(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】シャッタ付きアダプタにおけるシャッタ軸の保持構造
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
G02B6/36
(21)【出願番号】P 2020118989
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391005581
【氏名又は名称】三和テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069213
【氏名又は名称】平田 功
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴司
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151560(JP,A)
【文献】国際公開第2014/057265(WO,A2)
【文献】特開2010-008992(JP,A)
【文献】特表2013-502621(JP,A)
【文献】特開2007-052250(JP,A)
【文献】特開2006-220951(JP,A)
【文献】中国実用新案第202837597(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形筐体状の第1アダプタと、前記第1アダプタの筐体端部に左右一対の係止部材を各中央に有するコ字状のアームが対向突設されるとともに、これら各アームの先端側の上下部位に各設けた嵌合凹部に回動自在に軸支されるシャッタ軸を端部に備えた上下一対のシャッタ部材と、該シャッタ部材を閉鎖位置に付勢するバネ部材と、前記第1アダプタのコ字状アームの外周に被せられ、これによって前記コ字状アームの各嵌合凹部に回動自在に軸支されたシャッタ軸を押圧保持させ、かつ前記バネ部材を内壁に当接して係止保持させる矩形筐体状のカバーとからなる第2アダプタとを備え、前記第1アダプタ内において上下一対に配設されたシャッタ部材のうち、少なくともその1つには、差し込まれるプラグのフェルール先端が当接されない窪みを備え、前記バネ部材は、前記シャッタ部材のシャッタ軸の内側に沿って形成された開口部に挿入係止されるよう中央に折曲がり部を具備するとともに、該折曲がり部を介して側面視略直角の二股に形成されたことを特徴とするシャッタ付きアダプタにおけるシャッタ軸の保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ付きアダプタにおけるシャッタ軸の保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、第1のアダプタ本体と、前記第1のアダプタ本体の下端口に弾性的にヒンジ連結される遮蔽ドアと、下端部が前記第1のアダプタ本体の筐体内に挿設される第2のアダプタ本体とを備え、前記第2のアダプタ本体の下端部の端面には延伸柱と係着アームが下方に延在し、前記延伸柱は前記遮蔽ドアのヒンジ連結軸の両端に圧設され、前記係着アームは前記遮蔽ドア外に露出し、前記第1のアダプタ本体の下端に挿設される光ファイバーコネクタ接続部と係着される光ファイバーアダプタが公知である。
【0003】
また、特許文献2に開示されているように、第1のシャッタ部材の前側には枢動軸が形成されており、第1のシャッタ部材の後側から90~180°の角度で延在部が延出し、延在部はその後側に形成された傾斜面を有し、第1のシャッタ部材には横方向に延在するスロットが形成されており、第2のシャッタ板の前側には枢動軸が形成され、第2のシャッタ部材の後側から90~180°の角度で延在部が延出している。そして、第1の光ファイバーコネクタの第2の開口部からの挿入により、前記第1のシャッタ部材および第1の駆動部を押圧して第3の壁に向かって移動させ、かつ前記第2のシャッタ部材および第2の駆動部を押圧して第1の壁に向かって移動させるように構成されている光ファイバーアダプタが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案CN208833957号
【文献】特許第6458093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来における特許文献1では、遮蔽ドアのヒンジ連結軸の両端に上方から係着アームの両端に配設された4本の延伸柱に圧設された構成を有している。一方、特許文献2ではシャッタ軸は単にハウジング内に固定された構成を有している。これら何れの従来技術もシャッタ軸の固定がゆるく軸ズレし易い構成となっている。従って、上下2枚のシャッタ部材の付き合せ端の閉鎖が常に正確な位置にしっかりと保持される可能性が少ない。
【0006】
すなわち、特許文献1では、第2のアダプタ本体の下端部の端面には延伸柱と係着アームが下方に延在し、前記延伸柱は前記遮蔽ドアのヒンジ連結軸の両端に圧設され、前記係着アームは前記遮蔽ドア外に露出し、前記第1のアダプタ本体の下端に挿設される光ファイバーコネクタ接続部と係着されるので、上下2枚の遮蔽ドア(シャッタ部材)の付き合せ端の閉鎖が常に正確な位置にしっかりと保持される可能性が少ない。
【0007】
また、特許文献2では、第1の光ファイバーコネクタの第2の開口部からの挿入により、前記第1のシャッタ部材および第1の駆動部を押圧して第3の壁に向かって移動させ、かつ前記第2のシャッタ部材および第2の駆動部を押圧して第1の壁に向かって移動させるように構成されていて、何れもシャッタ軸の固定がゆるく軸ズレし易い構成となっている。したがって、上下2枚のシャッタ部材の付き合せ端の閉鎖が常に正確な位置にしっかりと保持される可能性が少ない。
【0008】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、上下2枚のシャッタ部材の付き合せ端の閉鎖が常に正確な位置にしっかりと保持されるシャッタ付きアダプタにおけるシャッタ軸の保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明にあっては、雄雌の両プラグを接続するための差込口にシャッタ部材を備えたアダプタであって、該アダプタにはコ字状のアームが対向突設されており、これら各アームの上下部位に嵌合凹部を各設け、該各嵌合凹部内に前記シャッタ部材それぞれの一端に形成されたシャッタ軸を嵌合するとともに、前記アームに被せられるカバーによって当該シャッタ軸を押圧することで、前記シャッタ部材を、前記アダプタ内において回動自在に軸支するよう形成したことを特徴とする。
【0010】
前記アダプタは、雄雌いずれかのプラグが挿入されるとともに、前記コ字状のアームを備えた第1アダプタと、該第1アダプタの前記アーム外周にカバーを取り付けることにより形成される第2アダプタとから形成されていることを特徴とする。
【0011】
端部にシャッタ軸を備えた前記シャッタ部材は、前記アダプタ内において上下一対に配設され、少なくともその1つには、差し込まれるアダプタのフェルールが当接されない窪みを備えていることを特徴とする。
【0012】
前記嵌合凹部は、各アームの先端側に配設されるとともに、円柱状のシャッタ軸が嵌合するよう半円形に形成されていることを特徴とする。
【0013】
前記アームに被せられるカバーによって前記嵌合凹部に嵌合されたシャッタ軸を押圧することで、前記上下一対のシャッタ部材が閉鎖位置で付勢されるようバネ部材を備えたことを特徴とする。
【0014】
前記バネ部材は、前記シャッタ部材のシャッタ軸の内側に沿って形成された開口部に挿入係止されるよう中央に折曲がり部を具備するとともに、該折曲がり部を介して側面視略直角の二股に形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上下2枚のシャッタの付き合せ端の閉鎖が常に正確な位置にしっかりと保持することができる。
【0016】
すなわち、本発明では、雄雌の両プラグを接続するための差込口にシャッタ部材を備えたアダプタであって、該アダプタにはコ字状のアームが対向突設されており、これら各アームの上下部位に嵌合凹部を各設け、該各嵌合凹部内に前記シャッタ部材それぞれの一端に形成されたシャッタ軸を嵌合するとともに、前記アームに被せられるカバーによって当該シャッタ軸を押圧することで、前記シャッタ部材を、前記アダプタ内において回動自在に軸支するよう形成したので、本アダプタは、プラグ挿入前のシャッタ部材の閉鎖時には常に正確な位置にしっかりと保持される。
【0017】
前記アダプタは、雄雌いずれかのプラグが挿入されるとともに、前記コ字状のアームを備えた第1アダプタと、該第1アダプタの前記アーム外周にカバーを取り付けることにより形成される第2アダプタとから形成されているので、前記第2アダプタがカバーの取り付けによって容易に前記第1アダプタに連結形成される。
【0018】
端部にシャッタ軸を備えた前記シャッタ部材は、前記アダプタ内において上下一対に配設され、少なくともその1つには、差し込まれるアダプタのフェルールが当接されない窪みを備えているので、プラグのフェルールに損傷を与えずに差し込むことができる。
【0019】
前記嵌合凹部は、各アームの先端側に配設されるとともに、円柱状のシャッタ軸が嵌合するよう半円形に形成されているので、上下一対のシャッタ部材を同時且つ円滑に回動させることができる。
【0020】
前記アームに被せられるカバーによって前記嵌合凹部に嵌合されたシャッタ軸を押圧することで、前記上下一対のシャッタ部材が閉鎖位置で付勢されるようバネ部材を備えたので、上下一対のシャッタ部材の付き合せ端を常に同一の閉鎖位置に確実に付勢させることができる。
【0021】
前記バネ部材は、前記シャッタ部材のシャッタ軸の内側に沿って形成された開口部に挿入係止されるよう中央に折曲がり部を具備するとともに、該折曲がり部を介して側面視略直角の二股に形成されているので、前記カバーによってバネ部材の一端が押さえることで、中央の折曲がり部を介してのバネ部材の他端で上下一対のシャッタ部材を常に同一の閉鎖位置に確実に付勢させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明を実施するための一形態を示すアダプタの分解斜視図である。
【
図3】アダプタの一例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)は側面図、(e)は下面図である。
【
図4】シャッタ部材を閉じた状態のアダプタの断面図である。
【
図5】シャッタ部材を開いた状態のアダプタの断面図である。
【
図6】下側のシャッタ部材の一例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)は側面図、(e)は下面図、(f)は断面図、(g)は斜視図である。
【
図7】上側のシャッタ部材の一例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)は側面図、(e)は下面図、(f)は断面図、(g)は斜視図である。
【
図8】バネ部材の一例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図9】アダプタの第1の接続工程を示す断面図である。
【
図10】アダプタの第2の接続工程を示す断面図である。
【
図11】アダプタの第3の接続工程を示す断面図である。
【
図12】アダプタの第4の接続工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明に係るシャッタ付きアダプタにおけるシャッタ軸の保持構造の実施の一形態を詳細に説明する。
【0024】
本実施形態は、
図1乃至
図3に示すように、矩形筐体状の第1アダプタ1と、前記第1アダプタ1の筐体端部に一体連結され、差込口に左右で一対となるよう係止部材2a、2bを各中央に有するコ字状のアーム3a、3bが対向突設され、これら各アーム3a、3bの先端側の上下部位に各設けた嵌合凹部4a、4bに回動自在に軸支されるシャッタ軸5a、5bを端部に備えた上下一対のシャッタ部材6a、6bと、シャッタ部材6a、6bを閉鎖位置に付勢するバネ部材7a、7bと、アダプタ1のアーム3a、3bの外周に被せられ、前記バネ部材7a、7bを内壁に当接して係止保持させる角筒筐体状のカバー8と、からなる第2アダプタ1Aとを備えた構成となっている。
【0025】
また、本実施形態では、アダプタ1に上方から装着される、両端に弾性係止片9aを有する略コ字枠状の留め具9を備える。なお、第1アダプタ1側にも差込口に左右で一対となるよう係止部材2a、2bが設けてある。
【0026】
図4及び
図5に示すように、第2アダプタ1Aのアーム3a、3bは、アダプタ1に連接した角筒状の基部10から上下部位に突設され、各アーム3a、3bの先端側の上下部位に各設けた嵌合凹部4a、4bは、円柱状のシャッタ軸5a、5bを回動自在に軸支するよう半円形に形成されている。
【0027】
また、各アーム3a、3bの中間に備えたアーム状の係止部材2a、2bは、シャッタ部材6a、6bの外側まで延びており、第2アダプタのアーム3a、3b中央の開口端に差し込まれた雌側のプラグP2を係止するための、先端に互いに内側に向けられた爪部2cを有している。
【0028】
図6及び
図7に示すように、シャッタ部材6a、6bは、その一端側に円柱状のシャッタ軸5a、5bを備え、その中央には
図8に示す略90°の角度に折り曲げられたバネ部材7a、7bをシャッタ軸5a、5bに沿って挿入係止する開口部11、11が各設けられている。
【0029】
すなわち、前記シャッタ部材6a、6bのシャッタ軸5a、5bを各アーム3a、3bに設けられた嵌合凹部4a、4bに装着して、当該シャッタ部材6a、6bの開口部11、11にバネ部材7a、7bが挿入係止されるよう中央の折曲がり部12が、前記開口部11、11におけるシャッタ軸5a、5bに沿った部位に配置される。そして、前記バネ部材7a、7bの一辺13、13がシャッタ部材6a、6bの背面に当り、前記カバー8の係止孔8aがアーム3a、3bの上下の係止突起3c、3cにより嵌合されて、当該カバー8がアーム3a、3b先端側外周に被せられることでバネ部材7a、7bの他辺14は押し下げられ、シャッタ部材6a、6bは常に閉鎖位置で付勢されるようになっている。
【0030】
上側のシャッタ部材6aの前面は平面であり、また下側のシャッタ部材6bの前面は略中央に窪み15が設けられ、これによって雌側のプラグP2のフェルールF先端が当たらないように形成される一方、外側の外部スリーブSのみ前角部が当たるように形成されている。
【0031】
次に、以上のように構成された形態についての使用・動作の一例について説明する。
【0032】
図9に示すように、第1アダプタ1の一方の開口端には、雄側のプラグP1が装着されている。また、シャッタ部材6a、6bは、バネ部材7a、7bによって互いに閉鎖する位置にある。このとき、シャッタ部材6a、6bのシャッタ軸5a、5bは第2アダプタ1Aの各アーム3a、3bの嵌合凹部4a、4bに嵌合されているとともに、カバー8によって押圧されているため、当該シャッタ部材6a、6bの付き合せ端の閉鎖が常に正確な位置にしっかりと保持されるものとなる。
【0033】
図10に示すように、雌側のプラグP2が第2アダプタ1Aの他方の開口端に挿入されると、シャッタ部材6bの窪み15によってフェルール先端を避けつつ、
図11に示すように、外部スリーブの前角部によって、シャッタ部材6a、6bは押し開けられる。
【0034】
図12に示すように、雌側のプラグP2がさらに進むと、シャッタ部材6a、6bはそれぞれ水平方向に開いて、雄側のプラグP1と合体すると同時に、アダプタ1の係止部材2a、2bの爪部2cによって雌側のプラグP2の外部スリーブSが係止される。
【0035】
以上、説明したように、本実施形態では、シャッタ部材6a、6bのシャッタ軸5a、5bは嵌合凹部4a、4bに回動自在に嵌合されているとともに、カバー8によって押圧されているため、シャッタ部材6a、6bの付き合せ端の閉鎖が常に正確な位置にしっかりと保持されるものとなる。
【符号の説明】
【0036】
P1 雄側のプラグ
P2 雌側のプラグ
S 外部スリーブ
F フェルール
1 第1アダプタ
1A 第2アダプタ
2a、2b 係止部材
2c 爪部
3a、3b アーム
3c 係止突起
4a、4b 嵌合凹部
5a、5b シャッタ軸
6a、6b シャッタ部材
7a、7b バネ部材
8 カバー
8a 係止孔
9 留め具
9a 係止片
10 基部
11 開口部
12 折曲がり部
13 一辺
14 他辺
15 窪み