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特許7490525配線・配管材保持部の構造、配線・配管材の配設具装置、及び配線・配管材の配設構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】配線・配管材保持部の構造、配線・配管材の配設具装置、及び配線・配管材の配設構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/12 20060101AFI20240520BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
F16L3/12 G
H02G3/04 062
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020173181
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064504
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 順也
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-250659(JP,A)
【文献】特開2014-152825(JP,A)
【文献】特開2009-180314(JP,A)
【文献】特開平08-210560(JP,A)
【文献】特開2001-012682(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0290952(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0224111(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00 - 3/26
F16L 57/00 - 57/06
H02G 3/00 - 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端間に配線・配管材を受入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片と、前記一対の保持片と前記配設空間内に配設された配線・配管材との間に、前記開口部の側が開口された状態で形成された一対の開口余剰空間部内の少なくとも一方に配置されて、前記配線・配管材の外面に圧接する圧接部を有する圧接体と、から成る配線・配管材保持部の構造であって、
前記圧接体は、前記配設空間内に配線・配管材が配設された状態で、前記開口余剰空間部内に配置可能であって、前記一対の保持片を外方に弾性変形させることで発生する弾性復元力により、自身の圧接部が前記配線・配管材の外面を圧接する圧接位置に設置可能であることを特徴とする配線・配管材保持部の構造。
【請求項2】
先端間に配線・配管材を受入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片と、前記一対の保持片と前記配設空間内に配設された配線・配管材との間に、前記開口部の側が開口された状態で形成された一対の開口余剰空間部内の少なくとも一方に配置されて、前記配線・配管材の外面に圧接する圧接部を有する圧接体と、から成る配線・配管材保持部の構造であって、
前記圧接体は、前記一対の保持片に対して別体に形成され、
前記開口余剰空間部内に配置された圧接体は、前記配線・配管材の外周方向に沿ってその半分以下の長さを有し、前記一対の保持片を外方に弾性変形させることで発生する弾性復元力により、自身の圧接部が前記配線・配管材の外面を圧接する圧接位置に設置可能であることを特徴とする配線・配管材保持部の構造。
【請求項3】
前記圧接体は、前記配設空間内に配設された配線・配管材の外面と、前記一対の保持片のうち一方の保持片との間の前記開口余剰空間部内に配置され、前記配設空間内に配線・配管材が配設された状態、及び配設されていない状態のいずれであっても、前記開口余剰空間部の圧接位置に設置可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線・配管材保持部の構造。
【請求項4】
前記圧接体は、前記一対の保持片に対して別体に形成され、前記配設空間内に配線・配管材を配設していない状態で、前記圧接位置に自重に抗する移動が防止された状態に設置可能であり、しかも当該設置状態で配線・配管材を前記配設空間内に配設可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の配線・配管材保持部の構造。
【請求項5】
前記圧接体は、前記開口部を横切るようにして、前記配設空間内に配設された配線・配管材の外周面に圧接状態で設置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線・配管材保持部の構造。
【請求項6】
自身の先端部の間に配線・配管材を受入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片を有する配線・配管材の配設具と、
前記配設空間内に配設された配線・配管材の外面と前記一対の保持片のうち片方の保持片との間に配置されて、当該片方の保持片が外方に弾性変形されることで発生する弾性復元力により、自身の圧接部が前記配線・配管材の外面を圧接する圧接体と、から成り、
前記圧接体は、前記一対の保持片に対して別体に形成されていることを特徴とする配線・配管材の配設具装置。
【請求項7】
自身の先端部の間に配線・配管材を受入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片を有する配線・配管材の配設具と、
前記配設空間内に配設された配線・配管材の外面と前記一対の保持片のうち片方の保持片との間に配置されて、当該片方の保持片が外方に弾性変形されることで発生する弾性復元力により、自身の圧接部が前記配線・配管材の外面を圧接する圧接体と、から成り、
前記配設空間内には、前記開口部と対向する側から、隣接する前記一対の保持片に向けて延びる一対の弾性付勢片が立設され、
前記一対の弾性付勢片は、それぞれ隣接する各保持片との間に前記圧接体の一端部が圧入される圧接体圧入空間を形成していることを特徴とする配線・配管材の配設具装置。
【請求項8】
自身の先端部の間に配線・配管材を受入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片を有する配線・配管材の配設具と、
前記配設空間内に配設された配線・配管材の外面と前記一対の保持片のうち片方の保持片との間に配置されて、当該片方の保持片が外方に弾性変形されることで発生する弾性復元力により、自身の圧接部が前記配線・配管材の外面を圧接する圧接体と、から成り、
前記配設空間内における前記開口部と対向する側に、当該配設空間内に配設された配線・配管材を反開口部側から支える支承部が立設され、
前記圧接体の一端部が前記支承部と前記片方の保持片との間に挿入され、他端側が前記片方の保持片の先端部内面に当接されて、自重に抗する移動が抑制された状態に設置可能であることを特徴とする配線・配管材の配設具装置。
【請求項9】
自身の先端部の間に配線・配管材を受入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片を有する配線・配管材の配設具と、
前記配設空間内に配設された配線・配管材の外面と前記一対の保持片のうち片方の保持片との間に配置されて、当該片方の保持片が外方に弾性変形されることで発生する弾性復元力により、自身の圧接部が前記配線・配管材の外面を圧接する圧接体と、から成り、
前記圧接体は、前記開口部を横切って架け渡り可能なように、両端間が前記一対の保持片の先端間よりも長く、しかも前記片方の保持片の基端から先端にかけて延びる内面の長さよりも短く形成され、前記配設空間内に配設される配線・配管材の周方向に直接に設置可能となっていることを特徴とする配線・配管材の配設具装置。
【請求項10】
先端間に配線・配管材を受け入れ可能な開口部が形成されていると共に自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片を有する配線・配管材の配設具と、
前記開口部を横切り、両端が前記一対の保持片の各先端側と、前記配設空間内に配設された配線・配管材の外面との間に設置可能とすべく、前記開口部を横切るように架け渡り、前記配設空間内に配設された配線・配管材を前記一対の保持片の基端側に向けて押圧するように当該配線・配管材の外面に圧接される圧接部を有する圧接体と、
から成り、
前記圧接体は、前記配線・配管材の外周方向に沿った長さの半分以下の長さを有していることを特徴とする配線・配管材の配設具装置。
【請求項11】
先端間に配線・配管材を受入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片の間に配線・配管材が配設され、
前記一対の保持片は、前記配線・配管材の軸方向に間隔をあけて複数形成されているか、又は前記軸方向に連続して延びて長尺状を成しており、
前記配設空間内に配設された配線・配管材の外面と前記一対の保持片のうち片方の保持片との間に設置され、当該片方の保持片が外方に弾性変形されることで発生する弾性復元力により前記配線・配管材の外面に圧接していて、前記配線・配管材の外周方向に沿った長さの半分以下の長さを有する圧接体が、前記配線・配管材の軸方向に間隔を設けて、当該配線・配管材を挟んで前記一対の保持片の一方側と他方側とに交互に設置されていることを特徴とする配線・配管材の配設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線・配管材を配設する配設具装置に対して標準呼び径よりも小径の配線・配管材を配設可能にするための配線・配管材保持部の構造、配線・配管材の配設具装置、及び配線・配管材の配設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配線・配管材を配設する配設具に対して標準呼び径よりも小径の配線・配管材を配設しようとすると、当該配設具を構成する基台の一対の保持片に対して非接触となって、このままでは配設不能である。そこで、このような場合に、小径の配線・配管材を配設可能にする技術として、特許文献1,2に開示のものが知られており、当該特許文献1,2に共通した考え方は、小径の配線・配管材を部分的に拡径させる拡径部材を当該配線・配管材に外嵌させ、この状態で、前記基台の一対の保持片の間の配設空間に前記配線・配管材を配設することで、当該拡径部材の部分で配線・配管材を部分的に保持するものである。
【0003】
このため、配線・配管材に対する拡径部材の先付けが不可欠となり、当該拡径部材の外嵌を忘れた場合には、前記基台の一対の保持片の間の配設空間に設置した配線・配管材を取り外し、当該配線・配管材に拡径部材を外嵌した後に、再設置する必要があり、面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-12682号公報
【文献】特開2009-180314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、配設具の基台の一対の保持片の間の配設空間に、標準呼び径よりも小径の配線・配管材を圧接体を用いて設置可能にすると共に、前記配設空間に配線・配管材を配設した後においても当該圧接体を設置可能にして作業性を高めることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、先端間に配線・配管材を受入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片と、前記一対の保持片と前記配設空間内に配設された配線・配管材との間に、前記開口部の側が開口された状態で形成された一対の開口余剰空間部内の少なくとも一方に配置されて、前記配線・配管材の外面に圧接する圧接部を有する圧接体と、から成る配線・配管材保持部の構造であって、
前記圧接体は、前記配設空間内に配線・配管材が配設された状態で、前記開口余剰空間部内に配置可能であって、前記一対の保持片を外方に弾性変形させることで発生する弾性復元力により、自身の圧接部が前記配線・配管材の外面を圧接する圧接位置に設置可能であることを特徴としている。
【0007】
請求項1で定義される「一対の保持片」は、例えば、後述の請求項6で定義される「配線・配管材の配設具」を構成する基台に一体に設けられていて、当該基台の一対の保持片の間の配設空間に、標準呼び径よりも外径の小さな配線・配管材(以下、「小径の配線・配管材」という)を設置して配設した状態では、前記一対の保持片と配線・配管材との間に、一対の保持片の先端間の開口部の側に開口した開口余剰空間部が形成される。なお、一対の保持片の間の配設空間に標準呼び径の配線・配管材を配設した状態では、各保持片の各先端部は、当該標準呼び径の配線・配管材に当接するか、又は弾性変形による復元力により弾接することで、一対の保持片と当該標準呼び径の配線・配管材との間には、配設空間の余剰空間部は形成されるが、当該余剰空間部における一対の保持片の開口部の側は、閉塞されて開口されてはいない。
【0008】
請求項1の発明では、例えば、一対の保持片の内側に、前記配設空間の長手方向に沿って所定間隔を設けて、複数の圧接体を斜方向に沿って対向するように(千鳥状に配置されるように)、交互に反対側に圧接位置を保持して設置した状態で、当該一対の保持片の間の配設空間に、小径の配線・配管材を設置して配設すると、一対の保持片における前記圧接体が設置された部分が外方に弾性変形されることで発生する弾性復元力により、各圧接体は、自身の圧接部が小径の配線・配管材の外面を圧接する。これにより、前記一対の保持片の配設空間に配設された小径の配線・配管材は、当該一対の保持片の内側に千鳥状に配置された各圧接体により圧接されることで、前記開口余剰空間部の開口部が残存した状態で、左右に揺動されることなく配設される。
【0009】
一方、基台の一対の保持片の間の配設空間に小径の配線・配管材を配設した後において、開口余剰空間部の開口部から前記圧接体を圧入して圧接位置に設置すると、当該一対の保持片における圧接体に対応する部分が外方に弾性変形されることで発生する弾性復元力により、圧接位置に設置された圧接体は、小径の配線・配管材の外面に圧接されることで、一対の保持片の間の配設空間に小径の配線・配管材が左右に揺動することなく固定状態で配設される。即ち、圧接体は、一対の保持片の間の配設空間に小径の配線・配管材を配設した後においても、設置可能であるので、一対の保持片の内側に圧接体を設置しないで、小径の配線・配管材を配設した後において、後付けで圧接体を設置できるので、作業順序の選択範囲が広くなる。なお、一対の保持片の内側に圧接位置を保持して設置される複数の圧接体の設置形態は、上記した千鳥状に限られるものではない。
【0010】
請求項2の発明は、先端間に配線・配管材を受入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片と、前記一対の保持片と前記配設空間内に配設された配線・配管材との間に、前記開口部の側が開口された状態で形成された一対の開口余剰空間部内の少なくとも一方に配置されて、前記配線・配管材の外面に圧接する圧接部を有する圧接体と、から成る配線・配管材保持部の構造であって、
前記圧接体は、前記一対の保持片に対して別体に形成され、
前記開口余剰空間部内に配置された圧接体は、前記配線・配管材の外周方向に沿ってその半分以下の長さを有し、前記一対の保持片を外方に弾性変形させることで発生する弾性復元力により、自身の圧接部が前記配線・配管材の外面を圧接する圧接位置に設置可能であることを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、「前記圧接体は、前記配設空間内に配線・配管材が配設された状態で、前記開口余剰空間部内に配置可能である」との「発明特定事項」を削除して、「前記開口余剰空間部内に配置された圧接体は、前記配線・配管材の外周方向に沿ってその半分以下の長さを有すること」及び「前記圧接体は、前記一対の保持片に対して別体に形成されていること」の「発明特定事項」を付加したものである。従って、請求項2の発明からは、請求項1の発明に対して、圧接体は、前記開口余剰空間部に圧接位置を確保して設置し易くなるという独自の作用効果はそのまま奏され、圧接体を後付けで設置可能であるとの作用効果が奏されなくなる点を除いて、請求項2の発明の作用効果は、上記した請求項1の発明の作用効果と同等である。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記圧接体は、前記配設空間内に配設された配線・配管材の外面と、前記一対の保持片のうち一方の保持片との間の前記開口余剰空間部内に設置され、前記配設空間内に配線・配管材が配設された状態、及び配設されていない状態のいずれであっても、前記開口余剰空間部の圧接位置に設置可能であることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明によれば、圧接体の配置形態は、前記一対の保持片のうち一方の保持片との間の前記開口余剰空間部内に設置されることで、小径の配線・配管材の軸方向に沿って同一位置に当該小径の配線・配管材を挟んで対向配置される形態が排除されているが、例えば、複数の圧接体を配線・配管材の軸方向に沿って所定間隔をおいて、当該配線・配管材を挟んで交互に配置することで、配線・配管材を横ずれすることなく配設できる。また、圧接体の設置は、小径の配線・配管材の設置の前後を問わずに設置可能であるため、作業順序の選択の範囲が広くなる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記圧接体は、前記一対の保持片に対して別体に形成され、前記配設空間内に配線・配管材を配設していない状態で、前記圧接位置に自重に抗する移動が防止された状態に設置可能であり、しかも当該設置状態で配線・配管材を前記配設空間内に配設可能であることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明によれば、小径の配線・配管材の配設前において圧接体を一対の保持片の内側に設置する場合、即ち、圧接体の「先付け」の場合において、圧接体は、圧接位置に対して自重に抗して移動が防止された状態で設置可能であり、当該設置状態で配線・配管材を前記配設空間内に配設可能であるために、圧接体を「先付け」して小径の配線・配管材を配設する作業を支障なく行える。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1又は2の発明において、前記圧接体は、前記開口部を横切るようにして、前記配設空間内に配設された配線・配管材の外周面に圧接状態で設置されることを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明は、圧接体の設置位置を特定したものであって、当該圧接体は、一対の保持片の内側のみならず、当該一対の保持片の開口部を塞ぐようにして、配設済の小径の配線・配管材の外周面に圧接状態で設置できるため、小径の配線・配管材は、その軸心が左右にずれるのを防止した状態で、しかも当該小径の配線・配管材を一対の保持片の基端側に圧接した状態で、前記配設空間に配設可能となる。
【0018】
請求項6の発明は、自身の先端部の間に配線・配管材を受入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片を有する配線・配管材の配設具と、
前記配設空間内に配設された配線・配管材の外面と前記一対の保持片のうち片方の保持片との間に配置されて、当該片方の保持片が外方に弾性変形されることで発生する弾性復元力により、自身の圧接部が前記配線・配管材の外面を圧接する圧接体と、から成り、
前記圧接体は、前記一対の保持片に対して別体に形成されていることを特徴とする配線・配管材の配設具装置である。
【0019】
請求項6の発明は、一対の保持片を有する配線・配管材の配設具と、圧接体との組み合わせから成る配線・配管材の配設具装置であり、一対の保持片と圧接体とが協働して、当該圧接体が小径の配線・配管材の外面を左右方向の一方側のみから圧接する作用は、請求項1及び同3において、圧接体の圧接作用において記述した通りである。
【0020】
請求項7の発明は、
自身の先端部の間に配線・配管材を受入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片を有する配線・配管材の配設具と、
前記配設空間内に配設された配線・配管材の外面と前記一対の保持片のうち片方の保持片との間に配置されて、当該片方の保持片が外方に弾性変形されることで発生する弾性復元力により、自身の圧接部が前記配線・配管材の外面を圧接する圧接体と、から成り、
前記配設空間内には、前記開口部と対向する側から、隣接する前記一対の保持片に向けて延びる一対の弾性付勢片が立設され、
前記一対の弾性付勢片は、それぞれ隣接する各保持片との間に前記圧接体の一端部が圧入される圧接体圧入空間を形成していることを特徴としている。
【0021】
請求項7の発明によれば、前記配設空間における前記開口部と対向する側に形成された一対の弾性付勢片は、それぞれ隣接する各保持片との間に前記圧接体の一端部が圧入される圧接体圧入空間を形成しているために、当該圧接体は、圧接位置を保持して仮置きし易くなる結果、当該圧接体を仮置きして小径の配線・配管材を配設する場合に、当該圧接体の圧接位置の姿勢が崩される恐れが少なくなって、小径の配線・配管材の配設作業を支障なく行える。
【0022】
請求項8の発明は、
自身の先端部の間に配線・配管材を受入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片を有する配線・配管材の配設具と、
前記配設空間内に配設された配線・配管材の外面と前記一対の保持片のうち片方の保持片との間に配置されて、当該片方の保持片が外方に弾性変形されることで発生する弾性復元力により、自身の圧接部が前記配線・配管材の外面を圧接する圧接体と、から成り、
前記配設空間内における前記開口部と対向する側に、当該配設空間内に配設された配線・配管材を反開口部側から支える支承部が立設され、
前記圧接体の一端部が前記支承部と前記片方の保持片との間に挿入され、他端側が前記片方の保持片の先端部内面に当接されて、自重に抗する移動が抑制された状態に設置可能であることを特徴としている。
【0023】
請求項8の発明は、請求項7の発明における「一対の弾性付勢片」を、配線・配管材を反開口部側から支える「支承部」に代替(置換)したものであって、 当該「支承部」は、弾性変形しないものを含む。圧接体は、その一端部が前記支承部と前記片方の保持片との間に挿入され、その他端側が前記片方の保持片の先端部内面に当接されているため、設置状態の圧接体は、移動が抑制されるため、仮置き状態の圧接体の圧接位置の姿勢が崩されにくくなる結果、小径の配線・配管材を一対の保持片の間の配設空間に設置する作業が容易となる。
【0024】
請求項9の発明は、
自身の先端部の間に配線・配管材を受入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片を有する配線・配管材の配設具と、
前記配設空間内に配設された配線・配管材の外面と前記一対の保持片のうち片方の保持片との間に配置されて、当該片方の保持片が外方に弾性変形されることで発生する弾性復元力により、自身の圧接部が前記配線・配管材の外面を圧接する圧接体と、から成り、
前記圧接体は、前記開口部を横切って架け渡り可能なように、両端間が前記一対の保持片の先端間よりも長く、しかも前記片方の保持片の基端から先端にかけて延びる内面の長さよりも短く形成され、前記配設空間内に配設される配線・配管材の周方向に直接に設置可能となっていることを特徴としている。
【0025】
請求項9の発明によれば、圧接体の設置位置は、一対の保持片の各内側と、一対の保持片の開口部との計3箇所であり、同一形状の圧接体を小径の配線・配管材の軸方向に沿った同一位置の前記3箇所に設置可能であるため、配設具に設けられた一対の保持片の間の配設空間に配設される小径の配線・配管材を部分的に強固に固定状態にすることが可能となる。
【0026】
請求項10の発明は、先端間に配線・配管材を受け入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片を有する配線・配管材の配設具と、
前記開口部を横切り、両端が前記一対の保持片の各先端側と、前記配設空間内に配設された配線・配管材の外面との間に設置可能とすべく、前記開口部を横切るように架け渡り、前記配設空間内に配設された配線・配管材を前記一対の保持片の基端側に向けて押圧するように当該配線・配管材の外面に圧接される圧接部を有する圧接体と、から成り、
前記圧接体は、前記配線・配管材の外周方向に沿った長さの半分以下の長さを有していることを特徴とする配線・配管材の配設具装置である。
【0027】
請求項10の発明は、一対の保持片を有する配線・配管材の配設具と、当該一対の保持片の開口部に設置される圧接体との組み合わせから成る装置であって、一対の保持片の開口部に、当該一対の保持片の間の配設空間に配設された小径の配線・配管材を当該一対の保持片の基端部に向けて押圧するように、圧接体が設置されるため、一対の保持片に対して小径の配線・配管材を固定状態にできるのに加えて、小径の配線・配管材の軸心が左右方向にずれるのを防止できる。また、前記圧接体は、前記配線・配管材の外周方向に沿った長さの半分以下の長さを有しているので、一対の保持片の先端部の間に当該圧接体を支障なく配置できる。
【0028】
請求項11の発明は、先端間に配線・配管材を受入れ可能な開口部が形成されていると共に、自身の間に配線・配管材の配設空間が形成された弾性変形可能な一対の保持片の間に配線・配管材が配設され、
前記一対の保持片は、前記配線・配管材の軸方向に間隔をあけて複数形成されているか、又は前記軸方向に連続して延びて長尺状を成しており、
前記配設空間内に配設された配線・配管材の外面と前記一対の保持片のうち片方の保持片との間に設置され、当該片方の保持片が外方に弾性変形されることで発生する弾性復元力により前記配線・配管材の外面に圧接していて、前記配線・配管材の外周方向に沿った長さの半分以下の長さを有する圧接体が、前記配線・配管材の軸方向に間隔を設けて、当該配線・配管材を挟んで前記一対の保持片の一方側と他方側とに交互に設置されていることを特徴とする配線・配管材の配設構造である。
【0029】
請求項11の発明によれば、一対の保持片の内側に設置される圧接体は、当該一対の保持片の間の配設空間に配設された小径の配線・配管材の軸方向に間隔を設けて「千鳥状」に配置されているため、前記小径の配線・配管材に対しては、その軸方向に沿って交互に逆方向の圧接力が作用するために、一対の保持片に対する小径の配線・配管材の固定状態が保持されたうえで、当該小径の配線・配管材を横ずれさせるように作用する各圧接力は、互いに相殺される関係にあるため、小径の配線・配管材の横ずれを効果的に防止できる。また、前記圧接体の長さは、前記配線・配管材の外周方向に沿った長さの半分以下であるので、配線・配管材の外面と、一対の保持片の一方との間に前記圧接体を確実に配置できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、配線・配管材の配設具を構成する基台に設けられた一対の保持片と、当該一対の保持片の間の配設空間に配設された配線・配管材との間に形成された開口余剰空間部に圧接体を設置することで当該一対の保持片を外方に弾性変形させ、これにより生ずる弾性復元力により、前記圧接体を前記配線・配管材の外面に圧接させるか、或いは前記一対の保持片の開口部に圧接体を設置して、配線・配管材を前記一対の保持片の基端側に押圧させることで、標準呼び径よりも小径の配線・配管材を前記一対の保持片の間に横ずれすることなく配設可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の配設具Eを構成する基台Vと蓋体Jの分離状態の斜視図である。
図2】同じく横断面図である。
図3】(a),(b)は、それぞれ基台Vの一対の保持片11の間の配設空間Kに標準呼び径(外径=D0)の配管材P0 及びこれよりも大径の配管材P1(外径=D1 )が配設保持された状態の横断面図である。
図4】(a),(b)は、それぞれ圧接体Aを異なる方向から見た斜視図である。
図5】(a)は、圧接体Aの平面図であり、(b),(c)は、(a)のX1 -X1 線及びX2 -X2 線の各断面図である。
図6】配設具Eの基台Vを構成する一対の保持片11の間の配設空間Kに小径の配管材P2 が設置された状態で、圧接体Aの配置可能な位置を示す図である。
図7】基台Vの一対の保持片11の各内側に、当該基台Vの長手方向に沿って所定間隔をおいて複数の圧接体Aを交互に設置した状態の斜視図である。
図8】(a)~(c)は、基台Vの一対の保持片11の一方の内側に圧接体Aを設置する順序を示す横断面図である。
図9】(a)~(c)は、基台Vの一対の保持片11の各内側に圧接体Aが交互に配置された状態で、一対の保持片11の間の配設空間Kに小径の配管材P2 を収容設置する順序を示す横断面図である。
図10】基台Vの一対の保持片11の間の配設空間Kに小径の配管材P2 が配設された状態の斜視図である。
図11】小径の配管材P2 が配設された基台Vに蓋体Jを覆蓋した状態の横断面図である。
図12】基台Vの一対の保持片11の内側に対する圧接体Aの異なる設置形態の横断面図である。
図13】基台Vと、当該基台Vの開口部9に設置することで、基台Vに配設された小径の配管材P2 を保持する複数の圧接体Aとの分離状態の斜視図である。
図14-A】(a),(b)は、それぞれ基台Vの配設空間Kに小径の配管材P2 を収容する途中、及び収容された状態の横断面図である。
図14-B】(c),(d)は、それぞれ配設空間Kに小径の配管材P2 に収容された基台Vの開口部9に圧接体Aを設置する途中、及び設置状態の横断面図である。
図15】一対の弾性付勢片17と複数の圧接体Aとで、基台Aの配設空間Kに小径の配管材P2 が設置された状態の斜視図である。
図16】圧接体Aを後付けで設置する状態を示す斜視図である。
図17】(a),(b)は、同じく圧接体Aの設置順序を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、最良の実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。図1及び図2において、長尺状の配設具Eは、建物の壁面Wに固定される基台Vと、当該基台Vとの組付けにより外径の異なる各配管材P0 ,P1 ,P2 の配設空間Kを形成する蓋体Jとから成る。基台Vと蓋体Jとは、いずれも樹脂の押出成形により形成されることで、自由端部を有する後述の基台Vの一対の保持片11、一対の弾性付勢片17並びに蓋体Jの一対の側壁22及び当該各側壁22に接続する天壁21の接続部は弾性変形可能になっている。なお、「配設具」は、当該発明の属する業界では「保護カバー」と称されることが多い。
【0033】
ここで、各配管材P0 ,P1 ,P2 に関しては、配管材P1 の外径D1 は、標準呼び径の配管材P0 の外径D0 よりも大きいと共に、配管材P2 の外径D2 は、標準呼び径の配管材P0 の外径D0 よりも小さい(D1 > D0 >D2 )。D0 =43mm、D1 =48mm、及びD2 =38mmである。なお、図2及び図3において、C0 ,C1 ,C2 は、それぞれ各配管材P0 ,P1 ,P2 の軸心を示す。
【0034】
基台Vは、横断面視において、各配管材P0 ,P1 ,P2 の軸心C0 ,C1 ,C2 を通って凹凸板状の基部1に対して垂直な対称線Lに対して左右対称な形状であって、前記基部1と、当該基部1の上面における幅方向の両端よりも僅かに内側の部分に、一対の保持片11が当該基部1に対して垂直となって上方に向けて立設されている。基部1は、幅方向の中央部の固定板部2の幅方向の両端部に、別の基台V又は端末カバーの一対の位置決め片(図示せず)を挿入する一対の位置決め溝3を形成すべく、上方に嵩上げされた嵩上げ板部4が前記固定板部2と平行に形成され、更に、当該嵩上げ板部4の幅方向の外方端部に、凹状の被係合部5の一部を形成するための傾斜板部6及び壁面Wに密着する密着板部7が連続して形成されている。基台Vは、固定板部2の部分において固定ビス(図示せず)を介して壁面Wに固定されるため、当該固定板部2の上面の幅方向の中央部には、前記固定ビスの配置位置を案内する案内溝8が全長に亘って形成されている。
【0035】
前記一対の保持片11は、前記基部1に対して直接に接続される各保持片基端部12の僅かに上方の部分が幅方向外側に傾斜して屈曲されて各傾斜屈曲部13がそれぞれ形成され、当該各傾斜屈曲部13の斜上端部には、前記基部1に対して垂直となって各本体保持片部14がそれぞれ形成され、当該各本体保持片部14の上端部には、内側に向けてわん曲されたわん曲保持片部15がそれぞれ形成されて、非変形時の各わん曲保持片部15の先端部の間隔Sは、一対の保持片11の間の配設空間Kに保持される複数の配管材P0 ,P1 ,P2 のうち最小の配管材P2 の外径D2 よりも狭く形成されている。一対のわん曲保持片部15の先端部の間の開口は、配管材P0 ,P1 ,P2 を受け入れるための開口部9となっている。このため、全ての配管材P0 ,P1 ,P2 は、対向する各わん曲保持片部15及びこれに接続される各本体保持片部14を幅方向外側に弾性変形させてわん曲させることで、内部の配設空間Kに収容される。一対の保持片11の基端部の外側に基部1と協働して凹状に形成される被係合部5は、基部1の幅方向両端部の傾斜板部6、密着板部7、保持片基端部12及び保持片11を構成する傾斜屈曲部13とで形成される。なお、各わん曲保持片部15における各本体保持片部14との接続部の外側には、当該各わん曲保持片部15の幅方向外側へのわん曲を容易にするための変形補助溝16が全長に亘って形成されている。
【0036】
基台Vの基部1の各嵩上げ板部4の幅方向内側の部分は、固定板部2の直上の部分まで僅かに延設され、当該延設部4aに、当該基台Vの配設空間Kに収容された配管材P1 ,P2 の両斜下部外面に当接して、当該配管材P1 ,P2 を斜下方の2箇所で補助的に支持する各弾性付勢片17が一体に形成されている。各弾性付勢片17は、配設空間Kに配管材P0 ,P1 ,P2 を挿入する際には、前記一対の保持片11の基端側に押圧されて変形されるため、当該変形時において、幅方向内側に変形されたり、或いは座屈形状に変形するのを確実に防止するために、前記配設空間K又は基台Vの内側(基台Vの幅方向の中心側)に向けて膨らんだ形状となっている。この形状により、弾性付勢片17は、配管材P0 ,P1 ,P2 の斜下部の部分で押圧された場合には、必ず外側に向けて変形される。ここで、弾性付勢片17が「内側に向けて膨らんでいる形状」とは、前記配管材P0 ,P1 ,P2 を下方から支持するために、一対の弾性付勢片17が必要な形状を特定しているのであって、消極的には、外側に向けて膨らんでいる形状、及び直線形状を排除することを意味する。しかし、この消極表現に関しても、一対の弾性付勢片17の必要形状を限定するものではない。
【0037】
また、弾性付勢片17の長さは、外径の異なる複数の配管材P0 ,P1 ,P2 のうち最大外径の配管材P1 の収容時には、当該弾性付勢片17の先端部(自由端部)が前記傾斜屈曲部13に当接して、当該弾性付勢片17の外側への移動(変形)が規制される寸法に定めてある。従って、基台Vの配設空間Kに臨んでいる当該傾斜屈曲部13の上面は、最大に変形された弾性付勢片17の移動規制部として機能し、既存形状を利用して、弾性付勢片17の移動を規制できる利点がある。なお、弾性付勢片17は、基台Vの全長に亘って形成されて、収容時には、配管材P0 ,P1 ,P2 を斜下方の2箇所で補助的に支持する機能を果すが、配設空間Kに対する配管材P1 ~P3 の挿入時には、挿入抵抗となるので、当該挿入抵抗を小さくする必要があると共に、基台Vの配設空間Kに対して配管材P0 ,P1 ,P2 を安定状態で収容するには、一対の保持片11の変形量は、皆無とするか、又は極力小さくして、一対の弾性付勢片17の変形量を大きくして、可能な限り配管材P0 ,P1 ,P2 を配設空間Kの内部に入り込ませて収容することが望ましいために、一対の弾性付勢片17は、相対的に一対の保持片11よりも弾性変形し易くする必要がある。このため、弾性付勢片17の基端部は他の部分よりも薄肉に形成されていると共に、当該弾性付勢片17の外側には、易変形溝18が形成されている。
【0038】
また、基台Vの一対の弾性付勢片17と、その外側に配置されている一対の保持片11の下端部(保持片基端部12及び傾斜屈曲部13の部分)とで形成された空間部は、後述の圧接体Aの長手方向の一端部を圧入(挿入)するための圧入空間部20となっている。
【0039】
一方、蓋体Jは、組付け状態で前記基台Vと対向する天壁21と、当該天壁21の幅方向両端部から基台Vの基部1の側に向けて垂化された平板状の一対の側壁22とから成り、各側壁22の自由端側の内面に一対の係合部23がそれぞれ突設されている。天壁21における基台Vの一対のわん曲保持片部15に対応する部分は、傾斜して形成されている。断面視で凸状の係合部23の外面形状は、断面視で凹状の被係合部5の底面形状に対応している。基台Vに対して蓋体Jを押し付けることで、一対の側壁22が幅方向外側に弾性変形された後に原形状に復元することで、各側壁22の各係合部23が、基台Vの各被係合部5にそれぞれ係合されて、基台Vに対して蓋体Jが一体に組み付けられる。
【0040】
図3(a),(b)は、それぞれ基台Vの一対の保持片11の間の配設空間Kに標準呼び径(外径=D0)の配管材P0 及びこれよりも大径の配管材P1(外径=D1 )が配設保持された状態の横断面図である。標準呼び径の配管材P0 は、その下端部の外面が、殆ど弾性変形されていない一対の弾性付勢片17に保持されると共に、その上端部の外面に一対の保持片11のわん曲保持片部15の先端部が殆ど弾性変形されない状態で当接することで、配設空間Kに配設保持されている。標準呼び径よりも大径の配管材P1 は、一対の弾性付勢片17が最大に弾性変形して、その先端部が傾斜屈曲部13の内面に弾接し、その中央部の外面に一対の本体保持片部14が当接すると共に、その上端部の外面に一対のわん曲保持片部15が当接することで、配設空間Kに配設保持されている。よって、いずれの配設保持状態においても、配管材P0 ,P1 の外面と一対の保持片11の内面との間に形成される配設空間Kの余剰空間部19’は、一対の保持片11の先端間の開口部9の側に開口せずに閉塞されている。
【0041】
しかし、一対の保持片11の間の配設空間Kに標準呼び径よりも小径の配管材P2 を配設すると、当該配管材P2 は、その下端部が一対の弾性付勢片17で保持されるのみで、一対の保持片11に対しては非接触であるため、前記余剰空間部19’は、一対の保持片11の開口部9の側に開口された状態となって、当該一対の保持片11には保持されない。
【0042】
そこで、本発明は、標準呼び径よりも小径の配管材P2 を一対の保持片11の間の配設空間Kに配設する場合に、図6に示されるように、一対の保持片11の開口部9の側に開口している配設空間Kの開口余剰空間部19、又は一対の保持片11の先端間の開口部9に圧接体Aを圧入することで、一対の保持片11と圧接体Aとの協働により前記配管材P2 を当該一対の保持片11により、横振れすることなく保持可能としている。
【0043】
前記圧接体Aは、樹脂の射出成形により形成されて、図6に示されるように、配設具Eの基台Vの一対の保持片11の間の配設空間Kに小径の配管材P2 が配設された状態で、当該圧接体Aの長手方向の両端部を、一対の保持片11の各わん曲保持片部15の先端部と当該小径の配管材P2 との間の隙間に圧入すると、当該圧接体Aの内側の圧接曲面33が前記小径の配管材P2 の外周面に密着状態で圧接するような形状となっている。なお、図6は、一対の保持片11の間の配設空間Kに小径の配管材P2 を配設した状態において、圧接体Aを設置可能な位置を示す図であるため、隣接する圧接体の一部が干渉している。また、推奨される配管施工では、同一断面位置には、単に一つの圧接体Aが設置されるのみであるが、同一断面位置に複数の圧接体Aを設置することは、理論上は可能である。
【0044】
即ち、圧接体Aの具体的形状は、図4図6に示されるように、正面視で小径の配管材P2 の外径D2 に対応してわん曲され、平面視で長方形状をなすような変則円弧厚板状をなしていて、正面視で円弧厚板状をなす圧接体本体31には、等脚台形の下底が円弧状を成した縦断面を有する変則等脚台形状であって、底面視で長方形状の凹部32が内周側に開口して形成されることで、圧接体本体31の底面視において、その周縁部には、一対の保持片11の間の配設空間Kに収容配設された小径の配管材P2 の外周面に圧接される円弧状をした一対の圧接曲面33が平行に形成されている。圧接体Aの長手方向の両端部は、前記一対の保持片11の内側に当該圧接体Aを仮置きしたり、或いは当該位置に配置された圧接体Aと一対の保持片11とで協働して小径の配管材P2 を保持する際に、その長手方向の一端部の底面側が、前記基台Vに設けられた一対の弾性付勢片17が外面に密着状態となり易いように、長手方向の外縁から所定長だけ平面部34が形成されて、当該平面部34は、前記圧接曲面33に逆方向の接続わん曲面35により連続して接続されている。圧接体Aの底面側の長手方向の両端部には、直線状の突起体36が短手方向に沿って連続して形成されている。
【0045】
また、圧接体Aの長手方向の両端部には、当該圧接体Aを前記圧入空間部20に対する圧入を可能とすべく、肉厚方向に沿った傾斜面状をした保持片密着面37がそれぞれ形成され、当該圧接体Aの上面における前記各保持片密着面37の内側には、開口余剰空間部19に対する当該圧接体Aの端部の圧入長さを規制する圧入規制突起38が短手方向に連続して形成されている。なお、前記突起体36は、傾斜面状の前記保持片密着面37の底面側の端部に形成されている。
【0046】
圧接体Aの長手方向及び短手方向の各長さは、それぞれM1 ,M2 であって、その長手方向の長さM1 は、当該圧接体Aの長手方向の両端部が、わん曲保持片部15と小径の配管材P2 の外周面との隙間にそれぞれ圧入可能なように、一対の保持片11の開口部9の長さSよりも長くなっていると共に、一対の保持片11の一方の内側に設置可能なように、一対の保持片11の基端から先端に延びる内面の長さよりも短くなっていて、小径の配管材P2 の周長を基準にすると、その半分以下となっている。一方、圧接体Aの短手方向の長さM2 は、一対の保持片11の一方の内側に圧接体Aを設置した状態で、当該圧接体Aと他方の保持片11との間に小径の配管材P2 を収容設置する際に、当該圧接体Aの短辺の全長が一対の保持片11の嵩上げ板部4の上面に当接して、当該圧接体Aが移動されずに、当初の設置姿勢が崩されずに維持できる長さであり、換言すると、当該圧接体Aの自重に抗して移動できないような長さである。
【0047】
次に、図7図10を参照して、基台Vの一対の保持片11の内側に複数の圧接体Aを設置した状態で、当該一対の保持片11の間の配設空間Kに小径の配管材P2 を収容して配設する配管施工について説明する。まず、図7及び図8に示されるように、基台Vの一対の保持片11の各内側に複数の圧接体Aを、配管予定の小径の配管材P2 の軸方向(基台Vの長手方向)に沿って所定間隔をおき、しかも当該小径の配管材P2 を挟んで「千鳥配置」となるように交互に設置する。即ち、図8(a)~(c)に示されるように、一対の保持片11の先端間の開口部9から配設空間Kに挿入された圧接体Aの圧接曲面33を内側にして、一方側の保持片11と弾性付勢片17との間に形成された圧入空間部20に、当該圧接体Aの長手方向の一端部を圧入すると、当該一端部に短手方向の全長に亘って形成された突起体36の全体が、易変形溝18に挿入されると共に、他端部に形成された圧入規制突起38が、一方の保持片11の本体保持片部14とわん曲保持片部15の接続部の内面に弾接し、しかも弾性付勢片17の先端部(自由端部)17aが圧接体Aの圧接曲面33に弾接することで、圧接体Aは、計3箇所で支持されることで、図8(c)で示されるように、起立姿勢を保持して圧接位置に設置される。即ち、上記の状態において、圧接体Aの長手方向の一端部が圧入空間部20に圧入され、弾性付勢片17が僅かに引き起こされるように弾性変形することで発生する弾性復元力により、当該圧接体Aの他端部は、保持片11の内面に弾接されて、一方の保持片11の内側に圧接体Aが起立姿勢で設置される。
【0048】
上記したように、基台Vの一対の保持片11の内側に複数の圧接体Aが「千鳥配置」された状態で、一対の保持片11の開口部9を通して当該一対の保持片11の間の配設空間Kに小径の配管材P2 を挿入すると、図9(a)~(c)に示されるように、各圧接体Aが設置された部分の横断面視において、一方の保持片11の内側に設置された圧接体Aは、圧入空間部20に圧入された側の端部を支点にして外側に傾動されると共に、当該傾動により前記一方の保持片11は、基端部を支点にして外側に傾動するように弾性変形されて、下端部が一対の弾性付勢片17で保持された小径の配管材P2 と、当該一方の保持片11との間に前記圧接体Aが挟持されて、当該一方の保持片11は、弾性変形された状態を維持している。ここで、小径の配管材P2 は、肉厚が5mm程度の樹脂管で形成されていて、保持片11の耐変形強度に比較して遥かに大きな曲げ剛性を有しているため、当該小径の配管材P2 が曲げられることはなく、保持片11が外側に弾性変形されるのである。
【0049】
このため、保持片11の弾性変形による弾性復元力F1 が圧接体Aを介して小径の配管材P2 の外面に作用する。複数の圧接体Aは、図7に示されるように「千鳥配置」されているため、一対の保持片11で小径の配管材P2 が保持された状態で、当該小径の配管材Pに対して交互に逆方向の弾性復元力F1 が作用して、当該小径の配管材P2 を挟んで斜め方向に隣接して当該小径の配管材P2 に対して水平に近い方向に作用する各弾性復元力F1 は、開口余剰空間部19が発生した状態で一対の弾性付勢片17により下端部が保持されている小径の配管材P2 を水平方向に近い方向から挟持するように作用することで、一対の保持片11の間において小径の配管材P2 が保持される。
【0050】
また、「千鳥配置」された各圧接体Aの部分において小径の配管材P2 に対して作用する各弾性復元力F1 のうち隣接する各圧接体Aの部分で作用する各弾性復元力F1 は、互いに相殺される関係にあるので、図9(c)及び図10に示されるように、軸方向に沿って異なる部分において交互に逆方向に作用する各弾性復元力F1 により、当該小径の配管材P2 は、横ずれされることなく、その軸心C2 は、基台Vの左右対称線L上に配置された状態を維持する。なお、図9(c)及び図10に示される状態で、図11に示されるように、基台Vに対して蓋体Jが覆蓋される。なお、基台Vの一対の保持片11の間に小径の配管材P2 を配設した状態で、当該一対の保持片11は、外方に弾性変形された状態を維持していて、蓋体Jの内側の断熱材24と干渉するので、小径の配管材P2 の配設の場合には、当該断熱材24は使用されない。
【0051】
また、基台Vの一対の保持片11の内側に対する圧接体Aの設置形態に関しては、上記したように、圧接体Aの長手方向の一体の突起体36が、基台Vの易変形溝18に圧入されることなく、嵩上げ板部4の上面に圧接(押圧)された形態で設置されることもある。この設置形態において、基台Vの配設空間Kに小径の配管材P2 が配設されて、外方に弾性変形された保持片11の弾性復元力により、圧接体Aが小径の配管材P2 の外面に圧接した状態では、保持片11の内側に設置された圧接体Aは、圧接曲面33と反対側の面に形成された一対の圧入規制突起38が保持片11の内面に圧接されると共に、内側の圧接曲面33に対して弾性付勢片17の先端部17aが弾接することで、当該圧接体Aは、上記した計3箇所で支持された状態で、保持片11の内側に設置される。
【0052】
次に、図13図15を参照にして、圧接体Aを用いた小径の配管材P2 の別の配設構造について説明する。まず、図14-A(a) ,(b)に示されるように、基台Vの一対の保持片11の先端間の開口部9を通して、その間の配設空間Kに小径の配管材P2 を収容配設する。この状態では、小径の配管材P2 は、その下端部が一対の弾性付勢片17に載置された状態で保持されており、当該一対の弾性付勢片17は、殆ど弾性変形されておらず、その上端部は、一対の保持片11の先端間の開口部9に臨んでいて、当該小径の配管材P2 の両側には、開口余剰空間部19がそれぞれ形成されている。
【0053】
そして、図14-B(c),(d)に示されるように、下端部が一対の弾性付勢片17で保持された小径の配管材P2 を下方に押圧させた状態で、一対の保持片11の先端間の開口部9から圧接体Aの一端部を一方の開口余剰空間部19に挿入することで、一旦、当該圧接体Aが基台Vの左右対称線Lに対して非対称に配置させ、その後に、他端部の圧入規制突起38が他方の保持片11の先端に当接するまで、小径の配管材P2 の外周面に沿って前記挿入方向と逆方向にスライドさせた後に、前記押圧を解除すると、図14-B(d)に示されるように、一対の保持片11の先端間の開口部9に圧接体Aが設置されて、一対の保持片11の配設空間Kに配設された小径の配管材P2 は、一対の弾性付勢片17の弾性復元力と、前記圧接体Aの圧接曲面33に対して小径の配管材P2 が圧接する圧接力の協働により、横ずれすることなく保持される。
【0054】
即ち、図14-B(d)に示される状態では、一対の弾性付勢片17の弾性変形により弾性復元力F2 により、当該小径の配管材P2 は、圧接体Aの圧接曲面33に圧接されて、当該圧接体Aに向けて圧接力F3 で圧接されることで、小径の配管材P2 は、その軸心C2 が基台Vの左右対称線L上に配置され、しかも横ずれが防止された状態で、一対の弾性付勢片17と一つの圧接体Aとにより保持される(図15参照)。
【0055】
基台Vの一対の保持片11の内側に圧接体Aを設置することで、当該一対の保持片11の間の配設空間Kに小径の配管材P2 を配設する施工(配管)順序として、上記施工例では、各保持片11の内側に複数の圧接体Aを「千鳥配置」して設置した後に、前記配設空間Kに小径の配管材P2 を配設している。即ち、圧接体Aを「先付け」して施工しているが、当該圧接体Aは、配設空間Kに小径の配管材P2 を配設した後に、当該小径の配管材P2 と保持片11との間に形成された開口余剰空間部19に「後付け」で圧接体Aを圧入することも可能である。圧接体Aを「後付け」する必要が生ずる場合として、当該圧接体Aを「先付け」することを忘れた場合が典型例として挙げられ、他の必要例としては、「千鳥配置」させる複数の圧接体Aを所定ピッチで設置して施工した後に、小径の配管材P2 の横ずれ防止が不十分のため、既設の圧接体Aの間に補強用の圧接体Aを「後付け」で設置する場合である。
【0056】
即ち、図16及び図17に示されるように、基台Vの一対の保持片11の間の配設空間Kに小径の配管材P2 を配設した後に、一方の保持片11を外側に弾性変形させることで、前記開口余剰空間部19の開口部に圧接体Aの長手方向の一端部を圧入し、そのままの状態で、当該圧接体Aの圧接曲面33を小径の配管材P2 の外周面に圧接した状態で、当該配管材P2 を当該一対の保持片11の基端部に向けてスライドさせると、図17(b)に示されるように、当該圧接体Aの他端部は、一方の弾性付勢片17と一方の保持片11との間に形成された圧入空間部20に圧入される。これにより、前記開口余剰空間部19に設置された圧接体Aは、当該一方の保持片11の弾性復元力により設置姿勢が維持される。「千鳥配置」される残りの複数の圧接体Aも同様にして、小径の配管材P2 の軸方向に沿った必要ピッチを確保して設置させる。
【0057】
なお、圧接体Aの「後付け」に関しては、上記したように、当該圧接体Aを「先付け」で施工した場合において、複数の圧接体Aの「千鳥配置」の方向に沿ったピッチが特定の部分で広い(大きい)ために、小径の配管材P2 の横ずれが生ずる恐れがある部分に、小径の配管材P2 の当該特定の部分に圧接体Aを後付けで設置することで、小径の配管材P2 の当該特定部分の横ずれを防止できる利点もある。
【0058】
また、上記各施工例の説明では、基台Vの一対の保持片11の内側に複数の圧接体Aを「先付け」又は「後付け」のいずれかで「千鳥配置」させる施工例と、一対の保持片11の開口部9に複数の圧接体Aを一定ピッチで設置する施工例について説明したが、両施工例を併用させて、一対の保持片11の内側、及び開口部9の双方に圧接体Aを設置することも可能である。また、上記したいずれの施工例でも、小径の配管材P2 の軸方向に沿った同一位置には、1つの圧接体Aのみが設置される例であるが、同一位置に複数(2個又は3個)の圧接体Aを設置することも可能である。
【0059】
また、実施例の基台Vに設けられた一対の保持片11は、その長手方向に連続して設けられているが、当該一対の保持片11は、当該長手方向に沿って断続して設けられた構成のものも使用可能であって、後者の構成では、当然に、一対の保持片11が設けられている部分の内側に圧接体Aが設置される。
【0060】
なお、実施例の配設具Eは、図3に示されるように、外径の異なる2種類の配管材P0 ,P1 に対応する例であるが、1種類の配管材に対応する配設具であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
A:圧接体
0,C1,C2 :配管材の軸心
0,D1,D2 :配管材の外径
E:配設具
1 ,F2 :弾性復元力
3 :圧接力
K:配設空間
L:基台の左右対称線
0 :標準呼び径の配管材
1 :標準呼び径よりも大径の配管材
2 :標準呼び径よりも小径の配管材
S:保持片の先端の間隔
9:一対の保持片の開口部
11:保持片
17:弾性付勢片
19:開口余剰空間部
20:圧入空間部
33:圧接曲面
38:圧入規制突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14-A】
図14-B】
図15
図16
図17