情報に基づいて、1つの異物1を押圧部2の押圧面によって基板10に対して所定の押圧力で押圧する。その後で、その異物1について装置内の記憶部19またはホストコンピュータ18に「押圧完了」の記録を残す。その後、まだ押圧処理が行われていない(「押圧完了」の記録が無い)異物1が、次にパターン形成させる転写領域に「在る」か「無い」か、を判断する(S154)。この判断の結果が「在る」と判断した場合にはステップS151に戻って次の異物1に対する処理を進め、「無い」と判断した場合には異物押圧工程(S105)を終了する。
【0031】
異物1を押圧するに際し、基板10に対して垂直な方向に押圧することが好ましいが、異物1の形状等によっては垂直押圧できない場合には押圧部2により垂直から角度が付いた状態で異物1を押圧しても良い。なお、異物1を押圧する場合、押圧を一度だけ行うだけではなく、複数回押圧ができるようにあらかじめ設定を行い、異物1に対して連続した複数回押圧を行っても良い。
【0032】
連続して異物1に対して押圧を行う場合は、押圧工程(S153)を再度行う。この場合、異物1を押圧した後に、異物1の押圧状態に応じて再度異物1を押圧しても良い。さらに、異物押圧工程(S105)の後でパターン形成工程(S107)を行う前の間であれば、好ましいタイミングで一度押圧した異物1を再度押圧するようにして良い。
【0033】
本実施例のインプリント材供給工程(S106)においては、例えば、転写領域毎にインプリント材15を供給するために第1ノズル12(供給部)からインプリント材15を供給する方法を行っても良い。
【0034】
また、本実施例におけるインプリント方法を用いるインプリント装置のインプリントヘッド13、基板ステージ11、供給部等のインプリント処理に関わる構成部材は前述のように図5に示すホストコンピュータ18に有線又は無線の通信回線により接続される。そして、ホストコンピュータ18はこれらの動作を制御する。
【0035】
ホストコンピュータ18は、各種動作を制御するためのコンピュータプログラムを記憶した記憶部19からプログラムを読み込み、コンピュータプログラムを実行するCPUを内蔵している。このように、ホストコンピュータ18はインプリント装置の各部の動作を制御する制御部として機能する。制御部は、インプリント装置の内部に設けてもよいし、インプリント装置とは別の場所に設置し遠隔で制御しても良い。
【0036】
図3は第1実施例における押圧部2の動作を示した図である。押圧部2には駆動部3と、駆動部3と一体で移動して異物1を押圧する押圧面を備える先端部4が設けられている。なお、駆動部3は押圧部2の水平方向の移動と、垂直方向の上下における相対的な移動を可能とする機構を有し、先端部4における押圧面を異物1に対向するように移動可能としている。
【0037】
また、押圧部2はインプリント装置内に1台とは限らず、複数台インプリント装置内に備えても良い。5は基板10表面に存在する異物1の近傍を示している。そして前述の通り、先端部4には基板10の表面に存在する異物1の押圧を行う押圧面が備えられている。押圧面は平坦面または凹凸面で構成されていても良く、円形状や針のような形状で構成されていても良い。またこれらの構成に対し、格子状のスリットや複数の溝を設ける加工を施しても良い。これによって異物を確実にとらえることができる。
【0038】
本実施例によれば、異物押圧工程(S105)が完了した時点で、異物1は基板10の表面で圧潰された状態になる。または、基板10の下地膜に埋没した状態あるいは一部が圧潰して一部が埋没した状態になり、異物押圧工程(S105)前の異物1の基板10の表面からの高さ(突出量)を減少させることができる。ここで基板の表面は基板表面に形成された下地層表面を含む。
【0039】
このような下地膜としては、SiO2やSiNなどの密着層やSOG材料からなる平坦化層やインプリント材が考えられ、このような下地層に対して異物の押圧処理を行うことが考えられる。異物押圧工程を行うことでこのような下地層に異物1を埋没させたり、粉砕させて極力平坦化させることで、パターン形成時にモールド14にダメージが生じることを防止することができる。埋没または平坦化の結果として異物の基板10の表面(または下地層表面)からの高さは、モールドを破損しない程度まで低減することが好ましい。そのために、パターン形成工程後のインプリント材15の残膜厚(RLT:Residual Layer Thickness)よりも低い高さとすればよい。
【0040】
すなわち異物押圧工程では、パターン形成工程の後に残存するインプリント材の表面から突出しない程度に異物が押圧されていればよい。下地膜の平面部から突出量が10nm程度であればモールドを破損しないため、効果があるといえる。なお、押圧部2の押圧面における硬度が異物1の硬度を十分に上回っていることが、異物1を上述した3つの状態の何れかに安定的に導くための条件である。したがって、基板10上に存在する異物1の成分や組成が予めわかっていている場合には、それらから推定される最も高い硬度の物質を上回る硬度の材料を押圧部2の先端部4に用いればよい。
【0041】
例えば、最も硬度の高い異物1が硬度1103Hvの石英であれば、押圧部2の先端部4に硬度2350Hvのセラミックスを蒸着しても良い。周辺環境に存在するあらゆる物質が異物1として基板10の表面に付着する可能性があって最大硬度を特定できない状況にあれば、押圧部2の先端部4の材料としてダイヤモンドを使用して先端部4を構成することは押圧の成果を安定的に得るために有効である。そして、費用対効果を考慮すれば、合成ダイヤモンドが効果的である。
【0042】
図4は第1実施例の基板10の一例を示した図である。ショット領域6は1回のインプリント処理(1ショット)においてインプリントされる領域である。チップ領域7は、1つのショット領域6内に存在するチップ領域である。通常のインプリント処理におけるパターン形成においては1つのショットにより複数のチップ領域にインプリントを行う。そのため1つのショット領域6には複数のチップ領域が包含されている。
【0043】
本実施例では、基板10の1つのショット領域6には4つのチップ領域(2×2個)が配置されているものとする。図4(A)は基板10の1つのショット領域6における1つのチップ領域7に複数の異物1が存在している例を示す図である。図4(B)は、基板10に対して、異物1より大きく、かつ1つのチップ領域以上の大きさである押圧面が図4(A)の異物1を押圧している状態を示す図である。
【0044】
図4(C)は、基板10に対して、1つの異物1より大きく、1つのチップ領域7より小さい押圧面によって、1つのチップ領域7の表面上に存在する異物1のうちの1つを押圧している状態を示す図である。図4(D)は、基板10に対して、2つ以上の異物1より大きく、1つのチップ領域7より小さい押圧面によって異物1を押圧している状態を示す図である。
【0045】
基板10の表面上に存在する異物1についての大きさは様々であり、高さや形状等も異なる。ここで、本実施例における異物押圧工程(S105)を実施する際に、押圧面のサイズは、図4(B)、図4(C)、図4(D)に示すように様々なものが考えられる。例えば押圧面のサイズは、少なくとも基板10に対して、1つのチップ領域に等しい大きさ、またはチップ領域以下の大きさの押圧面とすることが好ましい。このように、押圧面を選択可能とすることにより、基板10の表面に存在する異物1を押圧する際に、異物1の大きさ等を問わずに異物1の押圧を実現することができる。同時にモールド14を破損させるリスクを軽減することができる。
【0046】
〔第2実施例〕
図5は第2実施例のインプリント方法を説明するために構成物を限定して示したインプリント装置の構成とその装置を利用したインプリント処理の工程の流れを示す図である。基板ステージ11は基板10を保持して水平方向に移動させるステージである。第1ノズル12はインプリント材15を吐出するノズルであり、基板10上にインプリント材15を供給する供給部とても機能する。インプリントヘッド13はモールド14を保持してモールド14の姿勢制御およびモールド14の凹凸パターンをインプリント材15に接触させるための上下駆動を行う。
【0047】
さらに内蔵された光源からの紫外線等によってインプリント材15と接触中にインプリント材15を硬化させる機構を有している。モールド14はインプリントヘッド13に保持されたモールドである。インプリント材15はステージ移動中に第1ノズル12から吐出され、紫外線硬化性(光硬化性)を有する。異物検出部16は、異物1の検出に用いる機構であるが、押圧後の異物1の状態を観察する機構としても用いることができる。即ち異物検出部16は異物検出手段及び異物観察手段としても機能する。
【0048】
また、図5(A)は押圧工程(S152)の前の状態であり、図5(B)は異物1に対する押圧を行っている状態を示している。図5(C)は押圧後の異物1を異物検出部16で観察している状態を示している。図5(D)は第1ノズル12からインプリント材15を吐出しながら基板10の表面の押圧された異物1が存在する転写領域にインプリント材15を分布させている状態を示している。図5(E)は転写領域に分布したインプリント材15にモールド14の凹凸パターンを転写している状態を示している。
【0049】
本実施例によれば、転写領域内に存在する異物1を押圧部2の押圧面で押圧することによって、パターン形成工程後のインプリント材15の残膜厚(RLT)よりも低い高さにしているので、モールド14を破損させるリスクを低減させることができる。例えば、半導体メモリ製造において、転写領域内に異物1による影響でモールドに破損が生じると、最終的に製造された半導体メモリが、異物近傍5の回路において欠陥が生じてしまう場合がある。そして、1ショットの転写領域が複数のチップを含む場合には、異物1の存在した部分を含む複数のチップが不良品となってしまう可能性がある。
【0050】
しかし、本実施例のインプリント方法を実施することで、異物1の存在したチップ領域7についても良品とすることができ、仮にそのチップ領域が不良品となっても、残りのチップ領域7は異物1の影響を受けない。さらに、本実施例によれば、異物押圧工程(S105)の後に基板10の表面に異物1が存在した周辺を観察する観察工程を実施し、押圧工程(S105)の成果を評価することができる。この観察工程の結果に基づいて、次回のインプリント材15を供給するインプリント材供給工程(S106)におけるインプリント材15の量または分布のうち少なくとも一方を調整する調整手段及び工程を有しても良い。
【0051】
また、記憶部19またはホストコンピュータ18より、事前に基板10と異物1に対して設定をした数値を抽出する。その後、異物1の押圧後に観察した結果設定値より数値が大きかった場合には押圧工程の成果を十分に得られなかったとして異物1に対し再度押圧を行っても良い。
【0052】
すなわち、異物1の押圧後の異物1の状態を観察し、モールド14を破損させる程度に突出している場合には、モールド14によるインプリント処理を行わずに異物1の異物押圧工程(S105)により再度異物1の押圧を行う。そして、モールド14を破損させない程度まで異物の高さを低減させてからインプリント処理を行う。言い換えると、ホストコンピュータ18が、再度の検出結果に応じて、凹凸パターンを転写するパターン形成工程(S107)を行うかを判断する。判断の結果、モールド14に破損等のダメージが生じるような場合には、パターン形成工程(S107)を行わないように制御しても良い。
【0053】
〔第3実施例〕
図6は、第3実施例のインプリント方法における、インプリント装置外にある異物検出装置内に構成された押圧部2の例を示す図である。異物検出用光源20は基板10の表面に存在する異物1を検出するために基板10の表面にレーザ光の光束22を照射し異物1を検出する。異物検出用センサ21は光束22が基板10の表面に存在する異物1に当たって散乱した散乱光の一部23を検出するためのセンサである。異物検出用ステージ25は駆動機構(不図示)を備えており保持した基板10の表面の広い範囲に光束22を照射させるために基板10を移動させるステージである。
【0054】
図6(A)は異物1が検出された状態を示している。図6(B)は図5(B)と同様に異物1に対する押圧を行っている状態を示している。なお、異物検出の際には、異物検出用光源20以外の異物検出部16を用いて異物1の検出を行っても良い。そして、押圧部2に対して異物検出用ステージ25を駆動させることで、押圧部2の下に異物1が来るように相対的に移動させることができる。
【0055】
なお駆動部3を備えている押圧部2を駆動させることにより、異物1に対して押圧部2を異物1上に相対的に移動させても良い。更には押圧部2と異物検出用ステージ25をともに駆動しても良い。また、異物1の検出のみを異物検出装置内で行い、検出した異物1の位置や大きさ等の情報を異物検査装置内の記憶部19またはインプリント装置内の記憶部19またはホストコンピュータ18に記録する。その後インプリント装置に異物検出済の基板10を搬入し、事前に検出した異物1の情報を読み込み、異物1の押圧処理を行っても良い。
【0056】
本実施例によれば、インプリント装置内に異物検出部16または異物検出部16と押圧部2を設けない構造とできるため、装置の小型化が可能となり、その場合インプリント工程のうち異物検出工程(S101)を省略できるため、スループットの向上が図れる。また、検出された基板10の表面上に存在する異物1についても押圧を実施するため、モールド14を破損させるリスクを低減させることができる。
【0057】
〔第4実施例〕
図7は、第4実施例のインプリント方法における押圧方法を示す図である。コーティング材32は押圧によって生じ得る異物1の飛散防止及び衝撃の緩和を可能とする材料である。第2ノズル33はコーティング材32を異物1上及び異物1の周囲に供給するノズルである。そして、この第2ノズル33により、コーティング材32を異物1上及び異物1の周囲に供給するコーティング材供給工程を行う。
【0058】
また、コーティング材32は光硬化性を有しており、コーティング材供給工程の後に、コーティング材32に光を照射して、コーティング材32を硬化させるコーティング材硬化工程を行い、コーティング材32の硬化を行う。ここで、コーティング材32は塗布時または異物押圧時に異物が飛び散らない程度の粘度を有していれば良く、インプリント材15と親和性があればなお良い。
【0059】
ここで図7(A)は押圧工程(S153)の前の状態を示している。図7(B)は押圧工程(S153)の前に第2ノズル33でコーティング材32を吐出し、異物1及び異物1の周辺に供給している状態を示している。図7(C)は押圧工程(S153)においてコーティング材32を介して押圧部2の先端部4によって異物1を押圧している状態を示している。
【0060】
図7(D)は図7(C)における異物1周辺を拡大した状態を示している。図7(E)はコーティング材32および/または異物1が付着した押圧部2の押圧面及びその周辺を洗浄ユニット34によって洗浄している状態を示している。そして、この洗浄ユニット34により押圧面及びその周辺を洗浄する洗浄工程を行う。ここで洗浄とは、水や泡を用いた洗浄に限らずプラズマ洗浄であっても良く、薬剤による洗浄や超音波による洗浄等であっても良い。
【0061】
本実施例によれば、コーティング材32によって異物1の周辺を覆うことにより、押圧工程(S153)における異物1の飛散を防止することができる。さらに、コーティング材32や異物1が付着した押圧部2の押圧面及びその周辺を洗浄することによって2次汚染を防止することができる。
【0062】
また、第2ノズル33から吐出されるコーティング材32の代わりに第1ノズル12から吐出されるインプリント材15を代用しても同様の効果が得られる。また、インプリント材15は第1ノズル12以外にも第2ノズル33から吐出させても良く、コーティング材32を第1ノズル12から吐出しても良い。
【0063】
コーティング材32として紫外線硬化樹脂を用いる場合には、紫外線を透過する材質の押圧部2の先端部4と、押圧中の押圧部2の先端部4を介して異物1を覆ったコーティング材32を硬化できるようにする。そのために、新たに装置内に設けられた紫外線を照射する光源を用いる。このような押圧部2の先端部4における材料としては、例えば、硬質で紫外線を透過する合成ダイヤモンドが有効である。
【0064】
〔第5実施例〕
図8は、第5実施例のインプリント方法における基板10に対する処理を示したフローチャートである。本実施例のインプリント方法では図8に示す通り、まずインプリント材15の供給前異物検出工程(S201)において、基板10の表面の全転写領域を含む範囲に対して異物検出処理を行う。そして検出された異物1に関する情報として、異物1の基板10上の位置、大きさ、高さ、形状、材質等の内、少なくとも位置または大きさの情報をインプリント装置内の記憶部19またはホストコンピュータ18に記録をする。
【0065】
また、検出された異物1に関する情報を取得後、取得した異物1に関する情報を記憶又はホストコンピュータ18に通知する。次にインプリント材15の全面供給工程(S202)に進んで、基板10の表面の全転写領域を含む範囲に対して供給部よりインプリント材15を供給する。続いてインプリント材15の供給後異物検出工程(S203)において、基板10の表面のインプリント材15が供給された全転写領域を含む範囲に対してS201にて行った異物検出処理を行う。
【0066】
次に、転写準備工程(S204)において、基板10の位置合わせを含む転写の準備を行う。次に、転写領域選択工程(S205)において、次にモールド14のパターン形成部の凹凸パターンを接触させる転写領域をインプリント装置内の記憶部19またはホストコンピュータ18から選択する。
【0067】
次に、ステップS206においては、ステップS201およびステップS203において記録された異物1に関する情報に基づいて、前述した転写領域に1つ以上の異物1が検出されていた場合には、「在る」と判断して異物押圧工程(S207)に進む。異物1が1つも検出されていなかった場合あるいは異物1が所定サイズよりも小さい場合には、「無い」と判断してパターン形成工程(S208)に進む。異物押圧工程(S207)では、基板10の表面に対向する押圧面を先端に備えた押圧部2を用いて、前述の転写領域にて検出された異物1を押圧する。
【0068】
そして異物1の押圧後にパターン形成工程(S208)に進む。パターン形成工程(S208)では、前述の転写領域に供給されているインプリント材15に対してモールド14のパターン形成部の凹凸パターンをインプリント材15に接触させてパターンを形成する。次に、ステップS209において、まだパターン形成が行われていない転写領域が「在る」か「無い」か、を判断して、「無い」と判断した場合には、基板10に対する処理を終了する。
【0069】
ステップS209の判断の結果が「在る」と判断した場合には、転写領域選択工程(S205)に戻って、次のショット領域に移動し、同様の処理を繰り返す。本実施例のインプリント方法を実施することにより、異物1の検出確率を向上させ、検出した異物1を押圧することで、モールド14の破損リスクを低減させることが可能となる。
【0070】
図9は、図8のフローチャートにおいてサブプロセスとして表現されている異物押圧工程(S207)を説明するフローチャートである。フローは図2に示したものと同じである。
本実施例の異物押圧工程(S207)の処理内容について図9を用いて説明する。
まず異物情報抽出工程(S251)では、異物検出工程(S203)において記録された異物1に関する情報を抽出する。この異物情報の抽出は、これからモールド14のパターン形成部の凹凸パターンを接触させる転写領域に存在することが検出されていて、「押圧完了」の記録が無い異物1に関する情報について抽出をするものである。
【0071】
次に異物移動工程(S252)では、抽出された異物1に関する情報に含まれる基板10上の位置に基づいて、異物1を押圧部2の下に移動する工程を行う。異物1を押圧部2の下に移動させる手段として、押圧部2に対して基板10または基板ステージ11を駆動させることにより押圧部下の押圧可能位置に異物1を相対的に移動させる。
【0072】
また、押圧部2を異物上の押圧可能位置に移動させる工程を行っても良い。この場合、押圧部2を異物上の押圧可能位置に移動させる手段として、異物1に対して駆動部3を有する押圧部2を駆動させることにより押圧可能位置に押圧部2を相対的に移動させる。続いて、押圧工程(S253)では、抽出した異物1の情報に基づいて、1つの異物1を押圧部2の押圧面によって基板10に対して押圧する。
即ち、異物押圧工程において、異物と押圧部とを対向させるために、異物のある基板側を移動しても良いし、押圧部側を移動しても良く、両者を相対的に移動する工程を備えれば良い。
【0073】
本実施例においても第1実施例と同様に異物1は圧潰された状態になる。または基板10の下地膜に埋没した状態あるいは一部が圧潰された状態になり、押圧工程の前の異物1の基板表面からの高さを減少させることができる。押圧工程を行うことでこのような下地膜に異物1を埋没させたり、粉砕させて極力平坦化させることで、パターン形成時にモールド14にダメージが生じることを防止することができる。埋没の程度および平坦化の程度としては、異物の基板10の表面(下地層表面)からの高さを、モールド14を破損しない程度まで低減することが好ましく、パターン形成工程後のインプリント材15の残膜厚(RLT)よりも低い高さとすればよい。
【0074】
押圧工程で異物を押圧した後、その異物1について装置内の記憶部19またはホストコンピュータ18に「押圧完了」の通知及び記録を残す。その後、ステップS254において、まだ押圧処理が行われていない(「押圧完了」の記録が無い)異物1が、次にパターン形成させる転写領域に「在る」か「無い」か、を判断する。この判断の結果が「在る」と判断した場合にはステップS251に戻って次の異物1に対する処理を進め、「無い」と判断した場合には異物押圧工程(S207)を終了する。
【0075】
また、本実施例のインプリント材全面供給工程(S202)及びパターン形成工程(S208)における処理条件によっては、インプリント材15の供給前における異物検出工程(S201)を省略しても良い。インプリント材供給後異物検出工程(S203)において記録された異物1に関する情報に基づいて異物押圧工程(S207)を行っても、異物1によるモールド14の損傷を抑えられる場合がある。これにより工程の短縮ができるためスループットの向上が図れる。また、検出された基板10の表面上に存在する異物1によるモールド14の損傷を低減させる効果もある。
【0076】
さらに、本実施例のインプリント材全面供給工程(S202)は、例えば、基板10の全面にインプリント材15を供給するためにスピンコーティングによってインプリント材15を塗布する方法としても良い。なお、これらインプリント材15を供給する供給工程はインプリント装置の内部で行っても良いし、インプリント装置の外部で行っても良い。
なお、以上の実施例において、モールド14の表面の押印用のパターンは凹凸であっても良いし平坦なパターンであっても良い。
【0077】
〔物品製造方法に係る実施例〕
本実施例にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施例の物品の製造方法は、基板に塗布されたインプリント材に上記のインプリント装置を用いてパターンを形成する工程(基板にインプリント処理を行う工程)と、かかる工程でパターンを形成された基板を加工する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、組成物剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施例の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0078】
インプリント装置を用いて成形した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、モールド等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。モールドとしては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0079】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、組成物マスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、組成物マスクは除去される。
【0080】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図10は物品の製造方法の例を示した図である。図10(A)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコン基板等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0081】
図10(B)に示すように、インプリント用のモールド4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図10(C)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zとモールド4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zはモールド4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を、モールド4zを透して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0082】
図10(D)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、モールド4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、モールドの凹部が硬化物の凸部に、モールドの凹部が硬化物の凸部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zにモールド4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0083】
図10(E)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図10(F)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用しても良い。なお、モールド4zとして、凹凸パターンを設けた回路パターン転写用のモールドを用いた例について述べたが、凹凸パターンがない平面部を有する平面テンプレートであっても良い。
【0084】
〔その他の実施例〕
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0085】
また、本実施例における制御の一部または全部を上述した実施例の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワーク又は各種記憶媒体を介してインプリント装置等に供給するようにしてもよい。そしてそのインプリント装置等におけるコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【符号の説明】
【0086】
1 異物
2 押圧部
3 駆動部
4 先端部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10