(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】点火コイルユニット
(51)【国際特許分類】
F02P 17/00 20060101AFI20240520BHJP
F02B 77/08 20060101ALI20240520BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240520BHJP
F02P 15/00 20060101ALI20240520BHJP
F02P 17/12 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
F02P17/00 A
F02B77/08 E
F02B77/08 H
F02B77/08 N
F02D45/00 360A
F02D45/00 362
F02D45/00 376
F02P15/00 303A
F02P17/00 N
(21)【出願番号】P 2020174757
(22)【出願日】2020-10-16
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(73)【特許権者】
【識別番号】000215187
【氏名又は名称】追浜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 拓男
(72)【発明者】
【氏名】星野 淳
(72)【発明者】
【氏名】露木 雄一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 耕輔
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-90277(JP,A)
【文献】特開2004-189227(JP,A)
【文献】特開2010-106700(JP,A)
【文献】特開平5-321740(JP,A)
【文献】特開平8-170989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
F02P 17/00
F02P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルと二次コイルを備える点火回路と、
発電コイルを備える発電部と、
前記発電コイルの誘起電圧によって生成された入力信号により、前記点火回路の点火タイミングを制御する制御部と
を備え、エンジンから取り外し可能な点火コイルユニットであって、
前記制御部
に負荷情報を入力するセンサ
を前記点火コイルユニットのユニット内部に備え、
前記制御部は、前記入力信号に基づく運転情報と前記負荷情報に対応した稼働時間情報を、前記運転情報と前記負荷情報と時間データとで構成されるマトリクスデータとして記憶するメモリを備え
、
前記メモリには、前記エンジンが搭載された作業機のユーザ情報が記憶されている
ことを特徴とする点火コイルユニット。
【請求項2】
前記運転情報は、エンジン回転速度である請求項1記載の点火コイルユニット。
【請求項3】
前記センサは温度センサであり、前記負荷情報は、ユニット内部の温度であることを特徴とする請求項1又は2記載の点火コイルユニット。
【請求項4】
前記マトリクスデータは、エンジン回転速度とユニット内部の温度からなるマトリクス区分毎に求められる前記稼働時間情報の積算時間であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の点火コイルユニット。
【請求項5】
前記入力信号は、前記発電コイルの誘起電圧を波形整形したパルス信号であり、
前記運転情報は、前記パルス信号のパルス周期を計算処理することで求められることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の点火コイルユニット。
【請求項6】
前記制御部は、さらに運転状況データを前記メモリに記憶させることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項記載の点火コイルユニット。
【請求項7】
前記運転状況データは、総運転時間、前記運転情報の最高値、前記負荷情報の最高値、エンジンを起動させようとしたリコイル回数、エンジンを起動させた回数、エンジン回転速度が設定値を超えた回数の少なくとも一つを含み、
前記制御部は、前記運転状況データを随時更新して前記メモリに記憶させることを特徴とする請求項6記載の点火コイルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火コイルユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
噴霧機、散布機、草刈り機などのハンドヘルド作業機の動力源として広く用いられているエンジンには、ユニット化された点火コイル(以下、点火コイルユニット)が採用されている。点火コイルユニットは、エンジンの回転に同期して誘起電圧を発生する発電コイルと、一次コイルと二次コイルを備える点火回路と、発電コイルに誘起された電圧に基づき一次コイルに所定の点火タイミングにて点火電圧を供給する点火制御回路を備えており、これらが樹脂モールドされるなどしてユニット化されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
また、エンジンや作業機における運転時間の積算値を求める積算時間計として、点火パルスを用いるものが提案されている(下記特許文献2参照)。これによると、エンジンの作業開始当初からの積算時間を計数及び記憶して表示することができ、エンジンや作業機の保守・点検などのメンテナンスを積算時間のデータを基に実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-75502号公報
【文献】特開平8-170989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
点火コイルユニットは、前述した積算時間計を設置することで、エンジンや作業機のメンテナンス用の積算時間データを得ることができる。しかしながら、運転時間の積算のみでは、エンジンや作業機がどのような運転状態で使用されていたかを詳細に把握することができず、メンテナンスを行う際の評価を緻密に行うができない。
【0006】
また、エンジンや作業機の個体がどのような運転状態で使用されていたかを把握することは、ユーザの運転特性(運転の癖)を理解することに繋がる。このようなユーザの運転特性は、個々のユーザ毎に異なるものであるが、これを個別に理解した上で、個々のユーザに対して適切なサービスを提供することが求められている。
【0007】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、エンジンや作業機のメンテナンスを適正な評価指標で緻密に行うこと、エンジンや作業機の個体の運転状態を把握し、ユーザの運転特性を理解した上で、個々のユーザに対して適正なサービスを提供できるようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
一次コイルと二次コイルを備える点火回路と、発電コイルを備える発電部と、前記発電コイルの誘起電圧によって生成された入力信号により、前記点火回路の点火タイミングを制御する制御部とを備え、エンジンから取り外し可能な点火コイルユニットであって、前記制御部に負荷情報を入力するセンサを前記点火コイルユニットのユニット内部に備え、前記制御部は、前記入力信号に基づく運転情報と前記負荷情報に対応した稼働時間情報を、前記運転情報と前記負荷情報と時間データとで構成されるマトリクスデータとして記憶するメモリを備え、前記メモリには、前記エンジンが搭載された作業機のユーザ情報が記憶されていることを特徴とする点火コイルユニット。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を有する本発明によると、エンジンや作業機のメンテナンスを適正な評価指標で緻密に行うことができ、エンジンや作業機の個体の運転状態を把握し、ユーザの運転特性を理解した上で、個々のユーザに対して適正なサービスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る点火コイルユニットの構成例を示した説明図。
【
図2】発電部の波形整形回路の動作を示した説明図((a)は発電コイルが発生する誘起電圧の波形、(b)が整形後の波形、(c)が波形周期を示している。)。
【
図3】メモリに記憶されるマトリクスデータの一例を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1において、点火コイルユニット1は、点火回路10、発電部20、制御部30、センサ2を備え、これらがユニット化されている。
【0013】
点火回路10は、一次コイル11と二次コイル12を備え、更に、コンデンサ13、ダイオード14,15、サイリスタ16などを備えている。一次コイル11にはコンデンサ13に蓄電された点火電圧が供給され、二次コイル12には、スパークプラグ3が接続される。コンデンサ13には、発電部20における発電コイル21の誘起電圧がダイオード14により整流されて蓄電され、制御部30によってサイリスタ16が導通状態に制御されると、コンデンサ13の放電が起こり、一次コイル11に電流が流れる。一次コイル11に電流が流れると、これに応じて二次コイル12に高電圧が誘起され、二次コイル12に接続されたスパークプラグ3に火花が起きる。
【0014】
発電部20は、前述した発電コイル21を備え、発電コイル21の誘起電圧でコンデンサ13を蓄電すると共に、発電コイル21の誘起電圧を波形整形する波形整形回路22を備えている。波形整形回路22は、
図2(a)で示すような、発電コイル21で発生する誘起電圧の波形を整流し、
図2(b)に示すような、2つの波形にしている。波形整形回路22にて整形された波形は、
図2(c)に示すように、周期Tのパルス信号として扱うことができ、これが制御部30への入力信号になる。
【0015】
制御部30は、波形整形回路22からの入力信号(発電コイル21の誘起電圧によって生成された入力信号)により、サイリスタ16が通電状態になるタイミング(点火回路10の点火タイミング)を制御する。このタイミング制御のために、制御部30は、速度計算処理部31と点火タイミング計算部32を備えている。
【0016】
速度計算処理部31は、波形整形回路2からの入力信号に基づいて、運転情報であるエンジン回転速度(回転数)を計算する。入力信号は、前述したように周期Tのパルス信号として扱えるので、この周期Tの逆数(1/T)を計算することで、エンジン回転速度を求めることができる。
【0017】
点火タイミング計算部32は、速度計算処理部31で求めたエンジン回転速度に応じて点火タイミングを計算して出力する。点火タイミングは、エンジン回転の一回転毎に計算され、所定のタイミングでサイリスタ16を通電状態にする信号を出力する。
【0018】
点火コイルユニット1が備えるセンサ2は、負荷情報を検出して制御部30に入力する。負荷情報は、点火コイルユニット1が装着されているエンジン或いはそのエンジンを備える作業機が、どのような負荷状態で運転しているかが分かる情報であり、例えば、温度情報、振動情報、音情報などである。センサ2は、温度情報を検出する場合は温度センサ、振動情報を検出する場合は振動センサ、音情報を検出する場合は音センサが用いられる。以下、センサ2として温度センサを用い、負荷情報としてユニット内部の温度を検出する例を説明するが、実施形態としてはこれに限定されない。
【0019】
制御部30は、センサ2の検出信号から温度を計測する温度計測処理部33を備え、速度計算処理部31から出力される運転情報であるエンジン回転速度と、温度計測処理部33から出力される負荷情報であるユニット内部の温度情報とを、制御部30が備えるタイムスタンプ機能などによって時系列情報として記憶するメモリ34を備えている。また、制御部30は、前述した運転情報であるエンジン回転速度と負荷情報であるユニット内部の温度に対応した稼働時間情報をメモリ34に記憶させるためのタイマー35を備えている。
【0020】
制御部30は、運転情報であるエンジン回転速度(以下、単に速度)と負荷情報であるユニット内部の温度(以下、単に温度)に対応した稼働時間情報を、運転情報と負荷情報と時間データとで構成されるマトリクスデータとしてメモリ34に記憶させるためのマトリクス判定部36を備えている。
【0021】
図3は、マトリクス判定部36によって生成されるマトリクスデータの構成例を示している。ここでは、マトリクスデータを構成するマトリクス区分の2軸を、速度(r/min)と温度(℃)としており、例えば、速度をA1(0~3000未満),A2(3000~8000未満),A3(8000~12000未満),A4(12000~15000未満),A5(15000以上)に区分けし、温度をB1(-99~0未満),B2(0~30未満),B3(30~50未満),B4(50~85未満),B5(85以上)に区分けしている。
【0022】
そして、マトリクス判定部36は、エンジン運転中の速度と温度が、マトリクス区分(An,Bn){(A1,B1),(A1,B2),…,(A1,B5),(A2,B1),…,(A2,B5),…,(A5,B5)}の25区分の何れに該当するかを判定し、該当する区分の稼働時間をタイマー35で計測することによって各区分での稼働時間の積算時間を求め、これを前述したマトリクスデータとしてメモリ34に記憶させる。
【0023】
また、制御部30は、さらに運転状況データをメモリ34に記憶させる。ここでの運転状況データは、作業機の総運転時間、エンジン回転速度などの運転情報の最高値、ユニット内部の温度などの負荷情報の最高値、エンジンを起動させようとしたリコイル回数、エンジンを起動させた回数(起動回数)、エンジン回転速度が設定値を超えた回数などであり、これらの少なくとも一つを含んでいる。制御部30は、これらの運転状況データを随時更新してメモリ34に記憶させる。
【0024】
前述した制御部30の動作を、
図4の動作フローによって更に具体的に説明する。先ず、発電部20の波形整形部22にて生成された入力信号(パルス信号)の波形入力がなされると(ステップS01)、制御部30の速度計算処理部31にて、入力信号の周期T(前回入力との時間差)によってエンジン回転速度の計算処理がなされ(ステップS02)、今回求めた速度が設定値を超えているか否かの判断を行い(ステップS02A)、設定値を超えている場合(ステップS02A;YES)には、その回数をカウントアップする(ステップS02B)。
【0025】
そして、今回求めた速度と前回求めた最高速度の比較により、最高速度の更新を行うか否かを判断し(ステップS03)、更新を行う場合(ステップS03;YES)には、今回求めた速度を最高速度として、メモリ34に保存する(ステップS04)。ステップS03の比較判断は、初回の波形入力では、今回求めた速度をそのまま最高速度として保存する。
【0026】
最高速度の更新を行わない場合には(ステップS03;NO)或いはメモリ34への最高速度の保存後には、今回求めた速度によって、点火タイミング計算部32による点火タイミングの計算が行われる(ステップS05)。
【0027】
また、前述した入力信号に応じて、制御部30は、温度計測処理部33がセンサ2から検出信号を取得して温度計測を行う(ステップS06)。そして、今回求めた温度と前回求めた最高温度の比較により、最高温度の更新を行うか否かを判断し(ステップS07)、更新を行う場合には(ステップS07;YES)、今回求めた温度を最高温度として、メモリ34に保存する(ステップS09)。
【0028】
最高温度の更新を行わない場合には(ステップS07;NO)、今回求めた温度と前回求めた最低温度の比較により、最低温度の更新を行うか否かを判断し(ステップS08)、更新を行う場合には(ステップS08;YES)、今回求めた温度を最低温度として、メモリ34に保存する(ステップS10)。ここでのステップS07とステップS08の比較判断も、初回入力の場合は、今回求めた温度をそのまま最高温度と最低温度としてメモリ34に保存する。
【0029】
最高温度と最低温度の更新判定がなされた後は、今回求めた速度と温度に基づいて、マトリクス判定部36によるマトリクス判定が行われる(ステップS11)。
【0030】
マトリクス判定では、今回求めた速度と温度が、予め設定されているマトリクス区分(An,Bn)の何れに該当するかを判定し、入力信号の周期Tの時間をカウントしたタイマー値をタイマー35から取得し(ステップS12)、該当するマトリクス区分毎に、取得したタイマー値の積算処理を行う(ステップS14)。その後は、ステップS05で求めた点火タイミングに応じて、出力信号を点火回路10に出力し、点火回路10のサイリスタ16を導通状態にすることで、入力信号毎の点火を実行する(ステップS14)。
【0031】
図4のフローでは示していないが、制御部30は、入力信号の継続性などを判別することで、運転状況データとしてのリコイル回数や起動回数を求め、これらを適宜メモリ34に保存する。ここでの起動回数は、エンジンの回転速度が設定値以上で設定回数エンジンが回転し続けたときに起動と判断してカウントアップし、制御部30の電源投入後エンジンが起動する前の入力信号の継続からリコイルを判断して、リコイル回数をカウントアップする。
【0032】
また、制御部30は、マトリクスデータとして記憶されたマトリクス区分毎の積算時間を総和することで、運転状況データとしての総運転時間を求める。
【0033】
制御部30は、
図4のフローに更に処理を加えることで、入力信号毎に求められる速度と温度のログデータをメモリ34に保存させることができる。この場合、例えば、数秒毎のログデータを数分間連続してメモリ34に保存し、設定時間が経過すると、古いデータに上書きして新しいログデータを保存するようにすることで、限られたメモリ容量で、エンジン停止直前のログデータなど、有意義なログデータをメモリ34に保存させることができる。
【0034】
このような点火コイルユニット1によると、点火コイルユニット1に内蔵されたメモリ34に記憶されたマトリクスデータや運転状況データを参照することで、メンテナンスや交換時期、更には故障診断などを適正な評価指標で緻密に行うことができる。また、エンジン個体の点火コイルユニット1に内蔵されたメモリ34に記憶されたデータの分析から、個々のエンジンや作業機のユーザの運転特性や作業機の使用状況を理解することができ、それぞれのユーザに応じたサービス提供を個別のメニューで提供することができる。更には、エンジンに必須の点火コイルユニット1においてメモリ機能を充実させることで、比較的低コストで、緻密なメンテナンス等の課題を解決することができる。
【0035】
このような点火コイルユニット1の活用例を具体的に説明する。例えば、メンテナンス時に、作業機のユーザが販売店などに作業機を持ち込み、点火コイルユニット1をエンジンから取り外して、点火コイルユニット1のメモリ34を診断システムなどに接続する。診断システムは、例えば表示装置を備えており、この表示装置にメモリ34に記憶されているマトリクスデータや運転状況データが表示される。
【0036】
この際、メモリ34にユーザ情報(例えば、ユーザIDなど)を記憶させておくことで、メモリ34から取り込むマトリクスデータや運転状況データをユーザ情報に関連づけて参照或いは分析することができる。このような診断システムを採用することで、販売店側がユーザの特性に応じたサービスを個々のユーザに対して提供することができる。
【0037】
マトリクスデータによる使用状況の把握は、エンジン回転速度と温度とのマトリクスデータにおいて、所定の回転速度範囲及び所定の温度範囲内で運転している場合には、ユーザがエンジンに対して理想的な使用をしていると判断する材料にすることができ、エンジン回転速度と温度のマトリクスデータにおいて、所定の回転速度範囲及び所定の温度範囲外で運転している場合には、ユーザがエンジンに対して理想的な使用していないと判断する材料にすることができる。
【0038】
また、運転状況データによる使用状況の把握では、最高回転速度、設定値以上の回転速度を超えた回数、使用時の最高・最低温度などから、ユーザがエンジンに対して理想的な使用を行っているか否かを販売店側が判断する材料にすることができる。特に、設定値以上の回転速度を超えた回数からは、故障の原因分析を行うに際して、高回転に起因する故障ではないかとの分析が可能になり、使用時の最高・最低温度からは、点火コイルユニット1内の電子部品の使用温度条件に適合した使用がなされていたか否かを検証することで、温度に起因する故障原因の分析が可能になる。また特に故障が多い場合には、マトリクスデータと運転状況データをユーザ側に提示することで、販売店側がユーザへ理想的な使用に近づく運転を指導する際の材料にすることができる。
【0039】
他の運転状況データによる使用状況の把握では、リコイル回数と起動回数とから作業機の起動性を評価することができる。作業機の起動性は、作業機の状態(例えば、作業機の劣化)を販売店側が把握する材料になる。また、作業機の起動性は、使用環境との因果関係があるので、リコイル回数や起動回数とマトリスクデータや使用最高・最低温度との相関関係を販売店側が分析することで、使用環境が作業機の起動性に与える影響を把握することができる。
【0040】
このように、本発明の実施形態にかかる点火コイルユニット1を採用することで、メモリ34に記憶されたマトリクスデータや運転状況データ(総運転時間、使用最高温度、最高回転数、リコイル回数、起動回数など)からユーザの運転特性(使用状況)、作業機の状態、使用環境を把握することができるので、販売者側がユーザに対して次のメンテナンス時期などをユーザの運転特性に応じて個別に提案することができる。
【0041】
また、総運転時間などの運転状況データからは、ユーザが頻繁に作業機を使用するヘビーユーザなのか、偶にしか使用しないライトユーザなのかを販売店側が判断することができ、販売店側が新たな製品や商品をユーザに紹介する際に、ユーザの使用状況に合う製品や商品を提供することができ、その後のメンテナンスに対してもユーザの使用状況に合うメンテナンスを提供することができる。
【0042】
このように、本発明の実施形態にかかる点火コイルユニット1は、マトリクスデータや運転状況データから、ユーザの使用状況や故障の原因、作業機の状態、使用環境などを把握することができるので、エンジンや作業機のメンテナンスを行う際の評価を緻密行うことができ、また、それぞれのユーザの運転特性に応じた個別のサービスを提供することができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1:点火コイルユニット,2:センサ,3:スパークプラグ,
10:点火回路,11:一次コイル,12:二次コイル,13:コンデンサ,
14,15:ダイオード,16:サイリスタ,
20:発電部,21:発電コイル,22:波形整形回路,
30:制御部,31:速度計算処理部,32:点火タイミング計算部,
33:温度計測処理部,34:メモリ,35:タイマー,
36:マトリクス判定部