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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】軸受部の封止構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3224 20160101AFI20240520BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20240520BHJP
   F16C 33/74 20060101ALI20240520BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20240520BHJP
【FI】
F16J15/3224
F16J15/16 D
F16J15/16 B
F16C33/74 Z
F16J15/3204 201
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020189586
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078713
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】鬼沢 芳裕
(72)【発明者】
【氏名】須田 徹
(72)【発明者】
【氏名】神田 聡
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-113329(JP,U)
【文献】国際公開第2011/145576(WO,A1)
【文献】特開平04-347067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/72-33/82
F16J 15/16-15/3296
F16J 15/46-15/53
H02K 5/00-5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械の回転軸と、前記回転軸を貫通配置するケーシングにおける軸受部の封止構造であって、
内周部を前記回転軸に接触させると共に、円環を構成する一方の面を前記ケーシングに接触させる第1のOリングと、
前記第1のOリングの外周側において前記ケーシングと接触する第1接触部と、前記第1のOリングにおける円環を構成する他方の面側で前記回転軸に接触する第2接触部と、前記第1接触部と前記第2接触部との間に配置される可撓部とを有するパッキンと、
前記第1接触部を前記ケーシングに押圧した状態で固定されるパッキンカバーと、を備え、
前記第1のOリングの外周側には空隙が設けられると共に、前記可撓部が前記第1のOリングにおける前記他方の面を押圧する構成としたことを特徴とする軸受部の封止構造。
【請求項2】
前記ケーシングにおける前記回転軸の貫通部には、凹部が設けられ、前記第1のOリングにおける前記一方の面は、前記凹部の底面に接触することを特徴とする請求項1に記載の軸受部の封止構造。
【請求項3】
前記第1のOリングにおける前記他方の面と前記パッキンにおける前記可撓部との間には、スペーサと第2のOリングが配置され、
前記スペーサの一方の面は、前記第1のOリングにおける前記他方の面に接触し、前記スペーサの他方の面は、前記第2のOリングにおける一方の面と接触し、
前記第2のOリングにおける他方の面は、前記パッキンにおける前記可撓部と接触し、前記第2のOリングの外周側には空隙が設けられている構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の軸受部の封止構造。
【請求項4】
前記パッキンにおける前記回転軸との接触部の厚みは、前記可撓部の厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の軸受部の封止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械における軸受構造に係り、特に内部機構に気密性を要する回転機械に適用可能な軸受部の封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、水中や腐食雰囲気などの過酷環境中に配置される機器には、気密性が要求される。特に、外部に動力を伝達する回転軸などを有する機器の場合、内部機構の気密性を保ちつつ、動力伝達を確実に行うという事が課題とされることが多い。
【0003】
例えば水中で用いられるモータでは、特許文献1や2に開示されているような構造が知られている。特許文献1に開示されている構造は、駆動力を伝達するロータと、ロータを回転させるステータとを別室に配置することとし、ロータを過酷環境に配置した上で、ステータを配置した空間を密閉し、駆動制御機器を保護するという構造が採られている。ロータは、磁力を介して駆動制御されるため、このような構造を採用した場合、ステータ側の空間を完全に密閉する事が可能となり、耐圧性も高めることができる。
【0004】
また、特許文献2に開示されている構造は、ケーシングから突出する回転軸の軸受部分に複数層のパッキンを配置し、パッキン間に空間を設けるようにしている。パッキン間に設けられた空間には回転軸が挿通されると共に、グリスなどの疎水性流体が充填されている。このような構造とすることで、回転軸とパッキンとの間に隙間が生じた場合であっても、ケーシングの内部にまで水等が進入することを防ぐ事が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-202316号公報
【文献】特開2019-218982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているような構造の回転機械(モータ)であれば、ステータ等の制御機器を完全に密閉することができる。しかしながら、構造が複雑化するため、製造コストが高騰すると共に、ロータの回転軸のブレが大きくなりやすく、回転時に騒音が生じ易いなどの問題が残ることとなる。
【0007】
また、特許文献2に開示されているような構造の場合、パッキンや疎水性流体と回転軸との接触面を増やす事で止水性や気密性を高める事ができる一方で、摩擦抵抗が大きくなることとなる。このため、回転トルクの小さいモータなどを動力とする場合、所望する回転力を得る事ができなくなってしまう可能性がある。
【0008】
そこで本発明では、回転機械を簡易な構造とする事を可能とし、かつ回転軸に対する抵抗を小さくすると共に、気密性を保つ事のできる軸受部の封止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る軸受部の封止構造は、回転機械の回転軸と、前記回転軸を貫通配置するケーシングにおける軸受部の封止構造であって、内周部を前記回転軸に接触させると共に、円環を構成する一方の面を前記ケーシングに接触させる第1のOリングと、前記第1のOリングの外周側において前記ケーシングと接触する第1接触部と、前記第1のOリングにおける円環を構成する他方の面側で前記回転軸に接触する第2接触部と、前記第1接触部と前記第2接触部との間に配置される可撓部とを有するパッキンと、前記第1接触部を前記ケーシングに押圧した状態で固定されるパッキンカバーと、を備え、前記第1のOリングの外周側には空隙が設けられると共に、前記可撓部が前記第1のOリングにおける前記他方の面を押圧する構成としたことを特徴とする。
【0010】
また、上記のような特徴を有する軸受部の封止構造では、前記ケーシングにおける前記回転軸の貫通部には、凹部が設けられ、前記第1のOリングにおける前記一方の面は、前記凹部の底面に接触する構成とすることができる。このような特徴を有する事によれば、ケーシングから突出する封止構造部分の厚みを抑えることができる。
【0011】
また、上記のような特徴を有する軸受部の封止構造では、前記第1のOリングにおける前記他方の面と前記パッキンにおける前記可撓部との間には、スペーサと第2のOリングが配置され、前記スペーサの一方の面は、前記第1のOリングにおける前記他方の面に接触し、前記スペーサの他方の面は、前記第2のOリングにおける一方の面と接触し、前記第2のOリングにおける他方の面は、前記パッキンにおける前記可撓部と接触し、前記第2のOリングの外周側には空隙が設けられている構成とすることもできる。このような特徴を有する事によれば、封止部の数を増やすことができ、封止効果を高めることが可能となる。
【0012】
さらに、上記のような特徴を有する軸受部の封止構造では、前記パッキンにおける前記回転軸との接触部の厚みは、前記可撓部の厚みよりも薄くすることが望ましい。このような特徴を有する事によれば、回転軸とパッキンとの間に生じる摩擦抵抗の発生を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
上記のような特徴を有する軸受部の封止構造によれば、回転機械を簡易な構造とする事ができる。また、回転軸に対する抵抗を小さくすると共に、気密性を保つ事も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る軸受部の封止構造を適用した回転機械の構成を示す分解斜視図である。
図2】第1実施形態に係る軸受部の封止構造を適用した回転機械の側面構成を示す図である。
図3図2におけるA-A断面を示す図である。
図4図3における封止構造部分の部分拡大図である。
図5】回転軸とOリング、及びパッキンの関係を説明するための図である。
図6】第2実施形態に係る軸受部の封止構造を適用した回転機械の構成を示す分解斜視図である。
図7】第2実施形態に係る軸受部の封止構造の構成を説明するための部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の軸受部の封止構造に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明に係る軸受部の封止構造は、種々の形態における回転機械の軸受部に適用することができる。以下の説明では回転機械として、取り扱い流体を二酸化塩素とする二酸化塩素発生器におけるファンを例に挙げて説明する。気体である二酸化塩素ガスは液体に比べて高い遮蔽性が求められると共に、水などの一般的な流体よりも腐食性が高い。また、水中に埋没される機器と異なり、気中で使用される機器では、静音性が求められ、高い出力のモータを採用する事が難しいなど、様々な課題がある。このため、二酸化塩素発生器のファンにおける軸受部の密閉性という課題を解決できる封止構造であれば、他の種々の形態への適用に際しても、適用時の課題を解決する事ができるものと考えられるからである。
【0016】
[第1実施形態:構成]
本実施形態に係る軸受部の封止構造(以下、単に封止構造と称する)を適用する回転機械10には、モータ12を含む電気ユニットを内包するケーシング14により構成される密閉空間と、回転羽根16などの動力伝達系統が配置される開放空間とが存在し、実施形態に係る封止構造は、両空間の境界部においてモータ12の回転軸12aが突出する部位に適用される。
【0017】
本実施形態に係る封止構造は、Oリング20(第1のOリング)と、パッキン22、及びパッキンカバー24を備える事を基本として構成されている。Oリング20は、平面視において円環状を成し、シール部の断面形状を円形とする一般的な形態のもので良い。Oリング20は、内周部を回転軸12aに接触させると共に、円環状を成す一方の面をケーシング14に接触させるように配置されている。
【0018】
Oリング20のサイズは、内周部の直径が回転軸12aの直径よりも僅かに小さく、内周部に回転軸12aを挿通させた際、両者の間に隙間が生じないようなものを選択すると良い。回転軸12aの直径DとOリング20の内径(内周部の直径)dとの関係における最適値は、回転軸12aの太さや表面粗さ、Oリング20の材質などによっても変わってくる(図5参照)。このため、選択材料に応じて密閉性と、回転軸12aが回転する際の抵抗値とのバランスを考慮して若干のマイナス公差となるように適宜選択する事が望ましい。
【0019】
ケーシング14における回転軸12aを挿通させる貫通孔14aの外周部には、ボス14bが設けられている。ボス14bは平面視において円環状となるように構成されており、内周側にOリング20、外周側にパッキン22がそれぞれ配置されている。ボス14bの内周壁の直径は、Oリング20の外周部の直径よりも大きく、Oリング20の外周部との間に間隙が設けられるように構成されている。また、ボス14bの外周壁は、詳細を後述するパッキン22の位置決め手段としての役割を担うように、パッキン22のサイズに合わせて構成されている。さらに、ボス14bの高さは、Oリング20の厚み(断面直径)よりも小さなものとする。詳細を後述するパッキン22によるOリング20の押え代を確保するためである。
【0020】
パッキン22は、Oリング20とケーシング14の一部を覆うにように配置されている。パッキン22は、ケーシング14の内部に流体(本実施形態においては二酸化塩素)が流入する事を防ぐ要素であり、平面視では全体として円環状を成すように構成されている。また、本実施形態に係るパッキン22は、側面視において複数の段(図1図3図4図5に示す例では3段)を成すように構成されている。このため、本実施形態に係るパッキン22には、各段に内周部と外周部が構成されることとなる。本実施形態に係るパッキン22は、ゴムやシリコン等の可撓性樹脂により構成されている。このため、無負荷時には所定の形状を維持しつつ、何等かの荷重が加えられた場合には、当該荷重の付加方向に沿って変形することを可能としている。
【0021】
3段構造としている本実施形態に係るパッキン22では、ケーシング14と接触する1段目22a(第1接触部)を円環構造とし、2段目22bと3段目22cは、側壁部22b1,22c1と平面部22b2,22c2により、パッキン22の内部に空隙を構成する構造とされている。具体的には、1段目22aの円環の内周部の上面に2段目22bの側壁部22b1が形成され、側壁部22b1の上端近傍の内周側に平面部22b2が形成されている。
【0022】
ここで、2段目22bの側壁部22b1は、パッキン22をケーシング14に組み付けた際、平面部22b2により上述したOリング20をケーシング14に押し付けることができるように、その高さを定めると良い。また、平面部22b2は、その内周部と回転軸12aとの間に僅かに隙間が形成されるように構成されている。
【0023】
3段目22cの側壁部22c1は、2段目22bの平面部22b2の内周部から立ち上がるように形成されている。このため、側壁部22c1と回転軸12aとの間には、僅かな隙間が設けられることとなる。3段目22cの平面部22c2は、側壁部22c1の上端から内周側に向けて形成され、回転軸12aを挿通させるための開口部22dが形成されている。3段目22cの平面部22c2の厚みは、2段目22bの平面部22b2の厚みに対して同等以下の厚さとなるように構成されている。回転軸12aとの接触部(第2接触部)の厚みを薄くすることで、回転軸12aとの接触面の面積を減らす事ができ、回転軸12aが回転する際の抵抗を減らすことができるからである。なお、回転軸12aの直径Dと、平面部22c2の開口部22dの直径d1との関係は、回転軸12aの直径DとOリング20の内径dとの関係と同等とすれば良い。このような構成とすることで、接触部の密閉性の確保と、接触抵抗の低減の双方を両立させることができるからである。
【0024】
このような構成のパッキン22では、1段目22aがケーシング14との接触面を確保し、3段目22cの平面部22c2に形成された開口部22dが回転軸12aとの接触面を確保することで、パッキン22に覆われる内部空間の遮蔽が成され、ケーシング14に設けられた貫通孔14aを介した流体の侵入を防ぐことができる。
【0025】
また、実施形態に係るパッキン22では、3段目22cの平面部22c2の内周(開口部22d)のみを回転軸12aに接触させ、側壁部22c1と回転軸12aとの間には隙間を設けると共に、2段目22bの平面部22b2も可撓性を持たせる構成としている。このため、回転軸12aにブレ(僅かな傾斜)が生じた際に、側壁部22c1が傾くこととなり、開口部22dに大きな負荷がかからず、開口部22dと回転軸12aとの間に隙間が生じ難い。よって、接触面積が小さくとも、高い密閉性を確保することができる。
【0026】
また、本実施形態では、パッキン22の2段目22bを構成する平面部22b2が、Oリング20の他方の面との接触面を構成している。このため、詳細を後述するパッキンカバー24によりパッキン22がケーシング14に押えつけられることで、パッキン22がOリング20をケーシング14に対して弾性的に押し付ける構造となる。
【0027】
パッキンカバー24は、上述したパッキン22の少なくとも一部をケーシング14に押えつけて固定する役割を担う要素である。本実施形態では、パッキンカバー24をケーシング14に固定し、パッキン22の1段目22aのみを押圧する構成としている。なお、パッキンカバー24としては、1段目22aを押圧する部分のみがあれば足りるが、本実施形態では、パッキン22の上部に回転軸12a以外からの外力による変形が加えられないように、全体として凸状を成すカバーとしての形態を有するように構成している。このため、パッキンカバー24の頂部には回転軸12aを挿通させるための貫通孔24aが設けられている。
【0028】
なお、ケーシング14には必要に応じて、回転羽根16等の動力伝達系統を覆うカバー18を備えるようにしても良い。
【0029】
[作用・効果]
上記のような特徴を有する封止構造では、パッキン22における回転軸12aとの接触面が、接触面の状態を維持したまま回転軸12aのブレ(僅かな傾倒)に追従することができる。また、実施形態に係る封止構造では、Oリング20の外周部を固定しておらず、内周部を回転軸12aに接触させると共に、一方の面と他方の面をそれぞれケーシング14とパッキン22に接触させ、弾性的に押圧支持されることで位置決めが成されている。このため、回転軸12aにブレが生じた際には、Oリング20全体が回転軸12aの傾倒に沿って移動することが可能となる。この時、Oリング20の一方の面と他方の面は、弾性的に押圧支持されているため、ケーシング14及びパッキン22との接触状態が維持されることとなる。
【0030】
このような作用により、本実施形態に係る封止構造では、パッキン22とOリング20の双方で、回転軸12aのブレに追従した接触面の維持が図られる。このため、各接触面の面積を大きくする事無く、封止効果を高め、二酸化塩素等の腐食性流体がケーシング14の内部に侵入することを防ぐことができる。よって、静音性が高く、回転トルクの小さいモータ12を採用した場合でも、封止構造がモータ12の回転力を抑制してしまう虞が無い。
【0031】
また、上記のような特徴を有する封止構造では、回転機械を簡易な構造とする事ができるため、製造コストの高騰や、軸ブレ、部品間のガタに起因した騒音の発生も抑制することができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、ケーシング14にボス14bを設け、このボス14bの内周側にOリング20を配置する旨記載した。しかしながら、本実施形態に係る封止構造では、ボス14bに替えて、あるいはボス14bと共に、貫通孔14aの周囲に凹部を形成し、この凹部にOリング20を配置するようにしても良い。このような構成とする事によれば、ケーシング14から突出する封止構造の厚みを抑えることが可能となる。
【0033】
また、Oリング20と回転軸12aの接触面や、パッキン22と回転軸12aの接触面、Oリング20とケーシング14の接触面、及びOリング20とパッキン22の接触面には、シリコングリス等の疎水性潤滑剤を塗布するようにしても良い。接触面における抵抗の低減を図ることができるからである。
【0034】
[第2実施形態]
次に、図6を参照して、軸受部の封止構造に係る第2実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る封止構造の殆どの構成は、上述した第1実施形態に係る封止構造と同様である。よって、その構成を同一とする箇所には図面に同一符号を付して詳細な説明は省略することとする。
【0035】
本実施形態に係る封止構造と、第1実施形態に係る封止構造との相違点は、Oリングの数と配置形態にある。具体的には、本実施形態では、Oリングを複数(具体的には2個)用いる構成としている。
【0036】
本実施形態では、ボス14bの内側に位置するケーシング14に凹部14cを設け、この凹部14cにOリング20(第1のOリング)を配置する構成としている。このため、Oリング20の一方の面は、凹部14cの底面に接触することとなる。なお、Oリング20の外周部と凹部14cの内壁との間には空隙が設けられている。
【0037】
Oリング20の他方の面とパッキン22における2段目22bの平面部22b2との間には、スペーサ26とOリング28(第2のOリング)が積層配置されている。ここで、スペーサ26とは、回転軸12aを挿通させるための平板であれば良く、外径サイズをOリング20,28と同等以上であって、凹部14cの内壁未満となるように構成している。また、Oリング20とOリング28のサイズは、同等のサイズとする。
【0038】
また、本実施形態に係る封止構造では、Oリング28の他方の面がボス14bの上面よりも高い位置に来るように、凹部14cの深さやスペーサ26の厚みを定めるようにする。Oリング28の他方の面に、パッキン22における2段目22bの平面部22b2が接触することで、封止効果を得ることができるからである。なお、その他の構成については、上述した第1実施形態に係る封止構造と同様である。
【0039】
[作用・効果]
このような構成の封止部では、回転軸12aに対してパッキン22と2つのOリング20,28が接触面を有することとなる。また、パッキン22はケーシング14と、Oリング20はケーシング14及びスペーサ26と、Oリング28はスペーサ26及びパッキン22とそれぞれ接触部が設けられる事により、外部空間との封止効果を得る事ができる。
【0040】
また、2つのOリング20,28(第1のOリングと第2のOリング)の間にスペーサ26を配置し、双方のOリング20,28との間に接触部を持たせるようにした事により、Oリング20とOリング28との間にズレ(積層方向と直交する方向のズレ)が生じた場合であっても、隙間が生じない。このため、封止効果が低下するといった事態が生じない。2つのOリングを単純に重ねた場合、両者は実質的に円形の線接触となる。このため、積層方向と直交する方向にズレが生じた場合には、2つのOリングの接触面(線)の間に隙間が生じてしまうのである。このため、両者の間にスペーサ26を配置することで、ズレによる隙間の発生を防ぐことが可能となるのである。
【0041】
また、本実施形態の説明では、ケーシング14に凹部14cを設ける構成としているが、第1実施形態と同様に、フラットなケーシング14にOリング20を配置し、その上にスペーサ26とOリング28を積層配置した上で、パッキン22によりOリング28の抑え込みを行うようにしても良い。回転軸12aに対して3箇所の封止面を設けるようにする事に変わり無いからである。なお、その他の作用、効果については、上述した第1実施形態に係る封止構造と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
上記実施形態では、扱う流体を二酸化塩素としているが、本発明に係る軸受部の封止構造は、液体を含む種々の流体中で使用する回転機械に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10………回転機械、12………モータ、12a………回転軸、14………ケーシング、14a………貫通孔、14b………ボス、14c………凹部、16………回転羽根、18………カバー、20………Oリング、22………パッキン、22a………1段目、22b………2段目、22b1………側壁部、22b2………平面部、22c………3段目、22c1………側壁部、22c2………平面部、22d………開口部、24………パッキンカバー、24a………貫通孔、26………スペーサ、28………Oリング。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7