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特許7490538情報処理端末、ユーザ支援方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】情報処理端末、ユーザ支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
G06F3/01 510
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020189566
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078696
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翠
【審査官】塚田 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-052852(JP,A)
【文献】セキュリティ管理,第12回 オートモーティブ ワールド ,2020年01月15日,第29-30頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01,3/048-3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが行う業務または学習に関係する第1のアプリケーションと、前記業務または学習には関係しない第2のアプリケーションとを選択的に実行可能な情報処理端末であって、
前記第1のアプリケーションが実行中であるか否かを判定する実行状態判定処理部と、
前記第1のアプリケーションが実行中と判定されている期間に前記第2のアプリケーションの実行を制限する制御処理部と
前記第1のアプリケーションが実行中と判定されている期間に、前記ユーザの前記業務または学習に対する集中度合いを推定する推定処理部と、
推定された前記集中度合いに基づいて、前記ユーザの状態が、前記集中度合いが所定のしきい値以上となる高集中の状態か、前記集中度合いが前記しきい値に満たない低集中の状態かを判定するユーザ状態判定処理部と
を具備し、
前記制御処理部は、前記第1のアプリケーションが実行中と判定され、かつ前記ユーザの状態が前記低集中の状態と判定されている期間に、前記第2のアプリケーションの実行を制限する
情報処理端末。
【請求項2】
ユーザが行う業務または学習に関係する第1のアプリケーションと、前記業務または学習には関係しない第2のアプリケーションとを選択的に実行可能な情報処理端末であって、
前記第1のアプリケーションが実行中であるか否かを判定する実行状態判定処理部と、
前記第1のアプリケーションが実行中と判定されている期間に前記第2のアプリケーションの実行を制限する制御処理部と
前記第1のアプリケーションが実行中と判定されている期間に、前記ユーザの前記業務または学習に対する集中度合いを推定する推定処理部と、
前記集中度合いに基づいて、前記ユーザの状態が、前記集中度合いが第1のしきい値以上となる第1の状態であるか、前記集中度合いが前記第1のしきい値未満でかつ前記第1のしきい値より低く設定された第2のしきい値以上となる第2の状態であるか、前記集中度合いが前記第2のしきい値未満となる第3の状態であるかを判定するユーザ状態判定処理部と
を具備し、
前記制御処理部は、前記第1のアプリケーションが実行中と判定されている期間において、前記ユーザの状態が前記第1の状態と判定されている期間には前記第2のアプリケーションの実行を制限せず、前記ユーザの状態が前記第2の状態と判定されている期間に前記第2のアプリケーションの実行を制限し、かつ前記ユーザの状態が前記第3の状態と判定されている期間には前記第2のアプリケーションの実行を推奨する情報を生成して前記ユーザに提示する
情報処理端末。
【請求項3】
前記第1のアプリケーションは、ネットワークを介して通信を行う機能を有する通信系アプリケーションと、前記通信を伴わない非通信系アプリケーションとを含む、請求項1または2に記載の情報処理端末。
【請求項4】
前記制御処理部は、前記ユーザの状態が前記第3の状態と判定されている期間に、前記第2のアプリケーションのうち推奨される候補リストを表す情報をさらに生成して前記ユーザに提示する、請求項2に記載の情報処理端末。
【請求項5】
ユーザが行う業務または学習に関係する第1のアプリケーションと、前記業務または学習には関係しない第2のアプリケーションとを選択的に実行可能な情報処理端末により実行されるユーザ支援方法であって、
前記第1のアプリケーションが実行中であるか否かを判定する過程と、
前記第1のアプリケーションが実行中と判定されている期間に前記第2のアプリケーションの実行を制限する制御過程と
前記第1のアプリケーションが実行中と判定されている期間に、前記ユーザの前記業務または学習に対する集中度合いを推定する過程と、
推定された前記集中度合いに基づいて、前記ユーザの状態が、前記集中度合いが所定のしきい値以上となる高集中の状態か、前記集中度合いが前記しきい値に満たない低集中の状態かを判定する過程と、
を具備し、
前記制御過程は、前記第1のアプリケーションが実行中と判定され、かつ前記ユーザの状態が前記低集中の状態と判定されている期間に、前記第2のアプリケーションの実行を制限する
ユーザ支援方法。
【請求項6】
ユーザが行う業務または学習に関係する第1のアプリケーションと、前記業務または学習には関係しない第2のアプリケーションとを選択的に実行可能な情報処理端末により実行されるユーザ支援方法であって、
前記第1のアプリケーションが実行中であるか否かを判定する過程と、
前記第1のアプリケーションが実行中と判定されている期間に前記第2のアプリケーションの実行を制限する制御過程と
前記第1のアプリケーションが実行中と判定されている期間に、前記ユーザの前記業務または学習に対する集中度合いを推定する過程と、
前記集中度合いに基づいて、前記ユーザの状態が、前記集中度合いが第1のしきい値以上となる第1の状態であるか、前記集中度合いが前記第1のしきい値未満でかつ前記第1のしきい値より低く設定された第2のしきい値以上となる第2の状態であるか、前記集中度合いが前記第2のしきい値未満となる第3の状態であるかを判定する過程と
を具備し、
前記制御過程は、前記第1のアプリケーションが実行中と判定されている期間において、前記ユーザの状態が前記第1の状態と判定されている期間には前記第2のアプリケーションの実行を制限せず、前記ユーザの状態が前記第2の状態と判定されている期間に前記第2のアプリケーションの実行を制限し、かつ前記ユーザの状態が前記第3の状態と判定されている期間には前記第2のアプリケーションの実行を推奨する情報を生成して前記ユーザに提示する
ユーザ支援方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の情報処理端末が具備する前記実行状態判定処理部、前記制御処理部、前記推定処理部および前記ユーザ状態判定処理部の処理を、前記情報処理端末が備えるプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、例えばユーザが業務または学習に使用するパーソナルコンピュータ等の情報処理端末と、この情報処理端末を用いたユーザの業務または学習を支援するための業務支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理端末を使用してリモートワークにより自宅で業務を行う機会が増えている。リモートワークでは、一般にオフィス内にいる場合より自由な環境下で業務を進められる半面、ユーザは業務中に趣味のサイトへのアクセスや業務以外のアプリケーションの利用に対する誘惑と闘わなければならないことも多い。
【0003】
そこで、例えば設定情報管理装置から利用者端末に対し各アプリケーションの各機能の設定情報を送り、利用者端末が上記設定情報に基づいてアプリケーションの機能の実行の可否または実行の分岐を行うようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この技術を用いれば、利用者端末の利用環境に応じてこの利用者端末で実行可能なアプリケーションの機能を制御することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-51250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載された技術では、例えば利用者端末が社外に存在する場合のように場所に応じてアプリケーションの実行が固定的に制限される。このため、リモートワークのように社外で業務を行う場合にも、業務との関連性の低いアプリケーションの実行が無条件に制限されることになり、自由な環境下での業務を望んでいるユーザにとっては心理的に窮屈感を覚え、かえって業務効率の低下を招く場合がある。以上の課題は、業務以外に、例えば社会人または学生がパーソナルコンピュータを使用して自主的な学習を行う場合にも生じ得る。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、情報処理端末を使用してリモートワークを行う際のユーザの業務効率または学習効率の向上を図った技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためにこの発明に係る情報処理端末およびこの情報処理端末により実行されるユーザ支援方法の一態様は、ユーザが行う業務または学習に関係する第1のアプリケーションと、前記業務または学習には関係しない第2のアプリケーションとを選択的に実行可能な情報処理端末において、前記第1のアプリケーションが実行中であるか否かを判定し、前記第1のアプリケーションが実行中と判定されている期間に前記第2のアプリケーションの実行を制限する
また、前記第1のアプリケーションが実行中と判定されている期間に、前記ユーザの前記業務または学習に対する集中度合いを推定し、推定された前記集中度合いに基づいて、前記ユーザの状態が、前記集中度合いが所定のしきい値以上となる高集中の状態か、前記集中度合いが前記しきい値に満たない低集中の状態かを判定する。
さらに、前記第1のアプリケーションが実行中と判定され、かつ前記ユーザの状態が前記低集中の状態と判定されている期間にも、前記第2のアプリケーションの実行を制限する。
【発明の効果】
【0008】
この発明の一態様によれば、例えば、ユーザが第1のアプリケーションを使用して業務または学習を行っていると、その期間が上記第1のアプリケーションの実行の有無により判定され、当該期間にその他の第2のアプリケーションの実行が制限される。このため、業務または学習中にユーザの集中度合いが低下し、その他の第2のアプリケーションを使用したくなっても実行が制限される。従って、リモートワークにおけるユーザの業務効率または学習効率の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、この発明の第1の実施形態に係る情報処理端末として動作するユーザ端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2図2は、この発明の第1の実施形態に係る情報処理端末として動作するユーザ端末のソフトウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は、図1および図2に示したユーザ端末において実行されるユーザ支援処理の全体の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
図4図4は、図3に示した全体の処理手順のうちユーザ状態判定処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
図5図5は、図3に示した全体の処理手順のうち他アプリケーション実行制御処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
図6図6は、この発明の第2の実施形態に係る情報処理端末として動作するユーザ端末において実行されるユーザ状態判定処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
図7図7は、この発明の第2の実施形態に係る情報処理端末として動作するユーザ端末において実行される他アプリケーション実行制御処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
図8図8は、この発明の第1の実施形態に係るユーザ端末により実行されるユーザ状態判定処理の動作を説明するための図である。
図9図9は、この発明の第2の実施形態に係るユーザ端末により実行されるユーザ状態判定処理の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
(構成例)
この発明の第1の実施形態では、ユーザが情報処理端末としてパーソナルコンピュータ、タブレット型端末またはスマートフォン等のユーザ端末を使用し、リモートワークや文書作成などの業務を行う場合を例にとって説明する。
【0012】
図1および図2は、それぞれ第1の実施形態に係るユーザ端末UTのハードウェア構成およびソフトウェア構成を示すブロック図である。
ユーザ端末UTは、例えば、中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)等のハードウェアプロセッサを有する制御部1を備え、この制御部1に対しバス10を介して、プログラム記憶部2、データ記憶部3、通信インタフェース部(通信I/F)4および入出力インタフェース部(入出力I/F)5を接続したものとなっている。
【0013】
通信I/F4は、例えば無線LAN(Local Area Network)用のインタフェースまたは有線LAN用のインタフェースを備える。そして、図示しないインターネット等の公衆ネットワークを介して、他の情報処理端末、サーバ装置またはWebサイトとの間で、リモート会議や各種情報検索、共有アプリケーションの利用のためのデータ通信を行う。
【0014】
入出力I/F5には、映像およびデータを表示するための表示部9aと、キーボードまたはマウス等からなる入力部9bが接続され、さらにリモート会議通信に使用するマイクロフォン6、スピーカ7およびカメラ8が接続されている。
【0015】
上記表示部9a、入力部9b、マイクロフォン6、スピーカ7およびカメラ8は、ユーザ端末UT内に内蔵されていてもよいし、外付けされてもよい。外付けの場合、上記各デバイスは入出力I/F5に設けられているUSB(Universal Serial Bus)端子に接続される。また表示部9aおよび入力部9bは、表示パネル上に入力検知シートを配置したタッチパネル型のデバイスを使用することも可能である。
【0016】
プログラム記憶部2は、例えば、記憶媒体としてHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを組み合わせて構成したもので、OS(Operating System)等のミドルウェアに加えて、この発明の第1の実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要な制御プログラムが格納されてもよい。またプログラム記憶部2には、業務または学習に使用される各種アプリケーションや、業務または学習とは関係性が低いゲーム用のアプリケーションやSNS用のアプリケーション等が格納されてもよい。
【0017】
データ記憶部3は、例えば、記憶媒体として、HDDまたはSSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリと組み合わせたもので、第1の実施形態に係る記憶部として、期間判定情報記憶部31と、集中度推定モデル記憶部32と、ユーザ状態判定情報記憶部33とを備えている。
【0018】
期間判定情報記憶部31は、後述する制御部1により得られる、ユーザの業務/学習期間の判定結果を表す情報を記憶するために用いられる。
【0019】
集中度推定モデル記憶部32は、後述する制御部1がユーザの集中度を推定するために使用する学習モデルを記憶する。学習モデルは、例えば、ユーザによるデータ入力操作の特徴量またはユーザの顔画像の特徴量に応じて、ユーザの業務または学習に対する集中度を表すスコアを出力するように、事前に学習されたものである。
【0020】
ユーザ状態判定情報記憶部33は、後述する制御部1により得られる、業務または学習に対するユーザの取り組みの状態の判定結果を表す情報を記憶するために用いられる。
【0021】
制御部1は、この発明の第1の実施形態に係る処理機能として、業務/学習アプリケーション実行処理部11と、業務/学習期間判定処理部12と、集中度推定処理部13と、ユーザ状態判定処理部14と、他アプリケーション実行制御処理部15とを備えている。これらの処理部11~15は、何れもプログラム記憶部2に格納されたアプリケーションプログラムを、制御部1のプロセッサに実行させることにより実現される。
【0022】
業務/学習アプリケーション実行処理部11は、プログラム記憶部2に格納された業務または学習に使用される各種アプリケーションに従い、業務または学習に係る各種制御処理を実行する。業務または学習に使用される各種アプリケーションには、例えば、リモート会議通信用のアプリケーションや、例えば文書、図表またはプレゼンテーション資料等の作成および編集に使用するアプリケーションのように通信を伴わないアプリケーションが含まれる。
【0023】
業務/学習期間判定処理部12は、上記業務/学習アプリケーション実行処理部11による業務/学習用のアプリケーションの実行状態を監視することで、ユーザが業務または学習を行っている期間を判定し、判定された期間を表す情報を期間判定情報記憶部31に記憶させる処理を行う。
【0024】
集中度推定処理部13は、例えば、入力部9bによるデータ入力操作の特徴量を計算し、計算された特徴量を集中度推定モデル記憶部32に記憶された学習モデルに入力することにより、ユーザの集中度を示すスコアを取得する。また集中度推定処理部13は、例えば、カメラ8により得られるユーザの顔画像から特徴量を抽出し、抽出された顔画像の特徴量を集中度推定モデル記憶部32に記憶された学習モデルに入力することで、ユーザの集中度を示すスコアを取得する。
【0025】
ユーザ状態判定処理部14は、上記集中度推定処理部13により取得されたユーザの集中度を示すスコアを予め設定されたしきい値と比較することで、業務または学習に対するユーザの取り組みの状態を判定し、これにより得られたユーザの状態の判定結果を表す情報を、その判定時刻を示す情報と対応付けてユーザ状態判定情報記憶部33に記憶させる処理を行う。
【0026】
他アプリケーション実行制御処理部15は、期間判定情報記憶部31に記憶された期間判定情報と、ユーザ状態判定情報記憶部33に記憶されたユーザ状態判定情報とに基づいて、業務または学習とは関係性の低いゲームやSNSなどに係る他アプリケーションに対し、業務または学習に対するユーザの取り組みの状態に応じた実行制限などの制御処理を実行する。
【0027】
(動作例)
次に、以上のように構成されたユーザ端末UTにより実行される、業務または学習中のユーザに対する支援処理動作を説明する。
図3は、ユーザ端末UTの制御部1により実行されるユーザ支援処理に係る全体の処理手順および処理内容を示すフローチャートである。
【0028】
(1)ユーザの業務/学習期間の判定
ユーザ端末UTの制御部1は、ステップS1により業務/学習用のアプリケーションの起動を監視している。この状態で、例えば文書または図表データ作成用のアプリケーションが起動されると、以後業務/学習期間判定処理部12の制御の下で、ステップS2によりユーザの業務/学習期間を判定する。例えば業務/学習期間判定処理部12は、上記業務/学習用のアプリケーションの実行状態をもとに、当該業務/学習用のアプリケーションが実質的に実行されている期間を計時することで、ユーザの業務/学習期間を判定する。そして、上記ユーザの業務/学習期間の判定結果を表す情報を、上記判定時刻を示す情報と対応付けて期間判定情報記憶部31に記憶させる。以上の業務/学習期間判定処理は、例えば一定時間おきに行われる。
【0029】
(2)集中度の推定
ユーザ端末UTの制御部1は、次に集中度推定処理部13の制御の下、ステップS3において、上記判定された業務/学習期間におけるユーザの集中度を判定する。例えば集中度推定処理部13は、入力部9bによるデータ入力操作の特徴量を計算する。この特徴量としては、例えば入力部9bによる単位時間当たりの入力データ量が用いられる。そして集中度推定処理部13は、計算された上記入力操作の特徴量を集中度推定モデル記憶部32に記憶された学習モデルに入力することにより、ユーザの集中度を示すスコアを取得する。
【0030】
また集中度推定処理部13は、例えば、カメラ8により得られるユーザの顔画像から瞬きの頻度や視線の方向の変化を特徴量として抽出し、抽出された上記顔画像の特徴量を集中度推定モデル記憶部32に記憶された学習モデルに入力することで、ユーザの集中度を示すスコアを取得する。そして、取得された上記集中度のスコアをユーザ状態判定処理部14に与える。
【0031】
(3)業務/学習に対するユーザ状態の判定
続いてユーザ端末UTの制御部1は、ユーザ状態判定処理部14の制御の下、ステップS4において、上記集中度推定処理部13から与えられた集中度のスコアと、予め設定されたしきい値をもとに、上記業務または学習に対するユーザの取り組みの状態を以下のように判定する。
【0032】
図4はその処理手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
すなわち、ユーザ状態判定処理部14は、先ずステップS41において上記集中度のスコアをしきい値TH0と比較し、集中度のスコアがしきい値TH0以上であるか否かをステップS42により判定する。そして、集中度のスコアがしきい値TH0以上の場合には、ステップS43において、ユーザは集中して業務または学習に取り組んでいる、「集中」状態と判定する。
【0033】
一方、集中度のスコアがしきい値TH0未満の場合には、ステップS44において、ユーザは業務または学習に対し集中できていない、「非集中」状態と判定する。
【0034】
図8は、第1の実施形態における業務または学習に対するユーザの集中度スコアの時間変化の一例を示したものである。この例では、業務または学習の開始後の所定期間では集中度スコアがしきい値TH0以上となり、ユーザは「集中」状態を維持していると判定される。また、上記所定期間の経過後、ユーザの集中度スコアはしきい値TH0未満に低下し、この期間ではユーザ状態は「非集中」状態に遷移したと判定される。
【0035】
またユーザ状態判定処理部14は、上記ステップS43またはステップS44において、上記ユーザの状態の判定結果を表す情報を、その判定時刻を示す情報と対応付けてユーザ状態判定情報記憶部33に記憶させる。
【0036】
(4)他アプリケーションの実行制御
次にユーザ端末UTの制御部1は、他アプリケーション実行制御処理部15の制御の下、ステップS5において、以下のように他アプリケーションに対する実行制御を行う。
【0037】
図5はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
すなわち、他アプリケーション実行制御処理部15は、先ずステップS51により期間判定情報記憶部31から直近の一定期間における期間判定情報を読み込む。そして、読み込まれた上記期間判定情報をもとに、ステップS52において、上記直近の一定期間にユーザは業務中または学習中であるか否かを判定する。
【0038】
ユーザが業務中または学習中と判定されると、他アプリケーション実行制御処理部15は、次にステップS53において、ユーザ状態判定情報記憶部33から上記直近の一定期間におけるユーザ状態判定情報を読み込む。そして、読み込まれた上記ユーザ状態判定情報に基づいて、ユーザは「集中」状態にあるか「非集中」状態にあるかをステップS54により判定する。この判定の結果、「集中」状態であれば、他アプリケーション実行制御処理部15は、ユーザがいま他アプリケーションを起動する可能性は低いと見なして、特に他アプリケーションの起動制限処置を行わない。
【0039】
一方、上記判定の結果「非集中」状態と判定されると、他アプリケーション実行制御処理部15はステップS55に移行する。そして、ゲームやSNSなどの業務または学習とは関係性の低い他アプリケーションの実行を制限する処置を行う。またそれと共に他アプリケーション実行制御処理部15は、ステップS56において、ユーザに対する支援メッセージを生成し、生成された支援メッセージを入出力I/F5から表示部9aへ出力して表示させる。
【0040】
支援メッセージとしては、例えば「ただ今その他のアプリケーションは起動できません。もう少し業務または学習に頑張りましょう」が使用される。なお、上記支援メッセージを音声データにより構成し、この音声データを入出力I/F5からスピーカ7へ出力して音声メッセージとして提示するようにしてもよい。
【0041】
従って、ユーザは業務または学習に飽き始めてゲームまたはSNSに誘惑されそうになっても、思いとどまることが可能となる。また、ユーザが仮に他アプリケーションの起動要求を入力しても、要求された他アプリケーションは起動されない。このため、ユーザが業務または学習を続ける確率を高く維持できる。
【0042】
ユーザ端末UTの制御部1は、最後にステップS6において業務/学習アプリケーションの終了操作の有無を判定する。そして、終了操作が行われなければステップS2に戻って上記一連の処理を継続する。その過程において、ユーザの状態が「集中」状態に戻れば、他アプリケーションに対する起動制限処置は解除される。また、業務/学習用アプリケーションの終了操作が検出されれば、ユーザ支援処理を終了して待受状態に復帰する。
【0043】
(作用・効果)
以上述べたように第1の実施形態では、業務/学習用アプリケーションの実行状態をもとにユーザが業務または学習を行っている期間を判定すると共に、ユーザの集中度を推定してその結果をもとに業務または学習に対するユーザの取り込みの状態を判定する。そして、業務または学習を行っている期間におけるユーザの状態が「非集中」状態と判定された場合に、ゲームやSNSなどの業務または学習とは関係性の低い他アプリケーションの起動を制限するようにしている。
【0044】
従って、ユーザが業務または学習の途中で他アプリケーションを起動しようとしても起動されないようにすることができ、これによりユーザは業務または学習に戻って作業を継続することが可能となる。すなわち、ユーザの業務または学習中におけるゲームやSNSへの寄り道を防止して、業務効率または学習効率を高めることが可能となる。
【0045】
[第2の実施形態]
この発明の第2の実施形態は、業務または学習中のユーザの状態を「集中」、「普通」、「非集中」に分類して判定し、「普通」状態の場合には他アプリケーションの起動を制限するが、「非集中」状態の場合には積極的に気分転換をさせるために特定の他アプリケーションの使用を推奨するようにしたものである。
【0046】
なお、第2の実施形態においてもユーザ端末UTの構成は第1の実施形態とほぼ同一なので、図2および図3を用いて説明を行う。また、図3に示した業務/学習実行期間の判定処理(ステップS2)および集中度の推定処理(ステップS3)についても、第1の実施形態と同じなので説明は省略する。
【0047】
図6および図7は、それぞれ第2の実施形態におけるユーザ状態判定処理および他アプリケーション実行制御処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
(1)業務/学習に対するユーザ状態の判定
ユーザ状態判定処理部14は、先ずステップS61において、集中度推定処理部13により得られた集中度のスコアを第1および第2のしきい値TH1,TH2とそれぞれ比較する。そして、ステップS62において、集中度のスコアが第1のしきい値TH1以上であるか否かを判定する。この判定の結果、集中度のスコアが第1のしきい値TH1以上であれば、ステップS63において、ユーザは集中して業務または学習に取り組んでいる状態、つまり「集中」状態と判定する。
【0048】
一方、集中度のスコアが第1のしきい値TH1未満と判定された場合、ユーザ状態判定処理部14はステップS64において、集中度推定処理部13により得られた集中度のスコアが第2のしきい値TH2以上であるか否かを判定する。そして、集中度のスコアが第2のしきい値TH2以上であれば、ステップS65において、ユーザは普通の集中度合いで業務または学習に取り組んでいる「普通」状態と判定する。
【0049】
これに対し集中度のスコアが第2のしきい値TH2に満たない場合には、ステップS66において、ユーザは業務または学習に対し集中できていない、「非集中」状態と判定する。
【0050】
図9は、第2の実施形態における業務または学習に対するユーザの集中度スコアの時間変化の一例を示したものである。この例では、業務または学習の開始当初の期間では集中度スコアが第1のしきい値TH1以上となり、ユーザは「集中」状態を維持していると判定される。また、上記開始当初の期間の経過後ユーザの徐々に集中度が低下して、集中度スコアが第1のしきい値TH1未満になると、ユーザは「普通」の集中度で業務または学習を行っている状態と判定される。そして、時間の経過と共にユーザの集中度がさらに低下して、集中度スコアがしきい値TH2未満になると、ユーザは「非集中」状態になったと判定される。
【0051】
またユーザ状態判定処理部14は、上記ステップS63,S65,S66において、上記ユーザの状態の判定結果を表す情報を、その判定時刻を示す情報と対応付けてユーザ状態判定情報記憶部33に記憶させる。
【0052】
(2)他アプリケーションの実行制御
次にユーザ端末UTの制御部1は、他アプリケーション実行制御処理部15の制御の下、以下のように他アプリケーションに対する実行制御を行う。
【0053】
図7はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
すなわち、他アプリケーション実行制御処理部15は、先ずステップS71により期間判定情報記憶部31から直近の一定期間における期間判定情報を読み込む。そして、読み込まれた上記期間判定情報をもとに、ステップS72において、上記直近の一定期間にユーザは業務中または学習中であるか否かを判定する。
【0054】
ユーザが業務中または学習中と判定されると、他アプリケーション実行制御処理部15は、次にステップS73において、ユーザ状態判定情報記憶部33から上記直近の一定期間におけるユーザ状態判定情報を読み込む。そして、読み込まれた上記ユーザ状態判定情報に基づいて、ユーザは「集中」状態にあるかそれ以外の状態にあるかをステップS74により判定する。この判定の結果、「集中」状態であれば、他アプリケーション実行制御処理部15は、ユーザはいま他アプリケーションを起動する可能性は低いと見なして、特に他アプリケーションの起動制限を行わない。
【0055】
一方、上記ステップS74において、ユーザが「集中」状態にないと判定されたとする。この場合、他アプリケーション実行制御処理部15はステップS76において、ユーザの集中度は「普通」の状態にあるか「非集中」の状態にあるかを判定する。この判定の結果、ユーザの集中度が「普通」の状態であると判定されると、他アプリケーション実行制御処理部15はステップS76に移行する。そして、ゲームやSNSなどの業務または学習とは関係性の低い他アプリケーションの実行を制限する処置を行う。
【0056】
またそれと共に他アプリケーション実行制御処理部15は、ステップS78において、「制限中」である旨のメッセージを生成し、生成されたメッセージを入出力I/F5から表示部9aへ出力して表示させる。「制限中」である旨のメッセージとしては、例えば「ただ今その他のアプリケーションは起動できません。もう少し業務または学習に頑張りましょう」が使用される。なお、上記「制限中」である旨のメッセージを音声データにより構成し、この音声データを入出力I/F5からスピーカ7へ出力して音声メッセージとして提示するようにしてもよい。
【0057】
従って、ユーザは業務または学習に飽き始めてゲームまたはSNSに誘惑されそうになっても、思いとどまることが可能となる。また、ユーザが仮に他アプリケーションの起動要求を入力しても、要求された他アプリケーションは起動されない。このため、ユーザは業務または学習を続けることが可能となる。
【0058】
また、上記ステップS76において、ユーザが「非集中」状態と判定されたとする。この場合他アプリケーション実行制御処理部15は、ステップS79において、気分転換を推奨するメッセージを生成し、生成されたメッセージを入出力I/F5から表示部9aへ出力して表示させる。このとき用いられる推奨メッセージとしては、例えば「業務/学習時間が長くなっています。この辺で簡単なゲームやコンテンツにより気分転換をしましょう」が用いられる。
【0059】
そして、他アプリケーション実行制御処理部15は、ステップS80において、気分転換に推奨されるアプリケーションの候補リストを生成し、生成されたアプリケーションの候補リストを入出力I/F5から表示部9aへ出力して表示させる。
【0060】
従ってユーザは、例えば上記推奨されるアプリケーションの候補リストの中から所望のアプリケーションを選択して起動し、これにより簡単なゲームやリラクゼーション動画等のコンテンツを視聴することで、気分転換をすることが可能となる。
【0061】
(作用・効果)
以上述べたように第2の実施形態では、業務または学習中のユーザの集中度スコアをもとにユーザが「集中」、「普通」、「非集中」のずれの状態にあるかを判定し、「集中」状態の場合には特に他アプリケーションの起動制限は行わず、「普通」状態の場合に他アプリケーションの起動制限を行うと共に「制限中」メッセージを表示させる。これに対し、「非集中」の場合には、気分転換を推奨するメッセージを表示させると共に、気分転換に推奨されるアプリケーションの候補リストを表示させるようにしている。
【0062】
従って、例えばユーザの業務または学習時間が長くなって集中度が著しく低下した場合には、他アプリケーションの起動を制限するのではなく、ユーザに推奨されるアプリケーションを起動させ、これにより簡単なゲームやリラクゼーション動画等のコンテンツにより気分転換をさせることが可能となる。
【0063】
[その他の実施形態]
(1)第1および第2の実施形態では、ユーザの集中度の推定と、それにより得られた推定スコアに基づくユーザ状態の判定処理とを別々に行う場合を例にとって説明した。しかし、上記集中度の推定処理とユーザ状態の判定処理とを、例えばニューラルネットワーク等を適用した判定手段を用いて一括して行うようにしてもよい。その他、業務または学習に対するユーザの集中度の推定手法としては、入力操作の中断時間や中断の頻度に基づく手法やユーザの顔向きの変化の頻度等に基づく手法など、その他の手法を使用することができる。
【0064】
(2)第1および第2の実施形態では、業務または学習に対するユーザの集中度の状態が「非集中」または「普通」の状態のときに、業務または学習とは関係性の低い他アプリケーションの起動を制限するようにした。しかし、アプリケーションによっては起動を制限せずに起動可能にし、起動後に当該アプリケーションの一部機能に限り実行可能なように制御するようにしてもよい。
【0065】
(3)その他、情報処理端末の機能構成と処理手順および処理内容、業務または学習用の第1のアプリケーションおよびそれ以外の第2のアプリケーションの種類、第2のアプリケーションに対する実行制御の処理手順と処理内容等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0066】
以上、本発明の各実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0067】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…制御部
2…プログラム記憶部
3…データ記憶部
4…通信I/F
5…入出力I/F
6…マイクロフォン
7…スピーカ
8…カメラ
9a…表示部
9b…入力部
10…バス
11…業務/学習アプリケーション実行処理部
12…業務/学習期間判定処理部
13…集中度推定処理部
14…ユーザ状態判定処理部
15…他アプリケーション実行制御処理部
31…期間判定情報記憶部
32…集中度推定モデル記憶部
33…ユーザ状態判定情報記憶部
図1
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