(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】作業機械、および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240520BHJP
B62D 5/28 20060101ALI20240520BHJP
B62D 5/12 20060101ALI20240520BHJP
B62D 5/065 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
E02F9/20 H
B62D5/28
B62D5/12
B62D5/065 B
(21)【出願番号】P 2020119125
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-06-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】平間 貴大
(72)【発明者】
【氏名】林 圭一
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-074393(JP,A)
【文献】特開2006-348742(JP,A)
【文献】特開平06-017440(JP,A)
【文献】特開2017-087779(JP,A)
【文献】特開2008-044428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
B62D 5/00- 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フレームと、
前記第1フレームに対して回動可能に接続された第2フレームと、
前記第1フレームに対して前記第2フレームを駆動する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダへの作動油の供給量を変更するバルブと、
前記バルブを操作する操作部材と、
前記バルブに前記作動油を吐出する可変容量ポンプと、
前記第1フレームに対する前記第2フレームの回動角度を検出するためのフレーム角度検出部と、
前記フレーム角度検出部の検出値に基づいて、前記可変容量ポンプの吐出流量を減少させるコントローラと、
前記操作部材の操作に基づいて前記バルブの状態を変更するジロータと、備え、
前記バルブは、
第1状態において、前記ジロータと前記可変容量ポンプを接続し、前記油圧シリンダに作動油を供給する第1供給路と前記ジロータとを接続して前記第2フレームを第1方向へ駆動させ、
第2状態において、前記ジロータと前記可変容量ポンプを接続し、前記油圧シリンダへの作動油の第2供給路と前記ジロータとを接続して前記第2フレームを第2方向へ駆動させる、
作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、前記フレーム角度検出部の検出値に基づいて、前記第2フレームが回動可能な範囲のうち終端から所定範囲に位置すると判定した場合、前記可変容量ポンプの吐出流量を減少させる、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記操作部材の操作方向を検出する操作方向検出部を更に備え、
前記コントローラは、前記操作方向検出部の検出値に基づいて、前記操作部材が配置されている前記所定範囲の前記終端に向かって操作されていると判定した場合、前記可変容量ポンプの吐出流量を減少させる、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記操作部材の操作速度を検出する操作速度検出部を更に備え、
前記コントローラは、前記操作速度検出部の検出値に基づいて、前記操作部材が所定閾値以上の速度で操作されていると判定した場合、前記可変容量ポンプの吐出流量を減少させる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項5】
前記可変容量ポンプは、斜板を有し、
前記コントローラは、前記斜板の角度を変更することによって前記可変容量ポンプの吐出流量を減少させる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項6】
前記作業機械は、ホイールローダであって、
前記第1フレームは、リアフレームであり、
前記第2フレームは、フロントフレームであり、
前記フロントフレームの前側に取り付けられた作業機を更に備えた、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項7】
第1フレームと、
前記第1フレームに対して回動可能に接続された第2フレームと、
前記第1フレームに対して前記第2フレームを駆動する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダへの作動油の供給量を変更するバルブと、
前記バルブを操作する操作部材と、
前記バルブに前記作動油を吐出する可変容量ポンプと、
前記操作部材の操作に基づいて前記バルブの状態を変更するジロータと、備え、
前記バルブは、
第1状態において、前記ジロータと前記可変容量ポンプを接続し、前記油圧シリンダに作動油を供給する第1供給路と前記ジロータとを接続して前記第2フレームを第1方向へ駆動させ、
第2状態において、前記ジロータと前記可変容量ポンプを接続し、前記油圧シリンダへの作動油の第2供給路と前記ジロータとを接続して前記第2フレームを第2方向へ駆動させる、作業機械の制御方法であって、
第1フレームに対して回動可能に接続された第2フレームの回動角度を検出することと、
検出された前記回動角度に基づいて、前記第1フレームに対して前記第2フレームを駆動する油圧シリンダへの作動油の供給量を変更するバルブに前記作動油を吐出する可変容量ポンプの吐出量を減少すること、
を備える作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダ等の屈折機構を有する作業機械は、前後の独立したフレームを有し、ステアリング操作を行う際には前後フレームを繋ぐステアリング用の油圧シリンダの伸縮によって車両が屈折する。この油圧シリンダを駆動する作動油がステアリングバルブを介して油圧ポンプによって供給される。
【0003】
ステアリングの最大角度(ステアリング終端)でフロントフレームとリアフレームが接触すると大きな衝撃が発生するため、パイロット駆動式のステアリングシステム(特許文献1参照)では、ステアリングバルブを駆動するパイロット回路にストップバルブと呼ばれる油圧遮断スイッチ付きのバルブが設置される。そして、ステアリングの最大角度付近でパイロット回路を遮断することでフレームの接触による衝撃が緩和されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パイロット式が用いられておらず操舵装置によって直接ステアリングバルブが駆動されるシステムでは、流量が多く圧力が大きいため、上記ストップバルブを用いることができない。この場合、ゴムクッション等をフレームに配置することが考えられるが、旋回による大きなエネルギーをゴムクッションだけで吸収することは難しく、ステアリング終端でショックが発生する。
【0006】
本開示は、ステアリング終端における衝撃を緩和することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る作業機械は、第1フレームと、第2フレームと、油圧シリンダと、バルブと、操作部材と、可変容量ポンプと、フレーム角度検出部と、コントローラと、を備える。第2フレームは、第1フレームに対して回動可能に接続されている。油圧シリンダは、第1フレームに対して第2フレームを駆動する。バルブは、油圧シリンダへの作動油の供給量を変更する。操作部材は、バルブを操作する。可変容量ポンプは、バルブに作動油を吐出する。フレーム角度検出部は、第1フレームに対する第2フレームの回動角度を検出するために設けられている。コントローラは、フレーム角度検出部の検出値に基づいて、可変容量ポンプの吐出流量を減少させる。
【0008】
第2の態様に係る作業機械の制御方法は、以下の処理を備える。第1の処理は、第1フレームに対して回動可能に接続された第2フレームの回動角度を検出することである。第2の処理は、検出された回動角度に基づいて、第1フレームに対して第2フレームを駆動する油圧シリンダへの作動油の供給量を変更するバルブに作動油を吐出する可変容量ポンプの吐出量を減少することである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ステアリング終端における衝撃を緩和することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示にかかる実施の形態の作業機械を示す側面図。
【
図2】
図1のステアリングシステムの構成を示す図。
【
図3】リアフレームに対するフロントフレームの回動可能範囲を示す図
【
図4】フロントフレームのリアフレームに対する回動角度と可変容量ポンプの斜板の角度との関係を示す図。
【
図5】本開示にかかる実施の形態の作業機械の制御方法のフローを示す図。
【
図6】本開示の変形例における作業機械の制御方法のフローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示にかかる作業機械について図面を参照しながら以下に説明する。
【0012】
<構成>
(作業機械の概要)
図1は、本実施の形態の作業機械1の側面図である。本実施の形態の作業機械1は、車体フレーム2と、作業機3と、一対のフロントタイヤ4、キャブ5、エンジンルーム6、一対のリアタイヤ7、ステアリングシステム8(
図2参照)、ステアリングシリンダ9a、9b(油圧シリンダの一例)と、を備えている。
【0013】
なお、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、及び「下」とは運転席から前方を見た状態を基準とする方向を示す。また、「車幅方向」と「左右方向」は同義である。
【0014】
作業機械1は、作業機3を用いて土砂積み込み作業などを行う。
【0015】
車体フレーム2は、いわゆるアーティキュレート式であり、フロントフレーム11とリアフレーム12と、連結軸部13と、を有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方に配置されている。フロントフレーム11は、第2フレームの一例に対応し、リアフレーム12は、第1フレームの一例に対応する。連結軸部13は、車幅方向の中央に設けられており、フロントフレーム11とリアフレーム12を互いに揺動可能に連結する。一対のフロントタイヤ4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられている。また、一対のリアタイヤ7は、リアフレーム12の左右に取り付けられている。
【0016】
作業機3は、図示しない作業機ポンプからの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16と、バケットシリンダ17と、を有する。ブーム14は、フロントフレーム11に装着されている。バケット15は、ブーム14の先端に取り付けられている。
【0017】
リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17は、油圧シリンダである。リフトシリンダ16の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、リフトシリンダ16の他端はブーム14に取り付けられている。リフトシリンダ16の伸縮により、ブーム14が上下に揺動する。バケットシリンダ17の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、バケットシリンダ17の他端はベルクランク18を介してバケット15に取り付けられている。バケットシリンダ17が伸縮することによって、バケット15が上下に揺動する。
【0018】
キャブ5は、リアフレーム12上に載置されており、内部には、ステアリング操作のためのステアリングホイール21(
図2参照)、作業機3を操作するためのレバー、各種の表示装置等が配置されている。エンジンルーム6は、キャブ5の後側であってリアフレーム12上に配置されており、エンジンが収納されている。
【0019】
図2は、ステアリングシステム8を示す構成図である。ステアリングシステム8は、ステアリングシリンダ9a、9bに供給する油の流量を変更することによって、フロントフレーム11のリアフレーム12に対する回動角度であるステアリング角度を変更し、作業機械1の進行方向を変更する。
【0020】
一対のステアリングシリンダ9a、9bは、油圧によって駆動される。一対のステアリングシリンダ9a、9bは、連結軸部13を挟んで車幅方向の左右側に並んで配置されている。ステアリングシリンダ9aは、連結軸部13の左側に配置されている。ステアリングシリンダ9bは、連結軸部13の右側に配置されている。ステアリングシリンダ9a、9bは、それぞれの一端がフロントフレーム11に取り付けられており、それぞれの他端が、リアフレーム12に取り付けられている。
【0021】
図2に示すように、ステアリングシリンダ9aのシリンダ室は、ピストンによって伸長室9a1と収縮室9a2に分割されている。伸長室9a1に作動油が供給されると、ピストンが移動してステアリングシリンダ9aは伸長し、収縮室9a2に作動油が供給されると、ピストンが移動してステアリングシリンダ9aは収縮する。
【0022】
ステアリングシリンダ9bのシリンダ室は、ピストンによって伸長室9b1と収縮室9b2に分割されている。伸長室9b1に作動油が供給されると、ピストンが移動してステアリングシリンダ9bは伸長し、収縮室9b2に作動油が供給されると、ピストンが移動してステアリングシリンダ9bは収縮する。
【0023】
ステアリングシリンダ9aが伸長し、ステアリングシリンダ9bが収縮すると、ステアリング角度が変化し車両は右(
図2のR参照)に曲がる。また、ステアリングシリンダ9aが収縮し、ステアリングシリンダ9bが伸長すると、ステアリング角度が変化し車両は左(
図2のL参照)に曲がる。
【0024】
(ステアリングシステム8)
ステアリングシステム8は、ステアリングホイール21(操作部材の一例)と、ステアリングバルブ22と、可変容量ポンプ23と、タンク24と、シリンダストロークセンサ25a、25b(フレーム角度検出部の一例)と、ホイール角度センサ26(操作速度検出部の一例、操作方向検出部の一例)と、コントローラ27と、を有している。
【0025】
ステアリングホイール21は、キャブ5内に設けられており、オペレータが回転操作することによって、ステアリングバルブ22が動作される。ステアリングホイール21の入力軸21aが、ステアリングバルブ22に接続されている。
【0026】
ステアリングバルブ22は、オービットロール(登録商標)と呼ばれ、全油圧式パワーステアリングユニットである。ステアリングバルブ22は、ステアリングホイール21の操作に応じてステアリングシリンダ9a、9bに作動油を供給する。ステアリングバルブ22は、ポートP、T、LS、R、Lを有している。ステアリングバルブ22の構成は後述する。
【0027】
可変容量ポンプ23は、ステアリングバルブ22に作動油を吐出する。可変容量ポンプ23とステアリングバルブ22のポートPは、管路31によって接続されている。可変容量ポンプ23から吐出された作動油は、管路31を介してステアリングバルブ22に供給される。可変容量ポンプ23は、斜板23aを有している。可変容量ポンプ23は、斜板23aの角度をコントローラ27からの信号によって変更可能に構成されている。
【0028】
可変容量ポンプ23の斜板23aの角度を変更することによって、可変容量ポンプ23の最大吐出量を変更することができる。斜板23aの角度を変更して最大吐出量を減少させると、圧力を上昇させたとしても可変容量ポンプ23からの吐出量を所定量以上にすることができなくなり、吐出量を減少させることができる。
【0029】
タンク24は、作動油を貯留する。タンク24とステアリングバルブ22のポートTは、管路32によって接続されている。ステアリングシリンダ9a、9bから排出された作動油がステアリングバルブ22のポートTからタンク24に排出される。
【0030】
ステアリングバルブ22のポートRには、第1供給路33の一端が接続されている。第1供給路33の他端側は、2つに分岐している。分岐した2つの端の一方は、ステアリングシリンダ9aの伸長室9a1に接続され、他方は、ステアリングシリンダ9bの収縮室9b2に接続されている。ステアリングバルブ22のポートRから第1供給路33に作動油が供給されると、ステアリングシリンダ9aが伸長し、ステアリングシリンダ9bが収縮して、フロントフレーム11はリアフレーム12に対して右側に回動する。
【0031】
ステアリングバルブ22のポートLには、第2供給路34の一端が接続されている。第2供給路34の他端側は、2つに分岐している。分岐した2つの端の一方は、ステアリングシリンダ9aの収縮室9a2に接続され、他方は、ステアリングシリンダ9bの伸長室9b1に接続されている。ステアリングバルブ22のポートLから第2供給路34に作動油が供給されると、ステアリングシリンダ9aが収縮し、ステアリングシリンダ9bが伸長して、フロントフレーム11はリアフレーム12に対して左側に回動する。
【0032】
ステアリングバルブ22は、ジロータ41と、方向制御弁42(バルブの一例)と、を有している。
【0033】
ジロータ41は、メータリング機構を有している。ジロータ41は、スターと、スターが内側に配置されたリングと、を有している。スターは、スターに固定されたスリーブ(図示せず)と、スリーブにバネ部材によって連結されたスプール42aとを介して、ステアリングホイール21の入力軸21aに連結されている。ジロータ41は、リング内でスターが偏芯回転することにより、作動油を計量しながら押し出すポンプとして作用する。
【0034】
方向制御弁42は、ステアリングホイール21およびジロータ41と連動して切り替わる3位置回転型の弁である。方向制御弁42は、入力軸21aが停止している状態では、スリーブに対してスプール42aが位置P1に配置されているが、ステアリングホイール21を右方向に回転させると、スプール42aがスリーブに対して位置P2に切り替わり、ステアリングホイール21を左方向に回転させると、スプール42aがスリーブに対して位置P3に切り替わる。スプール42aがスリーブに対して位置P2に配置されている状態が、第1状態の一例である。スプール42aがスリーブに対して位置P3に配置されている状態が、第2状態の一例である。
【0035】
ステアリングバルブ22は、管路43、44、45、46、47、48、49、50を有している。管路43は、一端がポートPに接続され、他端が方向制御弁42のポートに接続されている。管路43には、逆止弁51が設けられている。管路44は、一端がポートTに接続され、他端が方向制御弁42のポートに接続されている。管路45は、一端がジロータ41に接続され、他端が方向制御弁42のポートに接続されている。管路46は、一端がジロータ41に接続され、他端が方向制御弁42のポートに接続されている。管路47は、一端がポートRに接続され、他端が方向制御弁42のポートに接続されている。管路48は、一端がポートLに接続され、他端が方向制御弁42のポートに接続されている。点線で示す管路49は、一端がLSポートに接続され、他端が方向制御弁42のポートに接続されている。管路49には、逆止弁52が設けられている。管路50は、管路43と管路44を接続しており、管路50には、逆止弁53が設けられている。
【0036】
LSポートと管路32を接続する管路35が設けられており、管路35には、リリーフバルブ28が設けられている。
【0037】
ステアリングホイール21が右回転されると、入力軸21aに接続されているスプール42aがスリーブに対して回転して位置P2に移動する。そして、可変容量ポンプ23から管路31および管路43を通って供給される作動油が、ジロータ41に接続されているスリーブに対するスプール42aの相対的な回転角度に基づいて、管路46を通ってジロータ41に供給される。スターの偏心回転によってジロータ41から送り出された作動油は、管路45を介して方向制御弁42に戻って管路47を通ってポートRから第1供給路33に供給される。第1供給路33に作動油が供給されると、伸長室9a1および収縮室9b2に作動油が供給されてフロントフレーム11は連結軸部13を中心にしてリアフレーム12に対して右側に回動する。また、収縮室9a2および伸長室9b1からは第2供給路34を通って作動油が排出される。排出された作動油は、ポートLから方向制御弁42の管路48および管路44、ならびに管路32を通ってタンク24に排出される。
【0038】
スターの回転によってスリーブが回転してスリーブに対するスプール42aの相対的な回転角度がゼロになると、スプール42aがスリーブに対して位置P1に配置され、第1供給路33への作動油の吐出が停止される。これによって、フロントフレーム11はリアフレーム12に対して、ステアリングホイール21の操作角度に対応した位置に保たれる。
【0039】
一方、ステアリングホイール21が左回転されると、入力軸21aに接続されているスプール42aがスリーブに対して回転して位置P3に移動する。そして、可変容量ポンプ23から供給される作動油が、ジロータ41に接続されているスリーブに対するスプール42aの相対的な回転角度に基づいて、管路45を通ってジロータ41に供給される。スターの偏心回転によってジロータ41から送り出された作動油は、管路46を介して方向制御弁42に戻って管路48を通ってポートLから第2供給路34に供給される。第2供給路34に作動油が供給されると、収縮室9a2および伸長室9b1に作動油が供給されてフロントフレーム11は連結軸部13を中心にしてリアフレーム12に対して左側に回動する。また、伸長室9a1および収縮室9b2からは第1供給路33を通って作動油が排出される。排出された作動油は、ポートRから方向制御弁42の管路47および管路44、ならびに管路32を通ってタンク24に排出される。
【0040】
スターの回転によってスリーブが回転してスリーブに対するスプール42aの相対的な回転角度がゼロになると、スプール42aがスリーブに対して位置P1に配置され、第2供給路34への作動油の吐出が停止される。これによって、フロントフレーム11はリアフレーム12に対して、ステアリングホイール21の操作角度に対応した位置に保たれる。
【0041】
なお、上述したように方向制御弁42からジロータ41に作動油が供給されるが、作動油の量が少ない場合には、ステアリングホイール21の操作をアシストする力が弱くなり、ステアリングホイール21の操作が重くなる。
【0042】
シリンダストロークセンサ25a、25bは、ステアリングシリンダ9a、9bのストロークを検出する。シリンダストロークセンサ25aは、ステアリングシリンダ9aのストロークに関する検出値をコントローラ27に送信する。シリンダストロークセンサ25bは、ステアリングシリンダ9bのストロークに関する検出値をコントローラ27に送信する。
【0043】
ホイール角度センサ26は、例えば、ポテンショメータを用いることができる。ホイール角度センサ26は、ステアリングホイール21の操作方向と操作速度に関する検出値を検出し、コントローラ27に送信する。操作方向に関する検出値は、ステアリングホイール21が右方向または左方向のいずれの方向に回転されたかを示す。操作速度に関する検出値は、ステアリングホイール21の回転速度を示す。
【0044】
コントローラ27は、プロセッサと、記憶装置を含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、プログラムに従って作業機械1の制御のための処理を実行する。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。記憶装置は、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。記憶装置は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置は、作業機械1を制御するためのプログラムおよびデータを記憶している。記憶装置は、例えば、後述する終端範囲や、操作速度の所定閾値のデータを記憶している。
【0045】
コントローラ27には、シリンダストロークセンサ25a、25bの検出値およびホイール角度センサ26の検出値が入力される。コントローラ27は、これらの検出値に基づいて、可変容量ポンプ23の斜板23aの角度を制御して吐出量を減少させる。
【0046】
詳細には、コントローラ27は、シリンダストロークセンサ25aの検出値とシリンダストロークセンサ25bの検出値とから、ステアリング角度θを算出する。
【0047】
コントローラ27は、算出したステアリング角度が、ステアリング可能範囲のうち終端範囲に含まれているか否かを判定する。以下に、ステアリング可能範囲と終端範囲について説明する。
【0048】
図3は、リアフレーム12に対するフロントフレーム11のステアリング可能範囲Raを示すための模式図である。
図3では、フロントフレーム11、リアフレーム12およびバケット15が模式的に示されている。
【0049】
フロントフレーム11はリアフレーム12に連結軸部13を中心にして回動可能に接続されているが、フレーム同士が物理的に接触するため、リアフレーム12に対してフロントフレーム11はステアリング可能範囲Ra内において回動することができる。
【0050】
図3の実線で示すフロントフレーム11に示すように、リアフレーム12に対してフロントフレーム11が前後方向に沿って配置されている場合のステアリング角度θをゼロとする。
図3では、詳細には、リアフレーム12の幅方向における中心線がフロントフレーム11の幅方向における中心線と一致している状態が、ステアリング角度θがゼロとなっている。ステアリング角度θは、リアフレーム12の幅方向の中心線に対するフロントフレーム11の幅方向の中心線の成す角度である。リアフレーム12に対してフロントフレーム11が右方向に回動した場合のステアリング角度θをプラスの値とし、リアフレーム12に対してフロントフレーム11が左方向に回動した場合のステアリング角度θをマイナスの値とする。
【0051】
これにより、ステアリング可能範囲Raは、ステアリング角度θが+θe度~-θe度に設定される。すなわち、フロントフレーム11がリアフレーム12に対して右側にθe度回動すると、リアフレーム12に対して接触し、それ以上右側に回動できない。また、フロントフレーム11がリアフレーム12に対して左側にθe度回動すると、リアフレーム12に対して接触し、それ以上左側に回動できない。
【0052】
ステアリング角度θが+θeのときがステアリング可能範囲Raの右側の終端であり、ステアリング角度θが-θeのときが、ステアリング可能範囲Raの左側の終端である。
図3では、ステアリング可能範囲Raの右側の終端まで回動した状態のフロントフレーム11およびバケット15が二点鎖線で示されている。
【0053】
終端範囲は、ステアリング可能範囲Raのうち右側の終端近傍の所定範囲と左側の終端近傍の所定範囲である。
【0054】
ステアリング可能範囲Raのうち右側の終端近傍の所定の範囲を終端範囲Rreとし、左側の終端近傍の所定範囲を終端範囲Rleとする。終端範囲Rreは、ステアリング角度が+θ1~+θeの間に設定することができる。+θ1は、右側の終端範囲Rreの閾値である。なお、終端範囲Rreは、最大5度程度に設定することができる。終端範囲Rleは、ステアリング角度が-θ1~-θeの範囲に設定することができる。-θ1は、左側の終端範囲Rleの閾値である。また、終端範囲Rleは、最大5度程度に設定することができる。
【0055】
すなわち、コントローラ27は、シリンダストロークセンサ25a、25bの検出値から算出したステアリング角度θが、+θ1~+θeまたは-θ1~-θeの範囲内であるかを判定する。
【0056】
ステアリング角度θが、終端範囲Rreまたは終端範囲Rleに含まれている場合には、フロントフレーム11とリアフレーム12が接触して衝撃が発生する可能性があると判定できる。
【0057】
また、コントローラ27は、ホイール角度センサ26の検出値に基づいて、ステアリングホイール21の操作方向が、フロントフレーム11が配置されている終端範囲の終端に向かう方向であるか否かを判定する。例えばステアリング角度θが終端範囲Rreに含まれている場合には、ステアリング角度θが+θeとなる位置(右側)に向かってステアリングホイール21が操作されているか否かを判定する。また、ステアリング角度θが終端範囲Rleに含まれている場合には、ステアリング角度θが-θeとなる位置(左側)に向かってステアリングホイール21が操作されているか否かを判定する。
【0058】
これによって、フロントフレーム11が終端範囲に配置され、その終端範囲の終端に向かってフロントフレーム11が操作されていることを判定できるため、この状態で回動した場合にフロントフレーム11がリアフレーム12に接触して衝撃が発生することを検出できる。
【0059】
また、コントローラ27は、ホイール角度センサ26の操作速度に関する検出値に基づいて、ステアリングホイール21の操作速度が所定閾値以上であるか否かを判定する。
【0060】
ステアリングホイール21の操作速度に応じてフロントフレーム11の回動速度が変わるため、操作速度が大きい場合には接触時の振動も大きくなる。そのため、例えば、オペレータが許容可能な振動の大きさに応じて所定閾値を設定することができる。
【0061】
以上のように、コントローラ27は、ステアリング角度が終端範囲であり、その終端範囲の終端に向かってステアリングホイール21が操作されており、ステアリングホイール21の操作速度が所定閾値以上の場合には、可変容量ポンプ23からの吐出量を減少させるように可変容量ポンプ23の斜板23aを制御する。
【0062】
図4は、ステアリング角度と、可変容量ポンプ23の斜板23aの角度との関係を示す図である。
図4には、可変容量ポンプ23からの吐出量を回転可能角度の終端範囲で減少させた場合のグラフを太線で示し、減少させていない場合のグラフを細線で示す。本実施の形態では、例えば1秒間に所定量(cc/rev)の割合で斜板23aの角度を減少させることによって、可変容量ポンプ23からの吐出量を減少させることができる。
【0063】
図4では、ステアリング角度θが+θ1~+θeの範囲の終端範囲Rreおよび-θ1~-θeの範囲の終端範囲Rleにドットが付されている。本実施の形態では、
図4に示すように、終端範囲Rre、Rleにおいて斜板23aの角度を急減に変化させており、可変容量ポンプ23からの吐出量が急減に減少するように設定されている。
【0064】
<動作>
以下に、本実施の形態の作業機械1の制御動作について説明する。
図5は、作業機械1の制御方法の一例と示すフロー図である。
【0065】
はじめに、ステップS10において、コントローラ27は、シリンダストロークセンサ25a、25bのストロークに関する検出値を取得して、ステアリング角度θを算出する。
【0066】
次に、ステップS20において、コントローラ27は、算出したステアリング角度が、終端範囲Rre若しくは終端範囲Rleに含まれているか否かを判定する。ステアリング角度θが終端範囲Rreまたは終端範囲Rleに含まれていないと判定した場合は、制御はステップS10に戻り、コントローラ27は、シリンダストロークセンサ25a、25bのストロークに関する検出値の取得を繰り返す。一方、ステアリング角度θが終端範囲Rreまたは終端範囲Rleに含まれていると判定した場合には、制御はステップS30に進む。
【0067】
ステップS30において、コントローラ27は、ホイール角度センサ26の操作方向に関する検出値に基づいてステアリングホイール21の操作方向を取得する。
【0068】
次に、ステップS40において、コントローラ27は、操作方向に基づいて、終端範囲Rreと終端範囲Rleのうちフロントフレーム11が位置している終端範囲の終端に向かってステアリングホイール21が操作されているか否かを判定する。
【0069】
詳細には、コントローラ27は、ステップS20においてステアリング角度θが終端範囲Rreに含まれていると判定した場合には、終端範囲Rreの終端であるステアリング角度+θeに向かってステアリングホイール21が操作されているか否かを判定する。また、コントローラ27は、ステップS20においてステアリング角度θが終端範囲Rleに配置されていると判定した場合には、終端範囲Rleの終端であるステアリング角度-θeに向かってステアリングホイール21が操作されているか否かを判定する。
【0070】
ステップS40において、フロントフレーム11が位置している終端範囲の終端に向かってステアリングホイール21が操作されていないと判定された場合には、制御はステップS10に戻る。一方、フロントフレーム11が位置している終端範囲の終端に向かってステアリングホイール21が操作されていると判定された場合には、制御はステップS50に進む。
【0071】
次に、ステップS50において、コントローラ27は、ホイール角度センサ26の操作速度に関する検出値に基づいてステアリングホイール21の操作速度を取得する。
【0072】
次に、ステップS60において、コントローラ27は、ステアリングホイール21の操作速度が所定閾値以上であるかを判定する。ステップS60において、操作速度が所定閾値未満であると判定された場合には、制御はステップS10に戻る。
【0073】
一方、ステップS60において、操作速度が所定閾値以上であると判定された場合には、制御はステップS70に進む。
【0074】
ステップS70において、コントローラ27は、ポンプ吐出量減少指令信号を可変容量ポンプ23に向けて送信する。可変容量ポンプ23は、ポンプ吐出量減少指令信号を受信すると、吐出量を減少させるように、斜板23aの角度を変更する。
【0075】
このように可変容量ポンプ23からの吐出量を減少させることによって、フロントフレーム11の回動速度が遅くなるため、フロントフレーム11がリアフレーム12に接触する際の衝撃を緩和することができる。
【0076】
また、可変容量ポンプ23からの吐出量が減少するため、ジロータ41に流入する作動油の量も減少するので、ステアリングホイール21の操作が重くなる。これにより、オペレータは、フロントフレーム11がステアリング可能範囲Raのうち終端範囲Rre、Rleに配置されていることを感じ取ることが可能となる。
【0077】
<特徴等>
(1)
本実施の形態の作業機械1は、リアフレーム12と、フロントフレーム11と、ステアリングシリンダ9a、9bと、方向制御弁42と、ステアリングホイール21と、可変容量ポンプ23と、シリンダストロークセンサ25a、25bと、コントローラ27と、を備える。リアフレーム12は、フロントフレーム11に対して回動可能に接続されている。ステアリングシリンダ9a、9bは、リアフレーム12に対してフロントフレーム11を駆動する。方向制御弁42は、ステアリングシリンダ9a、9bへの作動油の供給量を変更する。ステアリングホイール21は、方向制御弁42を操作する。可変容量ポンプ23は、方向制御弁42に作動油を吐出する。シリンダストロークセンサ25a、25bは、リアフレーム12に対するフロントフレーム11の回動角度を検出するために設けられている。コントローラ27は、シリンダストロークセンサ25a、25bの検出値に基づいて、可変容量ポンプ23の吐出流量を減少させる。
【0078】
このように、可変容量ポンプ23からの作動油の吐出量を減少させることで、フロントフレーム11の回動速度(ステアリング速度)が減少する。このため、リアフレーム12とフロントフレーム11が接触した場合であっても衝撃を緩和することができる。
【0079】
(2)
本実施の形態の作業機械1では、コントローラ27は、シリンダストロークセンサ25a、25bの検出値に基づいて、フロントフレーム11がリアフレーム12に対して回動可能なステアリング可能範囲Raのうち終端範囲Rre、Rle(終端から所定範囲の一例)に位置すると判定した場合、可変容量ポンプ23の吐出流量を減少させる。
【0080】
このように、ステアリング可能範囲Raのうち終端範囲Rre、Rleにフロントフレーム11が配置されている場合に、可変容量ポンプ23からの作動油の吐出量を減少させることで、フロントフレーム11の回動速度(ステアリング速度)が減少する。このため、リアフレーム12とフロントフレーム11が接触した場合であっても衝撃を緩和することができる。
【0081】
(3)
本実施の形態の作業機械1は、ホイール角度センサ26を更に備える。ホイール角度センサ26は、ステアリングホイール21の操作方向を検出する。コントローラ27は、ホイール角度センサ26の検出値に基づいて、ステアリングホイール21が配置されている終端範囲Rreの回動角度+θeまたは終端範囲Rleの回動角度-θeに向かって操作されていると判定した場合、可変容量ポンプ23の吐出流量を減少させる。
【0082】
終端範囲Rreまたは終端範囲Rleにフロントフレーム11が配置されていても、配置されている終端範囲の終端と反対方向に操作された場合には、ステアリング速度を減少させる必要がない。そのため、終端に向かってステアリング操作されている場合に可変容量ポンプ23からの作動油の吐出量を減少させることにより、必要な場合にのみステアリング速度を減少させることができる。
【0083】
(4)
本実施の形態の作業機械1は、ホイール角度センサ26を更に備える。コントローラ27は、ホイール角度センサ26の検出値に基づいて、ステアリングホイール21が所定閾値以上の速度で操作されていると判定した場合、可変容量ポンプ23の吐出流量を減少させる。
【0084】
終端範囲にフロントフレーム11が配置されても、操作速度が遅い場合には、フロントフレーム11とリアフレーム12が接触した場合であっても衝撃が大きくならないため、ステアリング速度を減少させる必要がない。そのため、操作速度が所定閾値以上の速度の場合に、可変容量ポンプ23からの作動油の吐出量を減少させることにより、必要な場合にのみステアリング速度を減少させることができる。
【0085】
(5)
本実施の形態の作業機械1では、可変容量ポンプ23は、斜板23aを有する。コントローラ27は、斜板23aの角度を変更することによって可変容量ポンプ23の吐出流量を減少させる。
【0086】
可変容量ポンプ23では、斜板23aの角度を変更することによって最大流量を変更することができる。本実施の形態では斜板23aの角度を変更して最大流量を減少させることによって、可変容量ポンプからの吐出量を減少させることができる。
【0087】
(6)
本実施の形態の作業機械1は、ジロータ41を更に備える。ジロータ41は、ステアリングホイール21の操作に基づいて方向制御弁42の状態を変更する。方向制御弁42は、スリーブに対してスプール42aが位置P2に配置された状態(第1状態の一例)において、ジロータ41と可変容量ポンプ23を接続し、ステアリングシリンダ9a、9bに作動油を供給する第1供給路33とジロータ41とを接続してフロントフレーム11を右方向(第1方向の一例)へ駆動させ、スリーブに対してスプール42aが位置P3に配置された状態(第2状態の一例)において、ジロータ41と可変容量ポンプ23を接続し、ステアリングシリンダ9a、9bに作動油を供給する第2供給路34とジロータ41とを接続してフロントフレーム11を左方向(第2方向の一例)へ駆動させる。
【0088】
これにより、可変容量ポンプ23からの吐出量を減少させると、ジロータ41に供給される作動油の量も減少するためステアリングホイール21の操作が重くなり、オペレータが、フロントフレーム11がステアリング可能範囲Raのうち終端範囲Rre、Rleに配置されていることを感じ取ることが可能となる。
【0089】
(7)
本実施の形態の作業機械1は、ホイールローダであり、作業機3を更に備える。作業機3は、フロントフレーム11の前側に取り付けられている。
【0090】
これにより、ホイールローダにおけるリアフレーム12とフロントフレーム11の接触による衝撃を緩和することができる。
【0091】
(8)
本実施の形態の作業機械1の制御方法は、以下の処理を備える。ステップS10は、リアフレーム12に対して回動可能に接続されたフロントフレーム11の回動角度を検出することである。ステップS70は、検出された回動角度に基づいて、リアフレーム12に対してフロントフレーム11を駆動するステアリングシリンダ9a、9bへの作動油の供給量を変更する方向制御弁42に作動油を吐出する可変容量ポンプ23の吐出量を減少することである。
【0092】
このように、ステアリング可能範囲Raのうち終端範囲Rre、Rleにフロントフレーム11が位置する場合に、可変容量ポンプ23からの作動油の吐出量を減少させることで、フロントフレーム11の回動速度(ステアリング速度)が減少する。このため、リアフレーム12とフロントフレーム11が接触した場合であっても衝撃を緩和することができる。
【0093】
[他の実施形態]
以上、本開示の一実施の形態について説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0094】
(A)
上記実施の形態では、シリンダストロークセンサ25a、25の検出値を用いてリアフレーム12に対するフロントフレーム11の回動角度を検出しているが、これに限らなくてもよく、リアフレーム12とフロントフレーム11の連結軸部13に設けられたポテンショメータ等を用いたフレーム角度センサの検出値を用いて回動角度が検出されてもよい。
【0095】
(B)
上記実施の形態では、
図5に示すように、フロントフレーム11が終端範囲に配置していることを検出する位置検出、配置している終端範囲の終端に向かっていることを検出する方向検出、および操作速度が所定閾値以上であることを検出する速度検出定の順に検出を行っているが、これに限らなくてもよく、たとえば、速度検出の後に、位置検出および方向検出を行ってもよい。
【0096】
また、方向検出の後に位置検出を行ってもよい。
図6は、方向検出の後に位置検出を行う制御フローを示す図である。
【0097】
上記実施の形態では、位置検出の後に方向検出を行っているため、方向検出の際に、配置している終端範囲の終端に向かっているか否かを判定している。しかしながら、方向検出を位置検出よりも前に行う場合には、
図6に示すようにステップS110においてステアリングホイール21の操作方向の検出だけを行い、ステップS120においてシリンダストロークセンサ25a、25bの検出値からステアリング角度を検出し、ステップS130において操作方向側の終端範囲に位置しているか否かが判定される。ステップS130において、フロントフレーム11が操作方向側の終端位置に位置していないと判定された場合には、制御はステップS110に戻り、再び操作方向が取得される。また、以下のステップS50、S60、S70は、上記実施の形態と同様であり、ステップS60において操作速度が所定閾値未満の場合、制御はステップS110に戻る。
【0098】
具体的には、ステアリングホイール21が右方向に回転操作されていることを検出した場合には、フロントフレーム11が右側の終端範囲Rreに配置しており、更に操作速度が所定閾値以上のときに、可変容量ポンプ23からの吐出量が減少される。一方、ステアリングホイール21を右方向に回転操作されていることを検出した場合であっても、フロントフレーム11が右側の終端範囲Rreに配置していないときには制御はステップS110に戻る。
【0099】
また、ステアリングホイール21が左方向に回転操作されていることを検出した場合には、フロントフレーム11が左側の終端範囲Rleに配置しており、更に操作速度が所定閾値以上のときに、可変容量ポンプ23からの吐出量を減少する。一方、ステアリングホイール21が左方向に回転操作されていることを検出した場合であっても、フロントフレーム11が左側の終端範囲Rleに配置していないときには制御はステップS110に戻る。
【0100】
(C)
上記実施の形態では、操作速度が所定閾値以上の場合に、可変容量ポンプ23からの吐出量を減少させるように制御が行われているが、これに限らなくてもよく、操作速度に基づいて斜板角度の変化割合を変化させてもよい。たとえば、操作速度が速くなるに従って斜板角度の変化割合を大きくして吐出量の減少割合を大きくするように制御してもよい。
【0101】
(D)
上記実施の形態では、右方向における終端範囲Rre(+θ1~+θe)と、左方向における終端範囲Rle(-θ1~-θe)は同じ角度範囲に設定されているが、異なっていてもよい。例えば、ステアリング可能範囲Raの右方向における終端のステアリング角度の絶対値と、左方向における終端のステアリング角度の絶対値が異なっていてもよい。また、右側の終端範囲を決める閾値の絶対値(上記実施の形態では|+θ1|)と左側の終端範囲を決める閾値の絶対値(上記実施の形態では|-θ1|)が異なっていてもよい。
【0102】
(E)
上記実施の形態では、作業機械1としてホイールローダを用いて説明したが、ホイールローダに限られるものではなく、アーティキュレート式のダンプトラック、モータグレーダ等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の作業機械および作業機械の制御方法は、ステアリング終端における衝撃を緩和することが可能な効果を有し、ホイールローダ等として有用である。
【符号の説明】
【0104】
1 :作業機械
9a :ステアリングシリンダ
9b :ステアリングシリンダ
21 :ステアリングホイール
23 :可変容量ポンプ
42 :方向制御弁