(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】遮水シートの水中接合構造
(51)【国際特許分類】
E02B 3/18 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
E02B3/18 F
(21)【出願番号】P 2020132064
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】石田 正利
(72)【発明者】
【氏名】池谷 典尚
(72)【発明者】
【氏名】和木 多克
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-156535(JP,A)
【文献】特開2020-094463(JP,A)
【文献】特開2000-140787(JP,A)
【文献】特開平06-108436(JP,A)
【文献】特開2007-203161(JP,A)
【文献】特開2003-033745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/18
B09B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海面処分場を区画するように造成された管理型護岸構造物の処分場域側の表面遮水工の遮水シート同士の水中接合構造であって、
前記表面遮水工として基盤上に接合される前記遮水シート同士が所定の重なりを設けて敷設され、
前記遮水シートの重なり部位を含む所定範囲にわたり、シート表面にせん断キイが配列され、
前記遮水シートのうちの下側となる遮水シートに配列された前記せん断キイが埋設されるように第1の不透水性遮水材が充填され、上側から重なる他方の遮水シートに配列されたせん断キイが前記第1の不透水性遮水材内に、前記第1の不透水性遮水材を介して前記せん断キイとかみ合うように埋設され、重ねられた前記遮水シートに配列されたせん断キイの部位を含む範囲の前記第1の不透水性遮水材上に第2の不透水性遮水材が充填され、前記接合される部位の遮水の連続性と強度の連続性とが確保されたことを特徴とする遮水シートの水中接合構造。
【請求項2】
海面処分場を区画するように造成された管理型護岸構造物の処分場域側の表面遮水工の遮水シート同士の水中接合構造であって、
前記表面遮水工として基盤上に不透水性マットが敷設され、
前記遮水シート同士が前記不透水性マット上に隣接して敷設され、
前記遮水シートの接合される部位の近傍の所定範囲にわたり、シート表面にせん断キイが配列され、前記せん断キイが前記不透水性マットの上層に埋設されるように前記遮水シートが前記不透水性マット上に敷設され、
前記遮水シートの前記せん断キイの配列部位を含む範囲に不透水性遮水材が充填され、前記接合される部位の遮水の連続性と強度の連続性とが確保されたことを特徴とする遮水シートの水中接合構造。
【請求項3】
海面処分場を区画するように造成された管理型護岸構造物の処分場域側の表面遮水工の遮水シート同士の水中接合構造であって、
前記表面遮水工として基盤上に前記遮水シート同士が隣接して敷設され、
前記遮水シート上に不透水性マットが敷設され、
前記遮水シートの接合される部位の近傍の所定範囲にわたり、シート表面にせん断キイが配列され、前記せん断キイが前記不透水性マットの下層に埋設されるように前記不透水性マットが前記遮水シート上に敷設され、
前記不透水性マット上に不透水性遮水材が充填され、前記接合される部位の遮水の連続性と強度の連続性とが確保されたことを特徴とする遮水シートの水中接合構造。
【請求項4】
前記せん断キイは、前記遮水シートと一体的に成形加工された突起状体が前記遮水シート表面に配列された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の遮水シートの水中接合構造。
【請求項5】
前記せん断キイは、前記遮水シートの表面に突起状体が配列されるように取り付けられた請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の遮水シートの水中接合構造。
【請求項6】
前記不透水性遮水材は、アスファルト系、コンクリート系、ケミカル系あるいは土質系のいずれか、またはこれらの組み合わせで構成された請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の遮水シートの水中接合構造。
【請求項7】
前記不透水性遮水材は、透水係数が1.0×10
-5cm/s以下である請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の遮水シートの水中接合構造。
【請求項8】
前記不透水性マットは、強度部材としてのガラス繊維ネットが上下のアスファルトマスチック層に挟まれて埋設された請求項2乃至請求項
3のいずれか1項に記載の遮水シートの水中接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮水シートの水中接合構造に係り、特に管理型廃棄物海面処分場等の埋立域に敷設される表面遮水工としての遮水シートを水中で接合する際に、接合部における遮水の連続性、強度の連続性を確保するようにした遮水シートの水中接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般廃棄物及び産業廃棄物の管理型廃棄物海面処分場の埋立域に敷設される遮水シートは、その仕様として遮水の連続性と強度(またはひずみ)の連続性が求められている。遮水シートを水中で接合する場合、遮水の連続性は遮水シート表面を不透水性遮水材でオーバーレイすることにより、遮水シートとオーバーレイする不透水性遮水材間の界面を不透水性化することで遮水の連続性が確保され、管理型廃棄物海面処分場(以下、海面処分場と記す。)から周辺海域及び周辺陸域への廃棄物の流出や保有水の浸出防止が図られている。
【0003】
遮水シートの水中での接合部の遮水の連続性を確保するための不透水性遮水材としては、高分子・粘弾性材料で変形追随性に富むアスファルトマスチックが好適であり、アスファルトマスチックを用いた過去の施工例において、たとえば、遮水シートとアスファルトマスチックの間、鋼板またはコンクリート表面とアスファルトマスチックの間の遮水の連続性が確保されることが確認されている。
【0004】
遮水シートの接合部における遮水の連続性については、従来、遮水シートの端部を気中で熱溶着、押出溶着、熱盤プレス、接着等の接合工法を用いることで遮水シートの遮水連続性が確保される。たとえば遮水シートを気中で熱溶着するためには、遮水シートを水面上に展張して、遮水シートの端部同士を現場近くに停泊する台船上等で溶着する気中接合工法による作業が行われている。
【0005】
また、遮水シートの接合部における強度(またはひずみ、伸び)の連続性については、たとえば特許文献1に開示された遮水壁の構築方法に示されたように、遮水の連続性が確保された遮水シートの接合部を覆うアスファルトマスチックを充填するために設置された型枠ブロック間にタイロッド、タイロープ、ターンバックル等のテンション材を架設して、テンション材に所定の引張力を作用させることで遮水シートの接合部を拘束して接合部の強度の連続性を確保する提案もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように遮水シートを気中接合方法によって遮水シート間の接合を行う場合には以下の課題があった。
(1)遮水シートの敷設工事が年度ごとに期分けされて実施される場合、長期にわたり既敷設の遮水シートを海中に水没させことが多い。
(2)夏期の台風や冬期の季節風等の現場の気象状況、波浪や潮汐変動等の海象状況に対応した安全対策として、敷設中の遮水シートを海中に水没させる場合がある。
このような条件においては、遮水シートを接合する作業を行う場合、水没させていた遮水シートをフロート等の浮上手段を用いて海上に引き上げて接合作業を進める必要がある。この場合、遮水シートを浮上させることが困難であったり、浮上作業中にシートが破損したりするおそれがある等の問題があった。
【0008】
また、強度の連続性を確保する手段については、特許文献1に示した構造では、十分な質量の型枠ブロックをアスファルトマスチックの両側に存置して、型枠ブロックに複数のテンション材を取り付けるための水中作業が発生する等、付加的な強度部材が必要となり、そのための付加作業も生じるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消するために、水中接合される遮水シートの接合部における遮水の連続性、強度の連続性を、簡易な構造で確保できるようにした遮水シートの水中接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の遮水シートの水中接合構造は、海面処分場を区画するように造成された管理型護岸構造物の処分場域側の表面遮水工の遮水シート同士の水中接合構造であって、前記表面遮水工として基盤上に接合される前記遮水シート同士が所定の重なりを設けて敷設され、前記遮水シートの重なり部位を含む所定範囲にわたり、シート表面にせん断キイが配列され、前記遮水シートのうちの下側となる遮水シートに配列された前記せん断キイが埋設されるように第1の不透水性遮水材が充填され、上側から重なる他方の遮水シートに配列されたせん断キイが前記第1の不透水性遮水材内に、前記第1の不透水性遮水材を介して前記せん断キイとかみ合うように埋設され、重ねられた前記遮水シートに配列されたせん断キイの部位を含む範囲の前記第1の不透水性遮水材上に第2の不透水性遮水材が充填され、前記接合される部位の遮水の連続性と強度の連続性とが確保されたことを特徴とする。
【0011】
海面処分場を区画するように造成された管理型護岸構造物の処分場域側の表面遮水工の遮水シート同士の水中接合構造であって、前記表面遮水工として基盤上に不透水性マットが敷設され、前記遮水シート同士が前記不透水性マット上に隣接して敷設され、前記遮水シートの接合される部位の近傍の所定範囲にわたり、シート表面にせん断キイが配列され、前記せん断キイが前記不透水性マットの上層に埋設されるように前記遮水シートが前記不透水性マット上に敷設され、前記遮水シートの前記せん断キイの配列部位を含む範囲に不透水性遮水材が充填され、前記接合される部位の遮水の連続性と強度の連続性とが確保されたことを特徴とする。
【0012】
海面処分場を区画するように造成された管理型護岸構造物の処分場域側の表面遮水工の遮水シート同士の水中接合構造であって、前記表面遮水工として基盤上に前記遮水シート同士が隣接して敷設され、前記遮水シート上に不透水性マットが敷設され、前記遮水シートの接合される部位の近傍の所定範囲にわたり、シート表面にせん断キイが配列され、前記せん断キイが前記不透水性マットの下層に埋設されるように前記不透水性マットが前記遮水シート上に敷設され、前記不透水性マット上に不透水性遮水材が充填され、前記接合される部位の遮水の連続性と強度の連続性とが確保されたことを特徴とする。
【0014】
前記せん断キイは、前記遮水シートと一体的に成形加工された突起状体が前記遮水シート表面に配列され、あるいは前記遮水シートの表面に突起状体が配列されるように取り付けられることが好ましい。
【0015】
前記不透水性遮水材は、アスファルト系、コンクリート系、ケミカル系あるいは土質系のいずれか、またはこれらの組み合わせで構成されることが好ましい。
【0016】
前記不透水性遮水材は、透水係数が1.0×10-5cm/s以下であることが好ましい。
【0017】
前記不透水性マットは、強度部材としてのガラス繊維ネットが上下のアスファルトマスチック層に挟まれて埋設されたマット材であることがことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の遮水シートの水中接合構造の第1実施形態による接合構造を模式的に示した断面図。
【
図2】(a)~(d)は、
図1に示した水中接合構造の施工手順を模式的に示した施工順序図、(e)は、第1実施形態の変形例を示した部分断面図。
【
図3】本発明の遮水シートの水中接合構造に用いられる突起付シートの突起の構成を示した側断面図、平面図。
【
図4】本発明の遮水シートの水中接合構造に用いられる突起付シートの変形例における突起の構成を示した側断面図、平面図。
【
図5】本発明の遮水シートの水中接合構造の第2実施形態による接合構造を模式的に示した断面図。
【
図6】
図5に示した水中接合構造に用いられるアスファルトマットの断面形状を模式的に示した部分断面図。
【
図7】
図5に示した水中接合構造の施工手順を模式的に示した施工順序図。
【
図8】本発明の遮水シートの水中接合構造の第3実施形態による接合構造を模式的に示した断面図。
【
図9】
図8に示した水中接合構造の施工手順を模式的に示した施工順序図。
【
図10】本発明の遮水シートの水中接合構造の第4実施形態による接合構造を模式的に示した断面図。
【
図11】
図10に示した水中接合構造の施工手順を模式的に示した施工順序図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の遮水シートの水中接合構造の各実施形態の適用例として、海面処分場の埋立域側の下地砕石上に敷設された表面遮水工としての遮水シートの水中接合構造について、添付図面を参照して説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明の遮水シートの水中接合構造10の第1実施形態を示した断面を示している。
(遮水シートの構成)
本実施形態の表面遮水工としての遮水シートは、一般部と接合部の異なる2形態のシート断面構成からなる。
図1には、接合構造として積層遮水シート20A,20Bの接合部同士が接合された状態が示されている。
【0021】
積層遮水シート20A,20Bの一般部はともに3層一体型の積層遮水シート20で、芯材としての遮水シート21の両面に保護マット22としての2枚の不織布が一体的に重ねられた構成からなる。
【0022】
接合部は、
図1,
図3(a),(b)に示したように、一般部としての積層遮水シート20の端部において所定範囲にわたり保護マット22が取り除かれた部位で、積層遮水シート20Aの接合部は、片面(上面)にせん断キイとして機能する所定寸法の板状突起23が多数形成された突起付シート21aで構成されている。積層遮水シート20Bの接合部は、両面(上下面)に、せん断キイとして機能する所定寸法の板状突起23(以下、突起23と記す。)が多数形成された突起付シート21bで構成されている。
【0023】
本実施形態の遮水シート21は、低密度ポリエチレンシート(LLDPE:厚さ3mm)からなる。遮水シート21の好適な他の素材としては、ポリ塩化ビニル(PVC)製シート、不織布とPVCシートとの積層シート、熱可塑性系エラストマー(TPE)シート、高密度ポリエチレンシート(HDPE)の単体シート等があり、適宜選択して使用することができる。シート厚は自重による伸びや表面遮水工の変形による影響を抑えるために、1.5mm以上とされている。
【0024】
本実施形態の保護マット22は、ポリエチレンテレフタラート(PET)不織布(500g/m2)からなる。保護マット22の好適な他の素材としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等を使用することができる。
【0025】
(接合構造の構成)
本実施形態の水中接合構造10(
図1)は、接合される積層遮水シート20A,20Bの一般部の端部から接合部の突起付シート21a,21bの全体が所定厚さのアスファルトマスチック層25でオーバーレイされて構成されている。下地砕石1上に先に敷設された積層遮水シート20Aの突起付シート21aは、アスファルトマスチック1次層25a内に埋設されるように敷設されている。積層遮水シート20Bの突起付シート21bは、下面側の突起23がアスファルトマスチック1次層25a内に埋設され、突起23,23がアスファルトマスチック1次層25aの厚さ分のアスファルトマスチックを介在させてかみ合うように積層遮水シート20Aの突起付シート21aと接合されている。この接合状態において、積層遮水シート20A,20Bの接合部の遮水の連続性は、突起付シート21a,21bとアスファルトマスチック層25(25a,25b)との密着により範囲Aにおいて確保される。強度の連続性は、突起付シート21a,21bの突起23,23が、その間に介在するアスファルトマスチックを介して作用するせん断力に抵抗することで範囲Bにおいて確保される。
【0026】
(接合構造の施工)
図2(a)~(d)は、
図1に示した水中接合構造の施工手順を模式的に示している。以下、その施工手順について各図を参照して簡単に説明する。まず下地砕石1上の接合位置に突起付シート21aが位置するように積層遮水シート20Aを敷設する(
図2(a))。突起付シート21aの突起23が埋設する厚さ(約5cm)までアスファルトマスチック1次層25aのアスファルトマスチックを充填する(
図2(b))。その後、積層遮水シート20Bの突起付シート21bを下面側の突起23がアスファルトマスチック1次層25a内に埋設するように敷設する。このとき
図2(c)に示したように、積層遮水シート20Bの突起付シート21bの上面側の突起23はアスファルトマスチック1次層25aから上方に突出したような形状となっている。この状態で積層遮水シート20Bと、積層遮水シート20Aが埋設された状態にあるアスファルトマスチック1次層25aの上面に溶融状態のアスファルトマスチックを充填し、アスファルトマスチック2次層25bを形成する。アスファルトマスチックは、その粘弾性体としての機能を保持して冷固することで、接合部での遮水性と充填性とが確保される。アスファルトマスチックに代えて、ハンドリング性、使用時における遮水性等が同等に期待できる(たとえば透水係数が1.0×10
-5cm/s以下が確保される。)各種のアスファルト系混合物の他、コンクリート系材料、土質系材料、ケミカル系材料等を単独で、あるいは複数種を組み合わせて使用することも有効である。
【0027】
変形例として、積層遮水シート20Bの突起付シート21bは、
図2(e)に示したように、下面の突起23のみでもよい。また、
図2(f)に示したように、積層遮水シート20Aの突起付シート21aの突起23と積層遮水シート20Bの突起付シート21bの突起23との間にアスファルトマスチック1次層25aを介在させずに突起23同士を直接接触させて両者を直接かみ合わせることによって強度の連続性を確保することもできる。このとき、かみ合わせさせる以外に突起23あるいは遮水シート同士の一部を各種の結束手段で連結させることで強度の連続性を確保することも可能である。
【0028】
(突起の構成)
積層遮水シート20A,20Bの突起付シート21a,21bに形成された突起23の構成について、
図3,4の各図を参照して説明する。第1実施形態の突起23は突起付シートの成形と同時に一体的に成形加工された部材で、
図3(a)、(b)に示したように、長さ方向に関しては突起付シート21a,21bに所定の間隔をあけている。幅方向に関しては、同図(c)~(e)に示したように、高さと同程度の幅で幅方向に所定間隔をあけて幅方向に揃った配列(c)、千鳥状に配列(d)、あるいは十分なせん断抵抗力を確保するために、幅方向に細長い板形状の配列(e)とすることも可能である。なお、L字形の平板形状に限られず、せん断キイとしてのせん断抵抗性が発揮できればキノコ状、円柱状等の各種の形状とすることができる。
【0029】
図4各図は、突起の変形例について示している。この変形例の突起は、L字形状のピースからなり、このピースを所定の間隔をあけて突起付シートに取り付けるようになっている。ピースとしては、突起付シート21と同材料の樹脂成形品やL形鋼を切断した金属部材を利用することができる。樹脂成形品の場合は熱溶着、接着、金属部材の場合はボルト締め等でシートに取り付けることができる。突起の配列、寸法については、同図(c),(d)に示したように、シートと一体成形された突起(
図3(c),(d))と同様に構成することができる。
【0030】
[第2実施形態]
図5は、本発明の遮水シートの水中接合構造の第2実施形態を示した断面を示している。
(遮水シートの構成)
本実施形態の表面遮水工に用いられる遮水シートは、第1実施形態に用いられた積層遮水シート20A,20Bと同様の一般部、接合部から構成され、接合部の突起付シート21a,21bはともに下面側に突起23が配列されている。
【0031】
(接合構造の構成)
本実施形態の水中接合構造10においても、接合される積層遮水シート20A,20Bの一般部の端部から接合部の突起付シート21a,21bの全体が所定厚さのアスファルトマスチック層25でオーバーレイされて構成されているが、本実施形態では、下地砕石1上に先にアスファルトマット30が敷設され、アスファルトマット30の上面側に積層遮水シート20A,20Bの突起付シート21a,21bの突起が食い込むように埋設されて積層遮水シート20A,20Bが敷設されている。この接合状態において、積層遮水シート20A,20Bの接合部の遮水の連続性は、範囲Aにおける突起付シート21a,21bとアスファルトマスチック層25との間の界面の密着により確保される。強度の連続性は、範囲Bにおいて突起付シート21a,21bの突起23,23がアスファルトマット30に食い込んだ状態でのアスファルトマット30を構成するアスファルトマスチックのクリープ変形によって確保される。
【0032】
(アスファルトマットの構成)
本実施形態で用いられるアスファルトマット30(
図6参照)は、マット厚が5~15cmのアスファルトマスチックを充填して製作された高い表面摩擦力を備えた不透水性マットで、従来のアスファルト配合からなる下層マット30Lと柔軟でクリープ変形性に富むようにアスファルト配合された上層マット30Uとが一体積層されてなり、その境界位置にアスファルトマットの強度を確保するための強度部材として目合い1~4cmからなるガラス繊維ネット31が層状に埋設されている。アスファルトマット30の面引張強度、せん断強度等は、補強芯材としてのガラス繊維ネットの厚さ、撚糸の強度等を調整することで適宜調整することができる。
【0033】
(接合構造の施工)
図7(a)~(c)は、
図5に示した水中接合構造の施工手順を模式的に示している。以下、その施工手順について各図を参照して簡単に説明する。まず下地砕石1上の接合位置にアスファルトマット30を敷設する(
図7(a))。その後、積層遮水シート20A,20Bの突起付シート21a,21bを、突起23が下向きになるように敷設する。このとき
図7(b)に示したように、積層遮水シート20A,20Bの突起付シート21a,21bの下面の突起23の下端は、柔軟なアスファルトマット30の上層マット30U内に埋設したような形状となっている。この状態で積層遮水シート20A,20Bの上面に溶融状態のアスファルトマスチックを充填する。充填されたアスファルトマスチックの自重によって積層遮水シート20A,20Bの突起付シート21a,21bの下面の突起23の全体がアスファルトマットの上層マット30U内に食い込むように埋設してアスファルトマスチック層、積層遮水シート20A,20B、アスファルトマット30が一体化する(
図7(c))。
【0034】
[第3実施形態]
図8は、本発明の遮水シートの水中接合構造の第3実施形態を示した断面を示している。
(遮水シートの構成)
本実施形態の表面遮水工10に用いられる遮水シートは、第1実施形態に用いられた積層遮水シート20A,20Bと同様の一般部、接合部とから構成され、接合部の突起付シート21a,21bはともに上面側に突起23が配列されている。
【0035】
(接合構造の構成)
本実施形態の水中接合構造では、接合される積層遮水シート20A,20Bが先に下地砕石1上に敷設され、その上面の全面を覆うようにアスファルトマット30が敷設され、アスファルトマット30全体が所定厚さのアスファルトマスチック層25でオーバーレイされて構成されている。本実施形態では、アスファルトマット30の下面側に積層遮水シート20A,20Bの突起付シート21a,21bの突起23が食い込むように埋設されて積層遮水シート20A,20Bが敷設されている。この接合状態において、積層遮水シート20A,20Bの接合部の遮水の連続性は、範囲Aにおける突起付シート21a,21bとアスファルトマット30とアスファルトマスチック層25の各界面での密着により確保される。強度の連続性は、範囲Bにおいて突起付シート21a,21bの突起23,23がアスファルトマット30に食い込んだ状態でのアスファルトマット30を構成するアスファルトマスチックのクリープ変形によって確保される。
【0036】
(アスファルトマットの構成)
本実施形態で用いられるアスファルトマット30は、第2実施形態のマットと同様であるが、上下反転して下層マット30Lが柔軟でクリープ変形性に富むようになっている。
【0037】
(接合構造の施工)
図9(a)~(d)は、
図8に示した水中接合構造の施工手順を模式的に示している。以下、その施工手順について各図を参照して簡単に説明する。まず下地砕石1上の接合位置に積層遮水シート20A,20Bの突起付シート21a,21bを、突起23が上向きになるように敷設する。次いでその上面にアスファルトマット30を敷設する(
図7(a),(b))。このとき
図9(c)に示したように、積層遮水シート20A,20Bの突起付シート21a,21bの上面の突起23は、積層されたアスファルトマット30の自重によって柔軟な下層マット30L内に食い込んで埋設したような形状となっている。この状態でアスファルトマット30の上面に溶融状態のアスファルトマスチックを充填する。充填されたアスファルトマスチックの自重によってアスファルトマット30、積層遮水シート20A,20Bの突起付シート21a,21b全体が一体化する(
図9(d))。
【0038】
[第4実施形態]
図10は、本発明の遮水シートの水中接合構造の第4実施形態を示した断面を示している。
(遮水シートの構成)
本実施形態の表面遮水工10に用いられる遮水シートは、第1実施形態に用いられた積層遮水シート20A,20Bと同様の一般部、接合部とから構成されているが、他の実施形態と異なり、接合部の遮水シート21a,21bに突起は形成されていない。
【0039】
(接合構造の構成)
本実施形態の水中接合構造においても、接合される積層遮水シート20A,20Bの一般部の端部から接合部の突起付シート21a,21bの全体が所定厚さのアスファルトマスチック層25でオーバーレイされて構成されているが、本実施形態では、下地砕石1上に先にアスファルトマット30が敷設され、アスファルトマット30の上面側に積層遮水シート20A,20Bが敷設されている。この接合状態において、積層遮水シート20A,20Bの接合部の遮水の連続性は、範囲Aにおける遮水シート21a,21bとアスファルトマスチック層との密着により確保される。強度の連続性は、範囲Bにおいて遮水シート21a,21bの下面とアスファルトマット30の上面を構成するアスファルトマスチックとの間の界面摩擦力によって確保される。
【0040】
(アスファルトマットの構成)
本実施形態のアスファルトマット30には従来品、すなわちマット厚が5~15cmのアスファルトマスチックの一体積層部材で、上下層がともに従来の材料配合からなるマットと、その境界位置に補強芯材として目合い1~4cmからなるガラス繊維ネットが埋設されている。
【0041】
(接合構造の施工)
図11(a)~(c)は、
図5に示した水中接合構造の施工手順を模式的に示している。以下、その施工手順について各図を参照して簡単に説明する。まず下地砕石1上の接合位置にアスファルトマット30を敷設する(
図11(a))。その上に積層遮水シート20A,20Bを敷設する。さらに積層遮水シート20A,20Bの上面に溶融状態のアスファルトマスチックを充填する(
図11(b)、(c))。充填されたアスファルトマスチックの自重によって積層遮水シート20A,20Bの下面とアスファルトマット30の上面とが密着し、アスファルトマスチック層、積層遮水シート20A,20B、アスファルトマット30が一体化する(
図11(c))。
図11(d)は、本実施形態の変形例として、積層遮水シート20A,20Bの上に更にアスファルトマット30を積層し、2枚のアスファルトマット30間に積層遮水シート20A,20Bを挟むようにしたものである。
【0042】
以上の説明において、本発明は種々の実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 下地砕石
10 水中接合構造
20,20A,20B 積層遮水シート
21 遮水シート
21a,21b 突起付シート
23 突起
25 アスファルトマスチック層
30 アスファルトマット
31 ガラス繊維ネット
A 遮水の連続性が確保された範囲
B 強度の連続性が確保された範囲