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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04029 20160101AFI20240520BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240520BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20240520BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240520BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240520BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240520BHJP
【FI】
H01M8/04029
H01M8/0432
H01M8/04701
H01M8/04746
H01M8/04 J
H01M8/10 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020130378
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026761
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 敬
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽介
(72)【発明者】
【氏名】石井 恵奈
(72)【発明者】
【氏名】吉永 典裕
(72)【発明者】
【氏名】山下 恭平
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-234519(JP,A)
【文献】特開平10-64561(JP,A)
【文献】特開2020-87631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池部を含む燃料電池システムであって、
燃料電池部を介して冷却水が循環する冷却水循環系と、
海水と前記冷却水循環系を循環する前記冷却水との間の熱交換を行うための熱交換系と、
前記熱交換を制御するための制御部と
を備え、
前記制御部は、前記冷却水循環系に関する温度が第1閾値以下であって、前記熱交換系において前記熱交換のために用いる前記海水の温度が前記第1閾値よりも高い第2閾値以上である場合に、前記熱交換によって前記冷却水を加熱する、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記冷却水循環系は、
前記燃料電池部に前記冷却水を供給するための冷却水ポンプ
を有し、
前記熱交換系は、
前記海水と前記冷却水循環系を循環する前記冷却水との間の熱交換を行うための海水熱交換器と、
前記海水を前記海水熱交換器に供給するための海水ポンプと
を有し、
前記制御部は、前記冷却水ポンプと前記海水ポンプとの少なくとも一つを駆動させることによって、前記熱交換による熱交換量を増加させる、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記海水熱交換器に前記冷却水が流入する冷却水流入温度と前記海水熱交換器から前記冷却水が流出する冷却水流出温度との間の温度差が、予め設定した設定温度差になるように、前記冷却水ポンプと前記海水ポンプとの少なくとも一つの動作を制御する、
請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記冷却水循環系は、
前記燃料電池部に前記冷却水を供給するための冷却水ポンプ
を有し、
前記熱交換系は、
前記冷却水との間で熱交換を行うための熱交換媒体が循環する熱交換媒体循環系と、
前記熱交換媒体と前記海水との間の熱交換を行うための海水熱交換器と
前記海水を前記海水熱交換器に供給するための海水ポンプと
を有し、
前記熱交換媒体循環系は、
前記熱交換媒体と前記冷却水との間の熱交換を行うための一次熱交換器と、
前記熱交換媒体を前記一次熱交換器に供給するための熱交換媒体ポンプと
を有し、
前記制御部は、前記冷却水ポンプと前記海水ポンプと前記熱交換媒体ポンプとの少なくとも一つを駆動させることによって、前記熱交換による熱交換量を増加させる、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記海水熱交換器に前記熱交換媒体が流入する熱交換媒体流入温度と前記海水熱交換器から前記熱交換媒体が流出する熱交換媒体流出温度との間の温度差が、予め設定した設定温度差になるように、前記冷却水ポンプと前記海水ポンプと前記熱交換媒体ポンプとの少なくとも一つの動作を制御する、
請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記熱交換媒体循環系は、
前記一次熱交換器から排出された前記熱交換媒体が流れる第1熱源と、
前記第1熱源から流出した前記熱交換媒体が前記海水熱交換器を迂回して前記一次熱交換器へ流れる第1の海水熱交換器バイパス流路と、
前記第1の海水熱交換器バイパス流路に設けられた第1の海水熱交換器バイパス弁と、
前記第1熱源から前記海水熱交換器へ流入する前記熱交換媒体の流路において、前記海水熱交換器バイパス流路の入口よりも下流側であって、前記海水熱交換器よりも上流側に設けられている海水熱交換器入口弁と
を備え、
前記制御部は、前記第1の海水熱交換器バイパス弁の動作および前記海水熱交換器入口弁の動作を更に制御することによって、前記熱交換を調整する、
請求項4または請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記熱交換系は、
前記海水ポンプから排出された前記海水が流れる第2熱源と、
前記第2熱源から流出した前記海水が前記海水熱交換器を迂回して流れる第2の海水熱交換器バイパス流路と、
前記第2の海水熱交換器バイパス流路に設けられた第2の海水熱交換器バイパス弁と
を備え、
前記制御部は、前記第2の海水熱交換器バイパス弁の動作を更に制御することによって、前記熱交換を調整する、
請求項4から請求項6のいずれかに記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、複数の燃料電池セルが積層された燃料電池スタックを備える。燃料電池セルは、燃料極と空気極との間に電解質膜が介在している。燃料電池セルにおいては、水素を含む燃料極ガスが燃料極に供給されると共に、空気が空気極(酸化剤極)に供給されることによって、電気化学反応が生じて発電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-236734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池システムは、たとえば、海洋を移動する船舶において動力源などとして用いられる場合がある。燃料電池システムは、たとえば、船舶の甲板に設置される。このような場合において、燃料電池の停止時に環境温度が低下したときには、燃料電池の冷却の際に用いる冷却水が凍結する可能性がある。
【0005】
冷却水の凍結防止のために、従来においては、ヒーターを用いて加熱すること等が行われている。しかしながら、この場合には、消費電力が大きく、多くの機器が必要になる。
【0006】
上記のような事情により、従来においては、冷却水の凍結防止を容易かつ効率的に実施することが困難であった。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、冷却水の凍結防止を容易かつ効率的に実施可能な燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の燃料電池システムは、燃料電池部を含むと共に、燃料電池部を介して冷却水が循環する冷却水循環系と、海水と冷却水循環系を循環する冷却水との間の熱交換を行うための熱交換系と、熱交換を制御するための制御部とを備える。制御部は、冷却水循環系に関する温度が第1閾値以下であって、熱交換系において熱交換のために用いる海水の温度が第1閾値よりも高い第2閾値以上である場合に、熱交換によって冷却水を加熱する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を模式的に示す図である。
図2図2は、第1実施形態において、燃料電池部の全体構成を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、第1実施形態において、燃料電池部の一部断面を拡大して示す断面図である。
図4図4は、第2実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を模式的に示す図である。
図5図5は、第3実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を模式的に示す図である。
図6図6は、第4実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
[A]構成
図1は、第1実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を模式的に示す図である。
【0011】
本実施形態の燃料電池システムは、図1に示すように、燃料電池部1を含む。また、燃料電池システムは、冷却水循環系S1と熱交換系S2と制御部80とを備える。
本実施形態の燃料電池システムは、たとえば、海洋を移動する船舶において動力源などとして用いられ、船舶の甲板に設置される。燃料電池システムを構成する各部について順次説明する。
【0012】
[A-1]燃料電池部1
まず、燃料電池システムを構成する燃料電池部1の一例に関して、図2および図3を用いて説明する。
【0013】
図2は、第1実施形態において、燃料電池部の全体構成を模式的に示す斜視図である。図3は、第1実施形態において、燃料電池部の一部断面を拡大して示す断面図である。図2において、y軸は、鉛直方向に沿っており、z軸は、第1水平方向に沿っており、x軸は、第1水平方向に直交する第2水平方向に沿っている。図3では、図2において水平面(xz面)に対応する断面の一部を示している。
【0014】
燃料電池部1は、図2に示すように、燃料電池スタック10を備える。燃料電池スタック10は、複数の燃料電池セル11と複数のセパレータ12とを含み、燃料電池セル11とセパレータ12とが積層方向において交互に積層されている。燃料電池スタック10は、積層方向において一対の締付板15(エンドプレート)の間に介在しており、一対の締付板15の間は、タイロッドやバンドなどの締結部材(図示省略)を用いて締め付けられている。
【0015】
[A-1-1]燃料電池セル11
燃料電池スタック10において、燃料電池セル11は、高分子電解質型であって、図3に示すように、高分子電解質膜110と燃料極111と空気極112とを含む。燃料電池セル11は、高分子電解質膜110が燃料極111と空気極112との間に介在している膜/電極接合体である。
【0016】
高分子電解質膜110は、たとえば、スルフォン酸基を有するフッ素系高分子材料で構成されている。燃料極111および空気極112は、たとえば、カーボンブラック担体に白金触媒が担持されることで構成されている。
【0017】
[A-1-2]セパレータ12
燃料電池スタック10において、セパレータ12は、導電性材料で形成された多孔質体で構成されている。セパレータ12には、燃料極ガス流路F121と空気極ガス流路F122とが形成されている。
【0018】
燃料極ガス流路F121は、セパレータ12のうち燃料極111側の面に形成されている。燃料極ガス流路F121は、鉛直方向(y軸方向)に沿うように形成されており、燃料電池セル11の燃料極111へ供給する燃料極ガスが流れる。燃料極ガス流路F121は、複数であって、複数の燃料極ガス流路F121が、第2水平方向(x軸方向)において間を隔てて設けられている。
【0019】
空気極ガス流路F122は、セパレータ12のうち空気極112側の面に形成されている。空気極ガス流路F122は、積層方向に沿った第1水平方向(z軸方向)に直交する第2水平方向(x軸方向)に沿うように形成されており、燃料電池セル11の空気極112へ供給する空気極ガスが流れる。図示を省略しているが、空気極ガス流路F122は、複数であって、複数の空気極ガス流路F122が、第1水平方向(y軸方向)において間を隔てて設けられている。
【0020】
[A-2]冷却水循環系S1
冷却水循環系S1は、図1に示すように、燃料電池部1を介して冷却水CWが循環するように構成されている。
【0021】
ここでは、冷却水循環系S1は、冷却水ポンプP1を有する。冷却水ポンプP1は、燃料電池部1に冷却水CWを供給するために設置されている。
【0022】
冷却水CWは、たとえば、純水であって、燃料電池部1において、鉛直方向(y軸方向)の上方から供給され、下方へ排出される。具体的には、冷却水CWは、多孔質体で構成されているセパレータ12の微細孔の内部に流入する。冷却水CWは、燃料極ガスの圧力および空気極ガスの圧力よりも低い圧力で供給される。これにより、燃料電池部1での発電反応で生成された生成水および燃料電池部1の内部で凝縮された凝縮水を燃料電池部1の外部へ除去できると共に、高分子電解質膜110の加湿および蒸発潜熱による冷却を行うことができる。
【0023】
[A-3]熱交換系S2
熱交換系S2は、図1に示すように、海水SWと冷却水循環系S1を循環する冷却水CWとの間の熱交換を行うために設けられている。
【0024】
ここでは、熱交換系S2は、海水熱交換器2と海水ポンプP2とを有する。海水熱交換器2は、海水SWと冷却水循環系S1を循環する冷却水CWとの間の熱交換を行うために設置されている。海水ポンプP2は、海水SWを海水熱交換器2に供給するために設置されている。熱交換系S2は、海水循環系であって、海水ポンプP2を用いて海洋(図示省略)から汲み上げた海水SWが海水熱交換器2を通過後に、海洋へ戻るように構成されている。
【0025】
[A-4]制御部80
制御部80は、図1に示すように、海水SWと冷却水CWとの間の熱交換を制御するために設けられている。図示を省略しているが、制御部80は、演算器(図示省略)とメモリ装置(図示省略)とを含み、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うように構成されている。制御部80は、温度センサT11,T12a,T12b,T21aが検知した温度データ等が入力信号として入力され、その入力信号に基づいて演算処理を行うことで得た制御信号を各部に出力することで各部の動作を制御する。
【0026】
ここでは、制御部80は、燃料電池部1の温度が予め定めた温度になるように、海水SWと冷却水CWとの間の熱交換を制御する。たとえば、燃料電池部1について通常運転を行う際に、燃料電池部1を冷却するための冷却水CWの温度が予め定めた値以上であるときには、海水SWで冷却水CWを冷却するように、海水SWと冷却水CWとの間の熱交換を制御する。
【0027】
また、本実施形態では、制御部80は、冷却水CWの凍結を防止するために凍結防止運転を行う際には、海水SWの熱を用いて冷却水CWを加熱するように構成されている。具体的には、制御部80は、冷却水循環系S1に関する温度が第1閾値TH1以下であって、熱交換系S2において熱交換のために用いる海水SWの温度が第1閾値TH1よりも高い第2閾値TH2以上である場合(TH1<TH2)に、熱交換による熱交換量を増加させることによって冷却水CWを加熱する。
【0028】
第1閾値TH1は、たとえば、3~4℃であって、燃料電池部1の温度を検知する温度センサT11によって計測された温度データに基づいて、第1閾値TH1以下であるか否かの判断を制御部80が行う。また、第2閾値TH2は、たとえば、5~10℃であって、海水ポンプP2で汲み上げた海水SWの温度を検知する温度センサT21aによって計測された温度データに基づいて、第2閾値TH2以上であるか否かの判断を制御部80が行う。
る。
【0029】
制御部80は、冷却水ポンプP1と海水ポンプP2との少なくとも一つを駆動させることによって、熱交換による熱交換量を増加させる。つまり、冷却水ポンプP1と海水ポンプP2との少なくとも一つの吐出量を増加させることによって、冷却水CWと海水SWとの間の熱交換による熱交換量を増加させる。
【0030】
このとき、制御部80は、海水熱交換器2に流入する冷却水CWに関する冷却水流入温度と海水熱交換器2から流出する冷却水CWに関する冷却水流出温度との間の温度差が、予め設定した設定温度差になるように、冷却水ポンプP1と海水ポンプP2との少なくとも一つの動作を制御する。冷却水流入温度は、温度センサT12aによって計測され、冷却水流出温度は、温度センサT12bによって計測される。冷却水流入温度と冷却水流出温度との間の温度差が予め設定した設定温度差から大きく相違しているほど、冷却水CWと海水SWとの間の熱交換による熱交換量が大きくなるように、制御部80が制御を行う。
【0031】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の燃料電池システムでは、冷却水CWが凍結し得る場合に、冷却水CWよりも温度が高い海水SWの熱を用いて冷却水CWを加熱する。このため、本実施形態は、冷却水CWの凍結防止を容易かつ効率的に実施可能である。
【0032】
本実施形態の燃料電池システムは、燃料電池セル11が高分子電解質型(内部加湿型)であるため、発電性能を向上させるためには、高分子電解質膜110の含水率を高めることによって、高分子電解質膜110のプロトン抵抗を低下させる必要がある。このため、冷却水CWは、冷却の他に、高分子電解質膜110を加湿するために、供給される。それゆえ、冷却水CWは、燃料電池セル11に悪影響を及ぼすことがない純水であることが好ましく、燃料電池セル11に悪影響を及ぼす不凍液を用いることは好適でない。したがって、燃料電池セル11が高分子電解質型である場合には、本実施形態のように、冷却水CWよりも温度が高い海水SWで冷却水CWを加熱することによって、冷却水CWの凍結防止を実施することが好ましい。
【0033】
<第2実施形態>
[A]構成
図4は、第2実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を模式的に示す図である。
【0034】
図4に示すように、本実施形態の燃料電池システムでは、熱交換系S2の構成が、第1実施形態の場合(図1参照)と異なっている。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0035】
本実施形態において、熱交換系S2は、熱交換媒体循環系S21と海水循環系S22とを含む。
【0036】
熱交換系S2において、熱交換媒体循環系S21は、冷却水CWとの間で熱交換を行うための熱交換媒体PWが循環するように構成されている。熱交換媒体循環系S21は、一次熱交換器3と熱交換媒体ポンプP3とを有する。一次熱交換器3は、熱交換媒体PWと冷却水CWとの間の熱交換を行うために設置されている。熱交換媒体ポンプP3は、熱交換媒体PWを一次熱交換器3に供給するために設置されている。熱交換媒体PWは、たとえば、水である。
【0037】
熱交換系S2において、海水循環系S22は、海水熱交換器2と海水ポンプP2とを有する。海水熱交換器2は、海水SWと冷却水循環系S1を循環する冷却水CWとの間の熱交換を行うために設置されている。海水ポンプP2は、海水SWを海水熱交換器2に供給するために設置されている。海水循環系S22は、海水ポンプP2を用いて海洋(図示省略)から汲み上げた海水SWが海水熱交換器2を通過後に、海洋へ戻るように構成されている。
【0038】
制御部80は、第1実施形態の場合と同様に、冷却水CWの凍結を防止するために、海水SWの熱を用いて冷却水CWを加熱するように構成されている。つまり、制御部80は、第1実施形態の場合と同様に、冷却水循環系S1に関する温度が第1閾値TH1以下であって、熱交換系S2において熱交換のために用いる海水SWの温度が第1閾値TH1よりも高い第2閾値TH2以上である場合(TH1<TH2)に、熱交換による熱交換量を増加させることによって冷却水CWを加熱する。
【0039】
本実施形態では、制御部80は、冷却水ポンプP1と海水ポンプP2と熱交換媒体ポンプP3との少なくとも一つを駆動させることによって、熱交換による熱交換量を増加させる。つまり、海水ポンプP2と熱交換媒体ポンプP3との少なくとも一つの吐出量を増加させることによって、熱交換媒体PWと海水SWとの間の熱交換による熱交換量を増加させる。また、冷却水ポンプP1と熱交換媒体ポンプP3との少なくとも一つの吐出量を増加させることによって、冷却水CWと熱交換媒体PWとの間の熱交換による熱交換量を増加させる。このように、本実施形態では、熱交換媒体PWを介して冷却水CWと海水SWとの間の熱交換を行うことで、冷却水CWの凍結を防止する。
【0040】
このとき、制御部80は、海水熱交換器2に流入する熱交換媒体PWに関する熱交換媒体流入温度と海水熱交換器2から流出する熱交換媒体PWに関する熱交換媒体流出温度との間の温度差が、予め設定した設定温度差になるように、冷却水ポンプP1と海水ポンプP2と熱交換媒体ポンプP3との少なくとも一つの動作を制御する。熱交換媒体流入温度は、温度センサT12aによって計測され、熱交換媒体流出温度は、温度センサT12bによって計測される。熱交換媒体流入温度と熱交換媒体流出温度との間の温度差が予め設定した設定温度差から大きく相違しているほど、熱交換媒体PWと海水SWとの間の熱交換による熱交換量が大きくなるように、制御部80が制御を行う。
【0041】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の燃料電池システムでは、熱交換媒体PWを介して冷却水CWと海水SWとの間の熱交換を行うことで、冷却水CWの凍結を防止する。このため、本実施形態は、冷却水CWの凍結防止を容易かつ効率的に実施可能である。なお、本実施形態において、熱交換媒体PWが純水である場合、一次熱交換器3が破損して冷却水CWに熱交換媒体PWが混ざっても、燃料電池部1が破損しない。第1実施形態の場合、海水熱交換器2が破損して海水SWと冷却水CWが混ざり、燃料電池部1が破損する可能性がある。本実施形態では、上記の可能性を減らす効果がある。
【0042】
<第3実施形態>
[A]構成
図5は、第3実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を模式的に示す図である。
【0043】
図5に示すように、本実施形態の燃料電池システムでは、熱交換系S2は、第2実施形態の場合(図4参照)と同様に、熱交換媒体循環系S21と海水循環系S22とを含む。しかし、本実施形態では、熱交換媒体循環系S21および海水循環系S22の構成の一部が、第2実施形態の場合(図4参照)と異なっている。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、第2実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0044】
本実施形態では、熱交換媒体循環系S21は、図5に示すように、熱源50(第1熱源)と海水熱交換器バイパス流路BP1(第1の海水熱交換器バイパス流路)と海水熱交換器バイパス弁BV1(第1の海水熱交換器バイパス弁)と海水熱交換器入口弁V1とを更に有する。
【0045】
熱源50は、一次熱交換器3から排出された熱交換媒体PWが流れる。熱源50は、たとえば、燃料電池部1で発電された電力を蓄える蓄電池である。その他、熱源50は、インバータ、冷凍サイクル凝縮器、冷却媒体(チラー)の熱交換器などの機器であってもよい。
【0046】
海水熱交換器バイパス流路BP1は、熱源50から流出した熱交換媒体PWが海水熱交換器2を迂回して一次熱交換器3へ流れるように構成されている。
【0047】
海水熱交換器バイパス弁BV1は、海水熱交換器バイパス流路BP1に設けられている。
【0048】
海水熱交換器入口弁V1は、熱源50から海水熱交換器2へ流入する熱交換媒体PWの流路において、海水熱交換器バイパス流路BP1の入口よりも下流側であって、海水熱交換器2よりも上流側に設けられている。
【0049】
本実施形態において、熱交換媒体流入温度を計測するための温度センサT12aは、熱交換媒体PWの流れにおいて海水熱交換器バイパス流路BP1の入口よりも上流側に設置されている。
【0050】
また、本実施形態では、海水熱交換器2に流入する海水SWに関する海水流入温度を計測するための温度センサT21bが、海水熱交換器2と海水ポンプP2との間に設置されている。
【0051】
そして、本実施形態では、制御部80は、海水熱交換器バイパス弁BV1の動作および海水熱交換器入口弁V1の動作を更に制御することによって、熱交換媒体PWを介して行われる冷却水CWと海水SWとの間の熱交換を調整する。
【0052】
具体的には、制御部80は、燃料電池部1について起動運転を行う際に、熱交換媒体ポンプP3の駆動を開始するときには、海水熱交換器バイパス弁BV1を開けると共に、海水熱交換器入口弁V1を全て閉める。その後、燃料電池部1の温度を検知する温度センサT11によって計測された温度が、燃料電池部1の運転温度(たとえば、60℃~80℃)まで上昇したとき、制御部80は、海水熱交換器バイパス弁BV1を全て閉めると共に、海水熱交換器入口弁V1を開ける。これにより、燃料電池部1の起動運転を早期に完了することができる。
【0053】
凍結防止運転を実行する際において、温度センサT12aの測定温度t12aが温度センサT21bの測定温度t21b以上である場合には(t21a≧t21b)、制御部80は、海水熱交換器バイパス弁BV1を開けて、海水熱交換器入口弁V1を全て閉じる。これにより、熱交換媒体PWは、熱交換媒体ポンプP3によって、海水熱交換器2を経由せずに、海水熱交換器バイパス流路BP1を経由して、一次熱交換器3へ流れる。
【0054】
この一方で、凍結防止運転を実行する際において、温度センサT12aの測定温度t12aが温度センサT21bの測定温度t21b未満である場合には(t21a<t21b)、制御部80は、海水熱交換器バイパス弁BV1を全て閉めて、海水熱交換器入口弁V1を開ける。これにより、熱交換媒体PWは、熱交換媒体ポンプP3によって、海水熱交換器バイパス流路BP1を経由せずに、海水熱交換器2を経由して、一次熱交換器3へ流れる。
【0055】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の燃料電池システムでは、第2実施形態の場合と同様に、熱交換媒体PWを介して冷却水CWと海水SWとの間の熱交換を行うことで、冷却水CWの凍結を防止する。このため、本実施形態は、冷却水CWの凍結防止を容易かつ効率的に実施可能である。
【0056】
また、本実施形態では、燃料電池部1について起動運転を行う際に、上述したように、海水熱交換器バイパス弁BV1の動作および海水熱交換器入口弁V1の動作を制御するため、起動運転を早期に完了することができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、凍結防止運転を実行する際に、上述したように、適宜、熱源50の熱を用いるため、凍結防止を効果的に実行可能である。
【0058】
<第4実施形態>
[A]構成
図6は、第4実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を模式的に示す図である。
【0059】
図6に示すように、本実施形態の燃料電池システムでは、熱交換系S2は、第3実施形態の場合(図5参照)と同様に、熱交換媒体循環系S21と海水循環系S22とを含む。しかし、本実施形態では、海水循環系S22の構成の一部が、第3実施形態の場合(図4参照)と異なっている。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、第3実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0060】
本実施形態では、海水循環系S22は、図6に示すように、熱源60(第2熱源)と海水熱交換器バイパス流路BP2(第2の海水熱交換器バイパス流路)と海水熱交換器バイパス弁BV2(第2の海水熱交換器バイパス弁)とを更に有する。
【0061】
熱源60は、海水ポンプP2から排出された海水SWが流れる。熱源60は、冷凍サイクル凝縮器、冷却媒体(チラー)の熱交換器などの機器である。
【0062】
海水熱交換器バイパス流路BP2は、熱源60から流出した海水SWが海水熱交換器2を迂回して流れるように構成されている。
【0063】
海水熱交換器バイパス弁BV2は、海水熱交換器バイパス流路BP2に設けられている。
【0064】
また、本実施形態では、海水熱交換器2に流入する海水SWに関する海水流入温度を計測するための温度センサT21bは、海水熱交換器バイパス流路BP2の入口と、海水熱交換器2との間に設置されている。
【0065】
そして、本実施形態では、制御部80は、海水熱交換器バイパス弁BV2の動作を更に制御することによって、熱交換媒体PWを介して行われる冷却水CWと海水SWとの間の熱交換を調整する。
【0066】
具体的には、制御部80は、燃料電池部1について通常運転を行う際に、温度センサT21bの測定温度t21bが予め定めた設定温度(たとえば、20℃から40℃)よりも高いときには、海水ポンプP2の吐出量を増加させると共に、海水熱交換器バイパス弁BV2を開ける。これにより、熱源60での熱交換によって熱源60から流出した海水SWの温度が設定温度よりも高い場合であっても、海水熱交換器2での熱交換量を適正に保持することができる。海水熱交換器2に過剰な流量が流れることによるポンプの負荷増大を防ぐとともに熱交換量を適正にすることができる。
【0067】
凍結防止運転を実行する際においては、制御部80は、原則、海水熱交換器バイパス弁BV2を全て閉じた状態にする。そして、温度センサT12aの測定温度t12aが温度センサT21bの測定温度t21b以下である場合には(t12a≦t21b)、制御部80は、温度センサT11の測定温度t11が、冷却水CWが凍結しない設定温度(たとえば、10℃)以上になるまで、海水ポンプP2の駆動を継続する。
【0068】
温度センサT12aの測定温度t12aが温度センサT21bの測定温度t21bよりも高い場合には(t12a>t21b)、制御部80は、海水ポンプP2の駆動を行うが、海水熱交換器バイパス弁BV1を開けると共に、海水熱交換器入口弁V1を閉じる。つまり、海水熱交換器2において、熱交換媒体PWと海水SWとの間の熱交換を行わない。
【0069】
温度センサT21bで測定される測定温度t21b(熱源60から流出した熱交換媒体PWの温度)が、予め設定された設定温度よりも高い場合、制御部80は、その設定温度になるように、海水ポンプP2の流量を上げると共に、海水熱交換器バイパス弁BV2の動作を制御する。
【0070】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の燃料電池システムでは、第3実施形態の場合と同様に、熱交換媒体PWを介して冷却水CWと海水SWとの間の熱交換を行うことで、冷却水CWの凍結を防止する。このため、本実施形態は、冷却水CWの凍結防止を容易かつ効率的に実施可能である。
【0071】
また、本実施形態では、燃料電池部1について通常運転を行う際に、上述したように、海水ポンプP2の動作と海水熱交換器バイパス弁BV2の動作を制御する。このため、上述したように、海水熱交換器2での熱交換量を適正に保持することができる。
【0072】
さらに、本実施形態では、凍結防止運転を実行する際に、上述したように、適宜、熱源60の熱を用いるため、凍結防止を効果的に実行可能である。
【0073】
[C]変形例
本実施形態では、第3実施形態の場合(図5参照)と同様に、熱交換媒体循環系S21は、熱源50と海水熱交換器バイパス流路BP1と海水熱交換器バイパス弁BV1と海水熱交換器入口弁V1とを有する場合について示しているが、これに限らない。熱源50、海水熱交換器バイパス流路BP1、海水熱交換器バイパス弁BV1、および、海水熱交換器入口弁V1を熱交換媒体循環系S21に設けなくてもよい。
【0074】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1:燃料電池部、2:海水熱交換器、3:一次熱交換器、10:燃料電池スタック、11:燃料電池セル、12:セパレータ、15:締付板、50:熱源(第1の熱源)、60:熱源(第2の熱源)、80:制御部、110:高分子電解質膜、111:燃料極、112:空気極、BP1:海水熱交換器バイパス流路(第1の海水熱交換器バイパス流路)、BP2:海水熱交換器バイパス流路(第2の海水熱交換器バイパス流路)、BV1:海水熱交換器バイパス弁(第1の海水熱交換器バイパス弁)、BV2:海水熱交換器バイパス弁(第2の海水熱交換器バイパス弁)、CW:冷却水、F121:燃料極ガス流路、F122:空気極ガス流路、P1:冷却水ポンプ、P2:海水ポンプ、P3:熱交換媒体ポンプ、PW:熱交換媒体、S1:冷却水循環系、S2:熱交換系、S21:熱交換媒体循環系、S22:海水循環系、SW:海水、T11:温度センサ、T12a:温度センサ、T12b:温度センサ、T21a:温度センサ、T21b:温度センサ、V1:海水熱交換器入口弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6