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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】土留め壁の補強構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/04 20060101AFI20240520BHJP
   E02D 5/03 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
E02D17/04 E
E02D5/03
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020186498
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2022076195
(43)【公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 元
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-042992(JP,A)
【文献】特開2002-227204(JP,A)
【文献】特開平07-252835(JP,A)
【文献】特開2000-045282(JP,A)
【文献】特開2010-185239(JP,A)
【文献】特開2003-268770(JP,A)
【文献】特開平05-051928(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0132818(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/04
E02D 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の掘削部の側方に設けられる土留め壁を補強するための、土留め壁の補強構造であって、
前記土留め壁の掘削部側に配置された支持杭と、
前記土留め壁の掘削部側のみに配置され、前記土留め壁の鉛直方向の複数箇所で前記土留め壁の掘削部側の面に接し、前記支持杭により下面から支持される補強体と、
を有することを特徴とする土留め壁の補強構造。
【請求項2】
地盤の掘削部の側方に設けられる土留め壁を補強するための、土留め壁の補強構造であって、
前記土留め壁の掘削部側に配置された支持杭と、
前記土留め壁の鉛直方向の複数箇所で前記土留め壁に接し、前記支持杭により下面から支持される補強体と、
を有し、
前記補強体が、平面において対応する位置で上下複数段に配置されることを特徴とする土留め壁の補強構造。
【請求項3】
地盤の掘削部の側方に設けられる土留め壁を補強するための、土留め壁の補強構造であって、
前記土留め壁の掘削部側に配置された支持杭と、
前記土留め壁の鉛直方向の複数箇所で前記土留め壁に接し、前記支持杭により下面から支持される補強体と、
を有し、
前記補強体と前記支持杭の間にジャッキが設けられることを特徴とする土留め壁の補強構造。
【請求項4】
前記補強体は、
先端が前記土留め壁に接するように配置される水平材と、
先端が、前記水平材よりも高い位置で前記土留め壁に接するように配置される斜材と、
を有し、前記水平材と斜材の基端同士が接続され、当該接続位置で前記補強体が下面から支持されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の土留め壁の補強構造。
【請求項5】
地盤の掘削部の側方に設けられる土留め壁を補強するための、土留め壁の補強構造であって、
前記土留め壁の掘削部側に配置された支持杭と、
前記土留め壁の掘削部側のみに配置される水平材を有し、前記土留め壁の鉛直方向の前記水平材を下端とする所定区間で前記土留め壁の掘削部側の面に連続的に接し、前記支持杭により下面から支持される補強体と、
を有することを特徴とする土留め壁の補強構造。
【請求項6】
地盤の掘削部の側方に設けられる土留め壁を補強するための、土留め壁の補強構造であって、
前記土留め壁の掘削部側に配置された支持杭と、
前記土留め壁の鉛直方向の所定区間で前記土留め壁に連続的に接し、前記支持杭により下面から支持される補強体と、
を有し、
前記補強体が、平面において対応する位置で上下複数段に配置されることを特徴とする土留め壁の補強構造。
【請求項7】
地盤の掘削部の側方に設けられる土留め壁を補強するための、土留め壁の補強構造であって、
前記土留め壁の掘削部側に配置された支持杭と、
前記土留め壁の鉛直方向の所定区間で前記土留め壁に連続的に接し、前記支持杭により下面から支持される補強体と、
を有し、
前記補強体と前記支持杭の間にジャッキが設けられることを特徴とする土留め壁の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土留め壁の補強構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤に親杭横矢板工法等による土留め壁を構築し、その側方の地盤を掘削する際、土留め壁に作用する土圧を支持するため土留め壁の掘削部側に切梁支保工を設ける場合がある。しかしながら、切梁支保工を設けると掘削部での作業を行うことが難しくなる。
【0003】
これに対し、特許文献1には、親杭横矢板工法による土留め壁の背後の地盤に水平方向の挿入杭を挿入し、当該挿入杭の基端を親杭に剛結して土留め壁の補強を行うことが記載されており、これにより土留め壁を切梁支保工なしに自立させ、掘削部での作業を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-197950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では土留め壁の背後の地盤に挿入した挿入杭により土留め壁の補強を行っており、掘削部側から土留め壁の背後の地盤に挿入杭を挿入する作業や、挿入杭の基端側を親杭に剛結する作業等に手間がかかる。
【0006】
また、挿入杭を挿入することで、背後の地盤が乱されて土留め壁に偏土圧が生じ、土留め壁の安全性に悪影響を及ぼす可能性も考えられる。また挿入杭の撤去時に背後の地盤に空隙が生じ、その地盤面が沈下する可能性も考えられる。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、土留め壁を容易に補強することのできる土留め壁の補強構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための第1の発明は、地盤の掘削部の側方に設けられる土留め壁を補強するための、土留め壁の補強構造であって、前記土留め壁の掘削部側に配置された支持杭と、前記土留め壁の掘削部側のみに配置され、前記土留め壁の鉛直方向の複数箇所で前記土留め壁の掘削部側の面に接し、前記支持杭により下面から支持される補強体と、を有することを特徴とする土留め壁の補強構造である。
第2の発明は、地盤の掘削部の側方に設けられる土留め壁を補強するための、土留め壁の補強構造であって、前記土留め壁の掘削部側に配置された支持杭と、前記土留め壁の鉛直方向の複数箇所で前記土留め壁に接し、前記支持杭により下面から支持される補強体と、を有し、前記補強体が、平面において対応する位置で上下複数段に配置されることを特徴とする土留め壁の補強構造である。
第3の発明は、地盤の掘削部の側方に設けられる土留め壁を補強するための、土留め壁の補強構造であって、前記土留め壁の掘削部側に配置された支持杭と、前記土留め壁の鉛直方向の複数箇所で前記土留め壁に接し、前記支持杭により下面から支持される補強体と、を有し、前記補強体と前記支持杭の間にジャッキが設けられることを特徴とする土留め壁の補強構造である。
【0009】
本発明の補強構造により、土留め壁の上記複数箇所の間の区間で土留め壁の回転を防止(拘束)し、また支持杭により補強体が下から支持されることで、土圧による補強体自体の回転も防止(拘束)されるため、土圧による土留め壁の変位を抑制できる。掘削部の深度が浅い場合等では、これにより土留め壁を土圧に対して十分に自立させることが可能となる。
【0010】
また、補強構造は掘削部側に構築され、土留め壁の背後の地盤に杭等を挿入する特殊作業が不要なので施工が容易になる。また杭等により背後の地盤が乱されて土留め壁に偏土圧が生じ、土留め壁の安全性に悪影響を及ぼす恐れも無く、杭等の撤去時に土留め壁の背後の地盤に空隙が生じ、地盤面が沈下する恐れも無い。これにより、土留め壁の供用中だけでなく撤去時の安全も確保することができる。
【0011】
前記補強体は、先端が前記土留め壁に接するように配置される水平材と、先端が、前記水平材よりも高い位置で前記土留め壁に接するように配置される斜材と、を有し、前記水平材と斜材の基端同士が接続され、当該接続位置で前記補強体が下面から支持されることが望ましい。
補強体の水平材と斜材と土留め壁とでトラス構造を形成し、水平材と斜材の基端同士の接続位置を支持杭で鉛直支持することで、簡易且つ強度等の面で合理的な補強構造を実現できる。
【0012】
第2の発明では、前記補強体が、平面において対応する位置で上下複数段に配置されることにより、掘削深度や土質に応じて土留め壁の回転を防止する区間を増やし、補強構造の適用範囲を広げることができる。
【0013】
前記支持杭が前記土留め壁の延伸方向に間隔を空けて複数設けられ、梁材が、複数の前記支持杭の上端の間に架け渡すように配置され、前記補強体が前記梁材の上に配置されることが望ましい。
これにより補強体を支持杭と異なる平面位置に配置できるので、補強体の平面位置の自由度が向上し、上下複数段の補強体を平面において対応する位置に配置することも容易になる。
【0014】
前記土留め壁は、親杭横矢板工法により構築されたものであり、前記補強体は親杭に接することが望ましい。
本発明の補強構造は親杭により土圧を支持する親杭横矢板工法に好適に適用でき、当該親杭に補強体が接することで、その回転を防止して土留め壁を補強できる。
【0015】
第3の発明では、前記補強体と前記支持杭の間にジャッキが設けられることにより補強体を通じて土留め壁に逆方向の回転力を与え、土圧による回転を好適に防止できる。
【0016】
の発明は、地盤の掘削部の側方に設けられる土留め壁を補強するための、土留め壁の補強構造であって、前記土留め壁の掘削部側に配置された支持杭と、前記土留め壁の掘削部側のみに配置される水平材を有し、前記土留め壁の鉛直方向の前記水平材を下端とする所定区間で前記土留め壁の掘削部側の面に連続的に接し、前記支持杭により下面から支持される補強体と、を有することを特徴とする土留め壁の補強構造である。
第5の発明は、地盤の掘削部の側方に設けられる土留め壁を補強するための、土留め壁の補強構造であって、前記土留め壁の掘削部側に配置された支持杭と、前記土留め壁の鉛直方向の所定区間で前記土留め壁に連続的に接し、前記支持杭により下面から支持される補強体と、を有し、前記補強体が、平面において対応する位置で上下複数段に配置されることを特徴とする土留め壁の補強構造である。
第6の発明は、地盤の掘削部の側方に設けられる土留め壁を補強するための、土留め壁の補強構造であって、前記土留め壁の掘削部側に配置された支持杭と、前記土留め壁の鉛直方向の所定区間で前記土留め壁に連続的に接し、前記支持杭により下面から支持される補強体と、を有し、前記補強体と前記支持杭の間にジャッキが設けられることを特徴とする土留め壁の補強構造である。
これによっても、土留め壁の鉛直方向の所定区間で土留め壁の回転を防止して土留め壁を補強でき、第1~第3の発明と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、土留め壁を容易に補強することのできる土留め壁の補強構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】土留め壁3の補強構造1を示す図。
図2】掘削部21の掘削方法を示す図。
図3】掘削部21の掘削方法を示す図。
図4】掘削部21の掘削方法を示す図。
図5】掘削部21の掘削方法を示す図。
図6】補強体5を一段とする例。
図7】補強構造1aを示す図。
図8】補強構造1bを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0020】
(1.補強構造1)
図1は、本発明の実施形態に係る補強構造1を示す図である。補強構造1は、地盤2の掘削部21の側方に設けられた土留め壁3を補強するものである。
【0021】
土留め壁3は、親杭横矢板工法により掘削部21の外周に沿って延伸するように構築される。土留め壁3は、その延伸方向に間隔を空けて複数設けられた親杭31と、隣り合う親杭31の間に配置された横矢板32とを有する。土留め壁3は、親杭31により背後の地盤2からの土圧を支持する。
【0022】
補強構造1は、支持杭4、補強体5、梁材6、ジャッキ7等を有する。
【0023】
支持杭4は、土留め壁3の掘削部21側で、土留め壁3の延伸方向に間隔を空けて複数設けられる。支持杭4は2列に配置され、土留め壁3から遠い側の支持杭4-1と、土留め壁3に近い側の支持杭4-2とを有する。これらの支持杭4-1、4-2は、土留め壁3の延伸方向の位置を変えて千鳥状に配置される。支持杭4-1の上端は、支持杭4-2の上端よりも上方に位置する。
【0024】
梁材6は、土留め壁3の延伸方向に並んだ複数の支持杭4-1、4-2の上端の間に架け渡すように、当該延伸方向に沿って配置される。梁材6は、支持杭4の上端に設けたジャッキ7の上に載置される。
【0025】
補強体5は、土留め壁3の親杭31に接するように配置される。補強体5は梁材6の上に設置され、支持杭4により下面から支持される。
【0026】
補強体5は、水平材51と斜材52とを有する。水平材51は、土留め壁3側の端部(先端)が土留め壁3の親杭31に接するように、土留め壁3の法線方向に配置される。斜材52は、土留め壁3側の端部(先端)が、水平材51の先端と同じ平面位置且つ水平材51の先端よりも高い位置で親杭31に接するように配置される。これにより、補強体5が、親杭31の鉛直方向の複数箇所で土留め壁3に接し、これら複数箇所の間の区間で親杭31の回転が防止される。
【0027】
水平材51と斜材52は、土留め壁3と反対側の端部(基端)同士で接続される。補強体5は、この接続位置を梁材6の上に載置し、当該接続位置で支持杭4により下面から支持される。これにより、土圧による補強体5の鉛直面内での回転が防止される。
【0028】
補強体5は、平面において対応する位置で上下2段に配置される。当該位置は、土留め壁3の各親杭31に対応する位置であり、上段の補強体5は、水平材51と斜材52の先端が土留め壁3の上端付近で親杭31に接するように配置され、土留め壁3から遠い側の支持杭4-1上の梁材6の上に載置される。下段の補強体5は、水平材51と斜材52の先端が上段の補強体5の下方で親杭31に接するように配置され、土留め壁3に近い側の支持杭4-2上の梁材6の上に載置される。
【0029】
補強体5の水平材51と斜材52の先端は、ボルト等を用いて親杭31に固定される。補強体5の水平材51と斜材52の基端同士の接続位置は、梁材6に固定してもよいし、固定しなくてもよい。例えば土留め壁3の法線方向に沿った補強体5の水平移動は許容でき、水平移動用のローラー等を用いた取付機構により補強体5を梁材6に取り付けることもできる。あるいは補強体5を梁材6の上に載せておくだけでもよい。これとは逆に、補強体5を梁材6に固定する場合などでは、補強体5の水平材51と斜材52の先端を親杭31に固定せず、突き当てるだけとすることも可能である。
【0030】
(2.掘削部21の掘削方法)
次に、上記の補強構造1を用いた地盤2の掘削部21の掘削方法について説明する。本実施形態では、まず図2に示すように地盤2に土留め壁3の親杭31を打設し、その後、図3(a)に示すように、隣り合う親杭31の間に横矢板32を配置しつつ掘削部21を掘削する。
【0031】
所定の深さまで掘削を行うと、土留め壁3から遠い側の支持杭4-1を打設する。また本実施形態では、この時土留め壁3に近い側の支持杭4-2も打設しておく。これは、後述する工程で上段の補強体5を設置した後では、支持杭4-2の打設作業が難しくなるためである。支持杭4-2は、図3(b)に示すように、本体41の上部に本体41と同断面の仮設材42を接続し、支持杭4-1と同じ長さとして打設される。
【0032】
次に、図4に示すように支持杭4-1上にジャッキ7と梁材6を設置し、梁材6上に上段の補強体5を載置する。
【0033】
その後、図5に示すように、隣り合う親杭31の間に横矢板32を配置しつつ、掘削部21をさらに掘削する。所定の深さまで掘削したら、前記の仮設材42(図3(b)参照)を撤去したうえで支持杭4-2上にジャッキ7と梁材6を設置し、この梁材6上に下段の補強体5を載置する。
【0034】
以上の手順により、補強構造1が構築される。以下、隣り合う親杭31の間に横矢板32を配置しつつ、掘削部21を図1に示すように所定深さまで掘削する流れとなる。
【0035】
本実施形態の補強構造1により、補強体5が土留め壁3に接する複数箇所の間の区間で土留め壁3の回転を防止(拘束)し、また支持杭4により補強体5が下から支持されることで、土圧による補強体5自体の回転も防止(拘束)されるため、土圧による土留め壁3の変位を抑制できる。そのため、従来の自立式の土留め壁では予測変位量が大きく、これを採用できなかった箇所でも、自立式の土留め壁を採用できる可能性がある。特に掘削部21の深度が浅い場合等では、補強構造1により、土留め壁3を切梁支保工なしで十分に自立させることができる。
【0036】
また本実施形態の補強構造1は掘削部21側に構築され、土留め壁3の背後の地盤2に杭等を挿入する特殊作業が不要なので施工が容易になる。また杭等により背後の地盤2が乱されて土留め壁に偏土圧が生じ、土留め壁3の安全性に悪影響を及ぼす恐れも無く、杭等の撤去時に土留め壁3の背後の地盤2に空隙が生じ、地盤面が沈下する恐れも無い。これにより、土留め壁3の供用中だけでなく撤去時の安全も確保することができる。
【0037】
また本実施形態では、補強体5の水平材51と斜材52と土留め壁3とでトラス構造を形成し、水平材51と斜材52の基端同士の接続位置を支持杭4で鉛直支持することで、簡易且つ強度等の面で合理的な補強構造1を実現できる。
【0038】
また補強体5と支持杭4の間にジャッキ7を設けることで、補強体5を通じて土留め壁3に逆方向の回転力(プレロード)を与えて土圧による回転を好適に防止できる。ただし、ジャッキ7を省略することも可能である。
【0039】
さらに補強体5を土留め壁3の鉛直方向に上下複数段設置することにより、掘削深度や土質に応じて土留め壁3の回転を防止する区間を増やし、補強構造1の適用範囲を広げることができる。本実施形態では上下2段に補強体5を設けているが、補強体5を3段以上に設けることも可能である。あるいは、図6に示すように補強体5を1段のみ設けることも可能であり、掘削深度が浅い場合などでは、これにより補強構造1を簡易な構成とできる。
【0040】
また本実施形態では、複数の支持杭4の上端の間に梁材6が設けられ、その上に補強体5が配置されるので、補強体5を支持杭4と異なる平面位置に配置でき、補強体5の平面位置の自由度が向上する。結果、上下複数段の補強体5を平面において対応する位置に配置することも容易になる。なお、梁材6は、土留め壁3の延伸方向に並んだ全ての支持杭4に架け渡しても良いし、支持杭4の間で梁材6を架け渡さない区間があってもよい。梁材6は、少なくとも複数の支持杭4の間に掛け渡せばよい。
【0041】
また、本実施形態の補強構造1は親杭31により土圧を支持する親杭横矢板工法に好適に適用でき、当該親杭31に補強体5が接することで、その回転を防止して土留め壁を補強できる。
【0042】
しかしながら、本発明は以上の実施形態に限定されない。例えば梁材6は省略することも可能であり、図7は梁材6を省略した補強構造1aの例である。図7の例では、複数の支持杭4が土留め壁3の延伸方向に間隔を空けて一列に設けられ、各支持杭4が各親杭31に対応する位置に配置される。上段の補強体5はジャッキ7を介して支持杭4の上端に配置され、支持杭4により下面から支持される。下段の補強体5は、支持杭4の親杭31側の面に固定されたブラケット8を介して支持杭4により下面から支持される。ブラケット8と補強体5の間にジャッキ7を設けてもよい。
【0043】
また、本実施形態の補強構造1は親杭横矢板工法で構築した土留め壁3を補強したが、鋼矢板工法等の他の工法で構築した土留め壁にも適用可能である。この場合も、支持杭4は土留め壁の掘削部21側に配置し、補強体5は支持杭4により下面から支持して土留め壁に接するように配置する。親杭横矢板工法の場合、補強体5を全ての親杭31に接するように配置するが、腹起しなどの応力伝達用の水平材が土留め壁に存在する場合、補強体5の平面位置は比較的自由に設定でき、上下複数段に補強体5を設ける場合も、これらの補強体5の平面位置を異なるものとすることができる。
【0044】
また、補強体5の構成も、土留め壁3の回転を防止できれば特に限定されない。例えば前記の水平材51や斜材52の形状、構成等が特に限定されることはなく、また図8の補強構造1bの補強体5aに示すように、補強体5aを直角三角形状とし、その鉛直方向の辺が土留め壁3の鉛直方向の所定区間で土留め壁3の親杭31に連続的に接するようにしてもよい。この場合も、上記所定区間における土留め壁3の回転を防止でき、前記した補強構造1と同様の効果が得られる。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0046】
1、1a、1b:補強構造
2:地盤
3:土留め壁
4、4-1、4-2:支持杭
5、5a:補強体
6:梁材
7:ジャッキ
8:ブラケット
21:掘削部
31:親杭
32:横矢板
51:水平材
52:斜材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8