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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】空調用吹出口ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/06 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
F24F13/06 A
F24F13/06 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020132653
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029351
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000104906
【氏名又は名称】クラレプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】河合 則諒
(72)【発明者】
【氏名】金森 愛実
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-083649(JP,A)
【文献】実開平07-012846(JP,U)
【文献】特許第4726404(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に吹出口を有し、前記吹出口に向けて調和空気の気流が流れる筒状のダクトと、
前記ダクトの前記一端に設けられ、前記気流の上流側から下流側に向けて外側へ広がった筒状体からなる第1ルーバと、
前記吹出口の前記第1ルーバの内側に画定された第1吹出部と、
前記吹出口の前記第1ルーバの外側に画定された第2吹出部と、
前記第1ルーバよりも前記気流の上流側に間隔をあけて位置するように前記ダクト内に設けられ、前記気流の上流側から下流側に向けて外側へ広がった筒状体からなり、前記気流を、前記第1吹出部に向けた第1分流と前記第2吹出部に向けた第2分流とに分ける第1分流板と
を備え、
前記ダクトは、
前記第1分流板が設けられた部分であり、前記吹出口に対して前記気流の上流側に間隔をあけて位置し、前記吹出口の開口面積よりも小さい開口面積の分流部と、
前記分流部と前記吹出口の間に設けられ、前記分流部から前記吹出口に向けて開口面積が漸増し、前記第1分流と前記第2分流を拡散させる空間である拡張部と
を有し、
前記第1分流を含む第1調和空気が、前記第1吹出部から前記ダクトの軸線に沿う方向に吹き出し、
前記第2分流を含む第2調和空気が、前記第2吹出部から、前記第1ルーバの傾斜に依存する第1吹出角度で前記ダクトの軸線に対して傾斜して吹き出し、
前記第1調和空気の風速は、前記第2調和空気の風速よりも早い、空調用吹出口ユニット。
【請求項2】
前記第1調和空気の風速と前記第2調和空気の風速の風速比は、以下を満たす、請求項1に記載の空調用吹出口ユニット。
0.20≦V2/V1≦0.60
V1:第1調和空気の風速
V2:第2調和空気の風速
【請求項3】
前記ダクトの軸線に対する前記第1分流板の傾斜角度は、25度以上40度以下である、請求項1又は2に記載の空調用吹出口ユニット。
【請求項4】
前記ダクトの軸線に対する前記第1ルーバの傾斜角度は、20度以上30度以下である、請求項1からのいずれか1項に記載の空調用吹出口ユニット。
【請求項5】
前記第1ルーバを取り囲むように前記ダクトの前記一端に設けられ、前記気流の上流側から下流側に向けて外側へ広がった筒状体からなり、前記第1ルーバとともに前記第2吹出部を画定する第2ルーバと、
前記吹出口の前記第2ルーバの外側に画定された第3吹出部と、
前記第1分流板を取り囲むように前記ダクト内に設けられ、前記気流の上流側から下流側に向けて外側へ広がった筒状体からなり、前記気流を、前記第2分流と前記第3吹出部に向けた第3分流とに分ける第2分流板と
を備え、
前記第3分流を含む第3調和空気が、前記第3吹出部から、前記第2ルーバの傾斜に依存し前記第1吹出角度よりも大きい第2吹出角度で前記ダクトの軸線に対して傾斜して吹き出し、
前記第3調和空気の風速は、前記第2調和空気の風速よりも遅い、請求項1からのいずれか1項に記載の空調用吹出口ユニット。
【請求項6】
一端に吹出口を有し、前記吹出口に向けて調和空気の気流が流れる筒状のダクトと、
前記ダクトの前記一端に設けられ、前記気流の上流側から下流側に向けて外側へ広がった筒状体からなる第1ルーバと、
前記第1ルーバを取り囲むように前記ダクトの前記一端に設けられ、前記気流の上流側から下流側に向けて外側へ広がった筒状体からなる第2ルーバと、
前記吹出口の前記第1ルーバの内側に画定された第1吹出部と、
前記吹出口の前記第1ルーバの外側に画定された第2吹出部と、
前記吹出口の前記第2ルーバの外側に画定された第3吹出部と、
前記第1ルーバよりも前記気流の上流側に位置するように前記ダクト内に設けられ、前記気流の上流側から下流側に向けて外側へ広がった筒状体からなり、前記気流を、前記第1吹出部に向けた第1分流と前記第2吹出部に向けた第2分流とに分ける第1分流板と
を備え、
前記気流が流れる方向において、前記第2ルーバの下流側端部は、前記第1ルーバの下流側端部よりも突出しており、

前記第1吹出部から吹き出す第1調和空気の風速は、前記第2吹出部から吹き出す第2調和空気の風速よりも早く、
前記第3吹出部から吹き出す第3調和空気の風速は、前記第2調和空気よりも遅い、空調用吹出口ユニット。
【請求項7】
前記第1分流板を取り囲むように前記ダクト内に設けられ、前記気流の上流側から下流側に向けて外側へ広がった筒状体からなり、前記気流を、前記第2分流と前記第3吹出部に向けた第3分流とに分ける第2分流板を備える、請求項6に記載の空調用吹出口ユニット。
【請求項8】
前記第2調和空気の風速と前記第3調和空気の風速の風速比は、以下を満たす、請求項5から7のいずれか1項に記載の空調用吹出口ユニット。
0.15≦V3/V2≦0.75
V2:第2調和空気の風速
V3:第3調和空気の風速
【請求項9】
前記ダクトの軸線に対する前記第2分流板の傾斜角度は、25度以上40度以下である、請求項又は7に記載の空調用吹出口ユニット。
【請求項10】
前記ダクトの軸線に対する前記第2ルーバの傾斜角度は、65度以上70度以下である、請求項からのいずれか1項に記載の空調用吹出口ユニット。
【請求項11】
前記吹出口の開口面積に対して、前記第1吹出部の開口面積が占める割合は45%以上55%以下で、
前記吹出口の開口面積に対して、前記第2吹出部の開口面積が占める割合は20%以上25%以下で、
前記吹出口の開口面積に対して、前記第3吹出部の開口面積が占める割合は5%以上10%以下である、
請求項から10のいずれか1項に記載の空調用吹出口ユニット。
【請求項12】
前記第1分流板及び前記第2分流板を設けた前記ダクトの分流部分の開口面積に対して、前記第1分流板の上流側端部内側の開口面積が占める割合は0.5%以上2.5%以下で、
前記ダクトの分流部分の開口面積に対して、前記第1分流板の上流側端部と前記第2分流板の上流側端部の間の開口面積が占める割合は25%以上30%以下で、
前記ダクトの分流部分の開口面積に対して、前記第2分流板の上流側端部外側の開口面積が占める割合は53%以上61%以下である、
請求項5,7,9のいずれか1項に記載の空調用吹出口ユニット。
【請求項13】
前記ダクトの分流部分の開口面積に対して、前記第1分流板の下流側端部内側の開口面積が占める割合は6%以上11%以下で、
前記ダクトの分流部分の開口面積に対して、前記第1分流板の下流側端部と前記第2分流板の下流側端部の間の開口面積が占める割合は35%以上39%以下で、
前記ダクトの分流部分の開口面積に対して、前記第2分流板の下流側端部外側の開口面積が占める割合は39%以上45%以下である、
請求項12に記載の空調用吹出口ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用吹出口ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建築物の室内を冷暖房する空調設備に用いられる吹出口ユニットが開示されている。この吹出口ユニットは、部屋の天井に取り付けられており、室外から室内に向けて外向きに傾斜した2つのルーバと、天井に沿って延びる一枚の気流拡散部材とを備える。これにより、吹出口ユニットの吹出口は、気流拡散部材と第1のルーバとの間に位置する第1吹出部と、2つのルーバの間に位置する第2吹出部と、第2のルーバと外周壁との間に位置する第3吹出部とに画定されている。
【0003】
特許文献1では更に、ルーバの入口側と出口側の絞り率を調整し、調和空気が天井に沿って吹き出すように構成している。調整される絞り率は、第1のルーバの室外側端部の開口面積に対する第1吹出部の開口面積の比率である第1絞り率、2つのルーバそれぞれの室外側端部間の開口面積に対する第2吹出部の開口面積の比率である第2絞り率、及び第2のルーバの室外側端部と外周壁の間の開口面積に対する第3吹出部の開口面積の比率である第3絞り率である。これらの絞り率の調整によって、室内に吹き出した調和空気によって、気流拡散部材及びルーバへの室内空気の接触を防ぎ、冷房時に気流拡散部材及びルーバでの結露発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4726404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の空調用吹出口ユニットでは、気流拡散部材の配置によって天井に沿う方向しか調和空気を吹き出すことができない。そのため、天井に調和空気(暖気)が溜まり易い暖房時には、部屋の床面近傍を暖めるのに時間を要する。つまり、引用文献1の空調用吹出口ユニットでは、冷房時に吹出口での結露の発生を抑制できるが、暖房時に床面近傍を暖める空調効率が悪い。
【0006】
本発明は、冷房時には吹出口での結露の発生を抑制でき、暖房時には良好な空調効率で床面近傍を暖めることができる空調用吹出口ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、一端に吹出口を有し、前記吹出口に向けて調和空気の気流が流れる筒状のダクトと、前記ダクトの前記一端に設けられ、前記気流の上流側から下流側に向けて外側へ広がった筒状体からなる第1ルーバと、前記吹出口の前記第1ルーバの内側に画定された第1吹出部と、前記吹出口の前記第1ルーバの外側に画定された第2吹出部と、前記第1ルーバよりも前記気流の上流側に間隔をあけて位置するように前記ダクト内に設けられ、前記気流の上流側から下流側に向けて外側へ広がった筒状体からなり、前記気流を、前記第1吹出部に向けた第1分流と前記第2吹出部に向けた第2分流とに分ける第1分流板とを備え、前記ダクトは、前記第1分流板が設けられた部分であり、前記吹出口に対して前記気流の上流側に間隔をあけて位置し、前記吹出口の開口面積よりも小さい開口面積の分流部と、前記分流部と前記吹出口の間に設けられ、前記分流部から前記吹出口に向けて開口面積が漸増し、前記第1分流と前記第2分流を拡散させる空間である拡張部とを有し、前記第1分流を含む第1調和空気が、前記第1吹出部から前記ダクトの軸線に沿う方向に吹き出し、前記第2分流を含む第2調和空気が、前記第2吹出部から、前記第1ルーバの傾斜に依存する第1吹出角度で前記ダクトの軸線に対して傾斜して吹き出し、前記第1調和空気の風速は、前記第2調和空気の風速よりも早い、空調用吹出口ユニットを提供する。
【0008】
本態様では、第1吹出部からダクトの軸線に沿う方向に第1調和空気が吹き出すため、暖房時には部屋の床面近傍を迅速に暖めることができ、冷房時には部屋の床面近傍を迅速に冷やすことができる。また、第1分流板が気流の上流側から下流側に向けて外側へ広がる筒状であるため、気流が衝突する際の抵抗によって、ダクト内で第2分流の風速が第1分流の風速よりも遅くなる。さらに、第1ルーバが気流の上流側から下流側に向けて外側へ広がる筒状であるため、第2分流が衝突する際の抵抗によって、吹出口で第2分流を含む第2調和空気の風速が第1分流を含む第1調和空気の風速よりも遅くなる。この速度差によって第1調和空気が第2調和空気を誘引し、第2調和空気によって第1ルーバの下流側端部を覆うことができる。その結果、多くの水分を含む室内空気が第1ルーバに接触することを防止できるため、冷房時、室内空気が第1ルーバに接触して降温すること伴う結露の発生を防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の空調用吹出口ユニットでは、冷房時には吹出口での結露の発生を抑制でき、暖房時には良好な空調効率で床面近傍を暖めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の実施形態に係る空調用吹出口ユニットの断面図。
図1B図1AのB部分の拡大断面図。
図2A】空調用吹出口ユニットを上方から見た分解斜視図。
図2B】空調用吹出口ユニットを下方から見た分解斜視図。
図3図1Aの平面図。
図4図1Aの底面図。
図5】実験方法を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
図1Aは、本発明の実施形態に係る空調用の吹出口ユニット10を示す。この吹出口ユニット10は、建築物の部屋の天井1に取り付けられ、室内を冷暖房する空調設備のメインダクト5(図5参照)に接続される。
【0013】
吹出口ユニット10は、メインダクト5に接続されるダクト12、ダクト12の一端の吹出口17に取り付けられたルーバセット20、及びダクト12内に取り付けられた拡散部材30を備える。メインダクト5からダクト12内に供給された調和空気Caの気流Afは、拡散部材30によって拡散されて吹出口17に向けて流れ、ルーバセット20によって所定の吹出角度θ1~θ3で室内へ吹き出す。
【0014】
図1A図2A及び図2Bに示すように、ダクト12は、接続部13、拡張部14、及びカバー16を備え、全体として直線状に延びる軸線Aを有する筒状である。接続部13と拡張部14は一体構造の樹脂部品であり、カバー16は接続部13及び拡張部14とは別体の樹脂部品である。
【0015】
接続部13は、メインダクト5に接続可能な直径の円筒状である。接続部13の拡張部14側端部、つまり接続部13のうち調和空気Caが流れる向き(気流Af)の下流側端部には、分流部13aが設けられている。分流部13aには、拡散部材30を取り付けるための取付穴13bが設けられている。取付穴13bは、径方向外向きに窪む非貫通の凹部であり、周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では4箇所)設けられている。
【0016】
拡張部14は、分流部13aと吹出口17の間に形成され、分流部13aから吹出口17に向けて開口面積が漸増する四角錐筒状である。より具体的には、拡張部14は、円形状をなす分流部13aに連なり、調和空気Caの気流Afの下流側端部に位置する開口部14aが四角形状をなすように拡開している。開口部14aを画定する4つの壁14bの下端縁の全長D1は分流部13aの内径R1よりも長く、開口部14aの開口面積は分流部13aの開口面積よりも大きい。
【0017】
拡張部14を構成する個々の壁14bは、曲率中心がダクト12内かつ壁14bの下端よりも下方(吹出口17側)に位置し、定められた曲率半径で湾曲している。図1Aを参照すると、ダクト12の軸線Aに対する壁14bの傾斜角度はαである。壁14bの傾斜角度αは、壁14bのうち軸線A側に位置する内側面の上端と下端を通る直線L1と軸線Aとがなす角として定義される。なお、壁14bは、湾曲することなく平板状であってもよい。傾斜角度αについては後で詳述する。
【0018】
拡張部14の下流側端部には、カバー16を取り付けるための取付部15が設けられている。図3を参照すると、取付部15は、軸線Aが延びる方向から見て正方形状であり、拡張部14から径方向外向きに突出している。取付部15が備える4つの外側面の中央には、それぞれ位置決め凹部15aが設けられている。位置決め凹部15aの両側にはそれぞれ、円弧状に膨出した圧接部15bと、円弧状の溝からなるスリット15cとが設けられている。スリット15cによって、圧接部15bが弾性的に変形可能となっている。図1Bを参照すると、取付部15の外側面には、カバー16を係止するための係止部15dが設けられている。
【0019】
図1A及び図1Bに示すように、カバー16は、ダクト12にルーバセット20を着脱可能に取り付けるために設けられている。カバー16は、取付部15の外周を取り囲む四角筒状の外枠部16aと、外枠部16aの下端に連なる四角形状の端壁部16gと、端壁部16gに形成された吹出口17とを備える。
【0020】
外枠部16aは、4つの壁部16bによって構成されている。個々の壁部16bは、軸線Aに沿って延びる第1部分16cと、第1部分16cから室内に向けて内側(軸線A側)に傾斜した第2部分16dとを備える。ダクト12にカバー16を取り付けることによって、第1部分16cに取付部15の圧接部15bが圧接される。4つの壁部16bのうち対向する2つには、位置決め凹部15aに嵌まる位置決め凸部16eが形成されている。また、壁部16bにはそれぞれ、係止部15dに係止する係止爪16fが設けられている。
【0021】
端壁部16gは、外枠部16a(第2部分16d)の下端に連なり、ダクト12へのカバー16の取付状態で、軸線Aに対して直交方向に延びている。端壁部16gは、取付部15に対して間隔をあけて位置しており、取付部15との間には調和空気Caの漏れを防ぐためのシール部材18が配置されている。
【0022】
吹出口17は、開口部14aよりも大きい寸法D2で開口した四角形状の孔である。つまり、吹出口17の開口面積は、開口部14aの開口面積及び分流部13aの開口面積のいずれよりも大きい。ダクト12へのカバー16の取付状態で、吹出口17の中心は軸線A上に位置する。吹出口17内には、ルーバセット20を取り付けるための係止枠16hが設けられている。係止枠16hは、端壁部16gから軸線Aに向けて突出している。係止枠16hの内縁と開口部14aの内縁とは、軸線Aが延びる上下方向に概ね一致している。
【0023】
図1A及び図4に示すように、ルーバセット20は、ダクト12の一端に位置するカバー16の吹出口17に取り付けられている。ルーバセット20は、大きさが異なる2つのルーバ21,22を備え、室内の定められた向きへ調和空気Ca1~Ca3が吹き出すように誘導する。
【0024】
ルーバセット20によって吹出口17は、第1ルーバ21の内側に位置する第1吹出部17a、2つのルーバ21,22間に位置する第2吹出部17b、及び第2ルーバ22の外側に位置する第3吹出部17cに画定される。ルーバセット20は、第1吹出部17aから第1調和空気Ca1が、軸線Aに沿う方向に吹き出すように構成されている(吹出角度θ1)。また、第2吹出部17bから第2調和空気Ca2が、第1ルーバ21の傾斜に依存する吹出角度(第1吹出角度)θ2で、軸線Aに対して傾斜して吹き出すように構成されている。また、第3吹出部17cから第3調和空気Ca3が、第2ルーバ22の傾斜に依存する吹出角度(第2吹出角度)θ3で、軸線Aに対して傾斜して吹き出すように構成されている。第3調和空気Ca3の吹出角度θ3は、第2調和空気Ca2の吹出角度θ2よりも大きい。具体的には、以下の通りである。
【0025】
第1ルーバ21は、気流Afの上流側から下流側に向けて外側へ広がった四角錐筒状体からなり、4枚の傾斜板21aによって構成されている。カバー16を介してルーバセット20がダクト12に取り付けられることで、第1ルーバ21の中心は軸線A上に位置する。
【0026】
個々の傾斜板21aは、曲率中心が軸線Aとは反対側である外側上方に位置し、定められた曲率半径で湾曲している。図1Aを参照すると、軸線Aに対する傾斜板21a(第1ルーバ21)の傾斜角度はβ1である。傾斜板21aの傾斜角度β1は、第1ルーバ21のうち軸線A側に位置する内側面の上端と下端を通る直線L2と軸線Aとがなす角で、鋭角な方として定義される。なお、傾斜板21aは、湾曲することなく平板状であってもよい。傾斜角度β1については後で詳述する。
【0027】
第1ルーバ21の内側には、格子状をなすように複数の仕切板23a,23bが設けられている。仕切板23aは、概ね平板状であり、軸線Aに対して直交する方向である第1方向(図1Aにおいて紙面に直交する方向)に延び、軸線A及び第1方向に対して直交する方向である第2方向(図1Aにおいて左右方向)へ間隔をあけて複数設けられている。仕切板23bは、概ね平板状であり、第2方向に延び、第1方向へ間隔をあけて複数設けられている。仕切板23a,23bの厚みは概ね2mmであり、隣り合う仕切板23aの間隔及び仕切板23bの間隔はそれぞれ概ね7.5mmである。
【0028】
引き続いて図1A及び図4を参照すると、第2ルーバ22は、第1ルーバ21を取り囲むように設けられ、気流Afの上流側から下流側に向けて外側へ広がった四角錐筒状体からなり、傾斜した4枚の傾斜板22aによって構成されている。カバー16を介してルーバセット20がダクト12に取り付けられることで、第2ルーバ22の中心は軸線A上に位置する。第2ルーバ22は、リブ24を介して第1ルーバ21に連なっている。第2ルーバ22の上端には、カバー16の係止枠16hに係止する係止爪部25が設けられている。
【0029】
個々の傾斜板22aは、曲率中心が軸線Aとは反対側である外側上方に位置し、定められた曲率半径で湾曲している。図1Aを参照すると、軸線Aに対する傾斜板22a(第2ルーバ22)の傾斜角度はβ2である。傾斜板22aの傾斜角度β2は、第2ルーバ22のうち軸線A側に位置する内側面の上端と下端を通る直線L3と軸線Aとがなす角で、鋭角な方として定義される。第2ルーバ22の傾斜角度β2は、第1ルーバ21の傾斜角度β1よりも大きい。なお、傾斜板22aは、湾曲することなく平板状であってもよい。傾斜角度β2については後で詳述する。
【0030】
図1A図2A及び図2Bに示すように、拡散部材30は、ダクト12内の分流部13aに配置され、調和空気Caの気流Afを分流して拡張部14で拡散させる。拡散部材30は、大きさが異なる2つの分流板31,32と、これらを一体構造とする4つのリブ33とを備える。接続部13内の気流Afは、第1分流板31によって第1吹出部17aに向けた第1分流Af1と第2吹出部17bに向けた第2分流Af2とに分けられ、第2分流板32によって第2吹出部17bに向けた第2分流Af2と第3吹出部17cに向けた第3分流Af3とに分けられる。
【0031】
第1分流板31は、気流Afの上流側から下流側に向けて外側へ広がった円錐筒状体からなる。図1Aを参照すると、軸線Aに対する第1分流板31の傾斜角度はγ1である。第1分流板31の傾斜角度γ1は、第1分流板31のうち軸線Aとは反対側に位置する外側面の上端と下端を通る直線L4と軸線Aとがなす角で、鋭角な方として定義される。なお、第1分流板31は、平板状に限られず、ルーバ21,22と同様に湾曲していてもよい。
【0032】
第2分流板32は、第1分流板31を取り囲むように設けられ、リブ33を介して第1分流板31と連なっている。第2分流板32は、気流Afの上流側から下流側に向けて外側へ広がった円錐筒状体からなる。図1Aを参照すると、軸線Aに対する第2分流板32の傾斜角度はγ2である。第2分流板32の傾斜角度γ2は、第2分流板32のうち軸線Aとは反対側に位置する外側面の上端と下端を通る直線L5と軸線Aとがなす角で、鋭角な方として定義される。なお、第2分流板32は、平板状に限られず、ルーバ21,22と同様に湾曲していてもよい。
【0033】
第1分流板31の延長線(直線L4)と第2分流板32の延長線(直線L5)の間に第1ルーバ21が位置し、第2分流板32の延長線上に第2ルーバ22が位置するように、第1分流板31の傾斜角度γ1と第2分流板32の傾斜角度γ2とが設定されている。これにより、第1分流板31によって分けられた第2分流Af2が第2吹出部17bに向かい、第2分流板32によって分けられた第3分流Af3が第3吹出部17cに向かうように構成されている。
【0034】
リブ33は、第1分流板31の外周面から放射状をなすように突出し、第2分流板32を貫通して径方向外向きに更に突出している。全てリブ33の外端33aを通る仮想円(図示せず)の直径は、分流部13aの内径よりも大きく、分流部13aの外径よりも小さい。リブ33の外端33aは、気流Afの上流側から下流側に向けて外向きに傾斜している。拡散部材30を開口部14aから挿入して分流部13aに圧入することで、外端33aが取付穴13bに取り付けられる。リブ33に対して第1分流板31は、気流Afの上流側及び下流側へ突出している。リブ33に対して第2分流板32は、気流Afの下流側へ突出している。
【0035】
次に、吹出口ユニット10に供給された調和空気Caの気流Afについて説明する。
【0036】
図1Aに示すように、調和空気Caの気流Afは、接続部13内で拡散部材30に衝突し、分流板31,32の傾斜によって軸線Aを中心として外向きに拡散される。
【0037】
具体的には、気流Afの一部は、第1分流板31内を通る第1分流Af1と、第1分流板31に衝突して第1分流板31の外側を通る第2分流Af2とに分けられる。また、気流Afの残りの一部は、第2分流板32内を通る前述の第2分流Af2と、第2分流板32に衝突して第2分流板32の外側を通る第3分流Af3とに分けられる。
【0038】
第1分流Af1は、いずれの分流板31,32にも衝突しないため、風速が低下することは殆どない。第2分流Af2は、傾斜した第1分流板31に衝突した際の抵抗によって減速するため、その風速は第1分流Af1の風速よりも遅くなる。第3分流Af3は、傾斜した第2分流板32に衝突した際の抵抗によって減速するため、その風速は、第1分流Af1の風速よりも遅くなる。第2分流Af2と第3分流Af3の低減速度は、分流板31,32の傾斜角度γ1,γ2に依存する。
【0039】
続いて、第1分流Af1から第3分流Af3は、拡張部14を経て吹出口17でルーバセット20に衝突し、ルーバ21,22の傾斜によって室内の定められた向きに吹き出される。
【0040】
具体的には、第1分流Af1は、第1吹出部17aから室内に吹き出す。第1分流板31の傾斜によって、第2分流Af2の一部は第1吹出部17aから室内に吹き出し、第2分流Af2の残りの大部分は第2吹出部17bから室内に吹き出す。第2分流板32の傾斜によって、第3分流Af3は第3吹出部17cから室内に吹き出す。
【0041】
第1分流Af1を含む第1調和空気Ca1は、軸線Aに沿う方向へ第1吹出部17aから吹き出す(吹出角度θ1)。この際、第1調和空気Ca1は第1吹出部17aの仕切板23a,23bに衝突するが、これらは軸線Aに沿って延びるため、第1分流Af1(第1調和空気Ca1)の風速は殆ど低下しない。
【0042】
第2分流Af2を含む第2調和空気Ca2は、第1ルーバ21の傾斜によって、第1調和空気Ca1の吹出角度θ1よりも大きい吹出角度θ2で、第2吹出部17bから吹き出す。この際、第2調和空気Ca2は、傾斜した第1ルーバ21に衝突した際の抵抗によって減速するため、その風速は第1調和空気Ca1の風速よりも遅くなる。つまり、第1分流Af1よりも遅い第2分流Af2が第1ルーバ21によって更に減速され、第2調和空気Ca2として吹き出される。
【0043】
第3分流Af3を含む第3調和空気Ca3は、第2ルーバ22の傾斜によって、第2調和空気Ca2の吹出角度θ2よりも大きい吹出角度θ3で、第3吹出部17cから吹き出す。この際、第3調和空気Ca3は、第2ルーバ22に衝突した際の抵抗によって減速する。第2ルーバ22の傾斜角度β2は第1ルーバ21の傾斜角度β1よりも大きいため、第3調和空気Ca3の風速は、第2調和空気Ca2の風速よりも遅くなる。つまり、第1分流Af1よりも遅い第3分流Af3が第2ルーバ22によって更に減速され、第3調和空気Ca3として吹き出される。
【0044】
このように、拡散部材30及びルーバセット20によって、個々の吹出部17a~17cから吹き出す調和空気Ca1~Ca3の風速V1~V3は、第1調和空気Ca1の風速V1が最も早く、第3調和空気Ca3の風速V3が最も遅くなる。そして、本願の発明者らは、ルーバ21,22での結露を防ぐために鋭意実験し、調和空気Ca1~Ca3の風速V1~V3の風速比の最適な有効範囲を見いだした。
【0045】
具体的には、図1Bに示すように、第1調和空気Ca1によって第2調和空気Ca2を誘引して、第2調和空気Ca2によって第1ルーバ21の下流側端部を覆い、室内空気が第1ルーバ21に接触して降温すること伴う結露の発生を防止する。このようにするために、第1調和空気Ca1の風速V1と第2調和空気Ca2の風速V2の風速比V2/V1は、以下の式を満たすように設定される。
【0046】
[数1]
0.20≦V2/V1≦0.60
V1:第1調和空気の風速
V2:第2調和空気の風速
【0047】
また、第2調和空気Ca2によって第3調和空気Ca3を誘引して、第3調和空気Ca3によって第2ルーバ22の下流側端部を覆い、室内空気が第2ルーバ22に接触して降温すること伴う結露の発生を防止する。このようにするために、第2調和空気Ca2の風速V2と第3調和空気Ca3の風速V3の風速比V3/V2は、以下の式を満たすように設定される。
【0048】
[数2]
0.15≦V3/V2≦0.75
V2:第2調和空気の風速
V3:第3調和空気の風速
【0049】
調和空気Ca1~Ca3の風速V1~V3を前述した有効範囲に設定することにより、調和空気Ca1~Ca3の気流によって室内空気がルーバ21,22に接触することを抑制できる。よって、冷房時、室内空気がルーバ21,22に接触して降温すること伴う結露の発生を防止できる。
【0050】
そして、調和空気Ca1~Ca3の風速V1~V3を前述した有効範囲に設定するために、分流部13a、吹出口17、ルーバ21,22、及び分流板31,32を、以下のように構成している。
【0051】
図1Aを参照すると、吹出口17の一辺の寸法D2は分流部13aの内径R1よりも大きく、これらの間には拡張部14が形成されている。そして、拡張部14の壁14bの傾斜角度αは、15度以上20度以下に設定することが好ましく、本実施形態では15度に設定している。傾斜角度αを過度に大きくすると、分流Af2,Af3の拡散が過多になるため、第2吹出部17b及び第3吹出部17cから吹き出す第2調和空気Ca2及び第3調和空気Ca3の風速V2,V3及び風量が過少になり、風速比V2/V1,V3/V2が有効範囲外となる。傾斜角度αを過度に小さくすると、分流Af2,Af3の拡散が過少になるため、第2吹出部17b及び第3吹出部17cから吹き出す第2調和空気Ca2及び第3調和空気Ca3の風速V2,V3及び風量が過大になり、やはり風速比V2/V1,V3/V2が有効範囲外となる。そのため、拡張部14の壁14bの傾斜角度αは、前記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0052】
ダクト12の軸線Aに対する第1ルーバ21の傾斜角度β1は、20度以上30度以下に設定することが好ましく、本実施形態では30度に設定している。傾斜角度β1を過度に小さくすると、第2調和空気Ca2の吹出角度θ2と第3調和空気Ca3の吹出角度θ3との角度差が大きくなるため、第2調和空気Ca2による第3調和空気Ca3の誘引が困難になり、第2ルーバ22で結露が生じる虞がある。傾斜角度β1を過度に大きくすると、第1調和空気Ca1の吹出角度θ1と第2調和空気Ca2の吹出角度θ2との角度差が大きくなるため、第1調和空気Ca1による第2調和空気Ca2の誘引が困難になり、第1ルーバ21で結露が生じる虞がある。そのため、第1ルーバ21の傾斜角度β1は、前記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0053】
ダクト12の軸線Aに対する第2ルーバ22の傾斜角度β2は、65度以上70度以下に設定することが好ましく、本実施形態では68度に設定している。傾斜角度β2を過度に小さくすると、第3調和空気Ca3をカバー16に沿って吹き出せないため、室内空気がカバー16に接触してカバー16で結露が生じる虞がある。傾斜角度β2を過度に大きくすると、第2調和空気Ca2の吹出角度θ2と第3調和空気Ca3の吹出角度θ3との角度差が大きくなるため、第2調和空気Ca2による第3調和空気Ca3の誘引が困難になり、第2ルーバ22で結露が生じる虞がある。そのため、第2ルーバ22の傾斜角度β2は、前記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0054】
ダクト12の軸線Aに対する第1分流板31の傾斜角度γ1は、25度以上40度以下に設定することが好ましく、本実施形態では30度に設定している。また、ダクト12の軸線Aに対する第2分流板32の傾斜角度γ2は、25度以上40度以下に設定することが好ましく、本実施形態では30度に設定している。傾斜角度γ1,γ2を過度に小さくすると、分流Af2,Af3の減速及び拡散が不足するため、風速比V2/V1,V3/V2が有効範囲外となる。傾斜角度γ1,γ2を過度に大きくすると、分流Af2,Af3の減速及び拡散が過剰になるため、やはり風速比V2/V1,V3/V2が有効範囲外となる。そのため、第1分流板31の傾斜角度γ1、及び第2分流板32の傾斜角度γ2は、それぞれ前記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0055】
本実施形態の吹出口ユニット10では、分流部13aの内径R1は93mmに設定され、吹出口17の寸法D2は133.2mmに設定されている。また、開口部14aを画定する壁14bの下端縁の全長D1は115.5mmに設定されている。
【0056】
この場合、軸線Aが延びる方向の寸法である拡張部14の全長D3は、35mm以上50mm以下の範囲に設定することが好ましく、本実施形態では42mmに設定している。拡張部14の全長D3を過度に小さくすると、分流Af2,Af3の拡散が不足するため、調和空気Ca1~Ca3の風速比V2/V1,V3/V2が有効範囲外となる。拡張部14の全長D3を過度に大きくすると、分流Af2,Af3の拡散が過剰になるため、やはり調和空気Ca1~Ca3の風速比V2/V1,V3/V2が有効範囲外となる。そのため、拡張部14の全長D3は、前記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0057】
前述のように、正方形状をなす吹出口17の一辺の寸法はD2である。これに対して、第1吹出部17aの一辺の寸法はD4、第2吹出部17bの一辺の寸法はD5、及び第3吹出部17cの一辺の寸法はD6である。第1吹出部17aの寸法D4は、対向する第1ルーバ21の上流側端部の内縁間の距離として定義される。第2吹出部17bの寸法D5は、ルーバ21,22の上流側端部において、第1ルーバ21の外縁と第2ルーバ22の内縁の間の距離として定義される。第3吹出部17cの寸法D5は、第2ルーバ22の上流側端部において、第2ルーバ22の外縁と吹出口17の内縁の間の距離として定義される。
【0058】
そして、寸法D2に基づく吹出口17の開口面積に対して、寸法D4に基づく第1吹出部17aの開口面積が占める割合は45%以上55%以下である。また、吹出口17の開口面積に対して、寸法D5に基づく第2吹出部17bの開口面積が占める割合は20%以上25%以下である。また、吹出口17の開口面積に対して、寸法D6に基づく第3吹出部17cの開口面積が占める割合は5%以上10%以下である。なお、吹出口17の開口面積の中には、第1吹出部17a、第2吹出部17b及び第3吹出部17cそれぞれの開口面積の他に、2つのルーバ21,22の占有面積(割合として概ね20%)が含まれる。但し、格子状をなす仕切板23a,23bの占有面積は含まれていない。
【0059】
第1吹出部17aの開口面積の割合を過度に小さくすると、調和空気Ca1,Ca2の風速比V2/V1が有効範囲外になるうえ、部屋の床面近傍の温調に要する風量を得ることができない。第1吹出部17aの開口面積の割合を過度に大きくすると、第2吹出部17b及び第3吹出部17cでの風量を確保できないため、ルーバ21,22で結露が生じる虞がある。そのため、吹出口17の開口面積に対して第1吹出部17aの開口面積が占める割合は、前記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0060】
第2吹出部17bの開口面積の割合を過度に小さくすると、第2吹出部17bでの風量を確保できないため、調和空気Ca1~Ca3の風速比V2/V1,V3/V2が有効範囲外になる。第2吹出部17bの開口面積の割合を過度に大きくすると、やはり調和空気Ca1~Ca3の風速比V2/V1,V3/V2が有効範囲外になる。そのため、吹出口17の開口面積に対して第2吹出部17bの開口面積が占める割合は、前記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0061】
第3吹出部17cの開口面積の割合を過度に小さくすると、第3吹出部17cでの風量を確保できないため、カバー16で結露が生じる虞がある。第3吹出部17cの開口面積の割合を過度に大きくすると、調和空気Ca2,Ca3の風速比V3/V2が有効範囲外になる。そのため、吹出口17の開口面積に対して第3吹出部17cの開口面積が占める割合は、前記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0062】
以上のように、本実施形態の吹出口ユニット10では、分流部13aの内径R1、拡張部14の全長D3、吹出口17の寸法D2、及び個々の吹出部17a~17cの開口率が、前述した適正範囲に設定され、ルーバ21,22の傾斜角度γ1,γ2が、前述した適正範囲に設定されている。この吹出口ユニット10において、第1分流板31の上流側端部の内径はR2で、第2分流板32の上流側端部の内径はR3である。また、第1分流板31の下流側端部の内径はR4で、第2分流板32の下流側端部の内径はR5である。
【0063】
そして、内径R1に基づく分流部13aの開口面積に対して、内径R2に基づく第1分流板31の上流側端部の開口面積が占める割合は0.5%以上2.5%以下である。また、分流部13aの開口面積に対して、内径R2,R3と第1分流板31の厚み(2mm)に基づく2つの分流板31,32の上流側端部間の開口面積が占める割合は25%以上30%以下である。また、分流部13aの開口面積に対して、内径R3と第2分流板32の厚み(2mm)に基づく第2分流板32の上流側端部外側の開口面積が占める割合は53%以上61%以下である。なお、分流部13aの開口面積の中には、2つの分流板31,32及びリブ33の占有面積(割合として概ね15%)が含まれる。
【0064】
また、内径R1に基づく分流部13aの開口面積に対して、内径R4に基づく第1分流板31の下流側端部の開口面積が占める割合は6%以上11%以下である。また、分流部13aの開口面積に対して、内径R4,R5と第1分流板31の厚み(2mm)に基づく2つの分流板31,32の下流側端部間の開口面積が占める割合は35%以上39%以下である。また、分流部13aの開口面積に対して、内径R4と第2分流板32の厚み(2mm)に基づく第2分流板32の下流側端部外側の開口面積が占める割合は39%以上45%以下である。なお、分流部13aの開口面積の中には、2つの分流板31,32及びリブ33の占有面積(割合として概ね15%)が含まれる。
【0065】
分流板31,32の上流側の開口面積を過度に小さくし、分流板31,32の下流側の開口面積を過度に大きくすると、第1分流板31の傾斜角度γ1,γ2が大きくなるため、分流Af2,Af3の減速及び拡散が過剰になる。分流板31,32の上流側の開口面積を過度に大きく、分流板31,32の下流側の開口面積を過度に小さくすると、第1分流板31の傾斜角度γ1,γ2が小さくなるため、分流Af2,Af3の減速及び拡散が不足する。そのため、分流部13aの開口面積に対して、分流板31,32によって区画した各部の開口面積が占める割合は、前記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0066】
このように構成した吹出口ユニット10では、図1Bに示すように、第1吹出部17aから第1分流Af1を含む第1調和空気Ca1が、ダクト12の軸線Aに沿って吹き出される。また、第2吹出部17bから第2分流Af2を含む第3調和空気Ca2が、ダクト12の軸線Aに対して傾斜した吹出角度θ2で吹き出される。また、第3吹出部17cから第3分流Af3を含む第3調和空気Ca3が、ダクト12の軸線Aに対して更に傾斜した吹出角度θ3で吹き出される。
【0067】
そして、個々の調和空気Ca1~Ca3の風速V1~V3は、第1調和空気Ca1の風速V1が最も早くなり、第3調和空気Ca3の風速V3が最も遅くなる。しかも、第1吹出部17aから吹き出す第1調和空気Ca1の風速V1と第2調和空気Ca2の風速V2の風速比が、0.20≦V2/V1≦0.60を満たす。また、第2吹出部17bから吹き出す第2調和空気Ca2の風速V2と第3調和空気Ca3の風速V3の風速比が、0.15≦V3/V2≦0.75を満たす。
【0068】
よって、第1調和空気Ca1によって第2調和空気Ca2の一部を誘引して、第2調和空気Ca2によって第1ルーバ21の下流側端部を覆うことができる。また、第2調和空気Ca2によって第3調和空気Ca3の一部を誘引して、第3調和空気Ca3によって第2ルーバ22の下流側端部を覆うことができる。そのため、調和空気Ca1~Ca3によって、室内空気が吹出口ユニット10に接触することを防止できる。その結果、冷房時、室内空気が吹出口ユニット10に接触して降温すること伴う結露の発生を防止できる。
【0069】
このように構成した吹出口ユニット10は、以下の特徴を有する。
【0070】
第1吹出部17aからダクト12の軸線Aに沿って第1調和空気Ca1が吹き出されるため、暖房時には部屋の床面近傍を迅速に暖めることができ、冷房時には部屋の床面近傍を迅速に冷やすことができる。
【0071】
ダクト12内に設けられた第1分流板31が傾斜しているため、気流Afが衝突する際の抵抗によって、ダクト12内で第2分流Af2の風速が第1分流Af1の風速よりも遅くなる。また、第1ルーバ21が傾斜しているため、第2分流Af2が衝突する際の抵抗によって、吹出口17で第2分流Af2を含む第2調和空気Ca2の風速V2が第1分流Af1を含む第1調和空気Ca1の風速V1よりも遅くなる。第1調和空気Ca1と第2調和空気Caの速度差によって、第1調和空気Ca1が第2調和空気Ca2を誘引し、第2調和空気Ca2によって第1ルーバ21の下流側端部を覆うことができる。その結果、多くの水分を含む室内空気が第1ルーバ21に接触することを防止できるため、冷房時、室内空気が第1ルーバ21に接触して降温すること伴う結露の発生を防止できる。
【0072】
分流部13aと吹出口17の間には、開口面積を次第に拡張した拡張部14が形成されているため、第1分流板31によって分かれた分流Af1,Af2を開口面積が拡張された拡張部14で有効に拡散できる。また、ダクト12の軸線Aに対して傾斜した第2分流Af2の風速を、ダクト12の軸線Aに沿った第1分流Af1の風速よりも確実に遅くできる。
【0073】
第1調和空気Ca1の風速V1と第2調和空気Ca2の風速V2の風速比が0.20≦V2/V1≦0.60を満たすため、第1調和空気Ca1によって第2調和空気Ca2を確実に誘引し、第2調和空気Ca2によって第1ルーバ21の下流側端部を確実に覆うことができる。
【0074】
第1分流板31の傾斜角度γ1が25度以上40度以下であるため、第2分流Af2の風速が第1分流Af1の風速よりも遅くなるように、気流Afを確実に拡散できる。
【0075】
第1ルーバ21の傾斜角度β1が20度以上30度以下であるため、第1調和空気Ca1によって第2調和空気Ca2を誘引して結露を防止できる風速比V2/V1を、確実に得ることができる。
【0076】
第2吹出部17bでの吹出角度θ2よりも大きい吹出角度θ3で第3吹出部17cから第3調和空気Ca3が吹き出すように、第2ルーバ22が傾斜しているため、第3分流Af3が衝突する際の抵抗によって、第3調和空気Ca3の風速V3が第2調和空気Ca2の風速V2よりも遅くなる。そのため、第2調和空気Ca2と第3調和空気Ca3の速度差によって、第2調和空気Ca2が第3調和空気Ca3を誘引し、第3調和空気Ca3によって第2ルーバ22の下流側端部を覆うことができる。その結果、室内空気が第2ルーバ22に接触することを防止できるため、冷房時、室内空気が第2ルーバ22に接触して降温すること伴う結露の発生を防止できる。
【0077】
第2調和空気Ca2の風速V2と第3調和空気Ca3の風速V3の風速比が0.15≦V3/V2≦0.75を満たすため、第2調和空気Ca2によって第3調和空気Ca3を確実に誘引し、第3調和空気Ca3によって第2ルーバ22の下流側端部を確実に覆うことができる。
【0078】
第2分流板32の傾斜角度γ2が25度以上40度以下であるため、第1分流Af1の風速V1よりも第3分流Af3の風速V3が遅くなるように、気流Afを確実に拡散できる。
【0079】
第2ルーバ22の傾斜角度β2が65度以上70度以下であるため、第2調和空気Ca2によって第3調和空気Ca3を誘引して結露を防止できる風速比V3/V2を確実に得ることができる。
【0080】
吹出口17の開口面積に対して第1吹出部17aの開口面積が占める割合を、前述した適正範囲に設定しているため、部屋の床面近傍を迅速に冷暖房できる。また、吹出口17の開口面積に対して、第2吹出部17bの開口面積が占める割合及び第3吹出部17cの開口面積が占める割合を、前述した適正範囲に設定しているため、風速比V2/V1,V3/V2に加えて風量比も、第1吹出部17aが最も多く、第3吹出部17cが最も少なくなる。その結果、第1調和空気Ca1によって第2調和空気Ca2を確実に誘引でき、第2調和空気Ca2によって第3調和空気Ca3を確実に誘引できる。
【0081】
しかも、分流部13aの開口面積に対して、第1分流板31の内側の開口面積が占める割合、2つの分流板31,32間の開口面積が占める割合、及び第2分流板32の外側の開口面積が占める割合を、前述した適正範囲に設定しているため、所定の風速に調整した分流Af1~Af3を、吹出部17a~17cにそれぞれ案内できる。よって、調和空気Ca1~Ca3の風速比V2/V1,V3/V2を有効範囲に設定できる。
【0082】
以上のように、本実施形態の吹出口ユニット10は、ダクト12の軸線Aに沿って第1調和空気Ca1が吹き出されるため、床面近傍の温度を迅速に冷暖房できる。また、吹出部17a~17cから吹き出す調和空気Ca1~Ca3に速度差が設定されており、特に風速比を0.20≦V2/V1≦0.60,0.15≦V3/V2≦0.75に設定しているため、冷房時の結露を防止できる。そして、本発明者らは、結露に関する効果を確認するために、書籍『低温送風空調システムの計画と設計』2003年12月25日発行、著:社団法人 空気調和・衛生工学会の記載を参考にして実験を行った。
【0083】
(実験例)
図5に示すように、第1試験室2と第2試験室3に分離した2室分離型の空調室を用い、試験室2,3を隔てる壁4にメインダクト5を貫通させ、メインダクト5によって試験室2,3を連通させた。メインダクト5の一端に位置するように、第1試験室2には送風機(Suiden SJF-300L-3)6を設置し、メインダクト5を通して第1試験室2内の空気を第2試験室3へ供給可能とした。第2試験室3には木枠7を設置し、この木枠7の天井1に取り付けた吹出口ユニット10にメインダクト5の他端を接続した。
【0084】
吹出口ユニット10の第1吹出部17aから第3吹出部17cには、調和空気Ca1~Ca3の風速V1~V3を測定するために、風速計(testo製熱線式風速計testo425)8a~8cを取り付けた。また、第1調和空気Ca1による第2調和空気Ca2の巻き込み、及び第2調和空気Ca2による第3調和空気Ca3の巻き込みの有無を確認するために、送風機6の吸込口に煙発生機9(ANTARI Z-1000II)を設置し、吹出口ユニット10から吹き出す煙の動きを撮影するスーパースローカメラ(SONY FDR-AX700)を第2試験室3に設置した。
【0085】
第1試験室2を10℃に温調し、第2試験室3を温度30℃湿度65%に温調した後、送風機6を駆動させ、メインダクト5を通して第1試験室2の空気を第2試験室3の吹出口ユニット10から吹き出させ、この状態を6時間維持する。そして、風速計8a~8cで測定した風速V1~V3から風速比V2/V1,V3/V2を算出するとともに、調和空気Ca2,Ca3の巻き込みの有無と、6時間後の第2試験室3の床面への結露水の滴下の有無とを評価した。その結果を以下の表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1において、発明品1~5は、風速比V2/V1,V3/V2の両方が前述した有効範囲内になるようにした吹出口ユニット10である。比較品1~3は、風速比V2/V1が前述した有効範囲外になるようにした吹出口ユニット10である。発明品1~5の場合、煙による気流可視化試験においては調和空気Ca2,Ca3の巻き込みを確認でき、結露試験においては木枠7の床面に結露水の滴下は見られなかった。比較品1~3の場合、煙による気流可視化試験においては調和空気Ca2,Ca3の巻き込みを確認できず、結露試験においては木枠7の床面に結露水の滴下が見られた。
【0088】
この実験結果から、吹出口ユニット10から吹き出す調和空気Ca1~Ca3の風速V1~V3は、風速V1が最も早く、風速V3が最も遅くなることが好ましく、風速比V2/V1,V3/V2が0.20≦V2/V1≦0.60,0.15≦V3/V2≦0.75を満足するのがより好ましいことを確認できた。また、結露を防ぐには、風速比V2/V1を前述した有効範囲に設定することが、有効であることを確認できた。また、このようにすることで、冷房時には吹出口17での結露の発生を抑制でき、暖房時には良好な空調効率で床面近傍を暖めることができることを確認できた。
【0089】
なお、本発明の空調用吹出口ユニット10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0090】
例えば、吹出口17及びルーバ21,22は、四角形状に限られず、円形状であってもよいし、四角形状以外の多角形状であってもよい。また、接続部13(分流部13a)及び分流板31,32は、円形状に限られず、四角形状であってもよいし、四角形状以外の多角形状であってもよい。
【0091】
ルーバセット20は、第2ルーバ22を設けることなく、第1ルーバ21と仕切板23a,23bによって構成してもよい。また、第2ルーバ22を取り囲むように、第3ルーバを備えていてもよく、ルーバの数は必要に応じて変更が可能である。拡散部材30は、第2分流板32を設けることなく、第1分流板31とリブ33によって構成してもよい。また、第2分流板32を取り囲むように、第3分流板を備えていてもよく、分流板の数は必要に応じて変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 天井
2 第1試験室
3 第2試験室
4 壁
5 メインダクト
6 送風機
7 木枠
8a~8c 風速計
9 煙発生機
10 空調用吹出口ユニット
12 ダクト
13 接続部
13a 分流部
13b 取付穴
14 拡張部
14a 開口部
14b 壁
15 取付部
15a 位置決め凹部
15b 圧接部
15c スリット
15d 係止部
16 カバー
16a 外枠部
16b 壁部
16c 第1部分
16d 第2部分
16e 位置決め凸部
16f 係止爪
16g 端壁部
16h 係止枠
17 吹出口
17a 第1吹出部
17b 第2吹出部
17c 第3吹出部
20 ルーバセット
21 第1ルーバ
21a 傾斜板
22 第2ルーバ
22a 傾斜板
23a,23b 仕切板
24 リブ
25 係止爪部
30 拡散部材
31 第1分流板
32 第2分流板
33 リブ
33a 外端
α ダクトの壁の傾斜角度
β1 第1ルーバの傾斜角度
β2 第2ルーバの傾斜角度
γ1 第1分流板の傾斜角度
γ2 第2分流板の傾斜角度
Ca 調和空気
Ca1 第1調和空気
Ca2 第2調和空気
Ca3 第3調和空気
Af 気流
Af1 第1分流
Af2 第2分流
Af3 第3分流
θ1:第1調和空気の吹出角度
θ2:第2調和空気の吹出角度(第1吹出角度)
θ3:第3調和空気の吹出角度(第2吹出角度)
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5