(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】水処理カートリッジ、水処理器、水処理材及びキット
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20240520BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20240520BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240520BHJP
【FI】
C02F1/28 G
C02F1/28 D
C02F1/42 A
C02F1/44 B
(21)【出願番号】P 2020140996
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2019152050
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504346204
【氏名又は名称】三菱ケミカル・クリンスイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】竹田 はつ美
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-512776(JP,A)
【文献】特開2017-023909(JP,A)
【文献】特開2004-230335(JP,A)
【文献】特開2003-024723(JP,A)
【文献】特開2001-170622(JP,A)
【文献】特開2006-281216(JP,A)
【文献】特開2013-034984(JP,A)
【文献】登録実用新案第3106596(JP,U)
【文献】特開2004-000912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/28、42、44
B01D24/00-35/05、35/10-37/04、
61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の水処理材と、第2の水処理材とを備え、
前記第1の水処理材は原水中の陰イオン物質を低減する無機材料であり、
前記第2の水処理材は
活性炭であ
り、
前記第1の水処理材と、前記第2の水処理材とが混在している水処理層を備え、
下記式(1)
T÷(F÷V)≧0.2 …(1)
T:前記原水に含まれる陰イオン物質を低減する割合が、使用開始時は80質量%よりも大きく、前記割合が80質量%に到達するまでに使用開始後から処理した前記原水の積算流量(L)
F:加圧式の水処理器に用いる場合は製造者が表示する濾過流量、自重濾過型の水処理器に用いる場合はスタートアップ時の濾過流量(L/min)
V:前記水処理層中の前記第1の水処理材及び前記第2の水処理材の総体積(mL)
を満たす、水処理カートリッジ。
【請求項2】
前記第1の水処理材は、無機化合物を含む無機材料である、請求項1に記載の水処理カートリッジ。
【請求項3】
前記第1の水処理材は前記水処理層中に分散している、請求項
1に記載の水処理カートリッジ。
【請求項4】
前記水処理層における前記第1の水処理材及び前記第2の水処理材の総質量に対する前記第1の水処理材の含有量は、5質量%以上、50質量%以下である、請求項
1又は
3に記載の水処理カートリッジ。
【請求項5】
前記無機材料の粒度分布は、5μm以上、45μm以下である、請求項1及び2に記載の水処理カートリッジ。
【請求項6】
水中の固形物質を低減する分離膜をさらに備える、請求項1~
5のいずれか1項に記載の水処理カートリッジ。
【請求項7】
前記分離膜は中空糸膜である、請求項
6に記載の水処理カートリッジ。
【請求項8】
前記陰イオン物質は、ヒ素イオン、フッ素イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、及びクロムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1~
7のいずれか1項に記載の水処理カートリッジ。
【請求項9】
前記第1の水処理材及び前記第2の水処理材は、それぞれ異なる位置に格納されている、請求項1に記載の水処理カートリッジ。
【請求項10】
前記第1の水処理材及び前記第2の水処理材は、それぞれが層を形成している、請求項1に記載の水処理カートリッジ。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の水処理カートリッジを備える、水処理器。
【請求項12】
請求項1に記載の水処理カートリッジに用いられる水処理材。
【請求項13】
請求項1に記載の水処理カートリッジに用いられる水処理材を製造するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理カートリッジ、水処理器、水処理材及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
原水に含まれる陰イオン物質を低減するための材料として、一般的に陰イオン交換樹脂が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、及び活性炭を含む層が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、陰イオン交換樹脂を用いて処理水を生成する場合、陰イオン交換樹脂に由来する臭気が処理水から生じたり、陰イオン交換樹脂からアミンが溶出したりすることで、飲用用途として好ましくない水になる虞があるという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、陰イオン交換樹脂を用いなくとも、原水中の陰イオン物質を低減できる水処理カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る水処理カートリッジは、第1の水処理材と、第2の水処理材とを備え、前記第1の水処理材は原水中の陰イオン物質を低減する無機材料であり、前記第2の水処理材は前記無機材料とは異なる水処理材である。
【0008】
また、本発明の一態様に係る水処理材は、第1の水処理材及び第2の水処理材を含み、前記第1の水処理材は原水中の陰イオン物質を低減する無機材料であり、前記第2の水処理材は前記無機材料とは異なる水処理材である。
【0009】
また、本発明の一態様に係る第1の水処理材と第2の水処理材とを含む水処理材を製造するためのキットは、第1の水処理材及び第2の水処理材を備え、前記第1の水処理材は原水中の陰イオン物質を低減する無機材料であり、前記第2の水処理材は前記無機材料とは異なる水処理材である、
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、陰イオン交換樹脂を用いなくとも、原水中の陰イオン物質を低減できる水処理カートリッジを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1に係る水処理器の内部構造を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態2に係る水処理器の内部構造を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態3に係る水処理器の内部構造を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態4に係る水処理器の内部構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る水処理器について、
図1を参照して以下に説明する。
図1は、本発明の一態様に係る水処理器1の構成を示す模式図である。
図1に示すように、水処理器1は、自重濾過型の水処理器である。水処理器1は、水処理カートリッジ10、胴部40、原水タンク50、上蓋60、及び注ぎ蓋70を備えている。本明細書において「処理水」とは水処理カートリッジで処理された水をいう。水処理器1は、原水を水処理カートリッジ10で処理して得られる処理水を胴部40に貯留することができる水処理器である。
【0013】
胴部40は、原水タンク50を保持し、処理水を貯留するための槽である。胴部40は後述する注ぎ蓋70で覆われる注ぎ口が設けられている。使用者は貯留している処理水を注ぎ口からコップ等の容器に注ぐことができる。
【0014】
原水タンク50は、水処理カートリッジ10を保持し、原水を貯留するための槽である。原水タンク50は、原水貯留部50a、及びカートリッジ保持部50bを備えている。原水貯留部50aは、水処理カートリッジ10により処理する原水を貯留する場所である。カートリッジ保持部50bは、水処理カートリッジ10を保持する。水処理カートリッジ10は、カートリッジ保持部50bに着脱自在に備え付けられる。水処理器1は、原水貯留部50aに格納された原水が水処理カートリッジ10内を通過して胴部40に流入することで、処理水を貯留するようになっている。
【0015】
上蓋60は、原水タンク50を覆うための蓋である。例えば、原水タンク50から原水が漏れないようにするために、水処理カートリッジ10を保持した原水タンク50に原水を供給した後に、原水タンク50の上部の開口面を上蓋60によって蓋をすればよい。また、上蓋60は開閉可能な給水口を備えていてもよく、上蓋60で蓋をした状態の原水タンク50に給水口から原水を供給してもよい。
【0016】
注ぎ蓋70は、胴部40の注ぎ口を覆うための蓋である。注ぎ蓋70は、鉛直方向に静置されている状態では胴部40の注ぎ口を覆い、水処理器1が鉛直方向から傾けて処理水を注ぎ出すときに注ぎ口が開くように開閉可能であってよい。また、注ぎ蓋70は取り外し可能であってもよい。この場合、注ぎ蓋70を注ぎ口から取り外した後に処理水を注ぎ口から注ぎ出せばよい。また、上蓋60と注ぎ蓋70とは、一体形成されていてもよい。
【0017】
水処理カートリッジ10は、ケース11、水処理層14、及び分離膜15を備えている。
【0018】
ケース11は、濾材(水処理層14及び分離膜15)を格納するための筐体である。ケース11は、原水入口12及び処理水出口13を備えている。水は、原水入口12、水処理層14、分離膜15、処理水出口13の順に流れる。
【0019】
原水入口12は、ケース11内に原水を供給するための開口部である。原水入口12は、使用時において水処理層14よりも鉛直方向上側となる位置に配置されている。なお、本明細書において「使用時」とは、水処理カートリッジによって原水の濾過を行なう時を指す。原水入口12には原水中の固形物質を低減させるために、メッシュ等のフィルターが取り付けられていてもよい。フィルターの材料としては、例えば、金属材料、樹脂材料等を用いることができる。
【0020】
処理水出口13は、水処理カートリッジ10から処理水が吐出するための開口部である。
【0021】
水処理層14は、原水中の陰イオン物質及び不純物を低減する層である。水処理層14は、無機材料14a(第1の水処理材)と、活性炭14b(第2の水処理材)とが混在している。本明細書において「混在」とは、異なる物質同士が混ざり合っている状態を意図する。水処理層14が無機材料14aを含んでいることにより、原水中の陰イオン物質を低減することができる。このように本発明によれば、陰イオン交換樹脂を用いなくとも、原水中の陰イオン物質を低減できる。さらに、陰イオン物質の低減を、イオン交換樹脂を用いずに行なうことができるので、陰イオン交換樹脂に由来する臭気の発生及びアミンの溶出を防ぐことができる。また、水処理層14が活性炭14bを備えていることにより、原水中の不純物を低減することができる。したがって、無機材料14aと、活性炭14bとが混在していることにより、陰イオン物質及び不純物の濃度が原水よりも低い処理水を生成することができる。
【0022】
前述のように、本実施形態では水処理層14中において無機材料14aと活性炭14bとが混在していればよいが、水処理層14中に無機材料14aが分散していることがより好ましい。換言すれば、水処理層14中の活性炭14bの層の中に無機材料14aが分散しているともいえる。なお、無機材料14aが水処理層14中に分散している形態において、水処理層14中の無機材料14aの濃度にむらがあってもよい。濃度分布は限定されないが、むらは少なく、均一性が高いことがより好ましい。また、次の理由から、無機材料14aが水処理層14中に分散している形態がより好ましい。つまり、水の流れによって無機材料及び活性炭の粒子が移動して、その位置が水処理層中で偏る可能性がある。このとき、無機材料14aが水処理層14中に分散していないと、無機材料14aの濃度が、水処理層内における位置によって偏りが生じる可能性がある。このような場合、無機材料14aの濃度が低いところを原水が通過し易い状態(ショートパス)が発生する可能性がある。しかし、無機材料14aが水処理層14中に分散している形態であれば、このような状態になっても、無機材料14aと原水との接触効率をより向上させることができる。これにより、陰イオン物質の濃度が原水よりも低い処理水をより効率的に生成することができる。
【0023】
ここで、無機材料14aを水処理層14中に分散させる方法としては、例えば、下記(i)~(iii)の方法が挙げられる。
(i)無機材料14aと粉末状又は繊維状の活性炭14bとを共に成型する方法(例えば、湿式法、乾式法、バインダ樹脂を用いる方法、圧縮する方法等)。
(ii)造粒した無機材料14aと粒状の活性炭14bとを混合する方法。
(iii)粒状の活性炭14bに無機材料14aを担持させる方法。
【0024】
本発明の水処理カートリッジの一態様において、第1の水処理材は原水中の陰イオン物質を低減する無機材料であり、第2の水処理材は前記無機材料とは異なる水処理材である。本発明の一態様に係る水処理カートリッジは、第1の水処理材と第2の水処理材とを備えていればよく、ここに記載された形態に限定されない。例えば、第1の水処理材及び第2の水処理材は、それぞれが互いに異なる場所に充填されていてもよく、水処理層中でそれぞれが層を形成していてもよい。
【0025】
中でも、水処理層中に第1の水処理材と第2の水処理材とが混在している形態及び水処理層中に第1の水処理材が分散している形態が、水処理材と原水との接触をより多くする観点からより好ましい。例えば、水処理材が粒状である場合、混在せずに層状としたときに、抵抗の少ない部分を水が抜けやすく、いわゆるショートパスが起こり易くなる。その結果、水処理材と原水との接触が少なくなり、そのため、不純物の除去性能が低下する場合がある。従って、ショートパスを防ぐためには水処理層14に厚みを持たせなければならず、より多くのろ材が必要となる。また、ろ材を成形することにより、通水抵抗の均一
化を図りショートパス抑止が可能となるが、カートリッジケースとの隙間が生じて、当該隙間に水が抜けてしまわないように、構造上の工夫が必要となる。しかし、水処理層14中に無機材料14aと活性炭14bとが混在している形態及び水処理層14中に無機材料14aが分散している形態であれば、ショートパスが起こり難いため、水処理層14に厚みを持たせる必要がない。従って、少ない量の水処理材で不純物の除去性能を確保することができる。また、水処理層14中に無機材料14aと活性炭14bとが混在している形態及び水処理層14中に無機材料14aが分散している形態として、さらに、無機材料14aと粉末状又は繊維状の活性炭14bとを共に成型したり、粒状の活性炭14bに無機材料14aを担持させたりすることにより、より均一性を持たせることが出来る。
【0026】
無機材料14aは、原水中の陰イオン物質を低減するものであれば特に限定されない。無機材料14aは、原水中の陰イオン物質を低減する無機化合物を含んでいてもよい。陰イオン物質は、例えば、ヒ素イオン、フッ素イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、及びクロムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つである。本発明の第1の水処理材は原水中の陰イオン物質を低減する無機材料であればよく、ここに記載された例に限定されない。
【0027】
無機材料14aに含まれる無機化合物としては、例えば、チタン及び鉄等の金属系化合物、カルサイト等の鉱物系化合物、セラミック系化合物、珪酸系化合物、ゼオライト系化合物等が挙げられる。
【0028】
また、無機材料14aは、無機化合物のみでもよく、他の物質を含んでいてもよい。他の物質としては、例えば、無機化合物粒子同士を結合するためのバインダ樹脂等が挙げられる。バインダ樹脂によって、無機材料を所望の形状に維持することができる。バインダ樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0029】
水処理層14における無機材料14a及び活性炭14bの総質量に対する無機材料14aの含有量は、吸着性能の観点から、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、活性炭等の第2の水処理材の機能を十分に発揮する観点から、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。なお、当該含有量の好ましい値は、本発明において水処理層が第2の水処理材として活性炭以外の水処理材を含むとき、第1の水処理材及び第2の水処理材の総質量に対する値である。
【0030】
無機材料の形状は特に限定されず、例えば、粒状が挙げられる。粒状の場合、その粒径は特に限定されず、好ましくは、粒径5μm以上、45μm以下である。このような粒径であることによって、無機材料と原水との接触効率が高まり、陰イオン物質の低減効率がより高まる。また、無機材料の総重量に対する粒径5μm以上、45μm以下の無機材料の合計重量の割合は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。前記割合が下限値以上であれば、陰イオンを交換し易くなる。前記割合の上限値は100質量%である。
【0031】
無機材料の粒径は、篩分け法、顕微鏡法、光散乱法等、の方法により求められる。本願実施形態の粒径範囲において、測定方法として顕微鏡法が好適である。
【0032】
水処理層14中に、無機材料14aが、活性炭等の粒状の第2の水処理材と混在する場合、無機材料14aとして、当該粒状の第2の水処理材の粒径と同程度の粒径に造粒した無機材料を用いてもよい。造粒した無機材料及び粒状の第2の水処理材の粒径は粒径70μm以上であることが好ましい。また、500μm以下であることが好ましい。この場合
、造粒した無機材料の総重量に対する粒径70μm以上、2,000μm以下の造粒した無機材料の合計重量の割合は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。前記割合が下限値以上であれば、造粒した無機材料を水処理層14中に分散し易くすることができる。前記割合の上限値は100質量%である。
【0033】
造粒した無機材料の粒度分布は、比重を考慮した上で、無機材料と混合する他の材量とが均一に混合されやすい粒度分布に適宜調整すればよい。造粒した無機材料の粒径は、篩分け法、顕微鏡法、光散乱法等、の方法により求められる。本願実施形態の粒径範囲において、測定方法として顕微鏡法が好適である。
【0034】
活性炭14bは、本発明における第2の水処理材の一態様である。活性炭14bは、原水中の不純物を低減する水処理材である。活性炭14bは、主に炭素から構成される多孔質の物質であり、その微細な穴を通過する原水中の不純物を穴内に吸着させることにより、原水中から当該不純物を取り除く。よって、活性炭14bの穴を通過する原水中の不純物を低減できる。
【0035】
活性炭としては、粒状、粉末状、繊維状、ハニカム状、円柱状等、種々の形状の活性炭を使用することができる。使用する活性炭の原材料は特に限定されず、竹や木材、合成樹脂等を炭化したものであってもよい。
【0036】
粒状の活性炭を用いる場合、粒状の活性炭の粒径は、75μm以上、2,000μm以下であることが好ましい。粒状の活性炭の総重量に対する粒径75μm以上、2,000μm以下の粒状の活性炭の合計重量の割合は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。このような割合であれば、粒状の活性炭を水処理層14中に分散し易くすることができる。前記割合の上限値は100質量%である。
【0037】
粒状の活性炭の粒径は、JISK1474に準拠した方法で求められる。粒状の活性炭の粒度分布は、低減する不純物に応じて、適宜調整すればよい。
【0038】
本実施形態では、第2の水処理材として、活性炭を採用する形態について説明するが、本発明はこのような形態に限定されない。当該第2の水処理材は、原水中の不純物を低減する水処理材として利用可能なものであればよい。第2の水処理材は、例えば、イオン交換樹脂・繊維等であってもよい。ここで、不純物としては、例えば、残留塩素、カルキ臭、カビ臭、又はトリハロメタン等が挙げられる。原水中のこれらの不純物を低減させることによって飲用により適した処理水を得ることができる。また、以上のように本実施形態では水処理層は粒状の水処理材が充填された層であるといえる。一方、後述する分離膜は、膜状の濾材である。つまり、本発明の一態様における水処理層は粒状の水処理材の層であり、分離膜は膜状の水処理材の層であるといえる。尚、水処理層14は、粒状の水処理材の層に限定されない。例えば、無機材料14aと粉末状又は繊維状の活性炭14bとをバインダ樹脂等により共に成型した成型体の層であってもよく、粒状の活性炭14bに無機材料14aを担持させたものの層であってもよい。
【0039】
分離膜15は、水(原水又は水処理層14を通過した水)中の固形物質、例えば、鉛コロイド等の金属コロイド等を低減する。本実施形態では、使用時において、分離膜15は、使用時において、水処理層14よりも鉛直方向下側となる位置に配置されている。しかしながら、本発明はこのような形態に限定されず、分離膜15は、使用時において、水処理層14よりも鉛直方向上側となる位置に配置されていてもよい。
【0040】
分離膜15が、使用時において、水処理層14よりも鉛直方向上側となる位置に配置されている場合、原水中の固形物質により水処理層の性能が低下することを防止することができる。分離膜15が、使用時において、水処理層14よりも鉛直方向下側となる位置に配置されている場合、水処理層14の微粉及び雑菌が処理水に含まれてしまうことを防止することができる。
【0041】
分離膜としては、例えば、中空糸膜、平膜等が挙げられ、中空糸膜であることが好ましい。分離膜が中空糸膜であることにより、コンパクトで広い膜面積を確保することができる。そのため、目詰まりし難い。そして、十分な濾過流量を確保することができる。また、水処理カートリッジ10の水処理能力が劣化して、所定の水処理能力を発揮できなくなるまでの期間を長くすることができる。
【0042】
分離膜としては、種々の多孔質の分離膜が使用できる。例えば、セルロース系、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)系、ポリビニルアルコール系、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエーテル系、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)系、ポリスルフォン系、ポリアクリロニトリル系、ポリ四弗化エチレン系、ポリビニリデンフロライド(PVDF)系、ポリカーボネイト系、ポリエステル系、ポリアミド系、芳香族ポリアミド系、等の各種材料からなるものが使用できる。中でも、分離膜の取扱性や加工特性等を考慮すると、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系の分離膜が好ましい。中空糸膜としては、上述した材料からなる管状の中空糸膜が使用できる。
【0043】
中空糸膜の孔径の下限値は、濾過速度の観点から、0.01μm以上であることが好ましい。中空糸膜の孔径の上限値は、微粒子を捕捉することができる観点から、0.1μm以下であることが好ましい。
【0044】
中空糸膜の外径は、20μm以上、2,000μm以下であることが好ましい。中空糸膜の空孔率は、20体積%以上、90体積%以下であることが好ましい。中空糸膜の膜厚は、5μm以上、300μm以下であることが好ましい。また、中空糸膜は表面に親水基を有する、いわゆる親水化中空糸膜であることが好ましい。空気逃しのため一部疎水性中空糸膜が含まれる方がより望ましい。
【0045】
中空糸膜の総膜面積は、0.05m2以上、0.5m2以下であることが好ましい。中空糸膜の総膜面積が当該範囲であることにより、快適な流量を確保し且つ水処理カートリッジをコンパクト化することができる。
【0046】
保持材16(ポッティング材)は、分離膜15である中空糸膜を保持するための部材である。保持材16は、U字状に曲げられた中空糸膜の両端部を固定している。これにより、中空糸膜が柱状体を構成している。また、中空糸膜の両端部は開口している。水処理カートリッジ10が保持材16を備えていることにより、中空糸膜によって濾過された処理水のみを処理水出口13に流すことができる。
【0047】
保持材16は、例えば、熱硬化性樹脂の硬化により形成される。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0048】
水処理カートリッジ10は、下記式(1)
T÷(F÷V)≧0.2 …(1)
T:原水に含まれる陰イオン物質を低減する割合が、使用開始時は80質量%よりも大きく、前記割合が80質量%に到達するまでに使用開始後から処理した原水の積算流量(
L)
F:加圧式の水処理器に用いる場合は製造者が表示する濾過流量、自重濾過型の水処理器に用いる場合はスタートアップ時の濾過流量(L/min)
V:水処理層14中の無機材料14a及び活性炭14bの総体積(mL)
を満たすことが好ましい。
【0049】
水処理カートリッジ10が前記式(1)を満たすことにより、濾過能力と水処理層14中の無機材料14a及び活性炭14bの総体積Vとのバランスがよくなる。よって、処理水の用途に対して好適なサイズの水処理器となる。
【0050】
また、式(1)中、「F÷V」は、空間速度に該当する。空間速度は、単位時間あたりに原水が水処理層14中の無機材料14a及び活性炭14bに接触する時間の逆数であり、水が無機材料14a及び活性炭14bにどれだけ長く接触するかを示す指標である。同一の総体積Vで濾過流量Fが早くなる場合や、同一の濾過流量Fで総体積Vが小さくなる場合といったように空間速度が大きいと、一般的に濾過能力が低くなる。濾過能力が低くなるものの、総体積Vが小さくなることにより、水処理カートリッジ10の体積がコンパクトになる。空間速度が小さいと、濾過能力が高くなり、総体積Vが大きくなる。式(1)を満たすことにより、空間速度と積算流量とのバランスがよくなるともいえる。つまり、式(1)は、水処理カートリッジの処理効率を示す一指標である。また、T÷(F÷V)は上記の通り0.2以上が好ましく、1以上がより好ましく、2以上がさらに好ましい。また、T÷(F÷V)の上限値は特に限定されず、高ければ高いほど水処理カートリッジの性能は高くなるため、好ましい。
【0051】
積算流量Tについて、本発明の一態様に係る水処理カートリッジは、原水に含まれる陰イオン物質を低減する割合が、使用開始時は80質量%よりも大きければよい。例えば、当該割合が、使用開始時は100質量%であることが好ましい。この場合、原水に含まれる陰イオン物質を100質量%除去できる使用開始時から、徐々に無機材料14aの陰イオン物質を除去する能力が低下して、当該割合が80質量%になるまでの、水処理カートリッジ10が処理した原水の積算流量である。そのため、積算流量Tは、水処理カートリッジ10の寿命ともいえる。
【0052】
積算流量Tは、10L以上、50,000L以下であることが好ましい。水処理器が本実施形態のように自重濾過型の水処理器である場合、積算流量は、例えば、10L以上、500L以下である。水処理器が後述する実施形態2のように蛇口直結型の水処理器である場合、積算流量は、例えば、500L以上、3,000L以下である。水処理器が後述する実施形態3のようにビルトイン型の水処理器である場合、積算流量は、例えば、1,000L以上、50,000L以下である。
【0053】
加圧式の水処理器は、加圧されて流れる原水を濾過する水処理器である。具体的には、加圧式の水処理器は、給水栓等に接続して使用する水処理器であって、得られる処理水がタンク等に貯留されることなく連続的に処理水を供給する水処理器である。
【0054】
自重濾過型の水処理器は、原水の自重を利用して濾過する水処理器である。具体的には、自重濾過型の水処理器は、使用の都度給水する水処理器、又は供給された水を貯留して使用する水処理器である。
【0055】
本実施形態では、水処理器1は、自重濾過型の水処理器に該当する。そのため、本実施形態では、濾過流量Fは、スタートアップ時の濾過流量である。スタートアップ時とは、原水リザーバーの容量の原水を10回程度処理した後の初流の処理水である。
【0056】
スタートアップ時の濾過流量は、水処理カートリッジ10を使用するにあたって必要となる、製造者が作成した取り扱い説明書等に記載されている定められた準備(スタートアップ)が終了した後、使用を開始した時点又は使用を開始したごく初期の、単位時間あたりに濾過する水の量を表している。なお、スタートアップ時に、水処理カートリッジ10に原水を全く濾過していない時点ではなく、例えば10Lの原水を濾過した時点をスタートアップ時に設定してもよい。
【0057】
なお、加圧式の水処理器である形態における製造者が表示する濾過流量は、水処理カートリッジを製造する製造者によって設定される、当該水処理カートリッジに対して認定されている濾過流量である。製造者が表示する濾過流量は、通常、製造者のホームページ、水処理カートリッジ、又はそのパッケージ、取扱説明書等に表示されている。
【0058】
総体積Vは、本実施形態において、水処理層14中の無機材料14a及び活性炭14bの総体積である。水処理層14中に、第2の水処理材として活性炭14bとは異なる水処理材がさらに混在している場合、総体積Vには、当該水処理材の体積も含まれる。なお、総体積Vには分離膜15の体積は含まれない。総体積Vは、30mL以上、5,000mL以下であることが好ましい。水処理器が本実施形態のように自重濾過型の水処理器である場合、総体積Vは、例えば、30mL以上、500mL以下である。水処理器が後述する実施形態2のように蛇口直結型の水処理器である場合、総体積Vは、例えば、30mL以上、400mL以下である。水処理器が後述する実施形態3のようにビルトイン型の水処理器である場合、総体積Vは、例えば、200mL以上、5,000mL以下である。
【0059】
また、水処理カートリッジ10は、原水に含まれる陰イオン物質がNSF/ANSI規格の定める除去率が達成されていることが好ましい。例えば、8.0mg/Lのフッ素イオンが含まれる原水を水処理カートリッジ10に通した場合、処理水出口13から吐出した処理水のフッ素イオン濃度は、1.5mg/L以下であることが好ましい。30mg/Lの硝酸イオン及び亜硝酸イオンが含まれる原水を水処理カートリッジ10に通した場合、処理水出口13から吐出した処理水の硝酸イオン及び亜硝酸イオン濃度は、10mg/L以下であることが好ましい。0.05mg/Lの5価ヒ素イオンが含まれる原水を水処理カートリッジ10に通した場合、処理水出口13から吐出した処理水のヒ素イオン濃度は、0.010mg/L以下であることが好ましい。また、0.3mg/Lの5価ヒ素イオンが含まれる原水を水処理カートリッジ10に通した場合、処理水出口13から吐出した処理水のヒ素イオン濃度は、0.010mg/L以下であることが好ましい。0.3mg/Lの6価クロムイオンが含まれる原水を水処理カートリッジ10に通した場合、処理水出口13から吐出した処理水の6価クロムイオン濃度は、0.1mg/L以下であることが好ましい。
【0060】
本実施形態では水処理器が、自重濾過型のピッチャー型の水処理器である形態について説明したが、本発明における水処理器はこのような形態に限定されない。本発明における水処理器は、水処理カートリッジを用いるものであればよく、その態様は、例えば、家庭用の水処理器が挙げられる。家庭用の水処理器としては、例えば、自重濾過型の水処理器(例えば、ピッチャー型、携帯型)、蛇口の先端部に取り付けられる蛇口直結型の水処理器、ビルトイン型(アンダーシンク型)の水処理器、冷蔵庫に内蔵される冷蔵庫型の水処理器、スパウトイン型(水栓内蔵型)の水処理器等が挙げられる。
【0061】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る水処理カートリッジについて、
図2を参照して以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0062】
図2は、本実施形態に係る水処理器2の内部構造を示す模式図である。
図2に示すように、水処理器2は、蛇口直結型の水処理器である。水処理器2は、水処理カートリッジ10の代わりに水処理カートリッジ20を備え、取付冶具27、原水出口28、及び切替部(図示しない)をさらに備えている点で水処理器1と異なる。ケース21は、水処理層14に原水を供給するための原水入口(図示しない)及び処理水出口23を備えている。
【0063】
取付冶具27は、蛇口の吐水部に取り付けられる。これにより、蛇口から吐水された原水を水処理カートリッジ20に供給することができる。
【0064】
原水出口28は、原水が吐出するための開口部である。本実施形態において、原水出口28は、シャワー状の原水を吐出するが、シャワー状ではない原水を吐出する設計としてもよい。また、本実施形態において、処理水出口23は、シャワー状ではない処理水を吐出するが、シャワー状の処理水を吐出する設計としてもよい。
【0065】
原水出口28から原水が吐出する場合、水は、取付冶具27、原水出口28の順に流れる。処理水出口23から処理水が吐出する場合、水は、取付冶具27、原水入口、水処理層14、分離膜15、処理水出口23の順に流れる。
【0066】
切替部は、原水と処理水とを切り替える。具体的には、供給された原水の流路を切り替えて、原水出口28から原水が吐出するか、処理水出口23から処理水が吐出するように切り替える。また、吐水する水を、シャワー状ではない処理水、シャワー状の処理水、シャワー状ではない原水及びシャワー状の原水の中から選択できるような切替部を備えていてもよい。
【0067】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る水処理カートリッジについて、
図3を参照して以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0068】
図3は、本実施形態に係る水処理器3の内部構造を示す模式図である。
図3に示すように、水処理器3は、流し台の下の、収納キャビネット等のスペースに設置するビルトイン型(アンダーシンク型)の水処理器である。水処理器3は、それ自体が水処理カートリッジであるともいえる。例えば、濾過性能が低下したとき等には、水処理器3全体を別のものに取り替えればよい。
【0069】
水処理器3は、ケース11の代わりにケース31を備えている点で水処理カートリッジ10と異なる。ケース31は、原水入口32及び処理水出口33を備えている。原水入口32は、使用時において水処理層14よりも鉛直方向上側となる位置に、処理水出口33は、使用時において分離膜15よりも鉛直方向上側となる位置に配置されている。分離膜15は、水処理層14よりも内側に配置されている。
図3において矢印で示すように、水は、原水入口32、水処理層14、分離膜15、処理水出口33の順に流れる。
【0070】
原水入口32と、原水を供給するための原水供給用ホース(図示しない)とを原水用の連結部(図示しない)を介して連結することにより、原水が水処理器3に供給される。また、処理水出口33と、処理水出口から吐水した処理水を蛇口に供給するための処理水供給用ホース(図示しない)とを処理水用の連結部(図示しない)を介して連結することにより、処理水を蛇口に供給することができる。
【0071】
〔実施形態4〕
本発明の一態様に係る水処理カートリッジについて、
図4を参照して以下に説明する。
図4は、本発明の一態様に係る水処理カートリッジ402を備えた浄水器4の内部構造を示す模式図である。具体的には、
図4は浄水器4を長さ方向に平行な面で切断した断面図である。
図4に示すように、浄水器4は、胴部401と、水処理カートリッジ402と、原水タンク403と、上蓋412と、注ぎ蓋413と、を備えている。
【0072】
胴部401は、原水タンク403を保持し、浄水を貯留するための槽である。
【0073】
原水タンク403は、水処理カートリッジ402を保持し、原水を貯留するための槽である。原水タンク403は、水処理カートリッジ402により浄化する原水を貯留する原水貯留部403aと、水処理カートリッジ402を保持するカートリッジ保持部403bとを備えている。水処理カートリッジ402は、カートリッジ保持部403bに着脱自在に備え付けられる。浄水器4は、原水貯留部403aに格納された原水が水処理カートリッジ402内を通過して胴部401に流入することで、浄水を貯留するようになっている。
【0074】
上蓋412は、原水タンク403の開口部を覆うための蓋である。水処理カートリッジ402を保持した原水タンク403の開口部から原水を供給した後に、原水タンク403の開口部に上蓋412を嵌め込めばよい。また、上蓋412は開閉可能な給水部を備えていてもよく、上蓋412を嵌め込んだ原水タンク403に給水部から原水を供給してもよい。
【0075】
注ぎ蓋413は、胴部401の注ぎ口を覆うための蓋である。注ぎ蓋413は、鉛直方向に静置されている状態では胴部401の注ぎ口を覆い、浄水器4が鉛直方向から傾けて浄水を注ぎ出すときに注ぎ口が開くように開閉可能であってよい。また、注ぎ蓋413は取り外し可能であってもよい。この場合、注ぎ蓋413を注ぎ口から取り外した後に浄水を注ぎ口から注ぎ出せばよい。上蓋412と注ぎ蓋413とは、一体形成されていてもよい。
【0076】
水処理カートリッジ402は、ケース404を備えている。ケース404は、浄水濾材(分離膜408a及び水処理材409a)を格納するための筐体である。ケース404は、浄水器4のカートリッジ保持部403bに格納可能な形状である。ケース404は、原水導入口405と、浄水導出口406と、第1格納部414と、第1の水処理ユニット408と、第2格納部415と、第2の水処理ユニット409と、空気溜まり部410と、天板411とを備える。
【0077】
原水導入口405は、水処理カートリッジ402内に原水を供給するための開口部である。原水導入口405は、使用時において第1の水処理ユニット408よりも鉛直方向上側となる位置に配置される。原水導入口405には原水中の固形物質を低減させるために、メッシュ等のフィルターが取り付けられていてもよい。フィルターの材料としては、例えば、金属材料、樹脂材料等を用いることができる。
【0078】
浄水導出口406は、水処理カートリッジ402から浄水が導出するための開口部である。
【0079】
第1格納部(格納部)414は、分離膜408a及び保持材408bを格納する第1の水処理ユニット408を格納するための筐体である。第1格納部414には空気溜まり部410が設けられている。また、第1格納部414には、供給口407が設けられている。第2の水処理ユニット409を備えていない場合、供給口407は、第1の水処理ユニット408に原水を導入するための孔である。第2の水処理ユニット409を備えている場合、供給口407は、第1の水処理ユニット408に第2の水処理ユニット409を通
過した水を導入するための孔である。
【0080】
第2格納部415は、水処理材409aを格納する第2の水処理ユニット409を格納するための筐体である。
【0081】
(空気溜まり部)
空気溜まり部410は浄水濾材に入り込んだ空気が移動した後に留まる空間である。第1格納部414よりも内側で、空気溜まり部410は使用時において供給口407より鉛直方向上側に、空気を密封する。つまり、空気溜まり部410は第1格納部414よりも内側で、使用時において供給口407より鉛直方向上側となる位置に配置される。ケース404が空気溜まり部410を備えていることにより、浄水濾材に入り込んだ空気が空気溜まり部410に抜けることができる。そのため、空気溜まり部410が天板411によって覆われていても、十分な濾過流量を確保することができる。空気溜まり部410は、第1格納部414よりも内側で、供給口407の開口している部分のうち最も鉛直方向上側の位置より上側に、空気を密封するものであればよい。例えば、本実施形態のように供給口407が複数ある場合は、空気溜まり部410は、第1格納部414よりも内側で、使用時に、最も鉛直方向上側の供給口407より鉛直方向上側に空気を密封するものであればよい。なお、空気溜まり部410は、使用時において鉛直方向上側に空気を密封するものであり、鉛直方向下側、つまり第1の水処理ユニット408のある方向には密封とならず、空気の移動が可能になっている。
【0082】
空気溜まり部410は、天板411及び側壁に囲まれている領域(空間)である。天板411及び側壁は孔を有していない。そのため、空気は、使用時において第1の水処理ユニット408より鉛直方向上側においては閉じられた空間にある。
【0083】
天板411は、使用時において空気溜まり部410よりさらに鉛直方向上側となる位置に配置され、空気溜まり部410を囲む一部である。空気溜まり部410において、空気は閉じ込められている。つまり、天板411、及び、空気たまり部410の側壁は空気が漏れる孔を有していない。これにより、浄水濾材が漏れ出すことを抑制できる。天板411は、ケース404と一体形成されていることが好ましい。
【0084】
また、原水導入口405から原水を供給するときに、第2の水処理ユニット409と第1の水処理ユニット408との間に溜まっている空気は、空気溜まり部410に溜まる構造である。
【0085】
第1の水処理ユニット408と、空気溜まり部410とは一つの空間内で隣接して配置されていて、間を完全に遮る壁が無い。分離膜408aの位置を規定するための壁(例えば、仕切り、メッシュ等)はあってもよい。つまり、第1の水処理ユニット408と、空気溜まり部410との間に空気の通り道があればよい。
【0086】
空気溜まり部410の容積は、十分な濾過流量を確保することができるという効果をより高めることができる観点から、第1の水処理ユニット408の容積に対して、50体積%以上である。ここで、第1の水処理ユニット408の容積とは、分離膜408aの下端から上端までが存在する空間の容積である。
【0087】
本実施形態では水処理カートリッジが、カートリッジ内の空気を排出する構造を有さない形態について説明したが、本発明における水処理カートリッジはこのような形態に限定されない。例えば、空気溜まり部410を構成する天板411及び側壁に相当する壁材に空気を抜くための孔が設けられていてもよい。
【0088】
(第1の水処理ユニット)
第1の水処理ユニット408は、分離膜408aと保持材408bとを格納している水処理ユニットである。第1の水処理ユニット408は、分離膜408aと保持材408bとを備える。第1の水処理ユニット408は、使用時において空気溜まり部410より鉛直方向下側となる位置に配置される。
【0089】
分離膜408aは、原水(水処理材409aを備える場合は、水処理材409aを通過した水)を改質するためのものである。分離膜408aは、例えば、水中に混ざっている物質の少なくとも一部を除去する。なお、分離膜408aは、本発明の水処理カートリッジの第2の水処理材の一態様でもある。つまり、本実施形態に係る水処理カートリッジは、水処理材409a中に第1の水処理材の一態様及び第2の水処理材の一態様が含まれ、さらに、分離膜408aを第2の水処理材の一態様として備える。このように、本発明の水処理カートリッジの一態様では、第1の水処理材及び第2の水処理材を含む水処理材に併用して、当該水処理材とは別体の水処理材をさらに備えていてもよい。当該別体の水処理材は、無機材料であれば第1の水処理材の一態様であり、無機材料以外であれば第2の水処理材の一態様である。なお、第1の水処理材、第2の水処理材及び分離膜については実施形態1で説明した通りである。
【0090】
分離膜が中空糸膜である場合、中空糸膜の膜面積の下限値は、濾過速度の観点から、0.1m2以上であることが好ましい。また、中空糸膜の膜面積の上限値は、空気溜まり部410の体積を確保する観点、及び水処理カートリッジ402をコンパクトに設計することができる観点から、0.5m2未満であることが好ましい。中空糸膜については、実施形態1で説明した通りである。
【0091】
保持材408bは、分離膜408aである中空糸膜を保持するための部材である。保持材408bは、U字状に曲げられた中空糸膜の両端部を固定している。これにより、中空糸膜が柱状体を構成している。また、中空糸膜の両端部は開口している。第1の水処理ユニット408が保持材408bを備えていることにより、中空糸膜によって濾過された浄水のみを浄水導出口406に流すことができる。
【0092】
保持材(ポッティング材)408bは、例えば、熱硬化性樹脂の硬化により形成される。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0093】
(第2の水処理ユニット)
第2の水処理ユニット409は、本発明の水処理材の一態様であり、第1の水処理材及び第2の水処理材を含む。水処理材409aは、例えば、原水に混ざっている物質の少なくとも一部を除去する。第2の水処理ユニット409は、水処理材409aを格納している水処理ユニットである。第2の水処理ユニット409は、水処理材409aと原水通過部409bとを備える。第2の水処理ユニット409は第1格納部414よりも外周に配置される。水処理材409aを通過した水が分離膜408aに供給される構造である。これにより、原水が水処理カートリッジ402の内周から外周に向かって濾過された後に、浄水が外周から内周に向かって浄水導出口406に流れる構造に比べて、浄水が水処理材409aを通過してから浄水導出口406までの距離を短くすることができる。そのため、原水に含まれている塩素が除去されたことにより、雑菌が繁殖し易い状態の浄水の汚染を防止することができる。
【0094】
なお、第2の水処理ユニット409と第1の水処理ユニット408との位置関係は、原水が第2の水処理ユニット409を先に通過した後に、第2の水処理ユニット409を通過した水が第1の水処理ユニット408を通過する構成であれば特に限定されない。
【0095】
本実施形態において、水処理材409aは、バインダにより成型されている成型体であることが好ましい。バインダは、水処理材に含まれる、無機材料、活性炭等の水を処理する成分を所望の形状に維持するための成分である。バインダとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。成型体の形状は、効率的に濾過する観点から、円筒状であることが好ましい。成型体を用いることにより、水処理材に含まれる、無機材料、活性炭等の水を処理する成分を均一に分散することができるため、水の流路を確保し易くなる。そのため、特に粒径が小さい水処理材を使用する場合であっても、圧力損失を小さくすることができる。そして、自重濾過であっても十分な濾過流量を確保することができる。
【0096】
水処理材409aに含まれる第2の水処理材は、活性炭及びイオン交換体のうち少なくとも一つであることが好ましく、活性炭及び無機系のイオン交換体であることがより好ましい。
【0097】
活性炭については、実施形態1で説明した通りである。水処理材が活性炭を含むことにより、活性炭の穴を通過する原水中の物質を除去することができる。
【0098】
イオン交換体は、原水中からイオンを取り除く。水処理材がイオン交換体を含むことにより、原水中からイオン交換体に吸着されるイオンを除去することができる。イオン交換体は、無機系のイオン交換体であることが好ましい。
【0099】
イオン交換体は、陽イオン交換体(カチオン交換体)及び陰イオン交換体(アニオン交換体)のうち少なくとも一方を含む。イオン交換体が陽イオン交換体を含むことにより、原水中の鉛、銅、三価クロム等の重金属イオン等の陽イオンを好適に除去することができる。無機系のイオン交換体が陰イオン交換体を含むことにより、原水中のヒ素、六価クロム等の陰イオンを好適に除去することができる。
【0100】
イオン交換体の質量は、浄水性能のバランス(高性能化)の観点から、活性炭の質量に対して、2質量%以上、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0101】
水処理材409aの空間速度の下限値は、十分な濾過流量を確保する観点から、30hr-1以上であることが好ましい。水処理材409aの空間速度の上限値は、水処理材の性能を有効に発揮することができる観点から、30hr-1以上、600hr-1以下であることが好ましい。なお、空間速度は、単位時間当たりの濾過流量である。
【0102】
原水通過部409bは、原水が水処理材409aを通過する直前に通過する隙間である。第2の水処理ユニット409が原水通過部409bを備えることにより、原水は水処理材409aの外周から内周に向かって通過した後、第1の水処理ユニット408の外周及び/又は上部から内部に向かって通過する。原水が水処理材409aに接触する面積が大きいため、濾過速度を向上させることができる。
【0103】
浄水器4は、本発明の水処理器の一態様であり、水処理カートリッジ402を備える。浄水器4は、水処理カートリッジ402を備えるため、浄水濾材が漏れ出さず、かつ、十分な濾過流量を確保することができる。
【0104】
〔水処理材〕
本発明の一態様に係る水処理材は、第1の水処理材及び第2の水処理材を含む構成であればよい。第1の水処理材及び第2の水処理材については、実施形態1で説明した通りで
ある。
【0105】
〔キット〕
本発明の一態様に係るキットは、第1の水処理材と第2の水処理材とを含む水処理材を製造するためのキットである。本発明の一態様に係るキットは、必須の構成要素として、第1の水処理材及び第2の水処理材を備える。第1の水処理材及び第2の水処理材については、実施形態1で説明した通りである。用語「キット」は、本明細書中で使用される場合、キットを構成する各種成分の少なくとも1つが別容器中に含有されている形態であることが意図される。より具体的には、特定の材料を内包する容器を備えた包装が意図される。
【0106】
本発明の一態様に係るキットは、必要に応じて、さらに、キットの使用に必要となる薬材、器具、容器、使用説明書等を備えていてよい。これらの薬材、器具、容器、使用説明書等は、市場または通信回線などを通じて、別途使用者に入手させる形態を取ってもよい。使用説明書は、紙又はその他の媒体に書かれていても印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピューター読み取り可能ディスク又はテープ、CD-ROM等の電子媒体に付されていてもよい。
【0107】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0108】
〔付記事項〕
以上のように本発明に係る水処理カートリッジの一態様では、前記第1の水処理材は、無機化合物を含む無機材料であることが好ましい。
【0109】
また、本発明に係る水処理カートリッジの一態様では、前記第1の水処理材と、前記第2の水処理材とが混在している水処理層を備えることが好ましい。
【0110】
また、本発明に係る水処理カートリッジの一態様では、前記第1の水処理材は前記水処理層中に分散していることがより好ましい。
【0111】
また、本発明に係る水処理カートリッジの一態様では、前記水処理層における前記第1の水処理材及び前記第2の水処理材の総質量に対する前記第1の水処理材の含有量は、5質量%以上、50質量%以下であることがより好ましい。
【0112】
また、本発明に係る水処理カートリッジの一態様では、前記無機材料の粒度分布は、5μm以上、45μm以下であることがより好ましい。
【0113】
また、本発明に係る水処理カートリッジの一態様では、前記第2の水処理材は活性炭であることがより好ましい。
【0114】
また、本発明に係る水処理カートリッジの一態様では、前記第2の水処理材として水中の固形物質を低減する分離膜をさらに備えることがより好ましい。
【0115】
また、本発明に係る水処理カートリッジの一態様では、前記分離膜は中空糸膜であることがより好ましい。
【0116】
また、本発明に係る水処理カートリッジの一態様では、前記陰イオン物質は、ヒ素イオン、フッ素イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、及びクロムイオンからなる群より選ばれ
る少なくとも1つであることがより好ましい。
【0117】
また、本発明に係る水処理カートリッジの一態様では、前記第1の水処理材及び前記第2の水処理材は、それぞれ異なる位置に格納されていてもよい。
【0118】
また、本発明に係る水処理カートリッジの一態様では、前記第1の水処理材及び前記第2の水処理材は、それぞれが層を形成していてもよい。
【0119】
また、本発明に係る水処理器の一態様では、水処理器は、本発明の一態様に係る水処理カートリッジを備えることが好ましい。
【0120】
また、本発明に係る水処理カートリッジの一態様では、下記式(1)
T÷(F÷V)≧0.2 …(1)
T:前記原水に含まれる陰イオン物質を低減する割合が、使用開始時は80質量%よりも大きく、前記割合が80質量%に到達するまでに使用開始後から処理した前記原水の積算流量(L)
F:加圧式の水処理器に用いる場合は製造者が表示する濾過流量、自重濾過型の水処理器に用いる場合はスタートアップ時の濾過流量(L/min)
V:前記水処理層中の前記第1の水処理材及び前記第2の水処理材の総体積(mL)
を満たすことがより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、例えば、家庭用の水処理器等に利用することができる。
【符号の説明】
【0122】
1、2、3 水処理器
4 浄水器(水処理器)
10、20、402 水処理カートリッジ
11、21、31、404 ケース
12、32 原水入口
13、23、33 処理水出口
14 水処理層
14a 無機材料(第1の水処理材)
14b 活性炭(第2の水処理材)
15、408a 分離膜(第2の水処理材)
16、408b 保持材
402 浄水カートリッジ(水処理カートリッジ)
405 原水導入口
406 浄水導出口
408 第1の水処理ユニット
409 第2の水処理ユニット
409a 水処理材